(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156715
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】容器入り軟質食品
(51)【国際特許分類】
A23L 3/00 20060101AFI20221006BHJP
A23L 7/10 20160101ALI20221006BHJP
A23L 35/00 20160101ALI20221006BHJP
B65D 25/20 20060101ALN20221006BHJP
【FI】
A23L3/00 101Z
A23L7/10 Z
A23L35/00
A23L7/10 B
B65D25/20 Q
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060543
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000208455
【氏名又は名称】大和製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 良成
(72)【発明者】
【氏名】馬鳥 裕史
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】小柳 朋彦
(72)【発明者】
【氏名】相澤 貴志
(72)【発明者】
【氏名】王 欣
【テーマコード(参考)】
3E062
4B021
4B023
4B036
【Fターム(参考)】
3E062AA03
3E062AB01
3E062AB07
3E062DA02
4B021LA07
4B021LA25
4B021LW09
4B021MC10
4B021MQ01
4B023LC05
4B023LC08
4B023LE19
4B023LG01
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4B023LL01
4B023LP19
4B036LC04
4B036LE02
4B036LF15
4B036LH22
4B036LK01
4B036LP19
(57)【要約】
【課題】喫食の介助への負担を軽減可能とする容器入り軟質食品を提供する。
【解決手段】本発明の容器入り軟質食品1は、開口を有する容器本体11と、第1軟質食品121からなるか、又は、前記第1軟質食品121と第1調味液122とからなり、前記容器本体11に収容された第1食品12と、前記開口を塞いだ蓋体13とを備え、前記第1食品12の体積V1と前記容器本体11の容積V2との比V1/V2は0.7以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有する容器本体と、
第1軟質食品からなるか、又は、前記第1軟質食品と第1調味液とからなり、前記容器本体に収容された第1食品と、
前記開口を塞いだ蓋体と
を備え、
前記第1食品の体積V1と前記容器本体の容積V2との比V1/V2は0.7以下である容器入り軟質食品。
【請求項2】
前記比V1/V2は0.4以上である請求項1に記載の容器入り軟質食品。
【請求項3】
前記第1軟質食品は5×104N/m2以下の硬さを有する請求項1又は2に記載の容器入り軟質食品。
【請求項4】
前記第1食品は前記第1軟質食品と前記第1調味液とからなり、前記第1調味液は、0.5乃至20.0Pa・sの粘度を有する請求項1乃至3の何れか1項に記載の容器入り軟質食品。
【請求項5】
前記容器本体の側壁部には、前記容器入り軟質食品を、前記開口が前記容器本体の底部の上方に位置し且つ前記底部が水平になるように置いた場合に、前記第1食品の上面と前記開口との間に位置するインジケータが設けられた請求項1乃至4の何れか1項に記載の容器入り軟質食品。
【請求項6】
前記インジケータは、前記底部に対して平行な方向に伸びた線状部を含んだ請求項5に記載の容器入り軟質食品。
【請求項7】
前記容器本体の側壁部には、前記第1食品を収容した前記容器本体内へ第2食品を投入する際に、前記第2食品の投入量の目安となるインジケータが設けられた請求項1乃至4の何れか1項に記載の容器入り軟質食品。
【請求項8】
請求項7に記載の容器入り軟質食品と、
前記第2食品の種類、前記インジケータによって示される前記第2食品の投入量、及び、投入される前記第2食品の熱量若しくは成分量又はこの熱量若しくは成分量と前記第1食品の熱量若しくは成分量との合計の関係を示す参照表と
を備えた参照表付き容器入り軟質食品。
【請求項9】
請求項1乃至7の何れか1項に記載の容器入り軟質食品と、
容器と、前記容器に収容された第2食品とを備えた容器入り食品と
を備えた食品セット。
【請求項10】
前記第2食品は、5×104N/m2以下の硬さを有する第2軟質食品からなるか、0.5乃至10.0Pa・sの粘度を有する第2調味液からなるか、又は、前記第2軟質食品及び前記第2調味液からなる請求項9に記載の食品セット。
【請求項11】
前記第2食品は粥である請求項9又は10に記載の食品セット。
【請求項12】
前記第2食品は豆腐を含んだ請求項9又は10に記載の食品セット。
【請求項13】
請求項7に記載の容器入り軟質食品と、
容器と、前記容器に収容された前記第2食品とを備えた容器入り食品と、
前記インジケータによって示される前記第2食品の投入量、及び、投入される前記第2食品の熱量若しくは成分量又はこの熱量若しくは成分量と前記第1食品の熱量若しくは成分量との合計の関係を示す参照表と
を備えた参照表付き食品セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器入り軟質食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、咀嚼や嚥下が困難な高齢者等向けの介護用食品として、軟質食品が流通している。軟質食品は、例えば、固形食品をすり潰し、所望の形状に固めて再形成したものである。このような軟質食品は、軟らかくて飲み込み易い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の軟質食品の一部は、調味液とともにカップ状の容器本体に収容し、容器本体の開口を蓋で塞いだ容器入り軟質食品の形態で流通している。そのような軟質食品及び調味液は、容器本体から皿などの別の容器へ移して喫食に供することもできるし、これを収容している容器本体を食器として使用して喫食に供することもできる。
【0005】
