(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156787
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】照明装置
(51)【国際特許分類】
F21S 8/04 20060101AFI20221006BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20221006BHJP
F21V 9/40 20180101ALI20221006BHJP
F21S 8/00 20060101ALN20221006BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20221006BHJP
F21Y 113/13 20160101ALN20221006BHJP
【FI】
F21S8/04 100
F21S2/00 441
F21V9/40
F21S8/00 100
F21Y115:10 500
F21Y113:13
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060653
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390014546
【氏名又は名称】三菱電機照明株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109612
【弁理士】
【氏名又は名称】倉谷 泰孝
(74)【代理人】
【識別番号】100153176
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 重明
(74)【代理人】
【識別番号】100116643
【弁理士】
【氏名又は名称】伊達 研郎
(72)【発明者】
【氏名】新田 泰之
【テーマコード(参考)】
3K244
【Fターム(参考)】
3K244AA05
3K244BA01
3K244CA03
3K244DA01
3K244EA02
3K244EA12
3K244EA34
3K244ED25
3K244FA08
(57)【要約】
【課題】複雑な構成及び制御を要することなく、個々の照明装置が設置されるそれぞれの環境に応じて使用者の快適性を向上させることができる照明装置を提供することを目的とする。
【解決手段】照明装置1は、光源部3と、光源部3から発せられる光が入射され、入射される光のうち、特定の波長帯域の光を吸収することによって分光分布を変化させるとともに、分光分布が変化した光を出射する吸光部4と、吸光部4から出射した光が入射されるとともに、照明空間に向けて照明光を出射する光学要素5とを備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源部と、
前記光源部から発せられる光が入射され、前記入射される光のうち、特定の波長帯域の光を吸収することによって分光分布を変化させるとともに、分光分布が変化した光を出射する吸光部と、
前記吸光部から出射した光が入射されるとともに、照明空間に向けて照明光を出射する光学要素と
を備えている照明装置。
【請求項2】
前記吸光部は、
前記吸光部に入射される光のうち、特定の波長帯域の光を吸収することによって分光分布を変化させる吸光媒体が収容される収容部を有している請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記吸光部は、
前記収容部に前記吸光媒体が収容されている状態において、前記吸光媒体に吸収される前記特定の波長帯域の光の量が、前記吸光部に入射される光が前記吸光媒体を通過する距離に依存する請求項2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記吸光部は、
前記収容部に前記吸光媒体が収容されている状態において、前記吸光部に入射される光の分光分布と前記吸光部から出射される光の分光分布との差が、前記吸光部に入射される光が前記吸光媒体を通過する距離に依存する請求項2に記載の照明装置。
【請求項5】
前記収容部は、
前記光源部の側に形成され、前記光源部から発せられる光が入射される透光性の入光部と、前記光学要素の側に形成され、前記分光分布が変化した光が出射される透光性の出光部とを有している請求項2から請求項4の何れか一項に記載の照明装置。
【請求項6】
前記吸光媒体は、
前記吸光部が配置されている空間の相対湿度に応じて、前記収容部に収容される量が変化する請求項2から請求項5の何れか一項に記載の照明装置。
【請求項7】
前記吸光部は、
前記相対湿度が高いほど、前記吸光媒体に吸収される前記特定の波長帯域の光の量が増加する請求項2から請求項6の何れか一項に記載の照明装置。
【請求項8】
前記収容部は、
前記吸光部が配置されている空間の温度に応じて、前記吸光媒体を吸収し得る量が変化する請求項2から請求項7の何れか一項に記載の照明装置。
【請求項9】
前記吸光部は、
