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特開2022-156611電池用電極製造方法、および電池用電極製造システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156611
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】電池用電極製造方法、および電池用電極製造システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/139 20100101AFI20221006BHJP
【FI】
H01M4/139
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060393
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】519100310
【氏名又は名称】APB株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀江 英明
(72)【発明者】
【氏名】榎 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 勇輔
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA07
5H050CB07
5H050CB11
5H050CB29
5H050GA27
5H050GA29
(57)【要約】
【課題】集電体上に形成される活物質層に気泡が生じることを抑制することができ、活物質層の均一性を向上させることができる電池用電極製造方法を提供する。
【解決手段】電池用電極製造方法は、粉体状の活物質25を減圧下に置くことにより活物質の内部の気体を除去する工程と、大気圧よりも減圧されているチャンバー2の内部に配置された供給装置3に対して気体が除去された活物質25vを送る工程と、チャンバーの内部において供給装置によって帯状の基材フィルム23に対して活物質を供給する工程と、を含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体状の活物質を減圧下に置くことにより前記活物質の内部の気体を除去する工程と、
大気圧よりも減圧されているチャンバーの内部に配置された供給装置に対して気体が除去された前記活物質を送る工程と、
前記チャンバーの内部において前記供給装置によって帯状の基材フィルムに対して前記活物質を供給する工程と、
を含む電池用電極製造方法。
【請求項2】
前記除去する工程は、前記活物質を調合する調合タンクから気体を吸引することにより実行される
請求項1に記載の電池用電極製造方法。
【請求項3】
予め脱気された粉体状の活物質を貯留するタンクと、
内部空間が大気圧よりも減圧されているチャンバーと、
前記チャンバーの内部に配置されており、前記タンクから送られる前記活物質を帯状の基材フィルムに対して供給する供給装置と、
を備える電池用電極製造システム。
【請求項4】
更に、前記活物質を調合しながら前記活物質の内部の気体を除去する脱気装置を備え、
前記タンクは、前記脱気装置によって脱気された前記活物質を貯留する
請求項3に記載の電池用電極製造システム。
【請求項5】
更に、前記活物質の内部の気体を除去する脱気装置を備え、
前記脱気装置は、前記活物質が貯留される複数の脱気槽と、前記脱気槽から気体を吸引するポンプと、複数の前記脱気槽と前記タンクとを個別に接続する複数の通路と、複数の前記通路を開閉するバルブと、を有する
請求項3に記載の電池用電極製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池用電極製造方法、および電池用電極製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、一般に、正極集電体の表面に正極活物質層が形成された正極と、負極集電体の表面に負極活物質層が形成された負極とが、セパレータを介して積層されて構成される。このリチウムイオン電池を製造する工程として、例えば、特許文献1に記載されたように、集電体上に活物質を供給した後、当該活物質を圧縮する電極製造工程を有することが知られている。
【0003】
