(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156608
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】化粧シート及びそれを用いた化粧板
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20221006BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20221006BHJP
E04F 13/07 20060101ALI20221006BHJP
E04F 13/08 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B27/18 A
E04F13/07 B
E04F13/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060389
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】冨永 孝史
(72)【発明者】
【氏名】折原 隆史
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 真友子
【テーマコード(参考)】
2E110
4F100
【Fターム(参考)】
2E110AA28
2E110AA57
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2E110AB13
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(57)【要約】
【課題】例えば、玄関ドアやエクステリア用の化粧シート及びそれを用いた化粧板に関し、1つの工程でのインライン化が可能であり、シート層間での剥離や表面白化を防止できる。
【解決手段】透明オレフィン樹脂から構成される透明原反層11の裏面側には、絵柄を印刷した印刷絵柄層12、着色層13、プライマー層14が順に形成され、透明原反層11の表面側に、表面保護層15が形成され、透明原反層11と表面保護層15とには、紫外線吸収剤及び光安定剤が添加され、透明原反層11の表面側及び裏面側のいずれにも、他のフィルムからなるラミネート層を有しない。また、透明原反層11には、少なくともベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤又は、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤のいずれかを含み、透明原反層11のいずれかの紫外線吸収剤は、オレフィン樹脂の100の質量部に対して0.1質量部以上2質量部以下としても良い。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明オレフィン樹脂から構成される透明原反層の裏面側には、絵柄を印刷した印刷絵柄層、着色層、プライマー層が順に形成され、
前記透明原反層の表面側に、表面保護層が形成され、
前記透明原反層と前記表面保護層とには、紫外線吸収剤及び光安定剤が添加され、
前記透明原反層の表面側及び裏面側のいずれにも、他のフィルムからなるラミネート層を有しないことを特徴とする化粧シート。
【請求項2】
前記透明原反層には、少なくともベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤又はヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤のいずれかを含み、
前記透明原反層のいずれかの紫外線吸収剤は、オレフィン樹脂の100の質量部に対して0.1質量部以上2質量部以下であることを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
前記表面保護層には、少なくともヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤を含み、
前記ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤は、前記表面保護層を形成するアクリル系樹脂組成物の100の質量部に対して1質量部以上30質量部以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の化粧シート。
【請求項4】
前記印刷絵柄層、前記着色層及び前記プライマー層には、少なくともポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリアルキレングリコール、アクリルポリオール又はポリイソシアネートのいずれかのウレタン樹脂をバインダー樹脂として含有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の化粧シート。
【請求項5】
前記表面保護層の表面側には、エンボス部が形成されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の化粧シート。
【請求項6】
前記印刷絵柄層は、単色であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の化粧シート。
【請求項7】
