(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156815
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】パウチ
(51)【国際特許分類】
B65D 81/32 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
B65D81/32 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060693
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 剛史
(72)【発明者】
【氏名】浦川 直也
(72)【発明者】
【氏名】矢島 俊輔
【テーマコード(参考)】
3E013
【Fターム(参考)】
3E013AA05
3E013AB05
3E013AB07
3E013AD33
3E013AE12
3E013AF36
(57)【要約】
【課題】ピンセットなどを使用せずに取り出して、患部に薬剤を塗布可能とする構造のパウチを得る。
【解決手段】少なくとも、上から順に、薬剤保存部(2)、ベースシート(3)、薬剤保持部(4)、保護層(5)から構成されるパウチ(1)であって、薬剤保存部は、薬剤収納可能な収納部(21)と、平らで融着可能な周縁(22)と、を有すると共に、半可撓性を有する素材からなり、ベースシートは、薬剤保存部に融着して収納部を密閉可能な周縁を有すると共に、中央に易開封可能な脆弱部(321)と、前記脆弱部を通る折り曲げ可能なヒンジ部(32)と、を有し、薬剤保持部は、薬剤を含んで塗布可能な、不織布等からなり、保護層は、該薬剤保持部を包み込んでベースシートと融着可能な易剥離フィルムからなることを特徴とするパウチ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、上から順に、薬剤保存部、ベースシート、薬剤保持部、保護層から構成されるパウチであって、
薬剤保存部は、薬剤収納可能な収納部と、平らで融着可能な周縁と、を有すると共に、柔軟性を有する素材からなり、
ベースシートは、薬剤保存部の周縁に融着して収納部を密閉すると共に、中央に易開封可能な脆弱部と、前記脆弱部を通る折り曲げ可能なヒンジ部と、を有し、
薬剤保持部は、薬剤を含んで塗布可能な、不織布等からなり、
保護層は、該薬剤保持部を包み込んでベースシートと融着可能な易剥離フィルムからなることを特徴とするパウチ。
【請求項2】
薬剤保持部中央にベースシートのヒンジ部に対応したくぼみを設け、保護層剥離後、薬剤保持部の該くぼみで折り曲げ、収納部の外面側を押し込むことによって、ベースシートの脆弱部を破断し、収納部に収納されている薬剤を、薬剤保持部に含侵可能としたことを特徴とする請求項1に記載のパウチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外科用の殺菌剤、クリーナー、化粧品、アルコール、洗浄剤などの塗布する薬剤と、それを含侵させる為の不織布と、を収納するパウチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1では、
織布または不織布からなり塗布剤を含浸させた含浸シートと、
含浸シートを片面に保持するとともに、当該塗布剤の透過または浸透を防ぐ性質を少なくとも有する基材シートと、
含浸シートとは反対側の基材シート面に固定され、基材シートとの間に、使用者の手を挿入する空間を形成する外側シートと、
基材シートに保持された含浸シートを覆うとともに、前記塗布剤の透過または浸透を防ぐ性質を少なくとも有し剥離可能な剥離シートと、を備えた包装体であって、
上記基材シートと含浸シート、基材シートと外側シート、基材シートと剥離シートは、それぞれ互いにヒートシール接着されていて、
上記含浸シートは、その周縁部を基材シートにシールすることで、基材シートに保持されていて、
上記外側シートと基材シートは、互いの全周においてシール固定されており、
重なり合った両シート材の周縁に切込みが形成されていて、当該切込みから両シート材の一周辺領域を破断除去することにより、使用者の手を挿入する挿入口が形成される、包装体を提案している。
【0003】
