(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156720
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】オフセット印刷方法およびオフセット印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41F 3/20 20060101AFI20221006BHJP
B41F 3/36 20060101ALI20221006BHJP
B41F 17/22 20060101ALI20221006BHJP
B41M 1/10 20060101ALI20221006BHJP
B41M 1/34 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B41F3/20 D
B41F3/36
B41F17/22
B41M1/10
B41M1/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060550
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】屋根 剛
【テーマコード(参考)】
2H113
【Fターム(参考)】
2H113BA03
2H113BB23
(57)【要約】
【課題】ブランケットローラからワーク上にインクを網点状に転写するオフセット印刷において、単色の塗りつぶし領域における塗りつぶし度合を向上する。
【解決手段】 ブランケットローラからワークの表面にインクを転写する際に、ブランケットローラにおいて所定のパターンに配置されたインクうち第一部位を担持する箇所がワークに接触する時にブランケットローラとワークをブランケットローラとワークの接触位置から見たブランケットローラの径方向と交差する向きに相対移動させることにより、ワークでの第一部位に相当する部位のインクによる被覆面積を、印刷版上での第一部位のインクによる被覆面積より大きくするずらし動作を行う。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オフセット印刷方法であって、
印刷版の表面に所定のパターンに配置されたインクを、回転可能なブランケットローラの表面に受理する受理工程と、
前記インクを受理した前記ブランケットローラの表面をワークに接しつつ回転させることで、前記ワークの表面に前記インクを転写する転写工程を備え、
前記転写工程は、前記ブランケットローラにおいて、前記所定のパターンに配置された前記インクうち第一部位を担持する箇所が前記ワークに接触する時に、前記ブランケットローラと前記ワークを前記ブランケットローラと前記ワークの接触位置から見た前記ブランケットローラの径方向と交差する向きに相対移動させることにより、前記ワークでの前記第一部位に相当する部位の前記インクによる被覆面積を、前記印刷版上での前記第一部位のインクによる被覆面積より大きくするずらし動作を含む、オフセット印刷方法。
【請求項2】
請求項1に記載のオフセット印刷方法であって、
前記ワークは軸周りに回転対称な形状を有しており、
前記転写工程は、保持装置に前記軸周りに回転可能に保持された前記ワークの側面に前記ブランケットローラの表面を接触させつつ前記ブランケットローラ及びワークを回転させることで、前記ワークの前記側面に前記インクを転写することを含む、オフセット印刷方法。
【請求項3】
請求項2に記載のオフセット印刷方法であって、
前記ずらし動作は、前記ブランケットローラおよび前記ワークの回転を静止させた後に、前記ブランケットローラまたは前記ワークの一方の回転を停止し、他方のみを回転させることを含む、オフセット印刷方法。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のオフセット印刷方法であって、
前記ずらし動作において、前記ブランケットローラが、前記ワークに対して前記ブランケットローラの長手方向に沿った向きに所定量移動する、オフセット印刷方法。
【請求項5】
所定のパターンにインクを担持する印刷版の表面に沿って回転することにより前記印刷版から前記インクを受理するとともに、ワーク表面に沿って回転することで、前記インクを前記ワーク上に転写するブランケットローラと、
前記ブランケットローラと前記ワークとの接触中に、前記ブランケットローラと前記ワークを、前記ブランケットローラと前記ワークの接触位置から見た前記ブランケットローラの径方向と交差する向きに相対移動させるよう構成された移動部と、
