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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156701
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】高純度メタンの製造方法および装置
(51)【国際特許分類】
   C07C 7/12 20060101AFI20221006BHJP
   C07C 9/04 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
C07C7/12
C07C9/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060520
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000126115
【氏名又は名称】エア・ウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109472
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 直之
(72)【発明者】
【氏名】西井 菜々子
(72)【発明者】
【氏名】貝川 貴紀
(72)【発明者】
【氏名】末長 純也
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AA04
4H006AB44
4H006AD17
(57)【要約】
【課題】エネルギー消費を少なくして高純度のメタンを生成する高純度メタンの製造方法を提供する。
【解決手段】液化天然ガスを原料として高純度メタンを製造する方法であって、吸着剤が充填された吸着容器を天然ガスの液化温度まで冷却する冷却工程と、上記冷却された吸着容器に液化天然ガスを導入して上記液化天然ガス中の不純分を液相中で上記吸着剤に吸着させることにより高純度の液化メタンを得る吸着工程と、上記吸着工程後の吸着容器に液化温度より高温の再生ガスを導入して上記吸着剤から上記不純分を気相中で離脱させて上記吸着剤を再生する再生工程を、順次繰り返して行う。蒸留分離ではなく吸着分離によるため、凝縮器や蒸発器が不要で、それらによるエネルギー消費がない。また、不純分を液相中で吸着させ、吸着剤の再生を液化温度より高温の再生ガスで行うため、吸着剤の再生にヒーターやスチームなどの熱が不要である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化天然ガスを原料として高純度メタンを製造する方法であって、
吸着剤が充填された吸着容器を天然ガスの液化温度まで冷却する冷却工程と、
上記冷却された吸着容器に液化天然ガスを導入して上記液化天然ガス中の不純分を液相中で上記吸着剤に吸着させることにより高純度の液化メタンを得る吸着工程と、
上記吸着工程後の吸着容器に液化温度より高温の再生ガスを導入して上記吸着剤から上記不純分を気相中で離脱させて上記吸着剤を再生する再生工程を、順次繰り返して行う
ことを特徴とする高純度メタンの製造方法。
【請求項2】
上記吸着容器を複数準備し、上記冷却工程、上記吸着工程、上記再生工程を、上記吸着容器において交番的に行う
請求項1記載の高純度メタンの製造方法。
【請求項3】
上記吸着容器内において、上記液化天然ガスが上記吸着工程中に液相となる液相部と、上記液化天然ガスが上記吸着工程中に気相となる気相部を設け、上記吸着剤の少なくとも一部を上記液相部に存在させている
請求項1または2記載の高純度メタンの製造方法。
【請求項4】
上記吸着工程後、上記再生工程の前に、
上記吸着容器内の上記液相部から液体を抜く脱液工程を行う
請求項3記載の高純度メタンの製造方法。
【請求項5】
上記再生工程後に行う上記冷却工程において、
上記吸着工程で得られた上記液化メタンを上記吸着容器に導入することにより上記吸着容器を冷却する
請求項1~4のいずれか一項に記載の高純度メタンの製造方法。
【請求項6】
上記再生工程後に行う上記冷却工程において、
上記吸着容器内の上記液相部に対して上記液化メタンを導入し、上記吸着容器および配管から上記再生ガスをパージする
請求項3~5のいずれか一項に記載の高純度メタンの製造方法。
【請求項7】
液化天然ガスを原料として高純度メタンを製造する装置であって、
吸着剤が充填された吸着容器と、
上記吸着容器を天然ガスの液化温度まで冷却する冷却手段と、
上記冷却された吸着容器に液化天然ガスを導入して上記液化天然ガス中の不純分を液相中で上記吸着剤に吸着させることにより高純度の液化メタンを得る吸着手段と、
上記吸着手段による吸着工程後の上記吸着容器に液化温度より高温の再生ガスを導入して上記吸着剤から上記不純分を気相中で離脱させて上記吸着剤を再生する再生手段とを備えた
ことを特徴とする高純度メタンの製造装置。
【請求項8】
上記吸着容器を複数有し、上記冷却手段による冷却工程、上記吸着手段による吸着工程、上記再生手段による再生工程が、上記吸着容器において交番的に行われるように構成されている
請求項7記載の高純度メタンの製造装置。
【請求項9】
上記吸着容器内において、上記液化天然ガスが上記吸着手段による吸着工程中に液相となる液相部と、上記液化天然ガスが上記吸着工程中に気相となる気相部が設けられ、上記吸着剤の少なくとも一部が上記液相部に存在している
請求項7または8記載の高純度メタンの製造装置。
【請求項10】
上記吸着容器内の上記液相部から液体を抜く脱液手段を備え、
上記吸着工程後、上記再生工程の前に、上記脱液手段による脱液工程が行われるように構成されている
請求項9記載の高純度メタンの製造装置。
【請求項11】
上記冷却手段は、上記再生手段による再生工程後に行う冷却工程において、
上記吸着手段で得られた上記液化メタンを上記吸着容器に導入することにより上記吸着容器を冷却する
請求項7~10のいずれか一項に記載の高純度メタンの製造装置。
【請求項12】
上記吸着容器内の上記液相部に対して上記液化メタンを導入し、上記吸着容器および配管から上記再生ガスをパージするパージ手段を備え、上記再生工程後に行う上記冷却工程において上記パージ手段によるパージを工程行うように構成されている
請求項9~11のいずれか一項に記載の高純度メタンの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化天然ガスを原料として高純度のメタンを得る高純度メタンの製造方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
