(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156647
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】印刷装置及び印刷方法
(51)【国際特許分類】
B41J 17/10 20060101AFI20221006BHJP
B41J 2/325 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B41J17/10
B41J2/325 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060447
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(72)【発明者】
【氏名】藤田 圭佑
【テーマコード(参考)】
2C065
2C068
【Fターム(参考)】
2C065AA01
2C065AD07
2C065DA03
2C065DA12
2C065DA17
2C065DA24
2C068AA01
2C068AA06
2C068AA15
2C068GG01
2C068GK01
(57)【要約】
【課題】インクリボンを効率よく使用できる印刷装置及び印刷方法を提供する。
【解決手段】印刷装置は、制御部を備える。制御部は、リボン駆動源を駆動した場合、印刷準備時間において、インクリボンを搬送方向に搬送する距離である第一距離を特定する(S15)。制御部は、エンコーダにより検出した媒体搬送速度で印刷を開始可能な印刷開始位置まで印刷媒体が搬送される間に、インクリボンを搬送方向に搬送する距離が、特定した第一距離となるように、遅延時間を変更せずに、リボン駆動源の加速度を設定する(S23)。制御部は、設定した加速度に基づき、リボン駆動源を駆動する(S25)。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送方向に搬送される印刷媒体に印刷可能なサーマルヘッドと、
前記サーマルヘッドと前記印刷媒体との間に配置され且つ前記サーマルヘッドにより前記印刷媒体にインクが転写されるインクリボンを、前記搬送方向に沿って搬送可能なリボン駆動部と、
前記インクリボンが前記搬送方向へ搬送される速度であるリボン搬送速度が、前記印刷媒体の予め定められた基準速度と同期した速度になるように、前記リボン駆動部を制御する第一リボン制御部と、
前記印刷媒体が搬送される速度である媒体搬送速度を検出する速度検出部と
を備え、
印刷の開始を示す印刷信号を受信してから前記インクリボンの搬送を開始するまでの時間を遅延時間とし、
前記遅延時間が経過した後に、前記インクリボンの搬送を開始してから前記インクリボンを所定の印刷位置まで搬送するまでの前記リボン駆動部を加速する時間を加速時間とし、
前記印刷信号を受信してから前記印刷媒体への印刷を開始するまでの前記遅延時間と前記加速時間とを含む時間を印刷準備時間とし、
前記第一リボン制御部により前記リボン駆動部を駆動した場合、前記印刷準備時間において、前記インクリボンを前記搬送方向に搬送する距離である第一距離を特定する第一特定手段と、
前記速度検出部により検出した前記媒体搬送速度で印刷を開始可能な印刷開始位置まで前記印刷媒体が搬送される間に、前記インクリボンを前記搬送方向に搬送する距離が、前記第一特定手段により特定した前記第一距離となるように、前記遅延時間を変更せずに、前記リボン駆動部の加速度を設定する加速度設定手段と、
前記加速度設定手段により設定した前記加速度に基づき、前記リボン駆動部を駆動する第二リボン制御部と
を備えたことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記媒体搬送速度が前記基準速度より速い場合、前記加速度設定手段は前記インクリボンの前記リボン搬送速度が加速するように前記加速度を設定し、
前記媒体搬送速度が前記基準速度より遅い場合、前記加速度設定手段は前記インクリボンの前記リボン搬送速度が減速するように前記加速度を設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記搬送方向において所定の間隔を開けて複数のオブジェクトを配置した印刷イメージを、複数回に亘って連続して印刷する印刷手段と、
前記印刷手段により1つの前記印刷イメージの印刷完了後、前記搬送方向とは反対方向に前記インクリボンを巻き戻す第三リボン制御部と
を備え、
前記第二リボン制御部は、前記第三リボン制御部による前記印刷媒体の巻き戻し後、前回の印刷で使用した前記インクリボンのうち前記所定の間隔に対応する未使用の領域が印刷位置に配置するように、前記リボン駆動部を加速して前記インクリボンを搬送し、
前記印刷手段は、前記印刷開始位置まで搬送された前記印刷媒体に対して、前記インクリボンの前記未使用の領域を使用して印刷を実行する第一印刷手段を備えた
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記第二リボン制御部は、前記第三リボン制御部による前記印刷媒体の巻き戻し後、前回の印刷で使用した前記インクリボンのうち前記搬送方向の上流側の使用済みの領域よりも上流側の未使用の領域が印刷位置に配置するように、前記リボン駆動部を加速して前記インクリボンを搬送し、
前記印刷手段は、前回の印刷で使用した前記インクリボンのうち前記未使用の領域を使用して印刷を実行する第二印刷手段を備えた
ことを特徴とする請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
印刷開始まで前記インクリボンを減速し続けた場合に前記インクリボンが搬送されるリボン搬送距離が、前記印刷開始位置までの前記インクリボンの残りの搬送距離よりも小さいか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段により前記リボン搬送距離が前記残りの搬送距離よりも大きいと判断された場合、前記印刷手段は、前記第二印刷手段による印刷を実行する
ことを特徴とする請求項4に記載の印刷装置。
【請求項6】
搬送方向に搬送される印刷媒体に印刷可能なサーマルヘッドと、前記サーマルヘッドと前記印刷媒体との間に配置され且つ前記サーマルヘッドにより前記印刷媒体にインクが転写されるインクリボンを、前記搬送方向に沿って搬送可能なリボン駆動部と、前記印刷媒体が搬送される速度である媒体搬送速度を検出する速度検出部とを備える印刷装置による印刷方法であって、
前記インクリボンが前記搬送方向へ搬送される速度であるリボン搬送速度が、前記印刷媒体の予め定められた基準速度と同期した速度になるように 、前記リボン駆動部を制御する第一リボン制御工程と、
印刷の開始を示す印刷信号を受信してから前記インクリボンの搬送を開始するまでの時間を遅延時間とし、前記遅延時間が経過した後に、前記インクリボンの搬送を開始してから前記インクリボンを所定の印刷位置まで搬送するまでの前記リボン駆動部を加速する時間を加速時間とし、前記印刷信号を受信してから前記印刷媒体への印刷を開始するまでの前記遅延時間と前記加速時間とを含む時間を印刷準備時間とし、前記第一リボン制御工程により前記リボン駆動部を駆動した場合、前記印刷準備時間において、前記インクリボンを前記搬送方向に搬送する距離である第一距離を特定する第一特定工程と、
前記速度検出部により検出した前記媒体搬送速度で印刷を開始可能な印刷開始位置まで前記印刷媒体が搬送される間に、前記インクリボンを前記搬送方向に搬送する距離が、前記第一特定工程により特定した前記第一距離となるように、前記遅延時間を変更せずに、前記リボン駆動部の加速度を設定する加速度設定工程と、
前記加速度設定工程により設定した前記加速度に基づき、前記リボン駆動部を駆動する第二リボン制御工程と