前記相対湿度が維持された状態において、前記吸光部が配置されている空間の温度が高いほど、前記吸光媒体に吸収される前記特定の波長帯域の光の量が増加する請求項2から請求項8の何れか一項に記載の照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、照明光の色温度(色調)を変化させる照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人が感じる温度(以降、体感温度と称す)と視覚との関係について研究がされており、人の体感温度が照明装置から照射される照明光の影響を受けることが知られている。例えば、照明光の色温度が高くなると青みがかった色調となり人は涼しいという感じを受け、照明光の色温度が低くなると赤みがかった色調となり人は暖かいという感じを受けることが知られている。
【0003】
そして、特許文献1には、発光色が異なる複数の光源と、複数の光源それぞれの発光強度を制御する制御手段とを備え、制御手段が暦情報及び時間情報に基づいて複数の光源の発光強度を調整することによって照明光の分光分布を変更する照明装置が開示されている。また、特許文献2には、発光色の異なる複数の光源、温度センサ及び湿度センサを備え、照明装置の周辺の温度と湿度とを同時に考慮し複数の光源の発光色を制御して快適性を維持又は向上させることができる光源制御装置及び照明装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-259639号公報
【特許文献1】特開2009-230907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている照明装置は、発光色が異なる複数の光源の発光強度を、暦情報及び時間情報に基づいて調整する制御を行うようにしたものであるため、照明光は、必ずしも実際に各照明装置が使用されているそれぞれの環境に適した分光分布とはならない。また、特許文献2に開示されている照明装置は、発光色の異なる複数の光源、温度センサ、湿度センサ、及び光源制御装置を備えており、装置が大規模化したり、装置の構成及び制御が複雑化したりする。
【0006】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであり、複雑な構成及び制御を要することなく、個々の照明装置が設置されるそれぞれの環境に応じて使用者の快適性を向上させることができる照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る照明装置は、光源部と、光源部から発せられる光が入射され、入射される光のうち、特定の波長帯域の光を吸収することによって分光分布を変化させるとともに、分光分布が変化した光を出射する吸光部と、吸光部から出射した光が入射されるとともに、照明空間に向けて照明光を出射する光学要素とを備えているものである。
【発明の効果】
【0008】
本開示は、上記の構成を備えているので、複雑な構成及び制御を要することなく、簡素な構成で、個々の照明装置が設置されるそれぞれの環境応じて使用者の快適性を向上させる照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る照明装置の概略の構成を示す斜視図である。
【
図2】実施の形態1に係る照明装置の要部の構成を示す模式図である。
【
図3】実施の形態1に係る吸光部と相対湿度との関係を説明する模式図である。
【
図4】実施の形態1に係る吸光部における媒体通過長と相対湿度との関係を示す図である。
【
図5】実施の形態1に係る吸光部と温度との関係を説明する模式図である。
【
図6】実施の形態1に係る吸光部における媒体通過長と温度との関係を示す図である。
【
図7】実施の形態2に係る照明装置の要部の構成を示す模式図である。
【
図8】実施の形態3に係る照明装置の要部の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に係る照明装置の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。以下の説明において、同一又は対応する構成要素には同じ符号を付し、説明の繰り返しを割愛する場合がある。但し、同一の符号において、「a」、「b」等のように付属する文字が異なる場合については、その範囲ではない。
【0011】
なお、本開示に係る照明装置は、以下に説明する実施の形態によって限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で種々に変更することが可能である。また、図面に示す照明装置は、本開示が適用される態様の一例を示すものであり、図面に示された照明装置によって本開示の適用範囲が限定されるものではない。
【0012】
