IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 本田技研工業株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156662
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】回転電機装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/28 20060101AFI20221006BHJP
   H02K 16/04 20060101ALI20221006BHJP
   H02P 25/22 20060101ALI20221006BHJP
   H02P 27/08 20060101ALI20221006BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20221006BHJP
   H02M 7/493 20070101ALI20221006BHJP
【FI】
H02K3/28
H02K16/04
H02P25/22
H02P27/08
H02M7/48 E
H02M7/493
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060467
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】八釼 学
【テーマコード(参考)】
5H505
5H603
5H770
【Fターム(参考)】
5H505AA16
5H505BB02
5H505BB04
5H505BB05
5H505CC04
5H505DD03
5H505DD08
5H505EE49
5H505HA07
5H505HB01
5H505HB05
5H603AA01
5H603CA01
5H603CB02
5H603CD02
5H770AA07
5H770BA02
5H770DA03
5H770DA22
5H770DA26
5H770DA30
5H770EA01
(57)【要約】
【課題】高調波成分を確実に低減し、回転電機の振動を低減できる回転電機装置を提供する。
【解決手段】回転電機装置は、モータ2の駆動制御を行う第1インバータ回路及び第2インバータ回路を備え、第1インバータ回路のキャリア周波数の位相と第2インバータ回路のキャリア周波数の位相とを逆位相としてモータ2の駆動制御を行う。モータ2は、複数のスロット11が形成されたステータ5と、各スロット11に挿入される複数のコイル8と、ステータ5に対して回転自在に設けられたロータと、を備える。複数のコイル8は、第1インバータ回路に接続される第1各相コイル8Ua~8Waと第2インバータ回路に接続される第2各相コイル8Ub~8Wbとが1つずつで1つのコイル対80U~80Wを構成し、1つのスロット11内に少なくとも1つのコイル対80U~80Wが配置されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機と、
前記回転電機の駆動制御を行う第1インバータ回路及び第2インバータ回路と、
を備え、
前記第1インバータ回路のキャリア周波数の位相と前記第2インバータ回路のキャリア周波数の位相とを逆位相として前記回転電機の駆動制御を行う回転電機装置であって、
前記回転電機は、
複数のスロットが形成されたステータと、
各前記スロットに挿入される複数のコイルと、
前記ステータに対して回転自在に設けられたロータと、
を備え、
前記複数のコイルは、前記第1インバータ回路に接続される第1コイルと前記第2インバータ回路に接続される第2コイルとが1つずつで1つのコイル対を構成し、
1つの前記スロット内に少なくとも1つの前記コイル対が配置されている
ことを特徴とする回転電機装置。
【請求項2】
複数の前記スロットは、同相の前記コイル対のみが配置された同相コイルスロットを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の回転電機装置。
【請求項3】
前記同相コイルスロット内に、少なくとも2つの前記コイル対が配置されており、かつ前記第1コイルと前記第2コイルとが交互に配置されている
ことを特徴とする請求項2に記載の回転電機装置。
【請求項4】
前記同相コイルスロットは、1つの前記スロット置きに配置されている
ことを特徴とする請求項3に記載の回転電機装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、回転電機装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転電機装置としては、回転電機と、この回転電機の駆動制御を行うインバータ回路(インバータ装置)と、を備えたものがある。回転電機としては、複数のスロットが形成されたステータと、ステータに対して回転自在に設けられマグネットを有するロータと、を備えたものが知られている。
複数のスロットには、複数のコイルが挿入されている。これらコイルに通電すると、ステータに鎖交磁束が形成される。この鎖交磁束とロータのマグネットとの間に磁気的な吸引力や反発力が生じ、ロータが継続的に回転される。コイルへの通電制御を、インバータ回路によって行う。
【0003】
ここで、コイルへの出力電流には、回転電機の構成やインバータ回路の構成上、ロータの回転トルクに寄与しない高調波成分が重畳される。このため、回転電機の振動(トルクリップル)が増大してしまうので、高調波成分の影響を低減するためのさまざまな技術が提案されている。
例えば、インバータ回路を並列二重化し、さらにこれらのキャリア周波数の位相を逆位相とする(反転させる)技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このように構成することで、各インバータ回路に接続されたモータに生じる電源系統側の高調波成分同士を打ち消し合い、この高調波成分を低減しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-239346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の従来技術にあっては、各コイルの各インバータ回路への結線構造が不明であるとともに、各スロットへの各コイルの配置が不明である。このため、高調波成分を確実に低減でき、回転電機の振動を低減できるとはいいにくい。
