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特開2022-156757ガラス板の製造装置、及びガラス板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156757
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】ガラス板の製造装置、及びガラス板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 33/03 20060101AFI20221006BHJP
   B28D 5/00 20060101ALI20221006BHJP
   B28D 7/02 20060101ALI20221006BHJP
   B26F 3/00 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
C03B33/03
B28D5/00 Z
B28D7/02
B26F3/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060603
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】三宅 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】奥山 勲
(72)【発明者】
【氏名】桐畑 洋平
【テーマコード(参考)】
3C060
3C069
4G015
【Fターム(参考)】
3C060AA08
3C060CB03
3C060CB14
3C069AA03
3C069BA04
3C069CA11
3C069CB01
3C069DA07
3C069EA05
4G015FA01
4G015FA03
4G015FA04
4G015FB01
4G015FC02
4G015FC04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】切断室から廃棄室へ向かう気流によるガラス板の揺れを低減し、ガラス板の破損を防止するガラス板の製造装置、および製造方法を提供する。
【解決手段】縦姿勢のガラス板を搬送経路に沿って搬送する搬送装置4と、前記搬送経路の途中に設けられた切断室2と、前記搬送経路で前記ガラス板から不要部G2を切断して分離させる切断機構5と、切断前後で前記不要部G2を保持可能な保持部材と、前記切断室2の下方に設けられ前記切断室2より気圧を低く保たれた廃棄室3と、前記保持部材の保持の解除に伴って落下する切断後の前記不要部G2を前記廃棄室3に排出して廃棄するための廃棄口7と、を備えたガラス板の製造装置であって、前記搬送経路から前記廃棄口7へ向かう気流を遮る遮蔽部材101、102が設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦姿勢のガラス板を搬送経路に沿って搬送する搬送機構と、前記搬送経路の途中に設けられた切断室と、前記搬送経路で前記ガラス板から不要部を切断して分離させる切断機構と、切断前後で前記不要部を保持可能な保持部材と、前記切断室の下方に設けられ前記切断室より気圧を低く保たれた廃棄室と、前記保持部材の保持の解除に伴って落下する切断後の前記不要部を前記廃棄室に排出して廃棄するための廃棄口と、を備えたガラス板の製造装置であって、
前記搬送経路から前記廃棄口へ向かう気流を遮る遮蔽部材が設けられていることを特徴とするガラス板の製造装置。
【請求項2】
前記遮蔽部材は、前記搬送経路と前記廃棄口との間に配置され、上下方向に伸びる防風部材であることを特徴とする請求項1に記載のガラス板の製造装置。
【請求項3】
前記廃棄口は、前記搬送経路の上流側に位置する上流側廃棄口と、前記搬送経路の下流側に位置する下流側廃棄口と、を備え、
前記上流側廃棄口のうちで前記搬送経路の上流側に前記防風部材である第一防風部材が配置され、前記上流側廃棄口のうちで前記搬送経路の下流側が第一閉塞部材で閉塞され、
前記下流側廃棄口のうちで前記搬送経路の下流側に前記防風部材である第二防風部材が配置され、前記下流側廃棄口のうちで前記搬送経路の上流側が第二閉塞部材で閉塞されることを特徴とする請求項2に記載のガラス板の製造装置。