上記の容器入り軟質食品を利用する現場では、介助者が、匙で軟質食品等を掬い取り、喫食者の口内へ導くなどの介助を行うことがある。この場合、介助者は、喫食者に対して、例えば、軟質食品及び調味液からなる主菜又は副菜と、粥などの主食とを、交互に喫食せしめるか、又は、混合して喫食せしめることが多い。
【0006】
前者の場合、主菜又は副菜のための1以上の容器と、主食のための容器とを使用する必要があるため、介助者の負担は大きい。また、後者の場合も、主菜又は副菜と主食とを混合するための容器が必要になるため、介助者の負担は大きい。
【0007】
本発明は、喫食の介助への負担を軽減可能とする容器入り軟質食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面によると、開口を有する容器本体と、第1軟質食品からなるか、又は、前記第1軟質食品と第1調味液とからなり、前記容器本体に収容された第1食品と、前記開口を塞いだ蓋体とを備え、前記第1食品の体積V1と前記容器本体の容積V2との比V1/V2は0.7以下である容器入り軟質食品が提供される。
【0009】
本発明の他の側面によると、前記比V1/V2は0.4以上である上記側面に係る容器入り軟質食品が提供される。
【0010】
本発明の更に他の側面によると、前記第1軟質食品は5×105N/m2以下の硬さを有する上記側面の何れかに係る容器入り軟質食品が提供される。
【0011】
本発明の更に他の側面によると、前記第1食品は前記第1軟質食品と前記第1調味液とからなり、前記第1調味液は、0.5乃至20.0Pa・sの粘度を有する上記側面の何れかに係る容器入り軟質食品が提供される。
【0012】
本発明の更に他の側面によると、前記容器本体の側壁部には、前記容器入り軟質食品を、前記開口が前記容器本体の底部の上方に位置し且つ前記底部が水平になるように置いた場合に、前記第1食品の上面と前記開口との間に位置するインジケータが設けられた上記側面の何れかに係る容器入り軟質食品が提供される。
【0013】
本発明の更に他の側面によると、前記インジケータは、前記底部に対して平行な方向に伸びた線状部を含んだ上記側面に係る容器入り軟質食品が提供される。
【0014】
本発明の更に他の側面によると、前記容器本体の側壁部には、前記第1食品を収容した前記容器本体内へ第2食品を投入する際に、前記第2食品の投入量の目安となるインジケータが設けられた上記側面の何れかに係る容器入り軟質食品が提供される。
【0015】
本発明の更に他の側面によると、上記側面に係る容器入り軟質食品と、前記第2食品の種類、前記インジケータによって示される前記第2食品の投入量、及び、投入される前記第2食品の熱量若しくは成分量又はこの熱量若しくは成分量と前記第1食品の熱量若しくは成分量との合計の関係を示す参照表とを備えた参照表付き容器入り軟質食品が提供される。
【0016】
本発明の更に他の側面によると、上記側面の何れかに係る容器入り軟質食品と、容器と、前記容器に収容された第2食品とを備えた容器入り食品とを備えた食品セットが提供される。
【0017】
本発明の更に他の側面によると、前記第2食品は、5×104N/m2以下の硬さを有する第2軟質食品からなるか、0.5乃至10.0Pa・sの粘度を有する第2調味液からなるか、又は、前記第2軟質食品及び前記第2調味液からなる上記側面に係る食品セットが提供される。
【0018】
本発明の更に他の側面によると、前記第2食品は粥である上記側面の何れかに係る食品セットが提供される。
【0019】
或いは、本発明の更に他の側面によると、前記第2食品は豆腐を含んだ上記側面の何れかに係る食品セットが提供される。
【0020】
本発明の更に他の側面によると、上記側面に係る容器入り軟質食品と、容器と、前記容器に収容された前記第2食品とを備えた容器入り食品と、前記インジケータによって示される前記第2食品の投入量、及び、投入される前記第2食品の熱量若しくは成分量又はこの熱量若しくは成分量と前記第1食品の熱量若しくは成分量との合計の関係を示す参照表とを備えた参照表付き食品セットが提供される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、喫食の介助への負担を軽減可能とする容器入り軟質食品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る容器入り軟質食品を概略的に示す断面図。
【
図2】
図2は、
図1に示す容器入り軟質食品が含んでいる容器本体を概略的に示す上面図。
【
図3】
図3は、
図2に示す容器本体のIII-III線に沿った断面図。
【
図4】
図1に示す容器入り軟質食品と組み合わせて流通させることが可能な容器入り食品の一例を示す平面図。
【
図5】
図1に示す容器入り軟質食品の使用形態の一例を概略的に示す断面図。
【
図6】
図1に示す容器入り軟質食品の使用形態の他の例を概略的に示す断面図。
【
図7】
図1に示す容器入り軟質食品の使用形態の更に他の例を概略的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、同様又は類似した機能を有する要素については、同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係る容器入り軟質食品を概略的に示す断面図である。
図2は、
図1に示す容器入り軟質食品が含んでいる容器本体を概略的に示す上面図である。
図3は、
図2に示す容器本体のIII-III線に沿った断面図である。
【0025】
図1に示す容器入り軟質食品1は、容器本体11と、第1食品12と、蓋体13とを含んでいる。なお、
図1では、容器入り軟質食品1は、容器本体11の開口が後述する底部111の上方に位置し且つ底部111が水平になるように置いた状態にある。
【0026】
容器入り軟質食品1は、好ましくは、冷凍なしで保存することが可能な、より好ましくは、常温保存が可能な容器入り食品である。容器入り軟質食品1は、例えば、第1食品12の喫食の際に、容器本体11に収容した第1食品12を、マイクロ波加熱するか、過熱水蒸気によって加熱するものであるか、又は湯煎によって加熱するものである。容器入り軟質食品1は、第1食品12を加熱なしで喫食するものであってもよい。
【0027】
後で詳述するように、この容器入り軟質食品1は、第1食品12の喫食に際して、容器本体11を食器として使用可能である。また、この容器入り軟質食品1は、第1食品12を収容した容器本体11内へ、第1食品12とは異なる第2食品を投入可能である。
【0028】
容器本体11は、開口を有している。容器本体11は、ここではカップ形状を有している。容器本体11は、ボウル形状及びボートトレイ形状などの他の形状を有していてもよい。
【0029】
