(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156774
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】喫煙器具および喫煙器具の製造方法
(51)【国際特許分類】
A24F 40/46 20200101AFI20221006BHJP
A24F 40/70 20200101ALI20221006BHJP
A24F 40/50 20200101ALI20221006BHJP
【FI】
A24F40/46
A24F40/70
A24F40/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060629
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】721008039
【氏名又は名称】Future Technology株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 龍志
【テーマコード(参考)】
4B162
【Fターム(参考)】
4B162AA02
4B162AA22
4B162AB11
4B162AC22
4B162AC34
4B162AD03
4B162AD06
4B162AD13
4B162AD16
4B162AD22
4B162AD23
4B162AE02
(57)【要約】
【課題】ユーザの喫煙スタイルの多様化に対応できる喫煙器具を提供する。
【解決手段】エアロゾル形成基材(60)を加熱する加熱体(20)を備えた喫煙器具(1)であって、前記加熱体(20)は、柱状の芯部材(21)と、前記芯部材に設けられた複数の発熱素子(22a,22b,22c)と、を備え、前記複数の発熱素子は、互いに電気的に独立した状態で前記芯部材の軸方向に並べて配置されることを特徴とする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル形成基材を加熱する加熱体を備えた喫煙器具であって、
前記加熱体は、
柱状の芯部材と、
前記芯部材に設けられた複数の発熱素子と、を備え、
前記複数の発熱素子は、互いに電気的に独立した状態で前記芯部材の軸方向に並べて配置されることを特徴とする喫煙器具。
【請求項2】
請求項1に記載の喫煙器具において、
前記芯部材には、該芯部材の周囲を覆う外周層が形成されており、
前記複数の発熱素子は、前記外周層と一体化されていることを特徴とする喫煙器具。
【請求項3】
請求項2に記載の喫煙器具において、
前記外周層は、前記芯部材の先端部に向かうに連れて縮径してなることを特徴とする喫煙器具。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の喫煙器具において、
前記複数の発熱素子のそれぞれの温度を検出する複数の温度検出手段を備えることを特徴とする喫煙器具。
【請求項5】
請求項2または3に記載の喫煙器具において、
前記外周層は、前記複数の発熱素子のそれぞれに電流を印加する複数の電極を集約した端子部を有することを特徴とする喫煙器具。
【請求項6】
柱状の芯部材に複数の発熱素子が設けられた加熱体を有する喫煙器具の製造方法であって、
前記複数の発熱素子を、互いに電気的に独立した状態でシート状の部材に並べて、前記シート状の部材と一体化させる第1工程と、
前記シート状の部材を、前記複数の発熱素子が前記芯部材の軸方向に並ぶ向きにして前記芯部材の外周面に巻き付ける第2工程と、を含むことを特徴とする喫煙器具の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の喫煙器具の製造方法であって、
前記シート状の部材は、互いに平行な一対の辺のうち一方の辺の方が他方の辺より長い台形状に形成されており、
前記第2工程では、前記一方の辺を中心にして前記芯部材の外周面に巻き付けることを特徴とする喫煙器具の製造方法。
【請求項8】
エアロゾル形成基材を加熱する加熱体と、前記加熱体の発熱動作を制御する制御部と、を備えた喫煙器具であって、
前記制御部は、第1条件で前記加熱体の発熱を停止させる停止部と、第2条件で前記加熱体の発熱を再開させる再開部と、を含み、
前記加熱体は、互いに電気的に独立して配置された複数の発熱素子を備え、
前記制御部は、前記停止部による前記加熱体の発熱の停止時と、前記再開部による前記加熱体の発熱の再開時とで、異なる発熱素子を発熱させる切換制御を実施することを特徴とする喫煙器具。
【請求項9】
請求項8に記載の喫煙器具において、
当該喫煙器具を使用するユーザの任意で喫煙を停止する喫煙停止手段と、前記ユーザの任意で前記喫煙を再開する喫煙再開手段と、を備え、
前記第1条件は、前記喫煙停止手段により前記喫煙が停止されることであり、
前記第2条件は、前記喫煙再開手段により前記喫煙が再開されることであることを特徴とする喫煙器具。
【請求項10】
請求項8または9に記載の喫煙器具において、
前記制御部による前記切換制御は、前記加熱体の発熱の再開時において、前記加熱体の発熱が開始された時から前記停止部により前記加熱体の発熱が停止された時までに発熱した発熱素子以外の発熱素子を発熱させることを特徴とする喫煙器具。
【請求項11】
請求項8~10の何れか1項に記載の喫煙器具において、
前記複数の発熱素子は、前記加熱体の長手方向に並べて配置されており、
前記制御部は、
前記加熱体の発熱が開始された時から前記停止部により前記加熱体の発熱が停止される時までは前記加熱体の長手方向の一方の側に配置された前記発熱素子から他方の側に配置された前記発熱素子に向かって順番に前記複数の発熱素子を発熱させるよう制御し、
前記切換制御を実施して前記加熱体の発熱を再開する際は当該順番を逆にして前記発熱素子を発熱させるよう制御することを特徴とする喫煙器具。
【請求項12】
請求項8~10の何れか1項に記載の喫煙器具において、
前記複数の発熱素子は、前記加熱体の長手方向に並べて配置されており、
前記制御部は、
前記加熱体の発熱が開始された時から前記停止部により前記加熱体の発熱が停止される時までは前記加熱体の長手方向の一方の側に配置された前記発熱素子から他方の側に配置された前記発熱素子に向かって順番に前記複数の発熱素子を発熱させるよう制御し、
前記切換制御を実施して前記加熱体の発熱を再開する時は他方の側に配置された前記発熱素子を発熱させることを特徴とする喫煙器具。
【請求項13】
請求項8~12の何れか1項に記載の喫煙器具において、
前記制御部は、所定条件が成立したことを契機に前記切換制御を実施することを特徴とする喫煙器具。
【請求項14】
請求項13に記載の喫煙器具において、
前記所定条件は、前記複数の発熱素子のうち最も温度が低い発熱素子の温度が所定温度未満であることであり、
前記制御部は、前記所定条件が成立しない場合に、前記停止部により前記加熱体の発熱を停止させることを特徴とする喫煙器具。
【請求項15】
請求項8~14の何れか1項に記載の喫煙器具において、
前記複数の発熱素子は、前記加熱体の長手方向に並べて配置されており、