精製されたメタンガスは燃料、半導体、カーボン素材原料等に利用されている。高濃度メタンガスの原料としては天然ガスが主に用いられている。このような天然ガス、および天然ガスを原料として製造される都市ガス(13A,12A等)は、メタンを主成分とし、エタン,プロパン,ブタンおよびイソブタンなどの軽質炭化水素が含まれる。例えば、日本国内の油田(新潟,秋田等)から産出される天然ガスの成分は、メタン約85~92%,エタン約4~7%,プロパン約1~4%,ブタンおよびイソブタン約1%である。
【0003】
高純度メタンに対するニーズはこれまであまり多くはなかったが、宇宙開発などの進歩に伴って今後ニーズが増加すると考えられ、効率よく高純度のメタンを生成する技術への期待が高まっている。
【0004】
このような、天然ガスからメタンを精製する技術に関する先行技術文献として、出願人は下記の特許文献1~2を把握している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-024489号公報
【特許文献2】特表2014-509557号公報
【0006】
上記特許文献1は、蒸留分離により天然ガスから高濃度のメタンを得る技術に関するものである。
上記特許文献1には、つぎの記載がある。
〔0012〕
本発明の目的は、運転の容易性や信頼性を損なわずに、省エネルギーかつ低コストで液化天然ガスからエタン等の炭化水素を分離できる方法および装置を提供することである。
〔0013〕
本発明により、
a)原料液化天然ガスを第一の蒸留塔において蒸留し、メタンが富化された留分と、メタンより重い成分が富化された留分とに分離する工程;
b)該メタンより重い成分が富化された留分を第二の蒸留塔において蒸留し、エタンが富化された留分と、エタンより重い成分が富化された留分とに分離する工程;
c)第一の蒸留塔に供給する原料液化天然ガスもしくは第一の蒸留塔の内部液体の冷熱を、熱移動媒体によって回収する工程;および、
d)第二の蒸留塔の塔頂ガスを、該冷熱を回収した熱移動媒体により冷却して、該第二の蒸留塔の塔頂ガスの少なくとも一部を凝縮させる工程
を有する液化天然ガスからの炭化水素の分離方法が提供される。
【0007】
上記特許文献2は、常温以上の温度域において吸着剤を用いる温度スイング方式により、天然ガスから高濃度のメタンを得る技術に関するものである。
上記特許文献2には、つぎの記載がある。
〔0065〕
本明細書の図1は、上記のPTSA法の工程の概略図である。管路10を介して、本発明のスイング吸着法ユニットAに送られる天然ガスの流れを、このスイング吸着法ユニット内の吸着床の原料投入端部に流れ込むようにモデル化した。供給ガスを、吸着床の供給入口から生成物出口端部へと、吸着フロントを介して吸着床を通って流れるようにモデル化した。本明細書に記載されるスイング吸着法ユニットは、吸着されたガス成分が脱離され得、吸着床が高温で再生され得るように、吸着工程中に高圧で操作されるようにモデル化された組合せ圧力/温度スイング吸着(PTSA)法ユニットであった。既に記載されるように、吸着床の使用される吸着剤材料を、メタンと比べてC2+炭化水素の吸着を優先するようにモデル化した。吸着を、2bara~200baraの第1の圧力および20℃~150℃の第1の温度でモデル化した。吸着工程中、C2+炭化水素が減少されたメタン富化生成物流を、吸着床の生成物出口端部を出て、管路12を介して、パイプライン圧力まで圧縮するために圧縮機P1へと送られ、管路14を介して出るようにモデル化した。
〔0066〕
吸着工程を停止し、次に、この場合、一連の平衡化排出工程によって、供給ガスの流れに対して並流で、吸着工程の圧力より低い第2の圧力になるまで、吸着床を減圧した。この第2の圧力は、約1bara~約2baraの範囲であった。排出された流出物、この場合、実質的に純粋なメタンは、管路16を介して容器から出て、一部を、管路17を介してパージガスとして後の段階で使用するために圧縮機P2に送ることによって加圧され、ここで、それは、加熱/脱離工程中および/または加熱/脱離工程後に向流で吸着床を通して搬送された。排出された流出物の一部を、任意に、必要に応じて吸着床を再加圧するために、管路18を介して(好ましくは圧縮機P3を通して)搬送することができた。
〔0067〕
排出工程の後、床の生成物端部を密閉し、入口段部を開放したままの状態で吸着床を外部加熱し、約1バールの圧力に維持して、吸着剤からの吸着されたC2+炭化水素の少なくとも一部の脱離を行い、それを、好ましくは、管路18を介して生成ガスによって提供されるパージガスの向流を用いて床から除去した。脱離されたC2+炭化水素流を、管路20を介して、吸着床の供給端部から回収処理ユニットRへと送り、回収処理ユニットRにおいて、この場合、分別、特に低温蒸留によってそれを分離して、C、C、およびC4+の個々の高純度の流れを得た。微量のC生成物を、任意に、回収処理ユニットRにおいて回収し、管路22を介して、圧縮機P4(必要に応じて)に、さらに圧縮機P1に送り、任意に、吸着ユニットから直接得られたメタン富化生成物流12を用いて、パイプライン圧力になるまで圧縮し、パイプラインへと搬送することができた。それに加えてまたはその代わりに、C2、C3、およびC4+として示されるC、C、およびC4+流れを、輸送、販売、および/またはさらなる処理のために、回収処理ユニットRを介して生成物流として収集することができた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1は、液化天然ガスからC2以上の炭化水素を蒸留によって分離除去する技術である。このような蒸留分離には、凝縮器や蒸発器といった設備が不可欠である。また、これら凝縮器や蒸発器が大量の温冷熱を必要とする。したがって、上記凝縮器や蒸発器で使用する温冷熱のエネルギー消費が大きいという問題がある。また、原料とする液化天然ガスの組成変動の影響を受けて純度不良が生じやすいという問題もある。
【0009】
上記特許文献2は、天然ガス中の不純分を吸着床で吸着して高濃度のメタンを得る技術である。吸着床への不純分の吸着を常温の気相で行い、吸着床の再生を100~300℃の高温の気相で行う。したがって、上記再生工程に必用な熱を供給するため、電気ヒーターやスチームヒータなどを設備しなければならない。また、その設備で発熱させるためのエネルギーを供給しなければならず、特許文献1と同様に、エネルギー消費が大きいという問題がある。
【0010】
〔目的〕