容器本体11は、例えば、成形品である。容器本体11は、例えば、第1食品12の充填前後で形状を保持する形状保持性を有している。
【0030】
容器本体11は、例えば、プラスチックからなる。容器本体11の材質は、金属、ガラス、セラミック、又は防水加工された紙であってもよい。容器本体11は、その内面に、無機物又は有機物からなる1以上の層を含んでいてもよい。容器本体11は、その外面に、印刷層やこれを保護する保護層を含んでいてもよい。第1食品12を、容器本体11に入れたままマイクロ波加熱する場合には、容器本体11は金属層を含まないことが好ましい。
【0031】
容器本体11は、一例によれば、不透明である。容器本体11は、透明な部分を含んでいてもよい。容器本体11が透明な部分を含んでいる場合、後述するインジケータ114a及び114bは、例えば、容器本体11の外面であって透明な部分が設けられた位置に設けることができる。
【0032】
容器本体11は、
図1乃至
図3に示すように、底部111と、側壁部112と、フランジ部113とを含んでいる。
【0033】
底部111は、中央部が容器本体11の開口側に突き出た円板形状を有している。底部111の中央部は、開口側に突き出ていなくてもよい。また、底部111は、その厚さ方向から見た形状が、楕円形、長円形、並びに、正方形及び矩形などの多角形などの、円形以外の形状であってもよい。底部111の厚さ方向から見た形状が多角形である場合、各角は丸めることが好ましい。
【0034】
側壁部112は、底部111の縁から上方に伸びている。側壁部112の上端は、容器本体11の開口を形成している。側壁部112と底部111とによって囲まれた空間は、底部111から開口へ向けて拡径している。この空間は、底部111から開口まで径がほぼ一定であってもよい。
【0035】
側壁部112には、インジケータ114a及び114bが設けられている。インジケータ114a及び114bは、第1食品12を収容した容器本体11内へ後述する第2食品を投入する際に、第2食品の投入量の目安となるものである。
【0036】
インジケータ114a及び114bは、容器入り軟質食品1を
図1に示すように置いた場合に、第1食品12の上面と開口との間に位置するように側壁部112に設けられている。インジケータ114a及び114bは、第1食品12の上面及び開口から離間するとともに、互いから離間している。
【0037】
インジケータ114a及び114bの各々は、底部111に対して平行な方向に伸びた線状部である。一例によれば、インジケータ114a及び114bは、側壁部112の内面の傾斜角を不連続に変化させることにより、傾斜角が一定であるか又は連続的に変化している領域間に生じる境界線である。インジケータ114a及び114bは、側壁部112の内面に設けられた、溝、線状の凸部、又は段差であってもよい。また、インジケータ114a及び114bは、印刷によって側壁部112の内面に設けてもよい。側壁部112が可視光透過性を有している場合、インジケータ114a及び114bは、側壁部112の外面に設けてもよい。
【0038】
インジケータ114a及び114bの各々は、側壁部112の内周全体に亘って伸びている。インジケータ114a及び114bの各々は、側壁部112の内周の一部においてのみ伸びていてもよく、不連続部を含む線の形状を有していてもよい。
【0039】
インジケータ114a及び114bの各々は、線以外の形状を有していてもよい。例えば、インジケータ114a及び114bの各々は、半球形、角錐形、円錐形、角柱形、又は円柱形の凹部又は凸部であってもよい。或いは、インジケータ114a及び114bの各々は、文字又は記号を表示する凹部又は凸部であってもよい。
【0040】
或いは、インジケータ114a及び114bの各々は、上述したものの2以上の組み合わせであってもよい。例えば、インジケータ114a及び114bの各々は、溝、線状の凸部、又は段差と、文字又は記号を表示する凹部又は凸部との組み合わせを含んでいてもよい。
【0041】
ここでは、側壁部112には、2つのインジケータ114a及び114bが設けられている。側壁部112から、インジケータ114a及び114bの一方を省略してもよい。また、側壁部112には、インジケータ114a及び114bに加え、1以上のインジケータを更に設けてもよい。
【0042】
フランジ部113は、側壁部112の上端から外側へ拡がっている。フランジ部113は、その外縁部近傍に、外縁部の高さを他の部分の高さに対してより低くする段差を有している。フランジ部113には、段差を設けなくてもよい。
【0043】
フランジ部113は、ここでは、各角が丸められ、中央に開口が設けられた正方形状を有している。フランジ部113は、他の形状、例えば、中央に開口が設けられた円形状を有していてもよい。
【0044】
容器本体11内に1名分の第1食品12を収容する場合、容器本体11の容積V2は、170乃至250mLの範囲内にあることが好ましい。
【0045】
また、後述するように、容器本体11は、食器として使用することができる。そのような使用形態を考慮すると、容器本体11の開口径Rに対する容器本体11の深さDの比D/Rは、0.25乃至0.8の範囲内にあることが好ましく、0.35乃至0.56の範囲内にあることがより好ましい。比D/Rを小さくすると、第1食品12及び第2食品を匙で掬い取り易い。但し、比D/Rを過剰に小さくすると、インジケータ114a及び114bを利用した第2食品の投入量の調整を高い精度で行うことが難しくなる。
【0046】
ここで、容器本体11の開口径Rは、容器本体11の開口の面積と同じ面積を有する円の直径である。また、容器本体11の深さDは、容器本体11の最大深さ、即ち、底部111の上面のうち高さが最も低い領域から容器本体11の開口までの距離である。
【0047】
蓋体13は、容器本体11の開口を塞いでいる。蓋体13は、容器本体11とともに、容器を構成している。
【0048】
蓋体13は、ここでは、フランジ部113の上面に接着されたフィルムである。そのような蓋体13は、例えば、ポリマー、紙又はそれらの組み合わせからなる基材と、蓋体13をフランジ部113の上面に接着するための接着層と、それらの間に介在したガスバリア層とを含む。蓋体13は、その上面に、印刷層や保護層を更に含んでいてもよい。第1食品12を、容器本体11と蓋体13とからなる容器に入れたままマイクロ波加熱する場合には、蓋体13は金属層を含まないことが好ましい。
【0049】
蓋体13は、フランジ部113の上面に接着されたフィルムでなくてもよい。例えば、蓋体13は、嵌め合いによって容器本体11の開口を塞ぐものであってもよい。
【0050】