を備えたことを特徴とする印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置及び印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のサーマルプリンタは、サーマルヘッド、インクリボン、及びリボン制御部を備える。サーマルヘッドは、所定速度で搬送される被印刷物に印刷を行う。インクリボンは、サーマルヘッドにより印刷を行う際にインクが被印刷物に転写される。リボン駆動部は、インクリボンを移動させる。リボン制御部は、被印刷物の移動速度とインクリボンの移動速度とが同じ移動速度になるように、リボン駆動部を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記サーマルプリンタは、印刷実行時にインクリボンを搬送方向へ搬送する場合、被印字物の搬送速度が変化する場合がある。この場合、サーマルプリンタは、被印字物の速度とインクリボンの速度との同期がとれない。サーマルプリンタは、同期がとれていない状態で印刷を継続した場合、インクリボンの使用間隔が狭くなる又は広がることがある。故に、サーマルプリンタは、効率的にインクリボンを使用できない可能性があった。
【0005】
本発明の目的は、インクリボンを効率よく使用できる印刷装置及び印刷方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一態様に係る印刷装置は、搬送方向に搬送される印刷可能な印刷を行うサーマルヘッドと、前記サーマルヘッドと前記印刷媒体との間に配置され且つ前記サーマルヘッドにより前記印刷媒体にインクが転写されるインクリボンを、前記搬送方向に沿って搬送可能なリボン駆動部と、前記インクリボンが前記搬送方向へ搬送される速度であるリボン搬送速度が、前記印刷媒体の予め定められた基準速度と同期した速度になるように、前記リボン駆動部を制御する第一リボン制御部と、前記印刷媒体が搬送される速度である媒体搬送速度を検出する速度検出部とを備え、印刷の開始を示す印刷信号を受信してから前記インクリボンの搬送を開始するまでの時間を遅延時間とし、前記遅延時間が経過した後に、前記インクリボンの搬送を開始してから前記インクリボンを所定の印刷位置まで搬送するまでの前記リボン駆動部を加速する時間を加速時間とし、前記印刷信号を受信してから前記印刷媒体への印刷を開始するまでの前記遅延時間と前記加速時間とを含む時間を印刷準備時間とし、前記第一リボン制御部により前記リボン駆動部を駆動した場合、前記印刷準備時間において、前記インクリボンを前記搬送方向に搬送する距離である第一距離を特定する第一特定手段と、前記速度検出部により検出した前記媒体搬送速度で印刷を開始可能な印刷開始位置まで前記印刷媒体が搬送される間に、前記インクリボンを前記搬送方向に搬送する距離が、前記第一特定手段により特定した前記第一距離となるように、前記遅延時間を変更せずに、前記リボン駆動部の加速度を設定する加速度設定手段と、前記加速度設定手段により設定した前記加速度に基づき、前記リボン駆動部を駆動する第二リボン制御部とを備えたことを特徴とする。印刷装置は、印刷媒体の実際の媒体搬送速度に応じて、インクリボンの加速度を設定する。故に、印刷装置は、インクリボンを効率よく使用できる。
【0007】
前記媒体搬送速度が前記基準速度より速い場合、前記加速度設定手段は前記インクリボンの前記リボン搬送速度が加速するように前記加速度を設定し、前記媒体搬送速度が前記基準速度より遅い場合、前記加速度設定手段は前記インクリボンの前記リボン搬送速度が減速するように前記加速度を設定してもよい。印刷装置は、媒体搬送速度で印刷媒体が印刷開始位置へ到達するまでに、インクリボンを印刷可能な位置まで搬送できる。
【0008】
前記搬送方向において所定の間隔を開けて複数のオブジェクトを配置した印刷イメージを、複数回に亘って連続して印刷する印刷手段と、前記印刷手段により1つの前記印刷イメージの印刷完了後、前記搬送方向とは反対方向に前記インクリボンを巻き戻す第三リボン制御部とを備え、前記第二リボン制御部は、前記第三リボン制御部による前記印刷媒体の巻き戻し後、前回の印刷で使用した前記インクリボンのうち前記所定の間隔に対応する未使用の領域が印刷位置に配置するように、前記リボン駆動部を加速して前記インクリボンを搬送し、前記印刷手段は、前記印刷開始位置まで搬送された前記印刷媒体に対して、前記インクリボンの前記未使用の領域を使用して印刷を実行する第一印刷手段を備えてもよい。印刷装置は、前回の印刷で使用したインクリボンのうち所定の間隔に対応する未使用の領域を使用して印刷する。故に、印刷装置は、効率的にインクリボンを使用できる。
【0009】
前記第二リボン制御部は、前記第三リボン制御部による前記印刷媒体の巻き戻し後、前回の印刷で使用した前記インクリボンのうち前記搬送方向の上流側の使用済みの領域よりも上流側の未使用の領域が印刷位置に配置するように、前記リボン駆動部を加速して前記インクリボンを搬送し、前記印刷手段は、前回の印刷で使用した前記インクリボンのうち前記未使用の領域を使用して印刷を実行する第二印刷手段を備えてもよい。印刷装置は、使用済みの領域よりも更に搬送方向の上流側の未使用領域を使用して印刷できる。
【0010】
印刷開始まで前記インクリボンを減速し続けた場合に前記インクリボンが搬送されるリボン搬送距離が、前記印刷開始位置までの前記インクリボンの残りの搬送距離よりも小さいか否かを判断する判断手段と、前記判断手段により前記リボン搬送距離が前記残りの搬送距離よりも大きいと判断された場合、前記印刷手段は、前記第二印刷手段による印刷を実行してもよい。印刷装置は、リボン搬送距離が残りの搬送距離よりも小さい場合、使用済みの領域よりも更に搬送方向の上流側にある未使用の領域を使用して印刷を実行する。これにより、印刷装置は、使用済みのインクリボンの領域が再度使用され、印刷品質が劣化するのを抑制できる。
【0011】
本発明の第二態様に係る印刷方法は、搬送方向に搬送される印刷媒体に印刷可能なサーマルヘッドと、前記サーマルヘッドと前記印刷媒体との間に配置され且つ前記サーマルヘッドにより前記印刷媒体にインクが転写されるインクリボンを、前記搬送方向に沿って搬送可能なリボン駆動部と、前記印刷媒体が搬送される速度である媒体搬送速度を検出する速度検出部とを備える印刷装置による印刷方法であって、前記インクリボンが前記搬送方向へ搬送される速度であるリボン搬送速度が、前記印刷媒体の予め定められた基準速度と同期した速度になるように 、前記リボン駆動部を制御する第一リボン制御工程と、印刷の開始を示す印刷信号を受信してから前記インクリボンの搬送を開始するまでの時間を遅延時間とし、前記遅延時間が経過した後に、前記インクリボンの搬送を開始してから前記インクリボンを所定の印刷位置まで搬送するまでの前記リボン駆動部を加速する時間を加速時間とし、前記印刷信号を受信してから前記印刷媒体への印刷を開始するまでの前記遅延時間と前記加速時間とを含む時間を印刷準備時間とし、前記第一リボン制御工程により前記リボン駆動部を駆動した場合、前記印刷準備時間において、前記インクリボンを前記搬送方向に搬送する距離である第一距離を特定する第一特定工程と、前記速度検出部により検出した前記媒体搬送速度で印刷を開始可能な印刷開始位置まで前記印刷媒体が搬送される間に、前記インクリボンを前記搬送方向に搬送する距離が、前記第一特定工程により特定した前記第一距離となるように、前記遅延時間を変更せずに、前記リボン駆動部の加速度を設定する加速度設定工程と、前記加速度設定工程により設定した前記加速度に基づき、前記リボン駆動部を駆動する第二リボン制御工程とを備えたことを特徴とする。印刷方法は、印刷媒体の実際の媒体搬送速度に応じて、インクリボンの加速度を設定する。故に、印刷方法は、インクリボンを効率よく使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】印刷システム1の電気的構成を示すブロック図である。
