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特開2022-156823紡錘形の炭素繊維集合体及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156823
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】紡錘形の炭素繊維集合体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/564 20060101AFI20221006BHJP
   D06M 101/40 20060101ALN20221006BHJP
【FI】
D06M15/564
D06M101:40
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060703
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】乳井 真吾
【テーマコード(参考)】
4L033
【Fターム(参考)】
4L033AA09
4L033AB01
4L033AC11
4L033CA50
(57)【要約】      (修正有)
【課題】再生炭素繊維を含有し、かつ改善されたフィード性を示す炭素繊維集合体を提供すること。
【解決手段】再生炭素繊維及びバインダ含有液から少なくとも構成される混合物を提供すること、混合物を、容器中において、容器の内壁と容器内の回転体との間のクリアランスで転動させることによって、紡錘形の前駆体を製造すること、並びに、前駆体を乾燥させること、を含む、紡錘形の炭素繊維集合体の製造方法であって、再生炭素繊維が、残留炭素成分を含み、残留炭素成分の含有量が、再生炭素繊維に対して0重量%超5.0重量%以下であること、及び再生炭素繊維の平均長さが1mm以上30mm未満であること、を特徴とする、紡錘形の炭素繊維集合体の製造方法。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生炭素繊維及びバインダ含有液から少なくとも構成される混合物を提供すること、
前記混合物を、容器中で、前記容器の内壁と前記容器内の回転体との間のクリアランスで転動させることによって、紡錘形の前駆体を製造すること、並びに
前記前駆体を乾燥させること、
を含む、紡錘形の炭素繊維集合体の製造方法であって、
前記再生炭素繊維が、残留炭素成分を含み、前記残留炭素成分の含有量が、前記再生炭素繊維に対して0重量%超5.0重量%以下であること、及び
前記再生炭素繊維の平均長さが、1mm以上30mm未満であること、
を特徴とする、
紡錘形の炭素繊維集合体の製造方法。
【請求項2】
前記炭素繊維集合体の平均長さが、1.5mm~60mmである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記混合物中の前記バインダ含有液の量が、前記混合物に対して、20重量%~60重量%である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記バインダ含有液に含有されるバインダの量が、前記再生炭素繊維に対して、0.1重量~10重量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
炭素繊維含有プラスチック製品に含有されるプラスチック成分を半導体熱活性法によって分解して、前記再生炭素繊維を製造することを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記炭素繊維集合体の平均長さが、前記炭素繊維集合体に含有される再生炭素繊維の平均長さの1.2倍~4.0倍である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記回転体が、攪拌羽根である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記前駆体の製造を、傾斜していない容器内で行う、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
再生炭素繊維及びバインダから少なくとも構成される炭素繊維集合体であって、
前記再生炭素繊維の平均長さが、1mm以上30mm未満であること、及び、
前記炭素繊維集合体の平均長さが、1.5mm~60mmであること、
を特徴とする、
紡錘形の炭素繊維集合体。
【請求項10】
前記紡錘形の炭素繊維集合体の長軸方向の平均長さが、前記紡錘形の炭素繊維集合体に含有される再生炭素繊維の平均長さの1.2倍~4.0倍である、請求項9に記載の炭素繊維集合体。
【請求項11】
前記紡錘形の炭素繊維集合体に含有される再生炭素繊維が、前記紡錘形の炭素繊維集合体の長軸方向に沿って配向している、請求項9又は10に記載の炭素繊維集合体。
【請求項12】
前記バインダの含有量が、前記紡錘形の炭素繊維集合体に対して、0.1重量~10重量%である、請求項9~11のいずれか一項に記載の炭素繊維集合体。
【請求項13】
前記再生炭素繊維が、残留炭素成分を含み、
前記残留炭素成分の含有量が、前記再生炭素繊維に対して0重量%超5.0重量%以下である、
