(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156691
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】インクミスト回収機構及びインクミスト回収方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/17 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
B41J2/17 203
B41J2/17 103
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060504
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】榎本 悠人
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056EA20
2C056EA27
2C056JC06
2C056JC13
2C056JC17
(57)【要約】
【課題】インクミスト回収機構の維持にかかる作業負担を軽減する。
【解決手段】 インクミスト回収機構20は、インクジェット印刷機構10において前記インクの吐出時に発生するインクミストを含む気体を第1端部201aから吸引し、第2端201bに設けられた導入口から吐出するよう構成される第1配管201と、インクミストを溶解可能な液体205を貯蔵するハウジング210と、ハウジング内に貯留される液体の液面よりも上方に配置された排気口から、ハウジング内の気体を外部に排気する排気部と、を備え、第1配管201の導入口が液体205内に配置される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される媒体にインクを吐出することにより生じるインクミストを回収するインクミスト回収機構であって、
前記インクミストを溶解する液体を貯留するハウジングと、
前記インクミストを吸引する吸引部に接続された第1端部と、前記吸引部によって吸引された前記インクミストを前記ハウジングの内部に導入する導入口が設けられた第2端部を備える第1配管と、
前記ハウジング内に貯留される前記液体の液面よりも上方に配置された排気口から、前記ハウジング内の気体を外部に排気する排気部と、を備え、
前記第1配管の前記導入口は、前記ハウジングに貯留された液体の液中に配置される、インクミスト回収機構。
【請求項2】
請求項1に記載のインクミスト回収機構であって、
前記インクミストの回収動作中、前記第1配管の前記導入口が前記ハウジング内における前記液面とほぼ一致する高さに配置される、
請求項1に記載のインクミスト回収機構。
【請求項3】
請求項1または2に記載のインクミスト回収機構であって、
前記第1配管の前記導入口に取り付けられる多孔体を有し、
前記多孔体を介して前記インクミストを前記液中に導入する、
請求項1または2に記載のインクミスト回収機構。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のインクミスト回収機構であって、
前記ハウジングに接続され、前記ハウジングの外部から前記ハウジング内へ前記液体を供給する液供給機構と、
前記ハウジングに接続され、前記ハウジング内の前記液体を、前記ハウジングの外部に排出する液排出機構と、
前記ハウジング内の前記液体の交換を行うため、前記液供給機構による前記液体の供給と、前記液排出機構による前記液体の排出を制御する制御部と、
を備える、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のインクミスト回収機構。
【請求項5】
請求項4に記載のインクミスト回収機構であって、
前記制御部は、前記液体の交換時、前記液供給機構により前記ハウジング内に前記液体を供給することで前記液体の液面を上昇させた後、
前記液排出機構により前記ハウジング内の前記液体を排出し、
前記液体の排出後、前記液供給機構により前記ハウジング内に前記液体を供給することで、前記ハウジング内の前記液体の交換を行う、請求項4に記載のインクミスト回収機構。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のインクミスト回収機構であって、
前記ハウジングは、前記第1配管の前記導入口から排出され、前記液体内を通過した前記インクミストを含む気体が前記排気部の前記排気口に到達するまでの間に、