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、つぎの目的をもってなされたものである。
エネルギー消費を少なくして高純度のメタンを生成する高純度メタンの製造方法および装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1記載の高純度メタンの製造方法は、上記目的を達成するため、つぎの構成を採用した。
液化天然ガスを原料として高純度メタンを製造する方法であって、
吸着剤が充填された吸着容器を天然ガスの液化温度まで冷却する冷却工程と、
上記冷却された吸着容器に液化天然ガスを導入して上記液化天然ガス中の不純分を液相中で上記吸着剤に吸着させることにより高純度の液化メタンを得る吸着工程と、
上記吸着工程後の吸着容器に液化温度より高温の再生ガスを導入して上記吸着剤から上記不純分を気相中で離脱させて上記吸着剤を再生する再生工程を、順次繰り返して行う。
【0012】
請求項2記載の高純度メタンの製造方法は、請求項1記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記吸着容器を複数準備し、上記冷却工程、上記吸着工程、上記再生工程を、上記吸着容器において交番的に行う。
【0013】
請求項3記載の高純度メタンの製造方法は、請求項1または2記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記吸着容器内において、上記液化天然ガスが上記吸着工程中に液相となる液相部と、上記液化天然ガスが上記吸着工程中に気相となる気相部を設け、上記吸着剤の少なくとも一部を上記液相部に存在させている。
【0014】
請求項4記載の高純度メタンの製造方法は、請求項3記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記吸着工程後、上記再生工程の前に、
上記吸着容器内の上記液相部から液体を抜く脱液工程を行う。
【0015】
請求項5記載の高純度メタンの製造方法は、請求項1~4のいずれか一項に記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記再生工程後に行う上記冷却工程において、
上記吸着工程で得られた上記液化メタンを上記吸着容器に導入することにより上記吸着容器を冷却する。
【0016】
請求項6記載の高純度メタンの製造方法は、請求項3~5のいずれか一項に記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記再生工程後に行う上記冷却工程において、
上記吸着容器内の上記液相部に対して上記液化メタンを導入し、上記吸着容器および配管から上記再生ガスをパージする。
【0017】
請求項7記載の高純度メタンの製造装置は、上記目的を達成するため、つぎの構成を採用した。
液化天然ガスを原料として高純度メタンを製造する装置であって、
吸着剤が充填された吸着容器と、
上記吸着容器を天然ガスの液化温度まで冷却する冷却手段と、
上記冷却された吸着容器に液化天然ガスを導入して上記液化天然ガス中の不純分を液相中で上記吸着剤に吸着させることにより高純度の液化メタンを得る吸着手段と、
上記吸着手段による吸着工程後の上記吸着容器に液化温度より高温の再生ガスを導入して上記吸着剤から上記不純分を気相中で離脱させて上記吸着剤を再生する再生手段とを備えた。
【0018】
請求項8記載の高純度メタンの製造装置は、請求項7記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記吸着容器を複数有し、上記冷却手段による冷却工程、上記吸着手段による吸着工程、上記再生手段による再生工程が、上記吸着容器において交番的に行われるように構成されている。
【0019】
請求項9記載の高純度メタンの製造装置は、請求項8記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記吸着容器内において、上記液化天然ガスが上記吸着手段による吸着工程中に液相となる液相部と、上記液化天然ガスが上記吸着工程中に気相となる気相部が設けられ、上記吸着剤の少なくとも一部が上記液相部に存在している。
【0020】
請求項10記載の高純度メタンの製造装置は、請求項9記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記吸着容器内の上記液相部から液体を抜く脱液手段を備え、
上記吸着工程後、上記再生工程の前に、上記脱液手段による脱液工程が行われるように構成されている。
【0021】
請求項11記載の高純度メタンの製造装置は、請求項7~10のいずれか一項に記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記冷却手段は、上記再生手段による再生工程後に行う冷却工程において、
上記吸着手段で得られた上記液化メタンを上記吸着容器に導入することにより上記吸着容器を冷却する。
【0022】
請求項12記載の高純度メタンの製造装置は、請求項9~11のいずれか一項に記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記吸着容器内の上記液相部に対して上記液化メタンを導入し、上記吸着容器および配管から上記再生ガスをパージするパージ手段を備え、上記再生工程後に行う上記冷却工程において上記パージ手段によるパージ工程を行うように構成されている。
【発明の効果】
【0023】
請求項1記載の高純度メタンの製造方法は、液化天然ガスを原料として高純度メタンを製造する方法であり、冷却工程と吸着工程と再生工程を、順次繰り返して行う。上記冷却工程は、吸着剤が充填された吸着容器を天然ガスの液化温度まで冷却する。上記吸着工程は、上記冷却された吸着容器に液化天然ガスを導入して上記液化天然ガス中の不純分を液相中で上記吸着剤に吸着させることにより高純度の液化メタンを得る。上記再生工程は、上記吸着工程後の吸着容器に液化温度より高温の再生ガスを導入して上記吸着剤から上記不純分を気相中で離脱させて上記吸着剤を再生する。
このように、蒸留分離ではなく吸着分離によって液化天然ガスから高純度メタンを得るため、凝縮器や蒸発器のような設備が不要で、それらによるエネルギー消費がない。また、吸着剤が充填された吸着容器を天然ガスの液化温度まで冷却し、液化天然ガスから不純分を液相中で吸着剤に吸着させる。また、吸着剤の再生は、液化温度より高温の再生ガスを吸着容器に導入して気相中で上記吸着剤を再生する。したがって、吸着剤の再生にヒーターやスチームなどの熱が不要で、そのエネルギー消費がない。また、蒸留分離のように、液化天然ガス原料の組成変動の影響による純度不良が生じにくい。このように、エネルギー消費を少なくして高純度のメタンを生成することができる。
