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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156825
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】加飾部材
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/13 20060101AFI20221006BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20221006BHJP
【FI】
G02F1/13 505
B32B7/023
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060705
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】306026980
【氏名又は名称】株式会社タイカ
(72)【発明者】
【氏名】松見 恵佑
【テーマコード(参考)】
2H088
4F100
【Fターム(参考)】
2H088EA33
2H088GA06
2H088GA10
2H088KA02
2H088MA01
4F100AB01A
4F100AB02A
4F100AB04A
4F100AB10A
4F100AB17A
4F100AK04A
4F100AK07A
4F100AK12A
4F100AK15A
4F100AK21A
4F100AK23A
4F100AK25A
4F100AK42A
4F100AK45A
4F100AK46A
4F100AK70A
4F100AK74A
4F100AR00C
4F100AT00A
4F100AT00E
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100BA10D
4F100BA10E
4F100DC21C
4F100DD01A
4F100GB33
4F100GB48
4F100HB00B
4F100HB00D
4F100JA11C
4F100JN08C
4F100YY00C
(57)【要約】      (修正有)
【課題】意匠変化を制御でき、多様に意匠変化する加飾層を備えた加飾部材及びその製造方法の提供。
【解決手段】本発明の加飾部材1は、基材2の表面に、少なくとも絵柄層4と液晶型調光層5とをこの順で積層された加飾層3を備えた加飾部材であって、液晶型調光層は絵柄層の少なくとも一部に重なるように配置されるとともに、液晶型調光層は液晶層を有する調光セル部で構成され、調光セル部の少なくとも一部は調光特性が異なるもの、または液晶型調光層は液晶層を有する複数の調光セル部で構成され、複数の調光セル部の少なくとも一つは調光特性が異なるものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面に、少なくとも絵柄層と液晶型調光層とをこの順で積層された加飾層を備えた加飾部材であって、前記液晶型調光層は前記絵柄層の少なくとも一部に重なるように配置されるとともに、前記液晶型調光層は液晶層を有する一つの調光セル部で構成され、前記調光セル部の少なくとも一部は調光特性が異なることを特徴とする加飾部材。
【請求項2】
基材の表面に、少なくとも絵柄層と液晶型調光層とをこの順で積層された加飾層を備えた加飾部材であって、前記液晶型調光層は前記絵柄層の少なくとも一部に重なるように配置されるとともに、前記液晶型調光層は液晶層を有する複数の調光セル部で構成され、前記複数の調光セル部の少なくとも一つは調光特性が異なることを特徴とする加飾部材。
【請求項3】
前記液晶型調光層は前記調光特性が異なる複数の調光セル部が漸次的に異なるように配置されていることを特徴とする請求項2に記載の加飾部材。
【請求項4】
少なくとも一つの前記調光セル部の境界の少なくとも一部が他の調光セル部と非接触であることを特徴とする請求項2又は3に記載の加飾部材。
【請求項5】
前記調光セル部の少なくとも一つは、前記液晶層の厚みが異なることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の加飾部材。
【請求項6】
前記液晶層の厚みが漸次的に変化していることを特徴とする請求項5のいずれか一項に記載の加飾部材。
【請求項7】
前記絵柄層は複数の柄領域で構成され、前記柄領域に対応して前記液晶型調光層が配置されてなることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の加飾部材。
【請求項8】
前記液晶型調光層は前記絵柄層側とは反対側の面に第2の絵柄層を備えることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の加飾部材。
【請求項9】
前記加飾層の表面に保護層を備えることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の加飾部材。
【請求項10】
前記基材は表面に凹凸を有し、前記加飾層が前記凹凸の形状に沿って積層されていることを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の加飾部材。
【請求項11】
基材の表面に、少なくとも絵柄層と、一つの液晶セル部からなる液晶型調光層とをこの順で積層された熱可塑性の加飾層を備えた加飾部材の製造方法であって、
前記加飾層を備えた加飾フィルムを加熱して軟化させる熱軟化工程と、前記軟化した加飾フィルムの前記液晶セル部の少なくとも一部を伸長変形させる変形工程と、前記変形工程と同時または後に前記基材の表面に前記伸長変形した加飾フィルムを積層して液晶型調光層の調光特性を部分的に異ならせた加飾層を形成する積層工程と、を備えることを特徴とする加飾部材の製造方法。
【請求項12】
基材の表面に、少なくとも絵柄層と、液晶層を有する複数の調光セル部で構成され液晶型調光層と、をこの順で積層された熱可塑性の加飾層を備えた加飾部材の製造方法であって、
