(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156652
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】顔料分散液
(51)【国際特許分類】
C09D 17/00 20060101AFI20221006BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20221006BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20221006BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20221006BHJP
【FI】
C09D17/00
C09D201/00
C09D7/61
C09D7/65
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060455
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】599071496
【氏名又は名称】ベック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】出雲 陸離
【テーマコード(参考)】
4J037
4J038
【Fターム(参考)】
4J037AA01
4J037AA10
4J037AA17
4J037DD24
4J037FF15
4J037FF23
4J038CG031
4J038CG042
4J038DD002
4J038HA026
4J038HA286
4J038HA456
4J038MA07
4J038NA26
(57)【要約】
【課題】本発明は、分散安定性、再分散性に優れ、艶調整に有効な顔料分散液を提供する。
【解決手段】本発明の顔料分散液は、溶剤(A)、吸油量50ml/100g以上の顔料(B)及び分散剤(C)を含み、該分散剤(C)が、特定の重量平均分子量を有する分散剤(c-1)と分散剤(c-2)を併用することを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶剤(A)、吸油量50ml/100g以上の顔料(B)及び分散剤(C)を含む顔料分散液であって、
該分散剤(C)が、重量平均分子量が5000以上の分散剤(c-1)、及び、重量平均分子量が5000未満の分散剤(c-2)、
を含むことを特徴とする顔料分散液。
【請求項2】
前記溶剤(A)と前記顔料(B)の混合比率(重量比率)は、溶剤(A)100重量部に対し、顔料(B)0.5重量部以上50重量部以下であることを特徴とする請求項1に記載の顔料分散液。
【請求項3】
前記溶剤(A)と前記分散剤(C)の混合比率(重量比率)は、溶剤(A)100重量部に対し、分散剤(C)0.1重量部以上20重量部以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の顔料分散液。
【請求項4】
前記分散剤(c-1)と前記分散剤(c-2)の混合比率(重量比率)は、(c-1):(c-2)が1:9~9:1であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の顔料分散液。
【請求項5】
前記溶剤(A)は、脂肪族炭化水素の比率が30重量%以上であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の顔料分散液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散安定性、再分散性に優れた顔料分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建築物、土木構築物等の躯体の保護、意匠性の付与および、美観性の向上のため塗装仕上げが行われており、優れた塗膜物性を有することから種々の溶剤形コーティング材が多く用いられている。
【0003】
このようなコーティング材においては、多種多様な条件に応じたコーティング材を提供する必要がある。例えば、同一品種のコーティング材であっても、艶有り、7分艶、5分艶、3分艶、艶消し等のそれぞれの艶に応じたものを用意し対応する必要がある。
【0004】
このような場合、コーティング材とは別に、艶調整用の顔料分散液を用意しておき、必要に応じ、コーティング材に艶調整用の顔料分散液を混合して使用することができる。
例えば、例えば特許文献1では、コーティング材と、艶消剤を混合し、艶の調整を行う方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような顔料分散液は、分散安定性、再分散性が課題となる場合が多く、特に、艶調整用の顔料分散液は、分散安定性、再分散性の向上が課題となっている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は鋭意検討の結果、溶剤及び顔料を必須成分とし、さらに特定の分散剤を併用することによって、分散安定性、再分散性に優れ、艶調整に有効な顔料分散液が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
1.溶剤(A)、吸油量50ml/100g以上の顔料(B)及び分散剤(C)を含む顔料分散液であって、
該分散剤(C)が、重量平均分子量が5000以上の分散剤(c-1)、及び、重量平均分子量が5000未満の分散剤(c-2)、
を含むことを特徴とする顔料分散液。
2.前記溶剤(A)と前記顔料(B)の混合比率(重量比率)は、溶剤(A)100重量部に対し、顔料(B)0.5重量部以上50重量部以下であることを特徴とする1.に記載の顔料分散液。
