(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156765
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】高所作業装置
(51)【国際特許分類】
B64C 39/02 20060101AFI20221006BHJP
B64C 27/08 20060101ALI20221006BHJP
B64D 47/08 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B64C39/02
B64C27/08
B64D47/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060616
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】521398600
【氏名又は名称】山佐フロンティア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105980
【弁理士】
【氏名又は名称】梁瀬 右司
(72)【発明者】
【氏名】佐野 範一
(72)【発明者】
【氏名】村上 秀喜
(72)【発明者】
【氏名】山口 隆司
(72)【発明者】
【氏名】川崎 寛昭
(72)【発明者】
【氏名】岡本 健利
(57)【要約】
【課題】カメラ等を収容した作業ユニットが山中の樹木の枝葉などの障害物に接触するなどの干渉が生じたときに、作業ユニットを障害物との干渉状態から容易に脱却できる構造にして、山岳救助等の作業効率の向上を図れるようにした高所作業装置を提供する。
【解決手段】作業ユニット7の降下及び上昇を、糸のスプールからの繰り出し及びスプールへの巻き上げにより行うリール機構を設け、作業ユニット7には、横断面がほぼ円形を成し上方に向かうに連れて次第に径小になるテーパー状の周面72aを有し、作業ユニット7の上昇時に該上昇を妨げることなくテーパー状の周面72aを障害物が摺接する上部構造体72と、球面下部であるほぼ半球状の周面73aを有し、作業ユニット7の降下時に半球状の周面73aを障害物が摺接する下部構造体73とを設ける。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高所基地から作業ユニットを降下させ、所定の作業終了の後に前記作業ユニットを上昇させる高所作業装置であって、
前記高所基地または前記作業ユニットには、前記作業ユニットの前記降下及び上昇を、吊下げ用索体のスプールからの繰り出し及び前記スプールへの巻き上げにより行うリール機構が設けられ、
前記作業ユニットは、
横断面がほぼ円形を成し上方に向かうに連れて次第に径小になるテーパー状の周面を有し、前記作業ユニットの上昇時に該上昇を妨げることなく前記テーパー状の周面を障害物が摺接する上部構造体と、
球面下部であるほぼ半球状の周面を有し、前記作業ユニットの降下時に前記半球状の周面を障害物が摺接する下部構造体と
を備え、
前記作業ユニットは、上昇時に前記上部構造体の前記テーパー状の周面を前記障害物が摺接することによって、上昇方向の垂直方向であって前記障害物から離れる方向に、上昇時に前記作業ユニットにかかる力を分散する形状に形成されていることを特徴とする高所作業装置。
【請求項2】
前記下部構造体の内部にカメラが配置され、
前記下部構造体の前記半球状の周面が透明に形成され、
前記カメラは、前記作業ユニットの上昇中または降下中に、透明の前記半球状の周面を通した撮影を行うことが可能であることを特徴とする請求項1に記載の高所作業装置。
【請求項3】
前記索体に撚れが生じたときに、前記上部構造体を前記下部構造体に対して回転させることで下部構造体の姿勢を保持する保持機構が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の高所作業装置。
【請求項4】
前記作業ユニットは、
前記上部構造体の上方に配設されて、前記リール機構から繰り出された前記索体の下端の1箇所で前記作業ユニットを前記索体に連結するジョイント部を備え、
前記ジョイント部は、前記上部構造体の前記テーパー状の周面の延長上に位置する仮想頂点よりも下方に位置していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の高所作業装置。
【請求項5】
前記作業ユニットの長さが、該作業ユニットの最大径の1.5倍以上10倍以下であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の高所作業装置。
【請求項6】
前記高所基地は、遠隔操作により飛行し、上空でホバリングが可能な飛行体であり、
前記飛行体は、
前記リール機構の前記索体の巻き上げによる前記作業ユニットの上昇により、前記テーパー状の周面を有する前記上部構造体が脱着自在に嵌まり込んだ状態で前記作業ユニットを回収する回収部と、
前記回収部の前記作業ユニット回収時の衝撃を吸収する衝撃吸収部と
を備えることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の高所作業装置。
【請求項7】
前記上部構造体の前記テーパー状の周面は、角度が45°±10°のテーパー形状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の高所作業装置。
【請求項8】
前記作業ユニットは、比重が0.8~2.5に形成されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の高所作業装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人飛行体(例えば、ドローン)などの高所基地から作業ユニットを降下させ、所定の作業終了の後に作業ユニットを上昇させる高所作業装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、山や海で遭難した要救助者を捜索し、或いは、災害発生時に山林の被害状況を探知するのに、遠隔操作により飛行する無人飛行体の一つであるドローンを利用し、ドローンに搭載されたカメラやセンサにより、遠隔地から上空から地表近くや水中を撮影したり探知したりすることが行われている。従来のドローン搭載のカメラでは木の枝葉等に視界を塞がれるなどして、上空からは遭難者の確認ができないため、特許文献1のように吊り下げる方法が一般的である。
【0003】
具体的には、例えば吊下げ用の糸やワイヤなどの索体により、カメラやセンサを降下・上昇自在にドローンに直接吊り下げ、ドローンの高度を遠隔制御することによってカメラやセンサを降下、上昇させ、カメラやセンサの高さを調整して撮影や探知を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記した従来の吊り下げ方式の場合、ドローンの高度制御によってカメラ等の高さを調整する構成であるため、例えば山中においてドローンを遠隔操作により降下・上昇させる際に、ドローン自体やカメラやセンサが樹木の枝葉などの障害物に接触してドローンの墜落を招いたり、カメラ等が樹木に接触して破損したりする虞がある。
