(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156672
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】固定子、ブラシレスモータおよび固定子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 3/04 20060101AFI20221006BHJP
H02K 3/26 20060101ALI20221006BHJP
H02K 3/28 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
H02K3/04 J
H02K3/04 E
H02K3/26 Z
H02K3/28 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060479
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】507216098
【氏名又は名称】シチズン千葉精密株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】清宮 共弘
(72)【発明者】
【氏名】土井 誠
(72)【発明者】
【氏名】岡本 聖也
【テーマコード(参考)】
5H603
【Fターム(参考)】
5H603AA09
5H603BB01
5H603BB07
5H603BB10
5H603BB12
5H603CA01
5H603CA05
5H603CB04
5H603CB13
5H603CB18
5H603CC02
5H603CC19
5H603CD21
5H603CD25
5H603CE01
5H603EE01
(57)【要約】
【課題】より簡易な構成により、コイルの端部を決められた組合せで接続した固定子を提供する。また、より簡易に、コイルの端部を決められた組合せで接続することができる固定子の製造方法を提供する。
【解決手段】複数のコイルである第1コイル~第6コイルと、第1コイル~第6コイルのそれぞれの端部を電気的に接続する中継基板23と、を備え、中継基板23は、積層する複数の基板を有し、複数の基板のそれぞれは、複数の基板同士を電気的に接続するスルーホールと、スルーホールと電気的に接続された所定の平面パターン形状をなす導電部とを有し、中継基板23は、スルーホールと、導電部とにより、第1コイル~第6コイルのそれぞれを所定の結線となるように電気的に接続する固定子20。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコイルと、
前記複数のコイルのそれぞれの端部を電気的に接続する基板部と、
を備え、
前記基板部は、積層する複数の基板を有し、
前記複数の基板のそれぞれは、当該複数の基板同士を電気的に接続するスルーホールと、当該スルーホールと電気的に接続された所定の平面パターン形状をなす導電部とを有し、
前記基板部は、前記スルーホールと、前記導電部とにより、前記複数のコイルのそれぞれを所定の結線となるように電気的に接続する固定子。
【請求項2】
前記複数のコイルは、当該複数のコイルのそれぞれの端部を前記基板部に電気的に接続することでスター結線またはデルタ結線となる請求項1に記載の固定子。
【請求項3】
前記複数のコイルがスター結線となるときは、前記複数の基板は、スター結線の中性点を形成する前記導電部が設けられた一の基板である中性点基板を含む請求項2に記載の固定子。
【請求項4】
前記複数の基板は、U相のコイル同士を電気的に接続する前記導電部が設けられた一の基板であるU相基板と、V相のコイル同士を電気的に接続する当該導電部が設けられた一の基板であるV相基板と、W相のコイル同士を電気的に接続する当該導電部が設けられた一の基板であるW相基板とを含む請求項3に記載の固定子。
【請求項5】
前記複数の基板は、U相端子を形成する前記導電部と、V相端子を形成する前記導電部と、W相端子を形成する前記導電部とが設けられた一の基板である端子基板を含む請求項4に記載の固定子。
【請求項6】
前記端子基板には、前記中性点の一部を形成する前記導電部が設けられている請求項5に記載の固定子。
【請求項7】
前記複数の基板は、U相のコイル、V相のコイルおよびW相のコイルのうち少なくとも何れか一つのコイルの端部を前記U相端子、前記V相端子または前記W相端子に近づく方向へ引き回す前記導電部が設けられた一の基板である引き回し基板を含む請求項5または6に記載の固定子。
【請求項8】
前記複数のコイルがデルタ結線となるときは、前記複数の基板は、U相のコイル、V相のコイルおよびW相のコイルのうち何れか一つの同相のコイル同士を電気的に接続する前記導電部が設けられた一の基板である同相基板を含む請求項2に記載の固定子。
【請求項9】
前記複数の基板は、U相のコイル、V相のコイルおよびW相のコイルのうち他の何れか一つの同相のコイル同士を電気的に接続する前記導電部と、何れか二つの異なる相のコイル同士を電気的に接続する前記導電部とが設けられた一の基板である複合相基板を含む請求項8に記載の固定子。
【請求項10】
前記複数の基板は、U相のコイル、V相のコイルおよびW相のコイルのうち他の何れか二つの異なる相のコイル同士を電気的に接続する前記導電部が設けられた一の基板である第一異相基板と、さらに他の何れか二つの異なる相のコイル同士を電気的に接続する前記導電部が設けられた一の基板である第二異相基板とを含む請求項9に記載の固定子。
【請求項11】
前記複数の基板は、U相のコイル、V相のコイルおよびW相のコイルのうちさらに他の同相のコイル同士を電気的に接続する前記導電部と、U相端子を形成する前記導電部と、V相端子を形成する前記導電部と、W相端子を形成する前記導電部とが設けられた一の基板である端子基板を含む請求項10に記載の固定子。
【請求項12】
前記第一異相基板または前記第二異相基板には、U相のコイル、V相のコイルおよびW相のコイルのうち少なくとも何れか一つのコイルの端部を前記U相端子、前記V相端子または前記W相端子に近づく方向へ引き回す前記導電部が設けられている請求項11に記載の固定子。
【請求項13】
前記複数のコイルのそれぞれの端部は、前記複数の基板のうち最も端部側に配される一の基板に集められ、当該一の基板と電気的に接続する請求項7または12に記載の固定子。
【請求項14】
前記複数の基板のそれぞれは、円環状であり、前記スルーホールは、円環状の前記複数の基板のそれぞれの内周面に設けられた溝形状をなし、
前記複数のコイルの端部は、溝形状をなす前記スルーホールに嵌めこまれ、前記複数の基板のうち最も端部側に位置する前記一の基板に導かれる請求項13に記載の固定子。
【請求項15】
前記複数の基板のそれぞれの電気的な絶縁部は、前記スルーホールの内面から露出しない請求項14に記載の固定子。
【請求項16】
請求項1乃至15の何れか1項に記載の固定子と、
前記固定子の内側に収容され、当該固定子に電力を供給することで回転する回転子と、
を備えるブラシレスモータ。
【請求項17】
複数のコイルの軸方向の端部側に、基板部を装着する装着工程と、
前記複数のコイルのそれぞれの端部を、前記基板部に電気的に接続する接続工程と、
を含み、
前記基板部は、積層する複数の基板を有し、
前記複数の基板のそれぞれは、当該複数の基板同士を接続するスルーホールと、当該スルーホールと電気的に接続された所定の平面パターン形状をなす導電部とを有し、
前記スルーホールと、前記導電部とにより、前記複数のコイルのそれぞれを所定の結線となるように電気的に接続する固定子の製造方法。
【請求項18】
前記接続工程は、前記複数のコイルのそれぞれの端部を、前記複数の基板のうち最も端部側に位置する一の基板に集め、当該一の基板と電気的に接続させる請求項17に記載の固定子の製造方法。
【請求項19】
前記複数の基板のそれぞれは、円環状であり、前記接続工程は、円環状の前記複数の基板のそれぞれの内周面に設けられた溝形状の前記スルーホールに、前記複数のコイルの端部を嵌めこみ、当該複数のコイルの端部を、前記複数の基板のうち最も端部側に位置する前記一の基板に導いた後に、当該一の基板と電気的に接続させる請求項18に記載の固定子の製造方法。
【請求項20】
前記接続工程は、