【請求項4】
前記遮蔽部材は、前記廃棄口を開閉するシャッタであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のガラス板の製造装置。
【請求項5】
前記廃棄口は、前記不要部を前記廃棄口に案内するように傾斜する滑り台状の案内部材を有することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のガラス板の製造装置。
【請求項6】
前記ガラス板の厚さは、0.35mm以下であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のガラス板の製造装置。
【請求項7】
縦姿勢のガラス板を搬送経路に沿って搬送する搬送工程と、前記搬送経路の途中に設けられた切断室内で前記ガラス板から不要部を切断して分離させる切断工程と、切断前後で前記不要部を保持可能な保持部材を用いて切断後の前記不要部を廃棄口に落下させ、前記切断室より気圧を低く保たれた廃棄室に前記不要部を廃棄する廃棄工程と、を有するガラス板の製造方法であって、
前記搬送経路から前記廃棄口へ向かう気流が遮蔽部材によって遮られた状態で、前記搬送工程において前記搬送経路に沿って前記ガラス板を搬送することを特徴とするガラス板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板の製造装置、及びガラス板の製造方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、ガラス板を製造するための手法としては、オーバーフローダウンドロー法、スロットダウンドロー法、リドロー法に代表されるダウンドロー法を利用した手法や、フロート法を利用した手法が広く採用されている。これらの手法を利用したガラス板の製造工程の一例としては、以下のようなものが挙げられる。
【0003】
はじめに、溶融ガラスからガラスリボンを連続的に成形する。このとき、ガラスリボンの幅方向の両端部には、中央部と比較して厚みの大きい耳部と称される部位が形成される。次に、ガラスリボンを所定の長さ毎に幅方向に切断することで、ガラスリボンから製品ガラス板の元となるガラス板を繰り返し切り出す。次に、これらのガラス板から耳部を含む不要部(製品にならない部位)を切断して分離させる。その後、不要部を分離させたガラス板に対して、研削・研磨加工や洗浄処理等の各種処理を施すことで、製品ガラス板が製造される。
【0004】
ここで、ダウンドロー法を利用してガラス板を製造する場合には、成形後のガラスリボンが縦姿勢(鉛直姿勢)をとった状態にある。そのため、平面的なスペースを省略する観点等から、縦姿勢のガラスリボンから切り出したガラス板について、これを縦姿勢のまま搬送すると共に、その搬送経路上にてガラス板から不要部を切断する場合がある。特許文献1には、不要部の切断を行う切断室から、階下に設けられた廃棄室へ、切断された不要部を落下廃棄することで、効率良くガラス板を製造する方法が開示されている。この方法を用いる場合、廃棄室へ落下した不要部からガラス粉が発生し、廃棄室内に浮遊する。ガラス板へのガラス粉の付着を防ぐため、廃棄室内の気圧は切断室内の気圧より低く保たれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-176038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記製造方法を用いる場合、切断室と廃棄室との気圧差により、切断室から廃棄室へ向かう気流が発生し、搬送中のガラス板に揺れを発生させるという問題があった。ガラス板の揺れが大きくなると、周囲の構造物に衝突し、ガラス板が破損するおそれがある。
【0007】