前記加飾層を備えた加飾フィルムを加熱して軟化させる熱軟化工程と、前記軟化した加飾フィルムの前記複数の調光セル部の少なくとも一つを伸長変形させる変形工程と、前記変形工程と同時または後に前記基材の表面に前記伸長変形した加飾フィルムを積層して前記液晶型調光層の調光特性を部分的に異ならせた加飾層を形成する積層工程と、を備えることを特徴とする加飾部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、意匠変化を制御可能な加飾層を備えた加飾部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加飾部材の新たなニーズとして意匠を変化させる加飾技術が検討されており、主に熱や光といった環境条件によって意匠が変化する加飾技術が提案されている。熱によって意匠変化する加飾技術として、例えば特許文献1には、射出成形物に装着して成形物が温度によって変色する視覚的な効果を有した加飾を行うためのインモールド用転写フィルムが開示されている。
【0003】
また、光によって意匠変化する加飾技術として、特許文献2には、紫外線の照射に応じて固有の着色を呈し、紫外線からの遮蔽に応じて無色を呈するという作用によって、環境に曝されても利用可能な程度の耐光性を備えたフォトクロミック装飾されたボディ部材が開示されている。
【0004】
これらの加飾技術は、インクの発色を熱や光で変化させて意匠を変化させるものであるが、近年では意匠変化を制御することによって、より多様な意匠表現できる加飾部材のニーズが高まっている。しかし、特許文献1や特許文献2の加飾部材は、いずれも意匠変化が外部からの熱や光といった環境条件に依存しているため、意図的に所望の状態の意匠へ変化させるように制御することは難しく、上述のニーズに対して十分に対応できなかった。
【0005】
この課題に対して、電気的な制御によって意匠が変化する加飾技術が提案されており、例えば特許文献3には、液晶などの調光機能を持つ層に透明導電膜フィルムを介して交流電圧を印加することによって、透明な状態と不透明な状態を電気的に制御し、かつ透明着色層を備えることで意匠性をもたせた調光フィルムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許5745700号公報
【特許文献2】特開2008-279425号公報
【特許文献3】特開2019-132927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献3の調光フィルムは、調光層が均一の調光特性であるため、透明着色層の明暗状態が変化して視認されるにとどまり、さらに多彩な変化に富んだ意匠を得ることにおいては改善の余地があった。従って、本発明は従来技術の上述した問題点を解消するものであり、その目的は、意匠変化を制御でき、多様に意匠変化できる加飾層を有する加飾部材と、その製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の加飾部材は、基材の表面に、少なくとも絵柄層と液晶型調光層とをこの順で積層された加飾層を備えた加飾部材であって、液晶型調光層は絵柄層の少なくとも一部に重なるように配置されるとともに、液晶型調光層は液晶層を有する一つの調光セル部で構成され、調光セル部の少なくとも一部は調光特性が異なるものである。
【0009】
液晶層を有する一つの調光セル部で構成され、調光セル部の少なくとも一部の調光特性が異なる液晶型調光層が絵柄層の表面側の一部または全面に積層された構成からなる加飾層とすることによって、液晶層の配向状態を制御して変化させたときに、液晶型調光層が配置された部分において調光セル部の部分的な調光特性の違いに対応して絵柄層の視認性が変化させることができるため、意匠変化を制御できるとともに、多様に意匠変化する加飾部材を得ることができる。なお、液晶型調光層は絵柄層の少なくとも一部に重なるように配置される形態としては、絵柄層に直接接しているものに限らず、絵柄層と非接触で配置される形態も含むものである。
【0010】
また、本発明の加飾部材は、別の形態として、基材の表面に、少なくとも絵柄層と液晶型調光層とをこの順で積層された加飾層を備えた加飾部材であって、液晶型調光層は絵柄層の少なくとも一部に重なるように配置されるとともに、液晶型調光層は液晶層を有する複数の調光セル部で構成され、複数の調光セル部の少なくとも一つは調光特性が異なるものである。
【0011】
複数の調光セル部で構成され、複数の調光セル部の少なくとも一つは調光特性が異なる液晶型調光層が絵柄層の表面側の一部または全面に積層された構成からなる加飾層とすることによって、各調光セル部の液晶層の配向状態を制御して変化させたときに、液晶型調光層が配置された部分において調光セル部ごとの調光特性の違いに対応して絵柄層の視認性を変化させることができるため、意匠変化を制御できるとともに、多様に意匠変化する加飾部材を得ることができる。
【0012】
また、本発明の加飾部材は、加飾層を構成する液晶型調光層が液晶層を有する複数の調光セル部で構成されており、調光特性が異なる複数の調光セル部が、調光特性が漸次的に異なるように配置されていることも好ましい。これにより、各調光セル部の液晶層の配向状態を制御して変化させたときに、液晶型調光層の調光特性を調光セル部の調光特性と配置構造で漸次的に変化させることができるので、絵柄層がグラデーション様に変化して視認されるように制御可能な加飾層を備えた加飾部材を得ることができる。
【0013】
また、本発明の加飾部材は、液晶型調光層が液晶層を有する複数の調光セル部で構成されており、少なくとも一つの調光セル部の境界の少なくとも一部が他の調光セル部と非接触であることも好ましい。これにより、絵柄層の所望の位置に調光特性が異なる調光セル部を配置して、各調光セル部の液晶層の配向状態を制御して変化させることによって、絵柄層の特定の絵柄領域に同調して視認性を制御して変化させることができるので、より多様な可変意匠の設計が可能となる。
【0014】