前記第1条件および前記第2条件は、前記複数の発熱素子のうち、発熱している発熱素子と隣り合う発熱素子の温度が所定温度より高い場合である、ことを特徴とする喫煙器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、喫煙器具および喫煙器具の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、火炎を用いることなく、タバコの成分を含むタバコカートリッジを加熱して、気化したタバコ成分を吸引する方式のタバコ製品が広く知られている。また、嗜好の多様化から、タバコ成分を含まない植物の芳香や味わいを、タバコ同様に火炎を用いずに楽しむためのカートリッジ製品も知られ始めている。
【0003】
このようなカートリッジ製品は、加熱式の喫煙器具に挿入されて使用される。喫煙器具にはヒータ(加熱体)が内蔵されており、ヒータが発熱することでカートジッリ製品に充填されたエアロゾル形成基材が加熱されて、エアロゾルが生成される。ヒータの制御技術として、例えば特許文献1には、ヒータを瞬間的に温度上昇させる制御と、ヒータの温度を維持する制御とが記載されている。特許文献1に記載の従来技術によれば、瞬間的にヒータを温度上昇させることができるため、ユーザが喫煙したいときに、直ぐに喫煙できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、単にヒータの温度を瞬間的に上昇させることしかできず、ユーザが好む喫煙スタイルに必ずしも対応できていない。
【0006】
そこで、本発明は、ユーザの喫煙スタイルの多様化に対応できる喫煙器具および喫煙器具の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様は、エアロゾル形成基材を加熱する加熱体を備えた喫煙器具であって、前記加熱体は、柱状の芯部材と、前記芯部材に設けられた複数の発熱素子と、を備え、前記複数の発熱素子は、互いに電気的に独立した状態で前記芯部材の軸方向に並べて配置されることを特徴とする。
【0008】
また、上記目的を達成するために、本発明の別の態様は、柱状の芯部材に複数の発熱素子が設けられた加熱体を有する喫煙器具の製造方法であって、前記複数の発熱素子を、互いに電気的に独立した状態でシート状の部材に並べて、前記シート状の部材と一体化させる第1工程と、前記シート状の部材を、前記複数の発熱素子が前記芯部材の軸方向に並ぶ向きにして前記芯部材の外周面に巻き付ける第2工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
また、上記目的を達成するために、本発明の別の態様は、エアロゾル形成基材を加熱する加熱体と、前記加熱体の発熱動作を制御する制御部と、を備えた喫煙器具であって、前記制御部は、第1条件で前記加熱体の発熱を停止させる停止部と、第2条件で前記加熱体の発熱を再開させる再開部と、を含み、前記加熱体は、互いに電気的に独立して配置された複数の発熱素子を備え、前記制御部は、前記停止部による前記加熱体の発熱の停止時と、前記再開部による前記加熱体の発熱の再開時とで、異なる発熱素子を発熱させる切換制御を実施することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ユーザの喫煙スタイルの多様化に対応できる。なお、上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る喫煙器具の斜視図である。
【
図2】(a)は喫煙器具の正面図、(b)は喫煙器具の上面図、(c)は(b)のIIc-IIc断面図である。
【
図3】カートリッジが喫煙器具に装着された状態を示す縦断面図である。
【
図4】(a)は加熱体の上面図であって、発熱素子を取り付ける前の状態を示す図、(b)は加熱体の正面図であって、発熱素子を取り付ける前の状態を示す図、(c)は加熱体の正面図であって、発熱素子を取り付けた状態を示す図である。
【
図5】コントローラの電気的構成を示すブロック図である。
【
図6】コントローラによる通電制御の処理手順を示すフローチャートである。
【
図7】
図6に示す中断・再開処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図8】ブレード型の加熱体における加熱ムラを説明するための図である。
【
図9】変形例1に係る喫煙器具の通電制御の処理手順を示すフローチャートである。
【
図10】
図9に示す中断・再開処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図11】(a)は変形例2に係る加熱体の上面図であって、発熱素子を取り付ける前の状態を示す図、(b)は変形例2に係る加熱体の正面図であって、発熱素子を取り付ける前の状態を示す図、(c)は変形例2に係る加熱体の正面図であって、発熱素子を取り付けた状態を示す図である。
【
図12】変形例2に係る喫煙器具の通電制御の処理手順を示すフローチャートである。
【
図13】
図12に示す中断・再開処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図14】変形例3に係る喫煙器具の通電制御の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
(喫煙器具の全体構成)
図1は本発明の実施形態に係る喫煙器具1の斜視図である。
図2(a)は喫煙器具1の正面図、(b)は喫煙器具1の上面図、(c)は(b)のIIc-IIc断面図である。
図3はカートリッジ2が喫煙器具1に装着された状態を示す縦断面図である。なお、
図3の白抜き矢印は、エアロゾルの流れ方向を示している。
【0014】
図1、
図2(a)~(c)に示すように、喫煙器具1は、本体部10と、喫煙器具用カートリッジ(以下、「カートリッジ」と略す。)2が挿入される挿入口11と、本体部10に内蔵されてカートリッジ2を加熱する加熱体20(
図2(c)参照)と、電源スイッチ13と、ランプ14と、を備える。
【0015】
カートリッジ2は、
図1中の矢印の方向に差し込まれることで、本体部10に装着される(
図3参照)。カートリッジ2は、
図3に示すように、加熱体20によって加熱されることでエアロゾルを生成可能なエアロゾル形成基材60と、エアロゾル形成基材60を支持する支持部材70と、支持部材70の流路を通過したエアロゾルを吸引するためのマウスピース80と、これらを包んだ外装部材90とによって構成される。なお、エアロゾル形成基材60は、タバコ成分を含んでいても良いし、含んでいなくても良い。
【0016】
本体部10は、例えば金属製の棒状(円筒状)の部材から成る。勿論、本体部10の材質は金属製に限定されず、高耐熱性の樹脂材料等が用いられても良い。また、本体部10の形状は棒状に限定されず、例えば重量感のある直方体や薄いカード型等でも良い。
【0017】
挿入口11は本体部10の長手方向の一端部10a(エアロゾルの流れの下流側の端部/
図3参照)に円形状に形成され、その口径(内径)はカートリッジ2の挿入が可能な程度の大きさとなっている。なお、本体部10の長手方向の他端部10b(エアロゾルの流れの上流側の端部/
図3参照)には、図示せぬ充電用端子が設けられている。
【0018】
加熱体20は、
