(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156580
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】気体浄化装置及び搬送加熱装置
(51)【国際特許分類】
B23K 3/08 20060101AFI20221006BHJP
B08B 9/087 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B23K3/08
B08B9/087
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060352
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110003236
【氏名又は名称】特許業務法人杉浦特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100123973
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 拓真
(74)【代理人】
【識別番号】100082762
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 正知
(72)【発明者】
【氏名】眞田 卓摩
【テーマコード(参考)】
3B116
【Fターム(参考)】
3B116AA13
3B116AA47
3B116BA03
3B116BA15
(57)【要約】
【課題】加熱により気化した物質が混合された気体から物質を粉体として回収して気体を浄化する。
【解決手段】円筒形のケースと、大気又は不活性気体と加熱により気化した物質が混合された気体をケースに導入する気体導入口と、浄化後の気体をケースから排出する気体排出口と、気体導入口から気体排出口に向かってケース内を流れる気体が通過する開口を有する第1の板状体と、開口を通過した気体が衝突する面を有する第2の板状体と、第2の板状体によって捕集された物質の少なくとも一部を収容する収容部とを備えた気体浄化装置である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形のケースと、
大気又は不活性気体と加熱により気化した物質が混合された気体を前記ケースに導入する気体導入口と、
浄化後の気体を前記ケースから排出する気体排出口と、
前記気体導入口から前記気体排出口に向かって前記ケース内を流れる前記気体が通過する開口を有する第1の板状体と、
前記開口を通過した前記気体が衝突する面を有する第2の板状体と、
前記第2の板状体によって捕集された前記物質の少なくとも一部を収容する収容部と
を備えた気体浄化装置。
【請求項2】
前記第1の板状体と相対的に回転し、前記第1の板状体の少なくとも表面に付着した前記物質の少なくとも一部を清掃するようになされた第1の清掃手段を有する請求項1に記載の気体浄化装置。
【請求項3】
前記第1の清掃手段が前記第1の板状体の表面と近接し、前記第1の板状体に付着した前記物質の少なくとも一部を掻き落とすようになされた請求項2に記載の気体浄化装置。
【請求項4】
前記第1の清掃手段が前記第1の板状体の前記開口を清掃するようになされた請求項2又は3に記載の気体浄化装置。
【請求項5】
前記第1の清掃手段が回転軸に固着された請求項2から4のいずれかに記載の気体浄化装置。
【請求項6】
前記回転軸が直動可能とされ、前記第1の清掃手段が前記回転軸に固着された請求項5に記載の気体浄化装置。
【請求項7】
前記第2の板状体と相対的に回転し、前記第2の板状体の少なくとも表面に付着した前記物質の少なくとも一部を清掃するようになされた第2の清掃手段を有する請求項1から6のいずれかに記載の気体浄化装置。
【請求項8】
前記第2の清掃手段が前記第2の板状体の表面と近接し、前記第2の板状体に付着した前記物質の少なくとも一部を掻き落とすようになされた請求項7に記載の気体浄化装置。
【請求項9】
前記第2の清掃手段が前記ケースに設けられた請求項7又は8に記載の気体浄化装置。
【請求項10】
前記第2の板状体が直動可能な回転軸に固着された請求項1から9のいずれかに記載の気体浄化装置。
【請求項11】
前記第1の板状体の前記開口の径が前記第2の板状体の径より大とされた請求項1から10のいずれかに記載の気体浄化装置。
【請求項12】
被加熱物を加熱する加熱室を有し、前記加熱室を搬送装置によって前記被加熱物を通過させる搬送加熱装置において、
大気又は不活性気体と加熱により気化した物質が混合された気体を気体浄化装置に供給する構成とされ、