請求項9~12のいずれか一項に記載の炭素繊維集合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、紡錘形の炭素繊維集合体及びその製造方法に関する。特に、本開示は、再生炭素繊維(リサイクルされた炭素繊維)から製造されるフィード性に優れる紡錘形の炭素繊維集合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維は、比強度・比弾性率に優れ、軽量であるため、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の強化繊維などとして用いられている。炭素繊維強化樹脂複合材料(又は、炭素繊維強化プラスチック、CFRP)は、スポーツ・一般産業用途だけでなく、航空・宇宙用途、自動車用途など、幅広い用途に利用される。
【0003】
炭素繊維強化樹脂複合材料などの炭素繊維含有製品の原料となる炭素繊維に関して、炭素繊維及び集束剤等から粒子状の炭素繊維集合体を造粒する方法が検討されてきた。このような炭素繊維集合体は、炭素繊維をそのまま用いる場合と比較して、押出成形等によって炭素繊維含有製品を製造する際に、比較的良好な供給性(フィード性)を示しうる。
【0004】
特許文献1は、集束剤で集束されたカーボンファイバーの凝集体を傾斜した回転する表面に接触させてカーボンファイバーペレットを製造する方法を記載している。
【0005】
近年、使用済みの炭素繊維含有製品などから回収される再生炭素繊維への需要が高まっている。このような再生炭素繊維についても、炭素繊維集合体を造粒する方法が検討されている。
【0006】
特許文献2は、傾斜した回転容器を有する混合器を用いてリサイクル炭素繊維からカーボンファイバーペレットを製造する方法を記載している。
【0007】
特許文献3及び4は、湿式押出造粒法によってリサイクル炭素繊維から円柱形状の炭素繊維集合体を製造する方法を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3452363号公報
【特許文献2】欧州特許出願公報第2902433号明細書
【特許文献3】特開2020-180421号公報
【特許文献4】特開2020-196882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
再生炭素繊維を用いて製造される従来の炭素繊維集合体は、フィード性が不十分である場合があった。
【0010】
本発明は、再生炭素繊維を含有し、かつ改善されたフィード性を示す炭素繊維集合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る下記の態様によれば、上記の課題を解決することができる:
<態様1>
再生炭素繊維及びバインダ含有液から少なくとも構成される混合物を提供すること、
前記混合物を、容器中で、前記容器の内壁と前記容器内の回転体との間のクリアランスで転動させることによって、紡錘形の前駆体を製造すること、並びに
前記前駆体を乾燥させること、
を含む、紡錘形の炭素繊維集合体の製造方法であって、
前記再生炭素繊維が、残留炭素成分を含み、前記残留炭素成分の含有量が、前記再生炭素繊維に対して0重量%超5.0重量%以下であること、及び
前記再生炭素繊維の平均長さが、1mm以上30mm未満であること、
を特徴とする、
紡錘形の炭素繊維集合体の製造方法。
<態様2>
前記炭素繊維集合体の平均長さが、1.5mm~60mmである、態様1に記載の方法。
<態様3>
前記混合物中の前記バインダ含有液の量が、前記混合物に対して、20重量%~60重量%である、態様1又は2に記載の方法。
<態様4>
前記バインダ含有液に含有されるバインダの量が、前記再生炭素繊維に対して、0.1重量~10重量%である、態様1~3のいずれか一項に記載の方法。
<態様5>
炭素繊維含有プラスチック製品に含有されるプラスチック成分を半導体熱活性法によって分解して、前記再生炭素繊維を製造することを含む、態様1~4のいずれか一項に記載の方法。
<態様6>
前記炭素繊維集合体の平均長さが、前記炭素繊維集合体に含有される再生炭素繊維の平均長さの1.2倍~4.0倍である、態様1~5のいずれか一項に記載の方法。
<態様7>
前記回転体が、攪拌羽根である、態様1~6のいずれか一項に記載の方法。
<態様8>
前記前駆体の製造を、傾斜していない容器内で行う、態様1~7のいずれか一項に記載の方法。
<態様9>
再生炭素繊維及びバインダから少なくとも構成される炭素繊維集合体であって、
前記再生炭素繊維の平均長さが、1mm以上30mm未満であること、及び、
前記炭素繊維集合体の平均長さが、1.5mm~60mmであること、
を特徴とする、
紡錘形の炭素繊維集合体。
<態様10>
前記紡錘形の炭素繊維集合体の長軸方向の平均長さが、前記紡錘形の炭素繊維集合体に含有される再生炭素繊維の平均長さの1.2倍~4.0倍である、態様9に記載の炭素繊維集合体。
<態様11>
前記紡錘形の炭素繊維集合体に含有される再生炭素繊維が、前記紡錘形の炭素繊維集合体の長軸方向に沿って配向している、態様9又は10に記載の炭素繊維集合体。
<態様12>
前記バインダの含有量が、前記紡錘形の炭素繊維集合体に対して、0.1重量~10重量%である、態様9~11のいずれか一項に記載の炭素繊維集合体。