また、本発明の加飾部材は、調光セル部の少なくとも一つは、液晶層の厚みが異なることも好ましい。これにより、液晶型調光層は一つの調光セル部からなる場合においては、液晶層の厚みを部分的に異ならせるだけで、調光セル部内の一部の領域の調光特性を容易に異ならせることができ、液晶型調光層が複数の調光セル部からなる場合においては、液晶層の厚みが同じ構造の調光セル部同士であっても液晶層の厚みを変化させることによって容易に調光特性を異ならせることができるため、液晶層の配向状態を制御して変化させたときに、調光セル部の部分的な調光特性の違いに対応して絵柄層の視認性を変化させることができる加飾層を備えた加飾部材を容易に得ることができる。また、各調光セル部を構成する液晶層の成分を同一のものを適用して液晶層の厚みだけを変化させることで、容易に調光特性を変えることができるので、生産コストを抑えることもできる。
【0015】
また、本発明の加飾部材は、調光セル部の液晶層の厚みが漸次的に変化していることも好ましい。これにより、調光セル部単位で調光特性を漸次的に変化させることができるため、液晶層の配向状態を制御して変化させたときに、グラデーション様の変化を伴う独特な意匠変化する加飾層を備えた加飾部材を得ることができる。
【0016】
また、本発明の加飾部材は、絵柄層が複数の柄領域で構成され、柄領域に対応して上述の液晶型調光層が配置されてなることも好ましい。これにより、絵柄層を構成する柄領域に対応して絵柄層の視認性を液晶層の配向状態を制御して変化させることができるので、より絵柄層に同調して意匠が変化する加飾層を備えた加飾部材を得ることができる。
【0017】
また、本発明の加飾部材は、液晶型調光層が絵柄層側とは反対側の面に第2の絵柄層を備えることも好ましい。これにより、調光セル部の液晶層の配向状態を制御して変化させたときに、液晶型調光層の調光特性の変化に応じて絵柄層と第2の絵柄層が複合して変化する意匠が得られるので、より多様な意匠変化させることができる加飾層を備えた加飾部材を得ることができる。
【0018】
また、本発明の加飾部材は、加飾層の表面に保護層を備えることも好ましい。これにより、絵柄層または液晶型調光層を外部からの物理的もしくは化学的な劣化要因から保護することができる。
【0019】
また、本発明の加飾部材は、基材の表面に凹凸を有し、加飾層がその凹凸形状に沿って積層されていることも好ましい。これにより、視覚的な意匠効果だけでなく、加飾層に凹凸触感も付与することができる。
【0020】
また、本発明の加飾部材の製造方法は、基材の表面に、少なくとも絵柄層と、液晶層を有する一つの調光セル部からなる液晶型調光層とをこの順で積層された熱可塑性の加飾層を備えた加飾部材の製造方法であって、加飾層を備えた加飾フィルムを加熱して軟化させる熱軟化工程と、軟化した加飾フィルムの調光セル部の少なくとも一部を伸長変形させる変形工程と、変形工程と同時または後に基材の表面に伸長変形した加飾フィルムを積層して液晶型調光層の調光特性を部分的に異ならせた加飾層を形成する積層工程と、を備えている。これによって、熱軟化工程前における加飾フィルムが、液晶型調光層の調光特性が全面で均一である場合であっても、変形工程において容易に液晶型調光層の少なくとも一部の厚みを変化させることによって、調光特性を部分的に異ならせることができるので、調光セル部の液晶層の配向状態を制御して変化させたときに、調光セル部の部分的な領域の調光特性の違いに対応して絵柄層の視認性が変化する加飾層を備えた加飾部材を得ることができる。また、熱軟化工程前における加飾フィルムが液晶型調光層の調光特性が部分的に異なる場合には、熱軟化工程と変形工程による上記作用によって、さらに複合的に調光特性を異ならせた加飾層とすることができ、調光セル部の液晶層の配向状態を制御して変化させたときに、調光セル部の部分的な調光特性の違いに対応して絵柄層の視認性がより複雑に変化する加飾層を備えた加飾部材を得ることもできる。
【0021】
また、本発明の加飾部材の製造方法は、基材の表面に、少なくとも絵柄層と、液晶層を有する複数の調光セル部で構成され液晶型調光層と、がこの順で積層された熱可塑性の加飾層を備えた加飾部材の製造方法であって、加飾層を備えた加飾フィルムを加熱して軟化させる熱軟化工程と、軟化した加飾フィルムの複数の調光セル部の少なくとも一つを伸長変形させる変形工程と、変形工程と同時または後に基材の表面に伸長変形した加飾フィルムを積層して液晶型調光層の調光特性を部分的に異ならせた加飾層を形成する積層工程と、を備えている。これによって、熱軟化工程前における加飾フィルムが、調光特性が同じ調光セル部が複数組合わされて構成された液晶型調光層である場合であっても、変形工程において液晶型調光層を構成する少なくとも一つの調光セル部の液晶層の厚みを変化させることによって調光特性を容易に異ならせることができるので、調光セル部の液晶層の配向状態を制御して変化させたときに、液晶型調光層の部分的な調光特性の違いに対応して絵柄層の視認性が変化する加飾層を備えた加飾部材を得ることができる。また、熱軟化工程前における加飾フィルムが、少なくとも一つの調光セル部の調光特性が部分的に異なる液晶型調光層からなる加飾層を備えている場合には、本製造方法でさらに複合的に調光特性を異ならせた加飾層とすることができ、調光セル部の液晶層の配向状態を制御して変化させたときに、液晶型調光層の部分的な調光特性の違いに対応して絵柄層の視認性が変化する加飾層を備えた加飾部材を得ることもできる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の加飾部材は、絵柄層の表面側に液晶型調光層が積層された構成の加飾層を有し、液晶型調光層は液晶層を有する調光セル部で構成され、調光セル部の少なくとも一部は調光特性が異なる構造、または複数の調光セル部で構成され、複数の調光セル部の少なくとも一つは調光特性が異なる構造であるため、液晶型調光層の部分的な調光特性の違いに対応して絵柄層の視認性を制御して変化させることができるので、多様に意匠変化する加飾部材を得ることができる。また、本発明の加飾部材の製造方法は、少なくとも絵柄層と、液晶層を有する単数または複数の調光セル部で構成され液晶型調光層と、がこの順で積層された熱可塑性の加飾層を備えた加飾フィルムを加熱して軟化させる熱軟化工程と、軟化した加飾フィルムの複数の調光セル部の少なくとも一つを伸長変形させる変形工程と、変形工程と同時または後に基材の表面に伸長変形した加飾フィルムを積層して液晶型調光層の調光特性を部分的に異ならせた加飾層を形成する積層工程と、を備えており、熱軟化工程と変形工程によって、液晶型調光層の少なくとも一部の厚みを変化させることによって、調光特性を部分的に異ならせることができるので、調光セル部の液晶層の配向状態を制御して変化させたときに、調光セル部の部分的な領域の調光特性の違いに対応して絵柄層の視認性が変化する加飾層を備えた加飾部材を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1の実施形態に係る加飾部材の構造例を説明するための模式的な断面図である。