また、特許文献2には、正極枠体及び負極枠体を形成し、当該正極枠体及び負極枠体の内側に正極活物質層及び負極活物質層を形成した後、当該正極枠体及び当該正極活物質層並びに当該負極枠体及び当該負極活物質層をそれぞれ覆うように、正極集電体及び負極集電体を配置する、リチウムイオン電池の製造工程が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6633866号公報
【特許文献2】特開2019-207750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したように電池用電極を製造する場合、活物質層に気泡が残存されたまま電池用電極が成型されることがある。活物質層に気泡が残存していると、例えば特許文献1に記載のように集電体上に形成した活物質層を圧縮する際に、活物質が弾け飛んだり、活物質の表面に凹凸が形成されたりする問題が生じるおそれがある。また、活物質層に気泡が残存していると、例えば特許文献2に記載の枠体内部に、活物質層が均一に形成されにくくなり、その結果、当該活物質層の表面に集電体を配置して電池を製造する工程(例えば特許文献2に記載の製造工程)を採る際にも問題が生じるおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、集電体上に形成される活物質層に気泡が生じることを抑制することができ、活物質層の均一性を向上させることができる電池用電極製造方法、および電池用電極製造システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電池用電極製造方法は、粉体状の活物質を減圧下に置くことにより前記活物質の内部の気体を除去する工程と、大気圧よりも減圧されているチャンバーの内部に配置された供給装置に対して気体が除去された前記活物質を送る工程と、前記チャンバーの内部において前記供給装置によって帯状の基材フィルムに対して前記活物質を供給する工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、集電体上に形成される活物質層に気泡が生じることを抑制することができ、活物質層の均一性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、リチウムイオン単電池の概略構成図である。
図2図2は、実施形態に係る電池用電極製造システムの概略構成図である。
図3図3は、電池用電極製造システムの一部を示す図である。
図4図4は、実施形態の脱気装置を示す図である。
図5図5は、密閉された耐圧容器の図である。
図6図6は、実施形態の第1変形例に係る脱気装置を示す図である。
図7図7は、実施形態の第2変形例に係る脱気装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態に係る電池用電極製造方法、および電池用電極製造システムにつき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0011】
[実施形態]
図1から図5を参照して、実施形態について説明する。本実施形態は、電池用電極製造方法、および電池用電極製造システムに関する。図1は、リチウムイオン単電池の概略構成図、図2は、実施形態に係る電池用電極製造システムの概略構成図、図3は、電池用電極製造システムの一部を示す図、図4は、実施形態の脱気装置を示す図、図5は、密閉された耐圧容器の図である。
【0012】
本実施形態の電池用電極製造方法、および電池用電極製造システムは、例えば、リチウムイオン電池の製造に適用される。リチウムイオン電池は、複数のリチウムイオン単電池(電池セル)を組み合わせてモジュール化した組電池、或いは、このような組電池を複数組み合わせて電圧及び容量を調整した電池パックの形態で使用される。
【0013】
図1は、リチウムイオン単電池10の概略構成図である。リチウムイオン単電池10は、正極集電体層111、正極活物質層113、セパレータ130、負極活物質層123及び負極集電体層121が図1に示す順に積層される。即ち、正極集電体層111及び負極集電体層121が最外層に配置される。また、枠体140は、正極集電体層111及び負極集電体層121の縁部(正極活物質層113及び負極活物質層123の外周)を封止する。正極活物質層113及び負極活物質層123には、電解液が封入される。
【0014】
正極集電体層111としては、公知のリチウムイオン単電池に用いられる集電体を用いることができ、例えば公知の金属集電体及び導電材料と樹脂とから構成されてなる樹脂集電体(特開2012-150905号公報及び国際公開第2015-005116号等に記載の樹脂集電体等)を用いることができる。正極集電体層111は、電池特性等の観点から、樹脂集電体であることが好ましい。