上記の事情に鑑みてなされた本発明は、切断室から廃棄室へ向かう気流によるガラス板の揺れを低減し、ガラス板の破損を防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく創案されたガラス板の製造装置は、縦姿勢のガラス板を搬送経路に沿って搬送する搬送機構と、前記搬送経路の途中に設けられた切断室と、前記搬送経路で前記ガラス板から不要部を切断して分離させる切断機構と、切断前後で前記不要部を保持可能な保持部材と、前記切断室の下方に設けられ前記切断室より気圧を低く保たれた廃棄室と、前記保持部材の保持の解除に伴って落下する切断後の前記不要部を前記廃棄室に排出して廃棄するための廃棄口と、を備えたガラス板の製造装置であって、前記搬送経路から前記廃棄口へ向かう気流を遮る遮蔽部材が設けられていることを特徴とする。廃棄室は切断室より気圧が低く保たれているため、切断室から廃棄口を経て廃棄室へ向かう気流が生じる。この気流によって搬送経路に沿って搬送されるガラス板が揺れ、周囲の構造物に衝突して破損するおそれがある。上記の構成によれば、搬送経路から廃棄室へ向かう気流を遮蔽部材で遮ることができるため、ガラス板の揺れを低減し、破損を防止することができる。
【0009】
上記の構成において、前記遮蔽部材は、前記搬送経路と前記廃棄口との間に配置され、上下方向に伸びる防風部材であることが好ましい。このような構成によれば、縦姿勢のガラス板に沿うように防風部材を配置することができ、ガラス板の揺れを効果的に低減することができる。
【0010】
上記の構成において、前記廃棄口は、前記搬送経路の上流側に位置する上流側廃棄口と、前記搬送経路の下流側に位置する下流側廃棄口とを備え、前記上流側廃棄口のうちで前記搬送経路の上流側に前記防風部材である第一防風部材が配置され、前記上流側廃棄口のうちで前記搬送経路の下流側が第一閉塞部材で閉塞され、前記下流側廃棄口のうちで前記搬送経路の下流側に前記防風部材である第二防風部材が配置され、前記下流側廃棄口のうちで前記搬送経路の上流側が第二閉塞部材で閉塞されることが好ましい。このような構成によれば、上流側廃棄口と下流側廃棄口を備えることにより、ガラス板の上流側と下流側それぞれから切断後された不要部を、並行して廃棄することができる。また、上流側に第一防風部材を配置すると共に下流側に第二防風部材を配置することにより、不要部を廃棄口上に移動させる際に第一防風部材及び第二防風部材が阻害することを防止できる。さらに、第一閉塞部材及び第二閉塞部材で廃棄口の一部を閉塞することにより、切断室から廃棄室へ向かう気流を遮ることができ、ガラス板の揺れをより確実に低減することができる。
【0011】
上記の構成において、前記遮蔽部材は、前記廃棄口を開閉するシャッタであることが好ましい。このような構成によれば、シャッタによって廃棄口を閉じることにより、切断室から廃棄口を経て廃棄室へ向かう気流を遮ることができ、より確実にガラス板の揺れを低減することができる。
【0012】
上記の構成において、前記廃棄口は、前記不要部を前記廃棄口に案内するように傾斜する滑り台状の案内部材を有することが好ましい。このような構成によれば、切断後の不要部を廃棄口へ落下させ、廃棄する際に、不要部が滑り台状の案内部材に沿って移動することから、不要部を確実に廃棄口に到達させることができる。
【0013】
上記の構成において、前記ガラス板の厚さは、0.35mm以下であることが好ましい。ガラス板が薄いほど、気流による揺れが大きくなり、また、衝突した場合に破損するおそれも高まる。このような構成によれば、ガラス板の揺れを低減し、破損を防止する発明の効果が顕著に顕れる。
【0014】
また、本発明に係るガラス板の製造方法は、縦姿勢のガラス板を搬送経路に沿って搬送する搬送工程と、前記搬送経路の途中に設けられた切断室内で前記ガラス板から不要部を切断して分離させる切断工程と、切断前後で前記不要部を保持可能な保持部材を用いて切断後の前記不要部を廃棄口に落下させ、前記切断室より気圧を低く保たれた廃棄室に前記不要部を廃棄する廃棄工程と、を有するガラス板の製造方法であって、前記搬送経路から前記廃棄口へ向かう気流が遮蔽部材によって遮られた状態で、前記搬送工程において前記搬送経路に沿って前記ガラス板を搬送することを特徴とする。このような構成によれば、切断室から廃棄室へ向かう気流を遮ることでガラス板の揺れを低減し、ガラス板の破損を防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、切断室から廃棄室へ向かう気流によるガラス板の揺れを低減し、ガラス板の破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、ガラス板の製造装置及び製造方法を示す断面図である。