図2(c)に示すように、例えば細長い針状に形成されている。
図3に示すように、加熱体20には、カートリッジ2のエアロゾル形成基材60が挿入される。加熱体20の外周面には後述の発熱素子22a,22b,22cが設けられている(
図4(a)参照)。これらの発熱素子22a,22b,22cが発熱することでエアロゾル形成基材60を加熱できる。なお、加熱体20の詳細は後述する。
【0019】
電源スイッチ13は、例えば押し釦スイッチであり、ユーザ(喫煙者)が押下することで電源がオンとなり、加熱体20によるエアロゾル形成基材60の加熱が開始あるいは再開される。そして、ユーザが再度、電源スイッチ13を押下すると電源がオフになり、加熱体20によるエアロゾル形成基材60の加熱が停止あるいは一時停止される。電源スイッチ13は、本発明の「喫煙停止手段」と「喫煙再開手段」に相当する。
【0020】
ランプ14は、例えばLED(発光ダイオード)ランプであり、その点灯態様によりユーザに対して例えば喫煙可能である旨や一時停止中である旨を報知する。即ち、ランプ14は喫煙器具1の内部状態をユーザに報知する報知手段として機能する。勿論、ランプの代わりに液晶等を用いることもできる。なお、電源スイッチ13やランプ14の取付位置は、任意で良く、操作性等を考慮して、本体部10の好適な位置に設けることができる。
【0021】
図2(a)~(c)に示すように、喫煙器具1の内部には、上記した加熱体20と、加熱体20の発熱素子22a,22b,22cの通電(発熱動作)を制御するコントローラ(制御部)15と、コントローラ15に電力を供給するバッテリ16と、が搭載されている。なお、コントローラ15は、具体的には制御基板である。また、バッテリ16は、例えばリチウム系電池(リチウムポリマ電池等)から成り、本体部10の下端部に設けられた充電用端子を介して充電可能となっている。
【0022】
本体部10の内部には、加熱体20を支持するブロック状の支持台17が設けられている。この支持台17は、本体部10の内部空間を長手方向(
図2(c)の上下方向)において2つに仕切る。支持台17から本体部10の一端部10aに至る加熱室R1に加熱体20が配置され、支持台17から本体部10の他端部10bに至る空間R2にコントローラ15とバッテリ16が配置される。支持台17には図示せぬ取付口が設けられており、この取付口に加熱体20が嵌め込まれることで、加熱体20が支持台17に強固に固定され、支持されている。なお、図示は省略するが、本体部10の加熱室R1の周壁を構成してカートリッジ2を収納するケース部分は、本体部10に対して軸方向にスライド自在に取り付けられている。そして、このケース部分をエアロゾルの流れの下流側にスライドさせることで、カートリッジ2が加熱体20から引き抜かれる構成となっている。
【0023】
また、空間R2には、ユーザの吸引に反応して信号を出力する圧力センサ32が設けられている。圧力センサ32の検出信号はコントローラ15に入力される。よって、コントローラ15は、圧力センサ32のオン信号の回数をカウントすれば、ユーザの吸引回数(いわゆるパフ回数)を判定できる。なお、圧力センサ32は、ユーザの吸引を検出できる位置であれば、どの位置に取り付けられていても良い。例えば、圧力センサ32は、加熱室R1に設けられていても良い。また、ユーザの吸引回数を判定する方法としては、後述する温度センサ30a,30b,30cによって検出される温度変化を基に吸引を検知して判定しても良い。
【0024】
(加熱体の構成)
次に、加熱体20の詳細について説明する。
図4(a)は加熱体20の上面図であって、発熱素子22a,22b,22cを取り付ける前の状態を示す図、(b)は加熱体20の正面図であって、発熱素子22a,22b,22cを取り付ける前の状態を示す図、(c)は加熱体20の正面図であって、発熱素子22a,22b,22cを取り付けた状態を示す図である。
【0025】
図4(a)~(c)に示すように、加熱体20は、先端部21aが尖った細長い円柱状の軸部材(芯部材)21と、軸部材21を覆って外周層を形成するシート(シート状の部材)25と、シート25に印刷されてシート25と一体化された発熱素子22a,22b,22cと、を備える。なお、発熱素子22a,22b,22cをシート25と一体化させる手段は印刷に限定されない。接着等により両者を一体化しても良いし、その他の手段で一体化させても良い。
【0026】
軸部材21は、例えばセラミック材料を焼結して所定の形状に成形したものである。なお、本実施形態において、軸部材21は円柱状に形成してあるが、角柱状であっても良い。
【0027】
シート25は、例えばポリイミドや熱硬化性樹脂等の500℃以上の温度に対する高耐熱性を有する材料からなり、
図4(b)のように、長方形の角部を斜めに切断して台形状に形成されており、斜めに傾斜した上辺25aと、底辺25bと、左辺25cと、右辺25dと、を有する。左辺25cおよび右辺25dは、底辺25bに対して垂直であって、互いに平行である。そして、本実施形態では、左辺25cの方が右辺25dより長い。また、シート25は、軸部材21に複数周巻き付けるために、底辺25bが軸部材21の外周長さの2倍~5倍である。なお、軸部材21およびシート25の材質は、後述する加熱体20の製造方法で製造可能であって所定の強度を有するものであれば良く、上記材質に限定されない。
【0028】
発熱素子22a,22b,22cは、ニクロム線などの抵抗体からなる。ニクロム線に電流を印加することで、ニクロム線が発熱する。また、発熱素子22a,22b,22cとして、金属にコイルを巻き付けた構成を採用することもできる。この場合、コイルに電流を印加すると、電磁誘導の原理によって金属が発熱する(誘導加熱)。なお、本実施形態では、発熱素子22a,22b,22cを3つ配設しているが、2~7つが好ましく、特には4つが好ましい。発熱素子を4つにした場合、部品点数の増加をなるべく抑えつつ、中断・再開処理(後述)の制御パターンが増えてユーザのニーズに応えやすくなるといった利点がある。
【0029】
発熱素子22a,22b,22cは、軸部材21の軸方向(
図4(b)の上下方向/エアロゾルの流れの方向)に並べて配置されており、それぞれが電気的に独立してシート25に印刷される。別言すれば、発熱素子22aと発熱素子22bと発熱素子22cとは、互いに導通していない。よって、発熱素子22a,22b,22cは、それぞれ独立して発熱することが可能である。そして、発熱素子22aが発熱すると軸部材21の上段の領域(エアロゾルの流れの最も下流側)が加熱され、発熱素子22bが発熱すると軸部材21の中段の領域が加熱され、発熱素子22cが発熱すると軸部材21の下段の領域(エアロゾルの流れの最も上流側)が加熱される。
【0030】
発熱素子22a,22b,22cは、それぞれ電極24a,24b,24cを有しており、電極24a,24b,24cにそれぞれ電流を印加すると、発熱素子22a,22b,22cが発熱する。なお、符号23はアース線である。
【0031】
シート25には、発熱素子22a,22b,22cのそれぞれの温度を検出する温度センサ30a,30b,30cがシート25に設けられている。温度センサ30a,30b,30cは、例えば熱電対からなるが、発熱素子22a,22b,22cの温度を検出することができる手段であれば、その形式は問わない。温度検出手段として、例えば、発熱素子22a,22b,22cを熱電対として直接温度を検出する構成を用いても良い。