【0024】
請求項2記載の高純度メタンの製造方法は、上記冷却工程、上記吸着工程、上記再生工程を、複数の吸着容器において交番的に行う。このため、いずれかの吸着容器で吸着工程を実施して高純度メタンを生成し、他の吸着容器では再生工程と冷却工程を行い、常に高純度メタンを生成できる。
【0025】
請求項3記載の高純度メタンの製造方法は、上記吸着容器内において液相部と気相部を設ける。上記液相部は、上記液化天然ガスが上記吸着工程中に液相となる。上記気相部は、上記液化天然ガスが上記吸着工程中に気相となる。そして、上記吸着剤の少なくとも一部を上記液相部に存在させる。これにより、上記液相部で液化天然ガスから不純分を吸着剤に吸着させる。また、上記気相部に発生する圧力を、液相部からの液の送出に寄与させることができる。
【0026】
請求項4記載の高純度メタンの製造方法は、上記吸着工程後、上記再生工程の前に、脱液工程を行う。上記脱液工程は、上記吸着容器内の上記液相部から液体を抜く。上記脱液によりスムーズに、上記再生工程に移行できる。
【0027】
請求項5記載の高純度メタンの製造方法は、上記再生工程後に行う上記冷却工程において、上記吸着工程で得られた上記液化メタンを上記吸着容器に導入することにより上記吸着容器を冷却する。このように、上記吸着工程で得られた上記液化メタンを、上記再生工程後に行う上記冷却工程において利用することにより、冷却に要する設備やエネルギーを省くことができる。
【0028】
請求項6記載の高純度メタンの製造方法は、上記再生工程後に行う上記冷却工程において、上記吸着容器内の上記液相部に対して上記液化メタンを導入し、上記吸着容器および配管から上記再生ガスをパージする。このように、上記液化メタンによって再生ガスをパージすることにより、分離した不純分の再混入を防止できる。
【0029】
請求項7記載の高純度メタンの製造装置は、液化天然ガスを原料として高純度メタンを製造する装置であり、吸着容器と冷却手段と吸着手段と再生手段とを備えている。上記吸着容器は、吸着剤が充填されている。上記冷却手段は、上記吸着容器を天然ガスの液化温度まで冷却する。上記吸着手段は、上記冷却された吸着容器に液化天然ガスを導入して上記液化天然ガス中の不純分を液相中で上記吸着剤に吸着させることにより高純度の液化メタンを得る。上記再生手段は、上記吸着手段による吸着工程後の上記吸着容器に液化温度より高温の再生ガスを導入して上記吸着剤から上記不純分を気相中で離脱させて上記吸着剤を再生する。
このように、蒸留分離ではなく吸着分離によって液化天然ガスから高純度メタンを得るため、凝縮器や蒸発器のような設備が不要で、それらによるエネルギー消費がない。また、吸着剤が充填された吸着容器を天然ガスの液化温度まで冷却し、液化天然ガスから不純分を液相中で吸着剤に吸着させる。また、吸着剤の再生は、液化温度より高温の再生ガスを吸着容器に導入して気相中で上記吸着剤を再生する。したがって、吸着剤の再生にヒーターやスチームなどの熱が不要で、そのエネルギー消費がない。また、蒸留分離のように、液化天然ガス原料の組成変動の影響による純度不良が生じにくい。このように、エネルギー消費を少なくして高純度のメタンを生成することができる。
【0030】
請求項8記載の高純度メタンの製造装置は、上記吸着容器を複数有する。そして、上記冷却手段による冷却工程、上記吸着手段による吸着工程、上記再生手段による再生工程が、上記複数の吸着容器において交番的に行われる。このため、いずれかの吸着容器で吸着工程を実施して高純度メタンを生成し、他の吸着容器では再生工程と冷却工程を行い、常に高純度メタンを生成できる。
【0031】
請求項9記載の高純度メタンの製造装置は、上記吸着容器内において液相部と気相部が設けられる。上記液相部は、上記液化天然ガスが上記吸着工程中に液相となる。上記気相部は、上記液化天然ガスが上記吸着工程中に気相となる。そして、上記吸着剤の少なくとも一部を上記液相部に存在させる。これにより、上記液相部で液化天然ガスから不純分を吸着剤に吸着させる。また、上記気相部に発生する圧力を、液相部からの液の送出に寄与させることができる。
【0032】
請求項10記載の高純度メタンの製造装置は、上記吸着容器内の上記液相部から液体を抜く脱液手段を備える。上記脱液手段による脱液工程が、上記吸着工程後、上記再生工程の前に行われる。上記脱液によりスムーズに、上記再生工程に移行できる。
【0033】
請求項11記載の高純度メタンの製造装置は、上記冷却手段は、上記吸着手段で得られた上記液化メタンを上記吸着容器に導入することにより、上記再生手段による再生工程後に行う冷却工程において上記吸着容器を冷却する。このように、上記吸着工程で得られた上記液化メタンを、上記再生工程後に行う上記冷却工程において利用することにより、冷却に要する設備やエネルギーを省くことができる。
【0034】
請求項12記載の高純度メタンの製造装置は、上記吸着容器内の上記液相部に対して上記液化メタンを導入し、上記吸着容器および配管から上記再生ガスをパージするパージ手段を備える。そして、上記再生工程後に行う上記冷却工程において上記パージ手段によるパージ工程を行う。このように、上記液化メタンによって再生ガスをパージすることにより、分離した不純分の再混入を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の高純度メタンの製造装置の一実施形態を示す構成図である。
図2】本発明の高純度メタンの製造方法の一実施形態を説明する工程図である。
図3】段階1Aを示す図である。
図4】段階1Bを示す図である。
図5】段階1Cを示す図である。
図6】段階1Dを示す図である。
図7】段階1Eを示す図である。
図8】段階1Fを示す図である。
図9】段階1Gを示す図である。
図10】段階1Hを示す図である。
図11】段階T1を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
つぎに、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0037】
〔全体構成〕
図1は本発明の高純度メタンの製造装置の一実施形態を示す構成図である。図示したものは一例である。本実施形態の高純度メタンの製造装置は、液化天然ガスを原料とし、液相での吸着分離により不純分を除去することにより、高純度メタンを得るものである。この装置により、本発明の高純度メタンの製造方法を実現することができる。