前記着色層は、透明又は半透明であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の化粧シート。
【請求項8】
前記化粧シートの前記プライマー層の側には、基材が接着されていることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の化粧シートを用いた化粧板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、玄関ドアやエクステリア用の化粧シート及びそれを用いた化粧板に関し、1つの工程でのインライン化が可能であり、シート層間での剥離や表面白化を防止できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
従来、熱可塑性樹脂によりシート状に形成された印刷原反と、印刷原反の表面上に形成された絵柄印刷層と、絵柄印刷層とを含む印刷原反の表面を、凹凸状に加工して形成された凹凸模様と、凹凸模様の表面を印刷原反と同等の樹脂によりラミネートするラミネート層とからなる化粧シートが知られている(特許文献1の段落[0007]及び
図1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の化粧シートは、印刷工程とラミネート工程との複数工程が必要になり、1つの工程でのインライン化が困難であり、製造コストが高価になるという第一の問題点があった。
また、従来の化粧シートでは、ラミネート層が、長期間の使用により、シート層間で剥がれるおそれがあるという第二の問題点がある。
本発明は、上記した第一、第二の問題点に鑑み、ラミネート層を有しないことで、1つの工程でのインライン化が可能であり、シート層間での剥離や表面白化を防止できるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る化粧シートは、透明オレフィン樹脂から構成される透明原反層の裏面側に、絵柄を印刷した印刷絵柄層、着色層、プライマー層が順に形成され、前記透明原反層の表面側に、表面保護層が形成され、前記透明原反層と前記表面保護層とには、紫外線吸収剤及び光安定剤が添加され、前記透明原反層の表面側及び裏面側のいずれにも、他のフィルムからなるラミネート層を有しないことを特徴とする。
【0006】
また、本発明の一態様に係る化粧シートは、前記透明原反層に、少なくともベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤又は、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤のいずれかを含み、前記透明原反層のいずれかの紫外線吸収剤は、オレフィン樹脂の100の質量部に対して0.1質量部以上2質量部以下であることを特徴とする。
本発明の一態様に係る化粧シートは、前記表面保護層に、少なくともヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤を含み、前記ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤は、前記表面保護層を形成するアクリル系樹脂組成物の100の質量部に対して1質量部以上30質量部以下であることを特徴とする。
【0007】
本発明の一態様に係る化粧シートは、記印刷絵柄層、前記着色層及び前記プライマー層には、少なくともポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリアルキレングリコール、アクリルポリオール又はポリイソシアネートのいずれかのウレタン樹脂をバインダー樹脂として含有することを特徴とする。
本発明の一態様に係る化粧シートは、前記表面保護層の表面側に、エンボス部が形成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様に係る化粧シートは、前記印刷絵柄層が、単色であることを特徴とする。
本発明の一態様に係る化粧シートは、前記着色層が、透明又は半透明であることを特徴とする。
本発明の一態様に係る化粧板は、前記化粧シートの前記プライマー層の側に、基材が接着されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、1つの工程でのインライン化が可能であり、シート層間での剥離や表面白化を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態1に係わる化粧シート及び基材部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態1)
本発明の実施形態について、以下に
図1を参照して説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内であって、種々の変更を加えることができる。
【0012】
(実施形態1に係わる化粧シート10)
図1中、10は、化粧シートであり、化粧シート10は、図示しないが、例えば玄関ドアやエクステリアなどに使用する。
また、化粧シート10は、例えば玄関ドアやエクステリアなどの金属製の基材部20に接着し、化粧板30を製造する。
【0013】
(化粧シート10)
化粧シート10は、
図1に示すように、透明原反層11を中心に構成され、その裏面側に、(1)印刷絵柄層12、(2)着色層13、(3)プライマー層14が順に形成されている。