【0032】
(加熱体の製造方法)
次に、加熱体20の製造方法について説明する。
【0033】
まず、セラミック粉末を金型に入れて、
図4(b)に示すような細長い円柱状(針状)の軸部材21を成形する。
【0034】
次いで、軸部材21と同様にセラミックを含むシート25に発熱素子22a,22b,22cをシート25の長手方向(軸部材21の軸方向)に沿って電気的に独立した状態で並べて印刷して一体化させる(第1工程)。
【0035】
次いで、シート25の左辺25cを中心にして、シート25を軸部材21の外周面に対して
図4(a)の矢印方向に巻き付ける(第2工程)。シート25は、底辺25bが軸部材21の外周長さの2倍~7倍であるため、1.5周~5周、軸部材21を巻回する。この際、シート25の上辺25aが傾斜しているため、シート25は、軸部材21の先端部21aに向かうに連れて縮径するように軸部材21に巻き付けられる。
【0036】
次いで、シート25が巻き付けられた軸部材21を所定の温度で脱脂する。これにより、シート25が軸部材21と一体化され、シート25による軸部材21の外周層が形成される。
【0037】
次いで、シート25が外周層として形成された軸部材21を高温で加熱して焼結する。
【0038】
こうして、
図4(c)に示す外観の加熱体20が完成する。
【0039】
このように、複数の発熱素子22a,22b,22cを、互いに電気的に独立した状態でシート25に並べて一体化させ(第1工程)、シート25を、発熱素子22a,22b,22cが軸部材21の軸方向に並ぶ向きにして軸部材21の外周面に巻き付ける(第2工程)ようにしたので、加熱体20の径方向についての外周層を形成しつつ、複数の発熱素子22a,22b,22cをシート25に配設することができる。
【0040】
また、シート25は、互いに平行な一対の辺のうち一方の辺25cの方が他方の辺25dより長い台形状に形成されており、第2工程で一方の辺25cを中心にして軸部材21の外周面に巻き付けて形成するようにしたので、加熱体20の径方向についての外周層を形成しつつ、先端部21aを鋭角に形成することができる。
【0041】
また、シート25は、軸部材21と同様にセラミックを含んでなるため、シート25が外周層として形成された軸部材21を高温で加熱して焼結する際に、軸部材21とシート25とを強固に結合させて一体に形成することができる。
【0042】
(加熱体の温度制御)
次に、コントローラ15の詳細について説明する。
図5はコントローラ15の電気的構成を示すブロック図である。
【0043】
コントローラ15は、CPU、ROM、RAM(記憶部)、および入出力インターフェース等を含むハードウェアと、ROMに記憶され、CPUにより実行されるソフトウェアとから構成される。コントローラ15が行う各種制御処理は、CPUがROMに格納された各種プログラムをRAMにロードして実行することにより、実現される。
【0044】
図5に示すように、コントローラ15は、その入力側が温度センサ30a,30b,30c、圧力センサ32、および電源スイッチ13と接続され、出力側が発熱素子22a,22b,22c、およびランプ14と接続される。コントローラ15は、入力された各種検出信号に基づいて、例えば、ランプ14の点灯制御や加熱体20の発熱素子22a,22b,22cの通電切換制御(オン/オフ制御)を行う。
【0045】
コントローラ15は、パフ判定部41と、温度判定部42と、スイッチ判定部43と、タイマ44と、記憶部45と、通電制御部46と、を含む。なお、コントローラ15は、本発明の「停止部」および「再開部」として機能する。
【0046】
パフ判定部41は、圧力センサ32からの検出信号に基づいて、ユーザがカートリッジ2を吸引した回数(パフ回数)を判定する。具体的には、パフ判定部41は、ユーザが電源スイッチ13を1回オンして、次にユーザが電源スイッチ13を1回オフするまでの期間、即ち、ユーザが1回喫煙を行う期間(以下、喫煙期間という)を監視し、この喫煙期間において、圧力センサ32からの検出信号の入力回数が何回かをカウントし、そのカウント数を1回の喫煙期間におけるパフ回数と判定する。
【0047】
温度判定部42は、温度センサ30a,30b,30cからの検出信号に基づいて、発熱素子22a,22b,22cの温度を判定する。
【0048】
スイッチ判定部43は、電源スイッチ13からの検出信号に基づいて、電源スイッチ13がオンされたか否かを判定する。
【0049】
タイマ44は、特定の契機で作動して時間を計測する。
【0050】
記憶部45は、パフ判定部41により判定されたパフ回数、温度判定部42による発熱素子22a,22b,22cの温度、タイマ44により計測された時間などを一時的に記憶する。
【0051】
通電制御部46は、パフ判定部41、温度判定部42、およびスイッチ判定部43からの判定情報に基づいて、次に述べるように発熱素子22a,22b,22cを所定の態様で通電するよう制御する(発熱動作の制御)。その際、通電制御部46は、タイマ44を作動させ、あるいは、記憶部45との間で各種情報を読み出し/書き込みを行う。また、通電制御部46は、スイッチ判定部43からの信号に基づいて、ランプ14を点灯・点滅・消灯させる。
【0052】
さらに、通電制御部46は、同じく次に述べるように、ユーザが喫煙の途中で電源スイッチ13をオフ(第1条件)にして喫煙を一時中断した後、再度、電源スイッチ13をオン(第2条件)して喫煙を再開した場合に、一時中断の前後で異なる発熱素子22a,22b,22cを通電する制御(切換制御)も行っている。なお、本明細書において、特に断らない限り、発熱素子22a,22b,22cに通電することと、発熱素子22a,22b,22cが発熱することとは同義である。
【0053】
続いて、コントローラ15による加熱体20への通電制御について説明する。
図6はコントローラ15による通電制御の処理手順を示すフローチャートである。スイッチ判定部43は電源スイッチ13からの検出信号を常時監視しており、電源スイッチ13からオン信号が入力されると、スイッチ判定部43は通電制御部46に電源スイッチ13がオンされた旨の信号を出力する。通電制御部46は、その信号に基づいて、
図6に示す発熱素子22a,22b,22cの通電制御を開始する。
【0054】
まず、通電制御部46は、予熱モードを開始する(S100)。この予熱モードは、エアロゾルの流れの最も下流側に位置する発熱素子22aを「所定温度(例えば350℃)」まで加熱して「所定時間(例えば10秒)」維持するモードである。これにより、発熱素子22aは、エアロゾル形成基材60のうち軸部材21の上段に接する部分やその近傍(周囲)、すなわちエアロゾル形成基材60の下流側部分を喫煙前に予め加熱することで、エアロゾル形成基材60の下流側部分から積極的にエアロゾルを抽出することができる。
【0055】