少なくとも1回以上、前記気体の進行方向を変更させる迂回部を備える、請求項1から5のいずれか一項に記載のインクミスト回収機構。
【請求項7】
対象物に対してインクを吐出することにより印刷を行うよう構成されたインクジェット印刷機構の、前記インクの吐出時に発生するインクミストを回収するインクミスト回収方法であって、
前記インクミストを含む気体を、第1配管の第1端から吸引する第1工程と、
前記第1配管の前記第1端部から吸引した気体を、前記インクミストを溶解可能な液体を貯蔵するハウジング内の前記液体中に、前記第1配管の第2端部から吐出する第2工程と、
前記ハウジング内の前記液体の液面よりも上方に配置された排気部から前記ハウジング内の気体を前記ハウジング外に排気する第3工程と、
を備えるインクミスト回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷機構による印刷時に発生するインクミストを回収するインクミスト回収機構及びインクミスト回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットヘッドからインクを吐出することにより、対象物の表面に印刷を行うインクジェット印刷機構が知られている。インクジェット印刷機構において、インクジェットヘッドからインクを吐出する際に、インクの微細なミスト(以降、インクミストとも称する)が生じる。このようインクミストが印刷機構の部品等に付着すると、部品の寿命低下を引き起こすおそれもある。そのため、インクジェット印刷機構内からインクミストを含む気体を吸引して回収する技術が提案されている。
【0003】
例えば、下記の特許文献1では、インクジェット印刷において、インクミストを筒状のダクトを有する吸引部により吸引し、ダクト内に設けられたフィルタによりインクミストを回収する機構が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1のような機構では、一般的に繊維状の素材で構成されたフィルタが使用される。このようなフィルタは使用を継続するうちに回収したインクにより繊維の隙間が詰まっていくため、ダクト内に設けたフィルタを定期的に交換する必要がある。そのため、インクミスト回収機構を維持するための作業負担が生じていた。
【0006】
本発明は、インクジェット印刷機構からインクミストを回収する回収機構の維持にかかる作業負担を軽減可能なインクミスト回収機構及びインクミスト回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、搬送される媒体にインクを吐出することにより生じるインクミストを回収するインクミスト回収機構であって、インクミストを溶解する液体を貯留するハウジングと、インクミストを吸引する吸引部に接続された第1端部と、吸引部によって吸引されたインクミストをハウジングの内部に導入する導入口が設けられた第2端部を備える第1配管と、ハウジング内に貯留される液体の液面よりも上方に配置された排気口から、ハウジング内の気体を外部に排気する排気部と、を備え、第1配管の導入口は、ハウジングに貯留された液体の液中に配置される、インクミスト回収機構を提供する。
【0008】
第1の態様によれば、インクジェット印刷機構から吸引したインクミストを、ハウジング内の液体に溶解することによって回収することができる。そのため、インクミスト回収用のフィルタを用いることなくインクミストから回収できる。
【0009】
第1の態様においてさらに、前記インクミストの回収動作中、第1配管の第2端部に設けられた導入口がハウジング内における液面とほぼ一致する高さに配置されていてもよい。
【0010】
上記の構成によれば、第1配管の第2端部に設けられた導入口へかかる液圧を抑えることができるため、第1配管から液体中へ気体を排出させるのに必要な第1配管内部とハウジング内との気圧差を小さくすることができ、装置の作動に要する動力を抑制できる。
【0011】
また、上記第1の態様に係るインクミスト回収機構はさらに、第1配管の導入口に取付けられた多孔体を有し、多孔体を介してインクミストを液中に導入してもよい。
【0012】
上記の構成によれば、第1配管の第2端部から排出される気体は、多孔体を通過することにより細分化されるため、液体内へ微小な気泡となって排出される。そのため、第1管の第2端部に設けられた導入口から排出された気体の液体中での表面積が増加し、また、液体内から液面に浮上するまでに要する時間も増加するため、気体内に含まれるインクミストが液体に溶解しやすくなる。
【0013】