<態様13>
前記再生炭素繊維が、残留炭素成分を含み、
前記残留炭素成分の含有量が、前記再生炭素繊維に対して0重量%超5.0重量%以下である、
態様9~12のいずれか一項に記載の炭素繊維集合体。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、再生炭素繊維を含有し、かつ改善されたフィード性を示す炭素繊維集合体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本開示で用いることができる攪拌造粒器の1つの実施態様の概略図である。
図2図2は、実施例1に係る複数の炭素繊維集合体の写真である。
図3図3は、実施例1に係る1つの炭素繊維集合体の写真である。
図4図4は、比較例2で得られた炭素繊維集合体の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示に係る炭素繊維集合体の製造方法は、
再生炭素繊維及びバインダ含有液から少なくとも構成される混合物を提供すること(提供工程)、
混合物を、容器中において、容器の内壁と容器内の回転体との間のクリアランスで転動させることによって、紡錘形の前駆体を製造すること(造粒工程)、並びに
前駆体を乾燥させること(乾燥工程)、
を含み、
再生炭素繊維が、残留炭素成分を含み、この残留炭素成分の含有量が、再生炭素繊維に対して0重量%超5.0重量%以下であること、及び
再生炭素繊維の平均長さが1mm以上30mm未満であること、
を特徴とする。
【0015】
一般に、炭素繊維含有製品を成形する際に、フィーダーを用いて炭素繊維を押出成形器等に供給することができ、特に、定量フィーダーを用いて炭素繊維の定量供給を行うことができる。安定してかつ高い精度で成形品の製造を行うためには、炭素繊維の安定した供給が重要となる。
【0016】
炭素繊維のこのようなフィード性(供給性)は、炭素繊維と集束剤などとを混合・造粒して、特定の形状を有する炭素繊維集合体とすることによって改善することができる。例えば、炭素繊維集合体を、接触抵抗の少ない紡錘形の粒子形状とすることによって、炭素繊維集合体の流れ特性を向上させ、その結果、フィード性を向上させることができると考えられる。
【0017】
しかしながら、再生炭素繊維を原料としてこのような炭素繊維集合体を製造する場合に、フィード性に優れる紡錘形の形状を得ることは容易ではなかった。
【0018】
すなわち、再生炭素繊維は、通常、炭素繊維強化樹脂複合材料を熱分解することによって得られるため、樹脂材料に由来する一定量以上の残留炭素を有しており、そのため、繊維が互いに比較的強固に結合している。理論によって限定する意図はないが、造粒器(特に回転攪拌器)で加えられる応力ではこの結合状態をほぐすことが容易ではないので、バインダ含有液が繊維の間に浸透することができず、結果として、紡錘形の形状を有する炭素繊維集合体を得ることができないと考えられる。
【0019】
これに対して、本開示の方法では、炭素繊維集合体の原料として、残留炭素成分が5重量%以下である再生炭素繊維を用いる。理論によって限定する意図はないが、このような再生炭素繊維では、繊維が互いに比較的弱く結合している(又は結合していない)ので、造粒器などから加えられる応力の下で、バインダ含有液が繊維の間に浸透しやすいと考えられる。この場合には、流れ特性に優れる紡錘形の炭素繊維集合体を得ることができる。
【0020】
また、原料となる再生炭素繊維の長さも、フィード性に影響し得る。すなわち、原料となる再生炭素繊維の平均長さが短すぎる場合には、繊維同士が一方向に沿って配向することが容易ではなく、紡錘形の形状の炭素繊維集合体を得ることが難しいと考えられる。また、再生炭素繊維の平均長さが長すぎる場合にも、繊維同士が絡み合ってしまうため、繊維の均一な配向が容易ではなくなると考えられる。
【0021】
これに対して、本開示の方法では、再生炭素繊維の平均長さが1mm以上30mm未満となっているので、繊維の均一な配向が促進されると考えられる。
【0022】
以上のとおり、本開示に係る製造方法によれば、フィード性に優れる炭素繊維集合体を得ることができる。本開示に係る製造方法によって製造される炭素繊維集合体は、良好な流れ特性を有する紡錘形の粒子形状を有するので、例えば定量フィーダーに供給された場合に、定量フィーダーを閉塞させることなく、安定して定量供給することができる。
【0023】
<炭素繊維集合体>
本開示に係る方法で製造される炭素繊維集合体は、再生炭素繊維及びバインダから少なくとも構成される集合体である。炭素繊維集合体中で、再生炭素繊維が、バインダによって互いに結合している。
【0024】
炭素繊維集合体中のバインダの量は、好ましくは、炭素繊維集合体に対して、0.1重量~10重量%であり、特には、0.5重量%~8重量%、又は1重量%~6重量%であってよい。
【0025】
本開示に係る方法によって得られる炭素繊維集合体は、紡錘形の形状を有する。なお、紡錘形とは、中央部が太く、両端に向かって次第に細くなる形状を意味する。紡錘形の形状を有している炭素繊維集合体は、良好なフィード性を示す。理論によって限定する意図はないが、紡錘形の形状を有する炭素繊維集合体は、比較的小さい接触抵抗を有するので、フィーダーを閉塞させることなく比較的滑らかにフィーダー内を流れることができると考えられる。
