(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156671
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04044 20160101AFI20221006BHJP
H01M 8/249 20160101ALI20221006BHJP
H01M 8/0432 20160101ALI20221006BHJP
H01M 8/04313 20160101ALI20221006BHJP
H01M 8/0444 20160101ALI20221006BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20221006BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20221006BHJP
H01M 8/04007 20160101ALI20221006BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20221006BHJP
【FI】
H01M8/04044
H01M8/249
H01M8/0432
H01M8/04313
H01M8/0444
H01M8/04 J
H01M8/04746
H01M8/04007
H01M8/10 101
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060478
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】山野 尚紀
(72)【発明者】
【氏名】田村 卓也
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA06
5H127AB04
5H127AB14
5H127AB29
5H127AC03
5H127AC14
5H127BA21
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB37
5H127CC01
5H127DB42
5H127DB72
5H127DB73
5H127DB74
5H127DB93
5H127DC76
5H127DC80
(57)【要約】 (修正有)
【課題】イオン交換器の交換タイミングを精度よく判断することができる燃料電池システムを提供する。
【解決手段】燃料電池システム10は、第1イオン交換器13と、第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12と、第1温度取得部14および第2温度取得部15と、第1発電時間取得部16および第2発電時間取得部17と、供給路21と、冷媒の温度および発電時間の少なくとも一方に基づいて冷媒のイオン濃度を推定するイオン濃度推定部18と、イオン濃度推定部18により推定されたイオン濃度に基づいて第1イオン交換器13の交換タイミングを判断する判断部19と、制御部30と、を備え、第1冷媒流路27と第2冷媒流路とが直列または並列に設けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の燃料電池スタックと、
冷媒中のイオン濃度を低下させる第1イオン交換器と、
前記複数の燃料電池スタックのそれぞれへ冷媒を供給する複数の冷媒流路の前記複数の燃料電池スタックの下流側で、前記複数の冷媒流路の前記冷媒の温度を取得する温度取得部と、
前記複数の燃料電池スタックの発電時間を取得する発電時間取得部と、
前記複数の燃料電池スタックから排出された前記冷媒を前記第1イオン交換器へ供給する供給路と、
前記温度取得部により取得された前記冷媒の温度および前記発電時間取得部により取得された前記複数の燃料電池スタックの発電時間の少なくとも一方に基づいて前記冷媒のイオン濃度を推定するイオン濃度推定部と、
前記イオン濃度推定部により推定された前記イオン濃度に基づいて前記第1イオン交換器の交換タイミングを判断する判断部と、
前記複数の燃料電池スタック、前記温度取得部、前記発電時間取得部、前記イオン濃度推定部および前記判断部を制御する制御部と、を備え、
前記複数の冷媒流路が直列または並列に設けられる、燃料電池システム。
【請求項2】
前記イオン濃度推定部は、前記温度取得部により取得された前記燃料電池スタックの前記冷媒の温度が高くなるほど前記冷媒からのイオン溶出量が多いと推定し、
前記判断部は、前記温度取得部により取得された前記冷媒の温度から推定される前記イオン濃度の積算値に応じて前記第1イオン交換器の交換タイミングを判断する、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記複数の燃料電池スタックの要求出力に応じて、前記冷媒を供給する圧送部と、
前記複数の燃料電池スタックの停止時間を取得する停止時間取得部と、
前記燃料電池スタックの停止中の外気温度情報を取得する外気温度情報取得部と、を備え、
前記制御部は、前記停止時間および前記外気温度情報の少なくとも一方に基づいて、前記複数の燃料電池スタックの起動時に前記圧送部にて圧送する前記冷媒の起動時吐出量を決定するとともに、前記圧送部は前記複数の燃料電池スタックの起動時は前記要求出力に応じた圧送制御に優先して、前記起動時吐出量に基づく制御を行う、請求項1または2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記複数の燃料電池スタックが並列に設けられ、
前記供給路で前記冷媒を選択的に分岐させ、前記複数の燃料電池スタックの上流側の前記冷媒流路に戻す分岐流路と、
前記分岐流路に設けられた第2イオン交換器と、を備え、
前記制御部は、前記複数の燃料電池スタックの起動時に、少なくとも前記停止時間に基づいて、前記冷媒を前記分岐流路に流通させる流通時間を制御する、請求項3に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記複数の燃料電池スタックが並列に設けられ、
前記供給路で前記冷媒を選択的に分岐させ、前記複数の燃料電池スタックの上流側の前記冷媒流路に戻す分岐流路と、
前記分岐流路に設けられた第2イオン交換器と、を備え、
前記制御部は、前記複数の燃料電池スタックの停止時に、少なくとも前記発電時間に基づいて、前記冷媒を前記分岐流路に流通させる流通時間を制御する、請求項3に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記複数の燃料電池スタックは、第1燃料電池スタックと、第2燃料電池スタックと、を有し、
前記制御部は、前記発電時間取得部により取得される起動時の前記第1燃料電池スタックの発電時間と、前記発電時間取得部により取得される起動時の前記第2燃料電池スタックの発電時間とに所定以上の差がある場合に、前記第1燃料電池スタックと前記第2燃料電池スタックとの間で前記冷媒を循環させる、請求項4に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記複数の燃料電池スタックは、第1燃料電池スタックと、第2燃料電池スタックと、を有し、
前記制御部は、前記停止時間取得部により取得される前記第1燃料電池スタックの停止時間と、前記停止時間取得部により取得される取得される前記第2燃料電池スタックの停止時間とに所定以上の差がある場合に、前記第1燃料電池スタックと前記第2燃料電池スタックとの間で前記冷媒を循環させる、請求項5に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、積層電池には金属セパレータが用いられている。金属セパレータから金属イオンが溶出し、積層電池内に金属イオンが溜まると、積層電池が短絡するという課題がある。このような課題を解決するために、積層電池の冷却水中の金属イオンを除去可能なイオン交換樹脂と、イオン交換樹脂が封入され、イオン交換樹脂に冷却水を通過させる樹脂通水路と、樹脂通水路から分岐してイオン交換樹脂をバイパスするバイパス通路と、冷却水の導電状態に応じてバイパス通路を閉じる開閉部と、を含む冷却装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