【0006】
そこで、この発明は、高調波成分を確実に低減し、回転電機の振動を低減できる回転電機装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
(1)本発明に係る回転電機装置(例えば、実施形態の回転電機装置1)は、回転電機(例えば、実施形態のモータ2)と、前記回転電機の駆動制御を行う第1インバータ回路(例えば、実施形態の第1インバータ回路3)及び第2インバータ回路(例えば、実施形態の第2インバータ回路4)と、を備え、前記第1インバータ回路のキャリア周波数(例えば、実施形態の第1キャリア周波数Cf1)の位相と前記第2インバータ回路のキャリア周波数(例えば、実施形態の第2キャリア周波数Cf2)の位相とを逆位相として前記回転電機の駆動制御を行う回転電機装置であって、前記回転電機は、複数のスロット(例えば、実施形態のスロット11)が形成されたステータ(例えば、実施形態のステータ5)と、各前記スロットに挿入される複数のコイル(例えば、実施形態のコイル8)と、前記ステータに対して回転自在に設けられたロータ(例えば、実施形態のロータ6)と、を備え、前記複数のコイルは、前記第1インバータ回路に接続される第1コイル(例えば、実施形態の第1U相コイル8Ua、第1V相コイル8Va、第1W相コイル8Wa)と前記第2インバータ回路に接続される第2コイル(例えば、実施形態の第2U相コイル8Ub、第2V相コイル8Vb、第2W相コイル8Wb)とが1つずつで1つのコイル対(例えば、実施形態のU相コイル対80U、V相コイル対80V、W相コイル対80W)を構成し、1つの前記スロット内に少なくとも1つの前記コイル対が配置されていることを特徴とする。
【0008】
このように構成することで、1つのスロット内に、キャリア周波数が逆位相となる2つのコイルが対となって存在する。このため、対となる2つのコイルの起磁力による各高調波成分同士が打ち消し合い、この高調波成分を確実に低減できる。よって、回転電機の振動を低減できる。
【0009】
(2)上記構成において、複数の前記スロットは、同相の前記コイル対のみが配置された同相コイルスロット(例えば、実施形態の第2スロット11U2,11V2,11W2)を有してもよい。
【0010】
同相のコイルは通電タイミングが同じであるので、同相コイルスロットに配置された各コイルの起磁力による高調波成分をより確実に低減できる。
【0011】
(3)上記構成において、前記同相コイルスロット内に、少なくとも2つの前記コイル対が配置されており、かつ前記第1コイルと前記第2コイルとが交互に配置されてもよい。
【0012】
このように構成することで、第1コイルと第2コイルとが交互に配置される分、より確実に各コイルの起磁力による高調波成分同士を打ち消し合わせることができる。このため、各コイルの高調波成分をさらに確実に低減できる。
【0013】
(4)上記構成において、前記同相コイルスロットは、1つの前記スロット置きに配置されてもよい。
【0014】
このように構成することで、高調波成分が確実に低減されたスロットが1つのスロット置きに配置されるので、回転電機全体としてバランスよく高調波成分を低減できるとともに、各コイルの起磁力による高調波成分をさらに確実に低減できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、対となる2つのコイルの起磁力による各高調波成分同士が打ち消し合い、この高調波成分を確実に低減できる。このため、回転電機の振動を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態における回転電機装置の回路図。
図2】本発明の実施形態におけるモータの一部の構成を拡大して示す断面図。
図3】本発明の実施形態における各インバータ回路のキャリア周波数の波形を示す図。
図4A】本発明の実施形態における各スロット内の各相コイルの配置説明図。
図4B】本発明の実施形態における各スロット内の各相コイルの配置説明図。
図4C】本発明の実施形態における各スロット内の各相コイルの配置説明図。
図5図4A図4Cに示す各相のコイルの配置を、接続されているインバータ回路別に示した一部拡大図。
図6】本発明の実施形態におけるモータの損失と従来のモータの損失とを比較したグラフ。
図7】本発明の実施形態におけるモータのトルクリップルと従来のモータのトルクリップルとを比較したグラフ。
図8A】本発明の実施形態の第1変形例における各スロット内の各相コイルの配置説明図。
図8B】本発明の実施形態の第1変形例における各スロット内の各相コイルの配置説明図。
図8C】本発明の実施形態の第1変形例における各スロット内の各相コイルの配置説明図。
図9A】本発明の実施形態の第2変形例における各スロット内の各相コイルの配置説明図。
図9B】本発明の実施形態の第2変形例における各スロット内の各相コイルの配置説明図。
図9C】本発明の実施形態の第2変形例における各スロット内の各相コイルの配置説明図。
図10A】本発明の実施形態の第3変形例における各スロット内の各相コイルの配置説明図。
図10B】本発明の実施形態の第3変形例における各スロット内の各相コイルの配置説明図。
図10C】本発明の実施形態の第3変形例における各スロット内の各相コイルの配置説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
<回転電機装置>
図1は、回転電機装置1の回路図である。
図1に示すように、回転電機装置1は、回転電機であるモータ2と、モータ2の駆動制御を行う第1インバータ回路3及び第2インバータ回路4と、を備える。
回転電機装置1は、例えば電動車両等の車両に搭載される。電動車両は、電気自動車、ハイブリッド車両、及び燃料電池車両等である。電気自動車は、バッテリを動力源として駆動する。ハイブリッド車両は、バッテリ及び内燃機関を動力源として駆動する。燃料電池車両は、燃料電池を動力源として駆動する。モータ2は、駆動時にバッテリから供給される電力によって回転駆動力を発生させる。