通電制御部46は、スイッチ判定部43からの信号に基づいて電源スイッチ13がオフされたか否かを判定する(S110)。電源スイッチ13がオフされた場合(S110/Yes)、通電制御部46は、ユーザが喫煙を一時中断したと判定して、発熱素子22aの通電を停止して中断・再開処理(通電切換制御処理)に進む(S220)。一方、電源スイッチ13がオンの場合(S110/No)、通電制御部46は、予熱条件が達成されたか否かを判定する(S120)。具体的には、通電制御部46は、予熱モードが開始されてから所定時間(例えば10秒)が経過した場合(S120/Yes)に、予熱条件が達成したと判定して喫煙モードを開始する(S130)。
【0056】
喫煙モードが開始されると、通電制御部46は、電源スイッチ13がオフ(即ち、一時中断)されたか否かを判定し(S140)、電源スイッチ13がオフされた場合(S140/Yes)、発熱素子22aへの通電を停止して中断・再開処理に進む(S220)。一方、電源スイッチ13がオンの場合(S140/No)、通電制御部46は、発熱素子22aに通電する(S150)。即ち、加熱体20の上段部分が発熱し、加熱体20の上段部分の周囲にあるエアロゾル形成基材60が加熱される。以下、本実施形態においては、温度判定部42によって判定される温度が一定値を保つよう、通電制御部46は、通電時(S150、S170、S190等)の発熱素子22a,22b,22cへの通電を制御する。
【0057】
次いで、通電制御部46は、パフ判定部41から入力されたパフ回数が所定回数(例えば5回)を超えたか否かを判定する(S160)。ここで、所定回数は、エアロゾル形成基材60の成分や充填密度などに応じて任意に定めることができる。所定回数は予め設定された固定の数値でも良いし、ユーザが任意に設定できる構成としても良い。
【0058】
通電制御部46は、パフ回数が所定回数を超えていると判定した場合(S160/Yes)、発熱素子22aへの通電を停止し、発熱素子22bに通電する。即ち、通電制御部46は、ステップS170において発熱素子22aから発熱素子22bへ通電を切り換える。これにより、加熱体20の中段部分が発熱し、加熱体20の中段部分の周囲にあるエアロゾル形成基材60が加熱される。
【0059】
次いで、通電制御部46は、パフ判定部41から入力されたパフ回数が所定回数(例えば5回)を超えたか否かを判定する(S180)。通電制御部46は、パフ回数が所定回数を超えていると判定した場合(S180/Yes)、発熱素子22bへの通電を停止し、発熱素子22cに通電する。即ち、通電制御部46は、ステップS190において発熱素子22bから発熱素子22cへ通電を切り換える。これにより、加熱体20の下段部分が発熱し、加熱体20の下段部分の周囲にあるエアロゾル形成基材60が加熱される。
【0060】
次いで、通電制御部46は、パフ判定部41から入力されたパフ回数が所定回数(例えば5回)を超えたか否かを判定する(S200)。通電制御部46は、パフ回数が所定回数を超えていると判定した場合(S200/Yes)、発熱素子22cの通電を停止し、電源スイッチ13をオフにする(S210)。即ち、喫煙モード(S130)が終了となる。
【0061】
ここで、S160においてパフ回数が所定回数以下の場合(S160/No)には、ステップS140に戻り、電源スイッチ13がオフされない限り(S140/Yes)、ステップS140、S150を繰り返し実行して発熱素子22aへの通電が維持される。また、ステップS180およびステップS200においては、パフ回数が所定回数以下の場合(S180/NoおよびS200/No)、ステップS170およびステップS190を繰り返し実行して発熱素子22b、発熱素子22cへの通電が維持される。
【0062】
次に、ステップS220にて行われる中断・再開処理について説明する。
図7は、
図6に示す中断・再開処理の詳細を示すフローチャートである。
【0063】
図7に示すように、中断・再開処理が開始されると、通電制御部46は、スイッチ判定部43からの信号に基づいて、電源スイッチ13がオンされたか否かを判定する(S221)。電源スイッチ13がオンされた場合(S221/Yes)、通電制御部46は、発熱素子22cに通電する(S222)。即ち、中断前は発熱素子22aが通電されていたが、中断後の再開では発熱素子22cが通電されることとなる。
【0064】
次いで、通電制御部46は、パフ判定部41から入力されたパフ回数が所定回数(例えば5回)を超えたか否かを判定する(S223)。通電制御部46は、パフ回数が所定回数を超えていると判定した場合(S223/Yes)、発熱素子22cへの通電を停止し、発熱素子22bに通電する(S224)。即ち、通電制御部46は、ステップS224において発熱素子22cから発熱素子22bへ通電を切り換える。
【0065】
次いで、通電制御部46は、パフ判定部41から入力されたパフ回数が所定回数(例えば5回)を超えたか否かを判定する(S225)。通電制御部46は、パフ回数が所定回数を超えていると判定した場合(S225/Yes)、中断・再開処理を終了して、ステップS210に進む。
【0066】
なお、ステップS223においてパフ回数が所定回数以下の場合(S223/No)には、発熱素子22cへの通電が維持され、ステップS225においてパフ回数が所定回数以下の場合(S225/No)には、発熱素子22bへの通電が維持される。
【0067】
ここで、本実施形態では、通常の喫煙モード(S130)と、通常の喫煙モードにてユーザが電源スイッチ13を押下して喫煙を中断した場合(S220)とで、発熱素子の通電パターンが異なっている。具体的には、通常の喫煙モードでは、発熱素子22a(上段)→発熱素子22b(中段)→発熱素子22c(下段)の順に通電する。一方、発熱素子22aに通電している際に喫煙を中断し、その後再開した時には、発熱素子22a(上段)→発熱素子22c(下段)→発熱素子22b(中段)の順に通電する。このように、喫煙を一時中断した場合には、再開後の発熱素子の通電の順番を変更している。
【0068】
仮に、中断後の再開時において、通常の喫煙モードと同じ順番で発熱素子を通電すると、既にエアロゾル形成基材60が加熱された箇所の近くを加熱することとなり、風味を損なう虞がある。そこで、本実施形態では、喫煙を中断後に再開する場合において、通電制御部46は、喫煙開始時に最初に通電された発熱素子22aから一番離れた位置(最も上流側の位置)にある発熱素子22cに通電するようにしているため、再開後の喫煙も風味豊かな状態が保たれることとなる。
【0069】
以上説明したように、本実施形態に係る喫煙器具1によれば、以下の作用効果を奏することができる。
【0070】
加熱体20は、円柱状の軸部材21の外周層に3つの発熱素子22a,22b,22cが設けられており、これら3つの発熱素子22a,22b,22cは互いに電気的に独立した状態で軸部材21の軸方向に並べて配置されている。そのため、発熱素子22a,22b,22cの何れかを通電することで、加熱体20は部分的に発熱する。より詳細には、発熱素子22aに通電することで、加熱体20の上段部分が発熱し、発熱素子22bに通電することで、加熱体20の中段部分が発熱し、発熱素子22cに通電することで、加熱体20の下段部分が発熱する。
【0071】