図2図2は、切断工程を実行する際の折割機構及び廃棄口を示す平面図である。
図3図3は、切断工程を実行する際の折割機構及び廃棄口を示す正面図である。
図4図4は、廃棄工程を実行する際の折割機構及び廃棄口を示す平面図である。
図5図5は、廃棄工程を実行する際の折割機構及び廃棄口を示す正面図である。
図6図6は、廃棄口を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面に従って、本発明に係るガラス板の製造装置の一実施形態について説明する。なお、実施形態の説明で参照する複数の図面の相互間において、X方向同士、Y方向同士、Z方向同士は、同方向である。また、X方向、Y方向、Z方向は互いに直交する方向である。
【0018】
図1に示すように、製造装置1は、切断室2と、廃棄室3と、搬送経路R(後述の図2参照)に沿って搬送方向Dにガラス板Gを搬送する搬送機構4とを備える。製造装置1は、複数階建て構造の建築物に設けられ、切断室2は、廃棄室3の上階に位置する。この製造装置1は、切断室2内にてガラス板Gから製品にならない不要部G2を切断して分離させ、切断後の不要部G2について、落下による廃棄室3への廃棄を行うように構成されている。
【0019】
ここで、ガラス板Gは、搬送方向Dにおける上流側に位置する上流側不要部G21と、下流側に位置する下流側不要部G22と、これらとは異なって製品になる製品部G1とを有する。以下の説明では、上流側不要部G21と下流側不要部G22とを区別して表記する。ただし、上流側不要部G21と下流側不要部G22とに共通する説明については、両者を区別せずに単に不要部G2と表記する。上流側不要部G21は搬送中にガラス板Gの最後部となる部位であり、下流側不要部G22は搬送中にガラス板Gの先頭部となる部位である。これら上流側不要部G21及び下流側不要部G22の相互間に存する部位が製品部G1である。なお、不要部G2の各々には、他の部位と比較して厚みの大きい耳部と称される部位が含まれている。しかしながら、この限りではなく、不要部G2に耳部が含まれない場合もある。また、ガラス板Gは厚さが0.35mm以下であることが好ましい。ガラス板Gが薄いほど、切断室2から廃棄口7を経て廃棄室3へ向かう気流による、ガラス板Gの揺れが大きくなり、また、衝突した場合に破損するおそれも高まるため、気流を遮る本発明の効果が顕著に顕れる。
【0020】
切断室2は、搬送経路Rの途中に設けられ、天井壁21と床壁22と側壁23とを有する。床壁22には、切断後の不要部G2を廃棄室3に排出して廃棄するための廃棄口7が形成されている。この廃棄口7を通じて切断室2と廃棄室3とが空間的に繋がっている。
【0021】
廃棄室3は、天井壁31と床壁32と側壁33とを有する。床壁32には、切断室2から落下してくる不要部G2を収容するための箱型の収容容器34が配置されている。この収容容器34は廃棄口7の真下に配置されている。
【0022】
廃棄室3内は、切断室2内よりも気圧が低くなるように調整されている。これにより、廃棄室3へ落下廃棄された不要部G2から発生するガラス粉が切断室2内へ流入することが防止される。また、切断室2内と廃棄室3内との間の気圧差により、切断室2から廃棄口7を経て廃棄室3へ向かう気流が発生する。
【0023】
切断室2の搬送方向Dの上流側には、スクライブ室R1が設けられ、切断室2の搬送方向Dの下流側には、検査室R2が設けられる。スクライブ室R1及び検査室R2は、搬送経路Rの途中に設けられる。スクライブ室R1と切断室2の間及び切断室2と検査室R2の間は、図示しない仕切り壁で仕切られている。それらの仕切り壁には、搬送されるガラス板Gを通過させるために、スリット状の開口が設けられる。そのスリット状の開口は、シャッタで開閉することが可能である。
【0024】
搬送機構4は、ガラス板Gの上辺部(製品部G1の上辺部)を把持する複数の把持部材41を備えている。複数の把持部材41は、X方向に延びた図示しないレールに沿って移動が可能となっている。これにより、複数の把持部材41によってガラス板Gを吊り下げ支持した状態でX方向(ガラス板Gの表面に沿う方向)に搬送することが可能となっている。この搬送に伴い、ガラス板Gがスクライブ室R1、切断室2及び検査室R2に搬出入される。
