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  • 特開-無縫製男性用下着 図1
  • 特開-無縫製男性用下着 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156680
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】無縫製男性用下着
(51)【国際特許分類】
   A41B 9/02 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
A41B9/02 H
A41B9/02 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060489
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】594149804
【氏名又は名称】カジナイロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鶴見 拓人
(72)【発明者】
【氏名】本近 俊裕
(72)【発明者】
【氏名】井出 圭亮
【テーマコード(参考)】
3B128
【Fターム(参考)】
3B128EA01
3B128EB11
3B128EB31
3B128EC02
3B128EC12
(57)【要約】
【課題】良好なフィット感を有し、かつ、蒸れにくい男性用下着を提供する。
【解決手段】男性用下着100は、無縫製であり、ポリウレタン弾性糸からなる芯糸にポリエチレンテレフタレートなどの糸によってダブルカバリングされた編成用糸で編まれている。男性用下着100は、本体部101と、陰茎と接触する陰茎接触部102と、陰嚢を収容する陰嚢収容部103と、を有する。陰茎接触部102は、本体部101に比べてち密に編まれることで前方に膨らんでいる。陰嚢接触部は、本体部101に比べてち密に編まれることで前方および下方に膨らんでおり、かつ、伸長した際に隙間が生じるように少なくとも一部の編目が他の編目と重なるように編まれている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン弾性糸からなる芯糸にポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリプロピレン、ポリエチレン、レーヨン、キュプラ、アセテートの群より選択される少なくとも一種類以上の糸によってダブルカバリングされた編成用糸で編まれた無縫製男性用下着であって、
本体部と、
陰茎と接触する陰茎接触部と、
陰嚢を収容する陰嚢収容部と、を有し、
前記陰茎接触部は、前記本体部に比べてち密に編まれることで前方に膨らんでおり、
前記陰嚢収容部は、前記本体部に比べてち密に編まれることで前方および下方に膨らんでおり、かつ、伸長した際に隙間が生じるように少なくとも一部の編目が他の編目と重なるように編まれている、無縫製男性用下着。
【請求項2】
前記本体部の下縁に、前記本体部の部位よりも伸縮性が高くち密なめくりあがり防止部が設けられている、請求項1に記載の無縫製男性用下着。
【請求項3】
大腿部付け根と接触する部位に前記本体部の部位よりも伸縮性が高くち密なずり上がり防止部が設けられている、請求項1に記載の無縫製男性用下着。
【請求項4】
前記本体部の後部の上部は、前記本体部の前部の上部よりも上方に長く設計された臀部露出防止部が設けられている、請求項1に記載の無縫製男性用下着。
【請求項5】
前記本体部から取り出した糸の強度が2cN/dtex以上、伸度が30%以上、70%以下である、請求項1に記載の無縫製男性用下着。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無縫製男性用下着に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1などにより、男性用下着が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本国特開2014-114516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の男性用下着は縫製品であり、ごろつきがあったりフィット感に劣るものであった。フィット感の改善を狙った男性用下着は複雑な縫製が入ることが多く、生産性に劣る。また、従来の男性用下着は体の動作によって局部の位置が不安定となるものであった。一方で、局部の位置を固定するような男性用下着は蒸れやすい構造を有していた。
本発明は、良好なフィット感を有し、かつ、蒸れにくい男性用下着を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面に係る男性用下着は、
ポリウレタン弾性糸からなる芯糸にポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリプロピレン、ポリエチレン、レーヨン、キュプラ、アセテートの群より選択される少なくとも一種類以上の糸によってダブルカバリングされた編成用糸で編まれた無縫製男性用下着であって、
