IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アルファーデザイン株式会社の特許一覧

特開2022-156659枕状熱伝導体、熱伝導方法、枕状熱伝導体の再生装置及び枕状熱伝導体の再生方法
<>
  • 特開-枕状熱伝導体、熱伝導方法、枕状熱伝導体の再生装置及び枕状熱伝導体の再生方法 図1
  • 特開-枕状熱伝導体、熱伝導方法、枕状熱伝導体の再生装置及び枕状熱伝導体の再生方法 図2
  • 特開-枕状熱伝導体、熱伝導方法、枕状熱伝導体の再生装置及び枕状熱伝導体の再生方法 図3
  • 特開-枕状熱伝導体、熱伝導方法、枕状熱伝導体の再生装置及び枕状熱伝導体の再生方法 図4
  • 特開-枕状熱伝導体、熱伝導方法、枕状熱伝導体の再生装置及び枕状熱伝導体の再生方法 図5
  • 特開-枕状熱伝導体、熱伝導方法、枕状熱伝導体の再生装置及び枕状熱伝導体の再生方法 図6
  • 特開-枕状熱伝導体、熱伝導方法、枕状熱伝導体の再生装置及び枕状熱伝導体の再生方法 図7
  • 特開-枕状熱伝導体、熱伝導方法、枕状熱伝導体の再生装置及び枕状熱伝導体の再生方法 図8
  • 特開-枕状熱伝導体、熱伝導方法、枕状熱伝導体の再生装置及び枕状熱伝導体の再生方法 図9
  • 特開-枕状熱伝導体、熱伝導方法、枕状熱伝導体の再生装置及び枕状熱伝導体の再生方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156659
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】枕状熱伝導体、熱伝導方法、枕状熱伝導体の再生装置及び枕状熱伝導体の再生方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20221006BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
H01L23/36 D
H05K7/20 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060464
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】596119113
【氏名又は名称】アルファーデザイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116942
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 雅信
(74)【代理人】
【識別番号】100167704
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 裕人
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 亨
(72)【発明者】
【氏名】水越 正孝
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AA02
5E322AB06
5E322AB11
5E322DC01
5E322FA04
5E322FA09
5F136BC04
5F136DA42
5F136EA38
5F136FA02
5F136FA03
5F136FA16
5F136FA54
5F136FA62
5F136FA82
(57)【要約】

【課題】 熱伝導性微粉末の二つの部材への付着や飛び散りを生じることなく二つの部材の間で熱を良好に伝導する。
【解決手段】 二つの部材の間で熱を伝導する枕状熱伝導体であって、圧力によって変形可能な袋状のフィルムに熱伝導性微粉末とガスが封入され、常温常圧の状態でガスの体積が熱伝導性微粉末の体積の10%以上40%以下にされた。これにより、袋状のフィルムが圧力によって変形された状態においてフィルムの内部に封入された熱伝導性微粉末によって第1の部材と第2の部材の間で熱が伝導されるため、熱伝導性微粉末の二つの部材への付着や飛び散りを生じることなく二つの部材の間で熱を良好に伝導することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つの部材の間で熱を伝導する枕状熱伝導体であって、
圧力によって変形可能な袋状のフィルムに熱伝導性微粉末とガスが封入され、
常温常圧の状態で前記ガスの体積が前記熱伝導性微粉末の体積の10%以上40%以下にされた
枕状熱伝導体。
【請求項2】
二つの部材の間で熱を伝導する枕状熱伝導体であって、
圧力によって変形可能な袋状のフィルムに熱伝導性微粉末と滑剤とガスが封入され、
常温常圧の状態で前記ガスの体積が前記熱伝導性微粉末と前記滑剤を合わせた体積の10%以上40%以下にされた
枕状熱伝導体。
【請求項3】
二つの部材の間で熱を伝導する枕状熱伝導体であって、
圧力によって変形可能な袋状のフィルムに滑剤によってコーティングされた熱伝導性微粉末とガスが封入され、
常温常圧の状態で前記ガスの体積が前記滑剤によってコーティングされた前記熱伝導性微粉末の体積の10%以上40%以下にされた
枕状熱伝導体。
【請求項4】
前記フィルムはアルミニウム又はアルミニウム合金の少なくとも一方によって形成された
請求項1、請求項2又は請求項3に記載の枕状熱伝導体。
【請求項5】
前記フィルムはポリイミドによって形成され又は金属によってコーティングされたポリイミドによって形成された
請求項1、請求項2又は請求項3に記載の枕状熱伝導体。
【請求項6】