【0006】
これを防ぐため、カメラやセンサを保護容器内に収容し、容器をドローンに対し降下・上昇自在に吊り下げ、ドローン樹木の影響を受けない高度で静止(ホバリング)させた状態で、容器を降下・上昇させることも考えられるが、保護容器の形状によっては、樹木の枝葉などの障害物と引っ掛かるなどの干渉が一旦生じるとその干渉状態から容易に脱却できず、カメラ等を回収できずにやはりドローン自体の墜落を招くという不都合以外にも、容器の降下時に容器が枝葉に乗ってしまって容器を所定の撮影高度まで降下できないなどの不都合が生じる虞がある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、カメラ等を収容した作業ユニットが山中の樹木の枝葉などの障害物に接触するなどの干渉が生じたときに、作業ユニットを障害物との干渉状態から容易に脱却できる構造にして、山岳救助等の作業効率の向上を図れるようにした高所作業装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明に係る高所作業装置は、高所基地から作業ユニットを降下させ、所定の作業終了の後に前記作業ユニットを上昇させる高所作業装置であって、前記高所基地または前記作業ユニットには、前記作業ユニットの前記降下及び上昇を、吊下げ用索体のスプールからの繰り出し及び前記スプールへの巻き上げにより行うリール機構が設けられ、前記作業ユニットは、横断面がほぼ円形を成し上方に向かうに連れて次第に径小になるテーパー状の周面を有し、前記作業ユニットの上昇時に該上昇を妨げることなく前記テーパー状の周面を障害物が摺接する上部構造体と、球面下部であるほぼ半球状の周面を有し、前記作業ユニットの降下時に前記半球状の周面を障害物が摺接する下部構造体とを備え、前記作業ユニットは、上昇時に前記上部構造体の前記テーパー状の周面を前記障害物が摺接することによって、上昇方向の垂直方向であって前記障害物から離れる方向に、上昇時に前記作業ユニットにかかる力を分散する形状に形成されていることを特徴としている。
【0009】
この構成によると、作業ユニットの上部構造体の周面を、横断面がほぼ円形を成し上方に向かうに連れて次第に径小になるテーパー状にしたため、作業ユニットの上昇時に上部構造体のテーパー状の周面を山中の樹木の枝葉などの障害物が接触したときに、上昇方向の垂直方向であって障害物から離れる方向に、上昇時に作業ユニットにかかる力が分散されることになり、作業ユニットが障害物に引っ掛かるなどの干渉が生じても、作業ユニットが障害物との干渉状態から容易に脱却することができ、山岳、海難救助等の作業効率の向上を図ることが可能な高所作業装置を提供することができる。
【0010】
また、前記下部構造体の内部にカメラが配置され、前記下部構造体の前記半球状の周面が透明に形成され、前記カメラは、前記作業ユニットの上昇中または降下中に、透明の前記半球状の周面を通した撮影を行うことが可能であるようにするのが好ましい。この構成によれば、作業ユニットが降下中に山中の樹木の枝葉などの障害物に接触するなどの干渉が生じても、球面下部であるほぼ半球状の周面を障害物が摺接することにより、降下方向の垂直方向であって障害物から離れる方向に、降下時に作業ユニットにかかる力が分散されて作業ユニットが障害物との干渉状態から容易に脱却することができ、カメラにより、上昇中のみならず降下中も継続して安定した撮影を行うことが可能になる。
【0011】
また、前記索体に撚れが生じたときに、前記上部構造体を前記下部構造体に対して回転させることで下部構造体の姿勢を保持する保持機構が設けられているとよい。この構成によれば、索体の撚れが生じたときに、保持機構により、作業ユニットの上部構造体が下部構造体に対して回転されて下部構造体の姿勢が保持されるため、下部構造体が上部構造体と一緒に回転することを防止して下部構造体の姿勢を保持することができる。加えて、上部構造体が回転するため、上昇中に枝葉などの障害物に引っ掛かったとしても回転力でより障害物から脱却しやすくなる。
【0012】
また、前記作業ユニットは、前記上部構造体の上方に配設されて、前記リール機構から繰り出された前記索体の下端の1箇所で前記作業ユニットを前記索体に連結するジョイント部を備え、前記ジョイント部は、前記上部構造体の前記テーパー状の周面の延長上に位置する仮想頂点よりも下方に位置しているとよい。この構成によれば、上部構造体のテーパー状の周面の延長上に位置する仮想頂点よりも下方にジョイント部が位置するため、糸をジョイント部に結んで固定するための結び目ができてしまうが、結び目やジョイント部を構成する金具の方が、糸等の索体よりも障害物に引っ掛かり易くなることから、作業ユニットのテーパー状の周面を障害物に当てることで極力ジョイント部が障害物に当たるのを回避することができる。
【0013】
また、前記作業ユニットの長さが、該作業ユニットの最大径の1.5倍以上10倍以下であるのが望ましい。この場合、作業ユニットの形状がいわゆる縦長であり、作業ユニットの長さが該作業ユニットの最大径の1.5倍より小さくて縦横がほぼ同寸法の場合や、作業ユニットの長さが該作業ユニットの最大径の10倍より大きくて縦長過ぎる場合に比べて、作業ユニットの上昇時または降下時に、上部構造体のテーパー状の周面または下部構造体のほぼ半球状の周面を障害物が摺接することにより、上昇方向または降下方向の垂直方向であって障害物から離れる方向に、上昇時または降下時に作業ユニットにかかる力を容易に分散させることができる。
【0014】
また、前記高所基地は、遠隔操作により飛行し、上空でホバリングが可能な飛行体であり、前記飛行体は、前記リール機構の前記索体の巻き上げによる前記作業ユニットの上昇により、前記テーパー状の周面を有する前記上部構造体が脱着自在に嵌まり込んだ状態で前記作業ユニットを回収する回収部と、前記回収部の前記作業ユニット回収時の衝撃を吸収する衝撃吸収部とを備えるとよい。
【0015】
この構成によれば、所望地域の上空に飛行体をホバリングさせた状態で、リール機構からの索体の繰り出し及びリール機構による巻き上げにより作業ユニットを降下、上昇させることができる。さらに、索体の巻き上げにより回収部に作業ユニットを回収する際に、衝撃吸収部により作業ユニット回収時の衝撃を吸収できるため、作業ユニットの回収の衝撃により飛行体の姿勢が乱れるのを未然に防止することができる。
【0016】
また、前記上部構造体の前記テーパー状の周面は、角度が45°±10°のテーパー形状に形成されているのが望ましい。この場合、テーパー状の周面の角度が35°より小さい角度、或いは、55°よりも大きい場合に比べて、上部構造体のテーパー状の周面に障害物が引っ掛かりにくくなり、作業ユニットの上昇を円滑に行うことができる。
【0017】