第1食品12は、容器本体11内に収容されている。容器本体11内には、1名分の第1食品12が収容されている。
【0051】
第1食品12は、第1軟質食品121と第1調味液122とを含んでいる。
第1軟質食品121は、例えば、ムース状食品である。第1軟質食品121は、プリンのように、蛋白質を含んだ液を、蛋白質の熱変性を利用して凝固させたものであってもよい。或いは、第1軟質食品121は、ゼリー及び杏仁豆腐のように、液をゲル化剤で凝固させたものであってもよい。
【0052】
ムース状食品は、固形の食品を磨り潰し、これと凝固剤等とを混合し、その後、この混合物を成形することにより得られる食品である。
【0053】
固形の食品は、例えば、動物性食材、植物性食材又はそれらの組み合わせである。固形の食品は、肉類、魚介類、野菜類、キノコ類、海藻、果実、木の実、穀類又はそれらの2以上を含むことができる。固形の食品は、調理前の食材であってもよく、調理済みの食品であってもよい。後者の場合、固形の食品は、油脂類と砂糖及び塩等の調味料類との1以上を更に含んでいてもよい。
【0054】
固形の食品は、粒子径が十分に小さくなるまで磨り潰すことが好ましい。粒子径が小さくなるほど、第1軟質食品121の口当たりは滑らかになる。磨り潰した食品の粒子径は、2.0mm以下であることが好ましく、0.5mm以下であることがより好ましく、0.1mm以下であることが更に好ましい。ここで、「粒子径」は、レーザー回折・散乱法による粒子径分布測定によって得られる値である。
【0055】
凝固剤は、例えば、加熱することにより熱変性して不可逆的に固化する蛋白質である。そのような蛋白質は、例えば、水溶液の形態で、磨り潰した上記食品と混合する。蛋白質又はその水溶液としては、例えば、卵白を使用することができる。蛋白質は、第1軟質食品121における濃度が、0.1乃至25質量%の範囲内になるように添加することが好ましく、1乃至15質量%の範囲内になるように添加することがより好ましい。
【0056】
磨り潰した食品と凝固剤等との混合物は、例えば、磨り潰す前の食品又は第1軟質食品121によって味を再現すべき食品に類似した形状に成形する。例えば、この混合物を型に入れて加熱する。この加熱は、好ましくは50乃至130℃の範囲内の温度で、より好ましくは60乃至130℃の範囲内の温度で、更に好ましくは60乃至130℃の範囲内の温度で行う。これにより、蛋白質の熱変性を生じさせて、混合物を凝固させる。
【0057】
第1食品12は、一例によれば、嚥下困難者用食品又は咀嚼困難者用食品として供されるユニバーサルデザインフードである。ユニバーサルデザインフードは、硬さ等に応じて4つの区分、即ち、「容易にかめる」、「歯ぐきでつぶせる」、「舌でつぶせる」、及び「かまなくてよい」へ分類される。区分「容易にかめる」の食品には硬さが5×105N/m2以下であることが要求され、区分「歯ぐきでつぶせる」の食品には硬さが5×104N/m2以下であることが要求され、区分「舌でつぶせる」の食品には硬さが2×104N/m2以下であることが要求され、区分「かまなくてよい」の食品には硬さが5×103N/m2以下であることが要求される。
【0058】
第1軟質食品121は、5×104N/m2以下の硬さを有していることが好ましい。第1軟質食品121は、硬さが5×103N/m2以下であってもよい。
【0059】
第1軟質食品121は、2×103N/m2以上の硬さを有していることが好ましい。第1軟質食品121を軟らかくしすぎると、第1軟質食品121に形状を維持させることが難しくなる。第1軟質食品121は、硬さが1×104N/m2以上であってもよい。
【0060】
なお、軟質食品の硬さは、以下の方法により測定する。
測定装置としては、直線運動により物質の圧縮応力を測定することが可能な装置を用いる。直径40mmの容器に試料を15mmの高さに充填し、直径が20mmのプランジャでこれを圧縮して、圧縮応力を測定する。この測定は、20±2℃の温度で、圧縮速度を10mm/秒とし、容器の底面とプランジャとのクリアランスが5mmになるまで行う。試料が不定形である場合などには、クリアランスを試料の厚さの30%として測定してもよい。この測定を5回行い、最大値及び最小値を除いた3回の値の平均を測定値とする。
【0061】
第1調味液122は、第1軟質食品121と混合されている。第1調味液122は、水と、調味料、動物性食材の抽出液、植物性食材の抽出液、又はそれらの組み合わせとを含有した液である。第1調味液122は、例えば、溶液、ゾルなどの分散液、又はそれらの組み合わせである。
【0062】
第1調味液122は、増粘剤を更に含むことができる。増粘剤の例は、これらに限定するものではないが、グアーガム、キサンタンガム、タマリンドガム、カラギーナン、カルボキシメチルセルロース、タラガム、ローカストビーンガム、カードラン、アルギン酸ナトリウム、サイリウムシードガム、ジェランガム、アラビアガム、カラヤガム、キチン、キトサン、アラビノガラクタン、ウェランガム、セスバニアガム、アロエベラ抽出物、ダルマン樹脂、ガディガム、エレミ樹脂、デキストラン、オリゴグルコサミン、トロロアオイ、微小繊維状セルロース、トラガントガム、納豆菌ガム、フクロノリ抽出物、ファーセレラン、カシアガム、マクロホモプシスガム、プルラン、キダチアロエ抽出物、モモ樹脂、アウレオバシジウム培養液、グアーガム酵素分解物、ラムザンガム、グルコサミン、レバン、アグロバクテリウムスクシノクリカン、酵母細胞膜、アマシードガム、サバクヨモギシードガム、アーモンドガム、スクレロガム、又はそれらの2以上である。
【0063】
好ましくは、増粘剤は、グアーガム、キサンタンガム、タマリンドガム、カルボキシメチルセルロース、タラガム、ローカストビーンガム、アルギン酸ナトリウム、サイリウムシードガム、アラビアガム、カラヤガム、ウェランガム、トラガントガム、納豆菌ガム、ファーセレラン、カシアガム、モモ樹脂、グアーガム酵素分解物、ラムザンガム、アグロバクテリウムスクシノクリカン、又はそれらの2以上である。
【0064】
より好ましくは、増粘剤は、グアーガム、キサンタンガム、タマリンドガム、カルボキシメチルセルロース、タラガム、ローカストビーンガム、アルギン酸ナトリウム、サイリウムシードガム、ウェランガム、トラガントガム、ラムザンガム、アグロバクテリウムスクシノクリカン、又はそれらの2以上である。
【0065】
増粘剤として、性質が異なる2種以上を組み合わせて使用することが好ましい。例えば、増粘剤として、増粘性能について優れた熱安定性を示すものと、シュードプラスチック性を発現し難いものとを組み合わせてもよい。
【0066】