【0038】
本実施形態の装置は、原料貯留槽10,第1吸着容器20Aおよび第2吸着容器20B、製品メタン貯留槽30、再生ガス貯留槽40を備えている。上記原料貯留槽10,第1吸着容器20Aおよび第2吸着容器20B、製品メタン貯留槽30、再生ガス貯留槽40に接続された配管および弁等の構造体により、本発明の吸着手段、減圧手段、脱液手段、再生手段、パージ手段、冷却手段として機能し、それぞれにより本発明の吸着工程、減圧工程、脱液工程、再生工程、パージ工程、冷却工程を実現する。
【0039】
本実施形態は、複数の吸着容器(図示した例では第1吸着容器20Aと第2吸着容器20Bの2つ)を有し、上記冷却手段により冷却工程を、上記吸着手段により吸着工程を、上記再生手段により再生工程を、上記減圧手段により減圧工程を、上記脱液手段により脱液工程を、上記パージ手段によりパージ工程を実現する。これらの工程が、上記第1吸着容器20Aと第2吸着容器20Bにおいて交番的に行われるように構成されている。
【0040】
〔原料貯留槽10〕
上記原料貯留槽10は、上記第1吸着容器20Aと第2吸着容器20Bに導入される原料である液化天然ガスを貯留する。
【0041】
上記液化天然ガスは、天然に産する化石燃料としての天然ガスをその液化温度である-162℃以下に冷却して液体にしたものである。天然ガスは主成分であるメタンの他にもエタン、プロパン、ブタンなどのガスが含まれており、液化の過程でこれらのガスも同時に液化されるため、液化天然ガスも、元となる天然ガスの産地によってこれらの炭化水素の構成比に違いがある。
【0042】
本発明は、上記液化天然ガスを原料として高純度メタンを製造する技術であり、メタン以外のエタン、プロパン、ブタンなどを不純分として説明する。
【0043】
〔第1吸着容器20Aと第2吸着容器20B〕
第1吸着容器20Aと第2吸着容器20Bには、それぞれ吸着剤21A,21Bが充填されている。
【0044】
上記吸着剤21A,21Bとしては、たとえば、ゼオライト、活性炭、有機金属錯体等を用いることができる。本発明において「吸着剤」とは、上述したゼオライト、活性炭、有機金属錯体等からなる粒状物の集合体である。
【0045】
本発明では、吸着剤21A,21Bが充填された上記第1吸着容器20A・第2吸着容器20Bを天然ガスの液化温度以下に冷却する。そこに上記液化天然ガスを導入して上記吸着剤21A,21Bに接触させ、メタン以外の不純分を液相中で上記吸着剤21A,21Bに吸着させて分離する。そして、上記不純分が分離された高純度メタンを得て上記第1吸着容器20A・第2吸着容器20Bから取り出すことが行われる。
【0046】
上述したように、この例では、第1吸着容器20Aと第2吸着容器20Bにおいて、上記吸着手段による吸着工程と、上記減圧手段による減圧工程、上記脱液手段による脱液工程、上記再生手段による再生工程、上記パージ手段によるパージ工程、上記冷却手段による冷却工程とを、交番的に行う。具体的には、第1吸着容器20Aが吸着工程を行っているあいだ、第2吸着容器20Bにおいて、減圧工程、脱液工程、再生工程、パージ工程、冷却工程を行う。反対に、上記第2吸着容器20Bが吸着工程を行っているあいだ、上記第1吸着容器20Aにおいて、減圧工程、脱液工程、再生工程、パージ工程、冷却工程を行う。
【0047】
〔吸着工程と吸着手段〕
第1吸着容器20Aにおける吸着工程では、原料貯留槽10の液化天然ガスを、原料路11および原料弁11V、第1導入路12Aおよび第1導入弁12AVを経由して第1吸着容器20Aの下部に導入する。吸着剤21Aにより不純分が吸着分離された製品メタンが、第1液出路23Aおよび第1液出弁23AV、製品メタン導入路31および製品メタン導入弁31Vを経由して製品メタン貯留槽30に導入される。
第2吸着容器20Bにおける吸着工程では、原料貯留槽10の液化天然ガスを、原料路11および原料弁11V、第2導入路12Bおよび第2導入弁12BVを経由して第2吸着容器20Bの下部に導入する。吸着剤21Bにより不純分が吸着分離された製品メタンが、第2液出路23Bおよび第2液出弁23BV、製品メタン導入路31および製品メタン導入弁31Vを経由して製品メタン貯留槽30に導入される。
このとき動作し機能する配管や弁等の機器類が本発明の吸着手段として機能し、上記冷却された吸着容器に液化天然ガスを導入して上記液化天然ガス中の不純分を液相中で上記吸着剤に吸着させることにより高純度の液化メタンを得ることが行われる。
【0048】
〔液相部と気相部〕
上記吸着工程が行われている第1吸着容器20A内において、上記液化天然ガスが上記吸着手段による吸着工程中に液相となる液相部と、上記液化天然ガスが上記吸着工程中に気相となる気相部が設けられている。上記吸着剤21Aの少なくとも一部は、上記液相部に存在している。具体的には、上記吸着工程が行われている第1吸着容器20A内の上部に気相部ができ、上記吸着剤21Aの存在する下部が液相となるよう、第1吸着容器20A内の温度と圧力を所定の範囲に保つことによって実現する。第2吸着容器20Bにおいても同様である。
【0049】
〔減圧工程と減圧手段〕
第1吸着容器20Aにおける第1減圧工程では、第1吸着容器20Aの気相部に存在するガスを、第1排気路25Aおよび第1排気弁25AVを経由して排出し、第1吸着容器20A内を減圧する。また、後述する脱液工程の後に行う第2減圧工程では、第1吸着容器20A内に残存するガスを、下排出路27および第1下排出弁27AVを経由して排出し、第1吸着容器20A内を減圧する。
第2吸着容器20Bにおける第1減圧工程では、第2吸着容器20Bの気相部に存在するガスを、第2排気路25Bおよび第2排気弁25BVを経由して排出し、第2吸着容器20B内を減圧する。また、後述する脱液工程の後に行う第2減圧工程では、第2吸着容器20B内に残存するガスを、下排出路27および第2下排出弁27BVを経由して排出し、第2吸着容器20B内を減圧する。
このとき動作し機能する配管や弁等の機器類が本発明の減圧手段として機能し、上記吸着容器内の上記気相部からガスを抜いて上記吸着容器内を減圧する。上記吸着手段による吸着工程後、上記再生手段による再生工程の前に、上記減圧手段による減圧工程が行われる。
【0050】
〔脱液工程と脱液手段〕
第1吸着容器20Aにおける脱液工程では、第1吸着容器20Aの液相部に存在する液体を、下排出路27および第1下排出弁27AVを経由して排出し、第1吸着容器20A内を脱液する。