前記気体浄化装置は,
円筒形のケースと
大気又は不活性気体と加熱により気化した物質が混合された気体を前記ケースに導入する気体導入口と、
浄化後の気体を前記ケースから排出する気体排出口と、
前記気体導入口から前記気体排出口に向かって前記ケース内を流れる前記気体が通過する開口を有する第1の板状体と、
前記開口を通過した前記気体が衝突する面を有する第2の板状体と、
前記第2の板状体によって捕集された前記物質の少なくとも一部を収容する収容部と
を備えた搬送加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばリフロー装置に適用される気体浄化装置及び搬送加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品又はプリント配線基板に対して、予めはんだ組成物を供給しておき、リフロー炉の中に基板を搬送コンベヤで搬送するリフロー装置が使用されている。リフロー装置の加熱ゾーンでは、熱風が基板に対して吹きつけられることによって、はんだ組成物内のはんだを溶融させて基板の電極と電子部品とがはんだ付けされる。はんだ組成物は、粉末はんだ、溶剤、フラックスを含む。フラックスは、成分としてベース樹脂例えばロジンなどを含み、はんだ付けされる金属表面の酸化膜を除去し、はんだ付けの際に加熱で再酸化するのを防止し、はんだの表面張力を小さくして濡れを良くする塗布剤の働きをするものである。
【0003】
このフラックスは、加熱により、液化し、さらに、一部が気化する。したがって、大気又は不活性ガスと気化した物質が混合された気体(以下、フラックスヒュームと適宜称する)が加熱室としての炉内に充満する。フラックスヒュームは、温度の低い部位に付着し易く、冷やされることで液化し、付着している部位から滴下してしまうことから、基板の上面に付着することもあり、基板の性能を損なうこととなる。また、炉内において温度が低下する部分に堆積する等によりリフロー工程に大きな影響を与える場合もある。したがって、リフロー炉内のフラックスを低減、除去するようになされる。
【0004】
従来のフラックス低減方法は、加熱室としての炉内のフラックスヒュームを炉外のフラックス回収装置に導き、フラックス回収装置においてフラックスヒュームを冷却することによってフラックス成分を液化させてフラックスを回収し、フラックス回収後の気体を炉内に戻すものであった。
【0005】
例えば特許文献1には、気化したフラックス成分を含む熱風が本体部の内部に流通し、本体部の内面に熱風の流れ方向に直交する方向に突起し、気化物質が衝突し熱交換されて冷却され、冷却されたフラックス成分が付着する突起状部材が設けられたフラックス回収装置が記載されている。また、特許文献2には、外周面に熱交換フィンを有する本体筒内に内部にジグザグ通路を形成するように複数の冷却フィンを設けたカートリッジの構成の不純物除去手段が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008-246514号公報
【特許文献2】特許第2928843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらのフラックス成分を凝縮させるフラックス回収装置を設けた場合でも、ロジンなどのベース樹脂成分が液化しないために、粉体として残留する粉体汚れが発生していた。粉体が配管やパネル穴を目詰まりさせ、装置の機能が低下したり、粉体付着による基板の清掃が必要となったり、基板不良が発生したり、クリーンルームのパーティクル値が上昇したりする問題があった。
【0008】
したがって、本発明は、かかる粉体汚れを除去することができ、さらに、清掃が簡単に行うことができる気体浄化装置及び搬送加熱装置を提供することを目的とする。
搬送加熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、円筒形のケースと、
大気又は不活性気体と加熱により気化した物質が混合された気体をケースに導入する気体導入口と、
浄化後の気体をケースから排出する気体排出口と、
気体導入口から気体排出口に向かってケース内を流れる気体が通過する開口
を有する第1の板状体と、
開口を通過した気体が衝突する面を有する第2の板状体と、
第2の板状体によって捕集された物質の少なくとも一部を収容する収容部と
を備えた気体浄化装置である。
また、本発明は、被加熱物を加熱する加熱室を有し、加熱室を搬送装置によって被加熱物を通過させる搬送加熱装置において、
大気又は不活性気体と加熱により気化した物質が混合された気体を気体浄化装置に供給する構成とされ、
気体浄化装置は,
円筒形のケースと