各図面では、各構成部材等の相対的な寸法関係又は形状等が実際のものとは異なる場合がある。また、以下の説明において、向き、方向、或いは位置が表記されている場合がある。これらの表記は、説明の理解を容易にするために便宜上用いられるものであって、照明装置、或いはこれらを構成する部品等の向き、方向、位置を限定するものではない。
【0013】
実施の形態1.
<照明装置の構成について>
実施の形態1に係る照明装置1の構成について
図1及び
図2を参照しながら説明する。
図1は、実施の形態1に係る照明装置1の概略の構成を示す、照明空間の側から視た斜視図である。
図2は、実施の形態1に係る照明装置1の要部の構成を示す模式図である。
図2(a)は、照明空間の側から視た斜視図であり、
図2(b)は、発光素子30の光軸と光照射部5の厚さ方向とを含む切断面を視た図である。
【0014】
照明装置1は、天井、壁、配線ダクト、レースウェイ、Tバー等の被取付部9に取り付けられて使用される。照明装置1は、人が使用する空間である照明空間を照らすものである。照明器具1は、例えば、事務所、病院、住居等の建築物、或いは、列車、船舶、航空機等の移動体における、人が使用する空間に設置して使用することが可能である。
【0015】
照明装置1は、筐体2、光源部3、吸光部4、及び光照射部5を備える。筐体2は、照明装置1の本体部であり、光源部3、吸光部4、及び光照射部5を保持している。図示は省略するが、照明装置1は、光源部3を点灯させるための点灯電力を生成して出力する電源部と、少なくとも電源部と光源部3とに接続され、光源部3に対して点灯電力を供給するための配線材等を備えている。吸光部4は、特定の波長帯域の光を吸収する性質を有する光吸収体である。照明光は、光照射部5から照明空間に向けて照射される。
【0016】
光源部3は照明器具1の光源であり、光源部3から出射する光L1は、吸光部4に入射される。光源部3は、発光素子30と印刷配線板(以下、基板と称す)31とを有する。発光素子30は、例えば、パッケージ化されたサーフェイス・マウント・デバイス(以下、SMDと称す)タイプのLEDである。光源部3は、例えば、長尺状の基板31に複数の発光素子30が基板31の長手方向に沿って配列され、はんだ等の導電性接続部材を用いて実装される。発光素子30の発光色は白色、赤色、緑色又は青色である。配列される発光素子30の発光色は各々異なっていてもよい。
【0017】
なお、図示は省略するが、Net Zero Energy Building(ZEB)、Net Zero Energy House(ZEH)、或いは、Life Cycle Carbon Minus House(LCCMH)等に対応して、光源部3は、外光(太陽光などの自然光)を照明装置1の近傍に導光する構成に置き換えてもよい。この場合、外光は、光ファイバ等の導光体を用いて導光される。
【0018】
光源部3の発光素子30から出射するL1は、吸光部4に入射(入光)する入射光となる。入射光L1は、吸光部4を通過する過程で特定の波長帯域が吸収される(Lp)。入射光L1は、特定の波長帯域が吸収されることによって、光量(光束)或いは分光分布が変化し、出射光L2として吸光部4から出射(出光)する。入射光L1は吸光部4の入光部(入光端)40に入光し、出射光L2は吸光部4の出光部(出光端)41から出光する。
【0019】
吸光部4は、吸収される光の量及び波長帯域が、照明装置1の吸光部4が設置されている環境に対応して決まるものである。具体的には、吸光部4は、高温多湿の環境において可視光帯域における長波長側(赤色系)の帯域成分(色)が多く吸収され、吸光部4から出射する出射光L2は、吸光部4に入射する入射光L1に対して、可視光帯域における長波長側(赤色系)の帯域成分(色)の光量の比率が小さくなり、短波長側(青色系)の帯域成分(色)の光量の比率が大きくなる。つまり、吸光部4から出射する出射光L2は、吸光部4が設置されている環境に対応して、吸光部4に入射する入射光L1と異なる分光分布を示す。また、吸光部4は、低温低湿の環境において可視光帯域における光の吸収が少なくなり、高温多湿の環境の場合と比較すると、吸光部4から出射する出射光L2の分光分布と吸光部4に入射する入射光L1の分光分布との差は小さくなる傾向を示す。なお、吸光部4の形状、寸法、及び光源部3に対する位置は、光源部3から出射される出射光L1の略全量が入射されるように決定されることが望ましい。
【0020】
実施の形態1において、光照射部5は、照明装置1から照明空間へ光が照射される光学要素であり、例えば略正方形の板状をなす。照明空間の側の一方の面は照明空間に向けて照明光L3が出射される出射部(出射面)51である。また、4箇所の端面のうち、一方の向かい合う端面が入射部50は、吸光部4から出射する出射光L2が入射される入射部(入射端)50である。なお、4箇所の端面のうち1箇所の端面を入射部(入射端)50としてもよいし、3箇所以上の端面を入射部(入射端)50としてもよい。
【0021】
光照射部5は、例えば、微粒子を添加した樹脂材料を用いて形成される。入射部50から入射した光は、微粒子によって光照射部5の内部で体積内散乱をするとともに、出射部51から照明空間に向けて照射される。出射部51は、照明空間に向けて照射される照明光L3が表面散乱するように表面処理が施されてもよい。