を備えた、オフセット印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフセット印刷方法及びオフセット印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
オフセット印刷方法として、印刷版上に形成されたインクパターンをブランケットロールに転写し、ブランケットロールから対象物表面にインクを転写することで、対象物に印刷を行う方法が知られている。上記の方法では、凹部を有する印刷版上面にインクを供給後、印刷版上面にドクターブレードでスキージすることで印刷版上面の凹部にインクを充填させる。(例えば、下記特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1のような機構では、ドクターブレードの歯が凹部内まで進入しないよう、凹部と凹部の間に間隔を設ける必要がある。そのため、印刷版上で形成できるインクパターンには一定以上の間隔が空いたものとなり、結果、基材上に転写されるインクも、一定以上の間隔が開いた形状(いわゆる網点)を形成することになる。このような網点状のインク転写は、印刷後も基材表面にインクが付着しない部分が存在するため、単色領域を形成した場合、隙間なくインクを付着させた状態(いわゆるベタ塗り)に比べると、色の鮮やかさを出しづらいという問題があった。しかし、網点におけるインク付着部分の隙間を別途同色のインクを転写することで埋めようとすると、転写機構を同色で2つ以上設ける必要が生じるため、設備の大型化を招くという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、印刷版からインクをブランケットローラに受理し、ブランケットローラからワークへインクを転写するオフセット印刷において、転写機構の数を増やすことなく、単色領域のインクの塗りつぶし度合(以下、インク被覆率とも称する)を向上することができるオフセット印刷方法、及びオフセット印刷装置を提供する。
【0006】
本発明の第1の態様は、印刷版の表面に所定のパターンに配置されたインクを、回転可能なブランケットローラの表面に受理する受理工程と、前記インクを受理した前記ブランケットローラの表面をワークに接しつつ回転させることで、前記基材の表面に前記インクを転写する転写工程を備えたオフセット印刷方法を提供する。当該オフセット印刷方法において、前記転写工程は、前記ブランケットローラにおいて、前記所定のパターンに配置された前記インクのうち第一部位を担持する箇所が前記ワークに接触する時に、前記ブランケットローラと前記ワークを前記ブランケットローラと前記ワークの接触位置から見た前記ブランケットローラの径方向と交差する向きに相対移動させることにより、前記ワーク上での前記第一部位に相当する部位の前記インクによる被覆面積を、前記印刷版上での前記第一部位のインクによる被覆面積より大きくするずらし動作を含む。
【0007】
第1の態様によれば、ずらし動作によってワーク上でインクを広げ、付着部分同士の隙間をインクで埋めることができるため、ワーク上のインクによる塗りつぶし度合(インク被覆率)を向上することができる。
【0008】
第2の態様において、前記ワークは軸周りに回転対称な形状を有しており、前記転写工程は、保持装置に前記軸周りに回転可能に保持された前記ワークの側面に前記ブランケットローラを接触させつつ前記ブランケットローラ及び前記ワークを回転させることで、前記ワークの前記側面に前記インクを転写することを含んでよい。
【0009】
第3の態様において、前記ずらし動作は、前記ブランケットローラおよび前記ワークの回転を静止させた後に、前記ブランケットローラまたは前記ワークの一方の回転を停止し、他方のみを回転させることを含んでよい。
【0010】
第4の態様において、ずらし動作において、ブランケットローラがワークに対してブランケットローラの長手方向に沿った向きに所定量移動してもよい。
【0011】
本発明の第5の態様は、所定のパターンにインクを担持する印刷版の表面に沿って回転することにより印刷版からインクを受理するとともに、ワーク表面に沿って回転することで、インクをワーク上に転写するブランケットローラと、ブランケットローラとワークとの接触中に、ブランケットローラと基材との少なくとも一方を、ブランケットローラと基材の接触位置から見たブランケットローラの径方向と交差する向きに相対移動させるよう構成された移動部と、を備えたオフセット印刷装置を提供する。
【0012】