【0015】
正極活物質層113は、正極活物質を含む混合物の非結着体であることが好ましい。ここで、非結着体とは、正極活物質層中において正極活物質の位置が固定されておらず、正極活物質同士及び正極活物質同士及び正極活物質と集電体とが不可逆的に固定されていないことを意味する。正極活物質層113が非結着体である場合、正極活物質同士は不可逆的に固定されていないため、正極活物質同士の界面を機械的に破壊することなく分離することができ、正極活物質層113に応力がかかった場合でも正極活物質が移動することで正極活物質層113の破壊を防止することができ好ましい。非結着体である正極活物質層113は、正極活物質層113を、正極活物質と電解液とを含みかつ結着剤を含まない正極活物質層113にする等の方法で得ることができる。
【0016】
正極活物質としては、例えば、リチウムと遷移金属との複合酸化物、遷移金属元素が2種である複合酸化物及び金属元素が3種類以上である複合酸化物等が挙げられるが、特に限定されない。
【0017】
正極活物質層113には、電解質と非水溶媒を含む電解液が含まれていてもよい。電解質としては、公知の電解液に用いられているもの等が使用できる。
【0018】
負極集電体層121としては、正極集電体層111で記載した構成と同様のものを適宜選択して用いることができ、同様の方法により得ることができる。負極集電体層121は、電池特性等の観点から、樹脂集電体であることが好ましい。
【0019】
負極活物質層123は、負極活物質を含む混合物の非結着体であることが好ましい。負極活物質層が非結着体であることが好ましい理由、及び非結着体である負極活物質層123を得る方法等は、正極活物質層113が非結着体であることが好ましい理由、及び非結着体である正極活物質層113を得る方法と同様である。
【0020】
負極活物質としては、例えば、炭素系材料、珪素系材料及びこれらの混合物などを用いることができるが、特に限定されない。
【0021】
負極活物質層123は、電解質と非水溶媒を含む電解液を含有する。電解液の組成は、正極活物質層113に含まれる電解液と同様の電解液を好適に用いることができる。
【0022】
セパレータ130としては、ポリエチレン又はポリプロピレン製の多孔性フィルム等が挙げられるが、特に限定されない。
【0023】
リチウムイオン単電池10は、正極集電体層111及び負極集電体層121の縁部を枠体140により封止することで電解液が封入された構成である。枠体140は、正極集電体層111及び負極集電体層121の間に配置されており、正極活物質層113、負極活物質層123及びセパレータ130の外周を封止する機能を有する。
【0024】
枠体140は、電解液に対して耐久性のある材料であれば特に限定されないが、高分子材料が好ましく、熱硬化性高分子材料がより好ましい。具体的には、エポキシ系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂及びポリフッ化ビニリデン樹脂等が挙げられ、耐久性が高く取り扱いが容易であることからエポキシ系樹脂が好ましい。
【0025】
図2に示すように、本実施形態に係る電池用電極製造システム100は、電池用電極製造装置1、脱気装置7、およびフィルム供給装置32を有する。フィルム供給装置32は、帯状の基材フィルム23を電池用電極製造装置1に対して供給する。フィルム供給装置32は、例えば、ロールに巻かれた基材フィルム23を送り出す。なお、帯状の基材フィルム23の例としては、集電体、セパレータ、転写用のフィルムが挙げられる。基材フィルム23が転写用のフィルムである場合、転写用のフィルムに形成された活物質層(電極組成物層)を集電体上に、例えば転写することで、リチウムイオン電池用電極を得ることができる。
【0026】
図2に示すように、電池用電極製造装置1は、チャンバー2と、供給装置3と、ロールプレス5と、タンク6と、枠体供給装置15と、を有する。チャンバー2は、内部を大気圧よりも減圧された状態に保持できる部屋である。チャンバー2は、閉空間を形成する筐体20を有する。チャンバー2の内部空間20aは、図示しない減圧ポンプにより大気圧よりも減圧される。内部空間20aの圧力は、大気圧よりも減圧されていれば任意の値でよいが、例えば、大気圧から1×10-1~1×10-2Paまでの低真空環境となるように調整されていてもよいし、1×10-6~1×10-7Paの高真空環境となるように調整されていてもよいし、それ以上の超高真空や10-8~10-9Paレベルの極高真空であってもよい。なお、標準大気圧は、約1013hPa(約10Pa)である。