これにより、エアロゾル形成基材60も長手方向に沿って上段、中段、下段に分かれて、部分的に加熱される。即ち、従来であれば、エアロゾル形成基材は加熱体によって全体的に瞬時に加熱されていたが、本実施形態によれば、エアロゾル形成基材60を、領域を上中下に分けて段階的に加熱することができる。よって、ユーザの喫煙スタイルの多様化に対応できる。より具体的に言うと、本実施形態によれば、ユーザは、カートリッジ2を、ゆっくり時間をかけて喫煙することや、一喫煙期間あたりにおけるパフ回数を多くすることができる。
【0072】
特に、本実施形態の喫煙モードによれば、エアロゾル形成基材60は、下流側部分から順に加熱されるので、喫煙時にエアロゾル形成基材60内を流通する空気がエアロゾル形成基材60の上流側部分を冷却することができる。ゆえに、当該喫煙モードでは、エアロゾル形成基材60における加熱されている箇所(例えば上段)の近傍の箇所(例えば中断)が加熱されることを抑制することができる。
【0073】
また、本実施形態によれば、発熱素子22a,22b,22cの通電はコントローラ15によって制御されているから、ユーザは電源スイッチ13を押下するだけで良い。即ち、ユーザは、自身で特別な操作を行わなくとも、所定の通電パターンで発熱素子22a,22b,22cが発熱し、エアロゾル形成基材60が上記の態様で加熱される。よって、ユーザは電源スイッチ13を押下するだけの簡単な操作で、ゆっくり時間をかけて喫煙を楽しむことができる。
【0074】
さらに、本実施形態では、電源スイッチ13をオンした後にオフ(一時停止)した場合には、中断・再開処理が実行され、発熱素子22a,22b,22cの通電が切り換わる。具体的には、喫煙を中断しない場合には、発熱素子の通電順序は、発熱素子22a(上段)→発熱素子22b(中段)→発熱素子22c(下段)である。しかし、発熱素子22aが通電されている間にユーザが電源スイッチ13を押下して喫煙を中断すると、その後の喫煙再開時には、発熱素子の通電順序が、発熱素子22c(下段)→発熱素子22b(中段)に切り換わる。つまり、通常はエアロゾル形成基材60がマウスピース80から近い順(エアロゾルの流れの下流側から上流側に向かう順)に加熱されるが、喫煙が中断後に再開されると、エアロゾル形成基材60がマウスピース80から遠い順(エアロゾルの流れの上流側から下流側に向かう順)に加熱される。
【0075】
これにより、ユーザは喫煙を中断後に再開した場合であっても、エアロゾル形成基材60のうち加熱されていない部分が加熱されることで、喫煙を最後まで楽しむことができる。ちなみに、従来であれば、喫煙を中断してもエアロゾル形成基材が全体的に加熱されるため、喫煙の再開をしても風味が損なわれ、喫煙を十分に楽しむことはできなかった。この点、本実施形態によれば、エアロゾル形成基材60を部分的に加熱できるため、風味や味わいを低下させることなく、ユーザの多様な喫煙スタイルにも十分対応できる。
【0076】
また、本実施形態では、中断・再開処理は、喫煙の初期(発熱素子22aが通電されている間)に限って実行される(
図6のS140参照)。別言すれば、エアロゾル形成基材60が例えば全体積における1/3以上加熱されているような状態では、中断・再開処理は実行されない。この構成により、喫煙の中断後の再開時において、風味や味わいを損なうことなく、喫煙を再開できる。仮に、エアロゾル形成基材60が半分以上加熱されている状態で中断・再開処理を行う構成にすると、風味や味わいが変化する虞があるが、本実施形態では、そのような心配はない。
【0077】
また、加熱体20は、上記した製造方法により製造されるため、工程が簡単で、製造コストを抑制できる利点もある。より具体的には、セラミック粉末を成形して軸部材21を製造し、発熱素子22a,22b,22cが印刷されたシート25を軸部材21に巻き付けて一体化させるという簡単な工程で加熱体20を製造できる。さらに、シート25の上辺25aが傾斜していることで、軸部材21の先端部分に段差ができにくく、エアロゾル形成基材60の挿入がスムーズである。
【0078】
しかも、本実施形態において、加熱体20がピン型で構成されているため、ブレード型に比べて、エアロゾル形成基材60の加熱のムラも抑制される。
図8はブレード型の加熱体の加熱ムラを説明するための図である。
図8に示すように、ブレード型の加熱体の場合、複数の発熱素子を同一平面上に互いに電気的に独立した状態で配置しなければならないため、ブレードの上段に発熱素子を配置させるためには、ブレードの中段および下段の領域を配線が通過する。そのため、ブレードの中段のみを発熱させたい場合、領域Aの部分は発熱しない(非発熱領域)。同様に、ブレードの下段のみを発熱させたい場合、領域Bの部分は発熱しない。そのため、本発明をブレード型の加熱体に適用しようとした場合、エアロゾル形成基材60の加熱ムラが生じてしまう。その点、本実施形態ではピン型の加熱体20が用いられているため、発熱素子22a,22b,22cを円柱状の軸部材21に均一に配置できる。その結果、エアロゾル形成基材60の加熱ムラを防止できる。特に、シート25は、1.5周~5周、軸部材21を巻回して形成している、換言すると、発熱素子22a,22b,22cによって複数の層が形成されるため、径方向における加熱ムラを防止することができる。
【0079】
以下、喫煙器具1の各種変形例について説明する。
【0080】
<変形例1>
変形例1に係る喫煙器具は、上記した実施形態と比べて、軸部材21の材質が異なる点、および、中断・再開処理が異なる点に特徴がある。具体的には、軸部材21がセラミック材料の代わりに導電性を有する金属製材料で形成されている。そのため、変形例1では、上記した実施形態のように、セラミック粉末を成形して焼結する工程は不要である。例えば、鉄などの棒材を機械加工により所定の形状に仕上げた軸部材21に対して、発熱素子22a,22b,22cを印刷したシート25(例えばグリーンシート)を巻き付けて、シート25を軸部材21に接着等により貼り付けて一体化すれば良い。
【0081】
また、変形例1では、発熱素子22a,22b,22cの通電制御において、パフ回数の代わりに発熱素子22b,22cの温度のパラメータが用いられている。そのため、通電制御部46による制御処理が上記した実施形態と異なっている。以下、変形例1における通電制御部46の制御処理について説明する。
図9は変形例1に係る喫煙器具の通電制御の処理手順を示すフローチャート、
図10は
図9に示す中断・再開処理の詳細を示すフローチャートである。
【0082】
図9に示すように、変形例1では、ステップS160-1において、通電制御部46は、発熱素子22aと隣り合い上流側に位置する発熱素子22bの温度が所定温度(例えば、340℃)を超えているか否かを判定する。変形例1においては、温度判定部42によって判定される温度が設定値以上を保つよう、通電時(S150、S170、S190等)の発熱素子22a,22b,22cへの通電を制御する。ここで、設定値は、通電を開始してから徐々に高い値(例えば1秒毎に1度高い値)となる変動値である。
【0083】