【0019】
<モータ>
図2は、モータ2の一部の構成を拡大して示す断面図である。以下、モータ2の回転軸線方向を単に軸方向、回転回り方向を周方向、軸方向及び周方向に直交する方向を径方向などと称して説明する場合がある。
図1図2に示すように、モータ2は、3相(U相、V相、W相)のモータである。モータ2は、円筒状のステータ5と、ステータ5の径方向内側に配置され、ステータ5に対して回転自在に支持されたロータ6と、を備える。ロータ6の外周部には、複数の図示しないマグネットが設けられている。本実施形態では、マグネットの磁極数は、8極で構成されている。
【0020】
ステータ5は、円筒状のステータコア7と、ステータコア7に装着された複数のコイル8と、を備える。ステータコア7は、例えば電磁鋼板を積層したり軟磁性粉を加圧成形したりして形成することが可能である。ステータコア7は、円筒状のヨーク部9と、ヨーク部9の内周面から径方向内側に向かって突出する複数(例えば、本実施形態では48つ)のティース部10と、が一体成形されている。
【0021】
周方向に隣接するティース部10間に、それぞれスロット11が形成される。スロット11は、いわゆるオープンスロットであり、軸方向にステータコア7を貫通するとともに、径方向内方に向かって開放されている。各スロット11に、複数(本実施形態では4つ)の各相のコイル8が径方向に沿って並んで配置されるように挿入される。以下の説明では、説明を分かりやすくするために、各スロット11に配置されたコイル8を、径方向外側から順に1層目のコイル8、2層目のコイル8、3層目のコイル8、4層目のコイル8と称する場合がある。
【0022】
コイル8は、3相構造(U相コイル8Ua,8Ub、V相コイル8Va,8Vb、W相コイル8Wa,8Wb)である。3相の相コイル8Ua~8Wbは、中性点12a,12b(第1中性点12a、第2中性点12b)を有する2系統のスター結線(Y結線)回路S1,S2(第1スター結線回路S1、第2スター結線回路S2)が形成されるように結線されている。
【0023】
2系統のスター結線回路S1,S2のうち、第1スター結線回路S1を構成する第1各相コイル8Ua~8Waは、第1中性点12aとは反対側の端末部が第1インバータ回路3に接続されている。2系統のスター結線回路S1,S2のうち、第2スター結線回路S2を構成する第2各相コイル8Ub~8Wbは、第2中性点12bとは反対側の端末部が第2インバータ回路4に接続されている。
【0024】
<インバータ回路>
各インバータ回路3,4は、例えば図示しない複数のスイッチング素子を備えた3相ブリッジ回路である。各インバータ回路3,4は、例えば複数のスイッチング素子をPWM(Pulse Width Modulation)制御することにより、図示しない外部電力を制御して各相コイル8Ua~8Wbに選択的に出力する。
【0025】
図3は、各インバータ回路3,4のキャリア周波数Cf1,Cf2の波形を示す図である。
図3に示すように、第1インバータ回路3の第1キャリア周波数Cf1の位相と、第2インバータ回路4の第2キャリア周波数Cf2の位相とは、逆位相である。このように、モータ2を駆動制御するための回路は、2つのインバータ回路3,4を並列二重化して運転され、さらに各キャリア周波数Cf1,Cf2の位相を逆位相としている。
【0026】
<コイルの配置構造>
次に、コイル8の配置構造について説明する。
図4A図4B図4Cは、各スロット11内の各相コイルUa~Wbの配置説明図であり、ステータ5の展開図である。説明を分かりやすくするために、図4A図4Cで1つのステータ5を示している。
図4A図4Cは、ステータ5の周方向を横方向とし、ステータ5の径方向を縦方向としている。図4A図4C中、上方が径方向外側であり、下方が径方向内側である。
また、図4A図4Cでは、各スロット11に周方向に順に番号を付しているとともに、各コイル8(各相コイル8Ua~8Wb)にインバータ回路3,4から中性点12a,12bに向かう順に番号を付している。
【0027】
さらに、図4A図4C中、スロット11の上方に記載された各相の記号は、対応するスロット11間でのコイル8の巻回方向を示している。例えば、対応するスロット11間にU相コイル8Ua,8Ubが一方向に巻回されている場合を「U+」とすると、一方向とは反対方向に巻回されている場合を「U-」とする。V相コイル8Va,8Vb、W相コイル8Wa,8Wbについても同様である。各スロット11間のコイル8の巻回方向は、各コイル8を番号順に直列接続させていくと、図4A図4Cに示す巻回方向となる。
【0028】
より具体的に説明すると、図4A図4Cに示すように、24番スロット11に挿入された1番目の第1U相コイル8Uaは、4つのスロット11を間に置いて29番スロット11に挿入された2番目の第1U相コイル8Uaに接続される。1番目の第1U相コイル8Uaは、24番スロット11に挿入される4つのコイル8のうち、最外周部寄り(1層目)に配置されている。2番目の第1U相コイル8Uaは、29番スロット11に挿入される4つのコイル8のうち、最外周部から3つ目(3層目)に配置されている。
【0029】
これを残りの3番目の第1U相コイル8Uaから32番目の第1U相コイル8Uaまで順に接続する。1番目の第1U相コイル8Uaにおける2番目の第1U相コイル8Uaとは反対側の端末部は、第1インバータ回路3に接続される。17番スロット11に挿入された32番目の第1U相コイル8Uaは、22番スロット11に挿入された31番目の第1U相コイル8Uaとは反対側の端末部が、第1中性点12aに接続される。これら1番目の第1U相コイル8Uaから32番目の第1U相コイル8Uaは、第1スター結線回路S1(図1参照)を構成する。
【0030】