金属イオンを効果的に除去するためには、1つの電池に対して1つのイオン交換器を設ける必要がある。しかしながら、複数のイオン交換器を用いると、イオン交換器毎に交換タイミングが異なるため、全てのイオン交換器の交換タイミングを精度よく判断することが難しい。
【0005】
本発明は、イオン交換器の交換タイミングを精度よく判断することができる燃料電池システムの提供を目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明は以下の態様を採用した。
(1)本発明の一態様に係る燃料電池システムは、複数の燃料電池スタック(例えば、実施形態での第1燃料電池スタック11、第2燃料電池スタック12)と、冷媒中のイオン濃度を低下させる第1イオン交換器(例えば、実施形態での第1イオン交換器13)と、前記複数の燃料電池スタックのそれぞれへ冷媒を供給する複数の冷媒流路(例えば、実施形態での第1冷媒流路27、第2冷媒流路28)の前記複数の燃料電池スタックの下流側で、前記複数の冷媒流路の前記冷媒の温度を取得する温度取得部(例えば、実施形態での第1温度取得部14、第2温度取得部15)と、前記複数の燃料電池スタックの発電時間を取得する発電時間取得部(例えば、実施形態での第1発電時間取得部16、第2発電時間取得部17)と、前記複数の燃料電池スタックから排出された前記冷媒を前記第1イオン交換器へ供給する供給路(例えば、実施形態での供給路21)と、前記温度取得部により取得された前記冷媒の温度および前記発電時間取得部により取得された前記複数の燃料電池スタックの発電時間の少なくとも一方に基づいて前記冷媒のイオン濃度を推定するイオン濃度推定部(例えば、実施形態でのイオン濃度推定部18)と、前記イオン濃度推定部により推定された前記イオン濃度に基づいて前記第1イオン交換器の交換タイミングを判断する判断部(例えば、実施形態での判断部19)と、前記複数の燃料電池スタック、前記温度取得部、前記発電時間取得部、前記イオン濃度推定部および前記判断部を制御する制御部(例えば、実施形態での制御装置30)と、を備え、前記複数の冷媒流路が直列または並列に設けられる、燃料電池システム。
【0007】
(2)上記(1)に記載の燃料電池システムは、前記イオン濃度推定部が、前記温度取得部により取得された前記燃料電池スタックの前記冷媒の温度が高くなるほど前記冷媒からのイオン溶出量が多いと推定し、前記判断部は、前記温度取得部により取得された前記冷媒の温度から推定される前記イオン濃度の積算値に応じて前記第1イオン交換器の交換タイミングを判断してもよい。
【0008】
(3)上記(1)または(2)に記載の燃料電池システムは、前記複数の燃料電池スタックの要求出力に応じて、前記冷媒を供給する圧送部(例えば、実施形態での第2圧送部203)と、前記複数の燃料電池スタックの停止時間を取得する停止時間取得部(例えば、実施形態での第1停止時間取得部24、第2停止時間取得部25)と、前記燃料電池スタックの停止中の外気温度情報を取得する外気温度情報取得部(例えば、実施形態での外気温度情報取得部26)と、を備え、前記制御部は、前記停止時間および前記外気温度情報の少なくとも一方に基づいて、前記複数の燃料電池スタックの起動時に前記圧送部にて圧送する前記冷媒の起動時吐出量を決定するとともに、前記圧送部は前記複数の燃料電池スタックの起動時は前記要求出力に応じた圧送制御に優先して、前記起動時吐出量に基づく制御を行ってもよい。
【0009】
(4)上記(3)に記載の燃料電池システムは、前記複数の燃料電池スタックが並列に設けられ、前記供給路で前記冷媒を選択的に分岐させ、前記複数の燃料電池スタックの上流側の前記冷媒流路に戻す分岐流路(例えば、実施形態での分岐流路202)と、前記分岐流路に設けられた第2イオン交換器(例えば、実施形態での第2イオン交換器201)と、を備え、前記制御部は、前記複数の燃料電池スタックの起動時に、少なくとも前記停止時間に基づいて、前記冷媒を前記分岐流路に流通させる流通時間を制御してもよい。
【0010】
(5)上記(3)に記載の燃料電池システムは、前記複数の燃料電池スタックが並列に設けられ、前記供給路で前記冷媒を選択的に分岐させ、前記複数の燃料電池スタックの上流側の前記冷媒流路に戻す分岐流路(例えば、実施形態での分岐流路202)と、前記分岐流路に設けられた第2イオン交換器(例えば、実施形態での第2イオン交換器201)と、を備え、前記制御部は、前記複数の燃料電池スタックの停止時に、少なくとも前記発電時間に基づいて、前記冷媒を前記分岐流路に流通させる流通時間を制御してもよい。
【0011】
(6)上記(4)に記載の燃料電池システムは、前記複数の燃料電池スタックが、第1燃料電池スタックと、第2燃料電池スタックと、を有し、前記制御部は、前記発電時間取得部により取得される起動時の前記第1燃料電池スタックの発電時間と、前記発電時間取得部により取得される起動時の前記第2燃料電池スタックの発電時間とに所定以上の差がある場合に、前記第1燃料電池スタックと前記第2燃料電池スタックとの間で前記冷媒を循環させてもよい。
【0012】
(7)上記(5)に記載の燃料電池システムは、前記複数の燃料電池スタックが、第1燃料電池スタックと、第2燃料電池スタックと、を有し、前記制御部は、前記停止時間取得部により取得される前記第1燃料電池スタックの停止時間と、前記停止時間取得部により取得される前記第2燃料電池スタックの停止時間とに所定以上の差がある場合に、前記第1燃料電池スタックと前記第2燃料電池スタックとの間で前記冷媒を循環させてもよい。
【発明の効果】
【0013】
上記(1)によれば、イオン濃度推定部により、温度取得部により取得された冷媒の温度および発電時間取得部により取得された複数の燃料電池スタックの発電時間の少なくとも一方に基づいて冷媒のイオン濃度を推定し、判断部により、イオン濃度推定部により推定されたイオン濃度に基づいて第1イオン交換器の交換タイミングを判断することによって、イオン交換器の交換タイミングを精度よく判断することができる。
【0014】
上記(2)の場合、イオン濃度推定部により、温度取得部により取得された冷媒の温度が高くなるほど冷媒からのイオン溶出量が多いと推定し、判断部により、温度取得部により取得された冷媒の温度から推定されるイオン濃度の積算値に応じて第1イオン交換器の交換タイミングを判断する。これにより、イオン交換器の交換タイミングを精度よく判断することができる。
【0015】
上記(3)の場合、停止時間および外気温度情報の少なくとも一方に基づいて、複数の燃料電池スタックの起動時に圧送部にて圧送する冷媒の起動時吐出量を決定するとともに、圧送部は複数の燃料電池スタックの起動時は前記要求出力に応じた圧送制御に優先して、起動時吐出量に基づく制御を行うことにより、複数の燃料電池スタックにおいて、冷媒に含まれるイオンの濃度のばらつきを低減することができる。これにより、イオン交換器の交換タイミングを精度よく判断することができる。
【0016】
上記(4)の場合、燃料電池スタックの起動時に、少なくとも停止時間に基づいて、冷媒を分岐流路に流通させる流通時間を制御することにより、イオン交換器の交換タイミングを精度よく判断することができる。
【0017】
