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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156816
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】液体塗布用具
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/00 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
B65D83/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060694
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 実
(72)【発明者】
【氏名】坂本 果穂
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 剛史
【テーマコード(参考)】
3E014
【Fターム(参考)】
3E014PA01
3E014PB03
3E014PC03
(57)【要約】
【課題】液体を含浸した液体保持層を密封して、これに手を触れることなく液体を塗布することのできる液体塗布用具を提供すること。
【解決手段】ベースフィルム10と、液体を含浸した液体保持層20と、保護フィルム30と、手又は指を固定する固定用フィルム40とで液体塗布用具A1を構成する。ベースフィルム10の一方の面に液体保持層20を固定し、保護フィルム30で剥離容易に液体保持層20を覆う。また、前記ベースフィルム10の他方の面に、固定用フィルム40の両側縁42,42が固定され、かつ、これら両側縁の間の中央領域41とベースフィルム10との間に手又は指を差し込む間隙50を設ける。そして、固定用フィルム40に、ミシン目40a等の破断手段を設ける。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースフィルムと、液体を含浸した液体保持層と、保護フィルムと、手又は指を固定する固定用フィルムとで構成される液体塗布用具であって、
前記ベースフィルムの一方の面に前記液体保持層が固定され、前記保護フィルムが剥離容易に前記液体保持層を覆っており、
前記ベースフィルムの他方の面に、前記固定用フィルムの両側縁が固定され、かつ、これら両側縁の間の中央領域と前記ベースフィルムとの間に手又は指を差し込む間隙が設けられていると共に、前記固定用フィルムの両側縁のうち少なくとも一方の側縁の近傍に、この側縁に沿って固定用フィルムを破断する破断手段が設けられていることを特徴とする液体塗布用具。
【請求項2】
前記破断手段が、前記側縁に沿って設けられたミシン目から成ることを特徴とする請求項1に記載の液体塗布用具。
【請求項3】
前記破断手段が、固定用フィルムの端縁に設けられたノッチから成ることを特徴とする請求項1に記載の液体塗布用具。
【請求項4】
ベースフィルムと、液体を含浸した液体保持層と、保護フィルムと、手又は指を固定する固定用フィルムとで構成される液体塗布用具であって、
前記ベースフィルムの一方の面に前記液体保持層が固定され、前記保護フィルムが剥離容易に前記液体保持層を覆っており、
前記ベースフィルムの他方の面に、前記固定用フィルムの両側縁が固定され、かつ、これら両側縁の間の中央領域と前記ベースフィルムとの間に手又は指を差し込む間隙が設けられていると共に、前記固定用フィルムが直線引き裂き性のフィルムから成り、その引き裂き方向が前記側縁が延在する方向であることを特徴とする液体塗布用具。
【請求項5】
ベースフィルムと、液体を含浸した液体保持層と、保護フィルムと、手又は指を固定する固定用フィルムとで構成される液体塗布用具であって、
前記ベースフィルムの一方の面に前記液体保持層が固定され、前記保護フィルムが剥離容易に前記液体保持層を覆っており、
前記ベースフィルムの他方の面に、前記固定用フィルムの両側縁が剥離容易に固定され、かつ、これら両側縁の間の中央領域と前記ベースフィルムとの間に手又は指を差し込む間隙が設けられていることを特徴とする液体塗布用具。
【請求項6】