この包装体では、使用時にピンセットなどで薬剤含侵不織布を取り出し、患部に塗布する。しかし、操作が煩雑なので、他の患部に薬剤が触れてしまったり、不織布を取り出す時に手に薬剤が触れてしまったりしやすいなど、問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、ピンセットなどを使用せずに取り出して、患部に薬剤を塗布可能と
する構造のパウチを得ることが、本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のパウチは、少なくとも、上から順に、薬剤保存部、ベースシート、薬剤保持部、保護層から構成されるパウチであって、
薬剤保存部は、薬剤収納可能な収納部と、平らで融着可能な周縁と、を有すると共に、柔軟性を有する素材からなり、
ベースシートは、薬剤保存部の周縁に融着して収納部を密閉すると共に、中央に易開封可能な脆弱部と、前記脆弱部を通る折り曲げ可能なヒンジ部と、を有し、
薬剤保持部は、薬剤を含んで塗布可能な、不織布等からなり、
保護層は、該薬剤保持部を包み込んでベースシートと融着可能な易剥離フィルムからなることを特徴とするパウチである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のパウチは、薬剤が入った収納部を有する薬剤保存部の中央を押し込んで、周縁が薬剤保存部と融着しているベースシートが外側になるように折り曲げることによって、ベースシート中央の脆弱部から薬剤を押し出す。その押し出された薬剤が、薬剤保持部に注出され、薬剤保持部に含侵するので、ピンセットなどの道具を使用せず、かつ、手に薬剤を触れないようにして、患部に薬剤を塗布することが可能とするパウチである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係るパウチの一実施形態例の構造を示す断面図と、それを開封する前半の工程を示す図である。
【
図2】本発明に係るパウチの一実施形態例の構造を示す断面図で、開封して薬剤を薬剤保持部に含侵させる後半の工程を示す図である。
【
図3】本発明に係るパウチで、それを構成する部材を示す外観斜視図である。
【
図4】本発明に係るパウチで、それに使用するベースシートの実施形態例を示す外観斜視図と、部分拡大断面図である。
【
図5】本発明に係るパウチで、それに使用する薬剤保存部の別の実施形態例を示す外観斜視図と、それを使用したパウチの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のパウチの実施形態例について、図で説明する。
図1-1は、本発明に係るパウチ1の一実施形態例を示す縦断面図である。
本発明のパウチ1は、上から順に、薬剤保存部2、ベースシート3、薬剤保持部4、保護層5から構成されている。
【0010】
本発明に使用される薬剤保存部2は、薬剤6を収納可能な収納部21と、平らで融着可能な周縁22と、を有すると共に、半可撓性を有する素材から構成されている。
すなわち、プラスチックを主体とするシート素材23を、真空成形、あるいは圧空成形、あるいはそのような樹脂を射出成形して、周縁22は平面状とし、中央に凹部からなる収納部21を有する成形品で形成されている。
【0011】
図5-1は、別の実施形態例を示す薬剤保存部2の外観斜視図である。収納部21の中央に、ベースシート3のヒンジ部32に対応した位置に、くぼみ211を設けた薬剤保存部2である。
使用する時に、
図5-2に示すように、中央が窪んでいる為、収納部21も、ベースシート3も、容易に折り込んで、脆弱部321を破断させて、内容物の薬剤を注出することができる。
【0012】
ベースシート3は、薬剤保存部2に融着して収納部21を密閉可能なベース周縁部31を有すると共に、中央に折り曲げ可能な折り曲げヒンジ部32と、該ヒンジ部の中央に折り曲げた時に開封可能な脆弱部321と、前記脆弱部321とヒンジ部32との間をつないで折り曲げ可能とするヒンジ中継部322と、を有する一定の厚みを有するシートから形成されている。
【0013】
薬剤保持部4は、薬剤を含んで塗布可能な、不織布等から形成されている。薬剤保存部2に収納されている薬剤を、全量保持可能にする為、充分な厚みや密度を有している素材を使用する。
この薬剤保持部4は、ベースシート3に部分接着、あるいは部分溶着する。部分接着や溶着するのは、前記ベースシート3の脆弱部32から離れた部分とする。これは、ベースシート3を脆弱部32で折り込んで、ベースシート3を破断させると、破断部近傍に接着部がないので、内容物の薬剤を破断部から阻害されることなく、容易に滲み出させることができる。