上記(5)の場合、燃料電池スタックの停止時に、少なくとも発電時間に基づいて、冷媒を前記分岐流路に流通させる流通時間を制御することにより、イオン交換器の交換タイミングを精度よく判断することができる。
【0018】
上記(6)の場合、発電時間取得部により取得される起動時の第1燃料電池スタックの発電時間と、発電時間取得部により取得される起動時の第2燃料電池スタックの発電時間とに所定以上の差がある場合に、第1燃料電池スタックと第2燃料電池スタックとの間で冷媒を循環させることにより、第1燃料電池スタックと第2燃料電池スタックにおいて、冷媒に含まれるイオンの濃度のばらつきを低減することができる。これにより、イオン交換器の交換タイミングを精度よく判断することができる。
【0019】
上記(7)の場合、停止時間取得部により取得される第1燃料電池スタックの停止時間と、停止時間取得部により取得される第2燃料電池スタックの停止時間とに所定以上の差がある場合に、第1燃料電池スタックと第2燃料電池スタックとの間で前記冷媒を循環させることにより、第1燃料電池スタックと第2燃料電池スタックにおいて、冷媒に含まれるイオンの濃度のばらつきを低減することができる。これにより、イオン交換器の交換タイミングを精度よく判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態での燃料電池システムを示模式図である。
【
図2】本発明の実施形態での燃料電池システムの運転方法を示すシステムフローの一例である。
【
図3】本発明の実施形態での燃料電池システムの運転方法を示すシステムフローの一例である。
【
図4】本発明の実施形態での燃料電池システムを示模式図である。
【
図5】本発明の実施形態での燃料電池システムの運転方法を示すシステムフローの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1は、実施形態での燃料電池システム10を示模式図である。燃料電池システム10は、例えば、車両に搭載することができる。車両は、燃料電池システム10の他に、例えば、蓄電装置、モーター、ラジエータ、冷媒タンク等の装置を備えてもよい。車両は、燃料電池システム10と、その他の装置を制御する制御装置100を備えてもよい。車両の制御装置100は、燃料電池システム10の制御部(制御装置(FC制御装置))30と相互に信号を送受信するものでもよい。
【0023】
燃料電池システム10は、第1燃料電池(FC)スタック11と、第2燃料電池(FC)スタック12と、第1イオン交換器13と、第1温度取得部14と、第2温度取得部15と、第1発電時間取得部16と、第2発電時間取得部17と、イオン濃度推定部18と、判断部19と、冷媒タンク20と、供給路21と、制御部の一例であるFC制御装置30とを備える。FC制御装置30は、燃料電池システム10の各構成部品に信号線で接続される。燃料電池システム10は、図示しない図示しない燃料タンクと、エアポンプとを備える。燃料電池システム10では、第1燃料電池スタック11と、第2燃料電池スタック12と、第1イオン交換器13と、第1温度取得部14と、第2温度取得部15と、第1発電時間取得部16と、第2発電時間取得部17と、イオン濃度推定部18と、判断部19と、供給路21とを含む冷却系回路を形成している。また、燃料電池システム10は、第1圧送部22と、第1バルブ機構23と、第1停止時間取得部24と、第2停止時間取得部25と、外気温度情報取得部26とを備えてもよい。
【0024】
第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12は、例えば、固体高分子形燃料電池である。固体高分子形燃料電池は、例えば、積層された複数の燃料電池セルと、複数の燃料電池セルの積層体を挟み込む一対のエンドプレートとを備える。燃料電池セルは、電解質電極構造体と、電解質電極構造体を挟み込む一対のセパレータと備える。電解質電極構造体は、固体高分子電解質膜と、固体高分子電解質膜を挟み込む燃料極及び酸素極とを備える。固体高分子電解質膜は、陽イオン交換膜等を備える。燃料極(アノード)は、アノード触媒およびガス拡散層等を備える。酸素極(カソード)は、カソード触媒およびガス拡散層等を備える。
第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12には、燃料タンクからアノードに供給される燃料ガスと、エアポンプからカソードに供給される酸素を含む空気等の酸化剤ガスとの触媒反応によって発電する。燃料電池スタックに供給されて使用されなかった余剰のガス成分等は、所定の流路を通して排気される。第1燃料電池スタック11と第2燃料電池スタック12は並列に設けられている。燃料電池システム10が、例えば、車両に搭載される場合、第2燃料電池スタック12の出力はアクセル操作によって調節する。
【0025】
第1イオン交換器13は、供給路21を介して第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12と接続されている。第1イオン交換器13は、冷媒中の不純物イオンを除去可能なイオン交換樹脂を含む。第1イオン交換器13は、燃料電池システム10内を流れる冷媒中の不純物イオンを除去して、冷媒のイオン濃度を低下させる。詳細には、第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12から排出され、供給路21を介して導入された冷媒中の不純物イオンを除去する。
【0026】
第1温度取得部14および第2温度取得部15は、温度計等の温度測定器である。第1温度取得部14は、第1燃料電池スタック11へ冷媒を供給する第1冷媒流路27の第1燃料電池スタック11の下流側に設けられ、その位置で冷媒の温度を取得する。第2温度取得部15は、第2燃料電池スタック12へ冷媒を供給する第2冷媒流路28の第2燃料電池スタック12の下流側に設けられ、その位置で冷媒の温度を取得する。また、第1冷媒流路27と第2冷媒流路28とは並列に設けられる。なお、第1冷媒流路27と第2冷媒流路28とは直列に設けられてもよい。
【0027】
第1発電時間取得部16は、第1燃料電池スタック11と接続され、第1燃料電池スタック11の発電時間を取得する。第2発電時間取得部17は、第2燃料電池スタック12と接続され、第2燃料電池スタック12の発電時間を取得する。
イオン濃度推定部18は、例えば、イオン濃度センサーである。イオン濃度推定部18は、第1温度取得部14により取得された冷媒の温度および第2温度取得部15により取得された冷媒の温度、並びに第1発電時間取得部16により取得された第1燃料電池スタック11の発電時間および第2発電時間取得部17により取得された第2燃料電池スタック12の発電時間の少なくとも一方に基づいて、第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12から排出された冷媒のイオン濃度を推定する。冷媒のイオン濃度は、冷媒の導電率によって推定される。
【0028】
判断部19は、イオン濃度推定部18により推定された冷媒のイオン濃度に基づいて第1イオン交換器13の交換タイミングを判断する。
冷媒タンク20には、燃料電池システム10を冷却する冷媒が充填されている。冷媒タンク20は、燃料電池システム10の冷却系回路内に冷媒を供給する。
供給路21は、第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12と接続され、第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12から排出された冷媒を第1イオン交換器13へ供給する。
【0029】