【0027】
筐体20は、スリット20sを有する。スリット20sは、筐体20が有する一つの側壁20wに配置されている。例示されたスリット20sは、基材フィルム23の搬送方向Xに沿って側壁20wを貫通している。搬送方向Xは、例えば、鉛直方向Zに対して直交する方向である。基材フィルム23は、筐体20の外部空間20bからスリット20sを介して内部空間20aに搬送される。
【0028】
枠体供給装置15は、筐体20の内部空間20aに配置されている。例示された枠体供給装置15は、側壁20wと供給機構3との間に配置されている。枠体供給装置15は、搬送される基材フィルム23に対して枠体140を供給し、基材フィルム23に枠体140を設置する。枠体140は、基材フィルム23と共に搬送方向Xに沿って搬送される。
【0029】
供給装置3は、筐体20の内部空間20aに配置されている。供給装置3は、搬送される基材フィルム23に対して粉体状の活物質25を供給する。より詳しくは、供給装置3は、基材フィルム23に設置されている枠体140に対して活物質25を供給する。粉体状の活物質25は、外部空間20bに配置されたタンク6に貯留されている。供給装置3は、タンク6から送られる活物質25を枠体140の内部に充填し、活物質25を基材フィルム23に塗布する。
【0030】
ロールプレス5は、搬送方向Xにおいて供給装置3の下流側に配置されている。ロールプレス5は、基材フィルム23に塗布された活物質25をプレス成型する。ロールプレス5は、活物質25を帯状の基材フィルム23に定着させる役割を有する。ロールプレス5は、活物質25をプレス成型し、正極活物質層113または負極活物質層123を形成する。例えば、基材フィルム23に塗布された活物質25が正極活物質である場合、正極活物質層113が形成され、塗布された活物質25が負極活物質である場合、負極活物質層123が形成される。
【0031】
以下に説明するように、本実施形態に係る電池用電極製造システム100では、供給装置3に対して予め脱気された活物質25が送られる。本明細書では、予め脱気された活物質25を単に「脱気された活物質25v」と称する。供給装置3に活物質25を供給する前に活物質25を脱気しておくことで、基材フィルム23に活物質を供給する前の段階で、活物質に不要なガスや空気が混じることを抑制することができる。その結果、例えば基材フィルム23が集電体である場合、集電体に対して脱気された活物質25vが塗布されるので、集電体上に形成される正極活物質層113および負極活物質層123に気泡が生じることが抑制され、活物質層の均一性が向上する。
【0032】
更に、本実施形態の電池用電極製造装置1は、活物質25の塗布およびプレス成型の両工程を減圧された内部空間20aにおいて行なう。これにより、基材フィルム23に活物質25を供給する際に、脱気された活物質25vに不要なガスや空気が混じることを排除することができる。その結果、集電体上に形成される活物質層に気泡が生じることをより一層抑制することができ、活物質層の均一性をより一層向上させることができる。
【0033】
なお、供給装置3は、転写用のフィルムに対して活物質25を供給してもよい。この場合、転写用のフィルムに転写された活物質25は、集電体に対して転写される。本実施形態によれば、転写用のフィルムに活物質を供給する前の段階で、活物質に不要なガスや空気が混じることを抑制することができる。その結果、転写用のフィルムから集電体に対して脱気された活物質25vが転写されるので、集電体上に形成される正極活物質層113および負極活物質層123に気泡が生じることが抑制され、活物質層の均一性が向上する。
【0034】
図3に示すように、電池用電極製造システム100は、補給機構4を有する。補給機構4は、脱気された活物質25vを供給装置3に送る機構である。補給機構4は、耐圧容器40、およびタンク6を含む。
【0035】
タンク6の内部は、減圧ポンプによって大気圧よりも減圧されていてもよい。タンク6は、脱気された活物質25vを受け入れる受け入れ口61を有する。例示された受け入れ口61は、タンク6の頂部に配置されている。受け入れ口61は、タンク6の内部空間と外部空間とを連通している。耐圧容器40は、内部が減圧された状態で中空形状を維持できる剛性を有する容器である。耐圧容器40は、受け入れ口61に取り付けられる。受け入れ口61には、耐圧容器40とタンク6との間を気密にシールするシール部材が配置されている。耐圧容器40の内部は、大気圧よりも低圧に維持されており、かつ脱気された活物質25vが収容されている。耐圧容器40は、開口を下方に向けてタンク6に取り付けられる。