増粘性能について優れた熱安定性を示すものは、100℃を超えるような温度でも破壊を生じ難い。それ故、増粘性能について優れた熱安定性を示すものは、容器入り軟質食品1の製造において加熱工程を経たとしても高い増粘性能を維持する。
【0067】
ここで、増粘性能に関する熱安定性は、加熱前の粘度と、加熱後に常温まで冷却した後における粘度との差に関連した性能である。例えば、容器入り軟質食品1の製造時に、120℃で30秒間に亘るレトルト殺菌を行った場合に、レトルト殺菌前における常温での粘度と、レトルト殺菌後における常温での粘度とが等しければ、熱安定性に優れていることになる。これとは逆に、レトルト殺菌前における常温での粘度と比較して、レトルト殺菌後における常温での粘度が低ければ、熱安定性は低いということになる。
【0068】
一方、シュードプラスチック性を発現し難いものは、外力が加わった際に構造変化や分子配置の変化が起き難く、それ故、粘度変化が起き難い。シュードプラスチック性を発現し難いものは、例えば、第1食品12を収容した容器本体11内に投入した第2食品が粥である場合であって、粥の離水を生じた場合に、回転型粘度計で同程度の粘度と測定されたシュードプラスチック性の発現し易いものと比較して、遊離水と速やかに混ざり合う。
【0069】
従って、上記の組み合わせによると、第1調味液122は、容器入り軟質食品1の搬送時や第1食品12を喫食するために加熱した際に高い粘性を示す。そして、上記の組み合わせは、第2食品が例えば粥である場合に、離水に伴って低粘度の液が生じるのを防止するうえで有利である。
【0070】
増粘性能について優れた熱安定性を示すものは、キサンタンガム、タラガム、ローカストビーンガム、ウェランガム、グアーガム酵素分解物、アグロバクテリウムスクシノクリカン、又はそれらの2以上であることが好ましい。
【0071】
シュードプラスチック性を発現し難いものは、グアーガム、タマリンドガム、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、サイリウムシードガム、又はそれらの2以上であることが好ましい。
【0072】
増粘性能について優れた熱安定性を示す増粘剤の量と、シュードプラスチック性を発現し難い増粘剤の量との合計に占める、シュードプラスチック性を発現し難い増粘剤の量の割合は、5乃至50質量%の範囲内にあることが好ましく、10乃至30質量%の範囲内にあることがより好ましい。この割合を大きくすると、第2食品が粥である場合に、離水に伴って低粘度の液が生じるのを抑制する効果が大きくなる。但し、この割合を大きくすると、第1食品12を加熱することに伴う第1調味液122の粘度の低下が大きくなる。
【0073】
一例によれば、第1調味液122は、増粘剤として、キサンタンガムとグアーガムとを含む。また、一例によれば、第1食品12における増粘剤の濃度は、0.16乃至1.16質量%の範囲内にある。
【0074】
第1調味液122は、ゲル化剤を更に含んでいてもよい。ゲル化剤は、例えば、ペクチン、ゼラチン、寒天、又はそれらの2以上である。第1調味液122における、ゲル化剤の濃度は、0.2質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましい。
【0075】
第1調味液122は、粘度が0.5乃至20.0Pa・sの範囲内にあることが好ましく、0.5乃至10.0Pa・sの範囲内にあることがより好ましく、1.5乃至2.0Pa・sの範囲内にあることが更に好ましい。上記の区分「舌でつぶせる」及び「かまなくてよい」の溶液又はゾルは、1500mPa・s以上であることが要求される。なお、区分「舌でつぶせる」のゾルには、硬さが1×104N/m2以下であることが要求される。また、区分「かまなくてよい」のゾルには、硬さが3×103N/m2以下であることが要求される。
【0076】
第1調味液122の粘度が十分に高ければ、容器入り軟質食品1の搬送時等において、第1軟質食品121の振動が緩和される。また、第1調味液122の粘度が十分に高ければ、容器本体11内での第1軟質食品121の動きが妨げられ、容器内面への第1軟質食品121の接触や第1軟質食品121同士の接触は生じ難くなる。従って、これらに起因した第1軟質食品121の形崩れは生じ難くなる。
【0077】
なお、調味液の粘度は、B型回転粘度計を用い、測定温度を20±2℃とし、12rpmでM3ロータを回転させ、2分後の示度を読み、その値に対応する計数を乗じて得られる値をPa・sで表したものである。
【0078】
第1調味液122の体積V1Lと第1軟質食品121の体積V1Sとの比V1L/V1Sは、1/4乃至1の範囲内にあることが好ましく、2/5乃至4/5の範囲内にあることがより好ましい。第1調味液122は、第1軟質食品121及び第2軟質食品の嚥下を容易にする。また、第1調味液122は、容器入り軟質食品1の搬送時等に、第1軟質食品121の形状が崩れるのを抑制する。更に、後述するように、増粘剤を含んだ第1調味液122は、第2食品が粥である場合に、離水に伴う粘度の低下を生じ難くし得る。
【0079】
第1食品12は、例えば、主菜又は副菜である。第1食品12によって再現する主菜及び副菜の例は、これらに限定するものではないが、カレー、シチュー、野菜の煮物、及びすき焼き等の煮物であるか、又は、ソースと組み合わされたハンバーグ、チキンのトマト煮;肉野菜炒め、魚の煮付け、及び野菜の煮物等の、焼き物、炒め物若しくは蒸し物とソースとの組み合わせである。第1食品12は、杏仁豆腐等のデザートであってもよい。
【0080】
第1食品12の体積V1と容器本体11の容積V2との比V1/V2は、0.7以下である。比V1/V2は、0.55以下であることが好ましい。比V1/V2が大きいと、第1食品12を収容した容器本体11に、十分な量の第2食品を投入することができない。
【0081】
比V1/V2は、0.4以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましい。比V1/V2が小さすぎると、容器入り軟質食品1の搬送時等に、第1食品12が容器本体11内で大きく移動し易くなり、その結果、第1軟質食品121の形状が崩れ易くなる。また、比V1/V2が小さすぎると、第1食品12を収容した容器本体11に、予定されている第2食品の最大量を投入しても、容器本体11内に大きなヘッドスペースが残る可能性がある。それ故、容器入り軟質食品1の陳列や保管に、より大きな空間が必要となる。
【0082】