前記熱伝導性微粉末として銅、銅合金、銀、銀合金、窒化アルミニウム、炭化ケイ素又はアルミナのうち少なくとも一つが用いられた
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4又は請求項5に記載の枕状熱伝導体。
【請求項7】
前記滑剤として窒化ホウ素又はステアリン酸塩が用いられた
請求項2又は請求項3に記載の枕状熱伝導体。
【請求項8】
前記フィルムに前記熱伝導性微粉末の大きさよりも小さく前記ガスが通過可能な通気孔が形成された
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6又は請求項7に記載の枕状熱伝導体。
【請求項9】
圧力によって変形可能な袋状のフィルムに少なくとも熱伝導性微粉末とガスが封入された枕状熱伝導体を第1の部材と第2の部材の間に配置し、
前記第1の部材又は前記第2の部材の少なくとも一方に圧力を付与して前記フィルムを変形させ、
前記フィルムにおける前記第1の部材と前記第2の部材からはみ出した部分に前記ガスを流動させて前記第1の部材と前記第2の部材の間に熱伝導性微粉末を残存させ、
前記熱伝導性微粉末によって前記第1の部材と前記第2の部材の間で熱伝導を行う
熱伝導方法。
【請求項10】
前記フィルムにおける前記第1の部材と前記第2の部材からはみ出した部分に前記ガスが流動された状態において、前記フィルムに形成された通気孔から前記ガスが押し出される
請求項9に記載の熱伝導方法。
【請求項11】
圧力によって変形可能な袋状のフィルムに少なくとも熱伝導性微粉末とガスが封入された枕状熱伝導体を保持する保持機構と、
前記保持機構によって保持された前記枕状熱伝導体において凝集した前記熱伝導性微粉末に前記フィルムを介して外力を付与する外力付与機構とを備えた
枕状熱伝導体の再生装置。
【請求項12】
圧力によって変形可能な袋状のフィルムに少なくとも熱伝導性微粉末とガスが封入された枕状熱伝導体を保持し、
保持された前記枕状熱伝導体において凝集した前記熱伝導性微粉末に前記フィルムを介して外力を付与する
枕状熱伝導体の再生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二つの部材の間で熱を伝導する枕状熱伝導体、熱伝導方法、枕状熱伝導体の再生装置及び枕状熱伝導体の再生方法の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
二つの部材の間で熱を伝導する方法として、以下のような各種の方法が用いられているが、これらの各種の方法においては以下のような様々な問題を生じることもある。
【0003】
例えば、二つの部材がミクロン単位に平坦であれば、サーマルグリース等を介して二つの部材を押し当て、一方の部材から他方の部材に熱を良好に伝導する方法は熱伝導を容易に行うことが可能である。しかしながら、二つの部材が平坦でなくミリ単位以上の凹凸がある場合には、サーマルグリース等で二つの部材の隙間を十分に埋めることが難しく、一方の部材から他方の部材に熱を良好に伝導し難くなってしまう。
【0004】
一方、二つの部材を熱伝導性の高い銀エポキシペーストを介して接続する方法においては、ミリ単位以上の凹凸があった場合でも一方の部材から他方の部材に熱を伝導することは容易ではあるが、接続後に二つの部材を分離することが難しくなってしまう。また、銀エポキシペーストの基材であるシリコーン樹脂やエポキシ樹脂は、150度を超える温度では耐熱性が低下して変質してしまうため、一方の部材から他方の部材に良好に熱を伝導することが難しくなる。
【0005】
また、二つの部材の間で熱を伝導する方法として、二つの部材の凹凸をはんだで埋めて接続する方法もあり、このような方法は良好な熱伝導性を得ることが可能である。しかしながら、このような方法においては、銀エポキシペーストの場合と同様に接続後に二つの部材を分離することが難しくなってしまう。
【0006】
他方、熱伝導性微粉末を介して二つの部材の間で熱を伝導する方法もある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された熱を伝導する方法は、フィルムと熱伝導性微粉末を用いて第1の部材であるヒーターからの熱を第2の部材に伝導する方法である。具体的には、変形し易いポリイミドによって形成されたフィルム上に熱伝導性微粉末を敷き並べ、第2の部材の凹凸にフィルムを倣わせた後に、熱伝導性微粉末にヒーターを押し当てて熱を加え、熱伝導性微粉末を介してヒーターの熱を凹凸のある第2の部材に伝導する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001-176901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような特許文献1に記載された熱を伝導する方法においては、フィルムを用いているため熱の伝導後の二つの部材の分離が容易ではあるが、熱伝導性微粉末がヒーターに付着したり熱伝導性微粉末が飛び散り易いという不都合がある。
【0009】
そこで、本発明は、熱伝導性微粉末の二つの部材への付着や飛び散りを生じることなく二つの部材の間で熱を良好に伝導することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る枕状熱伝導体は、二つの部材の間で熱を伝導する枕状熱伝導体であって、圧力によって変形可能な袋状のフィルムに熱伝導性微粉末とガスが封入され、常温常圧の状態で前記ガスの体積が前記熱伝導性微粉末の体積の10%以上40%以下にされたものである。