また、前記作業ユニットは、比重が0.8~2.5に形成されているのが望ましい。この場合、比重が0.8より小さくて軽い場合や、比重が2.5より大きくて重過ぎる場合に比べ、降下中及び上昇中に作業ユニットを障害物との干渉状態から容易に脱却させることが可能になる。さらに、比重が大きくて重いほど作業ユニットの姿勢を保持し易くなって、特に降下時に干渉状態から脱却し易くなる反面、索体の巻き上げに大きな電力パワーを要することとなるので、電源供給用のバッテリの消費が激しくなってしまうという問題が生じる。そこで、例えば遭難者救助のために連続して作業ユニットを降下・上昇させる際のバッテリの消費を抑制する上でも、作業ユニットの比重を2.5より大きくしないことが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る高所作業装置をドローンに組付けた一実施形態の斜視図である。
【
図3】(a)は
図1中の高所作業装置の斜視図、(b)は
図1中の高所作業装置の正面図である。
【
図6】(a)は
図3(b)のA-A断面図、(b)は(a)のaで示す部分の拡大図である。
【
図9】
図7の分解斜視図を異なる方向から見た図である。
【
図10】
図1の制御系の一部の機能ブロック図である。
【
図11】
図1の制御系の他の一部の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る高所作業装置の一実施形態について、
図1ないし
図11を参照して説明する。なお、本実施形態は、高所基地としての無人飛行体をドローン1とし、このドローン1に高所作業装置Hを組付けたものである。
【0020】
(全体構成)
本実施形態におけるドローン1の基本的構成は以下に説明するとおり周知であって特筆すべきものはない。
図1、
図2に示すように、ドローン1では、複数個(ここでは4個)のフライト用モータ2が、正方形の対角線を成すフレーム3の先端に取り付けられて正方形の各頂点に配置され、各モータ2の回転軸にプロペラ4が軸支され、フレーム3に搭載されたマイクロコンピュータから成る制御装置により動作が制御される。
【0021】
フレーム3の中央部分には本発明に係る高所作業装置Hが取り付けられている。この高所作業装置Hは、
図3に示すように、バッテリユニット5、制御ユニット6及び作業ユニット7を備え、バッテリユニット5と制御ユニット6とはヒンジ機構により連結されており、フライト用モータ2のフライト制御用リモコンとは別の作業制御用リモコンからのリモコン信号に基づく制御ユニット6による制御により、後述するリール機構61や後述するカット機構69、作業ユニット7の制御が行われる。なお、フライト制御用リモコン(図示省略)からのフライト制御用リモコン信号が受信機より受信されることにより、受信されたリモコン信号に基づいて各フライト用モータ2が制御され、ドローン1が降下或いは上昇制御され、前進或いは後退制御され、上空で静止つまりホバリングされるなどの基本的な飛行動作の制御が行われる。
【0022】
なお、バッテリユニット5及び制御ユニット6が「本体ユニット」に相当し、作業ユニット7が本発明の「作業ユニット」に相当する。
【0023】
バッテリユニット5はドローン1に組付けられるべく
図3、
図4に示すように構成され、取付ベース51を介してフレーム3に固定された防水構造のバッテリユニットケース52内に本体側バッテリ53が収容されている。本体側バッテリ53は、
図4に示すように、本体側バッテリ53を取付ベース51に配置した状態で、取付ベース51側から、制御ユニット6における後述するメインマイコン64以外の電源又は電流供給を受ける必要がある後述する巻上げモータ61b、後述するESC65、後述する電熱線W等への電源又は電流供給を行う第1バッテリ53aを収容した第1バッテリケース53b、制御ユニット6における後述するメインマイコン64への電源供給を行う第2バッテリ53cを収容した第2バッテリケース53d、バッテリシールド53eが配置されて構成されている。
【0024】
なお、バッテリユニットケース52の取付ベース51への取付は、バッテリユニットケース52に形成されたナイラッチ孔52a及び取付ベース51に形成されたナイラッチ孔51aにナイラッチ54を挿入してバッテリユニットケース52を取付ベース51に固定することにより行われる。また、取付ベース51のドローン1への取付は、取付ベース51をフレーム3に載置した状態で取付ベース51の四隅に形成されたねじ孔51bにねじ55を挿入して取付ベース51をドローン1に固定し、固定後にマジックテープ(登録商標)(図示省略)できつく締めることにより行われる。なお、ねじ55以外にもフック等を用いて取付ベース51をドローン1に取り付けるようにしてもよく、この場合にはドローン1側に加工を加えることなく取付ベース51をドローン1に固定することが可能である。
【0025】
制御ユニット6はバッテリユニット5に組付けられており、
図3、
図5、
図6に示すように、作業ユニット7の昇降を行うリール機構61と、糸Sの切断を行うカット機構69と、リール機構61により上昇される作業ユニット7を回収する回収部62と、フライト制御用とは別の作業制御用リモコン(図示省略)からの各種のリモコン信号を受信する受信機63と、リール機構61の巻上げモータ61bの制御やカット機構69のカットリレー61fの制御などを司るメインマイコン64と、メインマイコン64からの制御信号を電圧信号に変換して後述する巻上げモータ61bに出力して回転制御を行うESC(Electric Speed Controller)65と、回収部62に設けられ作業ユニット7の巻上げ時の巻上げ終了点を検知してメインマイコン64に巻上げ停止用の検知信号を出力するリミットスイッチ66とを備える。
【0026】
なお、リール機構61が「昇降ユニット」に相当し、カット機構69及び第1バッテリ53aが「分離機構」に相当する。
【0027】
リール機構61は、
図5、
図6に示すように、作業ユニット7に連結された糸Sが巻回されたスプール61aと、スプール61aの回転に連動してスプール61aの軸と平行な一の方向及び他の方向に繰り返して動く、スプール61aの下側に配されたレベルワインダ61aaと、糸Sがスプール61aから繰り出される方向のスプール61aの回転(以下、「正回転」と記載する。)の駆動及び糸Sがスプール61aに巻き取られる方向のスプール61aの回転(以下、「逆回転」と記載する。)の駆動を行う巻上げモータ61bと、レベルワインダ61aaをスプール61aに連動させるギア等を収容したリールギヤボックス61cと、ウォームギヤボックス61dを介して巻上げモータ61bの回転量を検出するロータリーエンコーダ61eとを備える。このようなリール機構61により、作業ユニット7の降下及び上昇が、糸Sのスプール61aからの繰り出し及びスプール61aへの巻き取りにより行われる。なお、61g,61h,61iはリール機構61の各パーツの取付ブラケットである。
【0028】
なお、スプール61aが本発明の「スプール」に相当し、糸Sが本発明の「吊下げ用索体」に相当する。
【0029】
カット機構69は、
図5、
図6に示すように、レベルワインダ61aaの下側に配置されるとともに回収部62の上方位置に配置されたコイル形状の電熱線W(