上記第1の態様に係るインクミスト回収機構はさらに、ハウジングに接続され、ハウジングの外部からハウジング内へ液体を供給する液供給機構と、ハウジングに接続され、ハウジング内の液体を、ハウジングの外部に排出する液排出機構と、ハウジング内の液体の交換を行うため、液供給機構による液体の供給と、液排出機構による液体の排出を制御する制御部と、を備える。
【0014】
上記の構成によれば、ハウジング内の液体の交換を自動化して、液体の交換に要する作業負担を軽減することができる。
【0015】
また、上述した構成において、制御部は、液体の交換時、液供給機構によりハウジング内に液体を供給することで液体の液面を上昇させた後、液排出機構によりハウジング内の液体を排出し、液体の排出後、液供給機構によりハウジング内に液体を供給することで、ハウジング内の液体の交換を行ってもよい。
【0016】
上記の構成によれば、ハウジング内の液体交換時に、液面を上昇させることにより、ハウジングの壁面に付着したインクを液体に溶解させて除去することができる。
【0017】
また、上述の第1の態様において、第1配管の導入口から排出され、液体内を通過したインクミストを含む気体が排気部の排気口に到達するまでの間に、少なくとも1回以上、気体の進行方向を変更させる迂回部を備えていてもよい。
【0018】
上記の構成によれば、第1配管の導入口から吐出後に液面から浮上した気体中にインクミストが残存していた場合でも、気体が排出口に到達するまでの間に迂回部表面及びハウジング壁面に残存するインクミストを付着させられるため、第2管に吸引される気体に含まれるインクミストを低減することができる。
【0019】
本発明の第2の態様は、対象物に対してインクを吐出することにより印刷を行うよう構成されたインクジェット印刷機構の、インクの吐出時に発生するインクミストを回収するインクミスト回収方法であって、インクミストを含む気体を、第1配管の第1端から吸引する第1工程と、第1配管の第1端部から吸引した気体を、インクミストを溶解可能な液体を貯蔵するハウジング内の液体中に、第1配管の第2端部から吐出する第2工程と、ハウジング内の液体の液面よりも上方に配置された排気部からハウジング内の気体をハウジング外に排気する第3工程と、を備えるインクミスト回収方法を提供する。
【0020】
第2の態様によれば、インクジェット印刷機構から吸引したインクミストを、ハウジング内の液体に溶解することによって回収することができる。そのため、インクミスト回収用のフィルタを用いることなくインクミストから回収できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、インクジェット印刷機構から吸引したインクミストを回収する回収機構の維持にかかる作業負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態に係るインクミスト回収機構を備えたインクジェット印刷システムを示した概略図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るインクミスト回収機構の構成を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態において、インクミスト回収機構の液体交換動作中の一時点における状態を示す図である。
【
図4】変形例1に係るインクミスト回収機構の構成を示す図である。
【
図5】変形例2に係るインクミスト回収機構の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0024】
<インクジェット印刷システムの構成>
図1は、本発明の一実施形態に係るインクミスト回収機構を備えたインクジェット印刷システム1の構成を示した図である。
図1に示すように、インクジェット印刷システム1は、インクジェット印刷機構10と、インクミスト回収機構20を備える。
【0025】
インクジェット印刷機構10は、帯状の記録媒体である印刷用紙101を搬送しつつ、印刷用紙101に対しインクの液滴を吐出することにより、印刷用紙101の記録面にカラー画像を記録する印刷機構である。
【0026】