第1圧送部22は、例えば、エアポンプである。第1圧送部22は、冷媒タンク20および第1バルブ機構23と接続されている。第1圧送部22は、第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12の要求出力に応じて、冷媒タンク20内の冷媒を冷却系回路内に供給する。
第1バルブ機構23は、冷媒タンク20並びに第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12と接続されている。第1バルブ機構23は、例えば、冷媒タンク20と第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12との間でFC制御装置30の制御によって冷媒の流量Q、圧力P等を切り替える制御弁と、第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12側から冷媒タンク20への冷媒の流通を禁止する逆止弁となどを備える。
【0030】
第1停止時間取得部24は、第1燃料電池スタック11と接続されている。第1停止時間取得部24は、第1燃料電池スタック11の停止時間を取得する。第2停止時間取得部25は、第2燃料電池スタック12と接続されている。第2停止時間取得部25は、第2燃料電池スタック12の停止時間を取得する。
外気温度情報取得部26は、温度計等の温度測定器である。外気温度情報取得部26は、第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12の停止中の外気温度情報(外気温)を取得する。
【0031】
FC制御装置30は、第1燃料電池スタック11、第2燃料電池スタック12、第1温度取得部14、第2温度取得部15、第1発電時間取得部16、第2発電時間取得部17、イオン濃度推定部18、判断部19、第1圧送部22、第1バルブ機構23、第1停止時間取得部24、第2停止時間取得部25、外気温度情報取得部26等の動作を統合的に制御する。
【0032】
燃料電池システム10の運転方法について説明する。
燃料電池システム10では、イオン濃度推定部18が、第1温度取得部14および第2温度取得部15により取得された第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12の冷媒の温度が高くなるほど冷媒からのイオン溶出量が多いと推定する。また、判断部19が、第1温度取得部14および第2温度取得部15により取得された第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12の冷媒の温度から推定されるイオン濃度の積算値に応じて第1イオン交換器13の交換タイミングを判断する。FC制御装置30は、第1停止時間取得部24および第2停止時間取得部25によって取得された停止時間、並びに外気温度情報取得部26によって取得された外気温度情報の少なくとも一方に基づいて、第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12の起動時に第1圧送部22にて圧送する冷媒の起動時吐出量を決定するとともに、第1圧送部22は第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12の起動時は要求出力に応じた圧送制御に優先して、起動時吐出量に基づく制御を行う。
【0033】
燃料電池システム10の運転方法の具体例を説明する。
図2は、燃料電池システム10の運転方法を示すシステムフローの第1の例である。
T
0~T
1において、第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12は停止している。そのため、第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12から排出される冷媒の温度が低い。したがって、イオン濃度推定部18は、第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12からのイオン溶出量がほとんどないと推定する。そのため、第1イオン交換器13の交換までの残時間はほとんど変化しない。
【0034】
T1にて、第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12が起動し、T1~T2において、第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12の発電量が多くなると、第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12から排出される冷媒の温度が高くなる。イオン濃度推定部18は、第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12から排出される冷媒の温度が高くなるほど、第1燃料電池スタック11から排出されるイオン溶出量と第2燃料電池スタック12から排出されるイオン溶出量との合計溶出量が多くなると推定する。これに伴って、第1イオン交換器13の交換までの残時間が短くなる。
【0035】
T2~T3において、T1~T2よりも第1燃料電池スタック11の発電量が低くなり、第1燃料電池スタック11から排出される冷媒の温度が低くなる。一方、T1~T2よりも第2燃料電池スタック12の発電量がさらに多くなり、第2燃料電池スタック12から排出される冷媒の温度がさらに高くなる。したがって、イオン濃度推定部18は、第1燃料電池スタック11から排出されるイオン溶出量と第2燃料電池スタック12から排出されるイオン溶出量との合計溶出量が多くなると推定する。これに伴って、第1イオン交換器13の交換までの残時間がさらに短くなる。
【0036】
T3~T4において、第1燃料電池スタック11の発電量がさらに少なくなると、第1燃料電池スタック11から排出される冷媒の温度がさらに低くなる。また、第2燃料電池スタック12の発電量が少なくなり、第2燃料電池スタック12から排出される冷媒の温度が低くなる。T3~T4では、第1燃料電池スタック11の発電量に対して、第2燃料電池スタック12の発電量が少ない。したがって、イオン濃度推定部18は、第1燃料電池スタック11から排出されるイオン溶出量と第2燃料電池スタック12から排出されるイオン溶出量との合計溶出量が少なくなると推定する。これに伴って、第1イオン交換器13の交換までの残時間はほとんど変化しない。
【0037】
T4~T5において、第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12の発電量が多くなると、第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12から排出される冷媒の温度が高くなる。T4~T5では、第1燃料電池スタック11の発電量に対して、第2燃料電池スタック12の発電量が少ない。したがって、イオン濃度推定部18は、第1燃料電池スタック11から排出されるイオン溶出量と第2燃料電池スタック12から排出されるイオン溶出量との合計溶出量が多くなると推定する。これに伴って、第1イオン交換器13の交換までの残時間が短くなる。
【0038】
T5~T6において、第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12の発電量が少なくなると、第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12から排出される冷媒の温度が低くなる。T5~T6では、第1燃料電池スタック11の発電量に対して、第2燃料電池スタック12の発電量が少ない。したがって、イオン濃度推定部18は、第1燃料電池スタック11から排出されるイオン溶出量と第2燃料電池スタック12から排出されるイオン溶出量との合計溶出量が少なくなると推定する。これに伴って、第1イオン交換器13の交換までの残時間はほとんど変化しない。