図6参照)と、第1バッテリ53aからコイル形状の電熱線Wへの通電路を開閉するカットリレー61fと、電熱線Wの一端が接続されているとともにカットリレー61fの配線の一端が接続されている端子T1と、電熱線Wの他端が接続されているとともにカットリレー61fの配線の他端が接続されている端子T2とを備える。なお、
図6、
図7では、カットリレー61fの配線の一端と端子T1とが接続されている様子、カットリレー61fの配線の他端と端子T2とが接続されている様子の図示を省略している。ここで、スプール61aに巻回された糸Sは、例えば熱可塑性樹脂(例えば、ポリエチレン、ナイロン、フロロカーボン)から成り、
図6に示すように、レベルワインダ61aaに形成された糸通し孔61aaaを通り、端子T1に形成された糸通し孔T1aを通り、コイル形状のニクロム線等の金属でできた電熱線Wにより形成される輪の内側のほぼ中心部を通り、端子T2に形成された糸通し孔T2aを通るように糸Sが配置されてその下端に作業ユニット7のジョイント部9が連結され、カットリレー61fの作動による電熱線Wへの第1バッテリ53aからの電流によって、電熱線Wが発熱することで糸Sが加熱されて溶融切断される。このように、糸Sはカット機構69と非接触で切断されることになる。
【0030】
なお、電熱線Wが「コイル状の金属線」に相当し、第1バッテリ53a及びカットリレー61fが「電流供給部」に相当する。
【0031】
ところで、回収部62は、スプール61aが装着されるリールギヤボックス61cのケース61caの下面に取付部材67を介して取り付けられている。詳細には、取付部材67がケースの下面に固定され、取付部材67には4箇所の凹部67aが形成され、各凹部67aの底面には孔が形成され、上端に凹部67aの孔の径よりも大径の鍔を有する上下方向のダンパーシャフト68が各凹部67aの孔において上下移動自在かつ落下不能にそれぞれ挿通され、各凹部67aの孔から下方に突出した各ダンパーシャフト68の下端に、回収部62の上面側の4箇所に設けられたボス部62aが接合され、各凹部から下方に突出した各ダンパーシャフト68に衝撃吸収用のばね68aが巻回され、糸Sが巻き取られて作業ユニット7が回収されて回収部62の内側に嵌まり込む際に、回収部62に上向きの衝撃力が加わって各ダンパーシャフト68が上動しても、各ばねの下向きの付勢力により回収部62に加わる上向きの衝撃力が相殺されて吸収されることになり、作業ユニット7の回収時の衝撃力の取付部材67側への伝達が防止される。
【0032】
ところで、回収部62は、水平面での断面における外周面及び内周面それぞれの半径が下方に向かうにつれて大きくなるテーパー状をした中空の部分と、当該部分から下方に延びる円筒状をした中空の部分とを有する、すり鉢のような形状を有し(
図6(a)参照)、このようなすり鉢形状にすることでリール機構61の糸Sの巻き取りによる作業ユニット7の上昇により、後に詳述するようにテーパー状の周面を有する作業ユニット7の上部構造体72が回収部62に脱着自在に嵌まり込み易くなる。ここで、回収部62の上部位置にコイル形状の電熱線Wが配設されている。作業ユニット7の回収部62への回収時に回収部62と作業ユニット7のジョイント部9とが接触しない構造になっており、これにより糸Sの結び目が回収部62に接触して糸Sが外れるのを防止できる。
【0033】
次に、作業ユニット7の構成について説明する。作業ユニット7は
図7に示すように、ほぼ円柱状の作業ユニット本体71と、作業ユニット本体71の上部の上部構造体72と、作業ユニット本体71の下部の下部構造体73とを備える。作業ユニット本体71は、上部構造体72と一体化した上半部と、下部構造体73と一体化した下半部に分割され、両半部が後述する保持機構のステッピングモータの回転軸により連結されている。このとき、作業ユニット7の長さは、作業ユニット7の最大径の1.5倍以上でかつ10倍以下に形成され、その比重は0.8~2.5になるように形成されている。
【0034】
図8、
図9に示すように、上部構造体72を含む作業ユニット本体71の上半部には、糸Sに撚れが生じたときに、上部構造体72を含む上半部と下部構造体73を含む下半部とを相対的に回転させることで下部構造体73の姿勢を保持する保持機構74と、保持機構74の上半部の各部及び下半部の各部に給電するカメラ側バッテリ75a,75b(
図11参照)とが収容されている。後に詳述するが、この保持機構74は、上部構造体72を含む上半部を、下部構造体73を含む下半部に対して回転させるステッピングモータ74aと、該ステッピングモータ74aを駆動するモータドライバ74bと、モータドライバ74bを制御するマイコン74cとを備える。なお、ステッピングモータ74aの回転軸74dにより、上部構造体72と一体化した上半部と、下部構造体73と一体化した下半部とが連結されている。
【0035】
そして、マイコン74cには、後述するジャイロセンサからの検出信号が入力されるとともに、制御ユニット6側のメインマイコン64からの回転オン・オフ指令が入力され、メインマイコン64からの回転オン・オフ指令に基づき、マイコン74cからモータドライバ74bに対しジャイロセンサの検出信号に応じて下部構造体73の姿勢を保持すべく制御信号が出力される。具体的には、作業ユニット7本体が回転すると、ジャイロセンサから回転に応じた角速度情報がメインマイコン64に送信される。メインマイコン64は受信した角速度情報に基づいて演算をし、作業ユニット7の回転に対して、下部構造体73が逆方向の回転をするように、モータドライバ74bに制御信号を出力する。下部構造体73が逆方向の回転をすることで、下部構造体73は回転が相殺され、カメラ76bへの回転の影響が軽減さる。なお、作業ユニット7が回転したとき、作業ユニット本体71の上半部がモータドライバ74bにより回転方向に速度を上げて回転することでジャイロ効果により連結されている作業ユニット本体71の下半部が逆回転して回転を相殺する。もちろん、作業ユニット本体71の下半部を逆回転させて、ジャイロ効果により作業ユニット本体71の上半部が勝手に回転する仕組みであってもよい。また、カメラ76bの回転を止めるだけでなく、微速回転させることで繊細な操作を行わずに周辺映像を撮影することも可能になる。
【0036】
作業ユニット本体71の下半部の内部には、下半部の回転角速度を検出する上記したジャイロセンサを内蔵したマイコン76aと、カメラ76bと、マイコン76aにより制御され該カメラ76bを回転させて撮影の向きを変えるサーボモータ76cと、カメラ76bにより撮影された画像を送信する送信機76dとが収容されている。
【0037】
ところで、上部構造体72は、横断面がほぼ円形を成し上方に向かうに連れて次第に径小になるテーパー状の周面72aを有していてほぼ円錐台状を成し、作業ユニット7の上昇時に該上昇を妨げることなくテーパー状の周面72aを樹木の枝葉等の障害物が摺接する。ここで、テーパー状の周面72aの角度は、45°±10°の形状に形成されている。
【0038】