大気又は不活性気体と加熱により気化した物質が混合された気体をケースに導入する気体導入口と、
浄化後の気体をケースから排出する気体排出口と、
気体導入口から気体排出口に向かってケース内を流れる気体が通過する開口を有する第1の板状体と、
開口を通過した気体が衝突する面を有する第2の板状体と、
第2の板状体によって捕集された物質の少なくとも一部を収容する収容部と
を備えた搬送加熱装置である。
【発明の効果】
【0010】
少なくとも一つの実施形態によれば、粉体を回収することによって気体を浄化することができ、また、付着した粉体の汚れを簡単に清掃することができる。なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本発明中に記載されたいずれの効果であってもよい。また、以下の説明における例示された効果により本発明の内容が限定して解釈されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明を適用できる従来のリフロー装置の概略を示す略線図である。
【
図2】
図2は、リフロー時の温度プロファイルの例を示すグラフである。
【
図4】
図4は、本発明の第1の実施形態の気体浄化装置の断面図である。
【
図5】
図5は、上下のケースを分離したときの気体浄化装置の断面図である。
【
図7】
図7は、気体浄化装置の一部拡大断面図である。
【
図8】
図8は、気体浄化装置の一部の斜視図である。
【
図10】
図10は、気体浄化装置の軸及び軸に取り付けられた清掃フィンの斜視図である。
【
図11】
図11は、本発明の第2の実施形態の気体浄化装置の断面図である。
【
図12】
図12は、上下のケースを分離したときの気体浄化装置の断面図である。
【
図13】
図13は、軸を直動させた状態の気体浄化装置の断面図である。
【
図15】
図15は、本発明の第3の実施形態の気体浄化装置の断面図である。
【
図16】
図16は、上下のケースを分離したときの気体浄化装置の断面図である。
【
図17】
図17は、軸を直動させた状態の気体浄化装置の断面図である。
【
図18】
図18は、本発明の変形例を説明するための略線図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施の形態について説明する。なお、説明は、以下の順序で行う。
<1.リフロー装置の一例>
<2.本発明の第1の実施形態>
<3.本発明の第2の実施形態>
<4.本発明の第3の実施形態>
<5.変形例>
なお、以下に説明する一実施の形態は、本発明の好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において、特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの実施の形態に限定されないものとする。
【0013】
<1.リフロー装置の一例>
図1は、本発明を適用できる従来のリフロー装置101の概略的構成を示す。リフロー装置101は、リフロー炉102と、被加熱物例えば両面に表面実装用電子部品が搭載されたプリント基板(以下、ワークと称する)Wをリフロー炉102内を通過させる搬送手段としての搬送チェーン103と、搬送チェーン103の移動経路を規定する回転体(アイドラー、スプロケットなど)105a、105b、105c、105dと、外板106とを備える。なお、
図1では、平行する2本の搬送チェーンの一方の搬送チェーン103のみが示されている。
【0014】
リフロー炉102は、ワークWを上下から加熱し、加熱後に冷却するためのものである。搬送チェーン103は、搬送方向に平行して配されている2本の搬送チェーンの一方である。例えば搬送チェーン103として、ローラチェーンが使用されている。外板106は、全体を覆うためのケースである。
【0015】
ワークWは、搬入口107からリフロー炉102内に搬入された後、搬送チェーン103によって所定速度で矢印方向(
図1に向かって左から右方向)へ搬送され、最終的に搬出口108から取り出される。図示しないが、搬入口107の前段には、ワークWを搬入するためのワーク搬入装置が設けられ、搬出口108の後段には、ワークWを外部へ送り出すためのワーク搬出装置が配置されている。
【0016】
搬入口107から搬出口108に至る搬送経路に沿って、リフロー炉102が例えば9個のゾーンZ1からZ9に順次分割され、これらのゾーンZ1~Z9がインライン状に配列されている。搬入口107側から7個のゾーンZ1~Z7が加熱ゾーンであり、搬出口108側の2個のゾーンZ8およびZ9が冷却ゾーンである。冷却ゾーンZ8およびZ9に関連して強制冷却ユニット(図示しない)が設けられている。なお、ゾーン数は、一例であって、他の個数のゾーンを備えても良い。複数のゾーンZ1~Z9がリフロー時の温度プロファイルにしたがってワークWの温度を制御する。