同様に、28番スロット11に挿入された1番目の第1V相コイル8Vaから21番スロット11に挿入された32番目の第1V相コイル8Vaまで順に接続する。1番目の第1V相コイル8Vaは、33番スロット11に挿入された2番目の第1V相コイル8Vaとは反対側の端末部が、第1インバータ回路3に接続される。32番目の第1V相コイル8Vaは、26番スロット11に挿入された31番目の第1V相コイル8Vaとは反対側の端末部が、第1中性点12aに接続される。これら1番目の第1V相コイル8Vaから32番目の第1V相コイル8Vaは、第1スター結線回路S1(図1参照)を構成する。
【0031】
また、32番スロット11に挿入された1番目の第1W相コイル8Waから25番スロット11に挿入された32番目の第1W相コイル8Waまで順に接続する。1番目の第1W相コイル8Waは、37番スロット11に挿入された2番目の第1W相コイル8Waとは反対側の端末部が、第1インバータ回路3に接続される。32番目の第1W相コイル8Waは、30番スロット11に挿入された31番目の第1W相コイル8Waとは反対側の端末部が、第1中性点12aに接続される。これら1番目の第1W相コイル8Waから32番目の第1W相コイル8Waは、第1スター結線回路S1(図1参照)を構成する。
【0032】
一方、23番スロット11に挿入された33番目の第2U相コイル8Ubは、4つのスロット11を間に置いて28番スロット11に挿入された34番目の第2U相コイル8Ubに接続される。33番目の第2U相コイル8Ubは、23番スロット11に挿入される4つのコイル8のうち、最外周部寄り(1層目)に配置されている。34番目の第2U相コイル8Ubは、34番スロット11に挿入される4つのコイル8のうち、最外周部から3つ目(3層目)に配置されている。
【0033】
これを残り35番目の第2U相コイル8Ubから64番目の第2U相コイル8Ubまで順に接続する。33番目の第2U相コイル8Ubにおける34番目の第2U相コイル8Ubとは反対側の端末部は、第2インバータ回路4に接続される。18番スロット11に挿入された64番目の第2U相コイル8Ubは、23番スロット11に挿入された63番目の第2U相コイル8Ubとは反対側の端末部が、第2中性点12bに接続される。これら33番目の第2U相コイル8Ubから64番目の第2U相コイル8Ubは、第2スター結線回路S2(図1参照)を構成する。
【0034】
同様に、27番スロット11に挿入された33番目の第2V相コイル8Vbから22番スロット11に挿入された64番目の第2V相コイル8Vbまで順に接続する。33番目の第2V相コイル8Vbは、32番スロット11に挿入された34番目の第2V相コイル8Vbとは反対側の端末部が、第2インバータ回路4に接続される。64番目の第2V相コイル8Vbは、27番スロット11に挿入された63番目の第2V相コイル8Vbとは反対側の端末部が、第2中性点12bに接続される。これら33番目の第2V相コイル8Vbから64番目の第2V相コイル8Vbは、第2スター結線回路S2(図1参照)を構成する。
【0035】
また、31番スロット11に挿入された33番目の第2W相コイル8Wbから26番スロット11に挿入された64番目の第2W相コイル8Wbまで順に接続する。33番目の第2W相コイル8Wbは、36番スロット11に挿入された34番目の第2W相コイル8Wbとは反対側の端末部が、第2インバータ回路4に接続される。64番目の第2W相コイル8Wbは、31番スロット11に挿入された63番目の第2W相コイル8Wbとは反対側の端末部が、第2中性点12bに接続される。これら33番目の第2W相コイル8Wbから64番目の第2W相コイル8Wbは、第2スター結線回路S2(図1参照)を構成する。
【0036】
図5は、図4A図4Cに示す各相のコイル8の配置を、接続されているインバータ回路3,4別に示した一部拡大図である。図5のステータ5は、前述の図4A図4Cのステータ5に対応している。
図5に示すように、各相コイル8Ua~8Wbは、周方向に並ぶ3つのスロット11に配置される。3つのスロット11を相毎に順に第1スロット11U1~11W1、第2スロット11U2~11W2、第3スロット11U3~11W3としたとき、第1スロット11U1~11W1には、径方向に並ぶ4つのコイル8のうち、径方向内側の2つのコイル8(3層目、4層目のコイル8)が対応する相のコイル8となる。これら2つのコイル8は、第1インバータ回路3に接続された第1各相コイル8Ua~8Waと第2インバータ回路4に接続された第2各相コイル8Ub~8Wbとが1つずつで構成される。
【0037】
以下、このように第1インバータ回路3に接続された第1各相コイル8Ua~8Waと第2インバータ回路4に接続された第2各相コイル8Ub~8Wbとが1つずつで対となって構成されたものをコイル対80U,80V,80Wと称する場合がある。すなわち、U相の第1スロット11U1には、U相コイル対80Uが1つ配置されている。V相の第1スロット11V1には、V相コイル対80Vが1つ配置されている。W相の第1スロット11W1には、W相コイル対80Wが1つ配置されている。
【0038】
第2スロット11U2~11W2には、径方向に並ぶ4つのコイル8(1層から4層のコイル8)の全てが、対応する相のコイル8となる。このように、配置された4つのコイル8の全てが同相である第2スロット11U2~11W2は、請求項における同相コイルスロットに相当する。第2スロット11U2~11W2の4つのコイル8は、2つのコイル対80U~80Wで構成される。2つのコイル対80U~80Wは、第1インバータ回路3に接続された第1各相コイル8Ua~8Waと第2インバータ回路4に接続された第2各相コイル8Ub~8Wbとが交互に並んだ形になる。
【0039】
第3スロット11U3~11W3には、径方向に並ぶ4つのコイル8のうち、径方向外側の2つのコイル8(1層目、2層目のコイル8)が対応する相のコイル8となる。これら2つのコイル8は、1つのコイル対80U~80Wである。
【0040】