【
図4】印刷媒体Pに印刷イメージImが印刷された状態を示す図である。
【
図5】印刷媒体Pの基準速度Vrefとインクリボン9Aの搬送速度Vreとの関係を示す図である。
【
図6】通常モードにおけるインクリボン9Aの使用跡を示す図である。
【
図7】節約モードにおけるインクリボン9Aの使用跡を示す図である。
【
図8】印刷媒体Pの搬送速度Vs1と加減速後のインクリボン9Aの搬送速度Vr1との関係を示す図である。
【
図9】印刷媒体Pの搬送速度Vs2と加減速後のインクリボン9Aの搬送速度Vr2との関係を示す図である。
【
図11】メイン処理を示すフローチャートであって、
図10の続きである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<印刷システム1の概要>
本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。印刷システム1は、熱転写型の印刷を行うためのシステムである。印刷システム1は、外部機器8(
図3参照)によって搬送される印刷媒体Pに対して印刷を行う。外部機器8の具体例として、包材を搬送する包装機が挙げられる。この場合、例えば印刷システム1は、包装機によって印刷媒体Pが搬送される搬送ラインの一部に組み込まれて使用される。
【0014】
図1に示すように、印刷システム1は、印刷装置2、カセット9、ブラケット6、及びコントローラ7(
図3参照)を有する。以下、図の説明の理解を助けるため、印刷システム1に含まれる各構成の上方、下方、左方、右方、前方、及び後方を定義する。印刷装置2の上方、下方、左方、右方、前方、及び後方は、夫々、
図1の上方、下方、左方、右方、手前、及び奥に夫々対応する。
【0015】
図1において、印刷媒体Pの搬送方向(矢印Y1の方向)は、左右方向と一致する。印刷媒体Pは、外部機器8によって左方に搬送される。印刷装置2は、カセット9に装着されたインクリボン9Aをサーマルヘッド24により加熱することで、印刷媒体Pに印刷を行う。
【0016】
<カセット9>
図2に示すように、カセット9は、シャフト92A~92F、供給ロール90A、及び巻取ロール90Bを有する。シャフト92A~92Fは、前後方向に延びる回転軸を中心として回転可能なスピンドルである。シャフト92Aには、インクリボン9Aの一端が接続されたスプール921が装着される。シャフト92Fには、インクリボン9Aの他端が接続されたスプール922が装着される。スプール921、922には、夫々、インクリボン9Aがロール状に巻回される。スプール921にインクリボン9Aが巻回されることにより、供給ロール90Aが構成される。スプール922にインクリボン9Aが巻回されることにより、巻取ロール90Bが構成される。
【0017】
<印刷装置2>
図2に示すように、印刷装置2は、プラテンローラQの上方に配置される。プラテンローラQは円柱状を有し、前後方向に延びる回転軸を中心として回転可能である。プラテンローラQには、エンコーダ11(
図3参照)が設けられる。印刷装置2は、筐体20及びベースプレート21を有する。筐体20は箱状を有し、カセット9を収容可能な収容部を内部に有する。ベースプレート21は略正方形の板状を有し、前後方向と直交する。ベースプレート21の前方に、供給部22A、装着部22B~22E、巻取部22F、サーマルヘッド24、非図示の制御基板、ホールセンサ28A、28B(
図3参照)が設けられる。ベースプレート21の後方に、リボン駆動源26(
図3参照)及びヘッド駆動源27(
図3参照)が設けられる。
【0018】
供給部22A及び巻取部22Fは、ベースプレート21の上下方向の略中央において、左右方向に並ぶ。装着部22Bは、ベースプレート21の右上の隅に設けられる。装着部22Cは、ベースプレート21の右下の隅に設けられる。装着部22Dは、ベースプレート21の左下の隅に設けられる。装着部22Eは、ベースプレート21の左上の隅に設けられる。カセット9が印刷装置2に装着された場合、シャフト92A~92Fは、供給部22A、装着部22B~22E、及び巻取部22Fに夫々接続される。シャフト92Aのスプール921に巻回された供給ロール90Aは、供給部22Aに装着される。シャフト92Fのスプール922に巻回された巻取ロール90Bは、巻取部22Fに装着される。
【0019】
リボン駆動源26(
図3参照)は、第一リボンモータ26A及び第二リボンモータ26B(
図3参照)を有する。第一リボンモータ26A及び第二リボンモータ26Bはステッピングモータである。第一リボンモータ26Aの回転軸は、供給部22Aに接続する。第一リボンモータ26Aは供給部22Aを回転駆動する。第二リボンモータ26Bの回転軸は、巻取部22Fに接続する。第二リボンモータ26Bは巻取部22Fを回転駆動する。印刷装置2にカセット9が装着された状態で供給部22A及び巻取部22Fが回転した場合、インクリボン9Aは、供給ロール90A及び巻取ロール90B間でシャフト92B~92Eに接触して案内されながら、印刷装置2内を搬送される。装着部22C、22D間で搬送されるインクリボン9Aの移動方向を、「インクリボン9Aの搬送方向」という。
【0020】
サーマルヘッド24は、ベースプレート21の前面の上下方向略中央よりも下側、且つ、装着部22C、22Dの間の部分に設けられる。サーマルヘッド24は、前後方向に直線状に並んだ複数の加熱素子24Aを有するラインサーマルヘッドである。サーマルヘッド24は、カセット9の供給ロール90Aから巻取ロール90Bに向けて搬送されるインクリボン9Aのうち、シャフト92C、92D間に張り渡された部分に上側から接触する。サーマルヘッド24は、印刷装置2の下方に配置されたプラテンローラQとの間に、印刷媒体P及びインクリボン9Aを挟む。サーマルヘッド24は、印刷媒体Pにインクリボン9Aを押し付けながらインクリボン9Aを加熱することによって、印刷媒体Pに対する印刷を行う。
【0021】
ヘッド駆動源27(
図3参照)は、第一ヘッドモータ27A及び第二ヘッドモータ27B(
図3参照)を有する。第一ヘッドモータ27A及び第二ヘッドモータ27Bはステッピングモータである。第一ヘッドモータ27Aは、ギアを介してサーマルヘッド24に接続する。ギアは、第一ヘッドモータ27Aの回転駆動によってサーマルヘッド24を上下方向(矢印Y2の方向)に移動させる。サーマルヘッド24は、下方に移動することによってプラテンローラQに接近し、上方に移動することによってプラテンローラQから離れる。第二ヘッドモータ27Bは、プーリー及びベルトを介してサーマルヘッド24に接続する。プーリー及びベルトは、第二ヘッドモータ27Bの回転駆動によってサーマルヘッド24を左右方向に移動させる。第二ヘッドモータ27Bの回転駆動によるサーマルヘッド24の移動方向(左右方向)は、プラテンローラQの回転軸の延びる方向(前後方向)と、第一ヘッドモータ27Aの回転駆動によるサーマルヘッド24の移動方向(上下方向)との両方と直交し、インクリボン9Aの搬送方向と並行である。サーマルヘッド24は、第一ヘッドモータ27A及び第二ヘッドモータ27Bにより、矩形状の範囲240内で移動可能となる。
【0022】
サーマルヘッド24の移動可能な範囲240について詳細に説明する。プラテンローラQの中心を通って上下方向に延び且つベースプレート21に沿って延びる仮想線を、基準線Bという。サーマルヘッド24は、第一ヘッドモータ27Aの回転駆動に応じて基準線Bに沿って上下方向に移動することにより、第一位置S1、第二位置S2、及び第三位置S3の何れかの位置に配置される。第一位置S1は、基準線Bに沿った位置のうち範囲240の上端の位置に対応する。サーマルヘッド24が第一位置S1に配置された状態で、加熱素子24Aはインクリボン9Aから離隔する。
【0023】