第1食品12が主菜又は副菜である場合、第2食品は、例えば、粥などの主食である。それ故、上記の容器入り軟質食品1によると、介助者は、例えば、主菜又は副菜としての第1食品12を収容した容器本体11内へ、主食としての第2食品を投入し、主菜又は副菜を主食とともに匙で掬い取ることができる。従って、上記の容器入り軟質食品1によると、嚥下困難者等による喫食の介助への介助者の負担を軽減することが可能となる。
【0083】
容器入り軟質食品1は、単独で流通させることができる。或いは、容器入り軟質食品1は、第2食品を含んだ容器入り食品と組み合わせて流通させること、即ち、容器入り軟質食品1と第2食品を含んだ容器入り食品とを備えた食品セットの形態で流通させることができる。
【0084】
1つの食品セットは、容器入り軟質食品1を、1つのみ含んでいてもよく、複数含んでいてもよい。1つの食品セットは、第2食品を含んだ容器入り食品を、1つのみ含んでいてもよく、複数含んでいてもよい。食品セットにおいて、容器入り軟質食品1の数と、第2食品を含んだ容器入り食品の数とは、等しくてもよく、異なっていてもよい。
【0085】
図4は、
図1に示す容器入り軟質食品と組み合わせて流通させることが可能な容器入り食品の一例を示す平面図である。
図4に示す容器入り食品2は、容器21と第2食品22とを含んでいる。
【0086】
容器21は、易開封構造としてノッチが設けられた四方シール袋である。容器21は、三方シール袋及びガセット袋などの他の袋であってもよい。或いは、容器21は、缶又は瓶であってもよい。或いは、容器21は、容器本体11及び蓋体13について上述した構造をそれぞれ有する容器本体と蓋体との組み合わせであってもよい。
【0087】
第2食品22は、容器21内に収容されている。容器21には、1名分又はそれよりも多い量の第2食品22が収容されている。容器21には、複数名分又はそれよりも多い量の第2食品22が収容されていてもよい。
【0088】
第2食品22は、例えば、第2軟質食品からなるか、第2調味液からなるか、又は、第2軟質食品及び第2調味液からなる。第2軟質食品は、第1軟質食品121について上述した硬さを有していることが好ましい。また、第2調味液は、第1調味液122について上述した粘度を有していることが好ましい。
【0089】
第1食品12が主菜又は副菜である場合、第2食品22は、例えば、粥などの主食である。
【0090】
粥は、例えば、1質量部の米に対して水の量を5質量部として調理した五倍粥(全粥)、1質量部の米に対して水の量を7質量部として調理した七倍粥、1質量部の米に対して水の量を10質量部として調理した十倍粥(五分粥)、又は、1質量部の米に対して水の量を20質量部として調理した二十倍粥である。この倍率は、喫食者の状態に合わせて適宜選択する。
【0091】
粥は、食塩を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。喫食者が高血圧症である場合には、粥は食塩を含んでいないことが好ましい。
【0092】
粥は、蛋白質調整食品であってもよい。腎臓病の患者には、カリウム、ナトリウム、蛋白質及び燐の摂取を少なくすることが推奨される。蛋白質含有量を低下させた粥は、そのような患者に適している。
【0093】
第1食品12が主菜又は副菜である場合、第2食品22は、豆腐であってもよい。糖尿病の患者には、糖質の摂取を少なくすることが推奨される。豆腐は、そのような患者に適している。
【0094】
上記の通り、第1食品12はデザートであってもよい。第1食品12がデザートである場合、第2食品22は、例えば、フルーツソースやチョコレートソースなどのソースである。
【0095】
このように、第1食品12と組み合わせる第2食品22は、様々なものの中から選択することができる。第2食品22の種類は、喫食者の状態に応じて選択することができる。即ち、喫食者の状態に応じて、例えば、粥及び豆腐の何れであるか、粥である場合には、米の量を基準とした水の量の倍率、食塩の有無、及び蛋白質調整食品であるか否かを決定できる。
【0096】
また、第1食品12を収容した容器本体11への第2食品22の投入量も、喫食者の状態に応じて決定することができる。例えば、喫食者が摂取すべき熱量又は特定成分の量に基づいて、第2食品22の投入量を決定することができる。インジケータ114a及び114bは、第2食品22を、このようにして決定した量で投入することを容易にする。
【0097】
図5は、
図1に示す容器入り軟質食品の使用形態の一例を概略的に示す断面図である。
図6は、
図1に示す容器入り軟質食品の使用形態の他の例を概略的に示す断面図である。
図7は、
図1に示す容器入り軟質食品の使用形態の更に他の例を概略的に示す断面図である。
【0098】
図5では、第1食品12を収容した容器本体11内に、その開口の位置まで第2食品22を投入している。
図6では、第1食品12を収容した容器本体11内に、そのインジケータ114bの位置まで第2食品22を投入している。
図7では、第1食品12を収容した容器本体11内に、そのインジケータ114aの位置まで第2食品22を投入している。このように、第1食品12を収容した容器本体11内に投入する第2食品22の量は、インジケータ114a及び114b等を目安として、多段階で調整可能である。
【0099】
なお、インジケータ114a及び114b等を目安として第2食品22の投入量を調整するに際し、以下に説明する参照表を利用することができる。
【0100】
例えば、第2食品22の種類、インジケータ114a及び114b等によって示される第2食品22の投入量、及び、投入される第2食品22の熱量又は成分量の関係を示す参照表を予め準備しておく。次に、喫食者の状態に基づいて決定した、喫食者が摂取すべき熱量又は成分量と、第1食品12の熱量又は成分量とから、投入される第2食品22の熱量又は成分量を算出する。そして、喫食者の状態に基づいて決定した第2食品22の種類と、上記のようにして算出した熱量又は成分量とを、上記の参照表に参照して、何れのインジケータを投入量の目安とすべきかを決定する。
【0101】
或いは、第2食品22の種類、インジケータ114a及び114b等によって示される第2食品22の投入量、及び、投入される第2食品22の熱量又は成分量と第1食品12の熱量又は成分量との合計の関係を示す参照表を予め準備しておく。次に、喫食者の状態に基づいて決定した、喫食者が摂取すべき熱量又は成分量及び第2食品22の種類を、上記の参照表に参照して、何れのインジケータを投入量の目安とすべきかを決定する。
【0102】
容器入り軟質食品1は、上記の参照表と組み合わせて流通させることができる。即ち、容器入り軟質食品1は、これと参照表とを含んだ参照表付き容器入り軟質食品の形態で流通させることもできる。
【0103】