【0011】
本発明に係る別の枕状熱伝導体は、二つの部材の間で熱を伝導する枕状熱伝導体であって、圧力によって変形可能な袋状のフィルムに熱伝導性微粉末と滑剤とガスが封入され、常温常圧の状態で前記ガスの体積が前記熱伝導性微粉末と前記滑剤を合わせた体積の10%以上40%以下にされたものである。
【0012】
本発明に係るまた別の枕状熱伝導体は、二つの部材の間で熱を伝導する枕状熱伝導体であって、圧力によって変形可能な袋状のフィルムに滑剤によってコーティングされた熱伝導性微粉末とガスが封入され、常温常圧の状態で前記ガスの体積が前記滑剤によってコーティングされた前記熱伝導性微粉末の体積の10%以上40%以下にされたものである。
【0013】
これにより、本発明に係る枕状熱伝導体と本発明に係る別の枕状熱伝導体と本発明に係るまた別の枕状熱伝導体においては、袋状のフィルムが圧力によって変形された状態においてフィルムの内部に封入された熱伝導性微粉末によって第1の部材と第2の部材の間で熱が伝導される。
【0014】
本発明に係る熱伝導方法は、圧力によって変形可能な袋状のフィルムに少なくとも熱伝導性微粉末とガスが封入された枕状熱伝導体を第1の部材と第2の部材の間に配置し、前記第1の部材又は前記第2の部材の少なくとも一方に圧力を付与して前記フィルムを変形させ、前記フィルムにおける前記第1の部材と前記第2の部材からはみ出した部分に前記ガスを流動させて前記第1の部材と前記第2の部材の間に熱伝導性微粉末を残存させ、前記熱伝導性微粉末によって前記第1の部材と前記第2の部材の間で熱伝導を行うものである。
【0015】
これにより、本発明に係る熱伝導方法においては、袋状のフィルムが圧力によって変形されフィルムにおける第1の部材と第2の部材からはみ出した部分にガスが流動された状態で熱伝導性微粉末によって第1の部材と第2の部材の間で熱が伝導される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、袋状のフィルムが圧力によって変形された状態においてフィルムの内部に封入された熱伝導性微粉末によって第1の部材と第2の部材の間で熱が伝導されるため、熱伝導性微粉末の二つの部材への付着や飛び散りを生じることなく二つの部材の間で熱を良好に伝導することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図2乃至図10と共に本発明の実施の形態を示すものであり、本図は、枕状熱伝導体の概略断面図である。
図2】枕状熱伝導体を用いて熱伝導を行う第1の具体例を示す断面図である。
図3】枕状熱伝導体を用いて熱伝導を行う第1の具体例を示す平面図である。
図4】枕状熱伝導体を用いて熱伝導を行う第2の具体例を示す断面図である。
図5】枕状熱伝導体を用いて熱伝導を行う第3の具体例を示す断面図である。
図6】枕状熱伝導体が保持機構に保持された状態を示す概略断面図である。
図7】枕状熱伝導体が再生装置によって再生されている状態を示す概略断面図である。
図8】枕状熱伝導体が別の再生装置によって再生されている状態を示す概略断面図である。
図9】枕状熱伝導体がまた別の再生装置によって再生されている状態を示す概略断面図である。
図10】通気孔が形成された枕状熱伝導体の例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明を実施するための形態について添付図面を参照して説明する。
【0019】
<枕状熱伝導体の構成>
先ず、本発明に係る枕状熱伝導体1の構成について説明する(図1参照)。
【0020】
枕状熱伝導体1は後述する二つの部材の間で熱を伝導する機能を有し、圧力によって変形可能な袋状のフィルム2に一つあるいは複数の熱伝導性微粉末3とガスが封入されて構成されている。
【0021】
フィルム2は、例えば、薄膜状のアルミニウム又はアルミニウム合金によって袋状に形成されている。但し、フィルム2は、全体がアルミニウムによって形成されていてもよく、全体がアルミニウム合金によって形成されていてもよく、一部がアルミニウムによって形成され他の部分がアルミニウム合金によって形成されていてもよい。フィルム2は、例えば、外周部分の少なくとも一部が貼り合わされて密着されることにより袋状に形成されている。フィルム2は薄膜状の材料によって形成されているため、圧力が付与されたときに変形される。従って、枕状熱伝導体1は圧力が付与されて押し付けられた部材の形状に倣ってフィルム2が変形可能にされ、押し付けられた部材にフィルム2が密着される。
【0022】
アルミニウムは軽量であり常温常圧において高い熱伝導性を有する材料であるため、アルミニウム又はアルミニウム合金がフィルム2の材料として用いられることにより、フィルム2の軽量化及び高い熱伝導性を確保することができる。また、アルミニウムは入手が容易で加工性の高い材料であるため、アルミニウム又はアルミニウム合金がフィルム2の材料として用いられることにより、枕状熱伝導体1の製造コストの低減及び製造時間の短縮化を図ることができる。
【0023】
また、フィルム2は、ポリイミドによって形成されていてもよく、金属によってコーティングされたポリイミドによって形成されていてもよい。
【0024】
ポリイミドは高分子材料の中でも極めて高い強度と耐熱性と絶縁性を有する材料であるため、フィルム2がポリイミドによって形成され又は金属によってコーティングされたポリイミドによって形成されることにより、フィルム2の高い強度及び高い耐熱性及び高い絶縁性を確保することができる。特に、金属によってコーティングされたポリイミドがフィルム2の材料として用いられることにより、高い強度と高い耐熱性と高い絶縁性に加えて高い熱伝導性を確保することもできる。