インクジェット印刷機構10は、搬送部110、画像記録部120、支持部130、吸引部140、及び印刷制御部150を備えている。印刷制御部150以外の各部は、箱状の筐体160内に収容されている。筐体160の内部は仕切り部160aにより、処理室161と搬送室162に仕切られている。処理室161には、画像記録部120、支持部130、吸引部140、および後述する搬送ローラ112,切替ローラ113が配置されている。搬送室162には、後述する巻き出しユニット111、ニップローラ114、巻き取りユニット115が配置されている。印刷制御部150は、CPU等のプロセッサ、RAMやROM等の記憶装置を含んで構成される。印刷制御部150は、インクジェット印刷機構10の各部の所定の構成部材に対して信号を送ることで、インクジェット印刷機構10の動作を制御するよう構成されている。
【0027】
搬送部110は、印刷用紙101を、印刷用紙101の長手方向に沿って搬送するための機構である。搬送部110は、巻き出しユニット111、複数の搬送ローラ112、切替ローラ113、ニップローラ114、巻き取りユニット115を含む。印刷用紙101は、巻き出しユニット111から繰り出され、複数の搬送ローラ112、切替ローラ113、及びニップローラ114により構成される搬送経路に沿って、巻き取りユニット115まで搬送される。各搬送ローラ112は、各々の軸周りに回転することによって、印刷用紙101を搬送経路に沿って下流側に搬送する。また、搬送後の印刷用紙101は、巻き取りユニット115に回収される。
【0028】
切替ローラ113は、搬送経路における、画像記録部120と対向する位置よりも搬送方向下流側に配置されている。切替ローラ113は、印刷用紙101の裏面(記録面の反対側の面)に接触しつつ、軸周りに回転する。切替ローラ113において、印刷用紙101が、記録面に対して反対の方向へ曲げられる。その結果、印刷用紙101の搬送方向が、第1方向(本実施形態では略水平方向)から、第2方向(本実施形態では鉛直下向き)に切り替えられる。
【0029】
ニップローラ114は、印刷用紙101の記録面及び裏面に接触して印刷用紙101を把持しつつ、印刷制御部150からの信号に基づき一定速度で能動的に回転するよう構成される。また、印刷制御部150は、ニップローラ114の回転速度に応じて巻き出しユニット111の回転速度を制御する。これにより、印刷用紙101に張力が与えられる。これにより、搬送中における印刷用紙101の弛みや皺が抑制される。
【0030】
画像記録部120は、搬送部110により搬送される印刷用紙101に対して、水性顔料インクを吐出する機構である。本実施形態の画像記録部120は、4つの吐出ヘッド121を有する。4つの吐出ヘッド121は、印刷用紙101の移動方向に沿って配列されている。印刷時には、4つの吐出ヘッド121が、制御部150からの信号に基づき、印刷用紙101の記録面へ向けて、カラー画像の色成分となるC(Cyan)、M(Magenta)、Y(Yellow)、K(Black)の各色のインクの液滴を吐出する。これにより、印刷用紙101の記録面にカラー画像が記録される。
【0031】
支持部130は、印刷用紙101の移動方向に沿って配列された複数の支持台131を有する。4つの吐出ヘッド121は、それぞれ、複数の支持台131のうちの1つに取り付けられる。これにより、4つの吐出ヘッド121が支持されるとともに、これらの各部の相互の位置関係が固定される。各支持台131は、その中央に、吐出ヘッド121の下端部が嵌る貫通孔を有する。このため、支持台131に取り付けられた吐出ヘッド121の下面は、支持台131に遮られることなく、印刷用紙101の記録面に対向する。
図1の例では、支持部130は、4つの吐出ヘッド121それぞれを支持する4つの支持台131の他、予備の支持台131を2つ有している。
【0032】
吸引部140は、切替ローラ113を通過する印刷用紙101の記録面の近傍から、インクミストを含む気体を吸引するための機構である。吸引部140は、筒状のダクト142を有する。ダクト142は、印刷用紙101の記録面に向けて開いた吸引口141を有する。吸引口141は、印刷用紙101の幅方向に開口している、また、ダクト142の吸引口141と反対側の端部は、インクミスト回収機構の第1配管201の第1端部201aと連通接続されている。第1配管201によりダクト142内の気体が吸引されることによって、ダクト142内が負圧となり、印刷用紙101の記録面の近傍から、吸引口141を介してダクト142内へ向かう気流が生じる。これにより、印刷用紙101の記録面の近傍から、インクミストを含む気体が吸引される。
【0033】
<インクミスト回収機構20の構成>
次に、インクミスト回収機構20の構成に関して説明する。
【0034】