本体部と、
陰茎と接触する陰茎接触部と、
陰嚢を収容する陰嚢収容部と、を有し、
前記陰茎接触部は、前記本体部に比べてち密に編まれることで前方に膨らんでおり、
前記陰嚢収容部は、前記本体部に比べてち密に編まれることで前方および下方に膨らんでおり、かつ、伸長した際に隙間が生じるように少なくとも一部の編目が他の編目と重なるように編まれている。
【0006】
本発明によれば、良好なフィット感を有し、かつ、蒸れにくい男性用下着が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態の男性用下着の正面図である。
図2】本実施形態の男性用下着の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。尚、実施形態の説明において既に説明された部材と同一の参照番号を有する部材については、説明の便宜上、その説明は省略する。また、本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。
【0009】
図1は、本実施形態に係る男性用下着100の正面図である。図1に示したように、本実施形態の男性用下着100は男性用ボクサーブリーフである。男性用下着100は、縫製や接着や溶着された部位が全くない無縫製男性用下着100である。この男性用下着100は、立体編み機で作製される。
【0010】
男性用下着100は、ポリウレタン弾性糸からなる芯糸にポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリプロピレン、ポリエチレン、レーヨン、キュプラ、アセテートの群より選択される少なくとも一種類以上の糸によってダブルカバリングされた編成用糸で編まれる。なお、ダブルカバリングされた編成用糸とは、芯糸を延伸したところに、上述した群より選択される少なくとも一種類以上の鞘糸をS方向とZ方向に二重に巻きつけた糸のことを言う。
【0011】
無縫製ではない一般的な合成繊維男性用下着は通常、20ゲージ以上の編機を用いて編まれている。しかしながら、立体編み機では20ゲージに満たない編機が一般的であり、24ゲージ以上の針を有する立体編み機は知られていない。立体編機の中ではハイゲージに分類される15ゲージの針を有する立体編機を用いて、弾性糸を有さない編成用糸ではない、一般的な合成繊維で男性用下着を編んでしまうと、編まれた男性用下着の編目が粗くなり履き心地が低下しまう。そこで本実施形態においては、15ゲージの針を有する立体編み機で、上述した弾性糸を芯糸とし、ダブルカバリングされた編成用糸から男性用下着100を作製する。このようにして編まれた男性用下着100は編んだ後に全体に縮むので、結果的にち密な編目を有することになる。なお、立体編み機で編む際には、縮んだ後に製品のサイズとなるように、実際に製品として提供する予定のサイズより大きな形状で男性用下着100を編んでおく。
【0012】
図1に示したように、男性用下着100は、本体部101と、陰茎接触部102と、陰嚢収容部103を有している。本体部101は陰嚢収容部103と陰茎接触部102以外の全ての部位である。本体部101、陰嚢収容部103と、陰茎接触部102はそれぞれ異なる編地で構成されている。なお、本体部101、陰茎接触部102、陰嚢収容部103はそれぞれ異なる色の編成糸や、それぞれ異なる太さの編成糸や、それぞれ異なる機能の編成糸で編まれていてもよい。
【0013】
陰茎接触部102は、本体部101の前部の左右方向および上下方向の中央に設けられている。陰茎接触部102は、男性用下着100の着用時に着用者の陰茎と接触する部位である。陰茎接触部102は、本体部101に比べて編目がウェール方向またはコース方向にち密に編まれることで前方に膨らんでいる。陰茎接触部102は本体部101よりもウェール方向またはコース方向にち密に編まれていることにより、陰茎が外部から透けて見えることが防止されている。
【0014】
図2は男性用下着100の背面図である。図1および図2に示したように、陰嚢収容部103は、陰茎接触部102の下部から男性用下着100の下部までを占める部位である。陰嚢収容部103は、男性用下着100の着用時に着用者の陰嚢を収容する部位である。陰嚢収容部103は、陰茎接触部102と同様に本体部101よりもち密に編まれることで下方に膨らんでいる。陰嚢収容部103は前方および下方に膨らんでいるので、陰嚢の形状にフィットし、陰嚢を効果的に支持することができる。
なお、陰嚢収容部103はち密に編まれているものの、一部の編目(ループ)が互いに重なり合うように編まれているため、男性用下着100を着用して編地が伸長した際に隙間が生じる。このため、陰嚢収容部103は、ち密に編まれているものの、見かけ上は編目が粗く見える。このように陰嚢収容部103は、編地が伸長した際に隙間が生じるように編まれているため、男性用下着100を着用した際の陰嚢収容部103の通気性が高い。
【0015】
なお、本体部101の編目密度:陰茎接触部102の編目密度:陰嚢収容部103の編目密度は、1:1.1~5:1.1~5とすることができる。より好ましくは、本体部101の編目密度:陰茎接触部102の編目密度:陰嚢収容部103の編目密度は、1:1.5~4:1.5~4である。