【0014】
保護層5は、該薬剤保持部4を包み込んでベースシート3と融着可能な易剥離フィルムから形成されている。
この為、保護層としてはベースシート3に融着可能であると共に、容易に剥離可能な樹脂層を基材層に積層したフィルムが好ましい。
【0015】
図1、
図2は、本発明のパウチ1を使用する工程を示す図である。
第一工程の
図1-1は、薬剤6を充填した未開封状態のパウチ1の断面図である。
第二工程の
図1-2は、パウチ1の保護層5を剥離する。ここで、薬剤保存部2が上方になるように、上下をひっくり返す。
第三工程の
図1-3では、薬剤保存部2の中央を強く押す。
第四工程の
図1-4では、強い力で収納部中央を上側から押すことによって、ベースシート3の中央にまっすぐ走るヒンジ部32に沿って折り曲げられる。この時、ベースシート3の収納部側ヒンジ部32が当接すると、薄肉になっている薬剤保持部4側の薄肉部分に、強い引き裂く力が掛かる。
【0016】
第五工程の
図2-1は、折り曲げたベースシート3の両端を強く引き寄せ、収納部21を挟み込むことによって、脆弱部32が引き裂かれ、該脆弱部32から収納部21の中の薬剤6が吐出し、脆弱部32近傍の薬剤保持部4に薬剤6が含侵する。
【0017】
第六工程の
図2-2は、さらにベースシート3の両端を強く引き寄せ、薬剤6の含侵した薬剤保持部4の先端を、塗工する予定の患部に擦って塗る。
ベースシート3の両端距離を調整すると、薬剤6の含侵量を調整可能である。
【0018】
本発明の薬剤保存部2は、
図3-4に示すように、平らで融着可能な周縁22と、薬剤収納可能な収納部21から構成されている。
薬剤を収納しやすいように、収納部21は凹部を形成し、その容積を収納する薬剤の充填量に合わせた容積になるようにしている。
【0019】
薬剤保存部に使用するシートとしては、収納する薬剤の劣化を保護するバリア性のシートであって、容易に手で変形可能な可塑性を有するシートが好ましい。例えば、ポリアミド系樹脂/エチレン酢酸ビニル共重合体鹸化物/無水フタル酸変性ポリエチレン/高密度ポリエチレン/直鎖状低密度ポリエチレンといった構成で共押し出ししたシートなどが考えられる。
このようなシートを、真空成形や、圧縮成形などで収納部部分を立ち上げて製造しても良い。バリア性の必要でない薬剤を収納するのであれば、ポリオレフィン系樹脂シートを真空成形や圧縮成形で成形しても良いが、ポリエチレン樹脂シートやポリプロピレン樹脂シートなどのポリオレフィン樹脂を射出成形して成形しても良い。
【0020】
ベースシート3は、
図3-3に示すように、平坦なシートから形成されている。ベースシート3は、薬剤保存部2に融着して収納部21を密閉可能な周縁31を有すると共に、中央に易開封可能な脆弱部321と、前記脆弱部321を通る折り曲げ可能なヒンジ部32と、を有している。
【0021】
図4にベースシート3の別の実施形態例を示す図で、その表面側と裏面側から見た外観斜視図と、その脆弱部の部分拡大断面図である。
すなわち、ベースシート3の脆弱部32が、中央では薬剤保存部側に切り込みが設けられている。しかし、脆弱部32の両端では、薬剤保持部側に切り込みが設けられている。
上記中央と周縁との境界では、単に薄肉となって、折り曲げしやすくなっている。
このようにして、パウチを折り込んだ時に、左右のベースシート3の間に挟まれた薬剤保
存部と内容物の薬剤が、ベースシート3の脆弱部32を引き裂く力となって、破断する力になる。
【0022】
ベースシート3に使用するシートとしては、収納する薬剤の劣化を保護するバリア性のシートであって、一定の剛性を有するシートが好ましい。例えば、ポリプロピレン系イージーピールシーラント/酸化金属蒸着層/ポリエチレンテレフタレートといった構成のシートや、無水フタル酸変性高密度ポリエチレン/エチレン酢酸ビニル共重合体鹸化物/無水フタル酸変性ポリエチレン/高密度ポリエチレンの構成で共押し出ししたシートなどが考えられる。
このようなシートを、プレスや切削で中央に脆弱部を設けて折り込み可能とし、さらに外形を抜いてベースシートとしたものが使用可能である。
【0023】
薬剤保持部4は、
図3-2に示すように、ベースシート3の周縁の外形よりも充分に小さな大きさのシートからなり、薬剤を含んで塗布可能な、不織布等から形成されている。薬剤保持部4に使用する素材としては、不織布、織布、多孔質のスポンジ、などが使用できる。
【0024】