【0017】
ゾーンZ1~Z7のそれぞれは、上部炉体及び下部炉体を有する。ゾーンZ1~Z7のそれぞれに含まれる上部炉体及び下部炉体には、送風機(例えばターボファン)と温度検出器(例えば熱電対)が設けられている。冷却ゾーンZ8及びZ9にも送風機と温度検出器が設けられている。M1及びM11がゾーンZ1の送風機のモータである。M2~M9及びM12~M19も各ゾーンの送風機のモータを示す。
【0018】
上述した複数のゾーンZ1~Z9がリフロー時の温度プロファイルにしたがってワークWの温度を制御する。
図2に温度プロファイルの一例の概略を示す。横軸が時間であり、縦軸がワークW例えば電子部品が実装されたプリント配線板の表面温度である。最初の区間が加熱によって温度が上昇する昇温部R1であり、次の区間がほぼ一定温度のプリヒート(予熱)部R2であり、次の区間がリフロー(本加熱)部R3であり、最後の区間が冷却部R4である。
【0019】
昇温部R1は、常温からプリヒート部R2(例えば150℃~170℃)まで基板を加熱する期間である。プリヒート部R2は、例えば等温加熱を行い、フラックスを活性化し、電極、はんだ粉の表面の酸化膜を除去し、また、プリント配線板の加熱ムラをなくすための期間である。リフロー部R3(例えばピーク温度で220℃~240℃)は、はんだが溶融し、接合が完成する期間である。リフロー部R3では、はんだの溶融温度を超える温度まで昇温が必要とされる。リフロー部R3は、プリヒート部R2を経過していても、温度上昇のムラが存在するので、はんだの溶融温度を超える温度までの加熱が必要とされる。最後の冷却部R4は、急速にプリント配線板を冷却し、はんだ組成を形成する期間である。なお、鉛フリーはんだの場合では、リフロー部における温度は、より高温(例えば240℃~260℃)となる。
【0020】
図2において、曲線1は、鉛フリーはんだの温度プロファイルの一例を示す。Sn-Pb共晶はんだの場合の温度プロファイルの一例は、曲線2で示すものとなる。鉛フリーはんだの融点は、共晶はんだの融点より高いので、プリヒート部R2及びリフロー部R3における設定温度が共晶はんだに比して高いものとされている。
【0021】
図1に示すリフロー装置では、
図2における昇温部R1の温度制御を、主としてゾーンZ1及びZ2が受け持つ。プリヒート部R2の温度制御は、主としてゾーンZ3、Z4及びZ5が受け持つ。リフロー部R3の温度制御は、ゾーンZ6及びZ7が受け持つ。冷却部R4の温度制御は、ゾーンZ8及びゾーンZ9が受け持つ。
【0022】
図3を参照して、一つのゾーン例えばゾーンZ5の構成を説明する。上部炉体1と下部炉体11との対向間隙内で、プリント配線板の両面に表面実装用電子部品が搭載されたワークWが搬送コンベヤ21上に置かれて搬送される。上部炉体1内及び下部炉体11内は、雰囲気気体である例えば窒素(N2)気体が充満している。上部炉体1及び下部炉体11は、ワークWに対して熱風(熱せられた雰囲気気体)を噴出してワークWを加熱する。なお、熱風と共に赤外線を照射しても良い。
【0023】
上部炉体1は、主加熱源2、副加熱源3、送風機4、蓄熱部材5、熱風循環ダクト6、開口部7等からなる。なお、下部炉体11は、例えば、上述した下部炉体1とほぼ同様に、主加熱源12、副加熱源13、送風機14、蓄熱部材15、熱風循環ダクト16、開口部17等を備えている。送風機4は、モータM5と、モータ取り付け板8と、回転羽根9を有する。同様に、送風機14は、モータM15と、モータ取り付け板18と、回転羽根19を有する。送風機としては、ターボファン、シロッコファンなどの遠心ファン、軸流ブロワなどを使用してもよい。なお、
図3に示す炉体の構成は、一例であり、他の構成をとりうる。
【0024】
開口部7及び17を通じて熱風がワークWに対して吹きつけられる。主加熱源2、主加熱源12、副加熱源3及び副加熱源13は、例えば電熱ヒータで構成される。蓄熱部材5及び蓄熱部材15は、例えばアルミニウムからなり、多数の孔が形成され、その孔を通じて熱風が通過してワークWに対して吹きつけられる。
【0025】
例えば上部炉体1において、熱風は、送風機4によって循環される。すなわち、(主加熱源2→蓄熱部材3→開口部7→ワークW→熱風循環ダクト6→副加熱源3→熱風循環ダクト6→送風機4→主加熱源2)の経路を介して熱風が循環する。下部炉体11においても同様に、熱風が循環する。
【0026】