このように各スロット11U1~11W3に配置された各相コイル8Ua~8Wbは、さらに周方向に順に並んでいる。例えば、図5では、W相、V相、U相の順に並んでいる。そして、W相の第3スロット11W3とV相の第1スロット11V1とが同一スロット11となるように、各相コイル8Ua~8Wbが配置されている。V相の第3スロット11V3とU相の第1スロット11U1とが同一スロット11となるように、各相コイル8Ua~8Wbが配置されている。U相の第3スロット11U3とW相の第1スロット11W1とが同一スロット11となるように、各相コイル8Ua~8Wbが配置されている。これにより、各相の第2スロット(同相コイルスロット)11U2~11W2は、1つのスロット11(第1スロット11U1~11W1と第3スロット11U3~11W3とが混在しているスロット11)置きに配置された形になる。
【0041】
<回転電機装置の動作>
次に、回転電機装置1の動作について説明する。
回転電機装置1のモータ2を駆動させるには、図示しない外部電源を2つのインバータ回路3,4(図1参照)を用いて制御し、各相コイル8Ua~8Wbに選択的に出力する。この際、各インバータ回路3,4は、同相の相コイル8Ua~8Wbに同一通電タイミングで、それぞれのキャリア周波数Cf1,Cf2で出力する。このとき、同相の相コイル8Ua~8Wbに出力する各キャリア周波数Cf1,Cf2の位相は、逆位相である(図3参照)。
【0042】
各相コイル8Ua~8Wbに電力が供給されると、ステータ5は、一定の鎖交磁束を形成する。この鎖交磁束とロータ6の図示しないマグネットとの間で磁気的な吸引力や反発力が生じ、ロータ6が継続的に回転される。
【0043】
ここで、ステータ5の各スロット11に挿入された各相コイル8Ua~8Wbは、全てコイル対80U~80Wを構成している。前述したように、同相の相コイル8Ua~8Wbには、同一通電タイミングで、かつ逆位相のキャリア周波数Cf1,Cf2が出力されている。このため、各コイル対80U~80Wは、このコイル対80U~80Wを構成する各相コイル8Ua~8Wbの起磁力による高調波成分同士が打ち消し合い、高調波成分が低減される。
【0044】
図6は、3相のモータを、1つのインバータ回路で駆動した場合と本実施形態で駆動した場合とで損失を比較したグラフである。なお、損失とはステータ5の鉄損、コイル8の渦電流損(銅渦損)及び銅損をいう。
図6に示すように、1つのインバータ回路で3相のモータを駆動する場合と比較して、本実施形態では、ステータ5の鉄損やコイル8の渦電流損を低減できることが確認できる。とりわけ、ステータ5の鉄損を大幅に低減できることが確認できる。
【0045】
図7は、縦軸をトルク(Torque)[Nm]とし、横軸を経過時間(Time)[S]としたときのトルクの変化(トルクリップル)を示すグラフであり、1つのインバータ回路で駆動した場合と本実施形態で駆動した場合とで損失を比較している。
図7に示すように、1つのインバータ回路で3相のモータを駆動する場合と比較して、本実施形態では、モータのトルクリップルを大幅に低減できることが確認できる。
【0046】
このように、上述の実施形態では、各相コイル8Ua~8Wbは、第1インバータ回路3に接続される第1各相コイル8Ua~8Waと、第2インバータ回路4に接続される第2各相コイル8Ub~8Wbと、が1つずつで1つのコイル対80U~80Wを構成している。そして、1つのスロット11内に2つのコイル対80U~80Wが配置されている。すなわち、1つのスロット11内に配置された各相コイル8Ua~8Wbは、必ずコイル対80U~80Wを構成している。このような構成のもと、第1各相コイル8Ua~8Waに出力される第1キャリア周波数Cf1と第2各相コイル8Ub~8Wbに出力される第2キャリア周波数Cf2とが逆位相である。このため、対となる各相コイル8Ua~8Wbの起磁力による各高調波成分同士が打ち消し合い、高調波成分を確実に低減できる。よって、モータ2の振動(トルクリプル)を低減できる。
【0047】
また、複数のスロット11は、同相のコイル対80U~80Wのみが配置された第2スロット(同相コイルスロット)11U2~11W2を有している。同相のコイル8Ub~8Wbは通電タイミングが同じであるので、第2スロット11U2~11W2に配置された各相コイル8Ua~8Wbの起磁力による各高調波成分をより確実に低減できる。
【0048】
しかも、第2スロット11U2~11W2に配置されたコイル対80U~80Wは、第1各相コイル8Ua~8Waと第2各相コイル8Ub~8Wbとが交互に並んでいる。第1各相コイル8Ua~8Waと第2各相コイル8Ub~8Wbとが交互に並ぶ分、より確実に各相のコイル8Ua~8Wbの起磁力による各高調波成分同士を打ち消し合わせることができる。このため、各相コイル8Ua~8Wbの起磁力による高調波成分をさらに確実に低減できる。
【0049】
さらに、各相の第2スロット11U2~11W2は、1つのスロット11置きに配置されている。高調波成分が確実に低減された第2スロット11U2~11W2が1つのスロット11置きに配置されるので、モータ2全体としてバランスよく高調波成分を低減できる。また、各相コイル8Ua~8Wbの起磁力による高調波成分をさらに確実に低減できる。
【0050】
上述の実施形態では、図4A図4Cに示すように各スロット11内の各相コイルUa~Wbを配置して接続することにより、1つのスロット11内に配置された各相コイル8Ua~8Wbは、必ずコイル対80U~80Wを構成する場合について説明した。また、1つのスロット11置きに同相コイルスロットが存在し、かつ同相コイルスロットの各相コイル8Ua~8Wbは、第1各相コイル8Ua~8Waと第2各相コイル8Ub~8Wbとが交互に並ぶ場合(以下、図5のパターンと称する)について説明した。しかしながら図4A図4Cに示す各相コイルUa~Wbの配置に限られるものではなく、以下の各変形例のように各スロット11内の各相コイルUa~Wbを配置して接続しても図5のパターンと同様に構成することができる。
【0051】
[第1変形例]
<コイルの配置構造>
図8A図8B図8Cは、第1変形例における各スロット11内の各相コイルUa~Wbの配置説明図であり、ステータ5の展開図である。図8A図8Cは、前述の図4A図4Cに対応している。なお、以下の変形例において、ロータ6の磁極数は8極である点、ステータ5のスロット11の個数は48つである点は、前述の実施形態と同様である。
【0052】