【0016】
このような本実施形態の男性用下着100は、弾性糸を芯糸としダブルカバリングされた編成用糸で編まれているため、一般的な縫製で作製された男性用下着に比べて編目がち密であり、伸縮性に富んでいる。また、本実施形態の男性用下着100は無縫製であるため、縫製部分が肌に引っかからず、ごろつき感がない。このため、フィット感が良好であり、履き心地がよい。
さらに無縫製でありながらも、陰嚢収容部103と陰茎接触部102が設けられている。陰茎接触部102は前方に膨らんでいるため、陰茎を圧迫感なく収めることができる。また、陰茎接触部102は本体部101に比べて編目がち密であるため、外部から陰茎が透けて見えることがない。さらに陰嚢収容部103は本体部101より、着用して編地が伸長した際に、開口部が大きくなるよう編まれているため、本体部101よりも通気性が高い。このため、陰嚢が蒸れにくい。
以上の理由により、本実施形態の男性用下着100は、良好なフィット感を有し、かつ、蒸れにくい。
【0017】
なお、本体部101から取り出した糸の強度が糸の強度が2cN/dtex以上、かつ伸度が30%以上、70%以下であることが好ましい。
糸の強度が2cN/dtex未満であると、耐久性に劣る。このため、糸の強度は2cN/dtex以上であることが好ましい。
また、糸の伸度が30%未満であると、伸縮性に劣るものとなり、下着のフィット感が低下する。
糸の伸度が70%超であると、下着の形態安定性が低下し、着用による伸縮を繰り返すことで本来のフィット感が得られなくなる。
このため、糸の伸度は30%以上、70%以下であることが好ましい。
【0018】
なお図1に示したように、本体部101の上縁に周状に、他の本体部101の部位よりも伸縮性の高いち密な編目を有する止め部104が設けられていてもよい。
もっとも、男性用下着100の全体が身体に程よくフィットするため、一般的な男性用下着に比べてずり下がりにくいため、止め部104はなくてもよいが、本体部101上縁部がカールすることを防ぐために縦方向に伸縮性の高いち密な編目を設けていることが好ましい。本体部101上縁のカール防止に加えて、さらにフィット感やずり下がりを防止するために、本体部101とは異なる編成用糸を使用してもよい。すなわち、本体部101よりも伸長後に元に戻ろうとする応力が高くなるように設計した編成用糸を使用することで、腹部にきつく締め付けられるカール防止機能も兼ね備えた止め部104としてもよい。
【0019】
また図1に示したように、本体部101の下縁には、ほかの本体部101の部位よりも縦方向に伸縮性の高いち密な編目を有するめくり上がり防止部105が設けられている。より詳しくは、本体部101の脚部を通す穴を構成する部位の下縁に、めくり上がり防止部105が設けられている。めくり上がり防止部105は、ガーター編みなどで構成することができる。
さらに、大腿部付け根接触部に他の本体部101の部位よりも伸縮性の高いち密な編目を有するずり上がり防止部107が設けられていてもよい。また、このずり上がり防止部107は本体部101とは異なる編成用糸を使用してもよい。すなわち、本体部101よりも伸長後に元に戻ろうとする応力が高くなるように設計した編成用糸を使用することで、大腿部付け根接触部にきつく締め付けられるずり上がり防止部107としてもよい。なお、ずり上がり防止部107とは、男性用下着100の着用時に着用者の大腿部付け根と接触する部位である。なお、ずり上がり防止部107は、所定値以上の幅(上下方向寸法)を備えることが好ましい。また、ずり上がり防止部107の上下方向の幅は全周に亘って一定の幅を有してもよいし、幅が部位によって異なっていてもよい。
【0020】
また図2に示すように、本体部101の後部は、本体部101の前部の上部よりも長くなるように設計されていてもよい。男性が座った際には、男性用下着の後部がずり下がってきて臀部の一部が露出してしまうことがある。本体部101前部の上部よりも本体部101後部の上部が上方向に長くなるように設計された、臀部露出防止部106が設けられていることにより、男性が座った際にも男性用下着100の後部がずり下がって臀部が露出してしまうことが防止されている。
【0021】
以上、本発明の実施形態について説明をしたが、本発明の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではないのは言うまでもない。本実施形態は単なる一例であって、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【0022】
なお男性用下着100は単一の編成用糸で全ての部位が編まれていなくてもよい。例えば陰茎接触部102と他の部位で異なる色、繊度、機能の糸が用いられていてもよい。あるいは本体部101に縞模様が形成されるように本体部101が色の異なる2本以上の糸を用いて編まれていてもよい。
【符号の説明】
【0023】
100 男性用下着
101 本体部
102 陰茎接触部
103 陰嚢収容部
104 止め部
105 めくりあがり防止部
106 臀部露出防止部
107 ずり上がり防止部
図1
図2