3.前記溶剤(A)と前記分散剤(C)の混合比率(重量比率)は、溶剤(A)100重量部に対し、分散剤(C)0.1重量部以上20重量部以下であることを特徴とする1.または2.に記載の顔料分散液。
4.前記分散剤(c-1)と前記分散剤(c-2)の混合比率(重量比率)は、(c-1):(c-2)が1:9~9:1であることを特徴とする1.から3.のいずれかに記載の顔料分散液。
5.前記溶剤(A)は、脂肪族炭化水素の比率が30重量%以上であることを特徴とする1.から4.のいずれかに記載の顔料分散液。
【発明の効果】
【0009】
本発明の顔料分散液は、分散安定性、再分散性に優れ、艶調整に有効である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0011】
本発明の顔料分散液は、溶剤(A)、吸油量50ml/100g以上の顔料(B)及び分散剤(C)を含み、分散剤(C)が、重量平均分子量が5000以上の分散剤(c-1)、及び、重量平均分子量が5000未満の分散剤(c-2)、を含むことを特徴とする。
このような分散剤(c-1)と分散剤(c-2)を併用することによって、分散安定性、再分散性に優れた分散剤を得ることができる。
【0012】
溶剤(A)は、特に限定されないが、芳香族炭化水素溶剤、脂肪族炭化水素溶剤等を用いることができる。
芳香族炭化水素溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、エチルベンゼン、エチルトルエン、クメン、シメン、トリメチルベンゼン、ナフタレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ベンジルフェニルエーテル、ベンジルメチルエーテル、メチルフェニルエーテル、エチルフェニルエーテル、プロピルフェニルエーテル、ブチルフェニルエーテル、1,2-メチレンジオキシベンゼン、1,2-エチレンジオキシベンゼン、ジベンジルエーテル、ジフェニルエーテル等を1種または2種以上使用することができる。
脂肪族炭化水素溶剤としては、例えば、n-ブタン、n-ヘキサン、n-ペンタン、n-オクタン、イソオクタン、n-ノナン、イソノナン、n-デカン、イソデカン、n-ウンデカン、n-ドデカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロブタン等を1種または2種以上使用することができる。
また、脂肪族炭化水素溶剤を主成分とするものとして、例えば、テルピン油、ミネラルスピリット、ホワイトスピリット、ミネラルターペン、イソパラフィン、石油エーテル、ソルベントナフサ、石油ナフサ等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上使用することができる。
【0013】
本発明では特に、全溶剤のうち30重量%以上(好ましくは40重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上)が脂肪族炭化水素溶剤である溶剤が好ましい。
さらに、脂肪族炭化水素溶剤と芳香族炭化水素溶剤とを混合したものが好ましく、その混合比率(重量比率)は、脂肪族炭化水素溶剤:芳香族炭化水素溶剤が90:10から30:70、さらに好ましくは85:15から40:60、より好ましくは80:20から50:50であるものを好適に使用することができる。このような混合比率である溶剤は、分散安定性、再分散性に優れた顔料分散液を得ることができ、塗膜の色彩や物性に悪影響を与えず、艶調整機能に優れた効果を発揮する。
さらに、トルエン、キシレンを含まず、引火点21℃以上の第2石油類に該当するものが、安全衛生上好ましい。
【0014】
なお溶剤(A)としては、本発明の効果を損なわない程度に、シクロヘキサン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素溶剤、また、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、ブタノール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール等のアルコール系溶剤、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコール系溶剤を含むこともできる。
【0015】
顔料(B)は、吸油量50ml/100g以上(より好ましくは100ml/100g以上、さらに好ましくは150ml/100g以上)の顔料を用いる。このような顔料を用いることにより、艶調整に有効な顔料分散液を得ることができる。本発明では、このような顔料を用いたとしても、分散剤(c-1)と分散剤(c-2)を併用することによって、分散安定性、再分散性に優れ、艶調整に有効な顔料分散液を得ることができる。
顔料(B)としては、例えば、ゼオライト、硫酸ナトリウム、アルミナ、アロフェン、ホワイトカーボン、珪藻土、珪灰石、珪質頁岩、バーミキュライト、パーライト、大谷石粉、活性白土、炭、活性炭、木粉、シラスバルーン、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、陶土、チャイナクレー、タルク、バライト粉、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、シリカ粉、水酸化アルミニウム等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上使用することができる。
なお吸油量は、JIS K 5101-13-1(精製あまに油法)に準じて測定した値である。
【0016】