【0039】
T6~T7において、第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12の発電量が多くなると、第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12から排出される冷媒の温度が高くなる。T6~T7では、第1燃料電池スタック11の発電量に対して、第2燃料電池スタック12の発電量が少ない。したがって、イオン濃度推定部18は、第1燃料電池スタック11から排出されるイオン溶出量と第2燃料電池スタック12から排出されるイオン溶出量との合計溶出量が多くなると推定する。これに伴って、第1イオン交換器13の交換までの残時間が短くなる。
【0040】
T7~T8において、第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12の発電量が少なくなると、第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12から排出される冷媒の温度が低くなる。T7~T8では、第1燃料電池スタック11の発電量に対して、第2燃料電池スタック12の発電量が少ない。したがって、イオン濃度推定部18は、第1燃料電池スタック11から排出されるイオン溶出量と第2燃料電池スタック12から排出されるイオン溶出量との合計溶出量が少なくなると推定する。これに伴って、第1イオン交換器13の交換までの残時間はほとんど変化しない。
【0041】
T8~T9において、第1燃料電池スタック11の発電量が多くなり、第1燃料電池スタック11から排出される冷媒の温度が高くなる一方、第2燃料電池スタック12の発電量が低くいまま一定であるため、第2燃料電池スタック12から排出される冷媒の温度が低いまま一定である。したがって、イオン濃度推定部18は、第1燃料電池スタック11から排出されるイオン溶出量と第2燃料電池スタック12から排出されるイオン溶出量との合計溶出量が少なくなると推定する。これに伴って、第1イオン交換器13の交換までの残時間はほとんど変化しない。
【0042】
T9~T10において、第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12の発電量が少なくなると、第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12から排出される冷媒の温度が低くなる。T9~T10では、第1燃料電池スタック11の発電量に対して、第2燃料電池スタック12の発電量が多い。したがって、イオン濃度推定部18は、第1燃料電池スタック11から排出されるイオン溶出量と第2燃料電池スタック12から排出されるイオン溶出量との合計溶出量が少なくなると推定する。これに伴って、第1イオン交換器13の交換までの残時間はほとんど変化しない。
【0043】
T10~T11において、第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12の発電量が多くなると、第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12から排出される冷媒の温度が高くなる。T10~T11では、第1燃料電池スタック11の発電量に対して、第2燃料電池スタック12の発電量が多い。したがって、イオン濃度推定部18は、第1燃料電池スタック11から排出されるイオン溶出量と第2燃料電池スタック12から排出されるイオン溶出量との合計溶出量が多くなると推定する。これに伴って、第1イオン交換器13の交換までの残時間が短くなる。
T10~T11において、下記の式(1)に示すように、第1燃料電池スタック11の発電時間と第2燃料電池スタック12の発電時間との合計が所定値1以上である場合に、第1イオン交換器13の交換までの残時間を通知する。
(第1燃料電池スタックの発電時間×温度頻度係数1)+(第2燃料電池スタックの発電時間×温度頻度係数2)≧所定値1 (1)
【0044】
T11~T12において、第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12の発電量が少なくなると、第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12から排出される冷媒の温度が低くなる。T11~T12では、第1燃料電池スタック11の発電量に対して、第2燃料電池スタック12の発電量が少ない。したがって、イオン濃度推定部18は、第1燃料電池スタック11から排出されるイオン溶出量と第2燃料電池スタック12から排出されるイオン溶出量との合計溶出量が少なくなると推定する。これに伴って、第1イオン交換器13の交換までの残時間はほとんど変化しない。
【0045】
T12~T13において、第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12の発電量が多くなると、第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12から排出される冷媒の温度が高くなる。T12~T13では、第1燃料電池スタック11の発電量と第2燃料電池スタック12の発電量がほぼ同等である。したがって、イオン濃度推定部18は、第1燃料電池スタック11から排出されるイオン溶出量と第2燃料電池スタック12から排出されるイオン溶出量との合計溶出量が多くなると推定する。これに伴って、第1イオン交換器13の交換までの残時間が短くなる。
【0046】
T13~T14において、第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12の発電量が少なくなると、第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12から排出される冷媒の温度が低くなる。T13~T14では、第1燃料電池スタック11の発電量に対して、第2燃料電池スタック12の発電量が少ない。したがって、イオン濃度推定部18は、第1燃料電池スタック11から排出されるイオン溶出量と第2燃料電池スタック12から排出されるイオン溶出量との合計溶出量が少なくなると推定する。これに伴って、第1イオン交換器13の交換までの残時間がわずかに短くなる。
【0047】
T14~T15において、第1燃料電池スタック11の発電量がT13~T14よりも少なくなると、第1燃料電池スタック11から排出される冷媒の温度が低くなる。また、第2燃料電池スタック12の発電量がT13~T14と同じであり、第2燃料電池スタック12から排出される冷媒の温度がT13~T14と同じである。T14~T15では、第1燃料電池スタック11の発電量と第2燃料電池スタック12の発電量がほぼ同等である。したがって、イオン濃度推定部18は、第1燃料電池スタック11から排出されるイオン溶出量と第2燃料電池スタック12から排出されるイオン溶出量との合計溶出量が少なくなると推定する。これに伴って、第1イオン交換器13の交換までの残時間がわずかに短くなる。
【0048】
T14~T15において、下記の式(2)に示すように、第1燃料電池スタック11の発電時間と第2燃料電池スタック12の発電時間との合計が所定値2以上である場合に、第1イオン交換器13の交換を要求する。
(第1燃料電池スタックの発電時間×温度頻度係数1)+(第2燃料電池スタックの発電時間×温度頻度係数2)≧所定値2 (2)
【0049】