図1に示すように、インクミスト回収機構20は、第1配管201、第2配管202、ハウジング210、供給部220、排出部230、回収機構制御部240及び吸引ポンプ250を備えている。回収機構制御部240は、CPU等のプロセッサ、RAMやROM等の記憶装置を含んで構成される。インクミスト回収機構20は、第1配管201からインクミストを含む気体を吸引し、ハウジング210内にてインクミストを回収後、第2配管202から気体を排出する。
【0035】
第1配管201及び第2配管202は、例えばゴム製のホースで構成される。
図1に示されるように、第1配管201の一端である第1端部201aが吸引部140のダクト142に接続しており、他端である第2端部201bがハウジング210内に導入されている。また、第2配管202は一端である第1端部202aがハウジング210内に設けられ、他端は大気中に開放されている。第2配管202の途中には、ポンプ250が設けられている。ポンプ250は、回収機構制御部240からの信号に基づき駆動し、第2配管202の一端側(ハウジング210に設けられた第1端部202a側)から他端(大気へ開放される側)に向けた気流を発生させる。
【0036】
ハウジング210は、後述するように、内部にインクを溶解可能な液体205を貯蔵可能である。ハウジング210には、第1配管201、第2配管202、供給部220の供給パイプ221及び排出部230の排出パイプ231が導入される孔部がそれぞれ設けられている。ハウジング210の内部は、第1配管201、第2配管202、供給パイプ221、排出パイプ231を介してのみ外部と連通する。
【0037】
供給部220は、供給パイプ221と、供給パイプ221の途中に設けられた第1バルブ222とを備えている。供給パイプ221は、一端でハウジング210に接続しており、他端で図示しないタンクにつながっている。タンクには、液体205が貯蔵されている。第1バルブ222は電磁弁であり、回収機構制御部240からの信号に基づき開閉する。第1バルブ222が開放されると、タンクからハウジングへ液体205が供給される。
【0038】
排出部230はハウジング210に接続される排出パイプ231と、排出パイプ231中に設けられた第2バルブ232とを備えている。第2バルブ232は電磁弁であり、回収機構制御部240からの信号に基づき開閉する。第2バルブ232が開放されると、ハウジング210内の液体205が排出パイプ231から外部へ排出される。
【0039】
<インクミスト回収時の動作>
図2を参照しつつ、インクミストが回収される際の動作を説明する。
【0040】
図2に示すように、ハウジング210内にはインクを溶解可能な液体205が貯蔵されている。液体205は、水に界面活性剤が添加された溶液であり、インクの洗浄液としても利用可能な液体である。また、液体205は、水の代わりに有機溶剤、もしくは水と有機溶剤の混合液を用いたものでもよい。界面活性剤の例としては、例えばシリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、及びアニオン系界面活性剤等がある。また、有機溶剤の例としては、アルコール類、プロピレングリコール、酢酸エチル,酢酸3-メチルブチル,酢酸プロピル,酢酸イソブチルなどの脂肪酸エステル等があげられる。液体205には、上記に挙げた有機溶剤及び界面活性剤を、インクジェット印刷機構10で用いられるインクに合わせて適宜組み合わせて用いてもよい。
【0041】
第1配管201の第2端部201bは、第1配管201の長手方向に直交する面に沿って広がり、インクミストをハウジング210へ導入する導入口として機能する開口部を有している。第1配管201の第2端部201bは、開口部が液体205中に位置するように配置されている。より詳細には、第1配管201の第2端部201bは、開口部が液体205の液面より下方、かつ液面近傍に配置されている。本実施形態では、第1配管201の第2端部201bは、開口部が液体205の液面の1cm下に位置するよう配置されている。
【0042】
第2配管202の第1端部202aは、ハウジング210の気体中に配置されている。この状態でポンプ250が駆動されると、ハウジング210内の気体が第2配管を通してハウジング201外へ排出される。これにより、ハウジング210内の気圧は処理室161内の気圧よりも低くなるため、第1配管201を通して気体がハウジング210内に排出される。上述したように、第1配管201の第1端部201aは吸引部140のダクト141につながっているため、第1配管201の第2端部201bからは、インクミストを含む気体が排出される。
【0043】