前記間隙に手又は指を差し込んで固定したとき、これら手又は指をベースフィルムに押し付ける力が0.1~10Nとなるように、前記固定用フィルムの両側縁が前記ベースフィルムに固定されていることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の液体塗布用具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を含浸した液体保持層を密封して、これに触れることなく液体を塗布することのできる液体塗布用具に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を含浸した液体保持シートを密封したパウチは公知であり、その代表例として、ウェットティッシュを密封したパウチを例示することができる(特許文献1)。
【0003】
周知のように、ウェットティッシュは不織布等の含浸基材にアルコール等の液体を含浸したもので、例えば、手指を拭うために使用する。このため、パウチからウェットティッシュを取り出す際には、手指でこれを摘まんで取り出すことが通常である。
【0004】
しかしながら、液体の中には、手指で触れることに支障のあるものがある。例えば、ヨードチンキは着色しており、手指に付着した場合には付着部位が着色して、しかも、その着色を容易に落とすことができない。また、医療用の液体の中には、手指の接触による汚染を忌避するものもある。
【0005】
このように手指で摘まんで取り出すことができない場合には、液体を含浸した液体保持シートをピンセット等で摘まんでパウチから取り出し、かつ、ピンセット等で摘まんだまま液体を塗布する。しかし、このようにピンセット等で摘まんだ状態で、パウチからの取り出し、塗布、廃棄等のすべての作業を行うことは煩雑である。また、このようにすべての作業をピンセット等で摘まんだ状態で行おうとすると、不用意に意図しない部位に液体を付着させたり、あるいはピンセットから液体保持シートを落としてしまう機会も増えるのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-189292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、液体を含浸した液体保持層を密封して、これに手を触れることなく液体を塗布することのできる液体塗布用具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、請求項1に記載の発明は、ベースフィルムと、液体を含浸した液体保持層と、保護フィルムと、手又は指を固定する固定用フィルムとで構成される液体塗布用具であって、
前記ベースフィルムの一方の面に前記液体保持層が固定され、前記保護フィルムが剥離容易に前記液体保持層を覆っており、
前記ベースフィルムの他方の面に、前記固定用フィルムの両側縁が固定され、かつ、これら両側縁の間の中央領域と前記ベースフィルムとの間に手又は指を差し込む間隙が設けられていると共に、前記固定用フィルムの両側縁のうち少なくとも一方の側縁の近傍に、この側縁に沿って固定用フィルムを破断する破断手段が設けられていることを特徴とする液体塗布用具である。
【0009】
次に、請求項2に記載の発明は、前記破断手段が、前記側縁に沿って設けられたミシン
目から成ることを特徴とする請求項1に記載の液体塗布用具である。
【0010】
次に、請求項3に記載の発明は、前記破断手段が、固定用フィルムの端縁に設けられたノッチから成ることを特徴とする請求項1に記載の液体塗布用具である。
【0011】
次に、請求項4に記載の発明は、ベースフィルムと、液体を含浸した液体保持層と、保護フィルムと、手又は指を固定する固定用フィルムとで構成される液体塗布用具であって、
前記ベースフィルムの一方の面に前記液体保持層が固定され、前記保護フィルムが剥離容易に前記液体保持層を覆っており、
前記ベースフィルムの他方の面に、前記固定用フィルムの両側縁が固定され、かつ、これら両側縁の間の中央領域と前記ベースフィルムとの間に手又は指を差し込む間隙が設けられていると共に、前記固定用フィルムが直線引き裂き性のフィルムから成り、その引き裂き方向が前記側縁が延在する方向であることを特徴とする液体塗布用具である。
【0012】
次に、請求項5に記載の発明は、ベースフィルムと、液体を含浸した液体保持層と、保護フィルムと、手又は指を固定する固定用フィルムとで構成される液体塗布用具であって、
前記ベースフィルムの一方の面に前記液体保持層が固定され、前記保護フィルムが剥離容易に前記液体保持層を覆っており、