前記一の基板に集めた前記端部を当該一の基板に半田付けする第1の半田付け工程と、
前記第1の半田付け工程により半田付けした半田に隣接する箇所で、前記端部を切断する切断工程と、
前記切断工程により露出した前記端部の芯線と前記第1の半田付け工程で半田付けした半田とをさらに半田付けする第2の半田付け工程と、
を含む請求項18または19に記載の固定子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定子、ブラシレスモータおよび固定子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブラシレスモータとして、ステータとステータに対して回転自在のロータとを有し、ステータには互いにスター結線されたU相、V相、W相の電機子コイルが装着される構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献2には、可動コイルは4層の多層基板からなり、各層に渦巻き状の導体パターンからなるコイルが並列に複数形成されているリニアモータの可動コイルが提案されている。各層のコイルは絶縁層を介してスルーホールにより電気的に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-12955号公報
【特許文献2】特開2002-112524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、ブラシレスモータのコイルは、円筒状のステータコアの内周に収容される。このとき、ステータコアの端部に円環状のコイル配線用のプリント基板を配するが、このプリント基板として、単層のプリント基板を使用することがある。
このとき、単層のプリント基板上で、コイルの端部を決められた組合せで接続する必要がある。その際、コイルの外で、コイルの端部を這わせて所定の接続をさせる必要があり、円筒状のコイルよりもコイル長が長くなる。これを抑えようと、コイルのコイル線を無理に押し込んだりすると、断線のおそれがある。また、プリント基板の同じ箇所にコイルの端部を複数本半田付けする必要があり、製造するのが容易とは言えない。
本発明は、より簡易な構成により、コイルの端部を決められた組合せで接続した固定子を提供することを目的とする。また、より簡易に、コイルの端部を決められた組合せで接続することができる固定子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的のもとで、本発明は、複数のコイルと、複数のコイルのそれぞれを電気的に接続する基板部と、を備え、基板部は、積層する複数の基板を有し、複数の基板は、複数の基板同士を電気的に接続するスルーホールと、スルーホールと電気的に接続された所定の平面パターン形状をなす導電部とを有し、基板部は、スルーホールと、導電部とにより、複数のコイルのそれぞれを所定の結線となるように電気的に接続する固定子である。
【0006】
ここで、複数のコイルは、複数のコイルのそれぞれの端部を基板部に電気的に接続するようにすることができる。
【0007】
また、複数のコイルがスター結線となるときは、複数の基板は、スター結線の中性点を形成する導電部が設けられた一の基板である中性点基板を含むようにすることができる。
【0008】
また、複数の基板は、U相のコイル同士を電気的に接続する導電部が設けられた一の基板であるU相基板と、V相のコイル同士を電気的に接続する導電部が設けられた一の基板であるV相基板と、W相のコイル同士を電気的に接続する導電部が設けられた一の基板であるW相基板とを含むようにすることができる。
【0009】
また、複数の基板は、U相端子を形成する導電部と、V相端子を形成する導電部と、W相端子を形成する導電部とが設けられた一の基板である端子基板を含むようにすることができる。
【0010】
また、端子基板には、中性点の一部を形成する導電部が設けられているようにすることができる。
【0011】
また、複数の基板は、U相のコイル、V相のコイルおよびW相のコイルのうち少なくとも何れか一つのコイルの端部をU相端子、V相端子またはW相端子に近づく方向へ引き回す導電部が設けられた一の基板である引き回し基板を含むようにすることができる。
【0012】
また、複数のコイルがデルタ結線となるときは、複数の基板は、U相のコイル、V相のコイルおよびW相のコイルのうち何れか一つの同相のコイル同士を電気的に接続する導電部が設けられた一の基板である同相基板を含むようにすることができる。
【0013】
また、複数の基板は、U相のコイル、V相のコイルおよびW相のコイルのうち他の何れか一つの同相のコイル同士を電気的に接続する導電部と、何れか二つの異なる相のコイル同士を電気的に接続する導電部とが設けられた一の基板である複合相基板を含むようにすることができる。
【0014】
また、複数の基板は、U相のコイル、V相のコイルおよびW相のコイルのうち他の何れか二つの異なる相のコイル同士を電気的に接続する導電部が設けられた一の基板である第一異相基板と、さらに他の何れか二つの異なる相のコイル同士を電気的に接続する導電部が設けられた一の基板である第二異相基板とを含むようにすることができる。
【0015】
また、複数の基板は、U相のコイル、V相のコイルおよびW相のコイルのうちさらに他の同相のコイル同士を電気的に接続する導電部と、U相端子を形成する導電部と、V相端子を形成する導電部と、W相端子を形成する導電部とが設けられた一の基板である端子基板を含むようにすることができる。
【0016】
また、第一異相基板または第二異相基板には、U相のコイル、V相のコイルおよびW相のコイルのうち少なくとも何れか一つのコイルの端部をU相端子、V相端子またはW相端子に近づく方向へ引き回す導電部が設けられているようにすることができる。
【0017】
また、複数のコイルのそれぞれの端部は、複数の基板のうち最も端部側に配される一の基板に集められ、一の基板と電気的に接続するようにすることができる。
【0018】
また、複数の基板のそれぞれは、円環状であり、スルーホールは、円環状の複数の基板のそれぞれの内周面に設けられた溝形状をなし、複数のコイルの端部は、溝形状をなすスルーホールに嵌めこまれ、複数の基板のうち最も端部側に位置する一の基板に導かれるようにすることができる。
【0019】
また、複数の基板のそれぞれの電気的な絶縁部は、スルーホールの内面から露出しないようにすることができる。
【0020】
また、本発明は、上記固定子と、固定子の内側に収容され、固定子に電力を供給することで回転する回転子と、を備えるブラシレスモータである。
【0021】
さらに、本発明は、複数のコイルの軸方向の端部側に、基板部を装着する装着工程と、複数のコイルのそれぞれの端部を、基板部に電気的に接続する接続工程と、を含み、基板部は、積層する複数の基板を有し、複数の基板は、複数の基板同士を電気的に接続するスルーホールと、スルーホールと電気的に接続された所定の平面パターン形状をなす導電部とを有し、スルーホールと、導電部とにより、複数のコイルのそれぞれを所定の結線となるように電気的に接続する固定子の製造方法である。
【0022】
ここで、接続工程は、複数のコイルのそれぞれの端部を、複数の基板のうち最も端部側に位置する一の基板に集め、一の基板と電気的に接続させるようにすることができる。
また、複数の基板のそれぞれは、円環状であり、接続工程は、円環状の複数の基板のそれぞれの内周面に設けられた溝形状のスルーホールに、複数のコイルの端部を嵌めこみ、複数のコイルの端部を、複数の基板のうち最も端部側に位置する一の基板に導いた後に、一の基板と電気的に接続させるようにすることができる。
またさらに、接続工程は、一の基板に集めた端部を一の基板に半田付けする第1の半田付け工程と、第1の半田付け工程により半田付けした半田に隣接する箇所で、端部を切断する切断工程と、切断工程により露出した端部の芯線と第1の半田付け工程で半田付けした半田とをさらに半田付けする第2の半田付け工程と、を含むようにすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、より簡易な構成で、コイルの端部を決められた組合せで接続した固定子を提供することができる。また、より簡易に、コイルの端部を決められた組合せで接続することができる固定子の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本実施の形態に係るブラシレスモータの断面図である。