第1配管201の第2端部201bは、液体205の液中に配置されているため、第1配管201の第2端部201bから排出された気体は、液体205内を通ることになる。この際、気体中に含まれるインクミストが、液体205に溶解する。このようにして、インクジェット印刷機構10で発生したインクミストを、回収機構20にて液体205に回収することができる。
【0044】
次に、
図2および
図3を参照しつつ、ハウジング210内の液体205を入れ替える際の動作について説明する。
図2に示すように、インクミストの回収時、ハウジング210内の液体205の量は、ハウジング210の容積の半分、あるいはそれ以下の量である。上記の様に液体205の液位を設定することで、ハウジング210内において、第2配管202の第1端部202aと液体205の液面とをある程度離間させるための空間を確保することができ、インクミスト回収時に第2配管202に液体205が吸引されることを避けることができる。
【0045】
ハウジング210内の液体205を入れ替える際、まず、回収機構制御部240によって、第1バルブ222が開放され、ハウジング210内に供給パイプ221を介して液体205が流入する。そして、液体205の液位はインクミスト回収時の液位よりも高い所定の第1液位まで上昇する。本実施形態では、
図3に示すように、ハウジング210内が液体205によって満ちるまで液体205が供給される。ハウジング210の内壁には、インクミスト回収時に第1配管201から排出された後、液体205に溶解しきれなかったインクミストが付着している場合がある。上記の様に、液体205の液位を上昇させることで、ハウジング210の内壁に付着したインクミストを液体205に溶解させて回収することができる。
【0046】
液体205の液位がインクミスト回収時よりも所定量だけ上昇した後、回収機構制御部240により第1バルブ222が閉じられるとともに、第2バルブ232が開放される。この結果、ハウジング210内の液体205は排出パイプ231から排出される。回収機構制御部240は、ハウジング210内の液体250の液位が所定の第2液位まで下がると、第2バルブ232を閉じる。本実施形態では、第2液位が0に設定されている。すなわち、回収機構制御部240はハウジング210内の液位が0になった後、第2バルブ232を閉じる。なお、液体205の液位が第2液位まで下がったことも、ハウジング210内に液位センサを設けることで判定してもよいし、排出パイプ231に流量計を設けるとともに回収機構制御部240にハウジング210の液位が第1液位から第2液位に下がるまでの液量をあらかじめ記録しておき、排出パイプ231を通って排出された液量を基に回収機構制御部240に判断させてもよい。
【0047】
排出バルブ232を閉じた後、回収機構制御部240は、供給バルブ222を開き、インクミスト回収時の液位となるまで供給パイプ221を介してハウジング210内に液体205が供給された後、供給バルブ222を閉じる。
【0048】
なお、回収機構制御部240は、液体205の液位が所定の液位となったことを、ハウジング210内に設けた液位センサからの信号によって判断してもよい。あるいは、回収機構制御部240は、供給パイプ221及び排出パイプ231に設けられた流量計から信号を受け取るよう構成されるとともに、ハウジング210の液量と液位との関係を示す情報を記憶しており、供給パイプ221からハウジング210に供給された液量、及び、排出パイプ231を通って排出された液量を基にハウジング210内が所定の液位になったことを判断してもよい。
【0049】
<変形例1>
次に、
図4を参照しつつ、上記の実施形態の変形例1について説明する。変形例1は、ハウジング210内に迂回部211が設けられている点で上述の実施形態と異なっており、それ以外の構成及び動作は実施形態と同様である。
【0050】
図4に示すように、迂回部211は、ハウジング210の1つの側壁(以下、第1の側壁と称する)の内面に設けられ、第1の側壁と対向する側壁(以下、第2の側壁と称する)に向かって突出する第1突出壁211aと、第2の側壁から第1の側壁に向かって突出する第2突出壁211bにより構成される。第1突出壁211aと第2突出壁211bとは、第1の側壁と第2の側壁を接続するハウジング210の残りの側壁にそれぞれ、突出方向全域において隙間なく接続している。第1突出壁211aと第2の側壁との間には隙間があり、第2突出壁211bと第1の側壁との間には隙間がある。また、第1突出壁211aと第2突出壁211bは、それぞれ第1配管201が通るための貫通孔を有している。
【0051】