【0025】
尚、フィルム2は金属材料にポリイミドがコーティングされることにより形成されてもよい。
【0026】
枕状熱伝導体1は、例えば、板状の部材に載置された状態においてフィルム2が板状の部材に沿って自重により広がる形状に変形される。フィルム2は厚み方向に直交する方向における外側の部分が外周部4として設けられている。外周部4には後述する通気孔が形成されていてもよい。
【0027】
熱伝導性微粉末3は、例えば、金属微粉末又はセラミック微粉末であり、高い熱伝導性を有している。尚、熱伝導性微粉末3は金属微粉末とセラミック微粉末が混合されていてもよい。
【0028】
熱伝導性微粉末3は金属微粉末である場合に、例えば、銅、銅合金、銀又は銀合金のうち少なくとも一つが用いられており、これらの材料の混合された材料が用いられていてもよい。特に、熱伝導性微粉末3が銅又は銅合金若しくはこれらの混合された材料によって形成されていることにより、熱伝導性微粉末3の高い熱伝導率を確保することができると共に銅材料が安価であるため枕状熱伝導体1の製造コストの低減を図ることができる。また、熱伝導性微粉末3が銀又は銀合金若しくはこれらの混合された材料によって形成されていることにより、熱伝導性微粉末3の高い熱伝導率を確保することができる。
【0029】
一方、熱伝導性微粉末3はセラミック微粉末である場合に、例えば、窒化アルミニウム、炭化ケイ素又はアルミナのうち少なくとも一つが用いられており、これらの材料の混合された材料が用いられていてもよい。特に、熱伝導性微粉末3が窒化アルミニウム又は炭化ケイ素若しくはこれらの混合された材料によって形成されていることにより、熱伝導性微粉末3の高い熱伝導率を確保することができる。
【0030】
フィルム2に封入されるガスとしては、例えば、窒素等の不活性ガス又は空気が用いられている。不活性ガスは熱伝導性微粉末3に金属微粉末が含まれる場合に用いられ、空気は熱伝導性微粉末3の全てがセラミック微粉末である場合に用いられる。
【0031】
ガスとして不活性ガスが用いられることにより、金属微粉末である熱伝導性微粉末3が酸化し難くなり、熱伝導性微粉末3の高い熱伝導性を長期に亘って確保することができる。一方、ガスとして空気が用いられることにより、枕状熱伝導体1の製造コストの低減を図ることができる。
【0032】
枕状熱伝導体1においては、上記したように、フィルム2に熱伝導性微粉末3とガスが封入されており、常温常圧の状態でガスの体積が熱伝導性微粉末3の体積の10%以上40%以下にされている。枕状熱伝導体1においては、二つの部材の間で熱を伝導するために二つの部材で挟まれた部分からガスが外周側へ移動する必要があり、ガスの体積が熱伝導性微粉末3の体積の10%以上40%以下にされることにより、ガスの対流によりフィルム2の内部において熱伝導性微粉末3を活発に移動させて良好な熱伝導を行うことができる。
【0033】
尚、枕状熱伝導体1においては、フィルム2に付与される圧力の大きさやフィルム2の二つの部材との接触面積等に応じ、ガスの体積が熱伝導性微粉末3の体積の、例えば、10%以上30%以下、20%以上40%以下又は20%以上30%以下にされてもよく、必要に応じて10%から40%の間で任意の比率にすることが可能である。
【0034】
フィルム2には熱伝導性微粉末3とガスの他に滑剤が封入されていてもよい。滑剤はフィルム2の内部における熱伝導性微粉末3同士の摩擦を軽減して熱伝導性微粉末3の動き(流動性)を活発化する機能を有している。滑剤としては、例えば、無機物の窒化ホウ素(ボロンナイトライド)又は有機物のステアリン酸塩が用いられている。
【0035】
窒化ホウ素としては、例えば、六方晶系の常圧相(h-BN)が用いられる。窒化ホウ素は高い熱伝導率を有すると共に耐熱性が高く熱膨張率が低いため、高温時に使用できる材料である。従って、滑剤として窒化ホウ素が用いられることにより、熱伝導性微粉末3の動きを活発化した上で熱伝導性微粉末3の有する高い熱伝導率を有効に発揮させることができると共に150度以上の高温時であっても分解せずに使用することができる。
【0036】
ステアリン酸塩としては、例えば、ステアリン酸ナトリウムやステアリン酸カルシウムが用いられる。ステアリン酸塩は、有機物で150度以下の温度で良好な滑性を示す材料である。滑剤としてステアリン酸塩が用いられることにより、熱伝導性微粉末3の動きを活発化した上で熱伝導性微粉末3の有する高い熱伝導率を有効に発揮させることができる。
【0037】
枕状熱伝導体1において熱伝導性微粉末3とガスに加えてフィルム2に滑剤が封入されている場合には、常温常圧の状態でガスの体積が熱伝導性微粉末3と滑剤を合わせた体積の10%以上40%以下にされている。ガスの体積が熱伝導性微粉末3と滑剤を合わせた体積の10%以上40%以下にされることにより、ガスの対流によりフィルム2の内部において熱伝導性微粉末3を活発に移動させて良好な熱伝導を行うことができる。
【0038】
また、枕状熱伝導体1においては、フィルム2が滑剤によってコーティングされた熱伝導性微粉末3とガスが封入される構成にされていてもよい。このような構成においては、常温常圧の状態でガスの体積が滑剤によってコーティングされた熱伝導性微粉末3の体積の10%以上40%以下にされている。ガスの体積がコーティングされた熱伝導性微粉末の体積の10%以上40%以下にされることにより、ガスの対流によりフィルム2の内部において熱伝導性微粉末3を活発に移動させて良好な熱伝導を行うことができる。