図2】本発明の加飾部材を構成する液晶型調光層の構造を例示する模式的な断面図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る加飾部材を構成する調光セル部の液晶層の厚みを変化させて調光特性を部分的に異ならせる構造例を説明するための模式的な断面図である。
図4】本発明の第2の実施形態に係る加飾部材の構造例を説明するための模式的な断面図である。
図5】本発明の第1の実施形態に係る加飾部材を構成する複数の調光セル部のうちの一つについて厚みを変化させて調光特性を部分的に異ならせる構造例を説明するための模式的な断面図である。
図6】本発明の第2の実施形態に係る加飾部材を構成する複数の調光セル部がそれぞれ異なった液晶層からなる構造例を説明するための模式的な断面図である。
図7】本発明の加飾部材を構成する液晶型調光層を構成する調光セル部が不連続に配置された構造例を説明するための模式的な断面図である。
図8】本発明の加飾部材を構成する加飾層の絵柄層が複数の柄領域から構成された構造例を説明するための模式的な断面図である。
図9】本発明の加飾部材を構成する加飾層が第2の絵柄層を備える構造例を説明するための模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る加飾部材は、基材の表面に、少なくとも絵柄層と液晶型調光層とがこの順で積層された加飾層を備えた加飾部材であって、液晶型調光層は絵柄層の少なくとも一部に重なるように配置されるとともに、液晶型調光層は液晶層を有する一つの調光セル部で構成され、調光セル部の少なくとも一部は調光特性が異なるものである。具体例として、図1に示す加飾部材1は、基材2の表面に絵柄層4、液晶型調光層5の順に積層された加飾層3を備えてなり、液晶型調光層5の中央付近の領域5bの厚みを領域5aよりも薄い構造とすることによって、領域5bの調光特性は領域5aと異ならせた例である。このような構造によって、調光セル部の液晶層の配向状態を制御して変化させたときに、調光セル部の部分的な調光特性の違いに対応して絵柄層4の視認性を変化させることができるので、加飾層3を制御して多様に意匠変化させることができる。なお、図1の加飾部材1を構成する加飾層3は、液晶型調光層5が絵柄層4の全面に配置された構造例であるが、絵柄層4の一部に配置した構造としてもよい。この構造例の場合には、液晶型調光層5は意匠性を持ったパターン形状であることがより好ましい。
【0025】
ここで、本発明における調光特性とは、遮光状態と透明状態との間で液晶の配向状態が変化した時の調光セル部の厚み方向における光透過率、光透過率の変化割合、光透過率の変化速度、の少なくとも一つである。このとき、同一の制御条件で遮光状態と透明状態との間で光透過性を変化させたときに、調光セル部の上記調光特性のいずれか一つが異なることを、「調光特性が異なる」と定義している。また、調光セル部の光透過率は、波長が380~780nm領域の可視光の全光線透過率(JIS K7105「プラスチックの光学的特性試験方法」準拠)として定義できる。
【0026】
(基材)
本発明の第1の実施形態に係る加飾部材1を構成する基材2は、特に限定されず、従来の加飾部材の基材として使用されている樹脂、金属、セラミック等の公知の材料を成形して形成される。樹脂としては、例えば、アクリロニトリル- ブタジエン- スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、アイオノマー樹脂、アクリル樹脂などが挙げられる。金属としては、例えば、鉄、銅、アルミニウム、ステンレス、これらの合金等が挙げられる。車両用の加飾部材用途では軽量性、機械強度などの観点から、基材2は、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体を含有する樹脂であることが好ましい。基材2の成形手段としては、射出成形や熱プレスなど公知の成形方法が適用できる。また、基材2の形状は特に限定するものではなく、所望の形状とすればよく、平面形状でも曲面形状でもよい。
【0027】
(絵柄層)
加飾層3を構成する絵柄層4は、公知の印刷インキを用いてグラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、インキジェット印刷などの直接的な印刷方法や、熱転写や昇華転写、水圧転写などの転写印刷など、公知の印刷法により形成された印刷パターンや、金属蒸着やメッキ等で形成される金属膜などを、単独または複合して絵柄が形成される。印刷インキとしては、例えば、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂等を成分とするインキを使用できる。金属膜を構成する金属としては、例えば、スズ、インジウム、クロム、アルミニウム、ニッケル、銅、銀、金、白金、亜鉛、及びこれらのうち少なくとも1種を含む合金などが挙げられる。絵柄層4の絵柄は、任意の絵柄を用いることができ、例えば、木目柄、石目柄、布目柄、抽象柄、幾何学模様等、或いはこれらの2種類以上の組み合わせ等を用いることできる。また絵柄層4は、模様を有しない着色された無地の透明または不透明の構成も包含する。
【0028】
(液晶型調光層)