【
図2】(a)~(b)は、ワイヤを巻枠に巻き付けている様子を示す斜視図の一例である。
【
図3】本実施の形態に係るコアレスコイルを、スター結線で構成する場合の配線図の一例である。
【
図4】(a)~(f)は、スター結線とする場合に、中継基板を構成する基板について示した図である。
【
図5】基板を使用することで、スター結線となることを示した図である。
【
図6】(a)~(f)は、スター結線とする場合に、中継基板を構成する基板の他の例について示した図である。
【
図7】本実施の形態に係るコアレスコイルを、デルタ結線で構成する場合の配線図の一例である。
【
図8】(a)~(e)は、デルタ結線とする場合に、中継基板を構成する基板について示した図である。
【
図9】基板を使用することで、デルタ結線となることを示した図である。
【
図10】(a)~(d)は、接続工程について説明した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して、実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本実施の形態に係るブラシレスモータ1の断面図である。
本実施の形態に係るブラシレスモータ1は、回転子10と、固定子20と、固定子20を収容するハウジング30とを備えている。
【0026】
回転子10は、固定子20の内側に収容され、固定子20に電力を供給することで回転する。回転子10は、回転軸11と、回転軸11に装着されたメインマグネット12とを有している。以下では、回転軸11の軸方向を、単に「軸方向」と称する場合もある。また、軸方向において、
図1の左側を「一方側」、
図1の右側を「他方側」と称する場合もある。
回転軸11は、例えば中実円柱状の部材である。メインマグネット12は、2極に着磁された円筒状の磁石であることを例示することができる。
【0027】
固定子20は、全体として円筒形状を形成する複数のコイルからなり、これらのコイルの端部を決められた組合せで接続したコアレスコイル21と、コアレスコイル21を保持する円筒状のステータコア22と、ステータコア22における他方側の端面に設けられた中継基板23と、中継基板23に接続されたリード線24とを有している。中継基板23は、複数のコイルの軸方向の端部側に設けられ、これら複数のコイルのそれぞれの端部を電気的に接続する円環状の基板部として機能する。固定子20については、後で詳述する。
【0028】
ハウジング30は、回転軸11の軸方向の両端部が開口した円筒状のケース31と、ケース31における一方側の開口を覆う一方側プレート32と、ケース31における他方側の開口を覆う他方側プレート33とを有している。また、ハウジング30は、一方側プレート32に保持されて、回転軸11の一方の端部側を回転可能に支持する一方側軸受34と、回転軸11の他方の端部側を回転可能に支持する他方側軸受35とを備えている。
一方側プレート32、他方側プレート33は、それぞれ、内側に、一方側軸受34、他方側軸受35を保持するとともに、ケース31の内部に嵌め込まれた、略円筒状の部材である。一方側軸受34および他方側軸受35は、ボールベアリングであることを例示することができる。
【0029】
また、ブラシレスモータ1は、他方側軸受35よりも他方側に設けられて、回転子10
の回転角度を検出する検出装置50と、検出装置50を覆うカバー90とを備えている。
検出装置50については、後で詳述する。
【0030】
カバー90は、有底円筒状の部材であり、円筒状の円筒状部91と、円筒状部91における他方側の開口部を覆う円板状の円板状部92とを有している。
円筒状部91の内周面に、他方側プレート33の外周面が嵌め込まれている。また、円筒状部91には、内外を連通する連通孔911が形成されている。連通孔911には、グロメット912が嵌め込まれており、グロメット912に形成された孔を介して、リード線24がカバー90の外へ出ている。
【0031】
(検出装置50の構成)
検出装置50は、磁気センサ51と、磁気センサ51が実装されたセンサ基板52と、磁気センサ51に相対するように設けられたセンサマグネット61を有するマグネットユニット60とを有している。
【0032】
磁気センサ51は、磁界の作用により電気的特性(抵抗)が変化するホール素子を有するホールICであることを例示することができる。磁気センサ51は、第1センサ(不図示)、第2センサ(不図示)、第3センサ(不図示)の3つを有している。第1センサ、第2センサ、第3センサは、軸方向の他方側から見た場合に、回転軸11の軸心回りに反時計回転方向に、順に、120度間隔で配置されるようにセンサ基板52に実装されている。磁気センサ51からの出力信号は、カバー90に嵌め込まれたグロメット912の孔を介してカバー90の外へ出された信号線514にて伝送される。
【0033】
センサ基板52は、ハウジング30の他方側プレート33における他方側の面に、例えば、ビスなどにて固定されている。センサ基板52は、コアレスコイル21に対する、第1センサ、第2センサおよび第3センサの配置位置が予め定められた位置となるように固定されている。なお、センサ基板52は、他方側プレート33に接着されていても良い。
【0034】
マグネットユニット60は、センサマグネット61と、ハウジング30から突出した回転軸11における他方側の端部に装着されたヨーク70と、ヨーク70に装着され、ヨーク70とともに、センサマグネット61を挟み込む挟み込み部材80とを有している。
【0035】
ヨーク70は、円筒状のヨーク側円筒状部71と、ヨーク側円筒状部71における他方側の端部から外側に向かう円板状のヨーク側円板状部72とを有している。
ヨーク側円筒状部71の外周面には、雄ねじ(不図示)が形成されている。また、ヨーク側円筒状部71の内周面には、内周面から凹んだ溝712が全周に亘って形成されている。
ヨーク側円板状部72は、ヨーク側円筒状部71の周囲に、ヨーク側円板状部72における一方側の面から一方側に円筒状に突出した突出部721を有している。
【0036】
挟み込み部材80は、円筒状の挟み込み側円筒状部81と、挟み込み側円筒状部81における他方側の端部から外側に向かう円板状の挟み込み側円板状部82とを有している。
挟み込み側円筒状部81の内周面には、ヨーク70に形成された雄ねじに締め付けられる雌ねじ(不図示)が形成されている。
挟み込み側円板状部82には、周方向に等間隔に複数(例えば2つ)の貫通孔821が形成されている。
【0037】
センサマグネット61は、2極に着磁されたリング状の磁石であることを例示することができる。センサマグネット61の内径は、ヨーク70の突出部721の外径以上であり、センサマグネット61の外径は、ヨーク70のヨーク側円板状部72の外径以下である。センサマグネット61における軸方向の大きさ、言い換えれば、センサマグネット61
の厚さは、ヨーク70の突出部721における軸方向の大きさ以上である。
【0038】
以上のように構成されたマグネットユニット60においては、ヨーク70の突出部721の周囲にセンサマグネット61を配置した状態で、ヨーク70に形成された雄ねじに、挟み込み部材80に形成された雌ねじが締め付けられている。挟み込み部材80における他方側の面が、センサマグネット61における一方側の面に突き当たるまで、ヨーク70に形成された雄ねじに、挟み込み部材80に形成された雌ねじが締め付けられている。これにより、センサマグネット61は、ヨーク70のヨーク側円板状部72と、挟み込み部材80の挟み込み側円板状部82との間に挟み込まれ、軸方向の移動が抑制される。また、センサマグネット61は、内周面がヨーク70の突出部721の外周面と接触することにより、半径方向の移動が抑制される。
【0039】