第5の態様によっても、ずらし動作によってワーク表面上でインクを広げ、付着部分同士の隙間をインクで埋めることができるため、ワーク表面上のインクによる塗りつぶし度合(インク被覆率)を向上することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、オフセット印刷において、転写装置の数を増やすことなく、単色のインクによるワーク上の塗りつぶし部分のインク被覆率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係るオフセット印刷装置の構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るオフセット印刷装置における、インク供給及びブランケットロールへのインク転写時の動作を説明するための図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るオフセット印刷装置の転写ユニットの構成を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るオフセット印刷装置の転写ユニットの構成を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るオフセット印刷装置のボトル保持装置の構成を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るオフセット印刷装置のボトルへのインク転写の動作を示す概略図である。
【
図7】本発明の実施形態に係るボトルへのインク転写時における、ボトルとブランケットローラの接触部の拡大図である。
【
図8A】本発明の実施形態に係るオフセット印刷装置における、ずらし動作前の印刷面の拡大図である。
【
図8B】本発明の実施形態に係るオフセット印刷装置における、ずらし動作により形成される印刷面の拡大図である。
【
図9】本発明の実施形態の変形例に係る転写ユニットの構成を示す図である。
【
図10A】本発明の実施形態の変形例に係るオフセット印刷装置における、ずらし動作前の印刷面の拡大図である。
【
図10B】本発明の実施形態の変形例に係るオフセット印刷装置における、ずらし動作により形成される印刷面の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0016】
<オフセット印刷装置の構成>
図1は本発明の実施形態に係る印刷システム100の概略構成例を示す模式図である。印刷システム100は、例えばガラス製の容器やボトル、樹脂製の容器やボトル等、回転対称軸(
図4の符号AR)まわりに回転対称な形状を有する物品(以下においては、これら総称して「ボトルB」と称する)の側面に印刷を行うことが可能なシステムである。なお、ここでいう回転対称とは、完全に軸周りに回転対称でなくとも、後述するブランケット30bの変形により印刷時に吸収できる程度の歪みは許容される。以下に説明する実施形態において、方向を統一的に述べるために、
図1に示すようにXYZ直交座標系を設定する。例えばXY平面を水平面、Z軸を鉛直軸と考えることができる。以下においては(-Z)方向が鉛直下向きとする。
【0017】
図1に示すように、印刷システム100は、ボトルBの側面に対し、それぞれ単色のインクで印刷を行う第1の印刷装置101、第2の印刷装置102を備える。したがって、印刷システム100はボトルBの側面に対して2色印刷を行うことができる。また、印刷システム100は、第1の印刷装置101、第2の印刷装置102および図示しないボトル着脱ステーション間でボトル保持装置200を搬送するボトル搬送装置(不図示)と、第1の印刷装置101、第2の印刷装置102およびボトル搬送装置に含まれる各ユニットの動作を制御するための制御装置900を備える。ボトル搬送装置は、例えばベルトコンベア、あるいはボトル保持装置200を載置可能なレールとサーボモータとの組み合わせ等、任意の搬送機構により実現される。制御装置900は、CPU等のプロセッサ、RAMやROM等の記憶装置を含んで構成される。なお、印刷装置を1組とした単色印刷システム、あるいは印刷装置を3組以上備えた多色印刷システムを構成することも可能である。
【0018】
印刷システム100におけるボトルBへの印刷について説明する。まず、ボトルBは図示しないボトル着脱ステーションでオペレータによる手動操作にてボトル保持装置200に着脱される。つまり、印刷済のボトルBがボトル保持装置200から取り外された後で、印刷前のボトルBがボトル保持装置200に装着される。こうして装着されたボトルBはボトル保持装置200と一体的に図示しないボトル搬送装置によって第1の印刷装置101に搬送される。この第1の印刷装置101においてボトルBに対し1色のインクで印刷が行われる。その後、ボトルBを保持したボトル保持装置200が第1の印刷装置101からボトル搬送装置によって第2の印刷装置102に搬送される。次に、第2の印刷装置102においてボトルBに対し1色のインクで印刷が行われる。そして、ボトル搬送装置によってボトル保持装置200が第2の印刷装置102からボトル着脱ステーションへ搬送され、印刷済のボトルBがボトル保持装置200からオペレータにより取り外される。