第2吸着容器20Bにおける脱液工程では、第2吸着容器20Bの液相部に存在する液体を、下排出路27および第2下排出弁27BVを経由して排出し、第2吸着容器20B内を脱液する。
このとき動作し機能する配管や弁等の機器類が本発明の脱液手段として機能し、上記吸着容器内の上記液相部から液体を抜き、上記吸着工程後、上記再生工程の前に、上記脱液手段による脱液工程が行われる。
【0051】
〔再生工程と再生手段〕
第1吸着容器20Aにおける再生工程では、再生ガス貯留槽40に貯留された再生ガスを、再生ガス導入路41、第1上部流通路24Aおよび第1上部流通弁24AVを介して第1吸着容器20Aの上部に導入する。吸着剤21Aの不純分を離脱させた再生ガスは、下排出路27および第1下排出弁27AVを介して排出される。
第2吸着容器20Bにおける再生工程では、再生ガス貯留槽40に貯留された再生ガスを、再生ガス導入路41、第2上部流通路24Bおよび第2上部流通弁24BVを介して第2吸着容器20Bの上部に導入する。吸着剤21Bの不純分を離脱させた再生ガスは、下排出路27および第2下排出弁27BVを介して排出される。
このとき動作し機能する配管や弁等の機器類が本発明の再生手段として機能し、上記吸着手段による吸着工程後の上記吸着容器に液化温度より高温の再生ガスを導入して上記吸着剤から上記不純分を気相中で離脱させて上記吸着剤を再生する。
上記再生ガスとしては、たとえば窒素ガス等の不活性ガスやメタンガスを使用することができ、その温度は常温にすることができる。
【0052】
〔パージ工程とパージ手段、冷却工程と冷却手段〕
第1吸着容器20Aにおけるパージ工程では、製品メタン貯留槽30の製品メタンを、冷却路32、液溜路28および第1液溜弁28AV、第1下部流通路22Aを経由して第1吸着容器20Aの下部に導入する。また、第1吸着容器20A内に残存する再生ガスを、第1排気路25Aおよび第1排気弁25AVを経由してパージする。このパージ工程の過程で第1吸着容器20A内が冷却され、パージ工程は冷却工程を兼ねている。
第2吸着容器20Bにおけるパージ工程では、製品メタン貯留槽30の製品メタンを、冷却路32、液溜路28および第2液溜弁28BV、第2下部流通路22Bを経由して第2吸着容器20Bの下部に導入する。また、第2吸着容器20B内に残存する再生ガスを、第2排気路25Bおよび第2排気弁25BVを経由してパージする。このパージ工程の過程で第2吸着容器20B内が冷却され、パージ工程は冷却工程を兼ねている。
このとき動作し機能する配管や弁等の機器類が本発明のパージ手段および冷却手段として機能する。上記冷却手段は、上記再生手段による再生工程後に行う冷却工程において、上記吸着手段で得られた上記液化メタンを上記吸着容器に導入することにより上記吸着容器を冷却する。この冷却工程では、上記吸着容器20A,20Bを天然ガスの液化温度まで冷却する。同時に、上記吸着容器内の上記液相部に対して上記液化メタンを導入し、上記吸着容器および配管から上記再生ガスをパージする。このように、上記再生工程後に行う冷却工程において上記パージ手段によるパージ工程が行われる。
上記第1排気弁25AVおよび第2排気弁25BVは圧力調整弁であり、その設定により、パージ工程中の第1吸着容器20Aおよび第2吸着容器20B内の圧力を調整することができる。
【0053】
〔配管冷却工程と配管冷却手段〕
第1吸着容器20Aにおける配管冷却工程では、第1吸着容器20A内に満たされた液化メタンを第1液出路23A、第1上排出弁26AVおよび上排出路26を経由して排出し、配管を冷却する。
第2吸着容器20Bにおける配管冷却工程では、第2吸着容器20B内に満たされた液化メタンを第2液出路23B、第2上排出弁26BVおよび上排出路26を経由して排出し、配管を冷却する。
このとき動作し機能する配管や弁等の機器類が配管冷却手段として機能する。
【0054】
符号29Aは第1圧力計29Aであり、第1吸着容器20A内の圧力を検知する。
符号29Bは第2圧力計29Bであり、第2吸着容器20B内の圧力を検知する。
【0055】
〔工程の説明〕
図2は、本発明の高純度メタンの製造方法の一実施形態を示す工程図である。
【0056】
第1吸着容器20Aと第2吸着容器20Bを使用し、段階1A、段階1B、段階1C、段階1D、段階1E、段階1F、段階1G、段階1H、段階T1、段階2A、段階2B、段階2C、段階2D、段階2E、段階2F、段階2G、段階2H、段階T2を、順次行い、以下はそれを繰り返す。
【0057】
段階1A~1Hでは、第1吸着容器20Aが吸着工程を行い、そのあいだ、第2吸着容器20Bで第1減圧、脱液、第2減圧、再生、加圧待機、パージ/冷却、昇圧、配管冷却の各工程を順次行う。
【0058】
段階1Aは、第1吸着容器20Aで吸着工程を行い、第2吸着容器20Bで第1減圧工程を行う。
段階1Bは、第1吸着容器20Aで吸着工程を行い、第2吸着容器20Bで脱液工程を行う。
段階1Cは、第1吸着容器20Aで吸着工程を行い、第2吸着容器20Bで第2減圧工程を行う。
段階1Dは、第1吸着容器20Aで吸着工程を行い、第2吸着容器20Bで再生工程を行う。
段階1Eは、第1吸着容器20Aで吸着工程を行い、第2吸着容器20Bで加圧待機工程を行う。
段階1Fは、第1吸着容器20Aで吸着工程を行い、第2吸着容器20Bでパージ/冷却工程を行う。
段階1Gは、第1吸着容器20Aで吸着工程を行い、第2吸着容器20Bで昇圧工程を行う。
段階1Hは、第1吸着容器20Aで吸着工程を行い、第2吸着容器20Bで配管冷却工程を行う。
【0059】
段階T1は、第1吸着容器20Aと第2吸着容器20Bの双方で吸着工程を行う。
【0060】
段階2A~2Hでは、第2吸着容器20Bが吸着工程を行い、そのあいだ、第1吸着容器20Aで第1減圧、脱液、第2減圧、再生、加圧待機、パージ/冷却、昇圧、配管冷却の各工程を順次行う。
【0061】
段階2Aは、第2吸着容器20Bで吸着工程を行い、第1吸着容器20Aで第1減圧工程を行う。
段階2Bは、第2吸着容器20Bで吸着工程を行い、第1吸着容器20Aで脱液工程を行う。
段階2Cは、第2吸着容器20Bで吸着工程を行い、第1吸着容器20Aで第2減圧工程を行う。
段階2Dは、第2吸着容器20Bで吸着工程を行い、第1吸着容器20Aで再生工程を行う。
段階2Eは、第2吸着容器20Bで吸着工程を行い、第1吸着容器20Aで加圧待機工程を行う。
段階2Fは、第2吸着容器20Bで吸着工程を行い、第1吸着容器20Aでパージ/冷却工程を行う。
段階2Gは、第2吸着容器20Bで吸着工程を行い、第1吸着容器20Aで昇圧工程を行う。
段階2Hは、第2吸着容器20Bで吸着工程を行い、第1吸着容器20Aで配管冷却工程を行う。