【0026】
(繊維の配向)
本開示に係る方法で得られる炭素繊維集合体では、好ましくは再生炭素繊維が、紡錘形の長軸方向に沿って配向している。再生炭素繊維のこの配向は、炭素繊維集合体の長軸方向と同一(平行)である必要は必ずしもないが、実質的に平行であることが好ましく、より具体的には、再生炭素繊維の平均的な延在方向が、炭素繊維集合体の長軸方向に対して、45°以下、40°以下、30°以下、20°以下、10°以下、5°以下、2°以下、1°以下、0.5°以下、又は0.1°以下の角度を有する。
【0027】
炭素繊維集合体における繊維の平均的な延在方向は、炭素繊維集合体の長軸方向に平行な断面において、デジタルカメラ又は光学顕微鏡等を用いて決定することができる。
【0028】
(平均長さ)
炭素繊維集合体の平均長さは、1.5mm~60mmであってよい。好ましくは、炭素繊維集合体の平均長さが、1.8mm以上、2mm以上、3mm以上、4mm以上、5mm以上、6mm以上、7mm以上、8mm以上、9mm以上、10mm以上、11mm以上、若しくは12mm以上であり、かつ/又は、50mm以下、40mm以下、30mm以下、若しくは25mm以下である。炭素繊維集合体の平均長さが上記の範囲である場合には、良好なフィード性を得ることができる。
【0029】
炭素繊維集合体の平均長さは、目視でノギス等を用いて、又はデジタルカメラ若しくは光学顕微鏡などで取得された画像において、50個の炭素繊維集合体の長軸方向の長さを計測し、計測値を平均することによって、算出することができる。
【0030】
好ましくは、炭素繊維集合体の平均長さが、再生炭素繊維の平均長さの1.2倍~4.0倍である。
【0031】
特に好ましくは、炭素繊維集合体の平均長さが、再生炭素繊維の平均長さの、1.4倍以上、1.5倍以上、若しくは1.6倍以上であり、かつ/又は、3.5倍以下、若しくは3.0倍以下である。炭素繊維集合体の平均長さが上記の範囲である場合には、特に良好なフィード性を得ることができることがある。
【0032】
(アスペクト比)
炭素繊維集合体のアスペクト比は、2~20、若しくは3~15、又は特には4~10であることが好ましい。アスペクト比がこの範囲である場合には、形状安定性及びフィード性に特に優れる炭素繊維集合体を得ることができる場合がある。
【0033】
アスペクト比は、紡錘形の炭素繊維集合体の長径を短径で除した値であり、つまり長径/短径である。細長い度合いが増すにつれて、アスペクト比は高くなる。
【0034】
アスペクト比は、目視でノギス等を用いて、又はデジタルカメラ若しくは光学顕微鏡等を用いて、炭素繊維集合体の長径及び短径を測定し、長径/短径を計算することによって、得ることができる。なお、長径の方向に垂直な方向で最も大きい長さ(幅)を、「短径」とすることができる。
【0035】
<提供工程>
本開示に係る方法では、再生炭素繊維及びバインダ含有液から少なくとも構成される混合物を提供する。
【0036】
混合物中のバインダ含有液の量は、好ましくは20重量%~60重量%であり、特に好ましくは、25重量%~55重量%、又は30重量%~50重量%である。この場合には、バインダに含有される液体に起因して、再生炭素繊維が特に良好に集束する。また、この場合には、バインダに含有される液体の量が過度にならないことに起因して、乾燥処理の負荷を低減することができる。
【0037】
(再生炭素繊維)
再生炭素繊維は、炭素繊維集合体の原料であり、炭素繊維成分、及び残留炭素成分を含む。通常、再生炭素繊維中で、残留炭素成分は、炭素繊維成分の表面に付着している。
【0038】
再生炭素繊維は、特に限定されないが、例えば、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)などの炭素繊維含有プラスチック製品を熱処理することによって得られた再生炭素繊維であってよい。
【0039】
特に好ましくは、再生炭素繊維は、半導体熱活性法によって得られた再生炭素繊維である。すなわち、本開示に係る方法の特に好ましい実施態様は、炭素繊維含有プラスチック製品に含有されるプラスチック成分を、半導体熱活性法によって分解して、再生炭素繊維を製造すること、を含む。
【0040】
なお、「半導体熱活性法」(TASC法)は、半導体の熱活性(Thermal Activation of Semi-conductors、TASC)を利用してポリマーなどの被分解化合物を分解する方法である。炭素繊維含有プラスチック製品に含有されるプラスチック成分を半導体熱活性法によって分解して再生炭素繊維を製造する方法については、例えば、特許第4517146号、及び特開2019-189674号公報の記載などを参照することができる。
【0041】
(炭素繊維成分)
再生炭素繊維中の炭素繊維成分は、通常、再生炭素繊維の原料となった炭素繊維含有製品等に含有されていた炭素繊維に由来する。再生炭素繊維中の炭素繊維成分は、再生炭素繊維の製造の過程で熱処理等を受けることによって改質されていてもよい。
【0042】
再生炭素繊維中の炭素繊維成分は、例えば、PAN系炭素繊維、又はピッチ系炭素繊維であってよい。
【0043】