透明原反層11の表面側には、(4)表面保護層15が形成されている。
なお、透明原反層11のほか、(1)~(4)については後述する。
化粧シート10の構成は、透明原反層11のほか、(1)~(4)に限定されず、表面保護層15側に位置するエンボス部16を形成しても良い。
【0014】
(基材部20)
基材部20は、例えばアルミ製である。
なお、基材部20として、アルミ製を例示したが、アルミ製に限定されず、例えば鋼板、ステンレス性等の金属製でも良い。
基材部20は、
図1に示すように、基材21を中心に構成され、その表面側に接着剤を塗布した接着剤層22が形成されている。
【0015】
(「他のフィルムからなるラミネート層を有しない」点について)
透明原反層11の表面側及び裏面側のいずれにも、他のフィルムからなるラミネート層を有しない。
すなわち、基本的に透明原反層11を中心にした単層フィルムを意味する。
ここで、「透明原反層11の表面側及び裏面側のいずれにも」の「表面側」は、表面保護層15の表面側、或いは透明原反層11と表面保護層15との間を意味する。「他のフィルム」は、表面保護層15以外が無いことを意味する。
また、「裏面側」は、プライマー層14の裏面側、或いは透明原反層11とプライマー層14との間を意味する。「他のフィルム」は、印刷絵柄層12、着色層13、プライマー層14以外が無いことを意味する。
【0016】
「他のフィルムからなるラミネート層」としては、後述する比較例1に記載されているように、図示しないが、「透明オレフィン樹脂層」をいい、「透明オレフィン樹脂層」を以下、「ラミネート層」ともいう。「ラミネート層」として、「透明オレフィン樹脂層」を例示したが、着色でも該当する。
「透明オレフィン樹脂層」(ラミネート層)は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(BASFジャパン(株)製の「チヌビン326」)を、0.5質量部と、光安定剤(BASFジャパン(株)の「キマソーブ2020」)とを、0.5質量部添加した透明ホモポリプロピレン樹脂(プライムポリマー製の「プライムPP」)と、無水マレイン酸による変性により官能基を付与した接着性樹脂(三井化学(株)製の「アドマーSE800」)とを、共押出ラミネート法により、接着性樹脂側が接着剤層と接するように、透明ホモポリプロピレン樹脂の厚み80μm、接着性樹脂の厚み10μm、押出温度230℃で積層して得ている。
【0017】
ここで、「ラミネート層」は、フィルムを用いて「ラミネート加工」、或いは「ラミネート工程」で形成された「層」をいう。
「ラミネート加工」は、印刷物をポリプロピレンやポリエチレンなどを原料とする、薄い透明のフィルムで覆って加工することをいう。
ここで、「ラミネート加工」は、大きく分けて、「ホットラミネート」と「コールドラミネート」とがある。
「ホットラミネート」は、「パウチ加工」ともいい、印刷物をラミネートフィルムで挟み、熱によって接着する方法をいう。
「コールドラミネート」は、「ホットラミネート」と異なり、熱を使用しない、すなわち印刷物の片面だけにラミネート加工を行う方法をいう。
換言すると、化粧シート10の製造時に印刷工程のみで製造でき、ラミネート工程を必要としない、という意味である。
【0018】
(透明原反層11)
透明原反層11は、化粧シート10の基材であり、透明オレフィン樹脂から構成される。
透明原反層11は、樹脂組成物を溶融押し出しして形成している。
透明原反層11には、(1)紫外線吸収剤、(2)光安定剤が添加されている。
【0019】
(紫外線吸収剤)
ここで、「紫外線吸収剤」としては、少なくともベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤又は、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤のいずれかを含み、オレフィン樹脂の100の質量部に対して0.1質量部以上2質量部以下とする。
ここで、紫外線吸収剤を、オレフィン樹脂の100を質量部に対して「0.1質量部以上」とすることで、耐候性を向上することができる。
「2質量部以下」とすることで、紫外線吸収剤の経時でのブリードアウトによる表面白濁化を防止し、表面保護層15の密着を向上することができる。
後述する実施例1では、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(BASFジャパン(株)製の「チヌビン326」)0.5質量部を添加している。
後述する実施例2では、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(サンケミカル(株)製の「サイアソーブ1164」)に変更している。ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤を、「トリアジン系」の紫外線吸収剤ともいう。
【0020】
(ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤)