【0019】
<印刷装置の構成及び動作>
次に、
図1~
図5を参照して、各印刷装置101、102の構成を説明する。第1の印刷装置101及び第2の印刷装置102は同様の構成を有するため同一の符号を付与し、以下では第1の印刷装置101に着目して説明を行い、第2の印刷装置102の説明は省略する。
【0020】
第1の印刷装置101は、版ステージユニット1、インク充填ユニット2、転写ユニット3および硬化ユニット4をそれぞれ備えている。
図2に示すように、版ステージユニット1は、インクパターンを形成するための凹版11と、凹版11を(+Z)方向において載置するステージ12と、ステージ12をY軸に沿った方向に駆動可能な第1レール部13を備えている。第1レール部13としては、例えば一対のリニアガイドを用いることができる。凹版11の表面には、インクを保持可能な凹部が所定のパターンにて形成されている。ステージ12が第1レール部13上を移動することにより、凹版11はインク供給ユニット2の下方および、転写ユニット3の下方に移動することができる。
【0021】
インク充填ユニット2は、ノズル21、インク供給部22及びドクターブレード23を備えている。インク供給部22は、光硬化性インク(以下、単に「インク」とも称する)を貯蔵しており、ノズル21へインクを供給するよう構成されている。また、ドクターブレード23は、ブレード下端部がX軸方向において凹版11と重なる位置に配置されており、かつ、Z軸方向において、凹版11上面と略接する位置に配置されている。ノズル21はX軸方向に長尺状の形状を有し、凹版11がノズル21の下方に位置する時に、凹版11上にX軸方向に伸びる線状にインクを吐出する。ステージ12がさらに+Y方向へ一定の速度で移動するに従って、ドクターブレード23が凹版11上のインクを均し、インクが凹版11上に-Y方向に向かって広げられる。
【0022】
次に、
図3および
図4を参照しつつ、転写ユニット3の構造を説明する。転写ユニット3は、
図3および
図4に示すように、ブランケットロール30、2本の柱体31、第1ベース部32、第1モータ33、第1動力伝達部34、第2レール部35を備える。
図3に示すように、ブランケットロール30は、金属製のブランケット胴30aと、ブランケット胴30aの周囲を覆うシリコンゴム製のブランケット30bを備える。また、ブランケット胴30aの長手方向両側に、ブランケット胴30aの中央部から軸部30cが突出している。
【0023】
ブランケット胴30aは、長手方向の両端部においてそれぞれ、軸部30cが柱部31の孔部に挿入されることで、柱部31に支持される。柱部31は、Z方向に延在するとともに、下端(-Z方向端部)にて第1ベース部32に連結されている。ベース部32は、下部にて第2レール部35に連結されている。第2レール部35は、Y方向に延在する。ベース部32が第2レール部35を移動することで、ブランケットローラ30が、凹版11からインクを受理する受理位置と、ボトルBに印刷を行う印刷位置に移動可能である。また、軸部30cは、第1動力伝達部34に連結される。第1動力伝達部34は、第1モータ33の動力をブランケット軸30cへ伝達することで、ブランケットロール30を回転させる。第1動力伝達部34は、例えばそれぞれブランケット軸30cおよび第1モータ33の駆動軸に嵌合された2つのプーリと、当該プーリに架け渡されたゴムベルトから構成される。
【0024】
硬化ユニット4は、保持装置200に保持されたボトルBの上方(+Z側)に位置し、ボトルBに向けてボトルBの長手方向(X方向)に沿ったライン状のUV光を照射するよう構成されている。
【0025】
<ボトル保持装置200の構成>
次に、
図5を参照しつつボトル保持装置200の構成を説明する。
図5に示すように、ボトル保持装置200は、第2ベース部201、第1柱部202、第2柱部203、第1端支持部210、第2端支持部220を備える。第1柱部202、第2柱部203はZ方向に延在するとともに、下端(-Z方向端部)にて第2ベース部201に接続される。
【0026】