前記ベースフィルムの他方の面に、前記固定用フィルムの両側縁が剥離容易に固定され、かつ、これら両側縁の間の中央領域と前記ベースフィルムとの間に手又は指を差し込む間隙が設けられていることを特徴とする液体塗布用具である。
【0013】
次に、請求項6に記載の発明は、前記間隙に手又は指を差し込んで固定したとき、これら手又は指をベースフィルムに押し付ける力が0.1~10Nとなるように、前記固定用フィルムの両側縁が前記ベースフィルムに固定されていることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の液体塗布用具である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の液体塗布用具は次のように使用することができる。すなわち、まず、ベースフィルムと固定用フィルムとの間の前記間隙に一方の手あるいはその指を挿入して固定し、他方の手で保護フィルムを剥離して液体保持層を露出させる。そして、挿入した手を前記間隙に固定したまま、露出した液体保持層を所定の部位に接触させて、含浸した液体を塗布する。そして、固定用フィルムにはこの固定用フィルムを破断する破断手段が設けられているため、液体塗布後の液体塗布用具は、他方の手で容易に破断することにより、露出した液体保持層に触れることなく廃棄することができる。
【0015】
また、請求項4に記載の液体塗布用具も請求項1に記載の液体塗布用具と同様に使用することができるが、この液体塗布用具は、その固定用フィルムが一軸延伸フィルムから成り、しかも延伸方向が、ベースフィルムに固定された前記側縁が延在する方向であるため、この延伸方向に沿って容易にすることにより、露出した液体保持層に触れることなく廃棄することが可能である。
【0016】
請求項5に記載の液体塗布用具も請求項1,4に記載の液体塗布用具と同様に使用することができる。そして、この液体塗布用具では、その固定用フィルムの両側縁が剥離容易に固定されているため、この固定用フィルム容易に剥離することにより、露出した液体保持層に触れることなく廃棄することが可能である。
【0017】
このように、請求項1,4,5に記載の液体塗布用具のいずれにおいても、開封から塗
布、廃棄に至るまで、すべての作業を、一方の手あるいはその指を前記間隙に挿入して固定したまま行なうことができる。そして、その全作業を通じて手指が液体保持層や液体に触れることがない。このため、手指が液体で汚れることがなく、また、逆に手指に付着した菌・ウィルスや汚染物質で液体が汚染されることもない。
【0018】
なお、前述のように、請求項1,4,5に記載のこれら液体塗布用具においては、一方の手あるいはその指を前記間隙に挿入して固定したまますべての作業を行なうことができる。ピンセットで摘まんで全作業を行うことに比較して、手あるいはその指を固定して作業を行うことは容易であり、意図しない部位に不用意に付着させたり、あるいは落としたりする惧れも少ないことは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は本発明の液体塗布用具の第1の具体例に係り、その断面構造を説明するための断面模式図である。
図2図2は本発明の液体塗布用具の第1の具体例に係り、その平面模式図である。
図3図3は本発明の液体塗布用具の第2の具体例に係り、その外観を説明するための平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本開示の具体例を説明する。図1は、本発明の液体塗布用具の第1の具体例に係り、その断面構造を説明するための断面模式図である。また、図2は平面模式図である。
【0021】
これらの図から分かるように、この液体塗布用具A1は、ベースフィルム10と、液体を含浸した液体保持層20と、保護フィルム30と、手又は指を固定する固定用フィルム40とで構成されている。
【0022】
ベースフィルム10の一方の面に前記液体保持層20が固定されている。この例では、液体保持層20を不織布で構成して、この不織布に液体を含浸している。そして、保護フィルム30が、この液体保持層20を剥離容易に覆っている。
【0023】
また、前記ベースフィルム10の他方の面には前記固定用フィルム40が積層されており、固定用フィルム40の両側縁42,42がベースフィルム10に接着固定されている。一方、これら両側縁42,42の間の中央領域41では、固定用フィルム40とベースフィルム10とが接着されておらず、このため、固定用フィルム40とベースフィルム10との間の間隙50に手あるいは指を差し込むことにより、この液体塗布用具A1を手や指に固定することができる。