また、上部構造体72の上方には作業ユニット7を糸Sの下端の1箇所で連結するジョイント部9が配設され、このジョイント部9は、上部構造体72のテーパー状の周面72aの延長上に位置する仮想頂点、すなわち上部構造体72が成す円錐台の周面を延長することで形成される円錐の頂点よりも下方に位置している。
【0039】
また、下部構造体73は、強化ガラスやアクリルなどの透明部材から成り球面下部であるほぼ半球状の周面73aを有し、作業ユニット7の降下時に半球状の周面73aを樹木の枝葉等の障害物が摺接する。そして、下部構造体73の内部にはカメラ76bがその画角を3次元的に可変自在に配設され、作業ユニット7の上昇中又は降下中、又は、降下した状態などで、カメラ76bにより透明な半球状の周面73aを通した撮影が行われる。
【0040】
(制御系の構成)
続いて、制御系の構成について、
図10、
図11を参照して説明する。
【0041】
図10は制御ユニット6の構成を示すブロック図であり、上記したように、リール機構61の糸Sが巻回されたスプール61aが、巻上げモータ61bにより双方向に回転されて糸Sの繰り出し及び巻き取りが行われ、この巻上げモータ61bの回転量がロータリーエンコーダ61eにより検出される。巻上げモータ61bはメインマイコン64により制御され、メインマイコン64からの制御信号がESC65により電圧信号に変換されて巻上げモータ61bに出力され、巻上げモータ61bの回転の制御が行われる。このとき、回収部62に設けられたリミットスイッチ66により作業ユニット7の巻上げ終了点が検知され、メインマイコン64に巻上げ停止用の検知信号が出力されると、巻上げモータ61bの回転が停止される。また、糸Sの繰り出し時や糸Sの巻き取り時に作業ユニット7が障害物に引っ掛かって繰り出し不能や巻き取り不能になった場合には、カットリレー61fがメインマイコン64により接点がONに制御されて本体側バッテリ53(本体側バッテリ53の第1バッテリ53a(
図4参照))から電熱線Wへの通電路が閉路されて電熱線Wに通電され、これにより電熱線Wが発熱して糸Sが加熱されて非接触で溶融切断されて糸Sの一部及び作業ユニット7が切り離される。
【0042】
図11は作業ユニット7のブロック図であり、上記したように、制御ユニット6側のメインマイコン64からの回転オン・オフ指令に基づく制御信号がマイコン74cからモータドライバ74b出力され、ステッピングモータ74aが駆動されて上部構造体72を含む上半部と下部構造体73を含む下半部とが相対的に回転され、ジャイロセンサの検出信号に応じて下部構造体73の所定の姿勢に保持されるようになっている。
【0043】
また、作業ユニット7の降下中或いは上昇中に、又は、降下した状態などで、カメラ76bにより撮影された画像が送信機76dから作業制御用リモコンのオペレータに向けて送信される。このとき、制御ユニット6側のメインマイコン64からの撮影指令に基づき、マイコン76aによりサーボモータ76cが制御されてカメラ76bの向きが制御されるようになっている。なお、カメラ76bは上記したように、画角を3次元的に可変自在に配設されており、サーボモータ76cの制御により3次元的に撮影の向きが可変されて撮影することができる。
【0044】
(動作)
上記した構成の高所作業装置Hは、例えば山岳救助における遭難者や物資等の捜索等に使用されるものであり、山岳救助での動作の概要について以下に説明する。
【0045】
遭難者等からの救助要請に応じフライト制御用リモコンが操作されてドローン1が救助現場付近まで飛行され、ドローン1自体に搭載されたカメラ(カメラ76bとは別のカメラ)の撮影画像を見ながら現場により接近され、好適な高度位置でドローン1がホバリング状態に保持される。そして、ドローン1が所定高度でホバリングされると、フライト制御用リモコンのオペレータとは別のオペレータにより作業制御用リモコンが操作され、高所作業装置Hのリール機構61が遠隔操作されてスプール61aから糸Sが繰り出される。このとき、作業制御用リモコンのオペレータは送信機76dから送られてくるカメラ76bの撮影画像を確認しながら作業ユニット7の降下制御を行う。
【0046】
作業ユニット7の降下中、作業ユニット7が障害物である樹木の枝葉に引っ掛かるなど枝葉との干渉が生じて作業ユニット7の降下が阻害されるおそれがある。しかし、作業ユニット7の下部構造体73が半球状の周面73aを有するため、枝葉が半球状の周面73aを摺接することにより、降下方向の垂直方向であって障害物である枝葉から離れる方向に、降下時に作業ユニット7にかかる力が分散されることになり、作業ユニット7は枝葉との干渉状態から容易に脱却することができ、作業ユニット7の降下が継続される。
【0047】
ここで、作業ユニット7の降下時のオペレータの操作及び高所作業装置Hの動作の一例について記載する。高所作業装置Hのオペレータが作業制御用リモコンを利用して当該作業制御用リモコンに設けられた操作レバーを下側に倒す。この操作レバーが下側に倒されている間、所定の間隔で、作業制御用リモコンから作業ユニット7の降下指示に関するリモコン信号(以下、「降下指示信号」と記載する。)が高所作業装置Hへ送信される。
【0048】
高所作業装置Hでは、制御ユニット6の受信機63が、作業制御用リモコンにより送信された降下指示信号を受信して受信した降下指示信号をメインマイコン64へ送信する。メインマイコン64は受信機63から送信されてくる信号の内容を解析して当該信号が降下指示信号であると判断する。そして、メインマイコン64からESC65にスプール61aから糸Sが繰り出されるように巻上げモータ61bの回転方向を一の方向(以下、「正回転方向」と記載する。)に制御する制御信号(以下、「正回転制御信号」と記載する。)が出力され、当該正回転制御信号がESC65により電圧信号に変換されて巻上げモータ61bに出力され、巻上げモータ61bが正回転方向に回転し、スプール61aから糸Sが繰り出されて作業ユニット7が降下していく。これは、所定の間隔で降下指示信号が受信機63により受信されてメインマイコン64に送信されている間、継続して行われる。
【0049】
オペレータが作業制御用リモコンの操作レバーを元に戻す。これにより、作業制御用リモコンから降下指示信号が高所作業装置Hへ送信されなくなる。これにより、高所作業装置Hでは、受信機63が降下指示信号を受信しなくなってメインマイコン64へ送信されなくなる。メインマイコン64は所定の間隔で降下指示信号が受信機63から送られて来なくなると、メインマイコン64からESC65へ正回転制御信号が出力されなくなり、巻上げモータ61bが停止する。これにより、スプール61aの回転が停止して糸Sがスプール61aから繰り出されなくなって作業ユニット7の降下が停止する。
【0050】