【0062】
段階T2は、第1吸着容器20Aと第2吸着容器20Bの双方で吸着工程を行う。
【0063】
図3図11において、段階1A、段階1B、段階1C、段階1D、段階1E、段階1F、段階1G、段階1H、段階T1、それぞれにおける液体とガスの流れを説明する。特筆しない限り、液体またはガスが流れている配管を太線で示しており、その配管では弁が開いている。同様に、液体またはガスが流れていない配管を細線で示しており、その配管では弁が閉じている。
【0064】
図3は、段階1Aを示す図である。
段階1Aでは、第1吸着容器20Aで吸着工程を行い、第2吸着容器20Bで第1減圧工程を行う。
【0065】
第1吸着容器20Aでの吸着工程は、原料貯留槽10の液化天然ガスを、原料路11および原料弁11V、第1導入路12Aおよび第1導入弁12AVを経由して第1吸着容器20Aの下部に導入される。導入された液化天然ガスを吸着剤21Aに接触させて、液相中で不純分を吸着剤21Aに吸着させる。これにより、不純分が吸着分離された製品メタンが得られる。上記製品メタンを、第1液出路23Aおよび第1液出弁23AV、製品メタン導入路31および製品メタン導入弁31Vを経由して製品メタン貯留槽30に導入することが行われる。吸着工程での第1吸着容器20A内の圧力は、たとえば0.40MPaG程度に設定することができる。
【0066】
第2吸着容器20Bでの第1減圧工程は、それまで吸着工程が行われていた第2吸着容器20B内を減圧する。第2吸着容器20Bの気相部に存在するガスを、第2排気路25Bおよび第2排気弁25BVを経由して排出し、第2吸着容器20B内を減圧する。第1減圧工程により、吸着工程でたとえば0.40MPaG程度であった第2吸着容器20B内の圧力は、たとえば0.20MPaG程度まで減圧することができる。
【0067】
図4は、段階1Bを示す図である。
段階1Bは、第1吸着容器20Aで吸着工程を行い、第2吸着容器20Bで脱液工程を行う。第1吸着容器20Aの吸着工程は、段階1Aと同様である。
第2吸着容器20Bでの脱液工程は、上記第1減圧工程後に第2吸着容器20Bの液相部に存在する液体を、下排出路27および第2下排出弁27BVを経由して排出し、第2吸着容器20B内を脱液する。脱液工程後の第2吸着容器20B内の圧力は、たとえば0.20MPaG程度である。
【0068】
図5は、段階1Cを示す図である。
段階1Cは、第1吸着容器20Aで吸着工程を行い、第2吸着容器20Bで第2減圧工程を行う。第1吸着容器20Aの吸着工程は、段階1Aと同様である。
第2吸着容器20Bでの第2減圧工程は、上記脱液工程後に第2吸着容器20B内に残存するガスを、下排出路27および第2下排出弁27BVを経由して排出し、第2吸着容器20B内を減圧する。第2減圧工程後の第2吸着容器20B内の圧力は、たとえば0.20MPaG以下である。
【0069】
図6は、段階1Dを示す図である。
段階1Dは、第1吸着容器20Aで吸着工程を行い、第2吸着容器20Bで再生工程を行う。第1吸着容器20Aの吸着工程は、段階1Aと同様である。
第2吸着容器20Bでの再生工程は、上記第2減圧工程後の第2吸着容器20Bの上部に対し、再生ガス貯留槽40に貯留された再生ガスを、再生ガス導入路41、第2上部流通路24Bおよび第2上部流通弁24BVを介して導入する。再生ガスの導入により、第2吸着容器20B内は常温まで加温され、吸着剤21Bに吸着されていた不純分が離脱する。離脱させた不純分を含む再生ガスは、下排出路27および第2下排出弁27BVを介して排出される。再生工程中の第2吸着容器20B内の圧力は、大気圧(0MPaG)である。
【0070】
図7は、段階1Eを示す図である。
段階1Eは、第1吸着容器20Aで吸着工程を行い、第2吸着容器20Bで加圧待機工程を行う。第1吸着容器20Aの吸着工程は、段階1Aと同様である。
第2吸着容器20Bでの加圧待機工程は、第2上部流通弁24BVを閉じて第2吸着容器20Bへの再生ガスの導入を停止するとともに、第2下排出弁27BVを閉じて第2吸着容器20Bからの再生ガスの排出を停止する。
【0071】
図8は、段階1Fを示す図である。
段階1Fは、第1吸着容器20Aで吸着工程を行い、第2吸着容器20Bでパージ/冷却工程を行う。第1吸着容器20Aの吸着工程は、段階1Aと同様である。
第2吸着容器20Bでのパージ/冷却工程は、製品メタン貯留槽30の製品メタンを、冷却路32、液溜路28および第2液溜弁28BV、第2下部流通路22Bを経由して第2吸着容器20Bの下部に導入する。製品メタンの導入により第2吸着容器20B内が天然ガスの液化温度まで冷却され、徐々に第2吸着容器20B内に液化天然ガスが溜まる。また、第2吸着容器20Bおよび配管内に残存する再生ガスを、第2排気路25Bおよび第2排気弁25BVを経由してパージする。このパージ工程により、上記第2吸着容器20Bと第2下部流通路22B内がパージされる。パージ/冷却工程中の第2吸着容器20B内の圧力は、第2排気弁25BVの設定により、たとえば0.20MPaG程度にすることができる。
【0072】
図9は、段階1Gを示す図である。
段階1Gは、第1吸着容器20Aで吸着工程を行い、第2吸着容器20Bで昇圧工程を行う。第1吸着容器20Aの吸着工程は、段階1Aと同様である。
第2吸着容器20Bでの昇圧工程は、第2排気弁25BVの設定値を変えることにより、パージ/冷却工程後の第2吸着容器20B内を昇圧する。昇圧工程により、第2吸着容器20B内は、たとえば0.40MPaG程度まで上昇させることができる。
このとき、液溜路28と冷却路32内に残っている液を排液路33と排液弁33Vから排出する。
【0073】
図10は、段階1Hを示す図である。
段階1Hは、第1吸着容器20Aで吸着工程を行い、第2吸着容器20Bで配管冷却工程を行う。第1吸着容器20Aの吸着工程は、段階1Aと同様である。
第2吸着容器20Bでの配管冷却工程は、第2吸着容器20B内に満たされた液化メタンを第2液出路23B、第2上排出弁26BVおよび上排出路26を経由して排出し、配管を冷却する。このとき第2吸着容器20B内の圧力は、たとえば0.40MPaG程度である。
【0074】
図11は、段階T1を示す図である。
段階T1は、第1吸着容器20Aと第2吸着容器20Bの双方で吸着工程を行う。
第1吸着容器20Aの吸着工程は、段階1Aと同様である。
第2吸着容器20Bの吸着工程は、原料貯留槽10の液化天然ガスを、原料路11および原料弁11V、第2導入路12Bおよび第2導入弁12BVを経由して第2吸着容器20Bの下部に導入する。吸着剤21Bにより不純分が吸着分離された製品メタンが、第2液出路23Bおよび第2液出弁23BV、製品メタン導入路31および製品メタン導入弁31Vを経由して製品メタン貯留槽30に導入される。