【0024】
なお、両側縁42,42の間で固定用フィルム40が弛んでいると、手や指を前記間隙50に差し込んでも液体塗布用具A1をきちんと固定することができない。一方、両側縁42,42の間の張力(テンション)が大きすぎると、前記間隙50に手や指を差し込むことが困難である。そこで、この間隙50に手や指を差し込んで固定したとき、これら手又は指をベースフィルム10に押し付ける力が0.1~10Nとなるような張力(テンション)で、固定用フィルム40の両側縁42,42をベースフィルム10に固定することが望ましい。
【0025】
ところで、このように間隙50に差し込んで固定した手や指から液体塗布用具A1を外すときの便宜のため、前記固定用フィルム40を破断する破断手段が設けられていることが望ましい。この第1の具体例では、両側縁42,42の近傍であって、この両側縁42,42に沿ってミシン目40aを設けて、このミシン目40aを前記破断手段としている。なお、この例では、両側縁42,42のそれぞれについて、その近傍にミシン目40aを配置しているが、どちらか一方でもよい。
【0026】
また、ミシン目40aに代えて、あるいはミシン目40aに加えて、固定用フィルム40の端縁にノッチを設けて、このノッチを前記破断手段としてもよい。図3は本発明の第2の具体例を示しており、この第2の具体例に係る液体塗布用具A2はノッチ40bを前記破断手段としている。
【0027】
また、固定用フィルム40に破断手段を設ける代わりに、固定用フィルム40自体を直線引き裂き性のフィルムで構成したときにも、この固定用フィルム40を容易に破断することができる。この場合には、その引き裂き方向が、ベースフィルム10に固定された前記側縁42,42が延在する方向に略等しいことが望ましい。このような直線引き裂き性のフィルムとしては、一軸延伸フィルムを例示できる。もちろん、固定用フィルム40を直線引き裂き性フィルムで構成すると共に、ミシン目40aやノッチ40b等の破断手段を設けてもよい。
【0028】
また、固定用フィルム40に破断手段を設ける代わりに、固定用フィルム40の前記両側縁42,42を剥離容易にベースフィルム10に固定してもよい。
【0029】
ベースフィルム10としては任意のフィルムを使用できるが、液体保持層20に含まれる液体の蒸散を防ぐことができるバリア性フィルムを使用することが望ましい。また、その表面に、液体保持層20、保護フィルム30及び固定用フィルム40を固定できることが望ましい。例えば、プラスチックフィルムの蒸着基材上に金属蒸着層あるいは無機蒸着層を形成した蒸着フィルムをバリア性フィルムとして前記液体の蒸散を防止し、一方、そのシール面にシーラント層を積層したフィルムである。
【0030】
蒸着基材としては、ポリエステルフィルム、ナイロンフィルム、ポリプロピレンフィルム、エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム等が例示できる。金属蒸着層の代表例はアルミニウム蒸着層である。また、液体の蒸散を防止する無機蒸着層としては、酸化ケイ素や酸化アルミニウムの蒸着層を例示できる。なお、蒸着フィルムの代わりにアルミニウム箔等の金属箔を使用することもできる。
【0031】
また、シーラント層としては、低密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂が例示できる。また、非結晶性ポリエステル等のポリエステル系シーラント層をシーラント層とすることも可能である。
【0032】
なお、好ましいベースフィルム10の具体例を例示すると、例えば、ポリエステルフィルム、アルミニウム箔及びポリオレフィン系樹脂層をこの順に積層したフィルムを例示できる。また、無機物を蒸着したポリエステルフィルム、延伸ポリアミドフィルム及びポリオレフィン系樹脂層をこの順に積層したフィルムでもよい。また、ポリエステルフィルム、アルミニウム箔及びポリエステル系シーラント層をこの順に積層したフィルムを使用することもできる。
【0033】
また、液体保持層20は、その基材に液体を含浸して構成されるものである。その基材としては、液体を含浸できるものであれば任意でよいが、例えば、紙、織物、編み物、不織布等を例示できる。
【0034】
液体保持層20を不織布で構成する場合には、この不織布は、セルロース繊維等の天然繊維から成るものであってもよいし、ポリオレフィンやポリエステル等の合成繊維から成