ところで、糸Sに幅があるためにスプール61aに糸Sを巻回するときに糸Sが必然的に撚れた状態になってしまうため、糸Sをスプール61aから繰り出すと、糸Sの撚れを戻す方向の回転が生じることから、作業ユニット7の降下中に、糸Sの撚れが生じて当該撚れを戻すような回転力が発生したり、作業ユニット7が風を受けることにより回転力が発生したりするが、保持機構74により、作業ユニット7の上部構造体72が下部構造体73に対して回転されて下部構造体73の姿勢が保持されるため、下部構造体73が上部構造体72と一緒に回転することが防止され、下部構造体73の姿勢を保持してカメラ76bによる撮影が安定的に継続される。
【0051】
そして、作業ユニット7が例えば作業ユニット7が木の枝や葉よりも低い木の根元付近まで降下してカメラ76bにより地表等が撮影されるようになると、撮影画像を見て遭難者や物資等を捜索する。撮影画像を見ての捜索終了後、作業制御用リモコンによりリール機構61が遠隔操作され、巻上げモータ61bが駆動されてスプール61aに糸Sが巻き取られ、作業ユニット7が上昇される。なお、撮影画像を見ての捜索で遭難者や物資等を発見した場合には、ドローン1が搭載しているGPS機能により位置情報を把握して、救助隊等が発見した遭難者や物資等を在る現地に向かうことになる。
【0052】
ところで、作業ユニット7の上昇中に、作業ユニット7が枝葉(障害物)と接触するなどの干渉が生じても、作業ユニット7の上部構造体72がテーパー状の周面72aを有するため、枝葉がテーパー状の周面72aを摺接することにより、上昇方向の垂直方向であって障害物である枝葉から離れる方向に、上昇時に作業ユニット7にかかる力が分散され、作業ユニット7は上昇を妨げられることなく例えば木の枝や葉よりも上空に位置する回収部62に向かって上昇される。
【0053】
そして、作業ユニット7が回収部62に嵌まり込むと、リミットスイッチ66により作業ユニット7の回収が検知されて糸Sの巻き取りが停止され、作業ユニット7の回収が終了する。このように作業ユニット7が回収部62に嵌まり込む際、ダンパーシャフト68及びばねから成る衝撃吸収部により、作業ユニット7が回収部62に嵌まり込む際の衝撃が吸収され、作業ユニット7の回収時の衝撃力が取付部材67を介してドローン1に伝わることが防止され、ドローン1は安定してホバリング状態を継続することができる。
【0054】
ここで、作業ユニット7の上昇時のオペレータの操作及び高所作業装置Hの動作の一例について記載する。高所作業装置Hのオペレータが作業制御用リモコンを利用して当該作業制御用リモコンに設けられた操作レバーを上側に倒す。この操作レバーが上側に倒されている間、所定の間隔で、作業制御用リモコンから作業ユニット7の上昇指示に関するリモコン信号(以下、「上昇指示信号」と記載する。)が高所作業装置Hへ送信される。
【0055】
高所作業装置Hでは、制御ユニット6の受信機63が、作業制御用リモコンにより送信された上昇指示信号を受信して受信した上昇指示信号をメインマイコン64へ送信する。メインマイコン64は受信機63から送信されてくる信号の内容を解析して当該信号が上昇指示信号であると判断する。そして、メインマイコン64からESC65にスプール61aに糸Sが巻き取られるように巻上げモータ61bの回転方向を他の方向(以下、「逆回転方向」と記載する。)に制御する制御信号(以下、「逆回転制御信号」と記載する。)が出力され、当該逆回転制御信号がESC65により電圧信号に変換されて巻上げモータ61bに出力され、巻上げモータ61bが逆回転方向に回転し、スプール61aに糸Sが巻き取られて作業ユニット7が上昇していく。これは、所定の間隔で上昇指示信号が受信機63により受信されてメインマイコン64に送信されている間、継続して行われる。
【0056】
オペレータが作業制御用リモコンの操作レバーを元に戻す。これにより、作業制御用リモコンから上昇指示信号が高所作業装置Hへ送信されなくなる。これにより、高所作業装置Hでは、受信機63が上昇指示信号を受信しなくなってメインマイコン64へ送信されなくなる。メインマイコン64は所定の間隔で上昇指示信号が受信機63から送られて来なくなると、メインマイコン64からESC65へ逆回転制御信号が出力されなくなり、巻上げモータ61bが停止する。これにより、スプール61aの回転が停止して糸Sがスプール61aに巻き取られなくなって作業ユニット7の上昇が停止する。
【0057】
なお、作業ユニット7の上昇中に作業ユニット7が回収部62に嵌り込んでリミットスイッチ66により作業ユニット7の巻上げ終了点が検知され、メインマイコン64に巻上げ停止用の検知信号が出力されてメインマイコン64が巻上げ停止用の検知信号を検知する。この場合、メインマイコン64は、受信機63から上昇指示信号が所定の間隔で送られて来ていても、ESC65への逆回転制御信号の出力を停止する。これにより巻上げモータ61bが停止する。
【0058】
その後、フライト制御用リモコンの操作により、ドローン1は帰還に向けて飛行される。
【0059】
なお、作業ユニット7の降下中又は作業ユニット7の上昇中に、万一、糸S又は作業ユニット7が木の枝や葉に絡まって作業ユニット7を降下又は上昇できない状態になった場合、電熱線Wに通電されて糸Sが溶融切断されて糸Sの一部及び作業ユニット7が制御ユニット6から切り離され、ドローン1自体や高所作業装置Hの一部(バッテリユニット5、制御ユニット6)を無事に帰還し、これらを回収できなくなることが防止される。
【0060】
ここで、糸Sの切断時のオペレータの操作及び高所作業装置Hの動作の一例について記載する。高所作業装置Hのオペレータは、糸Sか作業ユニット7かが木の枝や葉に絡まった場合、作業制御用リモコンを利用して当該作業制御用リモコンに設けられた糸カットボタンを押下する。この糸カットボタンが押下されている間、所定の間隔で、作業制御用リモコンから糸Sの切断指示に関するリモコン信号(以下、「糸切断指示信号」と記載する。)が高所作業装置Hへ送信される。
【0061】
高所作業装置Hでは、制御ユニット6の受信機63が、作業制御用リモコンにより送信された糸切断指示信号を受信して受信した糸切断指示信号をメインマイコン64へ送信する。メインマイコン64は受信機63から送信されてくる信号の内容を解析して当該信号が糸切断指示信号であると判断する。そして、メインマイコン64はカットリレー61fの接点をONに制御する。これにより、本体側バッテリ53(本体側バッテリ53の第1バッテリ53a(
図4参照))から電熱線Wへの通電路が閉路されて電熱線Wに通電され、電熱線Wが発熱する。これは、所定の間隔で糸切断指示信号が受信機63により受信されてメインマイコン64に送信されている間、継続して行われる。これにより、糸Sは電熱線Wの発熱により加熱されて非接触で溶融切断されて糸Sの一部及び作業ユニット7が切り離される。
【0062】
オペレータが作業制御用リモコンの糸カットボタンの押下を終了する。これにより、作業制御用リモコンから糸切断指示信号が高所作業装置Hへ送信されなくなる。これにより、高所作業装置Hでは、受信機63が糸切断指示信号を受信しなくなってメインマイコン64へ送信されなくなる。メインマイコン64は所定の間隔で糸切断指示信号が受信機63から送られて来なくなり、メインマイコン64はカットリレー61fの接点をOFFに制御する。これにより、本体側バッテリ53(本体側バッテリ53の第1バッテリ53a(
