(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156587
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】絶縁回路基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/12 20060101AFI20221006BHJP
C04B 37/02 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
H01L23/12 D
C04B37/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060361
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】末永 圭一
(72)【発明者】
【氏名】大開 智哉
(72)【発明者】
【氏名】西川 仁人
【テーマコード(参考)】
4G026
【Fターム(参考)】
4G026BA17
4G026BB22
4G026BE01
4G026BF16
4G026BF24
4G026BF44
4G026BG03
4G026BG23
4G026BH07
(57)【要約】
【課題】接合時の所定温度域における真空度を制御して、冷熱が繰り返される環境下でも良好な接合信頼性を得る。
【解決手段】セラミックス基板と銅又は銅合金からなる銅板とをろう材を介して積層し、その積層方向に加圧した状態で加熱炉内で加熱することによりセラミックス基板と銅板とを接合してセラミックス基板の表面に銅層を有する絶縁回路基板を製造する方法であって、600℃以上770℃以下の温度域における加熱炉内の真空度を1.0×10
-2Pa以下にする。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス基板と銅又は銅合金からなる銅板とをろう材を介して積層し、その積層方向に加圧した状態で加熱炉内で加熱することにより前記セラミックス基板と前記銅板とを接合して前記セラミックス基板の表面に銅層を有する絶縁回路基板を製造する方法であって、600℃以上770℃以下の温度域における前記加熱炉内の真空度を1.0×10-2Pa以下にすることを特徴とする絶縁回路基板の製造方法。
【請求項2】
前記温度域において、四重極型質量分析計で測定される、質量数が2以上200以下のイオン強度の合計に対するH2,CO、CO2の各イオン強度の比率は、H2が20.3%以下、COが50.9%以下、CO2が4.0%以下であることを特徴とする請求項1に記載の絶縁回路基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大電流、高電圧を制御するパワーモジュール等に用いられる絶縁回路基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のパワーモジュール等に用いられる絶縁回路基板は、例えば、AlN(窒化アルミニウム)、Al2O3(アルミナ)、Si3N4(窒化ケイ素)などからなるセラミックス基板と、このセラミックス基板の一方の面に形成された回路層と、セラミックス基板の他方の面に形成された放熱層と、を備えている。また、これらセラミックス基板と回路層又は放熱層となる金属板との接合には一般にろう材が用いられる。金属板が銅又は銅合金板である場合、ろう材には活性金属を含むものが用いられる。
【0003】
特許文献1には、セラミックス基板の表面に銅または銅合金からなる銅板が積層されて接合されたパワーモジュール用基板であって、銅板とセラミックス基板との間において、セラミックス基板の表面に窒化物層が形成されているとともに、Ag-Cu共晶組織層の厚さが15μm以下とされるパワーモジュール用基板が開示されている。この場合、セラミックス基板と銅板とは、その間に、Ag及び窒化物形成元素層を介在させ、積層方向に加圧(圧力1~35kgf/cm2)した状態で真空加熱炉内に装入して加熱することにより、接合される。その真空加熱炉内の圧力は10-6Pa以上10-3Pa以下の範囲内に、加熱温度は790℃以上850℃以下の範囲内に設定されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この特許文献1に開示のように、接合時の加熱炉内の真空度に関して、従来では、加熱炉に付属の真空度等により、到達真空度を確認している。この接合方法で初期には接合性を損なうことはないが、冷却環境と加熱環境とが繰り返されるような冷熱サイクル状態の負荷がかかると接合信頼性が悪くなる不具合が生じる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、接合条件を見直し、冷熱が繰り返される環境下でも良好な接合信頼性を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の絶縁回路基板の製造方法は、セラミックス基板と銅又は銅合金からなる銅板とをろう材を介して積層し、その積層方向に加圧した状態で加熱炉内で加熱することにより前記セラミックス基板と前記銅板とを接合して前記セラミックス基板の表面に銅層を有する絶縁回路基板を製造する方法であって、600℃以上770℃以下の温度域における前記加熱炉内の真空度を1.0×10-2Pa以下にする。