図3は、燃料電池システム10の運転方法を示すシステムフローの第2の例である。
T
0~T
1において、第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12が停止している。そのため、第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12から排出される冷媒の温度が低い。また、第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12が停止している時間(停止時間)が長くなる。T
0~T
1において、第1イオン交換器13の交換までの残時間はほとんど変化しない。
【0050】
T1~T2において、第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12を起動する前に、第1圧送部22であるエアポンプを動作させて、冷媒タンク20内の冷媒を冷却系回路内に供給し、第1イオン交換器13のイオン交換樹脂をイオン交換する。したがって、イオン濃度推定部18は、第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12からのイオン溶出量が少なくなると推定する。これに伴って、第1イオン交換器13の交換までの残時間が短くなる。また、T1~T2において、途中で、第1燃料電池スタック11から排出されるイオン溶出量と第2燃料電池スタック12から排出されるイオン溶出量との合計溶出量が一定になると推定されるため、第1イオン交換器13の交換までの残時間の減少量の変化率が小さくなる。
【0051】
T2~T3において、第1燃料電池スタック11の発電量が多くなり、第1燃料電池スタック11から排出される冷媒の温度が高くなる一方、第2燃料電池スタック12の発電量がわずかに少なくなり、第2燃料電池スタック12から排出される冷媒の温度がわずかに少なくなる。さらに、第1圧送部22による冷却系回路内への冷媒の供給量を多くする。したがって、イオン濃度推定部18は、第1燃料電池スタック11から排出されるイオン溶出量と第2燃料電池スタック12から排出されるイオン溶出量との合計溶出量が多くなると推定する。これに伴って、第1イオン交換器13の交換までの残時間が短くなる。
【0052】
T3~T4において、第1燃料電池スタック11の発電量が少なくなり、第1燃料電池スタック11から排出される冷媒の温度が低くなる一方、第2燃料電池スタック12の発電量が多くなり、第2燃料電池スタック12から排出される冷媒の温度が高くなる。さらに、第1圧送部22による冷却系回路内への冷媒の供給量を少なくする。T3~T4において、第1燃料電池スタック11の発電量および第1燃料電池スタック11から排出される冷媒の温度の減少量に対して、第2燃料電池スタック12の発電量および第2燃料電池スタック12から排出される冷媒の温度の増加量が少ない。したがって、イオン濃度推定部18は、T3~T4において、第1燃料電池スタック11から排出されるイオン溶出量と第2燃料電池スタック12から排出されるイオン溶出量との合計溶出量が途中まで多くなり、その後、前記合計溶出量が少なくなると推定する。これに伴って、第1イオン交換器13の交換までの残時間が短くなる。
【0053】
T4~T5において、第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12の発電量が少なくなると、第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12から排出される冷媒の温度が低くなる。さらに、第1圧送部22による冷却系回路内への冷媒の供給量を少なくする。したがって、イオン濃度推定部18は、第1燃料電池スタック11から排出されるイオン溶出量と第2燃料電池スタック12から排出されるイオン溶出量との合計溶出量が少なくなると推定する。これに伴って、第1イオン交換器13の交換までの残時間が短くなる。
【0054】
T5~T6において、第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12の発電量が多くなると、第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12から排出される冷媒の温度が高くなる。T5~T6では、第1燃料電池スタック11の発電量に対して、第2燃料電池スタック12の発電量が少ない。さらに、第1圧送部22による冷却系回路内への冷媒の供給量を多くする。したがって、イオン濃度推定部18は、第1燃料電池スタック11から排出されるイオン溶出量と第2燃料電池スタック12から排出されるイオン溶出量との合計溶出量が少なくなると推定する。これに伴って、第1イオン交換器13の交換までの残時間が短くなる。
【0055】
T6~T7において、第1燃料電池スタック11の発電量が多くなり、第1燃料電池スタック11から排出される冷媒の温度が高くなる一方、第2燃料電池スタック12の発電量が低くなり、第2燃料電池スタック12から排出される冷媒の温度が低くなる。さらに、第1圧送部22による冷却系回路内への冷媒の供給量を多くする。したがって、イオン濃度推定部18は、第1燃料電池スタック11から排出されるイオン溶出量と第2燃料電池スタック12から排出されるイオン溶出量との合計溶出量がわずかに多くなると推定する。これに伴って、第1イオン交換器13の交換までの残時間がわずかに短くなる。
【0056】
T7~T8において、第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12の発電量が少なくなると、第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12から排出される冷媒の温度が低くなる。T7~T8では、第1燃料電池スタック11の発電量の変化率に対して、第2燃料電池スタック12の発電量の変化率が小さい。さらに、第1圧送部22による冷却系回路内への冷媒の供給量を少なくする。したがって、イオン濃度推定部18は、第1燃料電池スタック11から排出されるイオン溶出量と第2燃料電池スタック12から排出されるイオン溶出量との合計溶出量がわずかに低くなると推定する。これに伴って、第1イオン交換器13の交換までの残時間はほとんど変化しない。
【0057】
T8~T9において、第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12の発電量がほとんど変化しないと、第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12から排出される冷媒の温度がほとんど変化しない。さらに、第1圧送部22による冷却系回路内への冷媒の供給量もほとんど変化させない。したがって、イオン濃度推定部18は、第1燃料電池スタック11から排出されるイオン溶出量と第2燃料電池スタック12から排出されるイオン溶出量との合計溶出量がほとんど変化しないと推定する。これに伴って、第1イオン交換器13の交換までの残時間はほとんど変化しない。
【0058】
T9~T10において、第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12の発電量が多くなると、第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12から排出される冷媒の温度が高くなる。T9~T10では、第1燃料電池スタック11の発電量の変化率に対して、第2燃料電池スタック12の発電量の変化率が小さい。さらに、第1圧送部22による冷却系回路内への冷媒の供給量をわずかに多くする。したがって、イオン濃度推定部18は、第1燃料電池スタック11から排出されるイオン溶出量と第2燃料電池スタック12から排出されるイオン溶出量との合計溶出量が多くなると推定する。これに伴って、第1イオン交換器13の交換までの残時間が短くなる。