再生炭素繊維中の炭素繊維成分の形態は、特に制限されないが、複数の単糸(フィラメント)から構成される炭素繊維束の形態であってよい。炭素繊維束を構成するフィラメントの構成本数は、1,000本~80,000本、又は3,000本~50,000本の範囲であってよい。また、再生炭素繊維中の炭素繊維成分を構成するフィラメントの直径は、0.1μm~30μm、1μm~10μm、又は3μm~8μmであってよい。
【0044】
(残留炭素成分)
再生炭素繊維に含有される残留炭素成分は、特には、再生炭素繊維を製造する際に原料として用いた炭素繊維含有プラスチック製品に含まれていた樹脂に由来する残留炭素である。
【0045】
本開示に係る方法では、残留炭素成分が、再生炭素繊維に対して、0重量%超5.0重量%以下である。この場合には、フィード性が向上した炭素繊維集合体を得ることができる。
【0046】
また、残留炭素成分が0重量%超5.0重量%以下である場合には、炭素成分(特には炭)が比較的多いことによる汚染を回避することができ、また、炭素繊維集合体を材料として炭素繊維含有製品等を製造する際に異物となりうる炭素成分を低減することができ、また、炭素繊維含有製品中での繊維の均一な分布を向上させることができる。
【0047】
好ましくは、残留炭素成分は、再生炭素繊維に対して、4.0重量%以下、3.0重量%以下、又は2.0重量%以下である。残留炭素成分は、できるだけ低減されていることが好ましいが、再生炭素繊維に対して、0.1重量%以上、0.2重量%以上、0.4重量%以上、0.6重量%、0.8重量%以上、1.0重量%以上、若しくは1.2重量%以上であってもよい。
【0048】
再生炭素繊維中の残留炭素成分の含有量は、熱重量分析法(TGA法)によって計測することができる。
【0049】
熱重量分析法による残留炭素成分の計測は、下記の手順で行うことができる:
(i)再生炭素繊維を粉砕して得た1~4mgのサンプル片に対して、熱重量分析計において、0.2L/minの空気供給速度、5℃/minの加熱上昇率、及び1/6sの記録速度で、
室温から100℃への昇温、
30分間にわたる100℃での保持、
100℃から400℃への昇温、及び、
480分間にわたる400℃での保持
の工程を有し合計約600分間にわたる熱重量分析を行い、
(ii)重量減少率を時間に対してプロットしたグラフにおいて、傾きの変曲点を特定し、当該変曲点における重量減少率の値から、100℃での保持期間における重量減少率を差し引くことによって、残留炭素量を算出する。
【0050】
なお、上記の条件で傾きの変曲点を特定できない場合には、400℃で480分間にわたって保持する代わりに、400℃超500℃以下の範囲内の特定の温度で、480分間にわたって保持してもよい。
【0051】
また、再生炭素繊維がサイジング処理などによって樹脂を有している場合には、当該樹脂を除去した後で、上記の方法で残留炭素成分を計測することができる。
【0052】
(平均長さ)
再生炭素繊維は、1mm以上30mm未満の平均長さを有する。この範囲の長さを有する再生炭素繊維は、例えば、比較的長い寸法を有する再生炭素繊維を切断処理することによって得ることができる。再生炭素繊維の平均長さは、2mm以上、3mm以上、若しくは4mm以上であってよく、かつ/又は、29mm以下、28mm以下、27mm以下、26mm以下、25mm以下、24mm以下、23mm以下、22mm以下、21mm以下、若しくは20mm以下であってよい。特には、再生炭素繊維の平均長さが、8mm~25mm、又は9mm~20mmであってもよい。
【0053】
本開示に係る1つの実施態様では、再生炭素繊維の平均長さが、6mm超30mm未満、特には8mm以上25mm以下である。この場合には、炭素繊維集合体を用いて炭素繊維含有製品を製造する際に、強度などの物性に特に優れる炭素繊維含有製品を得ることができる場合がある。
【0054】
再生炭素繊維の平均長さは、目視でノギス等を用いて、又はデジタルカメラ若しくは光学顕微鏡などで取得された画像において、50本の再生炭素繊維の長さを計測し、計測値を平均することによって、算出することができる。
【0055】
(バインダ含有液)
バインダ含有液は、バインダ分散液又はバインダ溶液であり、バインダ、及び溶媒又は分散媒を含有する。
【0056】
(バインダ)
バインダは、炭素繊維集合体中で再生炭素繊維を集束させ、炭素繊維集合体の形状を保持する役割を有する。バインダは、特に限定されないが、好ましくは、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂である。より具体的には、バインダとしては、エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、エポキシ変性ウレタン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0057】
また、バインダとして、ベントナイト、リグニンスルホン酸塩、糖蜜、カルボキシメチルセルロース、コンニャク飛粉、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、でんぷんを挙げることもできる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができ、また、上記の樹脂と併用することもできる。