【0008】
セラミックス基板と銅板の接合であるので、接合時の接合温度は特許文献1に記載のものと同様、790℃以上850℃であり、そのときの真空度としては10-6Pa以上10-3Pa以下の範囲に設定されるが、この最高接合温度、最高真空度に到達するまでの間に、真空度が低下して所望の真空度が得られない場合がある。その真空度の低下(真空劣化)が、冷熱が繰り返される環境下での接合信頼性の低下の要因になっていると想定される。つまり、最高接合温度に到達するまでの特定の温度域において、加熱炉内にガスが発生し、そのガスの影響を受けるために真空劣化が生じているのであり、本発明者は、この真空劣化を抑制することで接合信頼性を向上できるとの認識の下、上記の発明とした。
【0009】
すなわち、本発明は、最高接合温度、最高真空度の管理は行いつつ、ガスの発生を抑制して、昇温過程における真空度、具体的には、600℃以上770℃以下の温度域における真空度が1.0×10-2Pa以下となるように制御している。また、この温度域において加熱炉内に若干のガスが発生したとしても、真空度を1.0×10-2Pa以下を確保することにより、接合信頼性を高めることができる。
【0010】
この絶縁回路基板の製造方法において、四重極型質量分析計で測定される質量数が2以上200以下のイオン強度の合計に対するH2,CO、CO2の各イオン強度の比率は、H2が20.3%以下、COが50.9%以下、CO2が4.0%以下であるとよい。
【0011】
これらのガスが所定量以上発生すると、それにより真空劣化が生じる。また、H2やCOは銅表面の酸化膜を還元し、還元により発生するH2Oが接合材の成分を酸化させるなどの不具合を引き起こす。また溶融した接合材中に侵入してボイド発生の原因ともなる。そこで、これらガスの濃度を所定値以下に制御することにより、ガスの影響を抑制して、接合信頼性を高めることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、接合時の所定温度域における真空度を制御したことにより、冷熱が繰り返される環境下でも良好な接合信頼性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の製造方法によって製造される絶縁回路基板の例を示す断面図である。
【
図2】
図1の絶縁回路基板の接合前の積層体の層構造を示す断面図である。
【
図3】
図2の積層体を加圧する加圧治具を示す正面図である。
【
図4】加圧治具に用いられる当て板を示す断面図である。
【
図6】接合工程時の温度とイオン強度及び真空度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の絶縁回路基板の製造方法の実施形態について説明する。
本実施形態の製造方法で製造された絶縁回路基板は、例えば電源回路に用いられるパワーモジュール用基板である。このパワーモジュール用基板10は、
図1に示すように、セラミックス基板11と、そのセラミックス基板11の一方の面に形成された回路層12と、セラミックス基板11の他方の面に形成された放熱層13と、を有している。
【0015】
セラミックス基板11は、回路層12と放熱層13との間の電気的接続を防止するものであって、窒化アルミニウム(AlN),窒化ケイ素(Si3N4),酸化アルミニウム(Al2O3)等を用いることができるが、そのうち、窒化ケイ素が高強度であるため、好適である。このセラミックス基板11の厚さは0.2mm以上1.5mm以下の範囲内に設定される。
【0016】
回路層12は、電気特性に優れる銅又は銅合金から構成される。また、放熱層13も銅又は銅合金から構成される。これら回路層12及び放熱層13としては、例えば、純度99.96質量%以上の無酸素銅の銅板がセラミックス基板11に例えば活性金属ろう材にてろう付け接合されることにより形成される。この回路層12及び放熱層13の厚さは0.1mm以上5mm以下の範囲内に設定される。
【0017】
このように構成されるパワーモジュール用基板10は、
図2に示すように、セラミックス基板11の両面にろう材21を介して銅板12´,13´を配置し、これらを積層する。ろう材21としては、Ag-Ti又はAg-Cu-Tiからなるろう材が用いられる。このろう材21は、箔の形態で供給してもよいし、スクリーン印刷法等によってセラミックス基板11にろう材のペーストを塗布することによって形成してもよい。
【0018】
これらろう材21を介して積層したセラミックス基板11と銅板12´,13´との積層体Sを加圧状態で加熱炉内に設置し、真空雰囲気下で接合温度に加熱した後冷却することにより、セラミックス基板11の一方の面に回路層12、他方の面に放熱層13を形成する。
この場合、加圧治具として例えば
図3に示すものが用いられる。