第三位置S3は、基準線Bに沿った位置のうち範囲240の下端よりも僅かに上方の位置に対応する。第三位置S3は、印刷装置2の印刷時におけるサーマルヘッド24の位置である。サーマルヘッド24が第三位置S3に配置された場合における加熱素子24Aの位置を、「印刷位置Sp」という。印刷位置Spは、プラテンローラQの側面のうち上方に最も突出した位置、言い換えれば、プラテンローラQの側面のうち、第一ヘッドモータ27Aの回転駆動によるサーマルヘッド24の移動方向(上下方向)において、第一位置S1に配置されたサーマルヘッド24に最も近接する位置である。なお厳密には、印刷位置Spは、プラテンローラQの側面のうち上方に最も突出した位置でサーマルヘッド24との間にインクリボン9Aを挟んだ状態で、インクリボン9Aの転写に必要な押し当て強さになるように第一ヘッドモータ27Aを回転駆動させた場合の加熱素子24Aの位置である。
【0024】
第二位置S2は、第三位置S3よりも僅かに上方に位置する。第二位置S2は、第一位置S1よりもプラテンローラQに近く、且つ第三位置S3よりもプラテンローラQから遠い位置である。サーマルヘッド24が第二位置S2及び第三位置S3に配置された状態で、加熱素子24Aはインクリボン9Aに接触する。
【0025】
サーマルヘッド24は更に、第二ヘッドモータ27Bの回転駆動により、第三位置S3に配置された状態から左右方向に移動可能である。なお、例えば、サーマルヘッド24の左右方向の移動時において、加熱素子24AがプラテンローラQの側面に沿って移動した場合、サーマルヘッド24は、基準線Bから左右方向に離隔する程、下方に移動する(
図3参照)。このため印刷位置Spは、プラテンローラQの側面に沿って加熱素子24Aが移動するようにサーマルヘッド24が左右方向に移動した場合において、サーマルヘッド24が上方に最も移動した場合の加熱素子24Aの位置に対応する。
【0026】
制御基板には、制御部2A及び記憶部2Bが実装される(
図3参照)。ホールセンサ28A、28B(
図3参照)は、サーマルヘッド24の近傍に設けられる。ホールセンサ28A、28Bは、サーマルヘッド24に取り付けられた磁石の磁界の強さを検出し、検出された磁界の強さを示す信号を制御部2Aに出力する。ホールセンサ28Aにより検出される磁界の強さは、サーマルヘッド24の上下方向の移動に応じて変化する。このため制御部2Aは、ホールセンサ28Aから出力される信号に基づき、サーマルヘッド24の上下方向の位置を特定可能である。ホールセンサ28Bにより検出される磁界の強さは、サーマルヘッド24の左右方向の移動に応じて変化する。このため制御部2Aは、ホールセンサ28Bから出力される信号に基づき、サーマルヘッド24の左右方向の位置を特定可能である。
【0027】
<ブラケット6>
図1に示すように、ブラケット6は、印刷媒体P(
図2参照)の搬送方向である左右方向と直交する前後方向(矢印Y3の方向)に印刷装置2を移動させる。ブラケット6は、支持部61、ブラケットモータ62、非図示のリードスクリュー、非図示のボールねじを有する。支持部61は、前後方向に長い略箱状を有する。リードスクリューは、支持部61の内部に配置され、前後方向に延びる。リードスクリューの後端部は、ブラケットモータ62の回転軸に連結する。ボールねじは、リードスクリューに螺合し、リードスクリューの回転に応じて前後方向に移動する。ボールねじは、印刷装置2の筐体20Aの右端部から延びる連結部20Cに接続する。印刷装置2は、リードスクリューの回転によってボールねじが前後方向に移動することに応じ、前後方向に移動する。
ブラケット
【0028】
<コントローラ7>
図2に示すように、コントローラ7は、PC5及び外部機器8と印刷装置2との間に介在する。コントローラ7は、印刷装置2が印刷を実行するために必要なデータを、印刷装置2に出力する。コントローラ7から印刷装置2に出力されるデータの具体例として、印刷イメージImのデータが挙げられる。また、コントローラ7は、PC5及び外部機器8から出力される信号を印刷装置2に伝達する。PC5又は外部機器8から出力される信号として、印刷装置2を印刷可能な状態とするための準備信号、印刷媒体Pの搬送速度Vs(
図8、
図9参照)を示す速度信号が挙げられる。外部機器8から出力される信号として、印刷媒体Pの搬送開始信号/搬送停止信号、印刷媒体Pに対する印刷時期を通知するための印刷信号が挙げられる。
【0029】
<電気的構成>
図3を参照し、印刷システム1の電気的構成について説明する。印刷装置2は、制御部2A、記憶部2B、通信インタフェース2C、サーマルヘッド24、第一リボンモータ26A、第二リボンモータ26B、第一ヘッドモータ27A、第二ヘッドモータ27B、ホールセンサ28A、28B、エンコーダ260A、260B、270A、270B、出力部2Dを有する。制御部2Aは、記憶部2B、通信インタフェース2C、サーマルヘッド24、第一リボンモータ26A、第二リボンモータ26B、第一ヘッドモータ27A、第二ヘッドモータ27B、エンコーダ260A、260B、270A、270B、ホールセンサ28A、28B、出力部2Dと電気的に接続する。
【0030】
制御部2Aは、記憶部2Bに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、メイン処理(
図10、
図11参照)を実行する。記憶部2Bには、制御部2Aがメイン処理を実行するためのプログラムが記憶される。通信インタフェース2Cは、印刷装置2とコントローラ7との間で通信を行う為のインタフェース素子である。通信インタフェース2Cは、通信ケーブルを介してコントローラ7に接続される。
【0031】
サーマルヘッド24は、制御部2Aからの制御信号に応じて加熱素子24Aに通電し、加熱素子24Aを発熱させる。第一リボンモータ26Aは、制御部2Aから出力されるパルス信号に応じて回転し、カセット9の供給ロール90Aからインクリボン9Aを繰り出す。第二リボンモータ26Bは、制御部2Aから出力されるパルス信号に応じて回転し、カセット9の巻取ロール90Bにインクリボン9Aを巻き取る。第一ヘッドモータ27Aは、制御部2Aから出力されるパルス信号に応じて回転し、サーマルヘッド24を上下方向に移動させる。第二ヘッドモータ27Bは、制御部2Aから出力されるパルス信号に応じて回転し、サーマルヘッド24を左右方向に移動させる。エンコーダ260A、260B、270A、270Bは、夫々、第一リボンモータ26A、第二リボンモータ26B、第一ヘッドモータ27A、及び第二ヘッドモータ27Bの回転軸の回転位置及び回転量を検出する。エンコーダ260A、260B、270A、270Bは、夫々、検出された回転位置及び回転量を示す信号を、制御部2Aに出力する。
【0032】
ホールセンサ28A、28Bは、サーマルヘッド24に取り付けられた磁石の磁界の強さを検出し、検出した磁界の強さを示す信号を制御部2Aに出力する。出力部2Dは、印刷装置2の状態等を表示する表示部である。
【0033】
コントローラ7は、制御部7A、記憶部7B、通信インタフェース7C、7Dを有する。通信インタフェース7Cは、印刷装置2とコントローラ7との間で通信を行う為のインタフェース素子である。通信インタフェース7Cは、通信ケーブルを介して印刷装置2に接続される。通信インタフェース7Dは、PC5及び外部機器8とコントローラ7との間で通信を行うためのインタフェース素子である。通信インタフェース7Dは、通信ケーブルを介してPC5及び外部機器8に接続される。記憶部7Bには、印刷装置2が印刷を実行するために必要なデータが記憶される。制御部7Aは、記憶部7B及び通信インタフェース7C、7Dと電気的に接続する。制御部7Aは、印刷装置2が印刷を実行するために必要なデータを記憶部7Bから読み出し、通信インタフェース7Cを介して印刷装置2に出力する。制御部7Aは、通信インタフェース7Dを介してPC5及び外部機器8から受信した信号を検出し、通信インタフェース7Cを介して印刷装置2に出力する。
【0034】