ゾーンZ5内の雰囲気気体が配管22を通じて図示しないフラックス回収装置に送られる。フラックス回収装置では、フラックスヒューム中のフラックスが除去及び回収され、フラックスが低減又は除去された浄化後の気体が生成される。フラックス回収装置により浄化された後の気体が配管23を通じて下部炉体11内に導入される。上部炉体1においても同様にフラックス回収装置により浄化された気体が導入される。
【0027】
<2.本発明の第1の実施形態>
本発明による気体浄化装置より具体的には、粉体回収装置は、上述したフラックス回収装置の後に設けられる。さらに、炉体(加熱装置)に限らず、冷却ゾーンZ8及びZ9と関連して本発明による気体浄化装置を設けてもよい。さらに、ワーク搬出側に設けられた金属製の隔壁で仕切られたバッファ室と関連して本発明による気体浄化装置を設けてもよい。また、液化方式のフラックス回収装置と併用しないで、単独で本発明による気体浄化装置を設けて粉体回収と液化回収の両方を行うようにしてもよい。
【0028】
図4~
図10を参照して本発明の第1の実施形態の気体浄化装置について説明する。
図4は、気体浄化装置の断面図であり、
図5は、上下のケースを分離したときの気体浄化装置の断面図であり、
図6Aは、
図4のII-II矢視図であり、
図6Bは、
図4のI-I断面図である。
図7は、気体浄化装置の一部拡大断面図であり、
図8は、気体浄化装置の主要部の斜視図であり、
図9は、
図6の一部(円で囲んだ部分A)の拡大斜視図であり、
図10は、気体浄化装置の軸及び軸に取り付けられた清掃フィンの斜視図である。気体浄化装置は、ステンレス、鉄などの金属により構成されている。
【0029】
清掃時にモータMによって回転駆動される軸31がほぼ円筒状のケースの蓋板34及び35を貫通するように設けられる(
図4、
図5及び
図6A)。ケースは、上部ケース32と下部ケース33からなる。上部ケース32は、
図6B、
図8及び
図9に示すように、断面が半円を形成するように形成されたものである。
【0030】
下部ケース33の上部は、上部ケース32の下部と嵌合する箱状のもので、下部ケース33の底面に回収した粉体を蓄える回収容器36a,36b,36c,36d,36e(特に個々の回収容器を区別する必要がない場合には、単に回収容器36と称する)が着脱自在に連結されている。
図8では、上部ケース32及び下部ケース33が二点鎖線で示されており、また、モータM及び回収容器36の図示が省略されている。
【0031】
上部ケース32の一端の蓋板34の近傍の上部に気体導入用の開口が形成され、この開口から上方へ延びる筒状の気体導入部37が設けられている。上部ケース32の他端の蓋板35の近傍の上部に気体排出用の開口が形成され、この開口から上方へ延びる筒状の気体排出部38が設けられている。気体導入部37に対して大気又は不活性気体と加熱により気化した物質が混合された気体例えば液化方式のフラックス回収装置からベース樹脂成分を含む気体が導入される。気体の温度は、例えば100℃~120℃程度である。そして、気体浄化装置のケース内を気体が流れて粉体回収後の気体が気体排出部38から加熱ゾーンの炉体及び/又は冷却ゾーンの炉体に戻される。
【0032】
気体導入用の開口と気体排出用の開口の間に、ほぼ等間隔で第1の板状体としてのノズル板39a,39b,39c,39d,39e(特に個々のノズル板を区別する必要がない場合には、単にノズル板39と称する)が設けられる(
図4、
図5、
図7、
図8及び
図9)。ノズル板39は、ケースの長手方向(気体進行方向)とほぼ直交して平行に設けられた円板である。ノズル板39の中心に開口40a,40b,40c,40d,40e(特に個々の開口を区別する必要がない場合には、単に開口40と称する)が形成されている。開口40内を軸31が貫通している。開口40の径が軸31の径の例えば2倍程度に設定されている。開口40の領域中軸31で塞がれていない領域を気体が通過する。
【0033】
ノズル板39の上部半円部分は、上部ケース32の内面から下方に向かってように形成され、ノズル板39の下部半円部分は、下部ケース33から上方に向かうように形成されている。ノズル板39a,39b,39c,39d,39eのそれぞれの配設位置に対応する位置に下部ケース33の底面から隔壁41a,41b,41c,41d,41e(特に個々の隔壁を区別する必要がない場合には、単に隔壁41と称する)が立設されている。隔壁41と上部端と連続してノズル板39の下部半円部分が形成されている。隔壁41によって区切られた室内に回収された粉体が保持され、さらに、底面の回収容器36に貯留される。
【0034】