加飾層3を構成する液晶型調光層5は、電極に印加する電圧により液晶層に含まれる液晶分子の配向状態を変化させて、入射した光を散乱する不透明状態と、入射した光を透過する透明状態とを切り替えて、絵柄層4の視認性を制御して変化させる作用を有した調光セル部であり、例えば図2に示すように、2枚の透明導電性樹脂フィルム5Faと5Fbのそれぞれの透明導電膜が形成された面で液晶層5Lを挟持して封入した構造例である。透明導電性樹脂フィルム5Fは、透明樹脂フィルム5B(5Ba、5Bb)の表面に透明導電膜5E(5Ea、5Eb)が形成されたフィルムであり、透明樹脂フィルム5Bとしては、例えばPMMA(ポリメタクリル酸メチル)などのアクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)などのセルロース誘導体、ポリエーテルサルフォン(PES)樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂などからなるフィルムを例示することができるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。また、透明樹脂フィルム5Bは、紫外線吸収剤,安定剤などが添加されてあっても良いし、透明樹脂フィルム5Bのいずれかの面に、紫外線吸収層,熱線反射層,バリア層などが設けられていてもよい。また、透明樹脂フィルム5Bには、適宜、易接着処理,帯電防止処理、などが施されてあってもよいし、更に補強基材などが設けられてあってもよい。透明導電膜5Eは、例えばインジウム錫酸化物(ITO)導電膜、酸化錫導電膜、アルミニウムドープ酸化亜鉛導電膜、高分子導電膜など公知の透明電極材料を適宜選択して適用できる。液晶層5Lは、三次元の網目状に形成された樹脂からなるポリマーネットワークの内部に形成された空隙内に液晶分子が配置されたタイプのPNLC(ポリマーネットワーク液晶)、またはポリマー中に分散配置される液晶分子を有するタイプのPDLC(高分子分散液晶)など公知の液晶材料を適用することができる。また、液晶層5Lとしては、ノーマルタイプとリバースタイプがあるが、用途に応じて何れかを適宜選択して適用できる。ノーマルタイプの液晶層は、適切な交流電圧が印加された状態では光散乱度(ヘイズ)が小さくなって透明状態となり、電圧が印加されていない状態ではヘイズが大きくなって不透明状態となる。一方、リバースタイプの液晶層は、その逆であり、ノーマルタイプより消費電力が小さく、また停電などで電圧が印加されない状態で透明になる。なお、図3の液晶型調光層5では、透明樹脂フィルム5Fが同一の成分及び厚さのものを適用したものとして、透明樹脂フィルム5F、液晶層5Lの図示を省略し、液晶型調光層5(調光セル部)の領域の厚みの違いは液晶層5Lの厚みの違いとして図示している。
【0029】
調光セル部の調光特性を部分的に異ならせるために液晶層5Lの厚みを変化させる構造は、加飾層3の意匠変化のさせ方に応じて適宜設定でき、例えば、図3(a)や図3(b)のように、厚さ方向に漸次的に変化させることによって、グラデーション的な視覚効果を部分的に伴って意匠変化する加飾層3とすることができる。また、液晶層5Lの厚みを部分的に変化させた別の形態として、複数の矩形様のエンボス構造となるようにして厚みを変化させてもよいし、厚みを変化させた複数の領域をドット状や格子柄などのパターン状に配置した構造としてもよい。このような形態することによって、厚み変化がパターン化された調光セル部と絵柄層4とが複合された意匠と、調光セル部の厚み変化パターンに対応した調光性変化とが融合した独特な意匠変化させることができる加飾層3を備えた加飾部材1が得られる。
【0030】
加飾層3を構成する液晶型調光層5と絵柄層4の組合せにおいて、絵柄層4が木目柄、石目柄、布目柄、抽象柄、幾何学模様等の模様を含む絵柄の場合には、液晶型調光層5の調光特性を制御して変化させることによって、絵柄の視認性を変えつつ、その変化の仕方を部分的に異ならせることで、絵柄を多様な意匠として可変表現される。また、絵柄層4が模様を有さない単色層や金属層とした場合には、絵柄層4を背景として調光特性が部分的に異なって変化する液晶型調光層5の明暗模様が可変意匠として視認される。
【0031】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る加飾部材は、被加飾基2の表面に、少なくとも絵柄と液晶型調光層とがこの順で積層された加飾層を備えた加飾部材であって、液晶型調光層は絵柄層の少なくとも一部に重なるように配置されるとともに、液晶型調光層は複数の調光セル部で構成され、複数の調光セル部の少なくとも一つは調光特性が異なるものである。具体例として、図4の加飾部材10は、基材2の表面に絵柄層4、液晶型調光層50の順に積層された加飾層30を備えてなり、液晶型調光層50は調光特性が同じである二つの調光セル部50aと、調光セル部50aとは異なる調光特性を有する調光セル部50bが二つの調光セル部50aの間に配置された3つの調光セル部で構成されたものである。この構成とすることによって、液晶層の配向状態を制御して変化させたときに、調光セル部ごとの調光特性の違いに対応して絵柄層4の視認性を変化させることができるので、加飾層30を多様に意匠変化させることができる。また、各調光セル部はなお、図4の加飾部材10を構成する加飾層30は、液晶型調光層50が絵柄層4の全面に配置された構造例であるが、絵柄層4の一部に配置した構造としてもよい。この構造の場合には、液晶型調光層50は意匠性を持ったパターン形状であることがより好ましい。
【0032】