外部機器8は、制御部8A、操作パネル8B、通信インタフェース8Cを有する。操作パネル8Bは、外部機器8に対する指示が入力される。通信インタフェース8Cは、外部機器8とコントローラ7との間で通信を行う為のインタフェース素子である。通信インタフェース8Cは、通信ケーブルを介してコントローラ7に接続する。制御部8Aは、操作パネル8B及び通信インタフェース8Cと電気的に接続する。制御部8Aは、操作パネル8Bに対して入力された指示を受け付ける。制御部8Aは、通信インタフェース8Cを介して各種信号をコントローラ7に出力する。
【0035】
エンコーダ11は、制御部8Aの通信インタフェース8Cに接続される。エンコーダ11は、プラテンローラQの回転数を検出可能なロータリーエンコーダである。エンコーダ11は、光源、格子円盤、及び受光素子を有する。格子円盤は、プラテンローラQの回転軸に設けられる。受光素子は、格子円盤のスリットを通過する光を検出する。エンコーダ11は、受光素子により光を検出したことに応じ、パルス信号を、制御部2Aに出力する。制御部2Aは、エンコーダ11の検出結果に基づき、印刷媒体Pの基準速度Vref、搬送速度Vs等を検出可能である。
【0036】
<印刷動作概要>
図2、
図4、及び
図5を参照し、印刷システム1における印刷動作の概要について説明する。例えば、印刷動作では、
図4に示す印刷イメージImが印刷媒体Pに印刷されるものとする。印刷装置2のサーマルヘッド24は、カセット9が脱離された状態で第一位置S1に配置される。印刷装置2は、カセット9が装着されたことに応じて第一ヘッドモータ27Aを回転駆動し、サーマルヘッド24を第一位置S1から第二位置S2まで下方に移動させる。コントローラ7は、例えば、印刷イメージIm(
図4参照)を含むデータを印刷装置2に出力する。印刷装置2は、データを受信して記憶部2Bに記憶する。
【0037】
外部機器8による印刷媒体Pの搬送が開始されることに応じ、印刷媒体Pの搬送を開始する搬送開始信号、及び、印刷媒体Pの基準速度Vref(
図5参照)を示す速度信号が外部機器8から出力される。速度信号は、エンコーダ11の出力結果に基づき出力される。基準速度Vrefは、予め想定された基準となる印刷媒体Pの速度である。印刷装置2は、コントローラ7を介して搬送開始信号及び速度信号を受信する。
【0038】
図5に示すように、時刻t0では、制御部2Aは、準備信号を受け付ける。例えば準備信号は、印刷媒体Pが所定距離搬送された場合に制御部2Aに出力される。時刻t0から遅延時間P1を経過した時刻t1では、制御部2Aは、リボン駆動源26を駆動してインクリボン9Aの搬送を開始する。つまり、遅延時間P1は、印刷準備の開始を示す準備信号を受信してからインクリボン9Aの搬送を開始するまでの時間である。遅延時間P1は、時刻t0~時刻t1までの時間である。なお、遅延時間P1は、基準速度Vref等の設定値から一意に決まる時間である。
【0039】
時刻tsynでは、インクリボン9Aの搬送速度Vr1は、印刷媒体Pの基準速度Vrefに同期をとれた速度となる。時刻tsyn以降では、インクリボン9Aは、搬送経路において印刷媒体Pに同期した速度で左方に移動する。インクリボン9A及び印刷媒体Pは左方に並走する。つまり、制御部2Aは、速度信号で示される基準速度Vrefに同期した速度でインクリボン9Aが搬送されるように、第一リボンモータ26A及び第二リボンモータ26Bを回転駆動して供給ロール90A及び巻取ロール90Bを回転させる。
【0040】
印刷媒体Pは、時刻t2において、予め想定する印刷位置Prefに到達する。時刻t1~t2までの期間を、加速時間P2という。加速時間P2は、時刻t1から時刻t2までの加速時間P2の間に、インクリボン9Aを所定の印刷位置まで搬送するまでのリボン駆動源26を加速する時間である。加速時間P2では、リボン駆動源26は、予め想定する第一距離Lef(
図5(b)参照)の分だけ搬送方向に搬送する。つまり、制御部2Aは、加速時間P2におけるインクリボン9Aの移動距離が第一距離Lrefとなるように、リボン駆動源26の加速度を設定する。なお、第一距離Lrefは、インクリボン9Aの搬送速度Vr1を時刻t1から時刻t2までの範囲で積分することで特定される。また、第一距離Lrefは、
図5(b)に示す図形の面積に相当する。印刷準備時間P3は、時刻t0~時刻t2までの時間であり、遅延時間P1と加速時間P2とを含む。
【0041】
時刻t2では、印刷媒体Pに対する印刷時期を通知する印刷信号が、外部機器8から出力される。印刷装置2は、コントローラ7を介して印刷信号を受信する。印刷装置2は、印刷信号の受信に応じて第一ヘッドモータ27Aを回転駆動し、サーマルヘッド24を第二位置S2から第三位置S3まで下方に移動させる。サーマルヘッド24は、プラテンローラQとの間にインクリボン9A及び印刷媒体Pを挟み、印刷媒体Pにインクリボン9Aを押し付ける。
【0042】
サーマルヘッド24の加熱素子24Aは、記憶部2Bに記憶されたデータに基づいて発熱する。インクリボン9Aのインクが印刷媒体Pに転写され、例えば印刷イメージImのオブジェクトIm1(
図4参照)が印刷される。つまり、サーマルヘッド24は、予め定められた所定の基準速度Vrefで搬送方向に搬送される印刷媒体Pに印刷を行う。なお、サーマルヘッド24によるインクリボン9Aの前後方向の加熱位置を調整するために、ブラケット6は、ブラケットモータ62の回転駆動により印刷装置2を前後方向に移動させる場合がある。
【0043】
印刷イメージImのオブジェクトIm1の印刷後、第一ヘッドモータ27Aが回転駆動し、サーマルヘッド24は第三位置S3から第二位置S2まで上方に移動する。また、リボン駆動源26が逆方向に回転駆動し、インクリボン9Aは、所定の距離の分だけ搬送方向の上流側に巻き戻される。
【0044】
制御部2Aは、再び準備信号を受け付け且つ遅延時間P1が経過すると、インクリボン9Aを搬送速度Vreで搬送方向に搬送し、時刻tsynにて印刷媒体Pの基準速度Vrefに同期させる。制御部2Aは、時刻t2にて印刷信号を受け付けると、オブジェクトIm2の印刷を実行する。印刷装置2は、上記動作を繰り返すことで、残りのオブジェクトIm3、Im4の印刷を実行する。各オブジェクトIm1~Im4は、搬送方向に所定の間隔で並ぶ。
【0045】
印刷イメージImの印刷が完了した場合、外部機器8による印刷媒体Pの搬送が停止されることに応じ、印刷媒体Pの搬送を停止する搬送停止信号が外部機器8から出力される。印刷装置2は、コントローラ7を介して搬送停止信号を受信する。印刷装置2は、第一リボンモータ26A及び第二リボンモータ26Bの回転を停止させる。これにより、供給ロール90A及び巻取ロール90Bの回転も停止し、インクリボン9Aの搬送は停止される。
【0046】
図6を参照して、通常モードにおけるインクリボン9Aの使用跡について説明する。例えば、印刷システム1の印刷動作によりオブジェクトIm1~Im4(
図4参照)が順次印刷される場合を想定する。制御部2Aは、印刷媒体Pの基準速度Vrefに同期させ、インクリボン9Aの第一領域r1を印刷位置まで搬送させる。
【0047】
一回目の印刷信号を受信した場合、制御部2Aは、印刷位置に搬送されたインクリボン9Aの2つの第一領域r1を使用して、オブジェクトIm1を夫々印刷する。この場合、2つの第一領域r1の間に未使用の領域Raが発生する。制御部2Aは、前回の印刷で使用したインクリボン9Aのうち搬送方向の上流側の使用済みの第一領域r1よりも上流側の未使用の第二領域r2が印刷位置に配置するように、インクリボン9Aを搬送する。
【0048】
二回目の印刷信号を受信した場合、制御部2Aは、印刷位置に搬送されたインクリボン9Aの2つの第二領域r2を使用して、オブジェクトIm2を夫々印刷する。この場合、2つの第二領域r2の間に未使用の領域Rbが発生する。制御部2Aは、前回の印刷で使用したインクリボン9Aのうち搬送方向の上流側の使用済みの第二領域r2よりも上流側の未使用の第三領域r3が印刷位置に配置するように、インクリボン9Aを搬送する。