「ベンゾトリアゾール系」の紫外線吸収剤としては、例えば、2-(2-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール,2-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3-t-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール,2-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール,2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等やこれらの混合物、変性物、重合物、誘導体が挙げられる。
【0021】
(トリアジン系の紫外線吸収剤)
「トリアジン系」の紫外線吸収剤としては、例えば、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-6-(2-ヒドロキシ-4-イソ-オクチルオキシフェニル)-s-トリアジン等やこれらの混合物、変性物、重合物、誘導体が使用できる。
【0022】
(光安定剤)
光安定剤としては、後述する実施例1では、光安定剤(BASFジャパン(株)製の「キマソーブ2020」)0.5質量部添加している。
そして、透明なホモポリプロピレン樹脂((株)プライムポリマー製の「プライムPP」)100質量部に、光安定剤(「キマソーブ2020」)0.5質量部、及びベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(「チヌビン326」)0.5質量部を添加した樹脂組成物を、厚さ120μmで溶融押し出しすることで透明原反層11を得ている。
また、後述する実施例2では、光安定剤を、BASFジャパン(株)製の「チヌビン850」に変更している。
光安定剤としては、例えば、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドリキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ポペリジニル)セバケート、デカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1(オクチルオキシ)-4-ピペリジニル)エステル等やこれらの混合物、変性物、重合物、誘導体等を用いることができる。
【0023】
(印刷絵柄層12)
印刷絵柄層12は、化粧シート10を装飾するものであり、透明原反層11の裏面側に位置し、絵柄を印刷した層である。
印刷絵柄層12は、透明原反層11及び透明又は半透明の表面保護層15を透し、化粧シート10の表面側から視認できる。
ここで、絵柄の種類は、特に制約はなく、例えば、木目柄、石目柄、布目柄、抽象柄、幾何学図形、文字、記号等を単独で、又は二種類以上を組み合わせて形成しても良い。
【0024】
印刷絵柄層12は、少なくともポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリアルキレングリコール、アクリルポリオール及びポリイソシアネートのいずれかのウレタン樹脂をバインダー樹脂として含有する。これは、印刷絵柄層12、着色層13、プライマー層14に共通させることで、各層の密着性を向上している。
後述する実施例1では、透明原反層11の裏面側に、グラビア印刷法によりポリエステルポリオールからなるウレタン樹脂で絵柄を印刷し、印刷絵柄層12を付与している。
後述する実施例3では、「アクリルポリオール」からなる「ウレタン樹脂」に変更している。
なお、印刷法として、グラビア印刷法を例示したか、これに限定されず、例えばオフセット印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、インキジェット印刷など通常の印刷方法を用いても良い。
一方、印刷絵柄層12は、例えば単色である。
なお、印刷絵柄層12として、単色を例示したが、これに限定されず、複数色でも良い。
【0025】
(着色層13)
着色層13は、化粧シート10の裏面側に隠蔽性を付与するためものであり、印刷絵柄層12の裏面側に位置し、着色された層である。
着色層13は、透明原反層11及び透光性を有する表面保護層15を透し、化粧シート10の表面側から、印刷絵柄層12の背景とし、化粧シート10の表面側から視認できる。
着色層13には、印刷絵柄層12と同様に、少なくともポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリアルキレングリコール、アクリルポリオール及びポリイソシアネートのいずれかのウレタン樹脂をバインダー樹脂として含有する。
後述する実施例1では、印刷絵柄層12の裏面側に、印刷絵柄層12と同様に、グラビア印刷法によりポリエステルポリオールからなるウレタン樹脂で印刷し、着色層13を付与している。
後述する実施例3では、「アクリルポリオール」からなる「ウレタン樹脂」に変更している。
着色層13は、例えば透明又は半透明である。
なお、着色層13として、透明又は半透明を例示したが、これに限定されず、透光性を有していれば良い。
【0026】
(プライマー層14)
プライマー層14は、着色層13の裏面に位置し、接着を行う場合の下地処理を施した層である。
プライマー層14には、印刷絵柄層12及び着色層13と同様に、少なくともポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリアルキレングリコール、アクリルポリオール及びポリイソシアネートのいずれかのウレタン樹脂をバインダー樹脂として含有する。