不織布や織物の素材は、天然繊維、人造繊維及びこれらの混合物から選択された一つ以上を含むことができる。原糸の素材は、天然繊維、人造繊維及びこれらの混合物から選択された一つ以上を含むことができる。
【0025】
天然繊維は、綿花、カポック綿、コイヤー、マニラ麻、サイザル麻、亜麻、苧麻、大麻、ケナフ、アバカ、サイザル麻、カポック、カラムシ、黄麻、麻、羊毛、山羊毛、カシミア、ラクダ毛、ラクダの毛、アルパカ、ウール繊維、家蚕絹、野蚕絹、石綿、セルロース及びこれらの混合物よりなる群から選択された一つ以上で構成される繊維である。
【0026】
また、人造繊維は、ポリノジックレーヨン、ビスコースレーヨン、キュプラレーヨン、アセテート、トリ酢酸、ポリエステル系繊維、ポリウレタン系繊維、ポリエチレン系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリビニリデン系繊維、ポリテトラフルオロエチレン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリアミド系繊維、カゼイン繊維、アルギン酸繊維、セルロース系繊維、ゴム繊維、ナイロン、SBR(Styrene butadiene rubber)、NR(natural Rubber)及びこれらの混合物よりなる群から選択された一つ以上である。この薬剤保持部に用いる繊維の密度は0.01~5g/cm3が良い。すなわち、0.01g/cm3未満では、充分に薬剤を含侵した状態で保持することができない。また、5g/cm3以上の場合、充分に薬剤を浸透させて含侵できない、などの問題があることから、保持層に用いる繊維の密度は0.01~5g/cm3とする。特に、繊維の密度を0.2~0.4g/cm3、とすることが好ましい。
【0027】
また、スポンジとしては、ウレタンフォームからなるウレタンスポンジ、オレフィン系スポンジ、フッ素スポンジ、エチレン酢酸ビニル共重合体スポンジ、塩化ビニルスポンジ、セルローススポンジなども使用できる。
これらは、表面に繊維や多孔質面が露出しているので、ベースシートに接した状態で加熱すると、該繊維の表面や多孔質面にベースシートの熱可塑性樹脂に埋まり、溶着可能とすることができる。
【0028】
保護層5は、
図3-1に示すように、一枚のフィルムから構成されている。
保護層5は、薬剤保持部4をベースシート3との間に包み込んで、薬剤保持部4を保護すると共に、薬剤塗布する直前に、容易に開封可能とする部材である。
この為、保護層5の外形は、ベースシート3よりも、外形は小さくない大きさであって、
端部につまみ部51を有す形状としている。
【0029】
保護層に使用するフィルムとしては、ベースシートと融着可能で、かつ、易剥離可能なシーラントを融着側に設けていれば、どのようなフィルムであっても良い。
この為、低密度ポリエチレンなどの単体フィルムであっても良いし、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタアクリル酸共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・メチルアクリレート共重合体、などの単体フィルムも使用できる。さらに、上記融着可能な樹脂フィルムに、ポリエチレンテレフタレートフィルムや、ポリアミドフィルム、ポリプロピレンフィルムなどと積層した多層のフィルムなども使用できる。
【0030】
本発明のパウチは、以上のようなもので、薬剤が入った収納部を有する薬剤保存部を、ベースシートのヒンジ部に押し込んで、周縁が薬剤保存部と融着しているベースシートが外側になるように折り曲げることによって、ベースシート中央の脆弱部から薬剤を押し出すことができる。その押し出された薬剤が、薬剤保持部に注出され、該薬剤が薬剤保持部に含侵するので、ピンセットなどの道具を使用せず、かつ、手に薬剤を触れないように、患部に上記薬剤を容易に塗布することが可能とすることができるなど、本発明のパウチは、メリットが大きい。
【符号の説明】
【0031】
1・・・・・・・・パウチ
2・・・・・・・・薬剤保存部
21・・・・・・・収納部
211・・・・・・くぼみ
22・・・・・・・周縁
23・・・・・・・シート素材
3・・・・・・・・ベースシート
31・・・・・・・ベース周縁部
32・・・・・・・ヒンジ部
321・・・・・・脆弱部
322・・・・・・ヒンジ中継部
4・・・・・・・・薬剤保持部
5・・・・・・・・保護層
51・・・・・・・つまみ部
6・・・・・・・・薬剤