【0036】
脱気された活物質25vは、耐圧容器40の開口を介してタンク6へ送られる。脱気された活物質25vは、例えば、自重によってタンク6へ落下する。脱気された活物質25vは、耐圧容器40の内圧とタンク6の内圧との差圧によって耐圧容器40からタンク6へ移動してもよい。供給装置3は、タンク6から送られる活物質25を帯状の基材フィルム23に対して供給する。つまり、基材フィルム23に塗布される活物質25は、脱気された活物質25vである。
【0037】
脱気された活物質25vは、内部に空気等の気体が残存しないように十分に気体が除去されている。従って、プレス終了後の正極活物質層113および負極活物質層123が常圧下に置かれたとしても、集電体上に形成される活物質層113,123に気泡が生じることが抑制され、活物質層113,123の均一性が向上する。また、脱気された活物質25vは、プレス成型されるときにひび割れ等が生じにくい。よって、本実施形態に係る電池用電極製造システム100は、リチウムイオン単電池10の性能を向上させることや、リチウムイオン単電池10の信頼性を向上させることができる。
【0038】
図4に示す脱気装置7は、活物質25の内部の気体を除去する装置である。脱気装置7は、ポンプ71、ノズル72、および耐圧容器40を含む。ノズル72は、耐圧容器40の開口41に対して固定される。ポンプ71は、ノズル72に対して接続されており、耐圧容器40の内部の気体を吸引する。ノズル72は、予め活物質25が充填された耐圧容器40に対して取り付けられる。耐圧容器40に充填される活物質25は、材料が撹拌されて調合されたものである。
【0039】
脱気装置7は、耐圧容器40の内圧を大気圧よりも低圧の第一圧力PA1に減圧する。第一圧力PA1は、例えば、タンク6の内圧PB1と同等の圧力である。第一圧力PA1は、チャンバー2の内圧PC1と同等の圧力であってもよい。第一圧力PA1は、内圧PB1,PC1よりも高圧であってもよい。脱気装置7は、活物質25を減圧下に置くことにより活物質25の内部の気体を除去する。脱気装置7は、活物質25の内部に含まれるガスを十分にパージできるように、耐圧容器40の内圧を第一圧力PA1に維持する。脱気時間は、例えば、数時間である。
【0040】
活物質25の脱気が完了すると、図5に示すように、耐圧容器40の開口41が栓42によって閉塞される。栓42は、開口41を密閉し、耐圧容器40の内部に脱気された活物質25vを封入する。耐圧容器40は、密閉された状態でタンク6まで運搬され、図3に示すようにタンク6に取り付けられる。開口41は、例えば、タンク6に対する耐圧容器40の取り付けが完了した後に開放される。
【0041】
耐圧容器40からタンク6への活物質25の移動が完了すると、耐圧容器40がタンク6から取り外される。取り外された耐圧容器40に対して、調合された活物質25を充填する充填工程、および活物質25を脱気する脱気工程が実行される。電池用電極製造システム100は、複数の耐圧容器40を有してもよい。この場合、一つの耐圧容器40がタンク6に取り付けられているときに、別の耐圧容器40に対して充填工程および脱気工程が実行される。
【0042】
以上説明したように、本実施形態に係る電池用電極製造方法は、除去する工程と、送る工程と、供給する工程と、を含む。除去する工程において、脱気装置7は、紛体状の活物質25を減圧下に置くことにより活物質25の内部の気体を除去する。供給装置3に活物質25を供給する前に活物質25を脱気しておくことで、基材フィルム23に活物質を供給する前の段階で、活物質25に不要なガスや空気が混じることを抑制することができる。送る工程において、補給機構4は、脱気された活物質25vをチャンバー2の内部に配置された供給装置3に送る。供給する工程において、供給装置3は、帯状の基材フィルム23に対して脱気された活物質25vを供給する。基材フィルム23は、例えば、集電体であるが、これに限らず、セパレータや転写用のフィルムであってもよい。つまり、供給装置3は、集電体に対して活物質を直接供給してもよく、セパレータや転写用のフィルムを介して間接的に集電体に活物質を供給してもよい。本実施形態に係る電池用電極製造方法によれば、脱気された活物質25vを基材フィルム23に供給することにより、集電体上に形成される活物質層113,123に気泡が生じることを抑制することができ、活物質層113,123の均一性を向上させることができる。