第1端支持部210は、第1端保持部211、第1シャフト212、軸受213、第2シャフト214、第2モータ215、第2動力伝達部216を備える。第1端保持部211は、ボトルBの第1端部(ボトル口部分)に嵌合し、ボトルBの第1端部を保持する。第1端保持部211は例えば、ボトルBのボトル口部分に形成された雄ねじに係合する雌ねじを備えた筒状部材であってもよい。第1端保持部211は、軸受213を介して第1シャフト212に連結されている。軸受213は、ベアリングを内部に有し、ボトルBおよび第1シャフト212の振動を緩和するよう構成される。なお、軸受213は第1柱部202に取り付けられている。そのため、第1端保持部211が軸受213に接続することで、第1端保持部211を第1柱部202によって支持することができる。
【0027】
第1シャフト212は、第2動力伝達部216を介して第2シャフト214と連結している。第2シャフト214は第2モータ215の駆動軸から動力を受けてシャフトの軸周りに回転する。第2動力伝達部216は第1シャフト212および第2シャフト214それぞれに嵌合された2つのプーリと、当該プーリに架け渡されたゴムベルトから構成される。これにより、第2モータ215の動作により、第1シャフト212を該シャフトの軸周りに回動することができる。
【0028】
第2端支持部220は、当接部221およびばね222を有する。ばね222は一端側で第2柱部203に接続され、他端で当接部221に接続する。当接部221は、ばね222のX軸方向に向かう付勢力により、ボトルBの第2端部(ボトル底部)に押し当てられる。上記の様にして、ボトルBは第1端支持部210により長手方向を水平方向に沿った状態で保持されるとともに、第2端支持部220により、ボトルBの上下方向への傾きが抑制される。
【0029】
<ボトルへの印刷時の動作>
次に、
図6を参照しつつ、ボトルBへの印刷時の動作を説明する。
【0030】
図6は、ボトルBへのインク転写時の、ボトルBおよびブランケットロール30のYZ平面に沿った断面図である。ボトルBへのインク転写時、ボトルBとブランケットロール30が当接した状態で、ボトルBおよびブランケットロール30は
図6の矢印の方向にそれぞれの表面速度が略同一となるように回転する。すなわち、ボトルBが第1モータ33の駆動力により第1方向(
図6における左回り方向)に、ボトルBが第2モータ215の駆動により第2方向(
図6における右回り方向)に回転する。ボトルBとブランケットロール30の接触部分において、インクがブランケットロール30からボトルBの側面へと転写される。ボトルBの側面に転写されたインクは、硬化ユニット4からのUV光により硬化され、ボトルBの側面に固定される。
【0031】
次に、
図7~
図8Bを参照しつつ、印刷中における、ボトルB表面のインク被覆率の増加のための動作(以下、ずらし動作とも称する)に関して説明する。
図7に示すように、印刷パターンのうち、単色のベタ塗り(塗りつぶし)を要求される領域Xの印刷方向先端部A1がボトルBとブランケットロール30の接触部位の印刷方向先端部分から1ピッチ分先に到達した状態で、第1モータ33および第2モータ215の駆動を停止してボトルBおよびブランケットロール30の回転を停止する。なお、
図7においては、見やすさのために網点の1ピッチ分ごとにインクを塗りつぶしおよび斜線により区別して記載しているが、実際には各ピッチとも同色のインクにより形成されている。また、第2モータ215の電磁ブレーキを作動させ、ボトルBがブランケットロール30の回転に追従して受動的に回転することを禁止しておく。この状態で、
図7に矢印で示すように、第1モータ33を駆動し、ブランケットロール30を、印刷パターンにおける網点の1ピッチ分だけ第2方向(印刷時のブランケットロール30の回転方向と逆方向)へ回転させる。ブランケットロール30の回転によって、ボトルB表面のインク網点が、
図8Aの状態から1ピッチ分引き延ばされる。その結果、
図8Bに示すように、領域Xにおけるボトル側面のインク被覆率を、インクが網点状に転写された状態よりも大きくすることができる。以上により、ずらし動作が終了する。
【0032】
ずらし動作の終了後は、第1モータ33を印刷時の方向と逆回転させ、ブランケットロール30を印刷パターンにおける網点の1ピッチ分だけ印刷方向逆向き(
図7の矢印と反対の方向)に回転させる。これにより、ブランケットロール30とボトルB側面との相対位置関係はずらし動作前の状態に戻る。その後、再び第1モータ33および第2モータ215の駆動により、ブランケットロール30とボトルBを回転させ、印刷パターンのうちの領域X以降の部分がボトルBへ印刷され、ボトルBへの印刷が終了する。
【0033】
<変形例1>
次に、
図9~