後述する実施例1では、着色層13の裏面側に、印刷絵柄層12及び着色層13と同様に、グラビア印刷法により固形分量が、1g/m2となるように、ポリエステルポリオールからなるウレタン樹脂を塗工し、プライマー層14を形成している。
後述する実施例3では、「アクリルポリオール」からなる「ウレタン樹脂」に変更している。
一方、プライマー層14の裏面側に、基材部20の接着剤層22を介して基材21が接着される。
【0027】
(表面保護層15)
表面保護層15は、透明原反層11の表面側に位置し、透明原反層11の表面を保護する層である。
表面保護層15には、透明原反層11と同様に、紫外線吸収剤、光安定剤が添加されている。
また、表面保護層15には、少なくともヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤を含み、表面保護層15を形成するアクリル系樹脂組成物の100の質量部に対して1質量部以上30質量部以下である。
アクリル系樹脂組成物の100の質量部に対して「1質量部以上」とすることで、耐候性を向上することができる。また、「30質量部以下」とすることで、紫外線吸収剤の経時でのブリードアウトによる表面白濁、溶剤拭き取り時における表面白濁化を防止することができる。
【0028】
後述する実施例1では、透明原反層11の表面側に、アクリルポリオール樹脂の100の質量部に対して、光安定剤(BASFジャパン(株)製の「チヌビン292」)6質量部、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(BASFジャパン(株)製の「チヌビン400」)3質量部、同じく(BASFジャパン(株)製のチヌビン479)3質量部を添加し、さらに、溶剤成分として酢酸エチルを添加して固形分量を20質量部に調整した塗工液を、溶剤揮発後の厚さで9μとなるように塗工し、表面保護層15を形成する。
【0029】
(グロス/マットコート)
表面保護層15の表面側に、グロス/マットコートを施したり、エンボス部16を形成しても良い。
グロス/マットとは、高光沢と低光沢で視覚的に凹凸表現を見せることである。現在は、印刷とコーティングとを2工程で実施しているが、今後、印刷機の印刷ユニットを増設すれば、1工程でも可能である。
すなわち、「ラミネート層」は、ラミネート工程が増加するのに対し、「グロス/マットコート」は、印刷工程、すなわち1工程インライン化が可能である。
(エンボス部16)
エンボス部16は、表面保護層15の表面側に位置し、凹状に形成している。
エンボス部16は、例えば印刷絵柄層12の絵柄と同調させても良い。エンボス部16を印刷絵柄層12の絵柄と同調させることで、意匠性を向上できる。
【0030】
(化粧シート10の製造方法)
化粧シート10は、上記した構成を備え、その製造方法は、次の工程を含む。
(1)第1工程
第1工程は、透明なホモポリプロピレン樹脂に、光安定剤、及びベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を添加した樹脂組成物を、溶融押し出し、透明原反層11を形成する。
(2)第2工程
第2工程は、透明原反層11の裏面側に、グラビア印刷法によりポリエステルポリオールからなるウレタン樹脂で絵柄を印刷し、印刷絵柄層12を形成する。
【0031】
(3)第3工程
第3工程は、印刷絵柄層12の裏面側に、印刷絵柄層12と同様に、ポリエステルポリオールからなるウレタン樹脂を印刷し、着色層13を形成する。
(4)第4工程
第4工程は、着色層13の裏面側に、グラビア印刷法により、印刷絵柄層12及び着色層13と同様に、ポリエステルポリオールからなるウレタン樹脂を塗工し、プライマー層14を形成する。
【0032】
(5)第5工程
第5工程は、透明原反層11の表面側に、表面保護層15として、アクリルポリオール樹脂に、光安定剤及びヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤を添加する。
固形分調整用に酢酸エチル溶剤を添加した主剤溶液と、固形分調整用に酢酸エチル溶剤を添加したヘキサメチレンジイソシアネート型硬化剤溶液とを、主剤溶液と硬化剤溶液とを混合し、更に溶剤成分として酢酸エチルを添加した塗工液を塗工し、表面保護層15を形成して、化粧シート10を作成する。
(化粧板30の製造方法)
化粧板30は、上記した構成を備え、基材21の表面側に、接着剤層22を介して化粧シート10のプライマー層14を接着し、化粧板30を作成する。
【0033】
(実施の形態の第一の特徴点)
実施の形態に係る化粧シート10の第一の特徴点は、透明オレフィン樹脂から構成される透明原反層11の裏面側に、絵柄を印刷した印刷絵柄層12、着色層13、プライマー層14が順に形成され、透明原反層11の表面側に、表面保護層15が形成され、透明原反層11の表面側に、表面保護層15が形成され、透明原反層11と表面保護層15とには、紫外線吸収剤及び光安定剤が添加され、透明原反層11の表面側及び裏面側のいずれにも、他のフィルムからなるラミネート層を有しないことである。
【0034】
(第一の特徴点の効果)
第一の特徴点によれば、1つの工程でのインライン化が可能であり、シート層間での剥離や表面白化を防止できる。