そして、発熱素子22bの温度が所定温度を超えている場合(S160-1/Yes)には、ステップS170に進んで、発熱素子22bを通電するよう制御する。ステップS180-1についても同様に、通電制御部46は、発熱素子22bと隣り合い上流側に位置する発熱素子22cの温度が所定温度(例えば、340℃)を超えているか否かを判定し、発熱素子22cの温度が所定温度を超えている場合(S180-1/Yes)には、ステップS190に進んで、発熱素子22cを通電するよう制御する。換言すると、変形例1における通電制御部46は、パフ回数の代わりに、加熱させている発熱素子(例えば発熱素子22b)と隣り合う上流側の発熱素子(例えば発熱素子22c)の温度が所定温度(閾値)を超えているか否かを判定する。なお、この処理における所定温度は、上記した予熱モードにおける所定温度より高い値に設定しても良い。
【0084】
一方、ステップS200-1においては、通電制御部46は、例えば発熱素子22a,22b,22cの温度の平均値が所定温度(例えば300℃)を超えているか否かを判定する。
【0085】
また、
図10に示すように、ステップS223-1において、通電制御部46は、発熱素子22cと隣り合い下流側に位置する発熱素子22bの温度が所定温度(例えば、340℃)を超えているか否かを判定する。発熱素子22bの温度が所定温度を超えている場合(S223-1/Yes)には、ステップS224に進んで、発熱素子22bを通電するよう制御する。一方、ステップS225-1においては、通電制御部46は、発熱素子22bと隣り合う発熱素子22aの温度が所定温度(例えば、345℃)を超えているか否かを判定する。発熱素子22aの温度が所定温度を超えている場合(S225-1/Yes)、通電制御部46は中断・再開処理を終了し、発熱素子22aの温度が所定温度以下の場合(S225-1/No)、通電制御部46はステップS224に戻り、発熱素子22bへの通電を維持する。
【0086】
以上、変形例1によっても、上記した実施形態と同様の作用効果を奏することができる。また、変形例1では、軸部材21をセラミック材料の代わりに金属製材料で形成しており、軸部材21自身がアースとして機能するため、アース線23を設ける必要がない。また、製造工程が簡単になるため、軸部材21を安価に製造できる利点もある。
【0087】
さらに、中断・再開処理で用いるパラメータがパフ回数の代わりに発熱素子22a,22b,22cの温度である。そのため、エアロゾル形成基材60が加熱されたか否かをより正確に判定でき、ユーザはカートリッジ2を無駄なく喫煙できる。
【0088】
<変形例2>
変形例2に係る喫煙器具は、上記した実施形態(
図4、6)と比べて、加熱体20の電極の構成が異なる点、および、中断・再開処理が異なる点に特徴がある。具体的には、加熱体20は、電極24a,24b,24cを集約した端子部36を備えている。
図11(a)は変形例2に係る加熱体20の上面図であって、発熱素子22a,22b,22cを取り付ける前の状態を示す図、(b)は変形例2に係る加熱体20の正面図であって、発熱素子22a,22b,22cを取り付ける前の状態を示す図、(c)は変形例2に係る加熱体20の正面図であって、発熱素子22a,22b,22cを取り付けた状態を示す図である。
【0089】
図11(a),(b)に示すように、シート25の底辺25bから軸部材21の先端部21aと反対側の端部に向かって接続端子用シート35が設けられている。接続端子用シート35には、電極24a,24b,24cのほかに温度センサ30a,30b,30cの電気配線も印刷されている。そして、シート25を軸部材21に巻き付ける際に、接続端子用シート35も折り畳むようにして、
図11(c)に示すようにブロック状の端子部36が形成されている。この端子部36には、アース線23、電極24a,24b,24c、温度センサ30a,30b,30cの端子が集約されているため、コントローラ15の制御基板の端子台に差し込めば、加熱体20とコントローラ15とが電気的に接続される。なお、端子部36は、制御基板との間で挿抜するのに十分な強度を有して構成されている。
【0090】
また、変形例2では、発熱素子22a,22b,22cの通電制御において、パフ回数の代わりに発熱素子22a,22b,22cの通電時間のパラメータが用いられている。そのため、通電制御部46による制御処理が上記した実施形態と異なっている。以下、変形例2における通電制御部46の制御処理について説明する。
図12は変形例2に係る喫煙器具の通電制御の処理手順を示すフローチャート、
図13は
図12に示す中断・再開処理の詳細を示すフローチャートである。
【0091】
図12に示すように、変形例2では、ステップS160-2において、通電制御部46は、発熱素子22aの通電時間が所定時間(例えば、1分)を経過しているか否かを判定する。そして、発熱素子22aの通電時間が所定時間を経過している場合(S160-2/Yes)には、ステップS170に進んで、発熱素子22bを通電するよう制御する。ステップS180-2、ステップS200-2についても同様に、通電制御部46は、パフ回数の代わりに通電時間が所定時間(閾値)を経過しているか否かを判定する。なお、通電時間は、通電制御部46が発熱素子22a,22b,22cに通電を開始したタイミングに合わせてタイマ44を作動させることで計測できる。
【0092】
また、
図13に示すように、ステップS223-2において、通電制御部46は、発熱素子22cの通電時間が所定時間を経過しているか否かを判定する。発熱素子22cの通電時間が所定時間を経過している場合(S223-2/Yes)には、ステップS224に進んで、発熱素子22bを通電するよう制御する。ステップS225-2においても、同様に通電制御部46は、発熱素子22bの通電時間が所定時間を経過しているか否かを判定する。
【0093】
以上、変形例2によっても、上記した実施形態と同様の作用効果を奏することができる。特に、変形例2では、加熱体20が端子部36を備えているため、電気配線の作業が簡単である。また、中断・再開処理で用いるパラメータがパフ回数の代わりに発熱素子22a,22b,22cの通電時間である。そのため、ユーザの喫煙状況に左右されることなく、加熱体20によるエアロゾル形成基材60の加熱を制御できるという利点がある。
【0094】
<変形例3>
変形例3に係る喫煙器具は、上記した実施形態と比べて、中断・再開処理が異なる点に特徴がある。
図14は変形例3に係る喫煙器具の通電制御の処理手順を示すフローチャートである。
【0095】
図14に示すように、変形例3では、中断・再開処理(S220)の前に、通電制御部46は、発熱素子22a,22b,22cのうち最も温度が低い発熱素子の温度が所定温度未満であるか否かを判定している(S215)。具体的には、温度センサ30a,30b,30cのうち最も低い温度が所定温度(例えば150℃)未満であるか否かを判定する。そして、通電制御部46は、ステップS215にてYesの場合には所定条件が成立したと判定して、中断・再開処理(S220)を実行する。一方、ステップS215にてNoの場合には、通電制御部46は中断・再開処理を実行せずに、ステップS210に進む。即ち、通電制御部46は、電源スイッチ13をオフにして、発熱素子22a,22b,22cの通電を停止する。
【0096】