図10Bを参照しつつ、本発明の実施形態の変形例を説明する。本変形例は、転写ユニット2においてアクチュエータ36が設けられている点およびずらし動作におけるブランケットの移動方向が上記の実施形態と異なる。それ以外の構成については上述した実施形態と同一であるため、同一の符号を付与し、説明は省略する。
図9に示すように、アクチュエータ36はブランケット軸30cに連結され、ブランケット軸30cを介してブランケットロール30をブランケットロール長手方向(X方向)に移動可能に構成されている。
【0034】
本変形例におけるずらし動作は、ブランケットロール30とボトルBの回転が停止されると、アクチュエータ36は、ブランケット軸30cを介して、ブランケットロール30を、ブランケット長手方向(X方向)へ、印刷パターンの網点1ピッチ分だけボトルBに対して相対移動させることにより実行される。この処理によって、印刷パターンの領域X中の網点は、
図10Aの矢印の向きに広げられる。その結果、
図10Bに示すように、領域Xの印刷時のボトル側面上のインクの被覆率を大きくすることができる。ずらし動作の後、ブランケットロール30を、移動した方向と逆方向へ-X方向だけ移動させ、領域X以降の部分の転写が行われる。
【0035】
以上、本発明の実施形態および変形例を説明したが、本発明は上記の実施形態および変形例に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0036】
例えば、上記実施形態では、ずらし動作の際にボトルBの回転を禁止し、ブランケットロール30を第1方向へ回転させたが、これとは逆に、ブランケットロール30の回転を禁止し、ボトルBを第1方向(印刷時のボトルBの回転方向と逆方向)に回転させてもよい。
【0037】
また、上記変形例において、ずらし動作の際にブランケットロール30をアクチュエータ36により+X方向に移動させたが、ランケットロール30を-X方向に移動してもよい。また、アクチュエータをボトル保持装置200に設けて、ボトルBを+X方向あるいは-X方向に移動させてもよい。
【0038】
また、上記実施形態では、ずらし動作において、網点の1ピッチ分の距離だけブランケットロール30とボトルBを相対移動したが、ブランケットロール30とボトルBの相対移動量は、これに限定されない。例えば、0.5ピッチ~5ピッチの範囲で相対移動量を任意に設定してもよい。
【0039】
上記実施形態では、ブランケットロール30からボトルBへの印刷パターンの転写において、ずらし動作を領域Xに対する1回のみ行ったが、ずらし動作は転写中、複数の領域に対して(すなわち複数回)行われてもよい。
【0040】
上記実施形態においては、ボトルBへの印刷においてずらし動作を行ったが、印刷対象とブランケットロール30との相対移動を規制できる構成であれば、印刷用紙等の、ボトル以外のワークへの印刷においてずらし動作によるインク被覆率の増加処理を行ってもよい。
【0041】
上記実施形態においては、ずらし動作の際、ブランケットローラ30をボトルBに対して第2方向へ相対移動した後、第1方向に移動させることでブランケットローラ30とボトルBの相対位置を移動前の位置に戻していたが、これに代えて、ずらし動作の際、ブランケットローラ30をボトルBに対して第1方向へ相対移動するようにし、凹版11上に形成される凹部のパターンを、ブランケットローラ30へインクが転写された時に領域X以降の部分がずらし動作における移動量分だけ転写方向後方に位置するように作成されていてもよい。このようにすれば、ずらし動作後、ブランケットローラ30とボトルBの相対位置を戻す動作を行うことなく、ボトルBへの転写を再開することができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、印刷版からインクをブランケットローラに受理し、ブランケットローラからワークへインクを転写するオフセット印刷において、転写機構の数を増やすことなく、単色の塗りつぶし度合(インク被覆率)を向上させるオフセット印刷方法に適用することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 版ステージユニット
2 インク充填ユニット
3 転写ユニット
4 硬化ユニット
11 凹版
12 ステージ
13 第1レール部
21 ノズル
22 インク供給部
23 ドクターブレード
30 ブランケットローラ
31 柱体
32 第1ベース部
33 第1モータ
34 第1動力伝達部
35 第2レール部
36 アクチュエータ
101 第1印刷装置
102 第2印刷装置
200 ボトル保持装置
201 第2ベース部
202 第1柱部
203 第2柱部
210 第1端支持部
220 第2端支持部
B ボトル