また、第一の特徴点によれば、必要に応じて、表面保護層15にグロス/マットコートをすることで、意匠性が向上する利点があり、製造コストを抑えことができる。
【0035】
(実施の形態の第二の特徴点)
実施の形態に係る化粧シート10の第二の特徴点は、透明原反層11に、少なくともベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤又は、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤のいずれかを含み、透明原反層11のいずれかの紫外線吸収剤は、オレフィン樹脂の100の質量部に対して0.1質量部以上2質量部以下としたことである。
【0036】
(第二の特徴点の効果)
第二の特徴点によれば、透明原反層11に、光安定剤、少なくともベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤又は、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤のいずれかを添加することで、耐候性の向上できる。
第二の特徴点によれば、透明原反層11に紫外線吸収剤を、オレフィン樹脂の100を質量部に対して0.1質量部以上添加することで、耐候性を向上でき、2質量部以下添加することで、紫外線吸収剤の経時でのブリードアウトによる表面白濁化を防止し、表面保護層15の密着を向上できる。
【0037】
(実施の形態の第三の特徴点)
実施の形態に係る化粧シート10の第三の特徴点は、表面保護層15に、少なくともヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤を含み、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤は、表面保護層15を形成するアクリル系樹脂組成物の100の質量部に対して1質量部以上30質量部以下としたことである。
(第三の特徴点の効果)
第三の特徴点によれば、アクリル系樹脂組成物の100の質量部に対して1質量部以上にすることで、耐候性を向上でき、30質量部以下にすることで、紫外線吸収剤の経時でのブリードアウトによる表面白濁、溶剤拭き取り時における表面白濁化を防止できる。
【0038】
(実施の形態の第四の特徴点)
実施の形態に係る化粧シート10の第四の特徴点は、印刷絵柄層12、着色層13及びプライマー層14に、少なくともポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリアルキレングリコール、アクリルポリオール及びポリイソシアネートのいずれかのウレタン樹脂をバインダー樹脂として含有することである。
(第四の特徴点の効果)
第四の特徴点によれば、印刷絵柄層12、着色層13、プライマー層14には、少なくともポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオ-ル、ポリアルキレングリコール、アクリルポリオール及びポリイソシアネートのいずれかのウレタン樹脂をバインダー樹脂として含有することで、各層の密着性を向上できる。
【0039】
(実施の形態の第五の特徴点)
実施の形態に係る化粧シート10の第五の特徴点は、表面保護層15の表面側に、エンボス部16が形成されていることである。
(第五の特徴点の効果)
第五の特徴点によれば、エンボス部16により、化粧シート10の質感を向上させたり、意匠性を向上できる。
【0040】
(実施の形態の第六の特徴点)
実施の形態に係る化粧シート10の第六の特徴点は、印刷絵柄層12が、単色であることである。
(第六の特徴点の効果)
第六の特徴点によれば、印刷絵柄層12を単色とすることで、シックで、落ち着いた印象を持たせることができる。
【0041】
(実施の形態の第七の特徴点)
実施の形態に係る化粧シート10の第七の特徴点は、着色層13が、透明又は半透明であることである。
(第七の特徴点の効果)
第七の特徴点によれば、着色層13を透明又は半透明することで、化粧シート10に接着する基材21の表面の質感や模様などを、着色層13を透して化粧シート10の表面側に反映できる。
【0042】
(実施の形態の第八の特徴点)
実施の形態に係る化粧板30であり、第八の特徴点は、化粧シート10のプライマー層14の側に、基材21が接着されていることである。
(第八の特徴点の効果)
第八の特徴点によれば、製造コストを抑え、耐候性を向上できる化粧シート10を有する化粧板30を提供できる。
【実施例0043】
以下に、本発明に係る化粧シートの実施例1~3及び比較例1~6について説明する。なお、本発明は、下記の実施例1~3に限定されるものではない。
(実施例1)
実施例1の主な構成は、次の表1の通りである。
なお、次の表1には、実施例1の構成のほか、評価結果、並び実施例2及び実施例2の構成及び評価結果についても記載する。
【表1】
【0044】
実施例1の化粧板30は、次のように作成する。
実施例1は、第一に、透明なホモポリプロピレン樹脂((株)プライムポリマー製の「プライムPP」)100質量部に、光安定剤(BASFジャパン(株)製の「キマソーブ2020」)0.5質量部、及びベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(BASFジャパン(株)製の「チヌビン326」)0.5質量部を添加した樹脂組成物を、厚さ120μmで溶融押し出しすることで透明原反層11を得た。