るものであってもよい。坪量は5g/m以上である望ましい。200g/m以下でよい。5g/mより坪量が少ない場合には、十分に液体を含浸して保持することができず、一方、坪量が200g/mを超えるとコスト的に不利である。なお、より望ましくは30~100g/mである。
【0035】
含浸する液体としては、医療用薬液、化粧液または機械部品,電子部品等を清掃するための清掃液等の薬液等が例示できる。
【0036】
医療用薬液としては、消毒、殺菌又は治療を目的とした薬液が挙げられ、例えばアクリノール、塩酸アルキルジアミンエチルグリシン、エタノール、過酸化水素、グルタラール、クレゾール、グルコン酸クロルヘキシジン、次亜塩素酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ポピドンヨード、マーキュロクロム、ヨードチンキなどの消毒薬が挙げられる。これらの薬剤は液体である限りそのまま液体保持層20の前記基材に含浸させてもよく、あるいは水等の溶剤に溶解させて前記基材に含浸させてもよい。
【0037】
化粧液としては、例えばアロエエキス、コラーゲン、ローション、ベビーオイル、ベビーローション、ヨモギエキス、ヘチマエキスおよび米糖エキス等の植物抽出エキスや各種香料等が挙げられる。また、その他にも除光液やクレンジング液などを使用してもよい。これらの化粧液もそのまま前記基材に含浸させてもよいし、水等の溶剤に溶解させて含浸させてもよい。
【0038】
また、清掃液としては、例えばアセトン、アルコール等の有機溶剤、機械用油等が例示できる。
【0039】
次に、保護フィルム30としては、液体保持層20に含まれる液体の蒸散を防ぐバリアフィルムを使用することが望ましい。また、前述のとおり、剥離容易にベースフィルム10にシールできる必要がある。このため、保護フィルム30は、その層構成中に液体の蒸散を防止できるバリアフィルムを有し、しかも、そのシール面にイージーピール性のシーラント層を備える多層構造のフィルムを使用できる。例えば、バリアフィルムによって前記液体の蒸散を防止し、一方、そのシール面にイージーピール性のシーラント層を積層したフィルムである。なお、イージーピール性のシーラント層としては、市販のシーラントフィルムを利用できる。例えば、三井化学東セロ(株)製TAF ABF-64-Cジェイフィルム(株)製SMXシリーズのシーラントフィルム、東レフィルム加工(株)製CFシリーズのシーラントフィルム、DIC(株)製DIFARENイージーピール、三井化学東セロ(株)製TAF ABF-64-C等である。
【0040】
次に、固定用フィルム40は任意の材質のフィルムでよく、例えば、ポリオレフィン系フィルム、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム等を使用できる。その強度を高めるため、複数のフィルムを積層して固定用フィルム40としてもよい。前述のように、一軸延伸フィルムであってもよいし、ミシン目40aやノッチ40bを設けてもよい。また、イージーピール性のシーラント層を設けることにより、ベースフィルム10から剥離容易とすることもできる。この例では、固定用フィルム40は、ベースフィルム10より幅の狭いベルト状としているが、ベースフィルム10と同形同大であっても構わない。
【0041】
次に、この液体塗布用具A1の製造方法を説明する。
【0042】
すなわち、まず、ベースフィルム10に固定用フィルム40を固定する。
【0043】
次に、ベースフィルム10に液体保持層20の基材を固定する。前記保護フィルム30を剥離除去するときにも、この両者10,20は互いに剥離することがないように強固に
固定することが望ましい。
【0044】
次に、ベースフィルム10に固定された前記基材に液体を含浸して、液体保持層20を形成する。
【0045】
最後に、保護フィルム30が液体保持層20を覆うように、剥離容易にヒートシールすることにより、液体塗布用具A1を製造することができる。
【0046】
この液体塗布用具Aは次のように使用することができる。すなわち、まず、ベースフィルム10と固定用フィルム40との間の前記間隙50に一方の手あるいはその指を差し込み、両者が揺動しないように固定する。前述のように、固定用フィルム40が0.1~10Nの力で手又は指をベースフィルム10に押し付ける程度に固定することが望ましい。
【0047】