【0049】
二回目の印刷信号を受信した場合、制御部2Aは、印刷位置に搬送されたインクリボン9Aの2つの第三領域r3を使用して、オブジェクトIm3を夫々印刷する。この場合、2つの第三領域r3の間に未使用の領域Rcが発生する。制御部2Aは、前回の印刷で使用したインクリボン9Aのうち搬送方向の上流側の使用済みの第三領域r3よりも上流側の未使用の第四領域r4が印刷位置に配置するように、インクリボン9Aを搬送する。
【0050】
四回目の印刷信号を受信した場合、制御部2Aは、印刷位置に搬送されたインクリボン9Aの2つの第四領域r4を使用して、オブジェクトIm4を夫々印刷する。この場合、2つの第四領域r4の間に未使用の領域Rdが発生する。
【0051】
図7を参照して、節約モードにおけるインクリボン9Aの使用跡について説明する。節約モードでは、例えば、一回目の印刷信号を受信した場合、制御部2Aは、インクリボン9Aの第一領域r1を使用して、オブジェクトIm1の印刷を実行する。2つの第一領域r1の間には、未使用の領域Raが発生する。未使用の領域Raは、例えば、オブジェクトIm2のうち、「AAAAAA」の印刷に使用可能である。この場合、制御部2Aは、リボン駆動源26を制御して、インクリボン9Aを搬送方向の上流側に巻き戻す。制御部2Aは、インクリボン9Aを搬送方向に搬送させ、印刷媒体Pの基準速度Vrefに同期させる。
【0052】
二回目の印刷信号を受信した場合、制御部2Aは、前回の印刷で使用されなかったインクリボン9Aの第二領域r2を使用してオブジェクトIm2印刷を実行する。制御部2Aは、前回の印刷で使用したインクリボン9Aのうち搬送方向の上流側の使用済みの第二領域r2よりも上流側の未使用の第三領域r3が印刷位置に配置するように、インクリボン9Aを搬送する。
【0053】
三回目の印刷信号を受信した場合、制御部2Aは、2つの第三領域r3を使用してオブジェクトIm3の印刷を実行する。2つの第三領域r3の間には、未使用の領域Rbが形成される。未使用の領域Rbは、例えば、オブジェクトIm4のうち、「AAAAAA」の印刷に使用可能である。制御部2Aは、インクリボン9Aを巻き戻す。制御部2Aは、インクリボン9Aを搬送方向に搬送させ、印刷媒体Pの基準速度Vrefに同期させる。
【0054】
四回目の印刷信号を受信した場合、制御部2Aは、インクリボン9Aの第四領域r4を使用して、オブジェクトIm4の印刷を実行する。
【0055】
図8、
図9を参照して、インクリボン9Aの加減速について説明する。上記した印刷システム1の印刷動作の説明では、印刷媒体Pが予め想定された基準速度Vrefで移動することを前提に説明した。しかしながら、印刷媒体Pが搬送される速度は、基準速度Vrefとはならない。この場合、印刷媒体Pは、基準速度Vrefより速く又は遅く搬送される場合がある。
【0056】
図8に示すように、実際の印刷媒体Pの搬送速度Vs1が基準速度Vrefよりも速い場合、インクリボン9Aの搬送速度Vreは、印刷媒体Pの実際の搬送速度Vs1よりも遅くなる。従って、インクリボン9Aの使用跡は、想定される間隔よりも搬送方向に詰まった状態となる。前回の印刷で使用されたインクリボン9Aの使用跡が再度使用された場合、印刷品質が低下する可能性がある。
【0057】
一方、
図9に示すように、印刷媒体Pの搬送速度Vs2が基準速度Vrefより遅い場合、インクリボン9Aの搬送速度Vreは、印刷媒体Pの実際の搬送速度Vs2よりも速くなる。従って、インクリボン9Aの使用跡は、想定される間隔よりも搬送方向に延びた状態となる。この場合、インクリボン9Aは、未使用の領域が増える。故に、印刷システム1は、印刷媒体Pの実際の搬送速度Vs1、Vs2に応じて、インクリボン9Aを加減速する必要がある。
【0058】
図8に示すように、印刷媒体Pの搬送速度Vs1は、予め想定された基準速度Vrefよりも速い。このため、印刷媒体Pは、時刻t2よりも早い時刻tsにおいて印刷開始位置Psに到達する。インクリボン9Aは、現状の速度を維持した場合、印刷媒体Pが印刷位置Prefに到達するのに合わせて、印刷位置に到達しない。従って、制御部2Aは、印刷媒体Pが印刷開始位置Psに到達するまでに、想定した印刷位置にインクリボン9Aを搬送させる為、インクリボン9Aの搬送速度Vr1を加速する。
【0059】
時刻t1~時刻tpまでは、制御部2Aは、搬送速度Vr1の速度が加速するように加速度を設定する。この場合、インクリボン9Aの搬送速度Vr1は、一時的に印刷媒体Pの搬送速度Vs1よりも速くなる。この加速度を維持した場合、印刷媒体Pが印刷開始位置Psに到達するよりも前に、インクリボン9Aが印刷位置に搬送されてしまう。このため、時刻tp~時刻tsynまでは、制御部2Aは、搬送速度Vr1の速度が減速するように加速度を設定する。
【0060】
時刻tsynでは、インクリボン9Aの搬送速度Vr1は、印刷媒体Pの搬送速度Vs1と同期される。時刻tsでは、制御部2Aは、印刷信号を受け付け、印刷媒体Pに対して同期して搬送されるインクリボン9Aを使用して印刷を実行する。
【0061】
このようにインクリボン9Aが搬送されることで、インクリボン9Aは、時刻t1~tsまでに距離L1の分搬送される。この場合、距離L1は、第一距離Lref(
図5(b))と等しい。
図8(b)に示す図形の面積(距離L1)は、
図5(b)の図形の面積(第一距離Lref)に相当する。つまり、制御部2Aは、時刻t1~tsまでにインクリボン9Aが搬送される距離L1が第一距離Lefと等しくなるように、リボン駆動源26の加速度を決定する。故に、制御部2Aは、想定よりも早く印刷位置Prに到達する印刷媒体Sに同期して、想定した印刷位置までインクリボン9Aを搬送可能となる。
【0062】
図9に示すように、印刷媒体Pの搬送速度Vs2は、予め想定された基準速度Vrefよりも遅い。このため、印刷媒体Pは、時刻t2よりも遅い時刻tsにおいて印刷開始位置Psに到達する。インクリボン9Aは、現状の速度を維持した場合、印刷媒体Pが印刷位置Prefに到達するまでに、想定した印刷位置を超えて搬送される。従って、制御部2Aは、リボン駆動源26を駆動するための加速度を設定し、インクリボン9Aの搬送速度Vr2を減速する。
【0063】
時刻t1~時刻tp1では、制御部2Aは、搬送速度Vr2の速度が加速するように加速度を設定する。時刻tp1では、現在の加速度を維持した場合、インクリボン9Aは、印刷媒体Pが印刷開始位置Psに到達する前に所定の印刷位置を超えてしまう。従って、時刻tp1~時刻tp2では、制御部2Aは、例えば一定の速度となるよう加速度を設定する。時刻tp2では、現在の速度を維持した場合、インクリボン9Aは、印刷媒体Pが印刷開始位置Psに到達する場合に所定の印刷位置まで搬送されない。このため、制御部2Aは、時刻tp2から時刻tsynでは、搬送速度Vr1の速度が加速するように加速度を設定する。
【0064】
時刻tsynでは、インクリボン9Aの搬送速度Vr2と印刷媒体Pの搬送速度Vs2が同期される。時刻tsyn以降では、インクリボン9Aは、印刷媒体Pの搬送速度Vs2と同期した状態で搬送される。
【0065】
このようにインクリボン9Aが搬送されることで、インクリボン9Aは、時刻t1~tsまでに距離L2の分搬送される。この場合、搬送される距離L2は、第一距離Lrefと等しい。
図9(b)に示す図形の面積(距離L2)は、
図5(b)の図形の面積(第一距離Lref)に相当する。つまり、制御部2Aは、時刻t1~tsまでに搬送される距離L2が第一距離Lefと等しくなるように、リボン駆動源26の加速度を決定する。故に、想定よりも遅く印刷位置Prに到達する印刷媒体Pに同期して、想定した印刷位置までインクリボン9Aの移動が可能となる。
【0066】