第二に、透明原反層11の裏面側に、グラビア印刷法によりポリエステルポリオールからなるウレタン樹脂で絵柄を印刷し、印刷絵柄層12を付与した後、同様にポリエステルポリオールからなるウレタン樹脂で着色層13を付与した。
第三に、グラビア印刷法により固形分量が、1g/m2となるように、ポリエステルポリオールからなるウレタン樹脂を塗工し、プライマー層14を形成した。
【0045】
第四に、表面保護層15として、アクリルポリオール樹脂の100の質量部に対して、光安定剤(BASFジャパン(株)製の「チヌビン292」)6質量部、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(BASFジャパン(株)製の「チヌビン400」)3質量部、同じくヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(BASFジャパン(株)製のチヌビン479)3質量部を添加する。
固形分調整用に酢酸エチル溶剤を添加した固形分量33質量部の主剤溶液と、固形分調整用に酢酸エチル溶剤を添加した固形分量75質量部のヘキサメチレンジイソシアネート型硬化剤溶液とする。主剤溶液と硬化剤溶液との比率が、10:1(この時の主剤溶液中の水酸基数と硬化剤溶液中のイソシアネート基数の比率は、約1:2)となるように混合する。
さらに、溶剤成分として酢酸エチルを添加して固形分量を20質量部に調整した塗工液を、溶剤揮発後の厚さで9μとなるように塗工し、表面保護層15を形成し、化粧シート10を得る。
第5に、化粧シート10の裏面に、ウレタン系接着時、50μの厚みで塗工し、アルミ製の基材部20に貼り合わせ、48時間養生し、実施例1の化粧板30を作成した。
【0046】
(実施例2)
実施例2は、透明原反層11の光安定剤を、BASFジャパン(株)製の「チヌビン850」に、紫外線吸収剤を、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤であるサンケミカル(株)製の「サイアソーブ1164」に変更した以外は実施例1と同様であり、実施例2の化粧板30を作成した。
【0047】
(実施例3)
実施例3は、印刷絵柄層12、着色層13、プライマー層14を、「アクリルポリオール」からなる「ウレタン樹脂」に変更した以外は実施例2と同様であり、実施例3の化粧板30を作成した。
【0048】
(比較例1)
比較例1の主な構成は、次の表2の通りである。
なお、次の表2には、比較例1の構成のほか、評価結果、並び比較例2及び比較例2の構成及び評価結果についても記載する。
【表2】
【0049】
比較例1は、第一に、図示しないが、着色原反層として、酸化チタンと炭酸カルシウムを添加した厚さ70μmのポリプロピレンフィルム(リケンテクノス(株)製の「OW」)にコロナ処理を施し、その表面側にグラビアインキ(東洋インキ製造(株)製の「ラミスター」)を用いて木目模様をグラビア印刷し、印刷絵柄層を付与した。
この際、厚み計を用いてインキの塗工厚みを測定したところ、平均2μmであった。
印刷絵柄層上に、接着剤層として2液硬化型ポリウレタン系接着剤(三井化学(株)製の「タケラック」、「タケネート」)を乾燥後の厚さが1μmとなるように塗布した。
【0050】
続けて、第二に、図示しないが、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(BASFジャパン(株)製の「チヌビン326」を、0.5質量部と、光安定剤(BASFジャパン(株)製の「キマソーブ2020」)とを0.5質量部添加した透明ホモポリプロピレン樹脂((株)プライムポリマー製の「プライムPP」)と、無水マレイン酸による変性により官能基を付与した接着性樹脂(三井化学(株)製の「アドマーSE800」)とを、共押出ラミネート法により、接着性樹脂側が接着剤層と接するように、透明ホモポリプロピレン樹脂の厚み80μm、接着性樹脂の厚み10μm、押出温度230℃で積層して、透明オレフィン樹脂層を得た。
【0051】
第三に、表面保護層として、アクリルポリオール樹脂の100の質量部に対して、光安定剤(BASFジャパン(株)製の「チヌビン292」)6質量部、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(BASFジャパン(株)製の「チヌビン400」)3質量部、同じくヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(「BASFジャパン(株)製の「チヌビン479」)3質量部を添加する。
固形分調整用に、酢酸エチル溶剤を添加した固形分量の33質量部の主剤溶液と、固形分調整用に酢酸エチル溶剤を添加した固形分量の75質量部のヘキサメチレンジイソシアネート型硬化剤溶液とする。主剤溶液と硬化剤溶液との比率が、10:1(この時の主剤溶液中の水酸基数と硬化剤溶液中のイソシアネート基数の比率は、約1:2)となるように混合する。
さらに、溶剤成分として酢酸エチルを添加して、固形分量を20質量部に調整した塗工液を、溶剤揮発後の厚さで9μとなるように塗工し、表面保護層を形成し、化粧シートを得る。
第四に、化粧シートの裏面に、アルミ製の基材部に貼り合わせ、比較例1の化粧板を作成した。
【0052】
<比較例2>