図4参照))から電熱線Wへの通電路が開路されて電熱線Wに通電されなくなる。
【0063】
なお、糸Sの切断をオペレータによる手動操作で行う代わりに、例えば、メインマイコン64は、受信機63から送られてくる上昇指示信号に基づいて巻上げモータ61bの逆回転の駆動制御を行っても、ロータリーエンコーダ61eの出力に基づいてモータ61bを逆回転させることができていないと検知した場合に、カットリレー61fの接点をONにして、自動で糸Sを切断するようにしたり、メインマイコン64は、受信機63から送られてくる降下指示信号又は上昇指示信号に基づいて巻上げモータ61bの正回転又は逆回転の駆動制御を行っても、カメラ76bの撮影画像がほぼ変化していなければ作業ユニット7が降下又は上昇をしていないと判断して、カットリレー61fの接点をONにして、自動で糸Sを切断するようにしたりしてもよい。
【0064】
したがって、上記した実施形態によれば、ドローン1自体は木の枝や葉よりも高い位置を維持したまま、制御ユニット6から糸Sで吊下げた作業ユニット7をリール機構61により糸Sをスプール61aから繰り出すことにより容易に木の枝や葉より低い位置にまで降下させることができるとともに、木の枝や葉よりも低い位置にまで降下した作業ユニット7をリール機構61により糸Sをスプール61aに巻き取ることにより木の枝や葉よりも高い位置にまで上昇させて制御ユニット6に回収できる。
【0065】
また、作業ユニット7を木の枝や葉よりも低い位置にまで降下させる際や、木の枝や葉よりも低い位置にまで降下した作業ユニット7を木の枝や葉よりも高い位置にまで上昇させる際に、作業ユニット7や糸Sが木の枝や葉に絡まっても、糸Sを切断することにより、高所作業装置Hの一部(バッテリユニット5、制御ユニット6)や高所作業装置Hを搭載したドローン1を容易に回収できる。
【0066】
また、制御ユニット6から作業ユニット7及び糸Sの一部の分離を切断という簡易な手法で実現できる。
【0067】
また、例えば、カッターのような刃物を糸Sに接触させて糸Sを切断する場合、刃物と糸Sとが直接接触することにより両者間に力が働き、糸Sに働いた力が糸Sから制御ユニット6に伝わり、さらに、制御ユニット6からバッテリユニット5に、バッテリユニット5からドローン1に伝わることにより、ドローン1の空中での姿勢が崩れて、ドローン1の操作が困難になったり、墜落したりする可能性がある。また、刃物が落下して危険を引き起こす虞もある。
【0068】
一方で、上記のように糸Sを非接触で切断する構成によれば、糸Sから制御ユニット6及びバッテリユニット5を介してドローン1に余分な力が伝わることがなく、このため、ドローン1の空中での姿勢が崩れず、ドローン1の操作が困難になる事態や墜落の発生を防止できる。また、刃物が落下して危険を引き起こす事態の発生を防止できる。
【0069】
また、糸Sの材質を熱可塑性樹脂とし、糸Sの非接触での切断に熱を利用することで、糸Sの非接触での切断を簡易な手法で実現できる。なお、熱可塑性樹脂(ナイロン、フロロカーボン、ポリエチレン)の中でも、融点、重量、スプール61aの形状に対する追従性等の点で、ポリエチレンが最も望ましい。
【0070】
また、糸Sをコイル状の電熱線Wにより形成される輪の内側に通されるようにすることにより、コイル状の電熱線Wが糸Sのガイドとしての機能を発揮することになり、糸Sをガイドするためのユニットを別途設けることなく、糸Sが絡まった状態でスプール61aに巻き取られることを防止できる。
【0071】
また、作業ユニット7の上部構造体72のテーパー状の周面72aを、横断面がほぼ円形を成し上方に向かうに連れて次第に径小になるテーパー状にしたため、作業ユニット7の上昇時に上部構造体72のテーパー状の周面72aが樹木の枝葉(障害物)に接触しても、上昇方向の垂直方向であって枝葉(障害物)から離れる方向に、上昇時に作業ユニット7にかかる力が分散されることになり、作業ユニット7が枝葉(障害物)に接触するなどの干渉が生じても、作業ユニット7が障害物との干渉状態から容易に脱却することが可能になる。
【0072】
また、作業ユニット7が降下中に枝葉(障害物)に接触するなどの干渉が生じても、球面下部であるほぼ半球状の周面73aを枝葉が摺接することにより、降下方向の垂直方向であって枝葉から離れる方向に、降下時に作業ユニット7にかかる力を分散させることができ、作業ユニット7を枝葉との干渉状態から容易に脱却させることができ、カメラ76bにより、降下中安定した撮影を継続的に行うことができる。
【0073】
また、糸Sをスプール61aから繰り出したときに、糸Sの撚れを戻す方向の回転が生じても、保持機構により、作業ユニット7の上部構造体72が下部構造体73に対して回転されて下部構造体73の姿勢が保持されるため、下部構造体73が上部構造体72と一緒に回転することを防止でき、作業ユニット7の降下中に下部構造体73の姿勢を保持してカメラ76bにより安定して撮影を継続することができる。さらに、上部構造体72が回転するため、上昇中に枝葉(障害物)に引っ掛かったとしても回転力でより枝葉(障害物)から脱却しやすくなる。
【0074】
また、作業ユニット7の上部構造体72のテーパー状の周面72aの延長上に位置する仮想頂点よりも下方にジョイント部9が位置するため、糸Sをジョイント部9に結んで固定するための結び目ができてしまうが、結び目やジョイント部9を構成する金具の方が、糸Sよりも枝葉(障害物)に引っ掛かり易くなることから、作業ユニット7のテーパー状の周面72aを枝葉(障害物)に当てることで極力ジョイント部9が枝葉(障害物)に当たるのを回避することができる。
【0075】
また、作業ユニット7の形状がいわゆる縦長であり、作業ユニット7の長さが作業ユニット7の最大径の1.5倍より小さくて縦横がほぼ同寸法の場合や、作業ユニット7の長さが作業ユニット7の最大径の10倍より大きくて縦長過ぎる場合に比べて、作業ユニット7の上昇時又は降下時に、上部構造体72のテーパー状の周面72a又は下部構造体73のほぼ半球状の周面73aを枝葉などの障害物が摺接することにより、上昇方向又は降下方向の垂直方向であって枝葉(障害物)から離れる方向に、上昇時又は降下時に作業ユニット7にかかる力を容易に分散させることが可能になる。
【0076】
また、作業ユニット7の上部構造体72のテーパー状の周面72aを、角度が45°±10°に形成したため、周面72aの角度が35°より小さい角度、或いは、55°よりも大きい場合に比べて、上部構造体72のテーパー状の周面72aに枝葉などの障害物が引っ掛かりにくくなり、作業ユニット7の上昇を円滑に行うことができる。
【0077】
また、作業ユニット7の比重を、0.8~2.5にしたため、比重が0.8より小さくて軽い場合や、比重が2.5より大きくて重過ぎる場合に比べ、降下中及び上昇中に作業ユニット7が枝葉(障害物)と干渉しても容易に干渉状態から脱却することができる。さらに、比重が大きくて重いほど作業ユニット7の姿勢を保持し易くなって、特に降下時に干渉状態から脱却し易くなる反面、糸Sの巻き上げに大きな電力パワーを要することとなるので、電源供給用の第1バッテリ53aの消費が激しくなってしまうという問題が生じる。そこで、作業ユニット7の比重を2.5より小さくして重過ぎないようにすることで、例えば遭難者救助のために連続して作業ユニット7を降下・上昇させる際の第1バッテリ53aの消費を抑制することができる。