この加圧治具110は、ベース板111と、ベース板111の上面の四隅等に垂直に取り付けられた複数のガイドポスト112と、これらガイドポスト112の上端部に固定された固定板113と、これらベース板111と固定板113との間で上下移動自在にガイドポスト112に支持された押圧板114と、固定板113と押圧板114との間に設けられて押圧板114を下方に付勢するばね等の付勢部材115とを備えている。
【0019】
ベース板111、固定板113、押圧板114及びガイドポスト112等は、炭素繊維を複合したカーボンコンポジット材により構成される。また、固定板113と押圧板114とは、ベース板111に対して平行に配置されており、ベース板111と押圧板114との間に積層体Sが配設される。
この場合、ベース板111及び押圧板114において、積層体Sと接する側に、加圧を均一にするための当て板30が配設される。
【0020】
当て板30は、
図4に示すように、二枚のカーボンシート31の間にグラファイトシート32を挟んだ構造とされている。
カーボンシート31は、耐熱性を有する硬質のカーボン材料により平板状に形成され、3000℃程度の高温で焼成したものである。このカーボンシート31は、かさ密度が1.6Mg/m
3以上1.9Mg/m
3以下(1600kg/m
3以上1900kg/m
3以下)の比較的硬質で平滑な平面に構成される。例えば、旭グラファイト株式会社製G-347(熱伝導率:116W/mK、弾性率:10.8GPa)を用いることができる。
【0021】
一方、グラファイトシート32は、クッション性を有する軟質のグラファイト材料により、鱗片状のグラファイト薄膜が雲母のように複数枚積層されて構成されたものであり、天然黒鉛を酸処理した後にシート状に成形してロール圧延してなるものである。このグラファイトシート32は、かさ密度が0.5Mg/m3以上1.3Mg/m3以下で軟質である。例えば旭グラファイト株式会社製T-5(熱伝導率:75.4W/mK、弾性率:11.4GPa)や、東洋炭素工業株式会社製黒鉛シートPF(圧縮率47%、復元率14%)などを用いることができる。
この当て板30を積層体Sの両端面に配置する際には、カーボンシート31が積層体Sの両端面に接触する。
【0022】
そして、その積層体Sの両端面に当て板30を配置した状態で加圧治具110を用いて積層方向に加圧して、加圧治具110ごと真空雰囲気下で加熱する。
その接合条件としては、例えば0.1MPa以上3.5MPa以下の加圧力で積層体Sを加圧し、10-6Pa以上10-3Pa以下の真空雰囲気下で、例えば790℃以上850℃以下の最高接合温度で、1分~60分の加熱とする。
【0023】
この加熱処理の際、加熱炉内を昇温する過程でろう材21からの脱媒等がなされるが、600℃以上770℃以下の温度域における加熱炉内の真空度を1.0×10-2Pa以下にすることが重要である。
最高接合温度、最高真空度に到達するまでの間に、加熱炉内には、その内部の構造物、例えば加圧治具110のカーボン等からH2、CO、CO2などのガスが発生する。これらのガスが発生することで真空劣化が生じ、所望の真空度が得られない場合があることから、600℃以上770℃以下の温度域において加熱炉内の真空度を1.0×10-2Pa以下とすることにより、発生ガスの影響を軽減する。
【0024】
例えば、銅板12´,13´の表面には一般に銅の酸化膜が形成されているが、H2、COが存在すると、その酸化膜が還元され、それによりH2Oが生じ、これにより銅やろう材21に含まれている銀、チタン等が酸化されやすい状態になる。中でもチタンは酸化されやすく、銅の酸化膜の還元により生じたH2Oによって酸化されると、ろう材21中の銀周辺の分散剤起因の炭素に、酸化したチタンが吸着する。そのため、セラミックス基板(Si3N4)11の接合に寄与するチタン量が減少し、窒化チタンの生成が阻害される。また、H2、CO、CO2などのガスの発生が多くなると、ろう材層に気泡がたまり、溶湯になっても抜けきれずにボイドとなって残存するおそれがある。これらが複合して作用することにより、接合信頼性が悪くなる。
【0025】
この実施形態では、600℃以上770℃以下の温度域における加熱炉内の真空度を1.0×10-2Pa以下に確実に制御するために、例えば、加圧治具110に用いられているカーボン類について、使用前に高温に加熱することにより、カーボンからのガスを予め放出させておくようにする。具体的には、加圧治具110を例えば770℃まで加熱する(これを空焼きという)。これにより、加圧治具110からガス成分が放出される。この場合、加圧治具110のすべての部材が空焼きされる。また、加圧治具110を加熱炉に入れて空焼きすると、加熱炉内の構造物(例えばカーボン製断熱材)も空焼きされ、ガスが放出される。
【0026】
そして、実際の接合に際しては、この空焼きを経た加圧治具110及び加熱炉を用いて積層体Sを加圧して加熱する。
これにより、予めガス分が放出されているため、加熱中にガス分の影響を受けることが少なくなり、600℃以上770℃以下の温度域において真空度を1.0×10-2Pa以下とすることができる。わずかにガスが発生したとしても、その影響を少なくして、真空度を1.0×10-2Pa以下に維持することができる。550℃以上700℃以下の温度域でその真空度とするとなおよい。
【0027】