調光セル部50bの調光特性を異ならせる具体的な構造例としては、液晶層5Lの成分を調光セル部50aと異ならせた構造や、液晶層5Lの厚み(調光セル層の厚み)を異ならせた構造が挙げられ、これらを単独または複合して適用すればよい。調光セル部の厚みを異ならせた形態の具体例として、図5(a)に示した加飾部材10は、基材2の表面に、絵柄層4と液晶型調光層50とがこの順で積層された加飾層30を備えており、液晶型調光層50は同一成分からなる液晶層で構成された2つの調光セル部50aと1つの調光セル部50b´とから構成され、調光セル部50b´の液晶層の厚さが調光セル部50aの液晶層の厚さよりも小さい構造例である。なお、図5(a)の液晶型調光層50を構成する調光セル部は、図2に示した調光セル部と同じ構造であって、透明樹脂フィルム5Fが同一の成分及び厚さのものを適用したものとして、透明樹脂フィルム5F、液晶層5Lの図示を省略し、調光セル部50aと調光セル部50b´との厚みの違いは各調光セル部の液晶層の厚みの違いとして図示している(後述する図5(b)、図6図9における調光セル部50b、50b´、52b´も同様)。この図5(a)の構造において、調光セル部50b´は、液晶層の配向状態が同じであれば、少なくとも光透過率が調光セル部50aよりも高くなる。逆に調光セル部50b´の液晶層の厚さを調光セル部50aの液晶層の厚さよりも大きくすれば、調光セル部50b´の光透過率は調光セル部50aよりも小さくできる。
【0033】
また、調光セル部における液晶層の厚みを異ならせた別の構造例として、図5(b)に示した加飾部材10は、基材2の表面に、絵柄層4と液晶型調光層50とがこの順で積層された加飾層30を備えており、液晶型調光層50は同一成分からなる液晶層で構成された2つの調光セル部50aと1つの調光セル部50b´とから構成され、調光セル部50b´の液晶層の厚さが両端部から中心に向かって漸次小さくなっている構造例である。この構造により、少なくとも光透過性が調光セル部50b´の厚さ方向に漸次的に変化するため、液晶層の配向状態を制御して変化させたときに、調光特性がグラデーション様に変化する作用を伴って絵柄層の視認性が変化して意匠変化する加飾層30とすることができる。
【0034】
また、液晶型調光層50は、調光特性が異なる複数の調光セル部が、調光特性が漸次的に異なるように配置されている構造であってもよい。具体例として、図6に示した加飾部材10は、基材2の表面に、絵柄層4と液晶型調光層51とがこの順で積層された加飾層31を備えており、液晶型調光層51は、それぞれ調光特性が順に異なる3つの調光セル部51a、51b、51cが、調光特性が漸次的に異なるように配置されている構造例である。この構造によって、液晶層の配向状態を制御して変化させたときに、液晶型調光層51の調光特性を漸次的に変化させることができるので、絵柄層がグラデーション様に変化して視認される加飾層31を備えた加飾部材10を得ることができる。
【0035】
さらに、液晶型調光層を構成する複数の調光セル部の少なくとも一つは、調光セル部の境界の少なくとも一部が他の調光セル部と非接触であってもよい。複数の調光セル部の境界の少なくとも一部が非接触な形態としては、調光セル部の境界の一部が他の調光セル部と隣接している形態や、調光セル部の境界全体が他の調光セル部と接触せずに離間して不連続配置される形態である。例えば、図7(a)に示した加飾部材10は、基材2の表面に、絵柄層4と液晶型調光層52とがこの順で積層された加飾層32を備えており、液晶型調光層52は液晶層の液晶成分と調光特性がともに同じである二つの調光セル部52aと、調光セル部52aよりも厚みが薄く調光特性が異なる調光セル部52b´とからなり、調光セル部52b´が二つの調光セル部52aの間に配置された3つの調光セル部が離間して配置された構造例である。また、図7(b)に示した加飾部材10は、液晶型調光層52が液晶層の液晶成分と調光特性がともに同じである二つの調光セル部52aと、調光セル部52aの液晶層とは異なる液晶成分からなって、調光セル部52aとは調光特性が異なる調光セル部52bからなり、調光セル部52bが二つの調光セル部52aの間に離間して配置された構造例である。これらのような構造とすることによって、絵柄層4の所望の位置(領域)に調光特性が異なる調光セル部を含む複数の調光セル部を配置できるので、各調光セル部の液晶層の配向状態を制御して変化させることによって、絵柄層4の特定の絵柄領域に同調して視認性を変化させることができる加飾層32を備えた加飾部材10となる。なお、調光セル部間の離間距離や配置パターンは、所望の意匠変化の作用に応じて適宜設定できる。
【0036】
第2の実施形態に係る加飾部材10を構成する基材2、絵柄層4、液晶調光層50、51、52を構成する調光セル部単体の構造の説明並びに調光特性の定義は、第1の実施形態と共通なので説明を省略する。
【0037】
また、本発明の第1の実施形態及び第2の実施形態に係る加飾部材において、加飾層を構成する絵柄層が複数の柄領域で構成され、柄領域に対応して調光セル部の調光特性が異なる領域、または複数の調光セル部のうち調光特性が異なる調光セル部が配置されていてもよい。例えば図8(a)の加飾部材1は、基材2の表面に、3つの柄領域40a、40b、40cからなる絵柄層40と、一つの調光セル部からなる液晶型調光層5と、がこの順で積層された加飾層33を備えており、液晶型調光層5は、柄領域40bに対応する液晶型調光層5の領域5bが窪んで領域5aと異なった調光特性となっている。また、図8(b)の加飾部材10は、3つの柄領域40a、40b、40cからなる絵柄層40の表面に、調光特性がそれぞれ異なる3つの調光セル部50a、50b、50cが隣接して配置された液晶型調光層50が積層されてなる加飾層34を備えており、各調光セル部は絵柄層40の各柄領域に対応して配置された構造例である。また、図8(c)の加飾部材10は、3つの柄領域40a、40b、40cからなる絵柄層40の表面に、液晶成分と調光特性がそれぞれ異なる3つの調光セル部52a、52b、52cが置換して配置された液晶型調光層50が積層されてなる加飾層34を備えており、各調光セル部は絵柄層40の各柄領域に対応して配置された構造例である。加飾層34をこのような構造とすることで、調光セル部の液晶層の配向状態を制御して変化させることによって、調光セル部の各領域、もしくは各調光セル部の調光特性と絵柄層40の各柄領域とが同調して視認性を変化させることができる加飾層34を備えた加飾部材10を得ることができる。また、この構造の応用として、絵柄層40が複数の柄領域で構成された第1の絵柄と、複数の柄領域で構成された別の第2の絵柄とが重複しないように配置された構造とし、第1の絵柄の各柄領域を覆うように複数の調光セル部で構成される第1の調光セル群を配置し、第2の絵柄の各柄領域を覆うように複数の調光セル部で構成される第2の調光セル群を配置した構造の液晶型調光層とすることにより、各調光セル群の調光性を個別に制御することで、第1の絵柄と第2の絵柄を切り換えて視認させることができる。この場合には、調光セル群を構成する複数の調光セル部の調光特性を同一として、第1調光セル群と第2の調光セル群とが調光特性が異なる構造としてもよいし、各調光セル群を構成する複数の調光セル部の一部を調光特性が異なる構造としてもよい。
