(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156599
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】噴霧装置及びこれを用いた塗装方法
(51)【国際特許分類】
B05B 7/04 20060101AFI20221006BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20221006BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B05B7/04
B05D7/24 301B
B05D3/00 D
B05D7/24 303E
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060374
(22)【出願日】2021-03-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】503330990
【氏名又は名称】株式会社YOOコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若間 麻美
(72)【発明者】
【氏名】横田 雅美
(72)【発明者】
【氏名】若間 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】山田 治男
【テーマコード(参考)】
4D075
4F033
【Fターム(参考)】
4D075AA06
4D075AA76
4D075AA81
4D075AA84
4D075AA85
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA06
4D075DB13
4D075DC01
4D075DC02
4D075DC15
4D075DC18
4D075DC36
4D075DC38
4D075EA07
4D075EC08
4F033QA01
4F033QB02Y
4F033QB03X
4F033QB12Y
4F033QB18
4F033QC01
4F033QD04
4F033QD14
4F033QE06
4F033QE14
4F033QF01X
4F033QF07Y
(57)【要約】
【課題】リン酸チタニウム系化合物を含む溶液を噴霧する際に、噴霧口が詰まりにくく、かつ液だれが生じにくい、噴霧装置及びこれを用いた塗装方法を提供する。
【解決手段】リン酸チタニウム系化合物を含む溶液を対象物に吹き付けるための噴霧装置1であって、噴霧口43から溶液をミスト状に噴霧する二流体ノズル4と、二流体ノズル4に対して溶液を供給する液体貯留部2と、二流体ノズル4に対して圧縮空気を供給すると共にコンプレッサが接続される圧縮気体供給部3と、を備える。二流体ノズル4は、噴霧口43の直径が0.5mm以上でかつミストの平均粒子径が11μm以下に設定されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸チタニウム系化合物を含む溶液を対象物に吹き付けるための噴霧装置であって、
噴霧口から前記溶液をミスト状に噴霧する二流体ノズルと、
前記二流体ノズルに対して前記溶液を供給する液体貯留部と、
前記二流体ノズルに対して圧縮空気を供給すると共にコンプレッサが接続される圧縮気体供給部と、
を備え、
前記二流体ノズルは、前記噴霧口の直径が0.5mm以上でかつミストの平均粒子径が11μm以下に設定されている、
噴霧装置。
【請求項2】
前記二流体ノズルは、
前記圧縮気体供給部に対して0.5MPaの圧縮気体を供給すると、前記噴霧口から噴霧されるミストの平均粒子径が10μm以上11μm以下となるように構成されている、
請求項1記載の噴霧装置。
【請求項3】
前記二流体ノズルのスプレーパターンが、円錐形状のスプレーパターンである、
請求項1又は請求項2記載の噴霧装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の噴霧装置を用いて、リン酸チタニウム系化合物を含む溶液を対象物に吹き付ける塗装方法であって、
前記噴霧装置の前記圧縮気体供給部に対して、0.4MPa以上0.6MPa以下の圧縮気体を供給する工程と、
前記対象物に対し、290mm以上310mm以下の距離から前記溶液を噴霧する工程と、
を含む、
塗装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴霧装置及びこれを用いた塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来の噴霧装置が記載されている。特許文献1記載のスプレーガンは、圧縮気体が供給される気体供給口と、液体が供給される液体供給口と、液体を霧状に吐出する霧化気体用開口部と、を備える。気体供給口に圧縮気体が供給されると、流路を流れる圧縮気体の作用によって液体供給口から液体が取り込まれ、霧化気体用開口部から霧状の液体が吐出される。