【0022】
図示は省略するが、光照射部5における出射部(出射面)51と反対側の他方の面は、筐体2の側と対向しており、他方の面には、拡散反射、全反射、或いはこれらに相当する処理が施されてもよい。なお、光照射部5における他方の面と向き合うように反射ミラー等が配置されてもよい。また、光照射部5は、正方形を含む略正方形に限定されず、三角形以上の多角形、或いは円形を含む略円形の板状であってもよい。なお、光照射部5は、上記したものに限定されず、照明装置1の仕様に応じて変更が可能である、例えば、光照射部5は板状以外の形状であってもよいし、また、光照射部5はレンズ、リフレクタ等の他の光学機能を有する他の光学要素であってもよい。
【0023】
<吸光部について>
実施の形態1に係る吸光部4、及び吸光部4と相対湿度との関係について
図3及び
図4を参照しながら説明する。
図3は、実施の形態1に係る吸光部4と相対湿度との関係を説明する模式図である。
図3(a)は、照明装置1が設置される場所における相対湿度φが低い(φl)状態の吸光部4を示しており、
図3(b)は、照明装置1が設置される場所における相対湿度φが標準(φm)状態の吸光部4を示しており、
図3(c)は、照明装置1が設置される場所における相対湿度φが高い(φh)状態の吸光部4を示している。
図4は、実施の形態1に係る吸光部4における媒体通過長と相対湿度との関係を示す図である。
【0024】
吸光部4は、特定の波長帯域の光を吸収する性質を持つ吸光媒体42と、吸光媒体42が収容される収容部43とからなる。収容部43は、吸水性及び吸湿性を有するものである。収容部43は、例えば、光透過性の樹脂を用いて形成された多孔質体であり、細孔44に水分子(水蒸気)等が吸収(吸着)される。そして、吸光媒体42は、例えば、大気中に含まれる水分子(水蒸気)であり、多孔質体である収容部43の細孔44に吸収(吸着)される。収容部43に吸収される吸光媒体42である水分の量は、照明装置1が設置される場所における湿度、温度等の環境を受けるものであり、これらの環境に依存する。なお、収容部43として用いられる多孔質体は、合成樹脂を用いて形成されてもよいし、天然由来の樹脂を用いて形成されてもよい。また、収容部43は、天然の多孔質材そのものであってもよい。
【0025】
収容部43は、光を透過する固体である。好ましくは、収容部43は、透明な固体である。ここで、透明とは、光透過率が概ね80%以上の性質とする。そして、収容部43は、吸湿及び放湿が可能となる構造を有する固体、或いは、吸湿性及び放湿性を有する素材によって形成された固体である。収容部43は、例えば、熱可塑性、熱硬化性、光重合性等の性質を有する透明樹脂材料によって形成することができ、具体的には、アクリル系ポリマー、オレフィン系ポリマー、ビニル系ポリマー、セルロース系ポリマー、アミド系ポリマー、フッ素系ポリマー、ウレタン系ポリマー、シリコーン系ポリマー、またはイミド系ポリマー等を採用することができる。
【0026】
また、収容部43は、光を透過するゲル(凝膠体)であってもよい。好ましくは、収容部43は、透明なゲルである。ここで、透明とは、光透過率が概ね80%以上の性質とする。そして、収容部43は、吸湿及び放湿が可能となる構造を有するゲル、或いは、吸湿性及び放湿性を有する素材のゲルである。収容部43は、形状の維持が可能で光源部3と光照射部5との間に配置が可能なゲルであり、具体的には、ポリアクリル酸系ゲル、シリコーン系ゲル、セルロース系ゲル、ポリウレタン系ゲル、ポリオレフィン系ゲル、ゼラチン等を採用することができる。収容部43は、この他に、透明なガラス、セラミック等の無機物質等によって形成されるものであってもよい。
【0027】
一般に、水は、光の吸収係数(吸収率)が波長帯域によって異なる。水の、可視光を含む波長帯域における吸収係数は、紫外の波長帯域から青色の波長帯域(所謂短波長帯域)において相対的に小さくなる傾向があり、赤色の波長帯域から赤外の波長帯域(所謂長波長帯域)において相対的に大きくなる傾向がある。この傾向は光源の種類には依存せず、発光素子30として用いられるLEDの他、太陽光等の自然光を含むあらゆる光に共通する傾向である。
【0028】
大気中に含まれる水分子は、照明装置1が設置される場所における相対湿度φに対応した量が、収容部43である多孔質体の細孔44に吸収される。つまり、吸光部4が配置されている空間の相対湿度φに応じて、収容部43に収容される吸光媒体42となる水分の量が変化する。細孔44に吸収された水分は、吸光部4に入射した光に対して吸光媒体42として作用する。光源部3から発せられる光L1は吸光部4に入射し、少なくとも吸光部4に入射した光Lpの一部は、収容部43である多孔質体の細孔44に吸収された吸光媒体42である水分を通過する。この際、吸光媒体42を通過する光Lpは、水が有する光の吸収特性の影響を受けるため、赤色から赤外の波長帯域の成分が相対的に多く吸収される。このため、吸光媒体42を通過して吸光部4から出射される出射光L2は、光源部3から発せられる光L1よりも青みがかった色調となる。このように、照明装置1が、収容部43に吸光媒体42として水が吸収されるような相対湿度φである場所に設置される場合には、光源部3から発せられ入光部40から吸光部4に入射する入射光L1が本来有する分光分布とは異なる分光分布となった出射光L2が、出光部41から出射される。