【0058】
(溶媒、分散媒)
溶媒又は分散媒は、バインダを溶解又は分散することができる液体であれば、特に制限されない。溶媒又は分散媒としては、水、アルコール(例えばメタノール又はエタノール)、ケトン(例えばメチルエチルケトン又はアセトン)、炭化水素(例えばシクロヘキサン、トルエン又はキシレン)、ハロゲン化炭化水素(例えばジクロロメタン)、アミド(例えばN-メチルピロリドン又はジメチルホルムアミド)、エーテル(例えばテトラヒドロフラン)が挙げられる。溶媒又は分散媒は、特に好ましくは、水である。
【0059】
本開示で用いるバインダ含有液は、例えば、バインダ及び溶媒又は分散媒から構成される比較的濃度の高い市販のサイジング剤に、溶媒又は分散媒をさらに添加することによって、調製することができる。特には、バインダ及び分散媒(特には水)を有するサイジング剤に、分散媒(特には水)を添加することによって、バインダ含有液を調製することができる。
【0060】
サイジング剤(及びサイジング剤に溶媒又は分散媒を添加したバインダ含有液)は、例えば、バインダが水に分散した水エマルジョンの形態であってよく、特には、水系ポリウレタンであってよい。
【0061】
サイジング剤中のバインダの濃度は、特に限定されないが、例えば、10~80重量%、20~60重量%、又は30~50重量%であってよい。
【0062】
バインダの量は、バインダ含有液に対して、0.1重量%以上、0.5重量%以上、1重量%以上、若しくは1.5重量%以上であってよく、かつ/又は、20重量%以下、15重量%以下、10重量%以下、8重量%以下、若しくは7重量%以下であってよい。バインダの量は、特に好ましくは、バインダ含有液に対して、1重量%~10重量%、又は2重量%~8重量%である。
【0063】
また、バインダの量は、再生炭素繊維に対して、0.1重量%~10重量%であることが好ましく、特に好ましくは、0.5重量%~8重量%、又は1重量%~7重量%である。
【0064】
(開繊)
再生炭素繊維に対して、あらかじめ開繊処理を行うことができる。開繊処理を行うことによって、繊維同士の絡まり合いを解消し、造粒工程において繊維同士が一方向に配向することを促進できる場合がある。
【0065】
開繊処理の方法は、特に限定されないが、例えば回転ブレードによって行うことができる。開繊のための回転ブレードは、造粒器中に備え付けられた補助ブレードであってよい。
【0066】
また、開繊処理は、高速攪拌によって行うこともできる。
【0067】
(混合)
再生炭素繊維及びバインダ含有液から混合物を得る方法は、特に限定されない。再生炭素繊維及びバインダ含有液は、混合物の形態で、造粒工程で用いる容器に投入することができる。例えば、再生炭素繊維の塊にバインダ含有液を注ぎ、随意に攪拌することによって混合物を得、この混合物を容器に投入してよい。あるいは、容器内に、再生炭素繊維及びバインダ含有液を別個に投入し、当該容器内で混合して混合物とすることもできる。混合と造粒を同時に行ってもよい。
【0068】
混合物中の再生炭素繊維及びバインダ含有液は、混合物内で均一に分布している必要は必ずしもない。造粒工程の間に混合物を攪拌し、均一性を向上させることができる。
【0069】
<造粒工程>
本開示に係る方法では、混合物を、容器中において、容器の内壁と容器内の回転体との間のクリアランスで転動させること(以下で、この処理を「造粒処理」と呼ぶこともある。)によって、紡錘形の前駆体を製造する。
【0070】
理論によって限定する意図はないが、再生炭素繊維及びバインダ含有液を含む混合物を、容器の内壁と容器内の回転体との間のクリアランスで転動させることによって、繊維が特定の方向に配向しつつバインダを介して互いに結合し、結果として、紡錘形の形状を有する前駆体を得ることができると考えられる。
【0071】
混合物を容器の内壁と容器内の回転体との間のクリアランスで転動させるための方法は、特に限定されない。このための例示的な方法について、図1を参照して下記に説明する。
【0072】
図1は、本開示で用いることができる攪拌造粒器の1つの実施態様の概略図である。図1の攪拌造粒器10は、容器としての円筒状の容器部12、及び、回転体としての攪拌ブレード14を有する。図1の攪拌造粒器10は、横型であり、通常の使用状態において、容器部12の開口部が、側方に向かって開口している。図1は、容器部の内部をのぞき込む視点で見た図である。容器部12の、開口部に対向する内壁(上記視点での奥側の壁)に、軸部16が取り付けられている。軸部16は、水平方向に延在している。この軸部16を中心にして、攪拌ブレード14が回転できるようになっている(なお、図1の例では反時計回り(「A」)だが、時計回りであってもよい)。すなわち、図1の攪拌ブレード14は、重力方向に平行な面内で回転するように構成されている。なお、図1には示されていないが、容器部12内に、繊維を開繊するための補助ブレードを設置することもできる。
【0073】
造粒処理では、容器部12中で回転する攪拌ブレード14によって、再生炭素繊維及びバインダ含有液を含む混合物が、随意に混合・攪拌され、容器部16の内壁と容器部12内の攪拌ブレード14との間の(図1で符号「C」で示される)クリアランスで転動される。