【0059】
T10~T11において、第1燃料電池スタック11の発電量が少なくなり、第1燃料電池スタック11から排出される冷媒の温度が低くなる一方、第2燃料電池スタック12の発電量がわずかに多くなり、第2燃料電池スタック12から排出される冷媒の温度がわずかに高くなる。さらに、第1圧送部22による冷却系回路内への冷媒の供給量を少なくする。T10~T11において、第1燃料電池スタック11の発電量の変化率に対して、第2燃料電池スタック12の発電量の変化率が小さい。さらに、第1圧送部22による冷却系回路内への冷媒の供給量を少なくする。したがって、イオン濃度推定部18は、T10~T11において、第1燃料電池スタック11から排出されるイオン溶出量と第2燃料電池スタック12から排出されるイオン溶出量との合計溶出量が多くなると推定する。これに伴って、第1イオン交換器13の交換までの残時間が短くなる。
【0060】
T10~T11において、下記の式(1)に示すように、第1燃料電池スタック11の発電時間と第2燃料電池スタック12の発電時間との合計が所定値1以上である場合に、第1イオン交換器13の交換までの残時間を通知する。
(第1燃料電池スタックの発電時間×温度頻度係数1)+(第2燃料電池スタックの発電時間×温度頻度係数2)≧所定値1 (1)
【0061】
T11~T12において、第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12の発電量が多くなると、第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12から排出される冷媒の温度が高くなる。T11~T12では、第1燃料電池スタック11の発電量に対して、第2燃料電池スタック12の発電量が少ない。さらに、第1圧送部22による冷却系回路内への冷媒の供給量を多くする。したがって、イオン濃度推定部18は、第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12からのイオン溶出量が少なくなると推定する。これに伴って、第1イオン交換器13の交換までの残時間が短くなる。
【0062】
T12~T13において、第1燃料電池スタック11の発電量および第1燃料電池スタック11から排出される冷媒の温度がほとんど変化しない一方、第2燃料電池スタック12の発電量がわずかに少なく、第2燃料電池スタック12から排出される冷媒の温度がわずかに低くなる。さらに、第1圧送部22による冷却系回路内への冷媒の供給量を多くしたまま一定とする。したがって、イオン濃度推定部18は、第1燃料電池スタック11から排出されるイオン溶出量と第2燃料電池スタック12から排出されるイオン溶出量との合計溶出量が多くなると推定する。これに伴って、第1イオン交換器13の交換までの残時間が短くなる。
【0063】
T13~T14において、第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12の発電量が少なくなると、第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12から排出される冷媒の温度が低くなる。T13~T14では、第1燃料電池スタック11の発電量の変化率に対して、第2燃料電池スタック12の発電量の変化率が小さい。さらに、第1圧送部22による冷却系回路内への冷媒の供給量をわずかに少なくする。したがって、イオン濃度推定部18は、第1燃料電池スタック11から排出されるイオン溶出量と第2燃料電池スタック12から排出されるイオン溶出量との合計溶出量が多くなると推定する。これに伴って、第1イオン交換器13の交換までの残時間がわずかに短くなる。
【0064】
T14~T15において、第1燃料電池スタック11の発電量がT13~T14よりも少なくなると、第1燃料電池スタック11から排出される冷媒の温度が低くなり、第2燃料電池スタック12の発電量がT13~T14よりも少なくなると、第2燃料電池スタック12から排出される冷媒の温度が低くなる。T14~T15では、第1燃料電池スタック11の発電量の変化率に対して、第2燃料電池スタック12の発電量の変化率が少ない。さらに、第1圧送部22による冷却系回路内への冷媒の供給量を少なくする。したがって、イオン濃度推定部18は、第1燃料電池スタック11から排出されるイオン溶出量と第2燃料電池スタック12から排出されるイオン溶出量との合計溶出量が少なくなると推定する。これに伴って、第1イオン交換器13の交換までの残時間が短くなる。
【0065】
T14~T15において、下記の式(2)に示すように、第1燃料電池スタック11の発電時間と第2燃料電池スタック12の発電時間との合計が所定値2以上である場合に、第1イオン交換器13の交換を要求する。
(第1燃料電池スタックの発電時間×温度頻度係数1)+(第2燃料電池スタックの発電時間×温度頻度係数2)≧所定値2 (2)
【0066】
上述したように、実施形態の燃料電池システム10は、イオン濃度推定部18により、第1温度取得部14と第2温度取得部15により取得された冷媒の温度および第1発電時間取得部16と第2発電時間取得部17により取得された発電時間の少なくとも一方に基づいてイオン濃度を推定し、判断部19により、イオン濃度推定部18により推定されたイオン濃度に基づいて第1イオン交換器13の交換タイミングを判断することによって、第1イオン交換器13の交換タイミングを精度よく判断することができる。これにより、第1イオン交換器13を最後まで使い切ることができ、利便性を向上させることができる。
【0067】
イオン濃度推定部18により、第1温度取得部14と第2温度取得部15により取得された冷媒の温度が高くなるほどイオン溶出量が多いと推定し、判断部19により、第1温度取得部14と第2温度取得部15により取得された冷媒の温度から推定されるイオン濃度の積算値に応じて第1イオン交換器13の交換タイミングを判断する。これにより、第1イオン交換器13の交換タイミングを精度よく判断することができる。
【0068】
停止時間および外気温度情報の少なくとも一方に基づいて、第1燃料電池スタック11と第2燃料電池スタック12の起動時に第1圧送部22にて圧送する冷媒の起動時吐出量を決定するとともに、第1圧送部22は第1燃料電池スタック11と第2燃料電池スタック12の起動時は要求出力に応じた圧送制御に優先して、起動時吐出量に基づく制御を行うことにより、第1燃料電池スタック11と第2燃料電池スタック12において、冷媒に含まれるイオンの濃度のばらつきを低減することができる。これにより、第1イオン交換器13の交換タイミングを精度よく判断することができる。
【0069】
(その他の例)
図4は、実施形態での燃料電池システム200を示す模式図である。
なお、燃料電池システム200では、前記燃料電池システム10における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
燃料電池システム200は、燃料電池システム10の構成に加えて、第2イオン交換器201と、分岐流路202とを備える。また、燃料電池システム200は、第2圧送部203と、第2バルブ機構204とを備えてもよい。
【0070】
第2イオン交換器201は、分岐流路202に設けられ、分岐流路202、第2バルブ機構204、第1冷媒流路27および第2冷媒流路28を介して、第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12と接続されている。