【0025】
切断機構5は、スクライブ機構51と、折割機構52とを備えている。
【0026】
スクライブ機構51は、搬送機構4によりスクライブ室R1に搬入されてくるガラス板Gに切断の起点となるスクライブ線Sを形成するための機構である。スクライブ機構51は、ガラス板Gの表面上を不要部G2と製品部G1との境界Lに沿って転動しながらスクライブ線Sを形成するスクライブホイール511と、ガラス板Gを裏面側から支持することによってスクライブホイール511によるスクライブ線Sの形成を補助する補助バー512とを備えている。なお、スクライブ線Sの形成後のガラス板Gは、搬送機構4によりスクライブ室R1から搬出された後、搬送経路Rの下流側に搬送されて切断室2に搬入される。
【0027】
図1図3に示すように、折割機構52は、スクライブ線Sを形成済みのガラス板Gを折り割って切断するための機構であり、切断室2に配置される。折割機構52は、ガラス板Gの製品部G1におけるスクライブ線Sの近傍を表裏から挟んで支持する一対の支持バー521、521と、ガラス板の不要部G2を表面側から裏面側に押し込むのに伴い、スクライブ線Sの周辺部を表面側が凸となるように湾曲させて曲げ応力を作用させる折割バー522とを備えている。なお、詳細は後述するが、不要部G2と分離させた後のガラス板G(製品部G1のみでなるガラス板G)は、切断後の不要部G2との衝突を回避しつつ、搬送経路Rの下流側に搬送され、切断室2から搬出されて検査室R2に搬入される。
【0028】
保持部材6は、折割機構52に併設されている。この保持部材6は、切断前後で不要部G2を縦姿勢のまま保持することが可能である。これにより、保持部材6は、切断室2に搬入されたガラス板Gについて、当該ガラス板Gの折割前から不要部G2を保持すると共に、折割中および折割後においても不要部G2を保持する構成となっている。折割中における保持部材6は、折割バー522による不要部G2の押し込み動作に付随して、スクライブ線Sを中心に旋回しながら、矢印Aに沿って廃棄位置Pdまで移動する。
【0029】
保持部材6は、不要部G2の保持のために、当該不要部G2の吸着保持が可能な複数の吸着部61を備えている。これら複数の吸着部61は上下複数段に並べて配置されている。各吸着部61は、図示しない負圧発生装置(例えば真空ポンプ)と接続されており、負圧発生装置の稼働に伴ってガラス板Gの不要部G2を裏面側から吸着保持することが可能である。さらに、吸着部61は、図4及び図5に示すように、不要部G2を廃棄口7を経て廃棄室3へ落下廃棄する際に、不要部G2に対して裏面側から表面側に流れる向きに真空破壊ガスとしての吸着破壊ガスGs(例えば空気)を噴射することが可能である。
【0030】
本実施形態では、上流側不要部G21の切断及び下流側不要部G22の切断を並行して行うため、製造装置1はスクライブ機構51、折割機構52、保持部材6をそれぞれ2つずつ備えている。また、切断後の上流側不要部G21の廃棄及び下流側不要部G22の廃棄を並行して行うため、製造装置1は2つの廃棄口7を備えている。以下、搬送経路Rにおける上流側に位置する廃棄口7を上流側廃棄口71、下流側に位置する廃棄口7を下流側廃棄口72と称する。
【0031】
図2に示すように、廃棄口7は、平面視で(Z方向から視て)ガラス板Gの搬送経路Rから離間した状態で配置される。図2図4、及び図6に示すように、上流側廃棄口71上には、落下中の上流側不要部G21を廃棄口7に案内するための上流側誘導部材821及び上流側案内部材811と、上流側廃棄口71の一部を閉塞する第一閉塞部材91と、上流側廃棄口71へ向かう気流を遮る遮蔽部材としての第一防風部材101とが設置されている。また、下流側廃棄口72上には、落下中の下流側不要部G22を廃棄口7に案内するための下流側誘導部材822及び下流側案内部材812と、下流側廃棄口72の一部を閉塞する第二閉塞部材92と、下流側廃棄口72へ向かう気流を遮る遮蔽部材としての第二防風部材102とが設置されている。
【0032】