【0029】
吸光媒体42に吸収される赤色から赤外の波長帯域の成分の量は、吸光部4の内部を通過する光Lpが吸光媒体42を通過する距離Pに依存する。吸収部4の内部を通過する光Lpが吸光媒体42を通過する距離Pnの総和である光路長Pが長くなるにしたがって、吸収される赤色から赤外の波長帯域の成分の量が増加し、光路長Pが短くなるにしたがって、吸収される赤色から赤外の波長帯域の成分の量が減少する。
【0030】
大気中に含まれる水分子の量が多く相対湿度φが高い状態(φh)では、吸光部4における収容部43である多孔質体の細孔44に吸収(吸着)される吸光媒体42である水分の量が増加する。このため、吸光部4の内部を通過する光Lpは、吸光媒体42に吸収される赤色から赤外の波長帯域の成分の量が増加し、吸光部4に入射する入射光L1が本来有する分光分布と吸光部4から出射される出射光L2が有する分光分布の差は大きくなる。つまり、より青みがかった色調の出射光L2が吸光部4から出射される。
【0031】
これに対して、大気中に含まれる水分子の量が少なく相対湿度φが低い状態(φl)では、吸光部4における収容部43である多孔質体の細孔44に吸収(吸着)される吸光媒体42である水分の量が減少する。このため、吸光部4の内部を通過する光Lpは、吸光媒体42に吸収される赤色から赤外の波長帯域の成分の量が減少し、吸光部4に入射する入射光L1が本来有する分光分布と吸光部4から出射される出射光L2が有する分光分布の差は小さくなる。つまり、吸光部4から出射される出射光L2は、青みがかった色調にならないか、或いは、僅かに青みがかった色調になる程度の作用になる。
【0032】
このように、照明装置1は、吸光部4によって、照明装置1が設置される場所の環境である湿度を直接反映した色調の光を得ることができる。
【0033】
実施の形態1に係る吸光部4と温度との関係について
図5及び
図6を参照しながら説明する。
図5は、実施の形態1に係る吸光部4と温度との関係を説明する模式図である。
図5(a)は、照明装置1が設置される場所における温度Tが低い(Tl)状態の吸光部4を示しており、であり、
図5(b)は、照明装置1が設置される場所における温度Tが高い(Th)状態の吸光部4を示している。
図6は、実施の形態1に係る吸光部4における媒体通過長と温度との関係を示す図である。
【0034】
吸光部4の収容部43は、照明装置1が設置される場所における環境温度Tに対して正の伸縮係数を有する材料を選択することができる。収容部43は、このような性質の材料を用いて形成されることによって、環境温度Tが高くなるにしたがって全体が膨張するとともに、収容部43である多孔質体の細孔44の容積が大きくなる。このため、細孔44に吸収し得る吸光媒体42である水分の量が増加する。これとは逆に、環境温度Tが低くなるにしたがって全体が収縮するとともに、収容部43である多孔質体の細孔44の容積が小さくなる。このため、細孔44に吸収し得る吸光媒体42である水分の量が減少する。
【0035】
照明装置1が設置される場所における環境温度Tが高い状態(Th)では、吸光部4における収容部43である多孔質体の細孔44の最大容量が増加するので、細孔44に吸収(吸着)され得る吸光媒体42である水分の最大量が増加する。このため、吸光部4の内部を通過する光Lpは、吸光媒体42に吸収される赤色から赤外の波長帯域の成分の量が増加し、吸光部4に入射する入射光L1が本来有する分光分布と吸光部4から出射される出射光L2が有する分光分布の差は大きくなる。つまり、より青みがかった色調の出射光L2が吸光部4から出射される。
【0036】
これに対して、照明装置1が設置される場所における環境温度Tが低い状態(Tl)では、吸光部4における収容部43である多孔質体の細孔44の最大容量が減少するので、細孔44に吸収(吸着)され得る吸光媒体42である水分の最大量が減少する。このため、吸光部4の内部を通過する光Lpは、吸光媒体42に吸収される赤色から赤外の波長帯域の成分の量が減少し、吸光部4に入射する入射光L1が本来有する分光分布と吸光部4から出射される出射光L2が有する分光分布の差は小さくなる。つまり、吸光部4から出射される出射光L2は、青みがかった色調にならないか、或いは、僅かに青みがかった色調になる程度の作用になる。
【0037】
このように、照明装置1は、吸光部4によって、照明装置1が設置される場所の環境である温度を直接反映した色調の光を得ることができる。
【0038】
<効果について>