【0038】
また、上記に例示した第1の実施形態並びに第2の実施形態を含む本発明の加飾部材は、液晶型調光層の絵柄層側とは反対側の面に第2の絵柄層を備える構成としてもよい。例えば、図9(a)に示した加飾部材1は、図1に示した第1の実施形態に係る加飾部材1において、液晶型調光層5の絵柄層4とは反対側の面に第2の絵柄層6が積層されて、絵柄層4と液晶型調光層5とともに加飾層35を構成し、基材2の表面に加飾層35が配置された構造例である。また、図9(b)に示した加飾部材10は、図4に示した第2の実施形態に係る加飾部材10において、液晶型調光層50の絵柄層4とは反対側の面に第2の絵柄層6が積層されて、絵柄層4と液晶型調光層50とともに加飾層36を構成し、基材2の表面に加飾層36が配置された構造例である。また、第2の絵柄層6は、図9(c)に示した加飾部材10のように、液晶型調光層50の表面の一部に形成する構成としてもよい。第2の絵柄層6は、少なくとも一部は液晶型調光層5(50)を介して絵柄層4を視認できるものであり、例えば不透明性のインクを用いて透視可能な厚みとした印刷パターンや、透過性を有するインクで形成されるカラークリア柄などが適用できる。また、絵柄層4と第2の絵柄層6とは、同一の絵柄としてもよいし、別の絵柄にしてもよい。第2の絵柄層6の成分や形成方法等は加飾層4と同様のものが適用できる。このような構成によって、絵柄層4と第2の絵柄層6が組合わされ、調光セル部の液晶層の配向状態を制御して変化させることによって、調光特性が変化する液晶型調光層5(50)と複合されて視認されることで、色・絵柄を様々に組み合わされて多様に変化する加飾層35(36)を備えた加飾部材1(10)を得ることができる。具体的な例として、絵柄層4が全面青色の無地、第2の絵柄層6が全面赤色の無地として、液晶型調光層5の光透過性が最大の状態から遮光状態に変化させることで、絵柄層4と第2の絵柄層6が混色して紫色として視認される意匠が、液晶型調光層5(50)の光透過性を減ずるにつれて、徐々に青味が減じて赤味が増し、液晶型調光層5(50)が完全に遮光状態になると第2の絵柄層6の赤色のみ視認する、というように意匠を変化させることができる。また、別の具体例として、絵柄層4が丸模様、絵柄層6が四角模様として、調光セル部の液晶層の配向状態を制御して液晶型調光層5(50)の調光作用を変化させることによって、丸模様の中に四角模様が浮かび上がるように意匠を変化させることができる。さらに各模様に色をつけることで、模様の変化と色の変化が複合された意匠として変化させることも可能となる。
【0039】
また、本発明の加飾部材の別の実施形態として、基材1が表面に凹凸を有し、加飾層がその凹凸に沿って積層された構成としてもよい。これにより、加飾層の視覚的な意匠変化する作用と凹凸触感とが複合された加飾部材とすることができる。
【0040】
また、本発明の加飾部材の更なる別の実施形態として、加飾層の上に保護層を備えてもよい。これにより、加飾層を物理的または化学的な外部要因から保護することができる。保護層は、用途に応じて、種々の耐傷性、耐薬品性、耐候性などの性能を備えたものとすればよい。また、保護層の材質としては、加飾層が視認できる程度の透明性を有していれば、特に限定せず、例えば、熱硬化系、紫外線硬化系など公知の材料が適用でき、保護層の性能に応じて適宜選択できる。熱硬化系の材料としては、例えばポリオール、ポリイソシアネートからなるポリウレタン系樹脂組成物などが適用でき、紫外線硬化系の材料としては、例えばアクリレート系樹脂組成物などが適用できる。
【0041】
また、本発明の加飾部材は、少なくとも基材と加飾層とが接着層(本発明においては粘着剤からなる粘着層も包含する。)で密着された構造としてもよい。接着層は、加飾層を構成する絵柄層、液晶型調光層、第2の絵柄層の任意の層間に接着層を介して積層させてもよく、この場合には、接着層は光透過性を有するものが選択される。接着層の成分は、特に限定されず、ウレタン系やアクリル系など公知のものを、接着層の適用位置や加飾部材の製法等に応じて適宜選択される。また、接着層を顔料等の添加で着色することにより、加飾部材の意匠性をさらに多様化させることができる。
【0042】
(加飾層の制御方法)
本発明の加飾部材は、加飾層を構成する液晶型調光層の調光セル部が各透明導電性樹脂フィルムを介して電気的に接続されており(図1図2~9においては図示省略)、公知の制御方法で電圧制御することによって液晶型調光層の調光特性を変化させることによって、加飾層の意匠を可変的に変化させる。このとき、液晶型調光層全体を一括して制御してもよいし、調光セル部または調光セル部群ごとに制御してもよい。
【0043】
(加飾部材の製造方法)
次に、本発明の加飾部材の製造方法について、図1に示した第1の実施形態に係る加飾部材に基づいて、具体的に説明する。
【0044】
(1)液晶型調光層の形成工程
透明樹脂フィルムの表面に透明導電膜を有する第1の透明導電性樹脂フィルムを準備し、第1の透明導電性樹脂フィルムの透明電極膜の表面側の周縁部にシール用部材を公知の材料と方法で形成したのち、シール用部材で囲まれた領域内に液晶組成物を公知の充填方法で充填する。次に透明樹脂フィルムの表面に透明導電膜を有し、透明導電膜側に矩形状の凸部が形成された形状の第2の透明導電性樹脂フィルムを準備し、透明導電膜側が液晶組成物と接するように積層して、領域5bの液晶層厚みを小さくして部分的に調光特性が異なる液晶型調光層5を得る。
(2)加飾層の形成工程