分岐流路202は、供給路21で第2バルブ機構204によって冷媒を選択的に分岐させ、第1燃料電池スタック11の上流側の第1冷媒流路27および第2燃料電池スタック12の上流側の第2冷媒流路28に冷媒を戻す。
【0071】
第2圧送部203は、分岐流路202に設けられ、供給路21から分岐された冷媒を、第1燃料電池スタック11の上流側の第1冷媒流路27および第2燃料電池スタック12の上流側の第2冷媒流路28に圧送する。
【0072】
燃料電池システム200の運転方法について説明する。
燃料電池システム200では、FC制御装置30は、第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12の停止時に、少なくとも発電時間に基づいて、冷媒を分岐流路202に流通させる流通時間を制御する。また、FC制御装置30は、第1発電時間取得部16により取得される起動時の第1燃料電池スタック11の発電時間と、第2発電時間取得部17により取得される起動時の第2燃料電池スタック12の発電時間とに所定以上の差がある場合に、第1燃料電池スタック11と第2燃料電池スタック12との間で冷媒を循環させる。また、FC制御装置30は、第1停止時間取得部24により取得される第1燃料電池スタック11の停止時間と、第2停止時間取得部25により取得される第2燃料電池スタック12の停止時間とに所定以上の差がある場合に、第1燃料電池スタック11と第2燃料電池スタック12との間で冷媒を循環させる。
【0073】
燃料電池システム200の運転方法の具体例を説明する。
図5は、燃料電池システム200の運転方法を示すシステムフローの一例である。
T
0~T
1において、第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12は停止している。第1バルブ機構23と第2バルブ機構204は開いている。第1圧送部22と第2圧送部203は起動していない。FC制御装置30は、第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12の停止時に、少なくとも第1発電時間取得部16によって取得された第1燃料電池スタック11の発電時間および第2発電時間取得部17によって取得された第2燃料電池スタック12の発電時間に基づいて、冷媒を分岐流路202に流通させる流通時間を制御する。すなわち、第2バルブ機構204を調節して、冷媒を分岐流路202に流通させる流通時間を制御する。
【0074】
T1にて、FC制御装置30は、第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12の起動時に、少なくとも第1停止時間取得部24によって取得された第1燃料電池スタック11の停止時間および第2停止時間取得部25によって取得された第2燃料電池スタック12の停止時間に基づいて、冷媒を分岐流路202に流通させる流通時間を制御する。すなわち、第2バルブ機構204を調節して、冷媒を分岐流路202に流通させる流通時間を制御する。T1~T2において、第2バルブ機構204を閉じ、第2圧送部203を起動させて、供給路21から分岐された冷媒を、第1燃料電池スタック11の上流側の第1冷媒流路27および第2燃料電池スタック12の上流側の第2冷媒流路28に圧送する。
【0075】
T2~T3において、第2バルブ機構204を少し開けて、第1圧送部22を起動させ、第2圧送部203を起動させたままとする。第1圧送部22の出力(冷媒を圧送する出力)と第2圧送部203の出力(冷媒を圧送する出力)をほぼ同等とする。これにより、供給路21から分岐された冷媒を、第1燃料電池スタック11の上流側の第1冷媒流路27および第2燃料電池スタック12の上流側の第2冷媒流路28に圧送するとともに、供給路21を介して第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12から排出された冷媒を第1イオン交換器13へ供給する。
【0076】
T3~T4において、第2バルブ機構204をさらに開けて、第1圧送部22と第2圧送部203を起動させたままとする。第1圧送部22の出力を第2圧送部203の出力よりも大きくする。これにより、供給路21を介して第1燃料電池スタック11および第2燃料電池スタック12から排出された冷媒を第1イオン交換器13のみへ供給する。
【0077】
上述したように、実施形態の燃料電池システム200は、第1燃料電池スタック11と第2燃料電池スタック12の起動時に、少なくとも停止時間に基づいて、冷媒を分岐流路202に流通させる流通時間を制御することにより、第1イオン交換器13と第2イオン交換器201の交換タイミングを精度よく判断することができる。
第1燃料電池スタック11と第2燃料電池スタック12の起動時に、少なくとも停止時間に基づいて、冷媒を分岐流路202に流通させる流通時間を制御することにより、第1イオン交換器13と第2イオン交換器201の交換タイミングを精度よく判断することができる。
【0078】
第1燃料電池スタック11と第2燃料電池スタック12の停止時に、少なくとも発電時間に基づいて、冷媒を分岐流路202に流通させる流通時間を制御することにより、第1イオン交換器13と第2イオン交換器201の交換タイミングを精度よく判断することができる。
第1発電時間取得部16により取得される起動時の第1燃料電池スタック11の発電時間と、第2発電時間取得部17により取得される起動時の第2燃料電池スタック12の発電時間とに所定以上の差がある場合に、第1燃料電池スタック11と第2燃料電池スタック12との間で冷媒を循環させることにより、第1燃料電池スタック11と第2燃料電池スタック12において、冷媒に含まれるイオンの濃度のばらつきを低減することができる。これにより、第1イオン交換器13と第2イオン交換器201の交換タイミングを精度よく判断することができる。
【0079】
第1停止時間取得部24により取得される第1燃料電池スタック11の停止時間と、第2停止時間取得部25により取得される第2燃料電池スタック12の停止時間とに所定以上の差がある場合に、第1燃料電池スタック11と第2燃料電池スタック12との間で冷媒を循環させることにより、第1燃料電池スタック11と第2燃料電池スタック12において、冷媒に含まれるイオンの濃度のばらつきを低減することができる。これにより、第1イオン交換器13と第2イオン交換器201の交換タイミングを精度よく判断することができる。
【0080】
上述した実施形態では、燃料電池システムが、燃料電池において発電された電力を走行用の電力または車載機器の動作用の電力として用いる燃料電池車両に搭載されている例について説明したが、当該システムは、二輪や三輪、四輪等の自動車や他の移動体(例えば、船舶、飛行体、ロボット)に搭載されてもよく、また、定置型の燃料電池システムに搭載されてもよい。
【0081】
本発明の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0082】
10,200・・・燃料電池システム、11・・・第1燃料電池スタック、12・・・第2燃料電池スタック、13・・・第1イオン交換器、14・・・第1温度取得部、15・・・第2温度取得部、16・・・第1発電時間取得部、17・・・第2発電時間取得部、18・・・イオン濃度推定部、19・・・判断部、20・・・冷媒タンク、21・・・供給路、22・・・第1圧送部、23・・・第1バルブ機構、24・・・第1停止時間取得部、25・・・第2停止時間取得部、26・・・外気温度情報取得部、27・・・第1冷媒流路、28・・・第2冷媒流路、30・・・制御部(制御装置(FC制御装置))、100・・・制御装置、201・・・第2イオン交換器、202・・・分岐流路、203・・・第2圧送部、204・・・第2バルブ機構。