【0039】
尚、フィルム2に熱伝導性微粉末3とガスと滑剤が封入された構成及びフィルム2に滑剤によってコーティングされた熱伝導性微粉末3とガスが封入された構成の何れの構成においても、フィルム2に熱伝導性微粉末3とガスが封入された構成と同様に、ガスの体積が熱伝導性微粉末3と滑剤を合わせた体積又は滑剤によってコーティングされた熱伝導性微粉末3の体積の10%以上30%以下、20%以上40%以下又は20%以上30%以下にされてもよく、必要に応じて10%から40%の間で任意の比率にすることが可能である。
【0040】
上記したフィルム2と熱伝導性微粉末3は耐熱性が高く、例えば、300度を超える温度においても使用することが可能にされている。
【0041】
<枕状熱伝導体を用いた熱伝導の具体例>
次に、枕状熱伝導体1を用いた熱伝導の各具体例について説明する(図2乃至図5参照)。
【0042】
第1の具体例は、第1の部材としてヒートスプレッダー(ヒーター)5が用いられ第2の部材としてLSI(大規模集積回路)等の電子部品6、6、・・・が用いられた例である(図2及び図3参照)。
【0043】
電子部品6は本体部6aの下面側に電極6b、6b、・・・が設けられた構成にされ、電極6b、6b、・・・が基板7に形成された図示しない回路パターンに接着剤8によって接続される。電子部品6、6、・・・は少なくとも二つが高さの異なる大きさに形成されている。接着剤8は、例えば、加熱によって溶融し冷却によって固化する熱伝導性の接着剤や半田等である。
【0044】
枕状熱伝導体1は電子部品6の電極6b、6b、・・・が回路パターンに接着剤8によって接続されるときに、以下のようにして用いられる。
【0045】
電子部品6、6、・・・の電極6b、6b、・・・が回路パターン上に載置された状態において、枕状熱伝導体1が電子部品6、6、・・・上に載置される。回路パターン上には電極6b、6b、・・・を接続するための接着剤8、8、・・・が塗布されている。枕状熱伝導体1は全ての電子部品6、6、・・・を上方から覆いフィルム2の外周部4が電子部品6、6、・・・からはみ出す大きさにされている。
【0046】
電子部品6における電極6b、6b、・・・の回路パターンへの接続作業が開始されるときには、枕状熱伝導体1に上方からヒートスプレッダー5が押し当てられ、枕状熱伝導体1に対するヒートスプレッダー5による加熱及び加圧が行われる。枕状熱伝導体1は加圧されることによりフィルム2がヒートスプレッダー5と電子部品6、6、・・・の本体部6a、6a、・・・とに倣う形状に変形される。
【0047】
加圧されることによりフィルム2がヒートスプレッダー5と本体部6a、6a、・・・に倣う形状に変形された状態においては、ヒートスプレッダー5又は電子部品6、6、・・・に押し当てられない部分、特に、フィルム2の外周部4が他の部分に対して膨らむように変形される。このときフィルム2に封入されている熱伝導性微粉末3はガスの流動によって撹拌されて流動される。
【0048】
また、ガスは加圧により外周部4側へ流動され、多くが外周部4の内部に流動され、外周部4以外の部分においてヒートスプレッダー5と電子部品6、6、・・・の間に多くの熱伝導性微粉末3が残存される。
【0049】
上記のようにフィルム2がヒートスプレッダー5と電子部品6、6、・・・の形状に倣い熱伝導性微粉末3が流動された状態でヒートスプレッダー5による加熱が行われるため、熱伝導性微粉末3によってヒートスプレッダー5から電子部品6、6、・・・への熱伝導が行われる。
【0050】
電子部品6に伝導された熱は接着剤8に伝導されて接着剤8が溶融され、接着剤8によって電極6b、6b、・・・が回路パターンに接合され電子部品6が基板7に接続される。
【0051】
ヒートスプレッダー5による加熱及び加圧が終了すると、ヒートスプレッダー5が枕状熱伝導体1から離隔され、枕状熱伝導体1が電子部品6、6、・・・から引き剥がされる。このとき、フィルム2がヒートスプレッダー5と電子部品6、6、・・・に接合されることはないため、枕状熱伝導体1をヒートスプレッダー5と電子部品6、6、・・・から容易に引き離すことが可能になり、ヒートスプレッダー5と電子部品6、6、・・・の分離を容易に行うことができる。
【0052】
また、熱伝導性微粉末3が袋状のフィルム2に封入されているため、枕状熱伝導体1に対する加熱及び加圧が行われたときに熱伝導性微粉末3のヒートスプレッダー5や電子部品6等への付着や飛び散りを生じることなく第1の部材であるヒートスプレッダー5と第2の部材である電子部品6の間で熱を良好に伝導することができる。
【0053】
さらに、フィルム2がヒートスプレッダー5と電子部品6、6、・・・に倣う形状に変形され、フィルム2がヒートスプレッダー5と電子部品6、6、・・・に密着された状態で加熱が行われるため、第1の部材であるヒートスプレッダー5と第2の部材である電子部品6、6、・・・との間での熱の伝導効率の向上を図ることができる。特に、ヒートスプレッダー5の下面と電子部品6、6、・・・の上面とが平面ではなく凹凸が存在する場合でもフィルム2がヒートスプレッダー5の下面と電子部品6、6、・・・の上面とに倣って変形されヒートスプレッダー5と電子部品6、6、・・・に密着されるため、ヒートスプレッダー5と電子部品6、6、・・・の間での高い熱の伝導効率を確保することができる。
【0054】