なお、マグネットユニット60を組み付ける際に、ヨーク70に形成された雄ねじと、挟み込み部材80に形成された雌ねじとの間に接着剤を塗布しても良い。これにより、挟み込み部材80がヨーク70から脱落し難くなる。また、センサマグネット61における他方側の面と、ヨーク70のヨーク側円板状部72における一方側の面との間に接着剤を塗布しても良い。これにより、センサマグネット61がヨーク70から脱落し難くなる。また、センサマグネット61における一方側の面と、挟み込み部材80の挟み込み側円板状部82における他方側の面との間に接着剤を塗布しても良い。これにより、挟み込み部材80がヨーク70およびセンサマグネット61から脱落し難くなる。
【0040】
また、挟み込み部材80には、複数の貫通孔821が形成されているので、ヨーク70に形成された雄ねじに、挟み込み部材80に形成された雌ねじを締め付ける際には、挟み込み部材80を回転させるための治具を複数の貫通孔821に差し込んで回すことが可能である。これにより、ヨーク70に、挟み込み部材80を締め付け易くなっている。
【0041】
マグネットユニット60は、回転軸11における他方側の端部に装着されている。
ここで、回転軸11における他方側の端部には、外周面から凹んだ溝111が全周に亘って形成されている。溝111には、サークリップ112が嵌め込まれている。サークリップ112は、例えば、周方向の一部に切り欠きが形成されたドーナツ状であることを例示することができる。
マグネットユニット60は、ヨーク70のヨーク側円筒状部71における一方側の端部側から、回転軸11における他方側の端部に嵌め込まれている。そして、ヨーク70に形成された溝712に、回転軸11の溝111に嵌め込まれたサークリップ112が嵌り込むまで、差し込まれている。ヨーク70に形成された溝712にサークリップ112が嵌り込むことにより、マグネットユニット60は、軸方向の移動が抑制される。
【0042】
(固定子20について)
先ず、固定子20を製造する手法について説明する。
(巻き付け作業)
コアレスコイル21は、一つのボビンに巻かれていたマグネットワイヤ(以下、「ワイヤ」と称する場合がある。)を、一方の回転方向に回転させた巻枠に巻き回して、所定巻数分巻かれた6つのコイルを有している。
【0043】
図2(a)~(b)は、ワイヤ410を巻枠400に巻き付けている様子を示す斜視図の一例である。
最初に、
図2(a)に示すように、ワイヤ410を、六角柱状の巻枠400に巻き付ける。この場合、まず、六角柱状の巻枠400を一方の回転方向に所定回転数だけ回転させて、ボビン(不図示)に巻かれていたワイヤを巻枠400に巻き付け、一方の回転方向に所定巻数分巻かれた第1コイル211を形成する。続いて、第1コイル211の巻き終わりから、予め定めた長さ分だけワイヤを引き出して、屈曲させて折り返し、その折り返しを、第1コイル211の巻き終わりまで戻すことにより、第1引き出し部221を形成する。なお、第1コイル211の巻き始め側を、第1巻き始め端部211sと称する場合がある。
【0044】
次に、巻枠400を一方の回転方向に所定回転数だけ回転させて、ボビンに巻かれていたワイヤを巻枠400に巻き付け、一方の回転方向に所定巻数分巻かれた第2コイル212を形成する。続いて、第2コイル212の巻き終わりから、予め定めた長さ分だけワイヤを引き出して、屈曲させて折り返し、その折り返しを、第2コイル212の巻き終わりまで戻すことにより、第2引き出し部222を形成する。
【0045】
以降、上記工程を3回繰り返し、同じ回転方向に所定巻数分巻かれた、第3コイル213、第4コイル214および第5コイル215を形成する。また、第3コイル213と第4コイル214との間に第3引き出し部223を、第4コイル214と第5コイル215との間に第4引き出し部224を、第5コイル215の巻き終わり箇所に第5引き出し部225を形成する。
【0046】
そして、第5引き出し部225を形成した後に、巻枠400を一方の回転方向に所定回転数だけ回転させて、ボビンに巻かれていたワイヤを巻枠400に巻き付け、一方の回転方向に所定巻数分巻かれた第6コイル216を形成する。続いて、第6コイル216の巻き終わりから、ワイヤを引き出して、第6コイル216の巻き終わり端部となる第6巻き終わり端部216eを形成する。
【0047】
その後、
図2(b)に示すように、第1引き出し部221、第2引き出し部222、第3引き出し部223、第4引き出し部224、第5引き出し部225のそれぞれにおける屈曲部を切断する。
具体的には、第1引き出し部221における屈曲部を切断し、第1コイル211の巻き終わり端部となる第1巻き終わり端部211eと、第2コイル212の巻き始め端部となる第2巻き始め端部212sとを形成する。
また、第2引き出し部222における屈曲部を切断し、第2コイル212の巻き終わり端部となる第2巻き終わり端部212eと、第3コイル213の巻き始め端部となる第3巻き始め端部213sとを形成する。
また、第3引き出し部223における屈曲部を切断し、第3コイル213の巻き終わり端部となる第3巻き終わり端部213eと、第4コイル214の巻き始め端部となる第4巻き始め端部214sとを形成する。
また、第4引き出し部224における屈曲部を切断し、第4コイル214の巻き終わり端部となる第4巻き終わり端部214eと、第5コイル215の巻き始め端部となる第5巻き始め端部215sとを形成する。
また、第5引き出し部225における屈曲部を切断し、第5コイル215の巻き終わり端部となる第5巻き終わり端部215eと、第6コイル216の巻き始め端部となる第6巻き始め端部216sとを形成する。
【0048】
その後、第1コイル211~第6コイル216にテープを貼って仮固定した状態で、第1コイル211~第6コイル216を巻枠400から抜き取り、斜めに倒して、偏平コイル(不図示)を生成する。
その後、偏平コイルを、円筒状または円柱状の治具に巻き付けて、円筒状の円筒コイル(不図示)を生成し、ステータコア(不図示)の内周面に接着する。また、円筒状のステータコアにおける他方側の端面に、中継基板(不図示)を接着し、第1コイル211~第6コイル216のそれぞれの端部を配線して中継基板に半田付けを行い、さらに中継基板にリード線24の半田付けを行う。これらの第1コイル211~第6コイル216は、全体として円筒形状を形成する複数のコイルの一例である。
【0049】
このとき、第1コイル211~第6コイル216のそれぞれの端部を、半田付けにより中継基板に電気的に接続するときの結線として、スター結線で行う場合と、デルタ結線で行う場合とがある。
【0050】
(スター結線)
ここでは、第1コイル211~第6コイル216のそれぞれを、スター結線で接続し、コアレスコイル21を構成する場合について説明を行う。
図3は、本実施の形態に係るコアレスコイル21を、スター結線で構成する場合の配線図の一例である。
中継基板23に、円筒コイルに形成された端部を配線するにあたって、第1巻き終わり端部211eと、第3巻き終わり端部213eと、第5巻き終わり端部215eとを結線して、中性点端子219とする。また、第3巻き始め端部213sと第6巻き始め端部216sとを結線する。さらに、第5巻き始め端部215sと第2巻き始め端部212sとを結線する。またさらに、第1巻き始め端部211sと第4巻き始め端部214sとを結線する。そして、第6巻き終わり端部216e、第2巻き終わり端部212eおよび第4巻き終わり端部214eを相端子とする。
【0051】
これにより、コアレスコイル21は、
図3に示すように、第3コイル213と第6コイル216、第5コイル215と第2コイル212、第1コイル211と第4コイル214を、それぞれ直列に接続した三相スター結線コイルとなる。なお、以下では、第3コイル213と第6コイル216とから構成される相をV相、第5コイル215と第2コイル212とから構成される相をU相、第1コイル211と第4コイル214とから構成される相をW相と称する場合がある。第6巻き終わり端部216eがV相端子、第2巻き終わり端部212eがU相端子、第4巻き終わり端部214eがW相端子となる。
【0052】
ただし、第3コイル213と第6コイル216とから構成される相をW相、第5コイル215と第2コイル212とから構成される相をU相、第1コイル211と第4コイル214とから構成される相をV相としても良い。また、第3コイル213と第6コイル216とから構成される相をU相、第5コイル215と第2コイル212とから構成される相をV相、第1コイル211と第4コイル214とから構成される相をW相としても良い。