【0075】
段階2A、段階2B、段階2C、段階2D、段階2E、段階2F、段階2G、段階2H、段階T2は、それぞれ段階1A、段階1B、段階1C、段階1D、段階1E、段階1F、段階1G、段階1H、段階T1と左右を入れ替えた運転を行う。左右が異なる以外は同様であるので、説明を省略する。
【0076】
〔実施形態の効果〕
上記実施形態で説明した装置および方法は、以下の作用効果を奏する。
【0077】
本実施形態は、液化天然ガスを原料として高純度メタンを製造する方法であり、冷却工程と吸着工程と再生工程を、順次繰り返して行う。上記冷却工程は、吸着剤が充填された吸着容器を天然ガスの液化温度まで冷却する。上記吸着工程は、上記冷却された吸着容器に液化天然ガスを導入して上記液化天然ガス中の不純分を液相中で上記吸着剤に吸着させることにより高純度の液化メタンを得る。上記再生工程は、上記吸着工程後の吸着容器に常温の再生ガスを導入して上記吸着剤から上記不純分を気相中で離脱させて上記吸着剤を再生する。
このように、蒸留分離ではなく吸着分離によって液化天然ガスから高純度メタンを得るため、凝縮器や蒸発器のような設備が不要で、それらによるエネルギー消費がない。また、吸着剤が充填された吸着容器を天然ガスの液化温度まで冷却し、液化天然ガスから不純分を液相中で吸着剤に吸着させる。また、吸着剤の再生は、常温の再生ガスを吸着容器に導入して気相中で上記吸着剤を再生する。したがって、吸着剤の再生にヒーターやスチームなどの熱が不要で、そのエネルギー消費がない。また、蒸留分離のように、液化天然ガス原料の組成変動の影響による純度不良が生じにくい。このように、エネルギー消費を少なくして高純度のメタンを生成することができる。
【0078】
本実施形態は、上記冷却工程、上記吸着工程、上記再生工程を、複数の吸着容器において交番的に行う。このため、いずれかの吸着容器で吸着工程を実施して高純度メタンを生成し、他の吸着容器では再生工程と冷却工程を行い、常に高純度メタンを生成できる。
【0079】
本実施形態は、上記吸着容器内において液相部と気相部を設ける。上記液相部は、上記液化天然ガスが上記吸着工程中に液相となる。上記気相部は、上記液化天然ガスが上記吸着工程中に気相となる。そして、上記吸着剤の少なくとも一部を上記液相部に存在させる。これにより、上記液相部で液化天然ガスから不純分を吸着剤に吸着させる。また、上記気相部に発生する圧力を、液相部からの液の送出に寄与させることができる。
【0080】
本実施形態は、上記吸着工程後、上記再生工程の前に、脱液工程を行う。上記脱液工程は、上記吸着容器内の上記液相部から液体を抜く。上記脱液によりスムーズに、上記再生工程に移行できる。
【0081】
本実施形態は、上記再生工程後に行う上記冷却工程において、上記吸着工程で得られた上記液化メタンを上記吸着容器に導入することにより上記吸着容器を冷却する。このように、上記吸着工程で得られた上記液化メタンを、上記再生工程後に行う上記冷却工程において利用することにより、冷却に要する設備やエネルギーを省くことができる。
【0082】
本実施形態は、上記再生工程後に行う上記冷却工程において、上記吸着容器内の上記液相部に対して上記液化メタンを導入し、上記吸着容器および配管から上記再生ガスをパージする。このように、上記液化メタンによって再生ガスをパージすることにより、分離した不純分の再混入を防止できる。
【0083】
◆まとめ
本実施形態では、液化天然ガスを液体のまま吸着容器に導入し、吸着剤にC2+の炭化水素を吸着させることで容器頂部より液化メタンを得る。吸着工程において容器内は-162℃程度の低温であり、再生工程において例えば約30℃程度の常温まで容器内を昇温することで吸着剤に吸着されたC2+の炭化水素を吸着剤から離脱させる。第1吸着容器と第2吸着容器で吸着工程と再生工程を交番的に繰り返すことにより、連続的に液化メタンを得る。
【0084】
吸着工程において、吸着容器内は液化天然ガスの温度となり-162℃である。再生工程では、常温の窒素ガスを吸着容器内に導入し、吸着容器内の温度を0℃以上まで昇温する。吸着容器内が加温されることで、吸着剤に吸着した炭化水素が離脱され、ふたたび炭化水素を吸着しうる状態に再生できる。
【0085】
パージ/冷却工程において、液化天然ガスを使用して吸着容器内の冷却を行う。このときガス化した天然ガスは、コジェネ設備で燃料として利用することができる。
【0086】
特許文献1のような蒸留分離では、凝縮器で冷熱、蒸発器で温熱が必要となり、消費エネルギーが大きい。特許文献2では、常温⇔高温の温度スイングで吸着分離しているため、高温の熱源が必要となる。
これに対し、本発明は、低温⇔常温の温度スイングで吸着分離するものであり、低温の原料LNGをそのまま吸着容器に導入してC2+炭化水素を吸着し、常温の窒素ガスで脱離(再生)させる。このため、熱源が不要である。また、特許文献1に示されるような蒸留分離は、原料LNGの組成変動の影響を受けやすいが、吸着分離では影響を受けにくい。
【0087】
〔変形例〕
以上は本発明の特に好ましい実施形態について説明したが、本発明は図示した実施形態に限定する趣旨ではなく、各種の態様に変形して実施することができ、本発明は各種の変形例を包含する趣旨である。
【符号の説明】
【0088】
10:原料貯留槽
11:原料路
11V:原料弁
12A:第1導入路
12AV:第1導入弁
12B:第2導入路
12BV:第2導入弁
20A:第1吸着容器
20B:第2吸着容器
21A:吸着剤
21B:吸着剤
22A:第1下部流通路
22B:第2下部流通路
23A:第1液出路
23AV:第1液出弁
23B:第2液出路
23BV:第2液出弁
24A:第1上部流通路
24AV:第1上部流通弁
24B:第2上部流通路
24BV:第2上部流通弁
25A:第1排気路
25AV:第1排気弁
25B:第2排気路
25BV:第2排気弁
26:上排出路
26AV:第1上排出弁
26BV:第2上排出弁
27:下排出路
27AV:第1下排出弁
27BV:第2下排出弁
28:液溜路
28AV:第1液溜弁
28BV:第2液溜弁
29A:第1圧力計
29B:第2圧力計
30:製品メタン貯留槽
31:製品メタン導入路
31A:製品メタン導入弁
32:冷却路
33:排液路
33V:排液弁
40:再生ガス貯留槽
41:再生ガス導入路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11