ここで、以下の説明では、上流側廃棄口71と下流側廃棄口72とを区別して表記する。ただし、上流側廃棄口71と下流側廃棄口72とに共通する説明については、両者を区別せずに単に廃棄口7と表記する。同様に、上流側誘導部材821と下流側誘導部材822、上流側案内部材811と下流側案内部材812、第一防風部材101と第二防風部材102、第一閉塞部材91と第二閉塞部材92についても、それぞれに共通する説明については、両者を区別せずに、誘導部材82、案内部材81、防風部材10、閉塞部材9と表記する。
【0033】
誘導部材82は、上下方向(Z方向)に伸びるように設置されており、上下方向に直交する断面形状がL字状であると共に、その下端部が廃棄口7の縁部に沿ってそれぞれ固定されている。なお、誘導部材82の上端部は、落下前の不要部G2の上端部と略同一高さに位置している。しかしながら、この限りではなく、誘導部材82の上端部が、落下前の不要部G2の上端部よりも低位置にあってもよいし、高位置にあってもよい。ここで、上流側誘導部材821は、矩形状の上流側廃棄口71のうちで上流側の辺及び搬送経路Rから遠い方の辺に固定されている。また、下流側誘導部材822は、矩形状の下流側廃棄口72のうちで下流側の辺及び搬送経路Rから遠い方の辺に固定されている。
【0034】
案内部材81は、切断後の不要部G2を廃棄口7に案内するように傾斜する滑り台形状である。傾斜角は鉛直方向に対して35°以上45°以下であることが好ましい。また、本実施形態では案内部材81は傾斜した平面形状であるが、曲面形状であっても良い。ここで、上流側案内部材811は、上流側へ向かって低くなるように傾斜している。また、下流側案内部材812は、下流側へ向かって低くなるように傾斜している。誘導部材82及び案内部材81により、落下廃棄される不要部G2を正確に廃棄口へ納めることができる。
【0035】
閉塞部材9は、廃棄口7の一部を閉塞する平面形状の部材であり、廃棄口7の縁部に固定されている。閉塞部材9は、廃棄口7の一部を閉塞することにより、廃棄口7に向かう気流が発生する範囲を制限して狭くする。また、廃棄口7における圧力損失を増加させ、切断室2から廃棄口7を経て廃棄室3へ向かう気流の流量を低減する。閉塞部材9は案内部材81と一体として構成されていても良い。ここで、第一閉塞部材91は上流側廃棄口71の下流側を閉塞している。また、第二閉塞部材92は下流側廃棄口72の上流側を閉塞している。
【0036】
防風部材10は、廃棄口7と搬送経路との間に、上下方向に伸びるように設置される。防風部材10は、上下方向に直交する断面形状が矩形状であると共に、その下端部が廃棄口7の縁部(搬送経路Rから近い方の辺)に固定されている。防風部材10の上端部は、誘導部材82の上端部より低くても良い。また、防風部材10は、誘導部材82と一体として構成されていても良い。ここで、第一防風部材101は、上流側廃棄口71の上流側(搬送経路Rから近い方の辺の上流側)にのみ設置され、下流側は上流側廃棄口71上を不要部G21が通過可能である。また、第二防風部材102は、下流側廃棄口72の下流側(搬送経路Rから近い方の辺の下流側)にのみ設置され、上流側は下流側廃棄口72上を不要部G22が通過可能である。閉塞部材9及び防風部材10により、搬送経路Rから廃棄口7へ向かう気流を効果的に遮ることができる。
【0037】
以下、製造装置1を用いたガラス板の製造方法について説明する。
【0038】
切断工程の実行にあたり、スクライブ線Sが形成済みのガラス板Gが切断室2に搬入されて図2及び図3に示す状態となると、保持部材6の吸着部61が不要部G2の吸着保持を開始する。まず、製品部G1におけるスクライブ線Sの近傍を一対の支持バー521、521により支持しつつ、折割バー522により不要部G2を裏面側に押し込む。これに応じて保持部材6を、スクライブ線Sを中心に旋回させながら、矢印Aに沿って廃棄位置Pdまで移動させる。これにより、表面側(スクライブ線Sが形成された面側)が凸となるようにスクライブ線Sの周辺部が湾曲し、やがてガラス板Gが折り割られて切断される。この時点でガラス板Gから不要部G2が分離される。以上により切断工程が完了し、図4及び図5に示す状態となる。切断後の不要部G2は、依然として保持部材6により保持された状態にある。
【0039】