照明装置1は、照明装置1が設置される場所における湿度或いは温度が高いほど、赤色から赤外の波長帯域の成分が少ない青みがかった光を用いた寒色照明として機能し、照明装置1の照明空間を使用する人の体感温度を下げたり、この空間を使用する人に涼しい感覚を提供したりする効果が期待できる。また、上記のような照明装置1は、照明装置1が設置される場所における湿度或いは温度が低いほど、赤色から製外の波長帯域の成分が少なくない光(ほとんど青みがかっていない光)を用いた暖色照明として機能し、照明装置1の照明空間を使用する人の体感温度を上げたり、暖かい感覚を提供したりする効果が期待できる。
【0039】
つまり、照明装置1は、光源色の分光分布(色温度)を、吸光部4によって、照明装置1が設置される場所の湿度或いは温度といった、設置環境に適した分光分布(色温度)に調整することができる。そして、照明装置1は、光源色の分光分布(色温度)を、吸光部4によって、照明装置1が設置される場所の湿度或いは温度といった、設置環境の変化に追随するように変化させることができる。
【0040】
また、照明装置1は、発光色の異なる複数の光源、温度センサ、湿度センサ、及び光源制御装置といった複雑な構成、或いは、暦情報、時間情報等を用いた複雑な光源制御手順を必要とせず、照明装置1が設置されている場所の湿度、温度といった環境条件を、直接照明装置1の光源色に反映することができるという点で優れており、照明装置1は全体として簡略化することができる。
【0041】
<その他>
近年、空調制御による居住空間の設定温度について、地球環境保全、省エネルギー等の観点から、夏は高めの温度に設定し、冬は低めの温度に設定する要請がなされ、企業及び一般家庭等おいてこれに応じた取り組みがなされている。しかし、これらの取り組みは、快適性、心身の健康、活動のパフォーマンスにも影響する。体感温度と視覚との関係に着目し、照明装置から照射される照明光によって、このような影響を最少化することは、有意義なものである。また、国際的な目標である、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals;SDGs)の観点でも優れており、特に、将来にわたってエネルギーの持続可能性、温室効果ガスの排出抑制といった課題に貢献するものである。
【0042】
実施の形態2.
実施の形態2に係る照明装置1aについて
図7を参照しながら説明する。
図7は、実施の形態2に係る照明装置1aの要部の構成を示す模式図であり、発光素子30の光軸と光照射部5の厚さ方向とを含む切断面を視た図である。なお、
図7は、
図2(b)との対応部分に同一符号を付しており、同一符号を付した対応部分については重複する説明を割愛する場合がある。照明装置1aは、吸光部4aを備えている点が、実施の形態1と相違する。
【0043】
<吸光部について>
吸光部4aは、特定の波長帯域の光を吸収する性質を持つ吸光媒体42aと、吸光媒体42aが収容される収容部43aとからなる。収容部43aは、例えば、光透過性の樹脂を用いて箱型に形成された容器体であり、止水性及び透湿性を有する。そして、収容部43aに収容される吸光媒体42aは、大気中に含まれる水分子(水蒸気)を吸湿及び放湿可能な吸収体(吸着体)である。吸光媒体42aに吸収される水分の量は、照明装置1aが設置される場所における湿度、温度等により決定される。
【0044】
容器体である収容部43aは、光源部3から発せられる光L1が入射する透光性の入光部(入光端)40aと、吸光部4aを通過した光Lpが出射される透光性の出光部(出光端)41aとを有する。また収容部43aに充填された吸光媒体42aを通過する光Lpの光路長Pは、収容部43aの大きさや形状により決定することができる。
【0045】
収容部43aは、少なくとも、入光部(入光端)40a及び出光部(出光端)41aが光を透過する固体である。好ましくは、入光部40a及び出光部41aは、透明な固体である。ここで、透明とは、光透過率が概ね80%以上の性質とする。そして、収容部43aは、止水性及び透湿性を有する素材で形成された固体である。収容部43aは、例えば、熱可塑性、熱硬化性、光重合性等の性質を有する透明樹脂材料によって形成することができ、具体的には、アクリル系ポリマー、オレフィン系ポリマー、ビニル系ポリマー、セルロース系ポリマー、アミド系ポリマー、フッ素系ポリマー、ウレタン系ポリマー、シリコーン系ポリマー、またはイミド系ポリマー等を採用することができる。なお、収容部43aの、入光部40a及び出光部41a以外の部分は、必ずしも透明である必要はなく、入光部40a及び出光部41aとは異なる材料を採用することもできる。収容部43aは、この他に、透明なガラス、セラミック等の無機物質等によって形成されるものであってもよい。
【0046】
また、収容部43aは、光を透過するゲル(凝膠体)であってもよい。好ましくは、収容部43aは、透明なゲルである。ここで、透明とは、光透過率が概ね80%以上の性質とする。そして、収容部43aは、止水性及び透湿性を有する素材のゲル(凝膠体)である。収容部43aは、形状の維持が可能で光源部3と光照射部5との間に配置が可能なゲル(凝膠体)であり、具体的には、ポリアクリル酸系ゲル、シリコーン系ゲル、セルロース系ゲル、ポリウレタン系ゲル、ポリオレフィン系ゲル、ゼラチン等を採用することができる。