さらにまた、フィルム2が変形されて高さが異なる電子部品6、6、・・・に倣う状態で加熱が行われるため、高さが異なる電子部品6、6、・・・の基板7への接続を一度の作業によって行うことが可能になり、電子部品6、6、・・・の基板7に対する接続作業における作業性の向上を図ることができる。
【0055】
加えて、ヒートスプレッダー5と電子部品6、6、・・・の間に変形可能な枕状熱伝導体1が配置されるため、枕状熱伝導体1によってヒートスプレッダー5からの応力が吸収され、電子部品6、6、・・・に不均一な力が付与され難く、電子部品6、6、・・・に対する過度の負荷を防止した上でヒートスプレッダー5から電子部品6、6、・・・への良好な熱伝導を行うことができる。
【0056】
第2の具体例は、第1の部材として発光ダイオード(LED)等の発光素子9が用いられ第2の部材として放熱フィンやヒートシンク等の放熱体10が用いられた例である(図4参照)。第2の具体例においては、発光素子9が回路基板11に搭載されており、発光素子9が搭載された回路基板11が第1の部材とされてもよく、発光素子9と回路基板11の双方がそれぞれ第1の部材とされてもよい。
【0057】
回路基板11はベース層12と絶縁層13が下側から順に積層され、絶縁層13上に回路パターン14、14が形成されている。ベース層12には上方に突出された搭載部12aが設けられ、搭載部12aが絶縁層13から上方に突出され回路パターン14、14の間に位置されている。放熱体10は搭載部12aに搭載された状態で金属ワイヤー15、15によってそれぞれ回路パターン14、14に接続されている。
【0058】
枕状熱伝導体1は発光素子9に電流が供給されて発光素子9の駆動が行われ発光素子9と回路基板11に発熱が生じるときに、以下のようにして用いられる。
【0059】
枕状熱伝導体1は放熱体10上に配置され枕状熱伝導体1上に発光素子9が搭載された回路基板11が配置される。枕状熱伝導体1は放熱体10を上方から覆いフィルム2の外周部4が、例えば、回路基板11と放熱体10の双方からはみ出す大きさにされている。
【0060】
発光素子9の駆動が行われる状態において、枕状熱伝導体1に上方から回路基板11と発光素子9の重量が圧力として付与される。枕状熱伝導体1は加圧されることによりフィルム2が回路基板11と放熱体10に倣う形状に変形される。
【0061】
加圧されることによりフィルム2が回路基板11と放熱体10に倣う形状に変形された状態においては、フィルム2の外周部4が他の部分に対して膨らむように変形される。このときフィルム2に封入されている熱伝導性微粉末3はガスの流動によって撹拌されて流動される。
【0062】
また、ガスは加圧により外周部4側へ流動され、多くが外周部4の内部に流動され、外周部4以外の部分において回路基板11と放熱体10の間に多くの熱伝導性微粉末3が残存される。
【0063】
上記のようにフィルム2が回路基板11と放熱体10の形状に倣い熱伝導性微粉末3が流動された状態で発光素子9と回路基板11に発生した熱が熱伝導性微粉末3によって放熱体10に伝導され、放熱体10に伝導された熱が放熱体10から外部に放出される。
【0064】
従って、発光素子9と回路基板11の温度上昇が抑制され、特に、発光素子9の温度が一定限度に抑制されるため、発光素子9の良好な駆動状態が確保される。
【0065】
尚、回路基板11や放熱体10等のメンテナンス等により回路基板11と放熱体10を分離する必要がある場合でも、フィルム2が回路基板11と放熱体10に接合されることはないため、枕状熱伝導体1を回路基板11と放熱体10から容易に引き離すことが可能になり、回路基板11と放熱体10の分離を容易に行うことができる。
【0066】
また、熱伝導性微粉末3が袋状のフィルム2に封入されているため、枕状熱伝導体1による回路基板11から放熱体10への熱伝導が行われたときに熱伝導性微粉末3の回路基板11や放熱体10等への付着や飛び散りを生じることなく第1の部材である発光素子9と第2の部材である放熱体10の間で熱を良好に伝導することができる。
【0067】
さらに、フィルム2が回路基板11と放熱体10に倣う形状に変形され、フィルム2が回路基板11と放熱体10に密着された状態で加熱が行われるため、第1の部材である発光素子9と第2の部材である放熱体10との間での熱の伝導効率の向上を図ることができる。特に、回路基板11の下面と放熱体10の上面とが平面ではなく凹凸が存在する場合でもフィルム2が回路基板11の下面と放熱体10の上面とに倣って変形され回路基板11と放熱体10に密着されるため、発光素子9と放熱体10の間での高い熱の伝導効率を確保することができる。
【0068】
さらにまた、回路基板11と放熱体10の間に変形可能な枕状熱伝導体1が配置されるため、枕状熱伝導体1によって回路基板11からの応力が吸収され、放熱体10に不均一な力が付与され難く、放熱体10に対する過度の負荷を防止した上で発光素子9から放熱体10への良好な熱伝導を行うことができる。
【0069】
第3の具体例は、第1の部材として制御板等の電子回路筐体16が用いられ第2の部材として放熱フィン等のヒートシンク17が用いられた例である(図5参照)。第3の具体例においては、ヒートシンク17にペルチェ素子18が配置されており、ヒートシンク17に配置されたペルチェ素子18が第2の部材とされてもよく、ヒートシンク17とペルチェ素子18の双方がそれぞれ第2の部材とされてもよい。
【0070】
電子回路筐体16には内部に所定の電子回路が形成され、電子回路筐体16においては電子回路の駆動により発熱が生じる。
【0071】