ここで、所定温度は、カートリッジ2が一時的に加熱されただけであって、概ね未使用(喫煙していない)状態であるとみなせる温度に設定される。具体的には、所定温度は、エアロゾル形成基材60からエアロゾルが生成される温度の最低値である。本実施形態では、例えば150℃としたが、所定温度は、カートリッジ2を再加熱した際に風味や味わいが損なわれない範囲で適宜設定できる。
【0097】
変形例3によれば、ユーザが電源スイッチ13をオフにした際に、発熱素子22a,22b,22cの中で最も低い温度が所定温度未満であるかを判定したうえで中断・再開処理が実行されるため、喫煙を再開した際の味わいや風味が良好に維持される。仮に、エアロゾル形成基材60が十分加熱された状態で喫煙を中断して再開すると、エアロゾル形成基材60の風味や味わいは劣化しているため、ユーザにとってそのような状態での喫煙は好ましくない。この点、変形例3によれば、発熱素子22a,22b,22cのうち最も低い温度が所定温度未満であるか否かをステップS215にて判定しているので、カートリッジ2がほぼ未使用状態である場合に喫煙の再開が可能となり、喫煙の再開後の風味や味わいは良好である。
【0098】
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。上記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者ならば、本明細書に開示の内容から、各種の代替例、修正例、変形例あるいは改良例を実現することができ、これらは添付の特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。上記した各種変形例の構成を任意に組み合わせることもできるし、例えば、以下のような変形例も可能である。
【0099】
発熱素子22a,22b,22cを軸部材21の軸方向に並べて配置する構成の代わりに、軸部材21の周方向に並べて配置しても良い。この場合でもエアロゾル形成基材60を周方向に部分的に加熱できるため、ユーザの喫煙スタイルの多様化に対応できるうえ、長時間の喫煙が可能である。
【0100】
また、加熱体20を複数設けておき、複数の加熱体20の通電を個別に制御することで、ユーザの喫煙スタイルの多様化に対応させ、長時間の喫煙を可能とすることもできる。例えば、3つの加熱体20を支持台17に並べて配置しておき、各加熱体20を順番に通電させる構成にすれば、エアロゾル形成基材60を部分的に加熱できるため、ユーザが喫煙を中断し、再開したいといった要請に応えることができる。
【0101】
また、異なるタイプの加熱体を複数設ける構成でも良い。例えば、カートリッジ2の内部を加熱する加熱体20と、カートリッジ2の周囲(周面や端面)を加熱する1つまたは2以上のヒータとを備える構成とする。そして、加熱体20とヒータとの通電を切り換える。この構成であっても、カートリッジ2を部分的に加熱できるため、風味や味わいを損なうことなく、喫煙の中断と再開を実現できる。
【0102】
また、発熱素子に対する通電の順序(通電パターン)は、上段→中段→下段の代わりに、下段→中段→上段としても良い。この場合、中断後の再開時には、下段(中断前)→上段(再開時)→中段の順に通電すれば良い。また、発熱素子に対する通電の順序(通電パターン)は、上段→中段→下段のように個々に加熱するのではなく、上段→上段および中段→上段、中段および下段としても良い。
【0103】
また、全ての発熱素子22a,22b,22cを同時に通電させる瞬間加熱モードを設けて、専用のボタンあるいは電源スイッチ13を長時間押下するなどにより、瞬間的に加熱体20を発熱させることもできる。この場合、ユーザの様々な喫煙スタイルにより一層対応できる。
【0104】
また、パフ回数(
図6参照)、所定温度(
図9参照)、および所定時間(
図12参照)の設定は、適宜可能である。1回の通電制御(1回の喫煙)で異なる時間にしても良い。例えば、
図6において、ステップS160のパフ回数は8回、ステップS180のパフ回数は6回、ステップS200のパフ回数は3回といったように、異なるパフ回数に設定することもできる。その際、上記の通り、喫煙の最初の方のパフ回数(8回)を最後の方のパフ回数(3回)に比べて多くするのが好ましい。別言すれば、エアロゾルの流れの上流側より下流側にある発熱素子へより長い時間、通電できるようにするのが好ましい。
【0105】
その理由について説明すると、本実施形態では、発熱素子22a→発熱素子22b→発熱素子22cの順に通電されるため、最初に通電される発熱素子に対してはパフ回数の閾値を大きくしても、エアロゾルは十分発生するため、良好な味わいが保たれる。その一方、通電の順番が後になるほど、既にエアロゾル形成基材60の加熱が進んでいるため、エアロゾルの発生が十分でない可能性がある。よって、例えば最後に通電される発熱素子に対してパフ回数を多くしても、風味や味わいが損なわれている場合もあり得る。そのため、上記したようなパフ回数を8回、6回、3回と異なる閾値に設定することで、カートリッジ2を美味しく、かつ、無駄なく喫煙することができる。
【0106】
ここで、中断・再開後の通電パターンは、通常喫煙時の通電パターンと異なっていれば良く、必ずしも、最も離れている発熱素子から逆の順序で通電させる必要はない。例えば5つの発熱素子を設けた場合、1番目→2番目→3番目→4番目→5番目の順が通常パターンだとすると、中断再開後は、1番目(中断前)→5番目(再開時)→4番目→3番目→2番目としても良いし、1番目(中断前)→4番目(再開時)→5番目→3番目→2番目としても良い。
【0107】
また、上記した実施形態では、電源スイッチ13の押下に基づいて、通電の中断・再開処理を行う構成としたが、電源スイッチ13の代わりに、例えばカートリッジ2の抜き取りの有無や、バッテリ16の充電量などに基づいて中断・再開処理を実行しても良い。
【0108】
また、上記した実施形態では、フロー(
図6、7、9、10、12、13、14)を用いて各制御手順を説明したが、実施可能な範囲において適宜変更しても良い。
【0109】
また、上記した実施形態では、台形状に形成したシート25を用いたが、帯状、すなわち長方形状のシートを軸部材21に対して螺旋状に巻回して加熱体20を形成してもよい。
【符号の説明】
【0110】
1 喫煙器具
2 喫煙具用カートリッジ
10 本体部
11 挿入口
13 電源スイッチ(喫煙停止手段、喫煙再開手段)
14 ランプ
15 コントローラ(制御部)
16 バッテリ
17 支持台
20 加熱体
21 軸部材(芯部材)
21a 先端部
22a 発熱素子(上段)
22b 発熱素子(中段)
22c 発熱素子(下段)
23 アース
24a 電極(上段)
24b 電極(中段)
24c 電極(下段)
25 シート(外周層/シート状の部材)
25a 上辺
25b 底辺
25c 左辺
25d 右辺
30a 温度センサ(上段)/(温度検出手段)
30b 温度センサ(中段)/(温度検出手段)
30c 温度センサ(下段)/(温度検出手段)
32 圧力センサ
35 接続端子用シート
36 端子部
41 パフ判定部
42 温度判定部
43 スイッチ判定部
44 タイマ
45 記憶部
46 通電制御部
60 エアロゾル形成基材
70 支持部材
80 マウスピース
90 外装部材