<メイン処理>
図10、
図11を参照し、メイン処理について説明する。メイン処理は、ユーザにより印刷システム1の電源が投入されることで開始される。メイン処理が開始されると、制御部2Aは、印刷イメージIm等のデータを受け付けたか否か判断する(S1)。例えば、印刷イメージImは、ユーザにより入力される。また、ユーザは、印刷時のモードを通常モード又は節約モードに設定する。以下では、初期状態として、例えば節約モードが選択されているものとする。データを受け付けていないと判断した場合(S1:NO)、制御部2Aは、処理をS1に戻して待機する。
【0067】
一方、データを受け付けたと判断した場合(S1:YES)、制御部2Aは、搬送開始信号を受け付けたか否か判断する(S3)。搬送開始信号を受け付けていないと判断した場合(S3:NO)、制御部2Aは、処理をS3に戻し待機する。搬送開始信号を受け付けたと判断した場合(S3:YES)、制御部2Aは、印刷媒体Pの搬送方向への搬送を開始する(S5)。制御部2Aは、エンコーダ11の信号に基づき、印刷媒体Pが搬送される搬送速度Vs(例えばVs1、Vs2)の計測を開始する(S7)。
【0068】
制御部2Aは、準備信号を受け付けたか否か判断する(S9)。準備信号を受け付けていないと判断した場合(S9:NO)、制御部2Aは、処理をS9に戻し待機する。準備信号を受け付けたと判断した場合(S9:YES)、制御部2Aは、準備信号を受信してから遅延時間P1が経過したか否か判断する(S11)。遅延時間P1が経過していないと判断した場合(S11:NO)、制御部2Aは、処理をS11に戻し待機する。
【0069】
遅延時間P1が経過したと判断した場合(S11:YES)、制御部2Aは、インクリボン9Aの搬送方向へ搬送を開始する(S13)。制御部2Aは、インクリボン9Aを想定した印刷位置まで搬送速度Vreで搬送された場合に搬送される距離である第一距離Lrefを特定する(S15)。
【0070】
制御部2Aは、印刷信号を受信したか否か判断する(S17)。制御部2Aは、エンコーダ11の情報に基づき、印刷媒体Pが印刷開始位置Psに搬送される場合に出力される印刷信号を受信する。印刷信号を受信していないと判断した場合(S17:NO)、制御部2Aは搬送距離Larが搬送目標距離Lerよりも短いか否か判断する(S19)。搬送距離Larは、印刷開始までのインクリボン9Aの残りの搬送距離である。搬送目標距離Lerは、初期値における印刷開始までのインクリボン9Aの残りの目標とする距離である。
【0071】
搬送距離Larが搬送目標距離Lerよりも短いと判断した場合(S19:YES)、制御部2Aは、インクリボン9Aの搬送速度Vrを加速可能か否か判断する(S21)。加速をせずにインクリボン9Aが搬送された場合、印刷媒体Pの印刷開始位置Psへの到達よりもインクリボン9Aの到達が遅れるためである。この場合、制御部2Aは、リボン駆動源26の仕様の定格に基づき、加速が可能か否かを判断する。
【0072】
制御部2Aは、インクリボン9Aの搬送速度Vrを加速できないと判断した場合(S21:NO)、制御部2Aは、定格上限の加速度でリボン駆動源26を駆動する。制御部2Aは、処理をS17に進める。ここで、印刷信号を受け付けたと判断した場合(S17:YES)、制御部2Aは、搬送される印刷媒体Pに対して、定格上限の加速度でリボン駆動源26を駆動して搬送されたインクリボン9Aを使用して印刷を実行する(S27)。制御部2Aは、処理をS29に進める。
【0073】
この場合、制御部2Aは、インクリボン9Aの搬送速度Vrが印刷媒体Pの搬送速度Vsより遅く同期がとれない。しかしながら、印刷媒体Pの搬送速度Vsに近づくように加速されるので、インクリボン9Aの使用跡の間隔が更に短くなるのを低減できる。これにより、制御部2Aは、インクリボン9Aが重複して使用される可能性を抑制できる。
【0074】
一方、インクリボン9Aの搬送速度Vrを加速可能と判断した場合(S21:YES)、制御部2Aは、インクリボン9Aが搬送方向に搬送される搬送速度Vrが加速するように、リボン駆動源26の加速度を設定する(S23)。制御部2Aは、設定した加速度で、リボン駆動源26を駆動する(S25)。これにより、インクリボン9Aの搬送速度Vrは加速する。
【0075】
一方、搬送距離Larが搬送目標距離Ler以上と判断した場合(S19:NO)、制御部2Aは、リボン搬送距離Ldarが、印刷開始までのインクリボン9Aの残りの搬送距離Larよりも小さいか否か判断する(S35)。リボン搬送距離Ldarは、印刷開始までインクリボン9Aの搬送速度Vrを減速し続けた場合の搬送距離である。搬送距離Larは、印刷開始までのインクリボン9Aの残りの搬送距離である。リボン搬送距離Ldarが搬送距離Larよりも小さいと判断した場合(S35:YES)、制御部2Aは、インクリボン9Aの搬送速度Vrを減速可能か否か判断する(S37)。減速をせずにインクリボン9Aが搬送された場合、印刷媒体Pの印刷開始位置Psへの到達時に、インクリボン9Aが想定した印刷位置を超えて搬送されるためである。制御部2Aは、リボン駆動源26の定格の下限値に基づき、現在の速度よりも更に減速可能かを判断する。つまり、制御部2Aは、より遅い速度でインクリボン9Aを搬送する為に、現在の加速度よりも小さい加速度を設定可能か判断する。
【0076】
インクリボン9Aの搬送速度Vrを減速できないと判断した場合(S37:NO)、制御部2Aは、処理をS17に戻す。この場合、制御部2Aは、現在のリボン駆動源26の加速度を維持する。ここで、印刷信号を受け付けた場合(S17:YES)、制御部2Aは、S27の処理を実行して印刷イメージImの印刷を実行する。制御部2Aは、処理をS29に進める。
【0077】
この場合、制御部2Aは、印刷媒体Pの印刷開始位置Psに対して、予め想定したインクリボン9Aの印刷位置に対して位置を同期することはできない。しかしながら、制御部2Aは、印刷媒体Pの搬送速度Vsの速度に近づくように、リボン駆動源26の回転速度を減速する。従って、制御部2Aは、インクリボン9Aの使用跡の間隔の広がりを低減できる。これにより、制御部2Aは、インクリボン9Aの未使用の領域が増えるのを抑制可能となる。
【0078】
一方、インクリボン9Aの搬送速度Vrを減速可能であると判断した場合(S37:YES)、制御部2Aは、インクリボン9Aの搬送方向への搬送速度Vrが減速するように、リボン駆動源26の加速度を設定する(S39)。制御部2Aは、設定した加速度でリボン駆動源26を駆動する(S41)。これにより、インクリボン9Aの搬送速度Vrは、減速する。制御部2Aは、処理をS17に進める。
【0079】
一方、リボン搬送距離Ldarが搬送距離Lar以上と判断した場合(S35:NO)、インクリボン9Aの節約モードでの印刷か否か判断する(S43)。節約モードでの印刷であると判断した場合(S43:YES)、制御部2Aは、節約モードでの印刷を実行できないので、印刷開始までのインクリボン9Aの残りの搬送目標距離Lerに対して、使用されたインクリボン9Aの使用跡を回避するための距離(例えば、
図6の距離L1)を加えた新たな目標位置を設定する(S45)。この場合、印刷処理は、通常モードに切り替えられる。制御部2Aは、処理をS17に進める。この場合、制御部2Aは、S21の処理において、次の目標位置に向けて、インクリボン9Aを加速させる。一方、節約モードでないと判断した場合(S43:NO)、制御部2Aは、新たな目標位位置を設定する必要がないので、S37に処理を進める。
【0080】
ここで、S21~S25及びS37~S41の処理により加減速が繰り替えされた場合、例えば、
図8、