【0053】
そして、本実施の形態では、中継基板23を、円環状の複数の基板からなる多層構造とすることで、この結線を実現する。なお、基板の形状は、円環状に限定されない。
図4(a)~(f)は、スター結線とする場合に、中継基板23を構成する基板について示した図である。
中継基板23は、
図4(a)に示す基板236、
図4(b)に示す基板235、
図4(c)に示す基板234、
図4(d)に示す基板233、
図4(e)に示す基板232、
図4(f)に示す基板231の基板が、
図1の一方側から他方側に、この順で積層する。即ち、中継基板23は、積層する円環状の複数の基板231~236を有する。この場合、基板231~236は、それぞれ第1層目~第6層目の基板と言うこともできる。
基板231~236は、これらの基板231~236の基部をなす電気的な絶縁性を有する絶縁部と、これらの基板231~236の絶縁部の表面に設けられた弧状の平面パターン形状をなす導電部と、これらの基板231~236のそれぞれを電気的に接続するスルーホールとを有する。なお、導電部の平面パターン形状は、弧状に限定されない。
【0054】
導電部は、銅メッキ等により形成され、導電性を有する。
導電部としては、
図4(a)に示す基板236では、導電部236dが設けられている。
また、
図4(b)に示す基板235では、導電部235dが設けられている。
さらに、
図4(c)に示す基板234では、導電部234dが設けられている。
またさらに、
図4(d)に示す基板233では、導電部233dが設けられている。
またさらに、
図4(e)に示す基板232では、導電部232dが設けられている。
またさらに、
図4(f)に示す基板231では、導電部231d1~231d12が設けられている。
そして、基板231~236では、導電部231d1~231d12、導電部232d、導電部233d、導電部234d、導電部235dおよび導電部236d以外の導電部は、設けられていない。
【0055】
スルーホールは、貫通孔の内面の全体に銅メッキ等がされており、導電性を有する。
スルーホールとしては、基板231~236のそれぞれに形成されたスルーホールS11~S21が設けられ、このスルーホールS11~S21の箇所で、基板231~236は、積層方向に電気的に接続する。スルーホールS11~S21は、この場合、基板231~236のそれぞれに形成された貫通孔である。スルーホールS11~S21の貫通孔を、基板231~236の上方から見たときの形状は、特に限られるものではなく、矩形状、円形状、楕円形状等とすることができる。スルーホールS11~S21の内面からは、スルーホールS11~S21を形成する銅メッキ等のみが露出し、基板231~236の絶縁部は露出しない。
【0056】
また、
図4(a)に示すように、基板236では、スルーホールS11、S18およびスルーホールS21と導電部236dとは、電気的に接続する。
また、
図4(b)に示すように、基板235では、スルーホールS15およびスルーホールS20と導電部235dとは、電気的に接続する。
さらに、
図4(c)に示すように、基板234では、スルーホールS14およびスルーホールS19と導電部234dとは、電気的に接続する。
またさらに、
図4(d)に示すように、基板233では、スルーホールS12およびスルーホールS17と導電部233dとは、電気的に接続する。
またさらに、
図4(e)に示すように、基板232では、スルーホールS13およびスルーホールS16と導電部232dとは、電気的に接続する。
【0057】
またさらに、
図4(f)に示すように、基板231では、スルーホールS21およびスルーホールS11と導電部231d1とは、電気的に接続する。同様に、基板231では、スルーホールS12と導電部231d2とは、電気的に接続し、スルーホールS13と導電部231d3とは、電気的に接続する。さらに、スルーホールS14と導電部231d4とは、電気的に接続し、スルーホールS15と導電部231d5とは、電気的に接続する。またさらに、スルーホールS16と導電部231d7とは、電気的に接続し、スルーホールS17と導電部231d9とは、電気的に接続する。またさらに、スルーホールS18と導電部231d10とは、電気的に接続し、スルーホールS19と導電部231d11とは、電気的に接続する。またさらに、スルーホールS20と導電部231d12とは、電気的に接続する。
【0058】
本実施の形態では、基板231~236のうち、基板231は、第1コイル211~第6コイル216の端部である、第1巻き始め端部211s~第6巻き始め端部216sおよび第1巻き終わり端部211e~第6巻き終わり端部216eを半田付けし、これらの端部を中継基板23に電気的に接続するのに利用する。さらに、基板231は、固定子20にとって外部配線となるリード線24を半田付けし、V相、U相、W相の各リード線24を中継基板23に電気的に接続するために利用する。
【0059】
ここでは、基板231の導電部231d1および第1巻き終わり端部211eには、第5巻き終わり端部215eが接続する。同様に、導電部231d2には、第5巻き始め端部215sが接続する。また、導電部231d3には、第6巻き終わり端部216eが接続する。さらに、導電部231d4には、第6巻き始め端部216sが接続する。またさらに、導電部231d5には、第4巻き始め端部241sが接続する。またさらに、導電部231d6には、第4巻き終わり端部214eおよびW相の各リード線24が接続する。またさらに、導電部231d7には、V相の各リード線24が接続する。またさらに、導電部231d8には、第2巻き終わり端部212eおよびU相の各リード線24が接続する。またさらに、導電部231d9には、第2巻き始め端部212sが接続する。またさらに、導電部231d10には、第3巻き終わり端部213eが接続する。またさらに、導電部231d11には、第3巻き始め端部213sが接続する。またさらに、導電部231d12には、第1巻き始め端部211sが接続する。
【0060】
また、基板231~236は、
図3に示すスター結線を実現するための基板として使用する。即ち、基板231~236をそれぞれスター結線を行うための第1層目~第6層目の多層基板として利用する。つまり、スター結線は、複数の基板231~236が、導電部とスルーホールS11~S21により電気的に接続する基板内結線により形成される。
【0061】
図5は、基板231~236を使用することで、スター結線となることを示した図である。
図4(a)、
図5に示す基板236において、スルーホールS11、S18、S21および導電部236dにより、第3巻き終わり端部213e、第5巻き終わり端部215eおよび第1巻き終わり端部211eがそれぞれ接続され、スター結線の中性点となる。即ち、基板236は、中性点端子219の役割を担う。また、基板236は、スター結線の中性点219を形成する導電部236dが設けられた一の基板として機能する。
また、
図4(b)、
図5に示す基板235において、スルーホールS15、S20および導電部235dにより、第1巻き始め端部211sおよび第4巻き始め端部214sがそれぞれ接続され、結線される。これにより、W相のコイル211とコイル214とが直列に接続される。この場合、基板235は、W相のコイル211とコイル214同士を電気的に接続する導電部235dが設けられた一の基板であるW相基板として機能する。
さらに、
図4(c)、
図5に示す基板234において、スルーホールS14、S19および導電部234dにより、第3巻き始め端部213sおよび第6巻き始め端部216sがそれぞれ接続され、結線される。これにより、V相のコイル213とコイル216とが直列に接続される。この場合、基板234は、V相のコイル213とコイル216同士を電気的に接続する導電部234dが設けられた一の基板であるV相基板として機能する。
【0062】
またさらに、
図4(d)、
図5に示す基板233において、スルーホールS12、S17および導電部233dにより、第5巻き始め端部215sおよび第2巻き始め端部212sがそれぞれ接続され、結線される。これにより、U相のコイル215とコイル212とが直列に接続される。この場合、基板233は、U相のコイル215とコイル212同士を電気的に接続する導電部233dが設けられた一の基板であるU相基板として機能する。