【0003】
霧化気体用開口部の開口直径は、1.0mm以上3.0mm未満に設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、スプレーガンの噴霧口の直径が1.0mm以上3.0mm未満に設定されていると、溶液に含まれる粒子が詰まりにくい。しかし、特許文献1記載のスプレーガンでは、ミストが、対象物の表面で水滴になりやすく、対象物に液だれが生じやすいという問題がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、リン酸チタニウム系化合物を含む溶液を噴霧する際に、噴霧口が詰まりにくく、かつ液だれが生じにくい、噴霧装置及びこれを用いた塗装方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る一態様の噴霧装置は、リン酸チタニウム系化合物を含む溶液を対象物に吹き付けるための噴霧装置である。噴霧装置は、噴霧口から前記溶液をミスト状に噴霧する二流体ノズルと、前記二流体ノズルに対して前記溶液を供給する液体貯留部と、前記二流体ノズルに対して圧縮空気を供給すると共にコンプレッサが接続される圧縮気体供給部と、を備え、前記二流体ノズルは、前記噴霧口の直径が0.5mm以上でかつミストの平均粒子径が11μm以下に設定されている。
【0008】
本発明に係る一態様の噴霧装置では、上記態様において、前記二流体ノズルは、前記圧縮気体供給部に対して0.5MPaの圧縮気体を供給すると、前記噴霧口から噴霧されるミストの平均粒子径が10μm以上11μm以下となるように構成されていることが好ましい。なお、ここでいう「0.5MPaの圧縮気体を供給する」とは、気体供給装置(例えば、コンプレッサ)での設定値を意味する。このため、二流体ノズルに入力される圧縮気体の圧力の実際の数値には、数パーセント程度の誤差がある場合がある。
【0009】
本発明に係る一態様の噴霧装置では、上記態様において、前記二流体ノズルのスプレーパターンが、円錐形状のスプレーパターンであることが好ましい。
【0010】
本発明に係る一態様の塗装方法は、上記噴霧装置を用いて、リン酸チタニウム系化合物を含む溶液を対象物に吹き付ける塗装方法である。塗装方法は、前記噴霧装置の前記圧縮気体供給部に対して、0.4MPa以上0.6MPa以下の圧縮気体を供給する工程と、前記対象物に対し、290mm以上310mm以下の距離から前記溶液を噴霧する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る上記態様の噴霧装置及びこれを用いた塗装方法は、リン酸チタニウム系化合物を含む溶液を噴霧する際に、噴霧口が詰まりにくく、かつ液だれが生じにくい、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明に係る一実施形態の噴霧装置の正面図である。
【
図2】
図2は、同上の噴霧装置の二流体ノズル周辺における一部を破断した拡大図である。
【
図3】
図3は、同上の二流体ノズルのスプレーパターンの概略図である。
【
図4】
図4(A)は、実施例の噴霧装置を用いて塗装したガラス板の正面図である。
図4(B)は、比較例の噴霧装置を用いて塗装したガラス板の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態>
(1)全体
本実施形態に係る噴霧装置1は、リン酸チタニウム系化合物を含む溶液を対象物に吹き付けるための装置である。溶液は、リン酸チタニウム系化合物を有効成分とする溶液である。リン酸チタニウム系化合物は、具体的には、Ti(OH)x(PO4)y(HPO4)z(H2PO4)l(OR)m(Rは炭素数1~4のアルキル基、x=0,1,2,3、y=0,1,2,3,4、z=0,1,2,3,4、l=0,1,2,3,4およびm=0,1,2,3であり、x+3y+2z+l+m=4を満たす)により表される化合物である。このように表される化合物の一種又は二種以上の化合物を、本明細書にいう「リン酸チタニウム系化合物」と定義する。
【0014】
「リン酸チタニウム系化合物」にはその縮合体も含まれる。縮合体としては、例えば、上記するリン酸チタニウム系化合物が、2~10分子程度縮合した化合物が挙げられる。
【0015】