図9に示すように、インクリボン9Aの搬送速度Vr1、Vr2が印刷媒体Pの搬送速度Vs1、Vs2に夫々同期される。これにより、インクリボン9Aは、印刷媒体Pが印刷開始位置Psに搬送されるまでに、第一距離Lrefの分だけ搬送される。つまり、制御部2Aは、S23、S39の処理において、検出した搬送速度Vsで印刷媒体Pが印刷を開始可能な印刷開始位置Psまで搬送される間に、インクリボン9Aを搬送方向に搬送する距離が、第一距離Lrefとなるように、加速度を設定している。
【0081】
印刷媒体Pが印刷開始位置Psに到達したと判断した場合(S17:YES)、制御部2Aは、インクリボン9Aの搬送速度Vrを印刷媒体Pの搬送速度Vsに同期させた状態で、例えば印刷イメージImのオブジェクトIm1の印刷を実行する(S27)。
【0082】
制御部2Aは、オブジェクトIm1の印刷が完了したか否か判断する(S29)。印刷が完了していないと判断した場合(S29:NO)、処理を戻して印刷を継続する(S27)。一方、オブジェクトIm1の印刷が完了したと判断した場合(S29:YES)、制御部2Aは、全ての印刷イメージImが印刷されたか否か判断する(S31)。
【0083】
全ての印刷イメージImが完了していないと判断した場合(S31:NO)、制御部2Aは、節約モードを実行する為、リボン駆動源26を制御して、所定距離の分だけインクリボン9Aを巻き戻す(S33)。この場合、制御部2Aは、処理をS9に戻す。次いで、制御部2Aは、例えばオブジェクトIm2の印刷を実行する。
【0084】
全ての印刷イメージImの印刷が完了したと判断した場合(S31:YES)、制御部2Aは、処理をS1に戻し、印刷イメージIm等のデータを受け付けるまで待機する。
【0085】
<本実施形態の主たる作用、効果>
以上説明したように、制御部2Aは、リボン駆動源26を駆動した場合、印刷準備時間P3において、インクリボン9Aを搬送方向に搬送する距離である第一距離Lrefを特定する。制御部2Aは、エンコーダ11により検出した搬送速度Vs2で印刷を開始可能な印刷開始位置Psまで印刷媒体Pが搬送される間に、インクリボン9Aを搬送方向に搬送する距離が、特定した第一距離Lrefとなるように、遅延時間P1を変更せずに、リボン駆動源26の加速度を設定する。制御部2Aは、設定した加速度に基づき、リボン駆動源26を駆動する。
【0086】
印刷システム1は、印刷媒体Pの実際の搬送速度Vsに応じて、インクリボン9Aの加速度を設定する。故に、印刷システム1は、インクリボン9Aを効率よく使用できる。
【0087】
印刷媒体Pは、搬送速度Vsが基準速度Vrefより速い場合、基準速度Vrefで移動する場合よりも早く印刷開始位置Psに到達する。制御部2Aは、基準速度Vrefで移動する場合よりも早く印刷開始位置Psに印刷媒体Pが到達する場合、インクリボン9Aのリボン搬送速度が加速するように加速度を設定する。印刷媒体Pは、搬送速度Vsが基準速度Vrefより遅い場合、基準速度Vrefで移動した場合よりも遅く印刷開始位置Psに到達する。制御部2Aは、基準速度Vrefで移動する場合よりも遅く印刷開始位置Psに印刷媒体Pが到達する場合、インクリボン9Aの搬送速度Vrが減速するように加速度を設定する。印刷システム1は、印刷媒体Pが印刷開始位置Psへ到達するまでに、インクリボン9Aを印刷可能な位置まで搬送できる。
【0088】
制御部2Aは、搬送方向において所定の間隔を開けて複数のオブジェクトIm1~Im4を配置した印刷イメージImを印刷する。制御部2Aは、1つのオブジェクトIm1の印刷完了後、搬送方向とは反対方向にインクリボン9Aを巻き戻す。制御部2Aは、印刷媒体Pの巻き戻し後、前回の印刷で使用したインクリボン9Aのうち所定の間隔に対応する未使用の領域が印刷位置に配置するように、リボン駆動源26を加速してインクリボン9Aを搬送する。制御部2Aは、印刷開始位置Psまで搬送された印刷媒体Pに対して、インクリボン9Aの未使用の領域を使用して印刷を実行する。印刷システム1は、前回の印刷で使用したインクリボン9Aのうち所定の間隔に対応する未使用の領域を使用して印刷する。故に、印刷システム1は、効率的にインクリボン9Aを使用できる。
【0089】
制御部2Aは、インクリボン9Aの巻き戻し後、前回の印刷で使用したインクリボン9Aのうち搬送方向の上流側の使用済みの領域よりも上流側の未使用の領域が印刷位置に配置するように、リボン駆動源26を加速してインクリボン9Aを搬送する。制御部2Aは、前回の印刷で使用したインクリボン9Aのうち未使用の領域を使用して印刷を実行する。印刷システム1は、使用済みの領域よりも更に搬送方向の上流側の未使用領域を使用して印刷できる。
【0090】
制御部2Aは、印刷開始までインクリボン9Aを減速し続けた場合にインクリボン9Aが搬送されるリボン搬送距離Ldarが、印刷開始位置Psまでのインクリボン9Aの残りの搬送距離Larよりも小さいか否かを判断する。制御部2Aは、リボン搬送距離Ldarが残りの搬送距離Lar以上と判断された場合、通常モードでの印刷を実行する。印刷システム1は、リボン搬送距離Ldarが残りの搬送距離Larよりも小さい場合、使用済みの領域よりも更に搬送方向の上流側にある未使用の領域を使用して印刷を実行する。これにより、印刷システム1は、使用済みのインクリボン9Aの領域が再度使用され、印刷品質が劣化するのを抑制できる。
【0091】
<変形例>
本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変更が可能である。上記実施形態において、メイン処理は、印刷装置2の制御部2Aによって実行された。これに対し、メイン処理の一部又は全部は、コントローラ7の制御部7A、又は、外部機器8の制御部8Aにより実行されてもよい。リボン駆動源26は、第一リボンモータ26A及び第二リボンモータ26Bの何れか一方のみ有していてもよい。リボン駆動源26は、供給部22A及び巻取部22Fの両方を回転駆動させる1つのモータのみ有していてもよい。
【0092】
上記実施形態では、印刷開始位置Psに到達する前(時刻tsyn)に搬送速度Vs1、Vs2と搬送速度Vr1、Vr2との速度が夫々同期されたが、これに限らない。例えば、印刷開始位置Psにおいて、速度が同期されてもよい。
【0093】
上記実施形態では、搬送速度Vr1、Vr2の加速又は減速ができなかった場合にも印刷が実行されたが、印刷を実行しなくともよい。遅延時間P1、加速時間P2、印刷準備時間P3は、適宜設定してよい。
【0094】
<その他>
左方向は、本発明の「搬送方向」の一例である。リボン駆動源26は、本発明の「リボン駆動部」の一例である。エンコーダ11は、本発明の「速度検出部」の一例である。搬送速度Vre、Vr、Vr1、Vr2は、本発明の「リボン搬送速度」の一例である。搬送速度Vs、Vs1、Vs2は、本発明の「媒体搬送速度」の一例である。S13の処理を実行する制御部2Aは、本発明の「第一リボン制御部」の一例である。S15の処理を実行する制御部2Aは、本発明の「第一特定手段」の一例である。S23、S39の処理を実行する制御部2Aは、本発明の「加速度設定手段」の一例である。S25、S41の処理を実行する制御部2Aは、本発明の「第二リボン制御部」の一例である。S33の処理を実行する制御部2Aは、本発明の「第三リボン制御部」の一例である。S35の処理を実行する制御部2Aは、本発明の「判断手段」の一例である。S27の処理(節約モード)を実行する制御部2Aは、本発明の「第一印刷手段」の一例である。S27の処理(通常モード)を実行する制御部2Aは、本発明の「第二印刷手段」の一例である。
【符号の説明】
【0095】
1 :印刷システム
2 :印刷装置
2A :制御部
9 :カセット
9A :インクリボン
24 :サーマルヘッド
26 :リボン駆動源
26A :第一リボンモータ
26B :第二リボンモータ
20A :エンコーダ
P :印刷媒体
P1 :遅延時間
P2 :加速時間
P3 :印刷準備時間
L1 :第一距離
Pref、Ps :印刷開始位置
Vref :基準速度
Vs、Vs1、Vs2、Vre、Vr、Vr1、Vr2 :搬送速度