またさらに、
図4(e)、
図5に示す基板232において、スルーホールS13、S16および導電部232dにより、第6巻き終わり端部216eとV相のリード線24とが接続され、結線される。即ち、基板232は、第6巻き終わり端部216eをV相端子に近づく方向へ引き回す役割を担う。よって、基板232は、V相のコイル216の第6巻き終わり端部216eをV相端子に近づく方向へ引き回す導電部232dが設けられた一の基板である引き回し基板として機能する。
またさらに、
図4(f)、
図5に示す基板231において、導電部231d8により、U相のリード線24と第2巻き終わり端部212eとが接続される。また、導電部231d6により、W相のリード線24と第4巻き終わり端部214eとが接続される。この場合、基板231は、U相端子を形成する導電部231d8が設けられた端子基板として機能する。また、基板231は、W相端子を形成する導電部231d6が設けられた端子基板として機能する。
そして、スルーホールS21、スルーホールS11および導電部231d1により第5巻き終わり端部215eと第1巻き終わり端部211eとが接続される。この場合、基板231は、中性点の一部を形成する導電部231d1が設けられている端子基板として機能する。なお、第5巻き終わり端部215eと第1巻き終わり端部211eは、
図4(a)に示す基板236において、スルーホールS11、S21および導電部236dにより、電気的に接続されているが、
図4(f)に示す基板231においても、さらに電気的に接続されているので、電気的な接続がより確実となる。
なお、基板231は、V相端子を形成する導電部231d7が設けられた端子基板として機能する。
【0063】
なお、基板233、基板234、基板235は、それぞれU相、V相、W相となる2つの同相のコイルを電気的に接続する基板であると言うこともできる。
【0064】
また、スルーホールは、円環状の複数の基板231~236のそれぞれの内周面に設けられた溝形状をなすようにすることもできる。このとき、スルーホールは、溝の内面の全体が銅メッキ等されており、導電性を有する。そして、これらのスルーホールの箇所で、基板231~236は、積層方向に電気的に接続する。基板231~236の上方から見たときの溝の形状は、特に限られるものではなく、矩形状、三角形状、半円形状、U字形状、V字形状等とすることができる。スルーホールS11~S21の内面からは、スルーホールS11~S21を形成する銅メッキ等のみが露出し、基板231~236の絶縁部は露出しない。
なおここでは、以下、溝形状として、U字形状の場合について説明を行う。
【0065】
図6(a)~(f)は、スター結線とする場合に、中継基板23を構成する基板の他の例について示した図である。
中継基板23は、
図6(a)に示す基板256、
図6(b)に示す基板255、
図6(c)に示す基板254、
図6(d)に示す基板253、
図6(e)に示す基板252、
図6(f)に示す基板251が、
図1の一方側から他方側に、この順で積層する。即ち、この場合の中継基板23は、積層する円環状の複数の基板251~256を有する。
基板251~256は、これらの基板251~256の基部をなす電気的な絶縁性を有する絶縁部と、これらの基板251~256の絶縁部の表面に設けられた弧状の平面パターン形状をなす導電部と、これらの基板251~256同士を電気的に接続するスルーホールとを有する。
【0066】
導電部としては、
図6(a)に示す基板256では、導電部256dが設けられている。
また、
図6(b)に示す基板255では、導電部255dが設けられている。
さらに、
図6(c)に示す基板254では、導電部254dが設けられている。
またさらに、
図6(d)に示す基板253では、導電部253dが設けられている。
またさらに、
図6(e)に示す基板252では、導電部252dが設けられている。
またさらに、
図6(f)に示す基板251では、導電部251d1~251d4が設けられている。
そして、基板251~256では、導電部251d1~251d4、導電部252d、導電部253d、導電部254d、導電部255d、導電部256d以外の導電部は、設けられていない。
【0067】
スルーホールとしては、基板251~256のそれぞれに形成されたスルーホールS31~S43が設けられる。そして、このスルーホールS31~S43の箇所で、基板251~256は、積層方向に電気的に接続する。ただし、本実施の形態の場合は、スルーホールS31~S43は、基板251~256の内周側に開口するU字形状をなす。スルーホールS31~S43をU字形状とした場合、第1コイル211~第6コイル216の端部である、第1巻き始め端部211s~第6巻き始め端部216sおよび第1巻き終わり端部211e~第6巻き終わり端部216eを、基板251に導く際に、これらをこのスルーホールS31~S43に嵌め込むことができる。
【0068】
また、
図6(a)に示すように、基板256では、スルーホールS31、スルーホールS40およびスルーホールS43と導電部256dとは、電気的に接続する。
さらに、
図6(b)に示すように、基板255では、スルーホールS35およびスルーホールS42と導電部255dとは、電気的に接続する。
またさらに、
図6(c)に示すように、基板254では、スルーホールS34およびスルーホールS41と、導電部254dとは、電気的に接続する。
またさらに、
図6(d)に示すように、基板253では、スルーホールS32およびスルーホールS39と導電部253dとは、電気的に接続する。
またさらに、
図6(e)に示すように、基板252では、スルーホールS33およびスルーホールS37と導電部252dとは、電気的に接続する。
またさらに、
図6(f)に示すように、基板251では、スルーホールS31およびスルーホールS43と導電部251d1とは、電気的に接続する。さらに、スルーホールS36と導電部251d2とは、電気的に接続し、スルーホールS37と導電部251d3とは、電気的に接続し、スルーホールS38と導電部251d4とは、電気的に接続する。
【0069】
この場合、導電部およびスルーホールによる電気的接続の形態は、
図6(a)~(f)のそれぞれと、
図4(a)~(f)のそれぞれとは、同一である。よって、
図5についても、基板231~236を、基板251~256にそれぞれ置き換えれば、同じことが言える。
また、第1コイル211~第6コイル216の端部である、第1巻き始め端部211s~第6巻き始め端部216sおよび第1巻き終わり端部211e~第6巻き終わり端部216eを基板251に半田付けする箇所は、上述した基板231に半田付けする場合と同様である。
【0070】
(デルタ結線)
ここでは、第1コイル211~第6コイル216のそれぞれを、デルタ結線で接続し、コアレスコイル21を構成する場合について説明を行う。
図7は、本実施の形態に係るコアレスコイル21を、デルタ結線で構成する場合の配線図の一例である。
中継基板23に、円筒コイルに形成された端部を配線するにあたって、第6巻き終わり端部216eと第5巻き終わり端部215eとを結線し、第5巻き始め端部215sと第2巻き始め端部212sとを結線する。
また、第2巻き終わり端部212eと第1巻き終わり端部211eとを結線し、第1巻き始め端部211sと第4巻き始め端部214sとを結線する。
さらに、第4巻き終わり端部214eと第3巻き終わり端部213eとを結線し、第3巻き始め端部213sと第6巻き始め端部216sとを結線する。
【0071】
そして、第6巻き終わり端部216eおよび第5巻き終わり端部215e、第2巻き終わり端部212eおよび第1巻き終わり端部211e、第4巻き終わり端部214eおよび第3巻き終わり端部213eを相端子とする。この場合、順にV相、U相、W相の相端子となる。
ただし、第6巻き終わり端部216eおよび第5巻き終わり端部215eをW相の相端子、第2巻き終わり端部212eおよび第1巻き終わり端部211eをU相の相端子、第4巻き終わり端部214eおよび第3巻き終わり端部213eをV相の相端子としても良い。