ノズル板39の下流側に所定の間隔を隔てて、第2の板状体としての円板状の衝突板42a,42b,42c,42d,42e(特に個々の衝突板を区別する必要がない場合には、単に衝突板42と称する)が軸31に固着されている。衝突板42は、ノズル板39の開口40より大きい径を有し、ノズル板39の直径より小さい直径を有する。したがって、ノズル板39の開口40を通過した気体が衝突板42に衝突すると共に、衝突板42の外周と上部ケース32の内面の間の空隙を通過して下流側のノズル板39に向かって流れる。
【0035】
衝突板42に気体が衝突することによって、気体に含まれる物質の少なくとも一部例えばロジンなどのベース樹脂成分が粉体状で徐々に堆積される。ノズル板39に気体が衝突することによっても、気体中のベース樹脂成分が粉体状で徐々に堆積される。粉体は、下部ケース33の収容空間に落下し、さらに、回収容器36に貯留される。
【0036】
ある程度の時間、気体浄化装置が動作すると、粉体が下方に落下しないでノズル板39及び衝突板42に付着し、粉体を捕集する能力が低下する。ノズル板39に付着した粉体を清掃するための第1の清掃手段としての清掃フィン43a,43b,43c,43d,43e(特に個々の清掃フィンを区別する必要がない場合には、単に清掃フィン43と称する)が軸31に固定されている。
【0037】
清掃フィン43cは、
図7及び
図9に拡大して示すように、ノズル板39の板面とほぼ直交する板面を有し、軸31の周面に固着された2枚の矩形板44a及び44bを有する。矩形板44a及び44bの先端から軸31との固着部に向かってスリット45a及び45bが形成されている。スリット45a及び45b内にノズル板39cが入り込み、ノズル板39cの気体衝突面(表面と称する)とその裏面に対して矩形板44a及び44bがほぼ垂直に交差する。スリット45a及び45bの開口幅は、ノズル板39cの板厚よりやや大に設定され、ノズル板39がスリット45a及び45b内で回転可能とされている。スリット45a及び45bは、軸31までに到達せず、矩形板44a及び44bと軸31の接続部に基部46a及び46bが形成される。基部46a及び46bがノズル板39cの開口40c内に位置する。なお、清掃フィン43が弾力性を有する場合には、清掃フィン43をノズル板39の表面及び裏面と接触させるようにしてもよい。
【0038】
上述した本発明の第1の実施形態では、軸31に対して
図10に示すように、衝突板42a~42eと清掃フィン43a~43eが固着されており、モータMによって軸31が回転すると、衝突板42a~42eと清掃フィン43a~43eが回転する。モータMは、清掃時に軸31を回転させるようになされている。
【0039】
モータMによって軸31が回転されると、清掃フィン43cを構成する矩形板44a及び44bが回転し、ノズル板39cの表面及び裏面の両面に付着している粉体を掻き落とす。したがって、ノズル板39cの両面が清掃され、捕集能力の低下が抑えられる。また、基部46a及び46bがノズル板39cの開口40c内に位置しているので、基部46a及び46bによって開口40c内に付着した粉体を掻き落とすことができ、開口40cが目詰まりすることが防止できる。
【0040】
なお、他の清掃フィン43a,43b,43d,43eも上述した清掃フィン43cと同様の形状を有し、清掃フィン43a,43b,43d,43eがノズル板39a,39b,39d,39eの両面をそれぞれ清掃する。なお、ノズル板39は,気体が入る側の裏面の方が表面に比して粉体が付着する量が多いので、裏面側のみを清掃する構成としてもよい。
【0041】
ノズル板39と同様に、衝突板42にも粉体が付着する。特に、衝突板42の気体が衝突する面(表面)側に付着する粉体の量がその裏面側に付着する粉体の量に比して多い。衝突板42の表面に対して付着した粉体を掻き落とすために、衝突板42の表面に近接して第2の清掃手段としての清掃ロッド47a,47b,47c,47d,47e(特に個々の清掃ロッドを区別する必要がない場合には、単に清掃ロッド47と称する)が設けられている。清掃ロッド47は、上部ケース32の内面に一端が固定され、他端が軸31の周面の近傍まで延びる形状を有し、金属、ゴム等の材料からなる。モータMによって軸31が回転されると、衝突板42が回転し、清掃ロッド47によって衝突板42の表面に付着した粉体が掻き落とされる。なお、清掃ロッド47が弾力性を有する場合には、清掃ロッド47を衝突板42の表面と接触させるようにしてもよい。また、清掃ロッド47によって衝突板42の両面を清掃するようにしてもよい。
【0042】