リン酸チタニウム系化合物の製造方法としては、特に制限はなく、公知の製造方法(例えば、特開2002-308712等に記載された製造方法)を採用することができる。一例としては、四塩化チタンの加水分解物とリン酸とを反応させる事によって、上記リン酸チタニウム系化合物を得ることができる。すなわち、上記リン酸チタニウム系化合物とは、四塩化チタン加水分解物のリン酸化物(Phosphorylation of titanium tetrachloride hydrolyzate)と言うこともできる。本実施形態に用いりリン酸チタニウム系化合物を含む溶液は、沈殿物がなく無色透明である。
【0016】
リン酸チタニウム系化合物を含む溶液を対象物に吹き付けることで、光照射なしで、消臭、防汚、抗菌及び防カビの効果を対象物に及ぼすことができる。また、リン酸チタニウム系化合物の溶液には、抗ウイルス剤を含んでもよい。
【0017】
溶液を吹き付ける対象物としては、特に制限はないが、例えば、OA機器、家電、空調機器、掃除機、机、椅子、ソファー、ベンチ、窓、壁、床、天井、つり革、ハンドル、シート、自動改札機、自動券売機、自動販売機、扉、柵、手摺、食器、調理用具、包装フィルム、包装袋、瓶、ボトル、包装パック、シンク、便器、文房具、書籍、棚、歯ブラシ、鏡、空調フィルター、マスク、コート、ジャケット、ズボン、スカート、病衣、白衣、手術衣、ワイシャツ、ニットシャツ、ブラウス、セーター、カーディガン、ナイトウエア、肌着、下着、オムツ、サポーター、靴下、タイツ、ストッキング、帽子、スカーフ、マフラー、襟巻き、ストール、手袋、服の裏地、服の芯地、服の中綿、作業着、ユニフォーム、学童用制服等の衣料、カーテン、アミ戸、布団地、布団綿、布団カバー、枕カバー、シーツ、マット、カーペット、タオル、ハンカチ、壁布、バンドエイド、包帯等が挙げられる。
【0018】
本実施形態に係る噴霧装置1は、溶液を対象物の一面(「吹付け面」という場合がある)に吹き付けた際、吹付け面に対して適切な量を吹き付けながらも、吹付け面に液だれが生じるのを防ぐことができる。これによって、乾燥後において、吹付け面に、溶液の厚みのムラができるのを抑制できる。吹付け面に溶液の厚みのムラが生じると、対象物の見栄えを損なう上に、例えば、抗ウイルス剤を含む溶液の場合には、ウイルスが接触しても不活化しない可能性がある。
【0019】
噴霧装置1は、
図1に示すように、液体貯留部2と、圧縮気体供給部3と、二流体ノズル4と、を備える。
【0020】
(2)液体貯留部
液体貯留部2は、貯留された溶液を二流体ノズル4に対して供給する部分である。液体貯留部2としては、例えば、ボトル状の容器、缶、袋、カップ、ボンベ等が挙げられるが、本実施形態では、ボトル状の容器で構成されている。液体貯留部2は、容器本体21と、キャップ22と、配管23と、配管保持部24と、継手25と、を備える。
【0021】
容器本体21は、溶液を貯留する容器である。容器本体21は、透明であり、胴部212に目盛り211が設けられている。溶液の液面と目盛り211とを照らし合わせることによって、容器本体21に貯留された溶液の量を把握することができる。
【0022】
容器本体21の材質としては、特に制限はなく、例えば、合成樹脂、金属、ガラス等が挙げられる。合成樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ナイロン、塩化ビニル等が挙げられる。本実施形態に係る容器本体21は、透明であるが、透明でなくてもよい。なお、ここでいう「透明」とは、貯留された溶液の液面が視認できる程度に透明であればよく、半透明も含む。貯留された溶液の液面が視認できれば、透明度に制限はなく、容器の透明度が、例えば、5%程度でも「透明」の範疇である。
【0023】
キャップ22は、容器本体21の口部213に対して、取外し可能に取り付けられる。口部213に対するキャップ22の取付けは、例えば、ねじ込み、嵌め込み、差し込み、スナップフィット構造、中心軸に直交する方向へのスライド等により実現される。本実施形態に係るキャップ22は、口部213に対してねじ込みによって取り付けられる。キャップ22は、
図2に示すように、ボディ221と、天板部222と、ボス部223と、を備える。
【0024】
ボディ221は、口部213にねじ込まれる部分であり、円筒状に形成されている。天板部222は、ボディ221の軸方向の開口面側とは反対側の端部を閉じる部分である。天板部222の中央には、貫通穴が形成されている。ボス部223は、貫通穴の外周部から容器本体21の中心軸に沿って容器本体21側に突出している。ボス部223は、天板部222に対し、溶接、接着、一体成形等により固定されている。
【0025】