比較例2は、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(「チヌビン400」、「チヌビン479」)の添加量を各0.4質量部に変更した以外は実施例1と同様であり、比較例2の化粧板を作成した。
<比較例3>
比較例3は、表面保護層に添加される紫外線吸収剤(「チヌビン400」、「チヌビン479」)の添加量を各16質量部に変更した以外は実施例1と同様であり、比較例3の化粧板を作成した。
【0053】
<比較例4>
比較例4の主な構成は、次の表3の通りである。
なお、次の表3には、比較例4の構成のほか、評価結果、並び比較例5及び比較例6の構成及び評価結果についても記載する。
【表3】
【0054】
比較例4は、透明原反層に添加される紫外線吸収剤(「チヌビン326」、「キマソーブ2020」)の添加量を各0.04質量部に変更した以外は実施例1と同様であり、比較例4の化粧板を作成した。
<比較例5>
比較例5は、透明原反層に添加される紫外線吸収剤(「チヌビン326」、「キマソーブ2020」)の添加量を各1.5質量部に変更した以外は実施例1と同様であり、比較例5の化粧板を作成した。
<比較例6>
比較例6は、印刷絵柄層、着色層、プライマー層を、「塩酢ビ系樹脂」に変更した以外は、実施例1と同様であり、比較例6の化粧板を作成した。
【0055】
(評価方法)
評価方法は、(1)耐候性、(2)耐溶剤性の2種類である。
(1)耐候性
耐候性は、次の通り実施した。
(a)試験機:ダイプラ・メタルウェザー(型式:KU-R5DCI-A ダイプラ・ウィンテス(株)製)
(b)試験条件:1サイクル=Light(照度70mW/cm2、温度63℃、湿度50%RH、)20時間+Dew(温度30℃、湿度95%RH)4時間(前後にシャワー30秒)のサイクル試験を実施。
(2)耐溶剤性
耐溶剤性は、酢酸エチルを不織布に浸し、化粧材表面を20往復した時の表面状態を観察した。
【0056】
(評価基準)
耐候性は、(1)外観変化、(2)剥離について評価した。
(1)外観変化
外観変化は、退色、白濁した場合、「不合格」とし、それ以外を「合格」とした。
(2)剥離
剥離は、シートに層間剥離した場合に、「不合格」とし、それ以外を「合格」とした。
耐溶剤性は、酢酸エチルを不織布に浸し、化粧材表面を20往復した時の表面状態を観察し、表面が白化した場合に、「不合格」とし、それ以外を「合格」とした。
【0057】
(評価結果)
評価結果は、前掲した表1~表3に示す通りである。
【0058】
(実施例1~実施例3と比較例1~比較例6)
実施例1~実施例3と比較例1~比較例6のうち、実施例1~実施例3は、すべての評価項目が「合格」である。
これに対し、比較例1~比較例6は、評価項目のうち、一つ以上に「不合格」があった。
【0059】
(耐候性の外観変化について)
耐候性の外観変化については、比較例1~比較例6のうち、比較例2、比較例4及び「比較例5」が「不合格」であった。
比較例2の「不合格」(剥離発生のため)の原因は、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(チヌビン400、チヌビン479)が各0.4質量部(計0.8質量部)で、少なすぎたためと推測できる。
比較例4の「不合格」(剥離発生のため)の原因は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チヌビン326、キマソーブ2020)が各0.04質量部(計0.08質量部)で、少なすぎたためと推測できる。透明原反層に含まれる紫外線吸収剤の絶対量が少ないために、剥離が発生した。
比較例5の「不合格」(表面白化)の原因は、紫外線吸収剤(「チヌビン326」、「キマソーブ2020」)の添加量を各1.5質量部(計3.0質量部)で、多すぎたためと推測できる。
【0060】
(耐候性の剥離について)
耐候性の剥離については、比較例1~比較例6のうち、比較例1、比較例2、比較例4、比較例6が「不合格」であった。
比較例1の「不合格」(剥離時間552時間)の原因は、「共押出ラミネート法」によるものと推測できる。
比較例2の「不合格」(剥離時間216時間)の原因は、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(チヌビン400、チヌビン479)が各0.4質量部(計0.8質量部)で、少なすぎたためと推測できる。比較例2の場合は、紫外線吸収剤の絶対量が少ないため、表面保護層自体の耐久性、表面保護層以下の部分である絵柄インキ層へのダメージが大きく剥離が発生した。
比較例4の「不合格」(剥離時間216時間)の原因は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チヌビン326、キマソーブ2020)が各0.04質量部(計0.08質量部)で、少なすぎたためと推測できる。透明原反層に含まれる紫外線吸収剤の絶対量が少ないために、剥離が発生した。
比較例6の「不合格」(剥離時間120時間)の原因は、絵柄層、着色層、プライマー層を、「ポリエステルウレタン」から「塩酢ビ系樹脂」に変更したことにあるものと推測できる。
【0061】
(耐溶剤性について)
耐溶剤性については、比較例1~比較例6のうち、比較例3のみが「不合格」であった。
比較例3の「不合格」(表面白化)の原因は、表面保護層に添加剤を入れすぎたため、溶剤で表面を擦った時、添加剤が析出したためと推測できる。