【0047】
吸光媒体42aは、光を透過する固体である。好ましくは、吸光媒体42a、透明な固体である。ここで、透明とは、光透過率が概ね80%以上の性質とする。そして、吸光媒体42aは、吸湿及び放湿が可能となる構造を有する固体、或いは、吸湿性及び放湿性を有する素材によって形成された固体である。吸光媒体42aは、例えば、熱可塑性、熱硬化性、光重合性等の性質を有する透明樹脂材料によって形成することができ、具体的には、アクリル系ポリマー、オレフィン系ポリマー、ビニル系ポリマー、セルロース系ポリマー、アミド系ポリマー、フッ素系ポリマー、ウレタン系ポリマー、シリコーン系ポリマー、またはイミド系ポリマー等を採用することができる。吸光媒体42aは、この他に、透明なガラス、セラミック等の無機物質等によって形成されるものであってもよい。
【0048】
また、吸光媒体42aは、光を透過するゲル(凝膠体)であってもよい。好ましくは、吸光媒体42a、透明なゲルである。ここで、透明とは、光透過率が概ね80%以上の性質とする。そして、吸光媒体42aは、吸湿性及び放湿性を有する素材のゲル(凝膠体)であり、具体的には、ポリアクリル酸系ゲル、シリコーン系ゲル、セルロース系ゲル、ポリウレタン系ゲル、ポリオレフィン系ゲル、ゼラチン等を採用することができる。
【0049】
また、吸光媒体42aは、光を透過するエアロゲルであってもよい。好ましくは、吸光媒体42a、透明なエアロゲルである。ここで、透明とは、光透過率が概ね80%以上の性質とする。そして、吸光媒体42aは、吸湿性及び放湿性を有する素材のゲル(凝膠体)であり、具体的には、シリカ系、アルミナ系、酸化クロム系、酸化スズ系等の材料を採用することができる。
【0050】
また、吸光媒体42aは、光を透過する液体であってもよい。好ましくは、吸光媒体42a、透明な液体である。ここで、透明とは、光透過率が概ね80%以上の性質とする。そして、吸光媒体42aは、吸湿性及び放湿性を有する液体であり、具体的には、水、油、有機溶媒等を採用することができる。
【0051】
また、吸光媒体42aは、光を透過する気体であってもよい。好ましくは、吸光媒体42a、透明な気体である。ここで、透明とは、光透過率が概ね80%以上の性質とする。そして、吸光媒体42aは、吸湿性及び放湿性を有する液体であり、具体的には、空気であってもよい。
【0052】
実施の形態2では、吸光部4aは、収容部43aに吸光媒体42aが充填されてなる。吸光部4aの収容部43aは、照明装置1aが設置される場所における環境温度Tに対して正の伸縮係数を有する材料を選択することができる。収容部43aは、このような性質の材料を用いて形成されることによって、環境温度Tが高くなるにしたがって全体が膨張するとともに、その容積が大きくなる。このため、収容部43aに充填された吸光媒体42aの体積、或いは、吸光媒体42aに吸収し得る水分の量が増加する。これとは逆に、環境温度Tが低くなるにしたがって全体が収縮するとともに、その容積が小さくなる。このため、収容部43aに充填された吸光媒体42aの体積、或いは、吸光媒体42aに吸収し得る吸光媒体42である水分の量が減少する。
【0053】
照明装置1aが設置される場所における環境温度Tが高い状態(Th)では、収容部43aが熱膨張するとともに収容部43aに充填され得る吸光媒体42aの体積、或いは、吸光媒体42aに吸収し得る水分の量(最大容量)が増加する。このため、吸光部4aの内部を通過する光Lpは、吸光媒体42a或いは水分に吸収される赤色から赤外の波長帯域の成分の量が増加し、吸光部4aに入射する入射光L1が本来有する分光分布と吸光部4aから出射される出射光L2が有する分光分布の差は大きくなる。つまり、より青みがかった色調の出射光L2が吸光部4aから出射される。
【0054】
これに対して、照明装置1aが設置される場所における環境温度Tが低い状態(Tl)では、収容部43aが熱収縮するとともに収容部43aに充填され得る吸光媒体42aの体積、或いは、吸光媒体42aに吸収し得る水分の量(最大容量)が減少する。このため、吸光部4aの内部を通過する光Lpは、吸光媒体42a或いは水分に吸収される赤色から赤外の波長帯域の成分の量が減少し、吸光部4aに入射する入射光L1が本来有する分光分布と吸光部4aから出射される出射光L2が有する分光分布の差は小さくなる。つまり、吸光部4aから出射される出射光L2は、青みがかった色調にならないか、或いは、僅かに青みがかった色調になる程度の作用になる。
【0055】
なお、吸光媒体42aは、熱応答や相変化によって吸光特性、或いは、透過率が変化する性質を有する物質を用いてもよい。この場合、照明装置1aが設置される場所における温度変化に対応する分光分布の変化率を、より大きくすることが期待出来る。
【0056】
実施の形態3.