ペルチェ素子18はヒートシンク17上に、例えば、サーマルグリース等の高い熱伝導性を有する粘着剤19を介して配置されている。ペルチェ素子18は図示しない電源に電線18a、18aによって接続されており、供給される電流の向きに応じて熱の移動方向を反対方向に切り替えることが可能にされている。
【0072】
枕状熱伝導体1は電子回路筐体16に電流が供給されて電子回路筐体16の駆動が行われ電子回路筐体16に発熱が生じるときに、以下のようにして用いられる。
【0073】
枕状熱伝導体1はペルチェ素子18上に配置され枕状熱伝導体1上に電子回路筐体16が配置される。枕状熱伝導体1はペルチェ素子18を上方から覆いフィルム2の外周部4が電子回路筐体16とペルチェ素子18からはみ出す大きさにされている。
【0074】
電子回路筐体16の駆動が行われる状態において、枕状熱伝導体1に上方から電子回路筐体16の重量が圧力として付与される。枕状熱伝導体1は加圧されることによりフィルム2が電子回路筐体16とペルチェ素子18に倣う形状に変形される。
【0075】
加圧されることによりフィルム2が電子回路筐体16とペルチェ素子18に倣う形状に変形された状態においては、フィルム2の外周部4が他の部分に対して膨らむように変形される。このときフィルム2に封入されている熱伝導性微粉末3はガスの流動によって撹拌されて流動される。
【0076】
また、ガスは加圧により外周部4側へ流動され、多くが外周部4の内部に流動され、外周部4以外の部分において電子回路筐体16とペルチェ素子18の間に多くの熱伝導性微粉末3が残存される。
【0077】
上記のようにフィルム2が電子回路筐体16とペルチェ素子18の形状に倣い熱伝導性微粉末3が流動された状態で電子回路筐体16に発生した熱が熱伝導性微粉末3によってペルチェ素子18に伝導される。このときペルチェ素子18には所定の方向への電流が供給されており、ペルチェ素子18によって電子回路筐体16側からヒートシンク17側に熱が移動可能な状態にされている。
【0078】
従って、電子回路筐体16から熱伝導性微粉末3によってペルチェ素子18に伝導された熱はペルチェ素子18からヒートシンク17に伝導され、ヒートシンク17に伝導された熱がヒートシンク17から外部に放出される。
【0079】
このように電子回路筐体16から熱伝導性微粉末3によってペルチェ素子18に伝導された熱がペルチェ素子18からヒートシンク17に伝導されてヒートシンク17から外部に放出されるため、電子回路筐体16の温度上昇が抑制され、電子回路筐体16の良好な駆動状態が確保される。
【0080】
尚、電子回路筐体16やペルチェ素子18等のメンテナンス等により電子回路筐体16とペルチェ素子18を分離する必要がある場合でも、フィルム2が電子回路筐体16とペルチェ素子18に接合されることはないため、枕状熱伝導体1を電子回路筐体16とペルチェ素子18から容易に引き離すことが可能になり、電子回路筐体16とペルチェ素子18の分離を容易に行うことができる。
【0081】
また、熱伝導性微粉末3が袋状のフィルム2に封入されているため、枕状熱伝導体1による電子回路筐体16からヒートシンク17への熱伝導が行われたときに熱伝導性微粉末3の電子回路筐体16やペルチェ素子18やヒートシンク17等への付着や飛び散りを生じることなく第1の部材である電子回路筐体16と第2の部材であるヒートシンク17の間で熱を良好に伝導することができる。
【0082】
さらに、フィルム2が電子回路筐体16とペルチェ素子18に倣う形状に変形され、フィルム2が電子回路筐体16とペルチェ素子18に密着された状態で加熱が行われるため、第1の部材である電子回路筐体16と第2の部材であるヒートシンク17との間での熱の伝導効率の向上を図ることができる。特に、電子回路筐体16の下面とペルチェ素子18の上面とが平面ではなく凹凸が存在する場合でもフィルム2が電子回路筐体16の下面とペルチェ素子18の上面とに倣って変形され電子回路筐体16とペルチェ素子18に密着されるため、電子回路筐体16とヒートシンク17の間での高い熱の伝導効率を確保することができる。
【0083】
さらにまた、電子回路筐体16とペルチェ素子18の間に変形可能な枕状熱伝導体1が配置されるため、枕状熱伝導体1によって電子回路筐体16からの応力が吸収され、ペルチェ素子18に不均一な力が付与され難く、ペルチェ素子18に対する過度の負荷を防止した上で電子回路筐体16からヒートシンク17への良好な熱伝導を行うことができる。
【0084】
<枕状熱伝導体の再生装置>
以下に、枕状熱伝導体1の再生装置の例について説明する(図6乃至図9参照)。枕状熱伝導体1はフィルム2に熱伝導性微粉末3が封入されており、熱伝導性微粉末3による熱伝導が行われた後においてフィルム2の内部において熱伝導性微粉末3が凝集する可能性がある。再生装置は熱伝導性微粉末3の凝集状態を解消して枕状熱伝導体1の流動性を復元し枕状熱伝導体1を繰り返し使用可能な状態にする装置である。
【0085】
再生装置20は枕状熱伝導体1を保持する保持機構21と熱伝導性微粉末3にフィルム2を介して外力を付与する外力付与機構22とを備えている(図6及び図7参照)。
【0086】
枕状熱伝導体1は、例えば、吸引ヘッド等の保持機構21によって吊り下げられた状態で保持される(図6参照)。保持機構21によって保持された枕状熱伝導体1は、少なくとも一度は熱伝導性微粉末3による熱伝導が行われた状態であり、熱伝導性微粉末3が凝集されている可能性がある。このとき熱伝導性微粉末3はフィルム2の内部において下方側に存在した状態にされている。
【0087】