次に液晶型調光層5の片面に絵柄層4を公知の手段で形成して加飾層3を形成する。なお、絵柄層4は、液晶型調光層5の形成工程において、第1の透明導電性樹脂フィルムの透明電極膜と反対側の面にあらかじめ形成しておいてもよく、この場合には、液晶型調光層の形成工程の完了と同時に加飾層3の形成工程が進行する。
(3)加飾層の積層加工工程
加飾層3を必要に応じて接着層を介して基材2の表面に積層して加飾部材1を得る。
【0045】
液晶型調光層5の形成工程の別の実施形態として、第1の透明導電性樹脂フィルムと第2の透明導電性樹脂フィルムの間に高さが異なる透明スペーサを配置して液晶組成物を充填することによって、調光セル部の一部の領域の液晶層厚みを変化させて、調光特性が異なる調光セル部を形成してもよい。
【0046】
また、図4に例示した第2の実施形態に係る加飾部材のように、液晶型調光層が複数の調光セル部で構成されている場合には、次のようにして液晶型調光層を形成することができる。まず、上述の第1の透明導電性樹脂フィルムの透明電極膜の表面側に、調光セル部の境界壁となる光透過性を有する所定高さのスペーサを公知の材料と方法を用いて形成して複数の領域に区画する。次にスペーサで区画された各領域内に液晶組成物を公知の充填方法で充填する。このとき調光セル部50aと調光セル部50bに対応する区画内には、それぞれ調光特性が異なる液晶組成物を充填する。次に必要に応じて第1の透明樹脂フィルムの周縁部にシール用部材を公知の材料と方法で形成したのち、上述の第2の透明導電性樹脂フィルムを透明電極膜側が液晶組成物と接するように積層してスペーサと密着させて各区画内に液晶組成物を密封し、調光セル部50aの調光特性と調光セル部50bの調光特性とが異なる液晶型調光層50を得る。また、この応用例として、スペーサで区画する際に、調光する領域と調光しない領域とが所望の配置になるようにそれぞれ区画し、次に調光する領域のみに液晶組成物を充填し、液晶組成物が充填されていない領域には、透光性を有する樹脂等を充填し、その後に調光する領域と調光しない領域とを一括で第2の透明導電性樹脂フィルムを積層して各領域内を密封することによって、図7(b)に示した加飾部材10のような調光セル部が離間して配置されてなる液晶型調光層52を形成することもできる。
【0047】
また、図7に示した実施形態に係る加飾部材を製造する別の方法として、上記の調光セル部の形成方法を用いて、予め調光特性が異なる調光セル部52aと調光セル部52bを個々に形成しておき、被加飾部材2の表面に公知の方法で形成された絵柄層4の表面に、予め形成しておいた各調光セル部52a、52b(52b´)を必要に応じて接着層を介して離間する配置で積層して、加飾部材10を得ることもできる。
【0048】
また、加飾層の液晶型調光層を構成する調光セル部の厚みを異ならせて、部分的に調光特性が異なる液晶型調光層を備えた加飾部材を製造する更なる別の実施形態として、透明導電膜を有する熱可塑性の透明導電性樹脂フィルムを用いて形成された単数または複数の調光セル部からなる液晶型調光層と絵柄層と粘着層とを含んでこの順に積層された加飾フィルムを準備し、この加飾フィルムを加熱して軟化させる熱軟化工程と、軟化した加飾フィルムの液晶型調光層の少なくとも一部を面方向または厚み方向に伸長変形させる変形工程と、変形工程と同時または後に基材の表面に伸長変形した加飾フィルムを積層して液晶型調光層の調光特性を部分的に異ならせた加飾層を形成する積層工程、の順に従って、加飾部材を製造してもよい。なお、加飾フィルムの液晶型調光層が液晶層を有する複数の調光セル部で構成されている場合には、変形工程は軟化した加飾フィルムの複数の調光セル部の少なくとも一つを伸長変形させる工程としても機能する。
【0049】
変形工程において、軟化した加飾フィルムの液晶型調光層を引き延ばして部分的に厚みを変化させる手段は特に限定されず、例えば、加飾フィルム全体を面方向に引き延ばす方法や、引き延ばしたい部分に押圧子を押し当てて部分的に加飾フィルムを引き延ばす方法などが適用できる。また、加飾フィルムを積層する側の面に曲面部や凹凸部を有する基材を用いる場合には、加飾フィルムを熱で軟化させた状態で、基材の曲面部や凹凸部に沿わせて貼り付けることによって、際に、曲面部や凹凸部によって熱軟化した加飾フィルムを引き延ばし、基材の曲面部や凹凸部に対応して液晶型調光層の厚みを薄くして調光特性を部分的に変化させた加飾層を形成する変形工程を積層工程と同時に実施して加飾部材を形成してもよい。これらの製法が有効な具体的な加工手段としては、真空成形、TOM工法やNGF工法に代表される三次元表面加飾成形が適用できる。また真空成形を適用する場合には、真空成形した加飾フィルムを金型内に配置し、基材となる熱溶融した樹脂を金型内に射出して加飾フィルムと一体成形して加飾部材を製造することもできる。
【0050】
以上述べた実施形態は、全て本発明を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は他の種々の変形態様及び変更態様で実施することができる。従って本発明の範囲は特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の加飾部材は、絵柄層の視認側に単一または複数の調光セル部からなる液晶型調光層を有してなる加飾層を基材の表面に備えており、その液晶型調光層の調光特性を制御することにより可変的な意匠を付与できるとともに、一部の調光セル部または調光セル部内の一部の領域の調光特性を異ならせているので、調光セル部の液晶の配向状態を制御して多様で可変的に意匠を変化させることができるので、新規な機能性意匠部材として、自動車の内装加飾パネルや家電製品、外装筐体などへ利用できる。
【符号の説明】
【0052】
1、10 加飾部材
2 基材
3、30、31、32、33、34 加飾層
4、40 絵柄層
5、50、51、52 液晶型調光層
50a、51a、52a、53a、54a 調光セル部
5b、50b、51b、52b、53b、54b、5c 異なる調光セル部
5Ba、5Bb 透明樹脂フィルム
5Ea、5Eb 透明導電膜
5Fa、5Fb 透明導電性樹脂フィルム
5L 液晶層
6 第2の絵柄層


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9