参照表付き容器入り軟質食品は、参照表を、例えば、容器本体11若しくは蓋体13に設けられた印刷層の形態で、又は、容器入り軟質食品1を包装する包装体に設けられた印刷層の形態で含むことができる。或いは、参照表付き容器入り軟質食品は、参照表を、これが記録されたカード又は冊子の形態で含むことができる。
【0104】
同様に、容器入り軟質食品1と容器入り食品2とを含んだ食品セットは、上記の参照表と組み合わせて流通させることができる。即ち、食品セットは、これと参照表とを含んだ参照表付き食品セットの形態で流通させることもできる。なお、この場合、容器入り食品2が含む第2食品22の種類は特定されているので、参照表は、インジケータ114a及び114b等によって示される第2食品22の投入量、及び、投入される第2食品22の熱量又は成分量の関係を示すものであるか、又は、インジケータ114a及び114b等によって示される第2食品22の投入量、及び、投入される第2食品22の熱量又は成分量と第1食品12の熱量又は成分量との合計の関係を示すものであればよい。
【0105】
参照表付き食品セットは、参照表を、例えば、容器本体11、蓋体13、若しくは容器21に設けられた印刷層の形態で、又は、容器入り軟質食品1及び容器入り食品2の少なくとも一方を包装する包装体に設けられた印刷層の形態で含むことができる。或いは、参照表付き食品セットは、参照表を、これが記録されたカード又は冊子の形態で含むことができる。
【0106】
以上の通り、流通時において、第1食品12を収容した容器本体11は、第2食品22を含んでいない。従って、例えば、喫食者の状態に応じて、第2食品22の種類や量を決定することができる。
【0107】
第1食品12を収容した容器本体11には、第2食品22を投入することができる。従って、喫食の介助への負担を軽減することが可能である。
【0108】
更に、上記の通り、インジケータ114a及び114bは、第2食品22の投入量の調整を容易にする。この点でも、喫食の介助への負担を軽減することができる。
【0109】
また、増粘剤を含んだ第1調味液122は、以下に説明するように、遊離水が生じることに伴う誤嚥のリスクを低減し得る。第2食品22を加熱すると、蒸気が発生し、これが凝縮することによって遊離水を生じる可能性がある。この遊離水は、誤嚥のリスクを高める。このように遊離水を生じたとしても、容器本体11内へ投入した第2食品22と、増粘剤を含んだ第1調味液122とを混ぜ合わせれば、低粘度の液が喫食に供されるのを防止できる。
【0110】
また、第2食品22が粥である場合、以下に説明するように、増粘剤を含んだ第1調味液122は、誤嚥のリスクを低減し得る。
【0111】
匙で粥を喫食すると、唾液中のαアミラーゼは、匙を介して粥に混入する。粥に混入したαアミラーゼは、澱粉の分解を生じさせる。その結果、澱粉の分解に伴う離水を生じる。
【0112】
嚥下困難者は、一食分の食事を完食するまでに長時間を要することが多い。それ故、嚥下困難者が喫食している粥には、αアミラーゼが粥に混入することなど起因して、大量の遊離水が生じる可能性がある。低粘度の遊離水は、誤嚥のリスクを高める。
【0113】
増粘剤は、離水又はこれに伴う粘度の低下を生じ難くする。以下の表に、これに関する試験結果を示す。
【0114】
【0115】
上記表において、普通粥は、以下の方法により準備したものである。
先ず、1/2合の白米を計量し、これを研ぐ。次に、水気を切った白米と900mLの水とを鍋に入れ、中火で加熱する。これを、沸騰し始めた時点で軽く混ぜ、続いて、直ちに弱火にして、隙間を少し残して蓋をする。弱火のまま、30乃至40分間に亘って加熱し、その後、塩を二摘みほど加えてかき混ぜる。
【0116】
また、上記表において、とろみ粥は、増粘剤を更に加えて調理したこと以外は、普通粥について上述したのと上述した方法により得られたものである。ここでは、増粘剤として、キサンタンガムを使用した。増粘剤は、白米と水と増粘剤との混合物における濃度が1質量%となるように添加した。
【0117】
上記表には、各粥について、喫食直前における粘度及び温度と、喫食を開始してから60分経過後における粘度及び温度とを示している。粘度の測定には、音叉型振動式粘度計SV-10(株式会社エー・アンド・デイ製)を取得した。また、取得したデータは、上記の粘度計に付属のRsVisco Ver.1.11で処理した。
【0118】
上記表に示すように、市販粥及び普通粥の何れも、喫食開始から60分経過後では、喫食直前と比較して、粘度が大幅に低下している。これに対し、とろみ粥では、喫食開始から60分経過後における粘度は、喫食直前における粘度よりも低いものの、高い値を維持している。
【0119】
このように、増粘剤は、離水に伴う粘度の低下を生じ難くする。従って、容器本体11内へ投入した第2食品22と、増粘剤を含んだ第1調味液122とを混ぜ合わせれば、第2食品22が粥である場合であっても、離水に伴う粘度の低下を生じ難くすることができる。
【0120】
また、そのような混合を行わなかったとしても、離水に伴う粘度の低下を生じ難くすることができる。これについて、以下に説明する。
【0121】
第1食品12を収容した容器本体11へ第2食品22を
図6等に示すように投入した場合、第1軟質食品121を第2食品22とともに匙で掬い取る際に、匙のつぼは、先ず、第2食品22からなる層を通過し、その後、第1食品12からなる層へと侵入する。第2食品22からなる層をつぼが通過する際、匙に付着していたαアミラーゼの一部は、第2食品22へと移行する。
【0122】
第2食品22のうち、つぼの内面からαアミラーゼが移行した部分は、匙によって直ちに掬い取られる。それ故、つぼの内面から第2食品22へ移行したαアミラーゼは、容器本体11内には残らない。
【0123】
第2食品22のうち、つぼの外面からαアミラーゼが移行した部分は、匙によって直ちには掬い取られない。但し、第1軟質食品121を第2食品22とともに匙で掬い取ることに伴って第1食品12からなる層に生じる凹部には、第1調味液122と第2食品22とが速やかに移動する。これにより、つぼの外面から第2食品22へ移行したαアミラーゼは、第1調味液122が含んでいる増粘剤と接触可能になる。
【0124】
従って、第2食品22が粥である場合であっても、離水に伴う粘度の低下を生じ難くすることができる。
【符号の説明】
【0125】
1…容器入り軟質食品、2…容器入り食品、11…容器本体、12…第1食品、13…蓋体、21…容器、22…第2食品、111…底部、112…側壁部、113…フランジ部、114a…インジケータ、114b…インジケータ、121…第1軟質食品、122…第1調味液。
【手続補正書】