【0078】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。
【0079】
例えば、上記した実施形態では、カット機構69による糸Sの非接触での切断を糸Sの材質を熱可塑性樹脂として糸Sを加熱することによる行うとしているが、これに限定されるものではなく、糸Sを非接触で切断可能な他の仕組みで行うようにしてもよい。なお、糸Sの材質は他の仕組みに応じて適宜選択可能である。
【0080】
また、上記した実施形態では、カット機構69による糸Sの切断をカット機構69と糸Sとが非接触で行うとしているが、これに限定されるものではなく、例えば、カット機構69が例えばカッターのような刃物を備え、刃物を糸Sに接触させて当該糸Sを当該刃物で切断するようにしてもよい。この場合、吊下げ用索体は上記した糸Sに限らず、ワイヤなど刃物で切断可能な材質とすればよい。
【0081】
また、上記した実施形態では、リール機構61及びカット機構69双方を制御ユニット6側に設けられているが、これに限定されるものではなく、例えば、
(1)リール機構61を制御ユニット6側に設け、カット機構69を作業ユニット7側に設ける、
(2)リール機構61を作業ユニット7側に設け、カット機構69を制御ユニット6側に設ける、
(3)リール機構61及びカット機構69双方を作業ユニット7側に設ける
ようにしてもよく、(2)、(3)の場合にはリール機構61のスプール61aから繰り出される糸Sの先端の部分が制御ユニット6側に結び付けられる。このようにすれば、高所作業装置H全体の重量を略同一としながら糸Sで吊下げる側のユニット全体((1)の場合は作業ユニット7とカット機構69、(2)の場合は作業ユニット7とリール機構61、(3)の場合は作業ユニット7とリール機構61とカット機構69)の重量を大きくでき、これにより、糸Sで吊下げる側のユニット全体が揺れにくくなってドローン1の姿勢を安定させ易くすることができる。
【0082】
また、上記した実施形態では、糸Sをカット機構69で切断することにより制御ユニット6から作業ユニット7及び糸Sの一部を分離するようにしているが、これに限定されるものではなく、糸Sを切断する以外の仕組みで、制御ユニット6から作業ユニット7及び糸Sの一部又は全部を分離するようにしてもよい。例えば、糸S(材質は熱可塑性樹脂や熱可塑性樹脂以外であってもよい。)を制御ユニット6から係合離脱自在にその先端を制御ユニット6側に連結し、糸Sの基端を制御ユニット6から離脱させることが可能な離脱機構(「分離機構」に相当)により糸Sの全部及び作業ユニット7を制御ユニット6から分離するものであり、例えば、次の構成により実現可能である。離脱機構は、ソレノイドにより構成される。ソレノイドでは、銅線に電流を流すことにより磁界を発生させ、磁性体の可動鉄芯(プランジャー)が固定鉄芯方向に吸い寄せられて固定鉄芯方向に移動し、通電している間は常に吸い寄せられる一方で、通電を停止すれば可動鉄芯は固定鉄芯方向と反対側に移動するようになっている。離脱機構を制御ユニット6側に設け、リール機構61を作業ユニット7側に設け、リール機構61のスプール61aから繰り出される糸Sの先端を輪ができるように結んでその輪の内側に離脱機構を構成するソレノイドの可動鉄芯を通すことで離脱可能に係合させる。そして、当該ソレノイドの銅線に電流を流すことにより可動鉄芯が移動して糸Sの輪から可動鉄芯が外れることで、制御ユニット6から作業ユニット7及び糸Sの全部が離脱する。このようにして、作業ユニット7及び糸Sの全部が制御ユニット6から分離されることになる。
【0083】
また、上記した実施形態では、糸Sのスプール61aからの繰り出し及びスプール61aへの巻き取りにより、作業ユニット7の制御ユニット6に対する降下及び上昇を可能にしているが、これに限定されるものではなく、糸Sを駆動して作業ユニット7の制御ユニット6に対する降下及び上昇を可能にする構成であればよい。
【0084】
また、上記した実施形態では、作業ユニット7を、ほぼ円柱状の作業ユニット本体71と、上部の上部構造体72と、下部の下部構造体73とを備える構成としたが、作業ユニット本体71はほぼ円柱状であることが好ましいものの、突起をつけたり、楕円柱状にしたりした円柱状に類似した形状であってもよく、この場合も作業ユニット7の長さが、作業ユニット7の最大径の1.5倍以上10倍以下を満たす形状であることが好ましい。例えば帰還後に糸Sを外して作業ユニット7を地面に置いておくと、屋外なので、作業ユニット7が円柱状をしていると坂道で転がってしまう虞があるが、突起をつけたり、楕円柱状にしたりした円柱状に類似した形状とした場合には坂道で転がってしまう虞を低減することが可能である。
【0085】
また、上記した実施形態では、高所基地をドローン1とした例を示したが、高所基地は高所に固定された基地であってもよく、またドローン1は無人であると有人であるとを問わず遠隔操作されてホバリングが可能なものであればよい。
【0086】
また、上記した実施形態では、衝撃吸収部をダンパーシャフト68及びばねにより構成した例を挙げたが、衝撃吸収部はこの構成に限るものではなく、例えば回収部62の内面にスポンジやゴムなどの弾性材を衝撃吸収部として貼りつけるなどしてもよく、要するに作業ユニット7が回収部62に嵌まり込む際の衝撃を吸収できる構成であればよい。
【0087】
また、高所作業装置Hを山岳救助に使用する例を示したが、作業ユニット7を防水構造にして海難救助に使用するようにしてもよい。
【0088】
また、上記した実施形態では、作業ユニット7にカメラ76bを搭載するとしたが、これに限定されるものではなく、カメラ76bとともに別のセンサ類を搭載するようにしてもよいし、カメラ76bを搭載せずに別のセンサ類を搭載するようにしてもよい。例えば、別のセンサ類として方位センサを挙げることができ、作業ユニット7にカメラ76bと方位センサとの双方を搭載して、方位センサにより計測された方位とカメラ76bの撮像結果とをリンクさせることを可能にした場合、カメラ76bにより撮像された対象がカメラ76bの降下位置からどの方位にいるかが分かり、捜索がより容易になる。
【0089】
また、上記実施形態や上記変形例等の内容を適宜組み合わせることができる。
【0090】
そして、無人飛行体に搭載され、要救助者や物資等の捜索に用いられる高所作業装置に本発明を広く適用することができる。
【符号の説明】
【0091】
H …高所作業装置
1 …ドローン
6 …制御ユニット
7 …作業ユニット
61 …リール機構
61a …スプール
72 …上部構造体
72a …テーパー状の周面
73 …下部構造体
73a …半球状の周面
76b …カメラ
9 …ジョイント部
W…電熱線
S …糸(索体)