配管23は、容器本体21に貯留された溶液を吸い込み、二流体ノズル4に送る送液路を構成する。配管23は、本実施形態では、チューブであるが、例えば、合成樹脂、金属、ガラス等によって構成されてもよい。配管23は、キャップ22に対して配管保持部24を介して固定されている。配管23は、容器本体21の内部から二流体ノズル4まで延びていてもよいが、例えば、継手25の途中まで延びてもよい。この場合、配管23と継手25によって、送液路が構成される。
【0026】
配管保持部24は、ボス部223にねじ込まれており、配管23を保持する。配管保持部24は、本実施形態では、チューブ継手により構成されているが、例えば、ゴム栓等で構成されてもよい。
【0027】
継手25は、容器を二流体ノズル4に対して接続する。継手25は、中心軸方向の一端部が、ボス部223に取り付けられ、他端部が二流体ノズル4に接続される。継手25の中心軸方向の一端部は、ボス部223に取り付けられると共に配管23に接続される。これにより、継手25の内部を通して、容器本体21の内部と二流体ノズル4とが通じる。
【0028】
(3)圧縮気体供給部
圧縮気体供給部3は、コンプレッサからの圧縮気体(例えば、圧縮空気)を取り込み、かつ当該圧縮気体を二流体ノズル4に供給する。圧縮気体としては、空気のほか、不活性ガスであってもよい。ここでは、圧縮気体の一例として、圧縮空気を例示して説明する。
【0029】
圧縮気体供給部3は、取付け部31と、エアガン32と、を備える。取付け部31は、例えば、継管(ニップル)で構成されているが、二流体ノズル4に対してエアガン32を取り付けることができれば、特に制限はなく、例えばエルボ継手等で構成されてもよい。
【0030】
エアガン32は、取付け部31によって二流体ノズル4に取り付けられる。エアガン32は、一端部に握り部326が形成された略L字状のガン本体321と、接続部322と、出力部323と、空気流路324と、トリガ325と、を備える。
【0031】
接続部322は、エアガン32において、圧縮空気が入力される部分である。本実施形態に係る接続部322は、握り部326の端部に取り付けられたカプラで構成されている。接続部322は、コンプレッサのホースが取外し可能に取り付けられる。
【0032】
出力部323は、接続部322から入力された圧縮空気が出る部分である。出力部323は、ガン本体321の接続部322とは反対側の端部に形成された開口で構成されている。出力部323には、取付け部31が取り付けられる。
【0033】
空気流路324は、ガン本体321の内部に形成されており、出力部323と接続部322とを通じさせる。
【0034】
トリガ325は、第一位置と第二位置との間で移動可能であり、空気流路324を流れる圧縮空気の通過の許可と不許可とを切り替える。本実施形態に係るトリガ325は、ガン本体321に対して、軸支されている。トリガ325が第一位置にあると、空気流路324が遮断され、出力部323からの圧縮空気が停止する。トリガ325が第二位置にあると、接続部322と出力部323とが通じ、圧縮空気が出力部323から出る。トリガ325は、トリガ325に対して力を加えない状態では、第一位置に位置しており、ユーザがトリガ325に対して第二位置に向かって力を加えることで、第二位置に切り替えられる。
【0035】
このため、ユーザは、握り部326を握り、トリガ325を引いてトリガ325を第二位置に切り替えると、接続部322と出力部323とが通じ、圧縮空気が出力部323から出る。一方、トリガ325を放すと、トリガ325は第一位置に切り替えられ、出力部323からの圧縮空気が停止する。なお、トリガ325は、本実施形態ではレバー方式であるが、例えば、押ボタンスイッチ方式等、他の方式であってもよい。
【0036】
(4)二流体ノズル
二流体ノズル4は、噴霧口43から溶液をミスト状に噴霧するスプレーノズルである。二流体ノズル4は、気体供給口41と、液体供給口42と、複数の噴霧口43と、を有し、これらは互いに内部の流路で通じている。液体供給口42には、液体貯留部2の継手25が接続され、気体供給口41には、圧縮気体供給部3の取付け部31が接続される。
【0037】
二流体ノズル4は、複数の噴霧口43によって、
図3に示すように、円錐形状のスプレーパターンSPを形成する。円錐形状のスプレーパターンSPとしては、中空の円錐形状、及び中実の円錐形状のいずれであってもよいが、ここでは中空の円錐形状のスプレーパターンSPが採用されている。また、噴霧角度αは、α=55°以上70°以下であることが好ましく、より好ましくは、α=60°である。ここでいう「噴霧角度」とは、スプレーパターンSPの中央線を通り、かつ当該中央線に平行な一平面上において、最も外側を通るミストでなす角度を意味する。
【0038】