なお、固定用フィルム40がノッチ40bを有する場合には、このノッチ40bがない方向からノッチ40bを設けた方向に向かって手や指を差し込むことが望ましい。ノッチ40bを設けた方向から手や指を差し込むと、このノッチ40bから固定用フィルム40が破断することがある。
【0048】
次に、他方の手で保護フィルム30を剥離して、液体保持層20を露出する。そして、手あるいはその指を前記間隙50に固定したまま、この手あるいは指を使用して、露出した液体保持層20を目的とする部位に接触させることによって、液体保持層20に含浸された液体を塗布することができる。例えば、この液体が医療用薬液である場合には、この液体保持層20に手が触れることなく、したがって手を汚すことなく、しかも衛生的にその薬液を患部に塗布することができるのである。また、液体が化粧液である場合にも、この化粧液に触れることなく所定の部位に塗布することができる。
【0049】
そして、塗布した後には、他方の手で固定用フィルム40を破断することにより、固定した手や指をはずして、液体塗布用具A1を廃棄することができる。固定用フィルム40にミシン目40aやノッチ40b等の破断手段が設けられている場合、あるいは、固定用フィルム40自体が一軸延伸フィルムで構成されている場合には、固定用フィルム40を容易に破断することが可能である。そして、このように他方の手で固定用フィルム40を破断するため、このときにも液体保持層20に手が触れることがない。
【0050】
以上のように、本発明の液体塗布用具は、開封から塗布、廃棄に至るまで、すべての作業を、前記間隙50に手や指を差し込んで固定したまま行なうことができる。そして、その全作業を通じて手指が液体保持層や液体に触れることがない。
【0051】
また、このようにすべての作業を手や指を固定したまま行なうことができるため、その作業が容易であり、意図しない部位に不用意に付着させたり、あるいは落としたりすることも少ないのである。
【実施例0052】
(実施例1)
この例は、図2に示すように、固定用フィルム40の両側縁42,42をベースフィルムにシール固定した上、この両側縁42,42近傍にミシン目40aを設けた液体塗布用具の例である。なお、これら2本のミシン目40aは、いずれも、前記両側縁に沿って延びている。
【0053】
ベースフィルム10としてはバリアフィルムとシーラント層とを積層した2層構成のフィルムを使用した。バリアフィルムは厚さ12μmのポリエステルフィルムに無機蒸着層
を設けた蒸着フィルムである。また、シーラント層は厚さ60μmの無延伸ポリプロピレンフィルムである。
【0054】
液体保持層20としては、坪量50g/mのポリプロピレン不織布を使用した。
【0055】
保護フィルム30としては、バリアフィルムとシーラント層とを積層した2層構成のフィルムを使用した。バリアフィルムは厚さ12μmのポリエステルフィルムに無機蒸着層を設けた蒸着フィルムである。また、シーラント層は厚さ30μmのポリプロピレン系イージーピール性シーラントフィルムである。
【0056】
また、固定用フィルム40は厚さ100μmの低密度ポリエチレンフィルム単体で構成した。このフィルム40は、前記ベースフィルム10と同形同大で、ベースフィルム10とシールする両側縁42,42の近傍にミシン目40aを設けた。
【0057】
そして、図1,2に示すように、まず、ベースフィルム10に固定用フィルム40の両側縁42,42をヒートシールして固定すると共に、その間の中央部においては、ベースフィルム10と固定用フィルム40との間に間隙50を設けた。
【0058】
次に、ベースフィルム10の反対側の面に前記液体保持層20を固定し、この液体保持層20に液体を含浸させた後、この液体保持層を覆って、かつ、剥離容易に、前記保護フィルムをベースフィルム10にシールすることにより、実施例1に係る液体塗布用具を製造した。
【0059】
(実施例2)
この例は、図3に示すように、固定用フィルム40の両側縁42,42をベースフィルムにシール固定した上、この両側縁42,42近傍にノッチ40bを設けた液体塗布用具の例である。なお、これら2つのノッチ40bは、いずれも、前記両側縁に沿って固定用フィルム40を引き裂くことができるように、固定用フィルム40の端縁に配置した。
【0060】
ベースフィルム10、液体保持層20及び保護フィルム30としては、それぞれ、実施例1のベースフィルム10、液体保持層20及び保護フィルム30と同じものを使用した。
【0061】