切断工程が完了すると、次いで、切断後の不要部G2を廃棄室3に廃棄する廃棄工程を実行する。廃棄工程の実行にあたっては、まず、保持部材6が吸着部61による不要部G2の吸着保持を解除すると共に、吸着部61から誘導部材82に向かう方向に吸着破壊ガスGsを噴射する。これに伴って、図4及び図5に想像線で示すように、不要部G2を縦姿勢のまま誘導部材82側に誘導しつつ廃棄口7に向けて落下させる。落下する不要部は、誘導部材82及び案内部材81によって廃棄口7へ案内され、廃棄室3へ排出される。廃棄室3へ排出された不要部G2は、廃棄室3に配置された収容容器34内に収容される。以上により廃棄工程が完了する。なお、不要部G2と分離させた後のガラス板Gは、不要部G2が搬送経路Rから離間した廃棄位置Pdに移動した後、折割機構52から搬出して搬送経路Rの下流側に搬送される。これにより、不要部G2と、これと分離後のガラス板Gとの衝突が回避される。
【0040】
以上のようなガラス板の製造装置及びガラス板の製造方法は、防風壁として防風部材10を備えることで、搬送経路Rから廃棄口7へ向かう気流を低減し、ガラス板Gの揺れを防止することができる。また、誘導部材82及び案内部材81を備えることで、落下廃棄した不要部G2を確実に廃棄口7へ納めることができる。さらに、閉塞部材9を備えることで、切断室2から廃棄口7を経て廃棄室3へ向かう気流の流量を低減することができ、より確実にガラス板Gの揺れを防止することができる。これにより、例えば、切断室2にガラス板Gを搬入及び搬出する際に、ガラス板Gがスリット状の開口と衝突し難くなり、ガラス板Gの破損を防止できる。
【0041】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0042】
上記実施形態では、遮蔽部材としての防風部材を用いて、切断室から廃棄口を経て廃棄室へ向かう気流を遮っていたが、これに限定されない。防風部材に代えて又は防風部材に加えて遮蔽部材として廃棄口を開閉するシャッタを用いても良い。切断後の不要部が廃棄口通過する時のみシャッタを開き、それ以外の時(例えばガラス板Gの搬送時)はシャッタを閉じることで、より効率良く切断室から廃棄口を経て廃棄室へ向かう気流を低減することができる。これにより、効果的にガラス板Gの揺れ及び破損を防止できる。
【0043】
上記実施形態では、保持部材は吸着部による吸着保持を用いて不要部を保持していたが、これに限定されない。開閉動作を行う一対の爪部を設け、一対の爪部を閉じることで不要部を保持しても良い。
【0044】
上記実施形態では、製造装置はスクライブ機構、折割機構、保持部材、廃棄口、閉塞部材、及び防風部材をそれぞれ2つずつ備え、上流側不要部及び下流側不要部の切断を並行して行い、廃棄を並行して行っていたが、これに限定されない。スクライブ機構、折割機構、保持部材、廃棄口、閉塞部材、及び防風部材をそれぞれ1つずつの備え、上流側不要部及び下流側不要部をそれぞれ別個に切断及び廃棄しても良い。
【0045】
上記実施形態では、廃棄口の一部を閉塞部材で閉塞したが、閉塞部材を省略し、廃棄口を小さくしてもよい。既存の設備を有効利用すると共に設備コストを削減する観点では、廃棄口の一部を閉塞部材で閉塞することが好ましい。
【0046】
上記実施形態では、防風部材を廃棄口の縁部に沿って設けたが、搬送経路と廃棄口との間に配置されていればよい。効率良く気流を遮る観点では、上記実施形態のように、防風部材を廃棄口の縁部に沿って設けると共に、防風部材を廃棄口の縁部に沿って設けられた誘導部材と隙間なく繋がることが好ましい。また、防風部材の搬送方向の長さL1は、廃棄口の開口の搬送方向の長さL2よりも長いことが好ましく、1.2×L2≦L1≦2.0×L2であることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、切断室から廃棄室へ向かう気流によるガラス板の揺れを低減し、ガラス板の破損を防止することに好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 製造装置
2 切断室
3 廃棄室
4 搬送機構
5 切断機構
6 保持部材
7 廃棄口
71 上流側廃棄口
72 下流側廃棄口
81 案内部材
91 第一閉塞部材
92 第二閉塞部材
10 防風壁
101 第一防風壁
102 第二防風壁
G ガラス板
R 搬送経路
図1
図2
図3
図4
図5
図6