図8A図8Cに示すように、24番スロット11に挿入された1番目の第1U相コイル8Uaは、4つのスロット11を間に置いて29番スロット11に挿入された2番目の第1U相コイル8Uaに接続される。1番目の第1U相コイル8Uaは、24番スロット11に挿入される4つのコイル8のうち、最外周部寄り(1層目)に配置されている。2番目の第1U相コイル8Uaは、29番スロット11に挿入される4つのコイル8のうち、最外周部から3つ目(3層目)に配置されている。
【0053】
これを残りの3番目の第1U相コイル8Uaから32番目の第1U相コイル8Uaまで順に接続する。1番目の第1U相コイル8Uaにおける2番目の第1U相コイル8Uaとは反対側の端末部は、第1インバータ回路3に接続される。17番スロット11に挿入された32番目の第1U相コイル8Uaは、22番スロット11に挿入された31番目の第1U相コイル8Uaとは反対側の端末部が、第1中性点12aに接続される。これら1番目の第1U相コイル8Uaから32番目の第1U相コイル8Uaは、第1スター結線回路S1(図1参照)を構成する。
【0054】
同様に、28番スロット11に挿入された1番目の第1V相コイル8Vaから21番スロット11に挿入された32番目の第1V相コイル8Vaまで順に接続する。1番目の第1V相コイル8Vaは、33番スロット11に挿入された2番目の第1V相コイル8Vaとは反対側の端末部が、第1インバータ回路3に接続される。32番目の第1V相コイル8Vaは、26番スロット11に挿入された31番目の第1V相コイル8Vaとは反対側の端末部が、第1中性点12aに接続される。これら1番目の第1V相コイル8Vaから32番目の第1V相コイル8Vaは、第1スター結線回路S1(図1参照)を構成する。
【0055】
また、32番スロット11に挿入された1番目の第1W相コイル8Waから25番スロット11に挿入された32番目の第1W相コイル8Waまで順に接続する。1番目の第1W相コイル8Waは、37番スロット11に挿入された2番目の第1W相コイル8Waとは反対側の端末部が、第1インバータ回路3に接続される。32番目の第1W相コイル8Waは、30番スロット11に挿入された31番目の第1W相コイル8Waとは反対側の端末部が、第1中性点12aに接続される。これら1番目の第1W相コイル8Waから32番目の第1W相コイル8Waは、第1スター結線回路S1(図1参照)を構成する。
【0056】
一方、22番スロット11に挿入された33番目の第2U相コイル8Ubは、4つのスロット11を間に置いて27番スロット11に挿入された34番目の第2U相コイル8Ubに接続される。33番目の第2U相コイル8Ubは、22番スロット11に挿入される4つのコイル8のうち、最外周部寄り(1層目)に配置されている。34番目の第2U相コイル8Ubは、27番スロット11に挿入される4つのコイル8のうち、最外周部から3つ目(3層目)に配置されている。
【0057】
これを残り35番目の第2U相コイル8Ubから64番目の第2U相コイル8Ubまで順に接続する。33番目の第2U相コイル8Ubにおける34番目の第2U相コイル8Ubとは反対側の端末部は、第2インバータ回路4に接続される。15番スロット11に挿入された64番目の第2U相コイル8Ubは、20番スロット11に挿入された63番目の第2U相コイル8Ubとは反対側の端末部が、第2中性点12bに接続される。これら33番目の第2U相コイル8Ubから64番目の第2U相コイル8Ubは、第2スター結線回路S2(図1参照)を構成する。
【0058】
同様に、22番スロット11に挿入された33番目の第2V相コイル8Vbから15番スロット11に挿入された64番目の第2V相コイル8Vbまで順に接続する。33番目の第2V相コイル8Vbは、27番スロット11に挿入された34番目の第2V相コイル8Vbとは反対側の端末部が、第2インバータ回路4に接続される。64番目の第2V相コイル8Vbは、20番スロット11に挿入された63番目の第2V相コイル8Vbとは反対側の端末部が、第2中性点12bに接続される。これら33番目の第2V相コイル8Vbから64番目の第2V相コイル8Vbは、第2スター結線回路S2(図1参照)を構成する。
【0059】
また、26番スロット11に挿入された33番目の第2W相コイル8Wbから19番スロット11に挿入された64番目の第2W相コイル8Wbまで順に接続する。33番目の第2W相コイル8Wbは、31番スロット11に挿入された34番目の第2W相コイル8Wbとは反対側の端末部が、第2インバータ回路4に接続される。64番目の第2W相コイル8Wbは、24番スロット11に挿入された63番目の第2W相コイル8Wbとは反対側の端末部が、第2中性点12bに接続される。これら33番目の第2W相コイル8Wbから64番目の第2W相コイル8Wbは、第2スター結線回路S2(図1参照)を構成する。
【0060】
[第2変形例]
<コイルの配置構造>
図9A図9B図9Cは、第2変形例における各スロット11内の各相コイルUa~Wbの配置説明図であり、ステータ5の展開図である。図9A図9Cは、前述の図4A図4Cに対応している。
【0061】
図9A図9Cに示すように、第2変形例のコイル8の配置構造は、いわゆる波巻き構造である。すなわち、23番スロット11に挿入された1番目の第1U相コイル8Uaは、5つのスロット11を間に置いて29番スロット11に挿入された2番目の第1U相コイル8Uaに接続される。1番目の第1U相コイル8Uaは、23番スロット11に挿入される4つのコイル8のうち、最外周部寄り(1層目)に配置されている。2番目の第1U相コイル8Uaは、29番スロット11に挿入される4つのコイル8のうち、最外周部から2つ目(2層目)に配置されている。
【0062】
これを残りの3番目の第1U相コイル8Uaから32番目の第1U相コイル8Uaまで順に接続する。1番目の第1U相コイル8Uaにおける2番目の第1U相コイル8Uaとは反対側の端末部は、第1インバータ回路3に接続される。17番スロット11に挿入された32番目の第1U相コイル8Uaは、10番スロット11に挿入された31番目の第1U相コイル8Uaとは反対側の端末部が、第1中性点12aに接続される。これら1番目の第1U相コイル8Uaから32番目の第1U相コイル8Uaは、第1スター結線回路S1(図1参照)を構成する。