インクミスト回収時、第1配管201の第2端部201bから排出された気体は、液体205の液面から浮上後、第2配管202の第1端部202aに到達するまでの間に、迂回部211により形成される経路を通過する。具体的には、液体205の液面から浮上した気体は、第2突出壁211bと第2側壁との隙間を通過し、第1突出壁211aと第2突出壁211bとの隙間をハウジング210の第2側壁側から第1側壁側まで移動し、第1突出壁211aと第1の側壁の隙間を通過した後、第2配管202の第1端部202aへ向かう。このように、迂回部211により、迂回部211が無い場合に比べて、液体205の液面から浮上した気体が第2配管202に吸引されるまでの間にハウジング210内で移動する経路を長くすることができる。これにより、液体205から浮上した気体中に、液体205に溶解しなかったインクミストが存在していた場合、当該インクミストがハウジング210の内壁及び第1突出壁211aと第2突出壁211bの壁面に付着させる機会を増加させることができ、第2配管202から排出される気体に含まれるインクミストをより低減できる。
【0052】
<変形例2>
次に、
図5を参照しつつ、上記の実施形態の変形例2について説明する。変形例2は、第1配管201の第2端部201bに多孔体203が設けられている点で上述の実施形態と異なっており、それ以外の構成及び動作は実施形態と同様である。
【0053】
多孔体203は、ステンレス金網を積層して構成された、いわゆるワイヤーメッシュである。ワイヤーの間隔は、1mmとなっている。インクミスト回収時、多孔体203は第1配管201の第2端部201bの開口全体を覆うとともに、液体205に全体が沈んでいる。インクミスト回収時に第1配管の第2端部201bから排出される気体は、多孔体203を通ることにより、微小な気泡となって液体205内へ放出される。そのため、多孔体203を設けない場合に比べ、液体205内でインクミストを含む気体と液体205とが接する面積が増加するとともに、液体205内に放出された気体が液面へ浮上するまでの時間を長くすることができる。そのため、気体中に含まれるインクミストがより液体205に溶けやすくなる。なお、多孔体203は、天然繊維や化学繊維からなる布から構成されてもよいし、ポリウレタンフォーム等の発泡ポリマーで構成されてもよい。
【0054】
<その他の変形例>
以上、本発明の実施形態及び変形例1、2について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0055】
例えば、上記実施形態では、第2配管の途中に設けたポンプ250を駆動することにより、第1配管201の第1端部201aから吸引ダクト141内の気体を吸引するとともに第1配管201の第2端部201bからハウジング210内に排出し、第2配管202の第1端部202aからハウジング210内の気体を吸引して第配2管202の第1端部202bから排出した。しかし、ポンプ250の代わりにファンを設けてもよいし、ポンプ250を第2配管202の途中に設けるのと同時に、もしくは代わりに、第1配管201の途中にポンプを設けてもよい。あるいは、吸引ダクト141内に、第1配管201側に向けて気体を送り込むポンプやファンを設けてもよい。このような構成でも、第1配管201の第1端部201aから吸引ダクト141内の気体を吸引するとともに第1配管201の第1端部201bからハウジング210内に排出し、第2配管202の第1端部202aからハウジング210内の気体を吸引して第2管202の第1端部202bから排出することができる。
【0056】
また、上記実施形態では印刷制御部150と回収機構制御部240を別々に設けたが、印刷制御部150と回収機構制御部240の機能が1つの制御部により実行されてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 印刷システム
10 インクジェット印刷機構
20 インクミスト回収機構
101 印刷用紙
110 搬送部
111 巻き出しユニット
112 搬送ローラ
113 切替ローラ
114 ニップローラ
115 巻き取りユニット
120 画像記録部
121 吐出ヘッド
130 支持部
131 支持台
140 吸引部
141 ダクト
1411 吸引口
150 印刷制御部
160 筐体
201 第1配管
202 第2配管
203 多孔体
205 液体
210 ハウジング
211 迂回部
211a 第1突出壁
211b 第2突出壁
220 供給部
221 供給パイプ
222 第1バルブ
230 排出部
231 排出パイプ
232 第2バルブ
240 回収機構制御部
250 ポンプ