各噴霧口43の直径は、0.5mm以上である(本実施形態に係る噴霧口43の直径は0.5mm)。噴霧口43の直径が0.5mm未満であると、リン酸チタニウム系化合物を含む溶液を噴霧する際に、噴霧口43に粒子が詰まりやすい。一般に、噴霧口43が大きくなるほど、噴霧するミストの平均粒子径が大きくなるが、本実施形態に係る二流体ノズル4では、ミストの平均粒子径が11μm以下となるように設定されている。
【0039】
ミストの平均粒子径が11μmを超えると、対象物の一面に溶液を吹き付けた際、液だれが生じやすい。したがって、本実施形態に係る二流体ノズル4では、溶液が詰まりにくい上に、対象物の一面に溶液を吹き付けた際、液だれが生じにくい。
【0040】
ここで、本明細書でいう「平均粒子径」は、二流体ノズル4から噴霧されたミストに対して、レーザーを用いた位相ドップラー粒子分析計を用い、噴霧口43から噴霧方向に300mm離れた位置におけるミストの粒子径分布を測定したときのザウター平均粒子径を意味する。ミストの平均粒子径は、二流体ノズル4に供給される空気圧に応じて変化するが、本明細書でいう「ミストの平均粒子径が11μm以下」とは、通常使用される圧力での平均粒子径が11μm以下であることを意味する。本実施形態に係る二流体ノズル4では、供給される空気圧が、0.245MPa以上0.6MPa以下の範囲では、いずれの空気圧でも平均粒子径が11μm以下となるように設定されている。
【0041】
また、二流体ノズル4は、噴霧量が2.0L/hr以上であることが好ましい。これによって、作業効率が損なわれるのを防ぐことができる。
【0042】
二流体ノズル4の材質としては、特に制限はないが、例えば、ステンレス鋼、ポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイド、硬質塩化ビニル、耐熱塩化ビニル、ポリテトラフルオロチレン、ポリエチレン、ポリアミド等が挙げられる。
【0043】
(5)方法
次に、本実施形態に係る噴霧装置1を用いて、リン酸チタニウム系化合物を含む溶液を対象物に吹き付ける塗装方法を説明する。塗装方法は、準備工程と、塗装工程と、を備える。
【0044】
準備工程は、塗装の準備を行う工程である。準備工程では、液体貯留部2にリン酸チタニウム系化合物を含む溶液を入れ、噴霧装置1の接続部322に対し、コンプレッサのホースを接続する。そして、コンプレッサの設定値の圧力を、所定の圧力に設定する。ここでいう「所定の圧力」とは、噴霧装置1の噴霧中において、ミストの平均粒子径として、11μm以下が得られるような圧力を意味する。実際の噴霧中は、後述するように、ここでの設定値から数パーセント低下した数値になる。本実施形態では、所定の圧力として、0.4MPa以上0.6MPaが好ましく、具体的な一例として、0.6MPaが挙げられる。
【0045】
塗装工程は、噴霧装置1を用いて、対象物に溶液を吹き付ける工程である。ユーザは、エアガン32の握り部326を握り、噴霧口43を、対象物に対して、290mm以上310mm以下の距離、好ましくは300mmの距離となるように位置させる。
【0046】
この状態で、トリガ325を引いて第二位置に切り替え、噴霧口43から溶液を噴霧する。すると、コンプレッサの圧力は0.5MPaに下がるが、このまま、噴霧装置1による噴霧を継続すればよい。コンプレッサの圧力が0.5MPaのときの、噴霧口43から噴霧されるミストの平均粒子径は、10μm以上11μm以下となるように設定されているため、対象物に吹き付けられるミストは水滴になりにくく、液だれになりにくい。
【0047】
ユーザは、トリガ325を第二位置に保ったまま、噴霧装置1を平行移動させ、対象物の一面全体に塗装を行う。これによって、対象物に対して、液だれが生じない適切な塗装を行うことができ、乾燥した溶液の厚さにムラが生じない。
【0048】
(6)試験
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。ただし、本発明に係る噴霧装置は、以下の実施例に限定されない。
【0049】
実施例に係る噴霧装置と、比較例に係る噴霧装置と、を用いて、ガラス面に対して、溶液を吹き付ける試験を行った。
【0050】
実施例に係る噴霧装置は、上記実施形態に係る噴霧装置と同じ構成である。二流体ノズルは、噴霧口の直径が0.5mmであり、0.5MPaの圧縮空気を供給したときの平均粒子径が10.5μmに設定されている。噴霧装置に対して、コンプレッサから圧力0.5MPaの圧縮空気を供給した。
【0051】
比較例に係る噴霧装置は、カップガン(アネスト岩田製 品番:LPH50062G+PC-4S)を用いた。ノズルの噴霧口の直径は0.6mmである。カップガンに対して、コンプレッサから、圧力0.5MPaの圧縮空気を供給した。
【0052】
溶液として、リン酸チタニウム系化合物を含む溶液10ccを用い、実施例に係る噴霧装置と比較例に係る噴霧装置とを使用して、それぞれ、ガラス板に対して、ガラス板から300mm離れた位置から吹き付けた。