【0074】
造粒処理は、周囲雰囲気温度で、又は加熱して行うことができる。造粒処理は、例えば、1分~1時間、5分~20分、又は8分~15分にわたって行うことができる。
【0075】
(容器)
本開示の容器は、その中に混合物を保持し、かつ混合物に対して上記の造粒処理を行うことに適していれば、特に限定されない。容器は、剛性及び耐久性に優れる材料でできていることが好ましい。特に、容器の内壁は、混合物の転動の間に摩耗等を生じない材料でできていること、又はそのための表面処理をされていることが好ましい。
【0076】
本開示に係る1つの実施態様では、容器は、傾斜しておらず、実質的に水平方向に対して平行である。例えば、容器の内壁のうち重力方向で下方に位置する部分が、傾斜しておらず、実質的に水平方向に対して平行であってよい。
【0077】
(回転体)
回転体は、容器内で回転することによって、それ自体と容器の内壁との間で、再生炭素繊維及びバインダ含有液を含む混合物を転動することができるように構成されている。回転体は、例えば、容器内に設置された軸部に取り付けられ、当該軸部を中心として回転することができるように構成されている。
【0078】
回転体は、好ましくはブレード(羽根)の形態を有している。回転体は、特に好ましくは、攪拌ブレード(攪拌羽根)である。攪拌ブレードは、剛性及び耐久性に優れる材料でできていることが好ましく、特に、混合物の転動の間に摩耗等を生じない材料でできていること、又はそのための表面処理をされていることが好ましい。
【0079】
(クリアランス)
容器の内壁と回転体との間のクリアランスの大きさ、すなわち、容器の内壁と回転体との間の距離は、一定であってもよく、又は、連続的若しくは不連続的に種々の値であってもよい。
【0080】
容器の内壁と容器内の回転体との間のクリアランスの大きさ、すなわち、容器の内壁と回転体との間の距離は、炭素繊維集合体の所望のサイズなどに応じて適宜設定することができ、例えば1~10mmであってよい。
【0081】
(攪拌造粒器)
上記の容器及び回転体を有する装置として、公知の攪拌造粒器を用いることができる。攪拌造粒器は、特に限定されないが、例えばヘンシェル型の造粒器(ヘンシェルミキサー)、バグミル型の造粒器、又はアイリッヒ型の攪拌造粒器を用いることができる。攪拌造粒器は、縦型及び横型のいずれも用いることができる。
【0082】
(紡錘形の前駆体)
紡錘形の前駆体は、再生炭素繊維及びバインダを含有し、かつ、バインダ含有液に由来する液体(特には水)を含んでいる。下記の乾燥工程で、前駆体中の液体(特には水分)を除去することができる。
【0083】
<乾燥工程>
本開示に係る方法では、得られた紡錘形の前駆体を乾燥させる。
【0084】
前駆体を乾燥させる方法は、特に限定されず、得られた前駆体の水分率などに応じて、適宜、温度条件及び時間条件などを決定することができる。
【0085】
≪炭素繊維集合体≫
本開示は、下記の炭素繊維集合体を含む:
再生炭素繊維及びバインダから少なくとも構成される炭素繊維集合体であって、
再生炭素繊維の平均長さが、1mm以上30mm未満であること、及び、
炭素繊維集合体の平均長さが、1.5mm~60mmであること、
を特徴とする、
紡錘形の炭素繊維集合体。
【0086】
この炭素繊維集合体は、その形状に起因して、特に良好なフィード性を示す。この炭素繊維集合体を製造する方法は、特に限定されない。本開示に係る炭素繊維集合体は、例えば、本開示に係る方法によって製造することができる。この炭素繊維集合体の各構成要素に関しては、炭素繊維集合体の製造方法についての上記の記載を参照することができる。
【0087】
<嵩密度>
本開示に係る炭素繊維集合体は、好ましくは、50g/L以上、75g/L以上、若しくは100g/L以上、かつ/又は、500g/L以下、400g/L以上、300g/L以下、若しくは200g/L以下の嵩密度を有する。
【0088】
嵩密度は、下記のとおりにして計測することができる:
試料を、出口内径18mmの漏斗を用いて、63mmの高さから、内径63mmの200ml容器に流し入れて、山盛り状態にまで充填する。そして、すり切り容量での試料の重量を測定する。この重量と容器の容積とに基づいて、嵩密度を算出する。
【実施例0089】
以下で実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例は例示的なものであり、本願はこれに限定されない。
【0090】
≪実施例1≫
<材料の調製>
(再生炭素繊維)
再生炭素繊維としては、半導体熱活性法によって得た残留炭素量1.4重量%の再生炭素繊維を用いた。
【0091】
再生炭素繊維における残留炭素成分の量を、熱重量分析(TGA法)によって、下記のとおりにして決定した:
(i)再生炭素繊維を粉砕して得た1~4mgのサンプル片に対して、熱重量分析計において、0.2L/minの空気供給速度、5℃/minの加熱上昇率、及び1/6sの記録速度で、室温から100℃への昇温、30分間にわたる100℃での保持、100℃から400℃への昇温、及び480分間にわたる400℃での保持からなる工程を有する熱重量分析を、合計約600分間にわたって行い、