図8は、実施の形態3に係る照明装置1bの要部の構成を示す図であり、発光素子30の光軸と光照射部5の厚さ方向とを含む切断面を視た図である。なお、
図8は、
図2(b)との対応部分に同一符号を付しており、同一符号を付した対応部分については重複する説明を割愛する場合がある。照明装置1bは、吸光部4bを備えている点が、実施の形態1と相違する。
【0057】
吸光部4bは、シート状の収容部43bを折りたたむことによって、入光部(入光端)40bから出光部(出光端)41bまでの長さ寸法を大きくしている。吸光部4bがこのように形成されることによって、入光部40bから出光部41bにかけて、吸光部4bの内部を通過する光Lpが、収容部43bに吸収された吸光媒体42bを通過する距離Pを長くすることができる。また、収容部43bは、少なくとも、入光部40b及び出光部41bが透光性を有しており、入光部40b及び出光部41bを除く他外周表面には全反射の処理が施される。なお、好ましくは、入光部40b及び出光部41bは透明である。ここで、透明とは、光透過率が概ね80%以上の性質とする。
【0058】
入光部40bに入射する入射光L1は、入光部40bから出光部(出光端)41bに向かって、吸光部4bの内部を導光しながら分光特性が変化し、出光部4bから出射する。
【0059】
大気中に含まれる水分子は、照明装置1bが設置される場所における相対湿度φに対応した量が、吸光媒体42bとして収容部43bに吸収(吸着)される。収容部43bに吸収(吸着)された水分は、吸光部4bに入射した光に対して吸光媒体42bとして作用する。光源部3から発せられる光L1は吸光部4bに入射し、少なくとも吸光部4bの内部を通過する光Lpの一部は、収容部43bに吸収された吸光媒体42bである水分を通過する。この際、吸光媒体42bを通過する光Lpは、水が有する光の吸収特性の影響を受けるため、赤色から赤外の波長帯域の成分が相対的に多く吸収される。このため、吸光媒体42bを通過して吸光部4から出射される出射光L2は、光源部3から発せられる光L1よりも青みがかった色調となる。このように、照明装置1bが、収容部43bに吸光媒体42bとして水が吸収されるような相対湿度φである場所に設置される場合には、光源部3から発せられ入光部40bから吸光部4bに入射する入射光L1が本来有する分光分布とは異なる分光分布となった出射光L2が、出光部41bから出射される。
【0060】
照明装置1bは、上記のような長い光路長の吸光部4を備えているので、少ないスペースであっても、吸光部4bに入射する入射光L1と吸光部4bから出射する出射光L2との間に、より大きな特性の変化を得ることができる。
【0061】
図示は省略するが、吸光部4bは、繊維状(ファイバ状)の収容部を屈強させることによって、少ないスペースであっても、更に長い光路長を有するように構成することができる。また、図示は省略するが、吸光部4bは、収容部の大きさ、形状、全反射機能の配置等を調整することによって、さまざまな光路長を設定することができ、入光部40bから出光部41bに向かって導光する光Lpが通過する吸光媒体bの長さを調整することができる。更に、図示は省略するが、吸光部4bは、複数の発光素子30のそれぞれに対応して個別に設けられるものであってもよい。この際、個別に設けられる吸光部4bは、全てが同一の吸光特性を有していてもよいし、全て或いは一部が異なる吸光特性を有するものであってもよい。
【0062】
以上のように、照明装置1bは、吸光部4bの入光部40bから出光部41bまでの長さ寸法を調整したり、吸光媒体42bによって吸光特性を調整したりすることができるので、多様な特性の出射光L2、或いは照明光L5を得ることができる。
【符号の説明】
【0063】
1,1a,1b 照明装置、2 筐体(本体部)、3 光源部、4,4a,4b 吸光部、5 光照射部(光学要素)、9 被取付部、30 発光素子(LED)、31 基板、40,40a,40b 入光部(入光端)、41,41a,41b 出光部(出光端)、42,42a,42b 吸光媒体、43,43a,43b 収容部、50 入射部(入射端)、51 出射部(出射面)。