顔料(B)の平均粒子径は、特に限定されないが、1μm以上30μm以下(より好ましくは1.5μm以上20μm以下、さらに好ましくは2μm以上15μm以下)であることが好ましい。本発明は、このような顔料(B)を用いることにより、分散安定性、再分散性、艶調整に優れた顔料分散液を得ることができる。
【0017】
溶剤(A)と顔料(B)の混合比率(重量比率)は、溶剤(A)100重量部に対し、顔料(B)0.5重量部以上50重量部以下であることが好ましく、さらに好ましくは1重量部以上45重量部以下、より好ましくは3重量部以上40重量部以下、最も好ましくは5重量部以上35重量部以下である。このような範囲であれば、貯蔵安定性、再分散性、艶調整に優れ、好ましい。
【0018】
分散剤(C)は、重量平均分子量が5000以上の分散剤(c-1)、及び、重量平均分子量が5000未満の分散剤(c-2)、を含むことを特徴とする。
【0019】
分散剤(C)としては、例えば、
ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオールから選ばれる1種以上あるいはそのアミン塩、金属塩、
多価カルボン酸とポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオールから選ばれる1種以上との重縮合体あるいはそのアミン塩、金属塩、
酸を含む重合体と多価アルコール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオールから選ばれる1種以上との反応物あるいはそのアミン塩、金属塩、
アミンと多価アルコールとの重縮合体あるいはそのカルボン酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩
等が挙げられる。
【0020】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールを反応させて得られるもの、環状エステル(ラクトン)の開環重合物、多価アルコールと多価カルボン酸と環状エステルを反応させて得られるもの、あるいはこれらのアルキレンオキサイドを付加物等が挙げられる。
多価カルボン酸としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、乳酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、ケイ皮酸、ヘキサントリカルボン酸、トリメリット酸、オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、シクロブタンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、シクロヘキサントリカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、ナフタレントリカルボン酸等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
多価アルコールとしては、例えば、エタンジオール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンテンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-ブテン-1,4-ジオール、2-ブチン-1,4-ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジブチレングリコール、トリブチレングリコール、テトラブチレングリコール、ジヘキシレングリコール、トリヘキシレングリコール、テトラヘキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ブタントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスルトール、ヒドロキノン、レゾルシノール、カテコール、ナフタレンジオール、ビフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、テトラメチルビフェノール等、またこれらのエチレンオキサイド付加物、水添化物等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
環状エステルの開環重合物において、環状エステルとしては、例えば、プロピオラクトン、β-メチル-δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン等が挙げられる。
【0021】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル等のポリアルキレングリコール、上記多価アルコールを開始剤としてエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加して得られるもの、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドの共重合体等が挙げられる。
【0022】
アクリルポリオールとしては、例えば、水酸基含有モノマーを含むモノマーの重合体または共重合体、カルボン酸含有モノマーとポリアルキレングリコールとの反応物等が挙げられる。
水酸基含有モノマーを含むモノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-クロロ2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリル酸エステル、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
カルボン酸含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
ポリアルキレングリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0023】
酸を含む重合体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸等のカルボン酸含有モノマーを含むモノマーの重合体が挙げられる。また酸を含む重合体には、上記水酸基含有モノマー、またその他公知の重合性モノマーを共重合した重合体を用いることもできる。
【0024】
アミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ネオペンチルジアミン、トルエンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、p-フェニレンジアミン、o-フェニレンジアミン、ナフタレンジアミン、トリエタノールアミン、マンニッヒ縮合物等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0025】
上記分散剤の製造には、公知の触媒、重合触媒の他、イソシアネート含有化合物、アミン含有化合物、リン酸含有化合物、スルホン酸含有化合物等の成分を混合して製造することもできる。
【0026】
分散剤(c-1)は、重量平均分子量が5000以上、好ましくは5000以上50000以下、より好ましくは6000以上40000以下、さらに好ましくは8000以上30000以下である分散剤である。このような範囲の分散剤を用いることにより、分散安定性、再分散性、特に低温での再分散性に優れた顔料分散液を得ることができる。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定して得られる値である。
【0027】
また、分散剤(c-1)としては、酸価、水酸基価を有するものであることが好ましく、特に、酸価0.1mgKOH/g以上8mgKOH/g以下(さらには0.2mgKOH/g以上5mgKOH/g以下)、水酸基価8mgKOH/g以上100mgKOH/g以下(さらには10mgKOH/g以上50mgKOH/g以下)であることが好ましい。このような範囲であれば、再分散性、再分散性に優れ、好ましい。
また分散剤(c-1)としては、アミン価を有するものでもよい。アミン価を有する場合、アミン価が0.05mgKOH/g以上10mgKOH/g以下(さらには0.1mgKOH/g以上5mgKOH/g以下)であることが好ましい。
なお、酸価は、固形分1gに含まれる酸基と等モルの水酸化カリウムのmg数によって表される値であり、水酸基価とは、固形分1gに含まれる水酸基と等モルの水酸化カリウムのmg数によって表される値であり、アミン価は、固形分1gに含まれるアミン基と等モルの塩基に対し、当量となる水酸化カリウムのmg数によって表される値である。
【0028】
本発明では特に、分散剤(c-1)として、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオールから選ばれる1種以上、多価カルボン酸とポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオールから選ばれる1種以上との重縮合体、酸を含む重合体と多価アルコール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオールから選ばれる1種以上との反応物、から選ばれる1種以上を好適に用いることができる。
【0029】
分散剤(c-2)は、重量平均分子量が5000未満、好ましくは500以上5000未満、さらに好ましくは600以上4000以下である分散剤である。このような範囲の分散剤を用いることにより、分散安定性、再分散性に優れた顔料分散液を得ることができる。
【0030】
また、分散剤(c-2)としては、酸価、アミン価を有するものであることが好ましく、特に、酸価8mgKOH/g以上50mgKOH/g以下(さらには10mgKOH/g以上40mgKOH/g以下)、アミン価8mgKOH/g以上50mgKOH/g以下(さらには10mgKOH/g以上40mgKOH/g以下)であることが好ましい。このような範囲であれば、再分散性、再分散性に優れ、好ましい。
また分散剤(c-2)としては、水酸基価を有するものでもよい。水酸基価を有する場合、水酸基価が0.05mgKOH/g以上10mgKOH/g以下(さらには0.1mgKOH/g以上5mgKOH/g以下)であることが好ましい。
【0031】
本発明では特に、分散剤(c-2)として、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオールから選ばれる1種以上のアミン塩、多価カルボン酸とポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオールから選ばれる1種以上との重縮合体のアミン塩、酸を含む重合体と多価アルコール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオールから選ばれる1種以上との反応物のアミン塩、アミンと多価アルコールとの重縮合体あるいはそのカルボン酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、から選ばれる1種以上を好適の用いることができる。
【0032】
溶剤(A)と分散剤(C)の混合比率(重量比率)は、特に限定されないが、溶剤(A)100重量部に対し、分散剤0.1重量部以上20重量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.5重量部以上18重量部以下、さらに好ましくは1重量部以上16重量部以下、最も好ましくは3重量部以上15重量部以下である。このような範囲であれば、分散安定性、再分散性特に低温での再分散性に優れ、好ましい。