上述した本発明の第1の実施形態によれば、フラックスヒューム又はフラックス回収後の気体がケース内に導入され、ノズル板39の開口を通じて衝突板42に気体が衝突することによっても、気体中のベース樹脂成分が粉体となり、下部ケース33内に落下する。粉体が除去された気体が気体排出口38から排出されてリフロー装置に戻される。したがって、リフロー装置において、粉体が配管やパネル穴を目詰まりさせ、装置の機能が低下したり、粉体付着による基板の清掃が必要となったり、基板不良が発生したり、クリーンルームのパーティクル値が上昇したりすることを防止することができる。さらに、フラックスヒュームが導入された場合、フラックスヒュームを液化させて回収することができる。
【0043】
<3.本発明の第2の実施形態>
図11、
図12及び
図13を参照して本発明の第2の実施形態の気体浄化装置について説明する。
図11は、気体浄化装置の断面図であり、
図12は、上下のケースを分離したときの気体浄化装置の断面図であり、
図13は、軸31が延長方向に変位した時の断面図であり、
図14Aは、
図11のII-II矢視図であり、
図14Bは、
図11のI-I断面図である。
【0044】
第1の実施形態と同様に、上部ケース32及び下部ケース33によって構成される筒状の空間内に気体導入部37から例えばフラックス回収後の気体が導入され、ノズル板39の開口を通過した気体が衝突板42に衝突することによって、気体中のベース樹脂等の粒子成分が粉体として回収される。軸31に対して衝突板42a~42eとノズル板清掃手段としての清掃フィン51a,51b,51c,51d,51e(特に個々の清掃フィンを区別する必要がない場合には、単に清掃フィン51と称する)が固着されている。
【0045】
第1の実施形態と同様に、清掃フィン51は、軸31に対して固着され、板面がノズル板39の裏面と近接する2枚の矩形板を有している。さらに、清掃フィン51の軸31との固着部分近傍の短手方向の幅が他の部分に比して大きくされ、清掃フィン51の基部の突出部がノズル板39の中心の開口40内に入り込むようになされる。突出部は、板状であるため、開口40を気体が通過することを妨げない。第1の実施形態と同様に、清掃ロッド47が衝突板42の表面と近接して設けられている。
【0046】
したがって、軸31がモータMによって回転されると、ノズル板39の裏面に付着している粉体が清掃フィン51によって掻き落とされ、衝突板42の表面に付着している粉体が清掃ロッド47によって掻き落とされる。同時に、ノズル板39の開口40内に清掃フィン51の基部の突出部が入り込んでいるので、開口40が粉体によって狭くなったり、目詰まりしたりすることを防止できる。
【0047】
上述した第2の実施形態において、
図13において矢印で示すように、軸31が気体導入側から気体排出側に向かって直動可能としてもよい。この場合には、清掃ロッド47に付着した粉体を掻き落とすことができる。
【0048】
<4.本発明の第3の実施形態>
図15、
図16及び
図17を参照して本発明の第3の実施形態の気体浄化装置について説明する。
図15は、気体浄化装置の断面図であり、
図16は、上下のケースを分離したときの気体浄化装置の断面図であり、
図17は、軸31が延長方向に変位した時の断面図である。
【0049】
第1及び第2の実施形態と同様に、上部ケース32及び下部ケース33によって構成される筒状の空間内に気体導入部37から例えばフラックス回収後の気体が導入され、ノズル板39の開口を通過した気体が衝突板42に衝突することによって、気体中のベース樹脂等の粒子成分が粉体として回収される。軸31に対して衝突板42a' ,42b,42c,42d,42e'(特に個々の衝突板を区別する必要がない場合には、単に衝突板42' と称する) とノズル板清掃手段としての清掃フィン52a,52b,52c,52d,52e(特に個々の清掃フィンを区別する必要がない場合には、単に清掃フィン52と称する)が固着されている。
【0050】
清掃フィン52は、軸31に対して固着され、板面がノズル板39の裏面と近接する2枚の矩形板を有している。第1の実施形態と同様に、清掃ロッド47が衝突板42' の表面と近接して設けられている。衝突板42' の径がノズル板39の開口40の径より小さく、衝突板42' が開口40内を通過することが可能とされている。
【0051】
したがって、軸31がモータMによって回転されると、ノズル板39の裏面に付着している粉体が清掃フィン52によって掻き落とされ、衝突板42の表面に付着している粉体が清掃ロッド47によって掻き落とされる。
【0052】
上述した第3の実施形態において、
図17において矢印で示すように、軸31が気体導入側から気体排出側に向かって直動可能とされている。