【0043】
本実施形態に係る電池用電極製造システム100は、タンク6と、チャンバー2と、供給装置3と、を有する。タンク6は、脱気された活物質25vを貯留する。チャンバー2は、内部空間20aが大気圧よりも減圧されている部屋である。供給装置3は、チャンバー2の内部に配置されており、タンク6から送られる活物質25を帯状の基材フィルム23に対して供給する。本実施形態に係る電池用電極製造システムによれば、脱気された活物質25vを基材フィルム23に供給することにより、集電体上に形成される活物質層113,123に気泡が生じることを抑制することができ、活物質層113,123の均一性を向上させることができる。
【0044】
なお、枠体供給装置8は、供給機構3よりも下流側において基材フィルム23に枠体140を設置してもよい。例えば、枠体供給装置8は、供給機構3とロールプレス5との間に配置されてもよし、ロールプレス5の下流側に配置されてもよいし、或いは、ロールプレス5の下流側であって筐体2外部に配置されてもよい。また、本実施形態に係る電池用電極製造システム又は電池用電極製造方法は、枠体供給装置又は枠体供給工程を含まなくてもよい。例えば、基材フィルム23として転写用のフィルムが用いられる場合には、転写用のフィルム上に活物質層(電極組成物層)が形成された後(つまり、電極製造工程を終了した後)、当該電極組成物層が転写された集電体上に、又は、当該電極組成物層が転写される前の集電体上に、枠体が配置されてもよい。
【0045】
筐体2の内部において基材フィルム23に対して枠体140を供給することに代えて、筐体2の外部において基材フィルム23に枠体140が設置されてもよい。この場合、枠体140が取り付けられた基材フィルム23は、スリット20sを介して筐体2の内部に搬送される。
【0046】
[実施形態の第1変形例]
図6を参照して、実施形態の第1変形例について説明する。図6は、実施形態の第1変形例に係る脱気装置を示す図である。実施形態の第1変形例において、上記実施形態と異なる点は、脱気装置8が減圧下において活物質25を調合する点である。
【0047】
脱気装置8は、減圧下において活物質25を調合しながら活物質25の脱気を行う。脱気装置8は、ポンプ80、調合タンク81、および攪拌機82を有する。調合タンク81は、実施形態の耐圧容器40と同様の耐圧性能を有する容器である。調合タンク81は、供給路81a,81bを有する。活物質25の材料M1,M2は、それぞれ供給路81a,81bを介して調合タンク81の内部に供給される。ポンプ80は、調合タンク81の内部の気体を吸引する。つまり、調合タンク81の内部は、ポンプ80によって大気圧よりも低圧に減圧されている。
【0048】
攪拌機82は、モータ83、撹拌翼84、および回転軸85を有する。撹拌翼84は、調合タンク81の内部に配置されている。モータ83は、調合タンク81の外部に配置されている。回転軸85は、調合タンク81の底壁を貫通しており、モータ83と撹拌翼84とを連結している。脱気装置8は、撹拌翼84を回転させることにより、材料M1,M2を撹拌し、活物質25の表面処理等の調合を行なう。脱気装置8は、調合タンク81の内部で活物質25を脱気し、脱気された活物質25vを生成する。つまり、脱気装置8は、減圧下において活物質25を調合することにより、調合工程および脱気工程を同時に実行する。
【0049】
脱気された活物質25vは、電池用電極製造装置1のタンク6に供給される。例えば、調合タンク81がタンク6に取り付けられてもよい。この場合、調合タンク81にはタンク6と接続される開口が設けられることが好ましい。活物質25を調合する調合工程では、調合タンク81の開口が栓によって閉塞される。
【0050】
脱気された活物質25vは、減圧環境下において調合タンク81から耐圧容器40に移されてもよい。この場合、上記実施形態と同様に、耐圧容器40がタンク6に取り付けられる。調合タンク81は、パイプ等を介してタンク6に接続されてもよい。この場合、脱気された活物質25vは、パイプ等を介して調合タンク81からタンク6へ送られる。
【0051】
[実施形態の第2変形例]
図7を参照して、実施形態の第2変形例について説明する。図7は、実施形態の第2変形例に係る脱気装置を示す図である。図7に示すように、実施形態の第2変形例に係る脱気装置9は、ポンプ90、第一脱気槽91、第二脱気槽92、および第三脱気槽93を有する。第一脱気槽91、第二脱気槽92、および第三脱気槽93は、耐圧性能を有する容器である。
【0052】