固定用フィルム40は、厚さ40μmの一軸延伸ポリエチレンフィルムにシーラント層を積層して構成したもので、その幅が前記ベースフィルム10の1/3のベルト状の形状を有している。
【0062】
そして、これらベースフィルム10、液体保持層20、保護フィルム30及び固定用フィルム40を使用して、実施例1と同様の方法により、実施例2に係る液体塗布用具を製造した。
【0063】
(実施例3)
この例は、固定用フィルム40の両側縁42,42を剥離容易にベースフィルムにシール固定した液体塗布用具の例である。
【0064】
この例でも、ベースフィルム10、液体保持層20及び保護フィルム30としては、それぞれ、実施例1のベースフィルム10、液体保持層20及び保護フィルム30と同じものを使用した。
【0065】
固定用フィルム40は、厚さ20μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムにイージーピ
ール性のシーラント層を積層したフィルムである。イージーピール性のシーラント層としては、厚さ30μmの三井化学東セロ(株)製TAF ABF-64-Cを使用した。
【0066】
そして、これらベースフィルム10、液体保持層20、保護フィルム30及び固定用フィルム40を使用して、実施例1と同様の方法により、実施例3に係る液体塗布用具を製造した。
【0067】
(比較例1)
固定用フィルム40にミシン目40aを設けなかった他は、実施例1と同様に液体塗布用具を製造した。
【0068】
(比較例2)
固定用フィルム40にノッチ40bを設けなかった他は、実施例2と同様に液体塗布用具を製造した。
【0069】
(比較例3)
この例は、固定用フィルム40にミシン目40aもノッチ40bも設けず、また、イージーピール性のシーラント層も使用しなかった例である。もちろん、固定用フィルム40は一軸延伸フィルムでもない。
【0070】
この例で使用した固定用フィルム40は、厚さ25μmの二軸延伸ポリエステルフィルムに、シーラント層として厚さ30μmの非結晶性ポリエステルを積層したものである。
【0071】
そして、この固定用フィルム40を使用した点を除いて、実施例3と同様に液体塗布用具を製造した。
【0072】
(評価)
以上の実施例1~3、比較例1~3の液体塗布用具を4つの観点から評価した。
【0073】
すなわち、第1に、手又は指を前記間隙に差し込んで固定するとき、固定用フィルム40が破断する等の問題が生じないか(装着し易さ)という点である。何の問題もなく装着できる場合を「〇」と評価し、固定用フィルム40が破断する場合を「×」と評価した。
【0074】
次に、手又は指を前記間隙に差し込んで固定したまま、液体保持層20を所定の部位に接触させて、含浸した液体を塗布するとき、固定用フィルム40が破断する等の問題が生じないか(塗布し易さ)という点である。何の問題もなく塗布できる場合を「〇」と評価し、固定用フィルム40が破断したり、固定用フィルム40の縁で手や指が傷つく場合を「×」と評価した。
【0075】
第3に、塗布した後、反対側の手を使って、液体塗布用具を容易に取り外すことができるか(取り外し易さ)という点である。簡単に取り外すことができる場合を「〇」と評価し、取り外しができない場合を「×」と評価した。また、固定用フィルム40を引っ張って伸ばせばなんとか取り外すことができる場合を「△」と評価した。
【0076】
最後に、このように取り外すとき、反対側の手に液体が付着することがないか(取り外し時の付着の有無)という点である。取り外し時に液体の付着がなかった場合を「〇」と評価し、付着した場合を「×」と評価した。
【0077】
この結果を表1に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
この結果から分かるように、実施例と比較例のいずれにおいても、手又は指を前記間隙に差し込んで固定し、かつ、この状態で塗布する際には、何の支障も生じない。しかし、ミシン目40aやノッチ40b等の破断手段が設けられていたり、固定用フィルム40が剥離容易にシールされている場合には、容易に、しかも、液体に手が触れることなくはずすことができるが、このように容易にはずすための手段が設けられていない場合には、液体に手が触れることなくはずすことは困難である。
【符号の説明】
【0080】
A1,A2: 液体塗布用具
10:ベースフィルム
20:液体保持層
30:液体保持層
40:固定用フィルム 41:中央領域 42:側縁
40a:ミシン目 40b:ノッチ
図1
図2
図3