また、第3コイル213と第6コイル216とから構成される相をU相、第2コイル212と第5コイル215とから構成される相をV相、第1コイル211と第4コイル214とから構成される相をW相としても良い。
【0072】
そして、本実施の形態では、中継基板23を、円環状の複数の基板からなる多層構造とすることで、この結線を実現する。
図8(a)~(e)は、デルタ結線とする場合に、中継基板23を構成する基板について示した図である。
中継基板23は、
図8(a)に示す基板275、
図8(b)に示す基板274、
図8(c)に示す基板273、
図8(d)に示す基板272、
図8(e)に示す基板271が、
図1の一方側から他方側に、この順で積層する。即ち、中継基板23は、積層する円環状の複数の基板271~275を有する。この場合、基板271~275は、それぞれ第1層目~第5層目の基板と言うこともできる。
基板271~275は、これらの基板271~275の基部をなす電気的な絶縁性を有する絶縁部と、これらの基板271~275の絶縁部の表面に設けられた弧状の平面パターン形状をなす導電部と、これらの基板271~275同士を電気的に接続するスルーホールとを有する。
【0073】
導電部としては、
図8(a)に示す基板275では、導電部275dが設けられている。
また、
図8(b)に示す基板274では、導電部274d1、274d2が設けられている。
さらに、
図8(c)に示す基板273では、導電部273dが設けられている。
またさらに、
図8(d)に示す基板272では、導電部272dが設けられている。
またさらに、
図8(e)に示す基板271では、導電部271d1~271d4が設けられている。
そして、基板271~275では、導電部271d1~271d4、導電部272d、導電部273d、導電部274d1、274d2および導電部275d以外の導電部は、設けられていない。
【0074】
スルーホールとしては、基板271~275のそれぞれに形成されたスルーホールS51~S63が設けられる。そして、このスルーホールS51~S63の箇所で、基板271~275は、積層方向に電気的に接続する。また、本実施の形態の場合は、
図6と同様に、スルーホールS51~S56、S58~S63は、基板271~276の内周側に開口するU字形状をなす。なお、スルーホールS57は、貫通孔として形成される。
【0075】
また、
図8(a)に示すように、基板275では、スルーホールS52およびスルーホールS59と導電部275dとは、電気的に接続する。
さらに、
図8(b)に示すように、基板274では、スルーホールS55およびスルーホールS62と導電部274d1とは、電気的に接続する。さらに、スルーホールS56およびスルーホールS60と導電部274d2とは、電気的に接続する。
またさらに、
図8(c)に示すように、基板273では、スルーホールS51、スルーホールS53およびスルーホールS57と、導電部273dとは、電気的に接続する。
またさらに、
図8(d)に示すように、基板272では、スルーホールS58およびスルーホールS63と導電部272dとは、電気的に接続する。
またさらに、
図8(e)に示すように、基板271では、スルーホールS54およびスルーホールS61と導電部271d1とは、電気的に接続する。さらに、スルーホールS56と導電部271d2とは、電気的に接続し、スルーホールS57と導電部271d3とは、電気的に接続し、スルーホールS58と導電部271d4とは、電気的に接続する。
【0076】
本実施の形態では、基板271~275のうち、基板271は、第1コイル211~第6コイル216の端部である、第1巻き始め端部211s~第6巻き始め端部216sおよび第1巻き終わり端部211e~第6巻き終わり端部216eを半田付けし、これらの端部を中継基板23に電気的に接続するのに利用する。さらに、基板271は、固定子20にとって外部配線となるリード線24を半田付けし、V相、U相、W相の各リード線24を中継基板23に電気的に接続するために利用する。
【0077】
ここでは、基板271のスルーホールS51には、第5巻き終わり端部215eが接続する。同様に、スルーホールS52には、第5巻き始め端部215sが接続する。また、スルーホールS53には、第6巻き終わり端部216eが接続する。さらに、スルーホールS54には、第6巻き始め端部216sが接続する。またさらに、スルーホールS55には、第4巻き始め端部214sが接続する。またさらに、スルーホールS56および導電部271d2には、第4巻き終わり端部214eおよびW相の各リード線24が接続する。またさらに、スルーホールS57および導電部271d3には、V相の各リード線24が接続する。またさらに、スルーホールS58および導電部271d4には、第2巻き終わり端部212eおよびU相の各リード線24が接続する。またさらに、スルーホールS59には、第2巻き始め端部212sが接続する。またさらに、スルーホールS60には、第3巻き終わり端部213eが接続する。またさらに、スルーホールS61には、第3巻き始め端部213sが接続する。またさらに、スルーホールS62には、第1巻き始め端部211sが接続する。またさらに、スルーホールS63には、第1巻き終わり端部211eが接続する。
【0078】
また、基板271~275は、
図7に示すデルタ結線を実現するための基板として使用する。即ち、基板271~275をそれぞれデルタ結線を行うための第1層目~第5層目の多層基板として利用する。つまり、デルタ結線は、複数の基板271~275が、導電部とスルーホールS51~S63により電気的に接続する基板内結線により形成される。
【0079】
図9は、基板271~275を使用することで、デルタ結線となることを示した図である。
図8(a)、
図9に示す基板275において、スルーホールS52、S59および導電部275dにより、第5巻き始め端部215s、第2巻き始め端部212sがそれぞれ接続され、結線される。これにより、U相のコイル215とコイル212とが直列に接続される。
また、
図8(b)、
図9に示す基板274において、スルーホールS55、S62および導電部274d1により、第1巻き始め端部211sおよび第4巻き始め端部214sがそれぞれ接続され、結線される。これにより、W相のコイル211とコイル214とが直列に接続される。さらに、基板274において、スルーホールS56、S60および導電部274d2により、第4巻き終わり端部214e、第3巻き終わり端部213eおよびW相端子(基板271の導電部271d2)がそれぞれ接続され、結線される。これにより、W相のコイル214とV相のコイル213とW相端子とが接続される。
【0080】
さらに、
図8(c)、
図9に示す基板273において、スルーホールS51、S53、S57および導電部273dにより、第6巻き終わり端部216e、第5巻き終わり端部215eおよびV相端子(基板271の導電部271d3)がそれぞれ接続され、結線される。これにより、V相のコイル216とU相のコイル215とV相端子とが接続される。なお、スルーホールS53とスルーホールS57との間に設けられた導電部273dにより、第5巻き終わり端部215eと第6巻き終わり端部216eは、V相端子に近づく方向へ引き回される。
またさらに、
図8(d)、
図9に示す基板272において、スルーホールS58、S63および導電部272dにより、第2巻き終わり端部212e、第1巻き終わり端部211eおよびU相端子(基板271の導電部271d4)がそれぞれ接続され、結線される。これにより、U相のコイル212とW相のコイル211とU相端子とが接続される。
またさらに、
図8(e)、
図9に示す基板271において、スルーホールS54、S61および導電部271d1により、第3巻き始め端部213sおよび第6巻き始め端部216sがそれぞれ接続され、結線される。これにより、V相のコイル213とコイル216とが直列に接続される。
【0081】
基板275、274、271は、それぞれ、U相のコイル(コイル215とコイル212)、W相のコイル(コイル211とコイル214)およびV相のコイル(コイル213とコイル216)の同相のコイル同士を電気的に接続する導電部275d、274d1、271d1が設けられた一の基板である同相基板として機能する。