このようにして600℃以上770℃以下の温度域における真空度を制御した状態で、790℃以上850℃以下の接合温度まで上昇するとともに、その最高温度における真空度を10-6Pa以上10-3Pa以下とし、その接合温度、真空度で1分~60分保持した後、冷却することにより、セラミックス基板12に銅板12´,13´が接合され、セラミックス基板11の両面に銅層(回路層12,放熱層13)を形成した絶縁回路基板10が形成される。
この絶縁回路基板10は、その接合工程でガスの影響が低減されているので、接合信頼性が高く、接合初期だけでなく、長期に安定した接合性を有することができる。
なお、加圧治具110は、複数回使用することが可能であるが、使用のたびに空焼き工程を実施してから用いるとよい。
【0028】
本発明は、上記実施形態の構成のものに限定されるものではなく、細部構成においては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
加圧治具110を加熱炉内で空焼きすることとしたが、これに加えて、加熱炉内でのカーボン製部品の使用を制限することも有効である。例えば、加熱炉内の断熱材を金属製に変えるなどにより、加熱炉内のカーボン製部品を少なくする。
また、実施形態では絶縁回路基板としてパワーモジュール用基板10を説明したが、パワーモジュール用基板以外の絶縁回路基板にも適用可能である。
【実施例0029】
Si3N4からなるセラミックス基板(40mm×40mm×0.32mmt)の一方の面に、純度99.99質量%以上の無酸素銅(OFC)からなる銅板(37mm×37mm×0.3mmt)をAg-8.8質量%Tiからなるろう材ペーストを介して積層し、実施形態で説明した加圧治具により1.5MPaの加圧力で積層体を加圧し、10-5Pa以下の真空雰囲気下で約825℃の接合温度に30分加熱した後、冷却して絶縁回路基板を作製した。このとき、加熱炉内の断熱材として、金属製、カーボン製の2種類用意し、また、カーボン製断熱材については事前に空焼きしたものと空焼きしなかったものとを用いた。加圧治具についても、空焼きしたものと空焼きしなかったものとの二種類使用した。
【0030】
また、600℃以上770℃以下の温度域における最高真空度、及び最高接合温度とその温度における真空度をそれぞれ測定した。
また、600℃以上770℃以下の温度域において、加熱炉内のH
2濃度、CO濃度、CO
2濃度を測定した。測定に際しては、
図5に試験装置を示したように、加熱炉51のポート52に株式会社アルバック製四重極型質量分析計53(Qulee with YTP 型式BGM-202)を接続し、ポート52をターボ分子ポンプ54で真空引きしながら、加熱炉51内のガス成分を分析した。真空度はポート52に接続したペニングゲージ55(大亜真空株式会社製CT-3DA)で測定した。この場合、加熱炉51には真空引き配管56に油拡散ポンプ57が設けられており、ガス分析のためのポート52は油拡散ポンプ57の反対側に設置される。
【0031】
そして、四重極型質量分析計53によりイオン強度を10秒ごとに測定し、加熱炉51内のガス成分のイオン強度比を算出した。四重極型質量分析計53によりイオン強度を測定される質量数が2以上200以下のイオン強度の合計に対するH2,CO,CO2の各イオン強度の比率(各イオン強度/質量数が2以上200以下の全イオン強度の合計×100)で算出した。600℃以上770℃以下の温度域での最大値を表1に示す。
【0032】
そして、接合された絶縁回路基板について、-40℃~150℃、2000サイクルの条件で冷熱サイクル試験を行い、試験後の絶縁回路基板のセラミックス基板と銅層との接合面を超音波探傷し、その超音波探傷像を二値化処理して、剥離部分を除く接合された面積を求め、これを接合すべき界面の面積で割ることにより、接合率を求めた。
これらの結果を表1に示す。
【0033】
【0034】
表1に示すように、加熱炉の昇温過程において、600℃以上770℃以下の温度域で1.0×10-2Pa以下の真空度に制御した実施例1及び2は、接合直後だけでなく、冷熱サイクル負荷の後でも接合率の低下が少なく、優れた接合信頼性を維持していた。この場合、加圧治具の空焼きとともに加熱炉内の断熱材を金属に変える、あるいはカーボン製断熱材を空焼きすることが有効であることがわかる。
【0035】
図6は、実施例1における加熱炉内温度と真空度及び各ガス成分のイオン強度の推移を示すグラフであり、左縦軸がイオン強度(A)、右縦軸が真空度(Pa)、横軸が温度(℃)である。また、ペニングゲージの圧力値の変遷も同時に示している。
この
図6からわかるように、770℃までの間に各ガス成分のイオン強度が高くなっており、加熱炉51内にガスが放出されているが、そのときの真空度は1.0×10
-2Pa以下である。
【0036】
これに対して、600℃以上770℃以下の温度域での真空劣化が大きく、1.0×10-2Paを超える真空度であった比較例1及び2は、接合初期の接合信頼性には優れるものの、冷熱サイクル負荷の後には接合率が低下し、接合信頼性に劣っている。この場合、加熱炉内のカーボン製断熱材を空焼きしても、加圧治具を空焼きすることなく使用すると、真空劣化して、冷熱サイクル後の接合信頼性が悪化する。