(ii)重量減少率を時間に対してプロットしたグラフにおいて、傾きの変曲点を特定し、当該変曲点における重量減少率の値から、100℃での保持期間における重量減少率を差し引くことによって、残留炭素の量を算出した。
【0092】
再生炭素繊維は、5mmの平均長さを有していた。
【0093】
(バインダ含有液)
バインダとしてのウレタン系樹脂5.05gに対して分散媒としての水297gを有するバインダ含有液を準備した。
【0094】
<造粒処理>
造粒処理のために、ヘンシェルタイプの横型攪拌造粒器(20Lレーディゲミキサー、マツボー社製)を使用した。この攪拌造粒器は、攪拌ブレードを有していた。攪拌ブレードは、攪拌造粒器の容器部の側方内壁に水平方向で取り付けられた軸部に接続し、この軸部を中心に回転するように構成されていた。また、攪拌ブレードは、容器部の内壁との間に、最小約2mm、最大約5mmのクリアランスを有するように構成されていた。
【0095】
攪拌造粒器は、繊維の開繊を促進するための補助ブレードも有していた。
【0096】
攪拌ブレードの回転の開始と同時に、攪拌造粒器の容器部に、500gの上記の再生炭素繊維、及び302gの上記のバインダ含有液を投入し、周囲雰囲気温度で、10分間にわたって、混合、及び造粒処理を行い、紡錘形の前駆体を得た。
【0097】
混合物中の水分率は、37.0重量%であった。攪拌ブレードの回転数は、320rpmであり、補助ブレードの回転数は、3000rpmであった。
【0098】
<乾燥処理>
得られた前駆体を、乾燥器中で乾燥して、実施例1に係る炭素繊維集合体を得た。
【0099】
<炭素繊維集合体>
実施例1に係る炭素繊維集合体の写真を図2及び図3に示す。これらの図で見られるとおり、実施例1に係る炭素繊維集合体は、紡錘形の形状を有していた。
【0100】
(バインダ含有量)
実施例1の炭素繊維集合体に対するバインダの含有量は、1.0重量%であった。
【0101】
(アスペクト比)
ノギスを用いて、実施例1の炭素繊維集合体の長径及び短径を計測し、炭素繊維集合体のアスペクト比(長径/短径)を算出した。短径は、炭素繊維集合体の幅が最大となる箇所で計測した。検体数50(N=50)について行った結果、アスペクト比は、7.5であった。
【0102】
(平均長さ)
ノギスを用いて検体数50(N=50)で計測したところ、実施例1に係る炭素繊維集合体の平均長さは、13.5mmであった。再生炭素繊維の平均長さは5mmであったので、炭素繊維集合体の平均長さは、再生炭素繊維の平均長さの2.7倍であった。
【0103】
(嵩密度)
実施例1に係る炭素繊維集合体の嵩密度を計測した。具体的には、試料を、出口内径18mmの漏斗を用いて63mmの高さから、内径63mmの200ml容器に流し入れて、山盛り状態にまで充填した。そして、すり切り容量での試料重量を測定した。この重量と容器の容積とに基づいて、嵩密度を算出した。その結果、嵩密度は、181g/Lであった。
【0104】
<フィード性の評価>
実施例1に係る炭素繊維集合体のフィード性を評価した。具体的には、実施例1に係る炭素繊維集合体を、容量式コイルフィーダ(CFD-111、テクノベル社製)に1g/minの供給量で供給し、フィード性を評価した。下記の表1では、10分間にわたって継続して供給を行うことができた場合を、「○」として記載している。
【0105】
実施例1に係る炭素繊維集合体の製造条件及び評価の結果を、下記の表1に示す。
【0106】
≪実施例2≫
バインダの量及び水分率を表1のとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2に係る炭素繊維集合体の製造及び評価を行った。表1に製造条件及び評価結果を示す。
【0107】
≪実施例3≫
バインダの量及び水分率を表1のとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3に係る炭素繊維集合体の製造及び評価を行った。表1に製造条件及び評価結果を示す。
【0108】
≪実施例4≫
再生炭素繊維の平均長さを10mmとしたこと以外は、実施例2と同様にして、実施例4に係る炭素繊維集合体の製造及び評価を行った。表1に製造条件及び評価結果を示す。
【0109】
≪比較例1≫
再生炭素繊維の平均長さを30mmとしたこと以外は、実施例2と同様にして、炭素繊維集合体の製造を試みた。しかしながら、造粒器中で再生炭素繊維が互いに絡まり、粒子状の炭素繊維集合体を得ることができなかった。製造条件及び結果を下記の表1に示す。
【0110】
≪比較例2≫
残留炭素量7.1重量%の再生炭素繊維を用いたこと以外は、実施例4と同様にして、炭素繊維集合体を製造した。
【0111】
比較例2に係る炭素繊維集合体の写真を、図4に示す。図4で見られるとおり、比較例2で得られた炭素繊維集合体は、平板状の形状を有しており、紡錘形の形状の炭素繊維集合体を得ることはできなかった。比較例2で得られた炭素繊維集合体の多くは、切断処理された再生炭素繊維の形状を保持したままであり、再生炭素繊維が互いに結合して束状になっていた。また、比較例2では、サイズが不均一な楕円形の粒子も見られた。製造条件及び結果を下記の表1に示す。
【0112】
【表1】
【符号の説明】
【0113】
10 攪拌造粒器
12 容器部
14 攪拌ブレード
16 軸部
A 回転方向
C クリアランス
図1
図2
図3
図4