第一脱気槽91は、第一通路94を介してタンク6と接続されている。第一通路94には、第一通路94を開閉するバルブ94aが設けられている。また、第一脱気槽91は、第一吸引路97を介してポンプ90と接続されている。第一吸引路97には、第一吸引路97を開閉するバルブ97aが設けられている。
【0053】
第二脱気槽92は、第二通路95を介してタンク6と接続されている。第二通路95には、第二通路95を開閉するバルブ95aが設けられている。第二脱気槽92は、第二吸引路98を介してポンプ90と接続されている。第二吸引路98には、第二吸引路98を開閉するバルブが設けられている。
【0054】
第三脱気槽93は、第三通路96を介してタンク6と接続されている。第三通路96には、第三通路96を開閉するバルブ96aが設けられている。第三脱気槽93は、第三吸引路99を介してポンプ90と接続されている。第三吸引路99には、第三吸引路99を開閉するバルブ99aが設けられている。
【0055】
第一脱気槽91、第二脱気槽92、および第三脱気槽93には、それぞれ活物質25が充填される。充填される活物質25は、表面処理等の調合がなされたものである。活物質25の脱気が行われるときには、脱気槽がポンプ90と接続され、かつタンク6から遮断される。例えば、図7では、第一脱気槽91および第二脱気槽92において脱気工程が実行されている。この場合、バルブ97a,98aが開かれ、かつバルブ94a,95aが閉じられる。ポンプ90は、第一脱気槽91および第二脱気槽92の内部の気体を吸引する。よって、第一脱気槽91および第二脱気槽92に貯留された活物質25が減圧下に置かれ、活物質25の内部の気体が除去される。
【0056】
第三脱気槽93の内部には、脱気された活物質25vが貯留されている。すなわち、図7には、脱気工程が完了した後の第三脱気槽93が示されている。脱気された活物質25vがタンク6に送られるときには、脱気槽がタンク6と接続され、かつポンプ90から遮断される。例えば、図7では、第三脱気槽93において、タンク6に対して脱気された活物質25vを送る工程が実行されている。この場合、バルブ96aが開かれ、かつバルブ99aが閉じられる。よって、脱気された活物質25vは、例えば、自重によって第三脱気槽93からタンク6に移動する。
【0057】
第三脱気槽93からタンク6への活物質25の移動が完了すると、バルブ96aが閉じられる。その後、第三脱気槽93に活物質25が補充され、第三脱気槽93において脱気工程が実行される。第三脱気槽93で脱気工程が実行されているときは、第一脱気槽91または第二脱気槽92からタンク6へ脱気された活物質25vが送られる。このように、実施形態の第2変形例に係る脱気装置9では、複数の脱気槽91,92,93において、脱気工程と、タンク6に対して気体が除去された活物質25を送る工程と、が交互に実行される。
【0058】
なお、脱気装置9が有する脱気槽の個数は、三つには限定されない。例えば、脱気装置9は、二つの脱気槽を有していてもよく、四つ以上の脱気槽を有していてもよい。
【0059】
上記の実施形態および変形例に開示された内容は、適宜組み合わせて実行することができる。
【符号の説明】
【0060】
1:電池用電極製造装置、 2:チャンバー、 3:供給装置
4:補給機構、 5:ロールプレス、 6:タンク、 7,8,9:脱気装置
10:リチウムイオン単電池、 15:枠体供給装置
20:筐体、 20a:内部空間、 20b:外部空間、 20s:スリット
23:基材フィルム、 24:部材シート、25:活物質、25v:脱気された活物質
32:フィルム供給装置
40:耐圧容器、 41:開口、 42:栓
61:受け入れ口
71:ポンプ、 72:ノズル、
80:ポンプ、 81:調合タンク、 81a,81b:供給路、 82:攪拌機
83:モータ、 84:撹拌翼、 85:回転軸
90:ポンプ、 91:第一脱気槽、 92:第二脱気槽、 93:第三脱気槽
94:第一通路、 95:第二通路、 96:第三通路
97:第一吸引路、 98:第二吸引路、 99:第三吸引路
94a,95a,96a,97a,98a,99a:バルブ
100:電池用電極製造システム
111:正極集電体層、 113:正極活物質層、 121:負極集電体層
123:負極活物質層、 130:セパレータ、 140:枠体
M1,M2:材料
PA1:第一圧力、 PB1:タンクの内圧、 PC1:チャンバーの内圧
X:搬送方向、 Z:鉛直方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7