図17に示す状態からさらに軸31が直動すると、衝突板42' がノズル板39の開口40内を通過して清掃フィン52がノズル板39の表面に近接した状態となる。なお、清掃フィン52 が板状であり、清掃ロッド47がロッド状であるため、清掃フィン52の位置を調整することによって、清掃フィン52が清掃ロッド47を通過することができる。
【0053】
したがって、軸31がモータMによって回転されると、ノズル板39の表面に付着している粉体が清掃フィン52によって掻き落とされ、衝突板42' の裏面に付着している粉体が清掃ロッド47によって掻き落とされる。同時に、ノズル板39の開口40内を衝突板42' が通過するので、開口40が粉体によって狭くなったり、目詰まりしたりすることを防止できる。このように、第3の実施形態は、ノズル板39の両面並びに開口40を清掃することができる。
【0054】
<5.本発明の変形例>
図18、
図19A及び
図19Bを参照して本発明の変形例について説明する。なお、簡単のため、これらの図において、軸31を一点鎖線で表し、清掃フィン、清掃ロッド及び回収容器の図示を省略している。また、上部ケース及び下部ケースは、円筒状のケース61として表している。
【0055】
図18に示す構成は、ノズル板39a及び39bのそれぞれの開口40a及び40bの気体の入口側に開口40a及び40bのエッジからケース61の内面に向かって拡がる形状の傾斜部62a及び62bを設けるものである。傾斜部62a及び62bによって気体を開口40a及び40bに向けて集中させて流速を増大させることができる。その結果、粉体の回収効率をより高くすることができる。
【0056】
図19Aに示す変形例は、一定間隔Lで設けられているノズル板39a,39b及び39cに対する衝突板42a,42b及び42cの間隔x1,x2及びx3を変更するものである。すなわち、気体の流入側から間隔を徐々に小さくするものである(x1>x2>x3)。このようにすると、衝突エネルギーが徐々に大きくなり、回収効率を高めることができる。言い換えると、気体の排出側での気体の流速が遅くなることを補償することができる。
【0057】
図19Bに示す変形例は、ノズル板39a,39b及び39cに対する衝突板42a,42b及び42cの間隔を一定とし、ノズル板39a,39b及び39cの開口40a,40b及び40cの径を徐々に小さくするものである(d1>d2>d3)。このようにすると、衝突エネルギーが徐々に大きくなり、回収効率を高めることができる。言い換えると、気体の排出側での気体の流速が遅くなることを補償することができる。
【0058】
以上、本発明の実施の形態について具体的に説明したが、上述の各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。例えばノズル板の清掃手段としては、板状に限らずロッド状であってもよく、衝突板の清掃手段としてはロッド状に限らず板状であってもよい。また、衝突板の両面に近接する衝突板清掃手段を設けて衝突板の両面を清掃するようにしてもよい。さらに、ノズル板清掃手段と衝突板清掃手段の一方を設けてもよい。また、下部ケースの上部でノズル板との境界に位置する仕切りを設け、仕切りに形成した開口を通じて粉体を回収するようにしてもよい。よりさらに、ノズル板と清掃フィンは、相対的に回転する関係であればよく、同様に、衝突板と清掃ロッドは、相対的に回転する関係であればよい。
【0059】
さらに、本発明は、リフロー装置等のはんだ付け装置に限らず、プリント配線板上に表面実装部品を熱硬化型の接着剤によって接着するための実装装置、パターン形成された銅張積層板上に形成されたソルダーレジストを硬化させる装置などにも適用することができる。すなわち、本発明は、加熱処理を行うことによって気化した物質が大気又は不活性気体に対して混合された気体から粉体を回収する場合に対して適用できる。
【0060】
また、上述の実施の形態において挙げた構成、方法、工程、形状、材料及び数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料及び数値などを用いてもよい。また、上述の実施の形態の構成、方法、工程、形状、材料及び数値などは、本発明の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0061】
M・・・モータ、1・・・上部炉体、11・・・下部炉体、31・・・軸、
32・・・上部ケース、33・・・下部ケース、36a~36e・・・回収容器、
37・・・気体導入部、38・・・気体排出部、39a~39e・・・ノズル板、
40a~40e・・・開口、42a~42e・・・衝突板、
43a~43e・・・清掃フィン、47a~47e・・・清掃ロッド、
51a~51e・・・清掃フィン、101・・・リフロー装置