【0063】
同様に、27番スロット11に挿入された1番目の第1V相コイル8Vaから21番スロット11に挿入された32番目の第1V相コイル8Vaまで順に接続する。1番目の第1V相コイル8Vaは、33番スロット11に挿入された2番目の第1V相コイル8Vaとは反対側の端末部が、第1インバータ回路3に接続される。32番目の第1V相コイル8Vaは、14番スロット11に挿入された31番目の第1V相コイル8Vaとは反対側の端末部が、第1中性点12aに接続される。これら1番目の第1V相コイル8Vaから32番目の第1V相コイル8Vaは、第1スター結線回路S1(図1参照)を構成する。
【0064】
また、31番スロット11に挿入された1番目の第1W相コイル8Waから25番スロット11に挿入された32番目の第1W相コイル8Waまで順に接続する。1番目の第1W相コイル8Waは、37番スロット11に挿入された2番目の第1W相コイル8Waとは反対側の端末部が、第1インバータ回路3に接続される。32番目の第1W相コイル8Waは、18番スロット11に挿入された31番目の第1W相コイル8Waとは反対側の端末部が、第1中性点12aに接続される。これら1番目の第1W相コイル8Waから32番目の第1W相コイル8Waは、第1スター結線回路S1(図1参照)を構成する。
【0065】
一方、23番スロット11に挿入された33番目の第2U相コイル8Ubは、6つのスロット11を間に置いて16番スロット11に挿入された34番目の第2U相コイル8Ubに接続される。23番スロット11に挿入された33番目の第2U相コイル8Ubは、各スロット11に挿入される4つのコイル8のうち、最内周部寄り(4層目)に配置されている。16番スロット11に挿入された34番目の第2U相コイル8Ubは、各スロット11に挿入される4つのコイル8のうち、最外周部から3つ目(3層目)に配置されている。
【0066】
これを残り35番目の第2U相コイル8Ubから64番目の第2U相コイル8Ubまで順に接続する。33番目の第2U相コイル8Ubにおける34番目の第2U相コイル8Ubとは反対側の端末部は、第2インバータ回路4に接続される。30番スロット11に挿入された64番目の第2U相コイル8Ubは、36番スロット11に挿入された63番目の第2U相コイル8Ubとは反対側の端末部が、第2中性点12bに接続される。これら33番目の第2U相コイル8Ubから64番目の第2U相コイル8Ubは、第2スター結線回路S2(図1参照)を構成する。
【0067】
同様に、27番スロット11に挿入された33番目の第2V相コイル8Vbから34番スロット11に挿入された64番目の第2V相コイル8Vbまで順に接続する。33番目の第2V相コイル8Vbは、20番スロット11に挿入された34番目の第2V相コイル8Vbとは反対側の端末部が、第2インバータ回路4に接続される。64番目の第2V相コイル8Vbは、40番スロット11に挿入された63番目の第2V相コイル8Vbとは反対側の端末部が、第2中性点12bに接続される。これら33番目の第2V相コイル8Vbから64番目の第2V相コイル8Vbは、第2スター結線回路S2(図1参照)を構成する。
【0068】
また、31番スロット11に挿入された33番目の第2W相コイル8Wbから38番スロット11に挿入された64番目の第2W相コイル8Wbまで順に接続する。33番目の第2W相コイル8Wbは、24番スロット11に挿入された34番目の第2W相コイル8Wbとは反対側の端末部が、第2インバータ回路4に接続される。64番目の第2W相コイル8Wbは、44番スロット11に挿入された63番目の第2W相コイル8Wbとは反対側の端末部が、第2中性点12bに接続される。これら33番目の第2W相コイル8Wbから64番目の第2W相コイル8Wbは、第2スター結線回路S2(図1参照)を構成する。
【0069】
[第3変形例]
<コイルの配置構造>
図10A図10B図10Cは、第3変形例における各スロット11内の各相コイルUa~Wbの配置説明図であり、ステータ5の展開図である。図10A図10Cは、前述の図4A図4Cに対応している。
【0070】
図10A図10Cに示すように、第3変形例のコイル8の配置構造は、第2変形例の波巻き構造の変形例である。すなわち、24番スロット11に挿入された1番目の第1U相コイル8Uaは、5つのスロット11を間に置いて30番スロット11に挿入された2番目の第1U相コイル8Uaに接続される。1番目の第1U相コイル8Uaは、24番スロット11に挿入される4つのコイル8のうち、最外周部寄り(1層目)に配置されている。2番目の第1U相コイル8Uaは、30番スロット11に挿入される4つのコイル8のうち、最外周部から2つ目(2層目)に配置されている。
【0071】
これを残りの3番目の第1U相コイル8Uaから32番目の第1U相コイル8Uaまで順に接続する。1番目の第1U相コイル8Uaにおける2番目の第1U相コイル8Uaとは反対側の端末部は、第1インバータ回路3に接続される。18番スロット11に挿入された32番目の第1U相コイル8Uaは、11番スロット11に挿入された31番目の第1U相コイル8Uaとは反対側の端末部が、第1中性点12aに接続される。これら1番目の第1U相コイル8Uaから32番目の第1U相コイル8Uaは、第1スター結線回路S1(図1参照)を構成する。
【0072】
同様に、28番スロット11に挿入された1番目の第1V相コイル8Vaから22番スロット11に挿入された32番目の第1V相コイル8Vaまで順に接続する。1番目の第1V相コイル8Vaは、34番スロット11に挿入された2番目の第1V相コイル8Vaとは反対側の端末部が、第1インバータ回路3に接続される。32番目の第1V相コイル8Vaは、15番スロット11に挿入された31番目の第1V相コイル8Vaとは反対側の端末部が、第1中性点12aに接続される。これら1番目の第1V相コイル8Vaから32番目の第1V相コイル8Vaは、第1スター結線回路S1(図1参照)を構成する。
【0073】