外力付与機構22は、例えば、前後左右に移動可能にされ、上下に繰り返し移動可能な移動体である(図7参照)。従って、外力付与機構22は前後左右に移動しながら連続的に上下動される。
【0088】
枕状熱伝導体1が保持機構21によって保持された状態において、外力付与機構22が前後左右に移動しながら連続的に上下動され、外力付与機構22によって熱伝導性微粉末3にフィルム2を介して外力が付与される。熱伝導性微粉末3は外力付与機構22から付与された外力によりフィルム2の内部において撹拌され、凝集状態が解消されて流動性が復元される。従って、熱伝導性微粉末3がガスの対流によってフィルム2の内部において流動可能な状態にされ、枕状熱伝導体1が再度使用可能にされる。
【0089】
上記には、連続的に上下動される外力付与機構22を例として示したが、再生装置20においては外力付与機構22に代えて外力付与機構23を用いることが可能である(図8参照)。
【0090】
外力付与機構23は、例えば、前後左右に移動可能にされ、ローラー23aを有する移動体である。従って、外力付与機構23は前後左右に移動しながらローラー23aが回転される。
【0091】
枕状熱伝導体1は、例えば、保持機構21によって吊り下げられた状態で保持される。枕状熱伝導体1が保持機構21によって保持された状態において、外力付与機構23はローラー23aがフィルム2に下方から押し付けられた状態において前後左右に移動される。ローラー23aがフィルム2に下方から押し付けられた状態で外力付与機構23が前後左右に移動されるため、ローラー23aによって熱伝導性微粉末3にフィルム2を介して外力が付与される。熱伝導性微粉末3は外力付与機構23から付与された外力によりフィルム2の内部において撹拌され、凝集状態が解消されて流動性が復元される。従って、熱伝導性微粉末3がガスの対流によってフィルム2の内部において流動可能な状態にされ、枕状熱伝導体1が再度使用可能にされる。
【0092】
また、再生装置20においては外力付与機構22又は外力付与機構23に代えて外力付与機構24を用いることが可能である(図9参照)。
【0093】
外力付与機構24は枕状熱伝導体1を吸引する複数の吸引孔24a、24a、・・・を有する固定ベース又は可動ベースである。従って、外力付与機構24は上方から保持機構21によって吸引されて保持され下方から外力付与機構23によって吸引される。
【0094】
枕状熱伝導体1は、例えば、保持機構21によって吊り下げられた状態で保持される。枕状熱伝導体1が保持機構21によって保持された状態において、枕状熱伝導体1は吸引孔24a、24a、・・・を介して作用される負圧により外力付与機構24によって下方から吸引され、枕状熱伝導体1には外力付与機構24から吸引による引張力である外力が付与される。熱伝導性微粉末3は外力付与機構24から付与された外力によりフィルム2の内部において撹拌され、凝集状態が解消されて流動性が復元される。従って、熱伝導性微粉末3がガスの対流によってフィルム2の内部において流動可能な状態にされ、枕状熱伝導体1が再度使用可能にされる。
【0095】
尚、外力付与機構24が可動ベースである場合には、外力付与機構24が前後左右に移動されるため、熱伝導性微粉末3が外力付与機構24によってフィルム2の内部において一層撹拌され易くなり、熱伝導性微粉末3の凝集状態の解消が促進されて流動性の復元までの時間を短縮化することが可能になる。
【0096】
<その他>
フィルム2の外周部4には通気孔4a、4a、・・・が形成されていてもよい(図10参照)。通気孔4aは熱伝導性微粉末3の大きさよりも小さくされている。従って、通気孔4aからはフィルム2に封入された熱伝導性微粉末3は放出されずフィルム2に封入されたガスが放出可能にされている。
【0097】
フィルム2の外周部4に通気孔4a、4a、・・・が形成されている場合には、枕状熱伝導体1が加圧されたときにガスの一部が通気孔4a、4a、・・・から押し出されてフィルム2の外部に放出される。ガスの通気孔4aからの放出は、フィルム2の内圧とフィルム2の外部の圧力が平衡状態にされると停止される。
【0098】
このように枕状熱伝導体1においてガスの一部が通気孔4a、4a、・・・からフィルム2の外部に放出される場合には、ガスによりフィルム2に過度の内圧が付与されることがなく、フィルム2が接している各部材の形状に倣い易くなりフィルム2と各部材の間に隙間が生じ難くなる。従って、フィルム2の各部材に対する高い密着性を確保することができる。
【0099】
但し、フィルム2に通気孔4aが形成された場合には、ガスの一部が通気孔4aからフィルム2の外部に放出されるため、フィルム2の内圧が低くなり枕状熱伝導体1の使用が一度の使用に限られる可能性があるが、フィルム2に通気孔4aが形成されていない場合には枕状熱伝導体1を繰り返し使用することが可能になる。従って、通気孔4aが形成されていないフィルム2を使用することにより、枕状熱伝導体1を繰り返し使用してコストの低減を図ることが可能になる。
【符号の説明】
【0100】
1 枕状熱伝導体
2 フィルム
3 熱伝導性微粉末
4a 通気孔
5 ヒートスプレッダー(第1の部材)
6 電子部品(第2の部材)
9 発光素子(第1の部材)
10 放熱体(第2の部材)
16 電子回路筐体(第1の部材)
17 ヒートシンク(第2の部材)
20 再生装置
21 保持機構
22 外力付与機構
23 外力付与機構
24 外力付与機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10