また、分散剤(c-1)と分散剤(c-2)の混合比率(重量比率)は、分散剤(c-1):分散剤(c-2)が1:9から9:1(さらには2:8から8:2)であることが好ましい。このような範囲であれば、貯蔵安定性、再分散性特に低温での再分散性に優れ、好ましい。
【0033】
本発明の顔料分散液の製造は、溶剤(A)、顔料(B)及び分散剤(C)、必要に応じその他添加剤を混合し、分散装置で分散させることによって調製することができる。分散装置としては、アトライター、ボールミル、サンドミル、ホモミキサー、ペイントシェーカー等の公知の装置を使用すればよい。
【0034】
顔料分散液の粘度は、特に限定されないが、0.5Pa・s以上10Pa・s以下であることが好ましい。なお、粘度は、温度23℃、相対湿度50%RHで、B型回転粘度計(回転数:20rpm)で測定した値である。
また、顔料分散液のチキソトロピーインデックス(TI値)は、特に限定されないが、3以上10以下であることが好ましい。なお、TI値は、温度23℃、相対湿度50%RHで、B型回転粘度計を用い、下記式により求められる値である。
(式) TI値=η1/η2
(但し、η1:2rpmにおける粘度(Pa・s:2回転目の指針値)、η2:20rpmにおける粘度(Pa・s:4回転目の指針値))
【0035】
添加剤としては、例えば、合成樹脂、防腐剤、防黴剤、防藻剤、消泡剤、レベリング剤、沈降防止剤、たれ防止剤、触媒、硬化促進剤、脱水剤、紫外線吸収剤、光安定剤等が挙げられる。
【実施例0036】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。なお、顔料分散液の製造においては、以下の成分を使用した。
【0037】
・溶剤A:芳香族炭化水素溶剤/脂肪族炭化水素(ミネラルスピリット)混合溶液(脂肪族炭化水素の比率:88重量%、脂肪族炭化水素溶剤:芳香族炭化水素溶剤が88:12)
・溶剤B:芳香族炭化水素溶剤/ミネラルスピリット混合溶液(脂肪族炭化水素の比率:70重量%、脂肪族炭化水素溶剤:芳香族炭化水素溶剤が70:30)
・顔料A:ホワイトカーボン(吸油量210ml/100g、平均粒子径10μm)
・顔料B:珪灰石(吸油量56ml/100g、平均粒子径5μm)
・顔料C:炭酸カルシウム(吸油量25ml/100g、平均粒子径10μm)
・分散剤A:アクリルポリオール、酸価3mgKOH/g、水酸基価35mgKOH/g、重量平均分子量11000
・分散剤B:アクリルポリオール、酸価2mgKOH/g、水酸基価30mgKOH/g、重量平均分子量13000
・分散剤C:ポリエステルポリオール、酸価6mgKOH/g、水酸基価25mgKOH/g、重量平均分子量7000
・分散剤D:アクリルポリオールのアミン塩、酸価20mgKOH/g、水酸基価5mgKOH/g、アミン価30mgKOH/g、重量平均分子量4500
・分散剤E:ポリエステルポリオールのアミン塩、酸価15mgKOH/g、アミン価20mgKOH/g、重量平均分子量3000
・分散剤F:ポリエステルポリオールのアミン塩、酸価20mgKOH/g、アミン価25mgKOH/g、重量平均分子量2000
・溶剤形コーティング材A:1液弱溶剤形アクリル樹脂コーティング材(白色)(溶剤中の脂肪族炭化水素の比率:70重量%)
【0038】
(実施例1~12、比較例1~3)
上記成分を使用し、表1に示す配合比率で混合し、標準状態(温度25℃、相対湿度50%)で1時間ディゾルバー分散することにより顔料分散液を得た。顔料分散液について、以下の試験を行った。
【0039】
(分散安定性試験)
顔料分散液を1000mlの容器に入れ密封し、標準状態で1日間貯蔵した後の容器内部の状態を目視にて確認した。評価は次のとおりである。結果は表2に示す。
◎:異常なし
○:ほぼ異常なし
△:一部異常有り(一部沈殿物有り)
×:異常有り(沈降物発生、分離発生)
【0040】
(再分散性試験1)
顔料分散液を1000mlの容器に入れ密封し、標準状態で30日間貯蔵した後、ペイントシェーカーを用い10Hzで30秒間振動させ、容器内部の状態を目視にて確認した。評価は次のとおりである。結果は表2に示す。
◎:異常なし
○:ほぼ異常なし
△:一部異常有り(一部沈殿物有り)
×:異常有り(沈降物発生、分離発生)
【0041】
(再分散性試験2)
顔料分散液を1000mlの容器に入れ密封し、温度5℃で30日間貯蔵した後、ペイントシェーカーを用い10Hzで30秒間振動させ、容器内部の状態を目視にて確認した。評価は次のとおりである。結果は表2に示す。
◎:異常なし
○:ほぼ異常なし
△:一部異常有り(一部沈殿物有り)
×:異常有り(沈降物発生、分離発生)
【0042】
(艶消し性試験1)
上記溶剤形コーティング材A90重量部に対し、再分散性試験1後の顔料分散液を10重量部混合し、コーティング材を作製した。
このコーティング材を、予めシーラーが塗装されたスレート板に対し、塗付け量0.3kg/m2でスプレー塗装した後、標準状態で14日間乾燥させたものを試験体とした。
また、顔料分散液を用いない溶剤形コーティング材Aのみについて、予めシーラーが塗装されたスレート板に対し、塗付け量0.3kg/m2でスプレー塗装した後、標準状態で14日間乾燥させたものを比較試験体とした。
得られた試験体、比較試験体について、20度光沢度をそれぞれ10点測定し、その平均値の差を比較評価した。評価は次のとおりである。結果は表2に示す。
◎:差が10以上
○:差が5以上10未満
△:差が3以上50未満
×:差が3未満
【0043】
(艶消し性試験2)
顔料分散液として再分散性試験2後の顔料分散液を用いた以外は、艶消し性試験1と同様の方法で、試験を行った。結果は表2に示す。
【0044】