【0053】
その後、ガラス板の様子を撮影した。
図4(A)には、実施例に係る噴霧装置を用いて吹き付けた様子を示し、
図4(B)には、比較例に係る噴霧装置を用いて吹き付けた様子を示す。
【0054】
図4(A),
図4(B)からわかるように、実施例に係る噴霧装置を用いて溶液を吹き付けても、溶液のミストが水滴にならず、液だれが生じていないのに対し、比較例に係る噴霧装置を用いて溶液を吹き付けると、溶液のミストが水滴になり、一部液だれが生じた。このことからわかるように、ノズルとして、噴霧口の直径が0.5mm以上でかつミストの平均粒子径が11μm以下に設定されたものを用いると、液だれが生じにくいことがわかった。
【0055】
<変形例>
上記実施形態は、本発明の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態は、本発明の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下、実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0056】
上記実施形態に係る圧縮気体供給部3は、取付け部31と、エアガン32とで構成されたが、本発明では、エアガン32はなくてもよく、例えば、二流体ノズル4に対して、コンプレッサにつながるホースを接続する継手25のみで構成されてもよい。
【0057】
本明細書にて、「略平行」、又は「略直交」のように「略」を伴った表現が、用いられる場合がある。例えば、「略平行」とは、実質的に「平行」であることを意味し、厳密に「平行」な状態だけでなく、数度程度の誤差を含む意味である。他の「略」を伴った表現についても同様である。
【0058】
また、本明細書において「端部」及び「端」などのように、「…部」の有無で区別した表現が用いられている。例えば、「端」は物体の末の部分を意味するが、「端部」は「端」を含む一定の範囲を持つ域を意味する。端を含む一定の範囲内にある点であれば、いずれも、「端部」であるとする。他の「…部」を伴った表現についても同様である。
【0059】
<効果>
このように、本実施形態に係る噴霧装置1では、二流体ノズル4が、噴霧口43の直径が0.5mm以上でかつミストの平均粒子径が11μm以下に設定されているため、リン酸チタニウム系化合物を含む溶液を対象物に吹き付けた際、対象物の一面において、液だれやムラが生じにくい。したがって、本実施形態に係る噴霧装置1は、リン酸チタニウム系化合物を対象物に吹き付けることに適している。
【0060】
また、二流体ノズル4は、圧縮気体供給部3に対して0.5MPaの圧縮気体を入れると、噴霧口43から噴霧されるミストの平均粒子径が10μm以上11μm以下となるように構成されているため、適切な噴霧量を確保しながら、液だれやムラが生じにくくできる。
【0061】
また、二流体ノズル4のスプレーパターンSPが、円錐形状のスプレーパターンSPであるため、吹き付けた際の面積を広くすることができ、作業効率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0062】
1 噴霧装置
2 液体貯留部
3 圧縮気体供給部
4 二流体ノズル
43 噴霧口
SP スプレーパターン
【手続補正書】
【提出日】2021-06-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸チタニウム系化合物を含む溶液を対象物に吹き付けるための噴霧装置であって、
噴霧口から前記溶液をミスト状に噴霧する二流体ノズルと、
前記二流体ノズルに対して前記溶液を供給する液体貯留部と、
前記二流体ノズルに対して圧縮空気を供給すると共にコンプレッサが接続される圧縮気体供給部と、
を備え、
前記二流体ノズルは、
前記噴霧口の直径が0.5mm以上3.0mm未満で、かつ
前記圧縮気体供給部に対して0.5MPaの圧縮気体を供給すると、前記噴霧口から噴霧されるミストの平均粒子径が10μm以上11μm以下となるように構成されている、
噴霧装置。
【請求項2】
前記二流体ノズルのスプレーパターンが、円錐形状のスプレーパターンである、
請求項1記載の噴霧装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の噴霧装置を用いて、リン酸チタニウム系化合物を含む溶液を対象物に吹き付ける塗装方法であって、
前記噴霧装置の前記圧縮気体供給部に対して、0.4MPa以上0.6MPa以下の圧縮気体を供給する工程と、
前記対象物に対し、290mm以上310mm以下の距離から前記溶液を噴霧する工程と、
を含む、塗装方法。