【提出日】2022-09-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有し、開口径Rに対する深さDの比D/Rが0.35乃至0.56の範囲内にある容器本体と、
成形された第1軟質食品からなるか、又は、前記第1軟質食品と第1調味液とからなり、前記容器本体に収容された第1食品と、
前記開口を塞いだ蓋体と
を備え、
前記第1食品の体積V1と前記容器本体の容積V2との比V1/V2は0.7以下である容器入り軟質食品。
【請求項2】
前記比V1/V2は0.4以上である請求項1に記載の容器入り軟質食品。
【請求項3】
前記第1軟質食品は5×104N/m2以下の硬さを有する請求項1又は2に記載の容器入り軟質食品。
【請求項4】
前記第1食品は前記第1軟質食品と前記第1調味液とからなり、前記第1調味液は、0.5乃至20.0Pa・sの粘度を有する請求項1乃至3の何れか1項に記載の容器入り軟質食品。
【請求項5】
前記容器本体の側壁部には、前記容器入り軟質食品を、前記開口が前記容器本体の底部の上方に位置し且つ前記底部が水平になるように置いた場合に、前記第1食品の上面と前記開口との間に位置するインジケータが設けられた請求項1乃至4の何れか1項に記載の容器入り軟質食品。
【請求項6】
前記インジケータは、前記底部に対して平行な方向に伸びた線状部を含んだ請求項5に記載の容器入り軟質食品。
【請求項7】
前記容器本体の側壁部には、前記第1食品を収容した前記容器本体内へ第2食品を投入する際に、前記第2食品の投入量の目安となるインジケータが設けられた請求項1乃至4の何れか1項に記載の容器入り軟質食品。
【請求項8】
請求項7に記載の容器入り軟質食品と、
前記第2食品の種類、前記インジケータによって示される前記第2食品の投入量、及び、投入される前記第2食品の熱量若しくは成分量又はこの熱量若しくは成分量と前記第1食品の熱量若しくは成分量との合計の関係を示す参照表と
を備えた参照表付き容器入り軟質食品。
【請求項9】
請求項1乃至7の何れか1項に記載の容器入り軟質食品と、
容器と、前記容器に収容された第2食品とを備えた容器入り食品と
を備えた食品セット。
【請求項10】
前記第2食品は、5×104N/m2以下の硬さを有する第2軟質食品からなるか、0.5乃至10.0Pa・sの粘度を有する第2調味液からなるか、又は、前記第2軟質食品及び前記第2調味液からなる請求項9に記載の食品セット。
【請求項11】
前記第2食品は粥である請求項9又は10に記載の食品セット。
【請求項12】
前記第2食品は豆腐を含んだ請求項9又は10に記載の食品セット。
【請求項13】
請求項7に記載の容器入り軟質食品と、
容器と、前記容器に収容された前記第2食品とを備えた容器入り食品と、
前記インジケータによって示される前記第2食品の投入量、及び、投入される前記第2食品の熱量若しくは成分量又はこの熱量若しくは成分量と前記第1食品の熱量若しくは成分量との合計の関係を示す参照表と
を備えた参照表付き食品セット。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本発明の一側面によると、開口を有し、開口径Rに対する深さDの比D/Rが0.35乃至0.56の範囲内にある容器本体と、成形された第1軟質食品からなるか、又は、前記第1軟質食品と第1調味液とからなり、前記容器本体に収容された第1食品と、前記開口を塞いだ蓋体とを備え、前記第1食品の体積V1と前記容器本体の容積V2との比V1/V2は0.7以下である容器入り軟質食品が提供される。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0124
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0124】
従って、第2食品22が粥である場合であっても、離水に伴う粘度の低下を生じ難くすることができる。
以下に、当初の特許請求の範囲に記載していた発明を付記する。
[1]
開口を有する容器本体と、
第1軟質食品からなるか、又は、前記第1軟質食品と第1調味液とからなり、前記容器本体に収容された第1食品と、
前記開口を塞いだ蓋体と
を備え、
前記第1食品の体積V1と前記容器本体の容積V2との比V1/V2は0.7以下である容器入り軟質食品。
[2]
前記比V1/V2は0.4以上である項1に記載の容器入り軟質食品。
[3]
前記第1軟質食品は5×10
4
N/m
2
以下の硬さを有する項1又は2に記載の容器入り軟質食品。
[4]
前記第1食品は前記第1軟質食品と前記第1調味液とからなり、前記第1調味液は、0.5乃至20.0Pa・sの粘度を有する項1乃至3の何れか1項に記載の容器入り軟質食品。
[5]
前記容器本体の側壁部には、前記容器入り軟質食品を、前記開口が前記容器本体の底部の上方に位置し且つ前記底部が水平になるように置いた場合に、前記第1食品の上面と前記開口との間に位置するインジケータが設けられた項1乃至4の何れか1項に記載の容器入り軟質食品。
[6]
前記インジケータは、前記底部に対して平行な方向に伸びた線状部を含んだ項5に記載の容器入り軟質食品。
[7]
前記容器本体の側壁部には、前記第1食品を収容した前記容器本体内へ第2食品を投入する際に、前記第2食品の投入量の目安となるインジケータが設けられた項1乃至4の何れか1項に記載の容器入り軟質食品。
[8]
項7に記載の容器入り軟質食品と、
前記第2食品の種類、前記インジケータによって示される前記第2食品の投入量、及び、投入される前記第2食品の熱量若しくは成分量又はこの熱量若しくは成分量と前記第1食品の熱量若しくは成分量との合計の関係を示す参照表と
を備えた参照表付き容器入り軟質食品。
[9]
項1乃至7の何れか1項に記載の容器入り軟質食品と、
容器と、前記容器に収容された第2食品とを備えた容器入り食品と
を備えた食品セット。
[10]
前記第2食品は、5×10
4
N/m
2
以下の硬さを有する第2軟質食品からなるか、0.5乃至10.0Pa・sの粘度を有する第2調味液からなるか、又は、前記第2軟質食品及び前記第2調味液からなる項9に記載の食品セット。
[11]
前記第2食品は粥である項9又は10に記載の食品セット。
[12]
前記第2食品は豆腐を含んだ項9又は10に記載の食品セット。
[13]
項7に記載の容器入り軟質食品と、
容器と、前記容器に収容された前記第2食品とを備えた容器入り食品と、
前記インジケータによって示される前記第2食品の投入量、及び、投入される前記第2食品の熱量若しくは成分量又はこの熱量若しくは成分量と前記第1食品の熱量若しくは成分量との合計の関係を示す参照表と
を備えた参照表付き食品セット。