また、基板274は、何れか二つの異なる相のコイル(この場合、コイル213とコイル214)同士を電気的に接続する導電部274d2とが設けられた一の基板である複合相基板として機能する。
さらに、基板272、273、274の中から選択される2つの基板は、U相のコイル、V相のコイルおよびW相のコイルのうち他の何れか二つの異なる相のコイル同士を電気的に接続する導電部が設けられた一の基板である第一異相基板と、さらに他の何れか二つの異なる相のコイル同士を電気的に接続する導電部が設けられた一の基板である第二異相基板として機能する。
またさらに、基板271は、U相のコイル、V相のコイルおよびW相のコイルのうちさらに他の同相のコイル同士(この場合、V相のコイル213、216)を電気的に接続する導電部271d1と、U相端子を形成する導電部271d4と、V相端子を形成する導電部271d3と、W相端子を形成する導電部271d2とが設けられた一の基板である端子基板として機能する。
基板273には、V相のコイル(コイル216)の端部をV相端子に近づく方向へ引き回す導電部(導電部273dの一部)が設けられている。
【0082】
なお、スルーホールS51~S63は、
図4(a)~(f)で示したように、貫通孔として形成してもよい。
また、上述した例では、基板231、基板251および基板271は、固定子21の他方側に設けたが、固定子21の一方側に設けてもよい。
【0083】
以上説明した固定子20では、中継基板23を多層基板とし、多層基板による基板内結線とする。これにより、第1コイル211~第6コイル216を、スター結線やデルタ結線とするときに、各コイルの端部を接続する作業の負担が軽減される。そして、中継基板23を実装する際の作業もより容易になる。そして、各基板における導電部も太くしやすい。即ち、複数の基板をまとめようとすると、導電部が重複する部分で、導電部を細くして、それぞれが接触しないようにしなければならない。そして、本実施の形態の基板では、第2層目以降の基板について、順序を入れ換えても配線は、変化しない。そのため、中継基板23の組立ても容易である。
さらに、各コイルの端部を、過度に引き回して接続する必要がなくなる。またさらに、空中で端部を接続する空中配線の必要がなくなる。その結果、端部の断線を抑制できる。
そして、各コイルの端部を曲げることが生じにくく、これにより生じるストレスが低減されるので、端部が断線するのを抑制できる。
【0084】
また、以上説明した固定子20では、中継基板23の最も端部側の基板231等に各コイルの端部を集め、基板231等で半田付け等を行い、各コイルの端部と中継基板23とを電気的に接続する。これにより半田付け等の作業がより容易になる。さらに、空中で接続する空中配線の必要がなくなる。さらに、リード線24も併せて中継基板23に半田付け等をすることができ、リード線24の接続も容易である。
【0085】
(半田付けの方法)
上述したように、基板231、基板251および基板271には、第1コイル211~第6コイル216の端部である、第1巻き始め端部211s~第6巻き始め端部216sおよび第1巻き終わり端部211e~第6巻き終わり端部216eを半田付けする。
この場合、第1コイル211~第6コイル216の端部は、中継基板23の最も端部側に位置する一の基板である基板231、基板251または基板271に集められる。また、基板251や基板271のようにU字形状のスルーホールを有する場合、第1コイル211~第6コイル216の端部のそれぞれは、スルーホールに嵌めこまれ、基板251または基板271に導かれる。そして、基板251や基板271と半田付けにより電気的に接続される。
以下、固定子20の製造方法の中で、このような半田付けを行うときの半田付け方法について説明する。なおここでは、U字状のスルーホールを有する基板251を例にして、説明を行う。
【0086】
まず、第1コイル211~第6コイル216の軸方向の端部側に、中継基板23を装着する(装着工程)。
次に、第1コイル211~第6コイル216の端部を、基板251に半田付けし、電気的に接続する(接続工程)。
【0087】
図10(a)~(d)は、接続工程について説明した図である。
接続工程では、まず、
図10(a)に示すように、各コイルの端部Tを、中継基板23の最も他方側にある基板251に集める。このとき、各コイルの端部Tは、基板251の図中下方から導かれ、基板251の上方に延びる。また、基板251の場合、U字形状のスルーホールSを有すると、第1コイル211~第6コイル216の端部は、基板251のスルーホールSに嵌めこまれ、基板251に導かれる。
【0088】
次に、
図10(b)に示すように、基板251に集めた端部Tを基板251に半田付けする(第1の半田付け工程)。
図10(b)では、半田H1により半田付けをした場合を示している。なお、この半田付けは、仮の半田付けである。これにより、端部Tは、基板251に仮固定される。また、基板251に基板252~256が積層している場合には、溶融した半田H1は、基板251が有するスルーホールSの内面を伝い、基板252~256が有するスルーホールSの内面にも濡れ広がる。
【0089】
さらに、
図10(c)に示すように、第1の半田付け工程により半田付けした半田H1に隣接する箇所で、端部Tを切断する(切断工程)。これにより、断面として、内部の導通部分である芯線410aが露出する。
【0090】
そして、
図10(d)に示すように、切断工程により露出した端部Tの芯線410aと第1の半田付け工程で半田付けした半田H1とをさらに半田付けする(第2の半田付け工程)。これにより、半田H1および芯線410aを覆う半田H2が形成される。その結果、スルーホールSと芯線410aとが、半田H1、H2を介し、電気的に接続する。
【0091】
第1コイル211~第6コイル216の各コイルを形成するワイヤとして、例えば、高速回転用として、リッツ線(撚線)を使用する場合がある。このとき、従来の単層のプリント基板では、リッツ線を半田付けする際に、撚られた複数本の素線の絶縁層を溶かすか、または削るかにより除去しつつリッツ線内部の素線まで確実に予備半田をして導通を確保するのが困難である。またコイル端を円筒出口付近で折り曲げると素線が細いため断線してしまうおそれもある。
【0092】
以上説明した半田付けの方法によれば、第1の工程において、端部Tの仮固定を行う。この段階では、ワイヤの側面の絶縁層が溶融し、芯線410aと半田付けされるが、確実に導通しているとは言えない。そこで、本実施の形態では、切断工程により、各コイルの端部Tを切断することで、断面として、内部の導通部分である芯線410aを露出させる。そして、第2の半田付け工程において、断面の芯線410aに半田付けを行う。これにより、ワイヤは絶縁層のない断面が露出し、断面の芯線410aと仮固定した半田H1を半田付けすることにより、ワイヤとの確実な導通を確保できるようになる。
【0093】
また、以上説明した半田付けの方法によれば、U字状のスルーホールSにワイヤを嵌め込み、ワイヤを直線状の形態のまま半田付けをすることができる。そのため半田付けの際に、各コイルの端部Tを折り曲げて半田付けする必要がなく、断線のおそれが少ない。また、半田付け部のワイヤがバラバラにならず、作業性および導通の信頼性が向上する。
なお、本実施の形態の半田付けの方法は、リッツ線(撚線)のみならず、単線でも適用が可能である。
【0094】
以上、本実施の形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、種々の変更または改良を加えたものも、本発明の技術的範囲に含まれることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0095】
1…ブラシレスモータ、10…回転子、11…回転軸、12…メインマグネット、20…固定子、21…コアレスコイル、23…中継基板。30…ハウジング、50…検出装置、51…磁気センサ、52…センサ基板、60…マグネットユニット、211…第1コイル、212…第2コイル、213…第3コイル、214…第4コイル、215…第5コイル、216…第6コイル、231~236、251~256、271~275…基板、S(S11~S11、S31~S43、S51~S63)…スルーホール、410…マグネットワイヤ