また、32番スロット11に挿入された1番目の第1W相コイル8Waから26番スロット11に挿入された32番目の第1W相コイル8Waまで順に接続する。1番目の第1W相コイル8Waは、38番スロット11に挿入された2番目の第1W相コイル8Waとは反対側の端末部が、第1インバータ回路3に接続される。32番目の第1W相コイル8Waは、19番スロット11に挿入された31番目の第1W相コイル8Waとは反対側の端末部が、第1中性点12aに接続される。これら1番目の第1W相コイル8Waから32番目の第1W相コイル8Waは、第1スター結線回路S1(図1参照)を構成する。
【0074】
一方、23番スロット11に挿入された33番目の第2U相コイル8Ubは、4つのスロット11を間に置いて18番スロット11に挿入された34番目の第2U相コイル8Ubに接続される。33番目の第2U相コイル8Ubは、23番スロット11に挿入される4つのコイル8のうち、最内周部寄り(4層目)に配置されている。34番目の第2U相コイル8Ubは、18番スロット11に挿入される4つのコイル8のうち、最外周部から3つ目(3層目)に配置されている。
【0075】
これを残り35番目の第2U相コイル8Ubから64番目の第2U相コイル8Ubまで順に接続する。33番目の第2U相コイル8Ubにおける34番目の第2U相コイル8Ubとは反対側の端末部は、第2インバータ回路4に接続される。29番スロット11に挿入された64番目の第2U相コイル8Ubは、35番スロット11に挿入された63番目の第2U相コイル8Ubとは反対側の端末部が、第2中性点12bに接続される。これら33番目の第2U相コイル8Ubから64番目の第2U相コイル8Ubは、第2スター結線回路S2(図1参照)を構成する。
【0076】
同様に、27番スロット11に挿入された33番目の第2V相コイル8Vbから33番スロット11に挿入された64番目の第2V相コイル8Vbまで順に接続する。33番目の第2V相コイル8Vbは、22番スロット11に挿入された34番目の第2V相コイル8Vbとは反対側の端末部が、第2インバータ回路4に接続される。64番目の第2V相コイル8Vbは、39番スロット11に挿入された63番目の第2V相コイル8Vbとは反対側の端末部が、第2中性点12bに接続される。これら33番目の第2V相コイル8Vbから64番目の第2V相コイル8Vbは、第2スター結線回路S2(図1参照)を構成する。
【0077】
また、31番スロット11に挿入された33番目の第2W相コイル8Wbから37番スロット11に挿入された64番目の第2W相コイル8Wbまで順に接続する。33番目の第2W相コイル8Wbは、26番スロット11に挿入された34番目の第2W相コイル8Wbとは反対側の端末部が、第2インバータ回路4に接続される。64番目の第2W相コイル8Wbは、43番スロット11に挿入された63番目の第2W相コイル8Wbとは反対側の端末部が、第2中性点12bに接続される。これら33番目の第2W相コイル8Wbから64番目の第2W相コイル8Wbは、第2スター結線回路S2(図1参照)を構成する。
【0078】
この他、本発明は上述の実施形態及び各変形例に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態では、回転電機装置1は、例えば電動車両等の車両に搭載される場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、さまざまな電気機器に回転電機装置1を用いることができる。
【0079】
上述の実施形態及び各変形例では、モータ2は、ロータ6の磁極数が8極、ステータ5のスロット11の個数が48つである場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、磁極数やスロット11の個数は任意に設定することができる。
【0080】
上述の実施形態及び各変形例では、各スロット11に、2つのコイル対80U~80Wが配置されている場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、少なくとも1つのスロット11に少なくとも1つのコイル対80U~80Wが配置されていればよい。少なくとも1つのコイル対80U~80Wが存在することにより、高調波成分を低減でき、モータ2の振動(トルクリプル)を低減できる。
【0081】
ここで、少なくとも1つのスロット11は、同相コイルスロットであることが望ましい。同相コイルスロットには、少なくとも2つのコイル対80U~80Wが配置されていることが望ましい。1つのスロット11に、同相のコイル対80U~80Wが2つ以上配置されている場合、第1各相コイル8Ua~8Waと第2各相コイル8Ub~8Wbとが交互に並んでいることが望ましい。さらに、同相コイルスロットは、1つのスロット置きに配置されていることが望ましい。このように構成することで、より確実に高調波成分を低減でき、モータ2の振動(トルクリプル)を低減できる。
【0082】
上述の実施形態及び各変形例では、1つのスロット11に4つのコイル8が挿入されている場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、1つのスロット11に4つ以上のコイル8が挿入される構成でもよい。このような場合でも、少なくとも1つのスロット11に少なくとも1つのコイル対80U~80Wが配置されていればよい。
【符号の説明】
【0083】
1…回転電機装置
2…モータ(回転電機)
3…第1インバータ回路
4…第2インバータ回路
5…ステータ
6…ロータ
8…コイル
8Ua…第1U相コイル(第1コイル)
8Va…第1V相コイル(第1コイル)
8Wa…第1W相コイル(第1コイル)
8Ub…第2U相コイル(第2コイル)
8Vb…第2V相コイル(第2コイル)
8Wb…第2W相コイル(第2コイル)
11…スロット
11U2~11W2…第2スロット(同相コイルスロット)
80U…U相コイル対(コイル対)
80V…V相コイル対(コイル対)
80W…W相コイル対(コイル対)
Cf1…第1キャリア周波数(キャリア周波数)
Cf2…第2キャリア周波数(キャリア周波数)
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C