(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156827
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】茶葉の香味改善方法
(51)【国際特許分類】
A23F 3/14 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
A23F3/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060708
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】303044712
【氏名又は名称】三井農林株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大野 敦子
【テーマコード(参考)】
4B027
【Fターム(参考)】
4B027FB08
4B027FC01
4B027FC02
4B027FK02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】茶葉に特有の異味異臭を除去し、嗜好性の高い茶葉を製造する方法、該茶葉、および茶葉の香味改善方法を提供する。
【解決手段】茶葉にホトリエノールを添加することにより、酸化臭(古紙臭・酸化した油臭)、後口に残る雑味(酸味、えぐ味、収斂味、後切れの悪さ)をマスキングし、さらに爽快な香りを付与することを特徴とする茶葉の香味改善方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
茶葉に対して、ホトリエノールを30ppm以上200ppm以下となるように添加することを特徴とする茶葉の製造方法。
【請求項2】
前記茶葉が紅茶葉である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記茶葉のカフェイン含有量が0.5質量%以下である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
カフェインが0.5質量%以下およびホトリエノールが30ppm以上200ppm以下含有することを特徴とする茶葉。
【請求項5】
茶葉が紅茶葉である請求項4に記載の茶葉。
【請求項6】
ホトリエノールを添加することを特徴とする茶葉の香味改善方法。
【請求項7】
ホトリエノールを茶葉に対して、30ppm以上200ppm以下のとなるように添加することを特徴とする請求項6に記載の茶葉の香味改善方法。
【請求項8】
前記茶葉のカフェイン含有量が0.5質量%以下である請求項6または7に記載の茶葉の香味改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホトリエノールを茶葉に添加させることにより調製された茶葉、及び茶葉の香味改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
茶葉から淹れるお茶は、ペットボトルや缶入りの容器詰め茶飲料にはない淹れたての味わいを楽しむことができる。また近年、マイボトルに入れて移動や外出時等に携帯し水分補給や休憩時に飲用するなどして広く利用されている。
【0003】
茶葉は貯蔵中に香気成分が変化することが知られている。例えば、非特許文献1では、トランス-2,シス-4-ヘプタジエナール(trans-2,cis-4-heptadienal),トランス-2、トランス-4-ヘプタジエナール(trans-2,trans-4-heptadienal)のような油様の刺激臭が発生し、特に番茶では5℃で貯蔵しても生成し、貯蔵中の匂いの変化を防止できないこと、また、リノレン酸は番茶や下級煎茶のように硬化した茶葉から製造されたものに多く含まれ、リノレン酸の自動酸化により、2,4-へプタジエナールが貯蔵中に多く生成することが想定されること、この化合物は油様の刺激臭をもち、番茶や下級煎茶の貯蔵臭の原因物質の一つと考えられていることが開示されている。非特許文献2、3には、2,4-へプタジエナールが油様の刺激臭や不快な香りを有していることが開示されている。また、非特許文献4には、脂質の分解と酸化によって生成する油様の香りを有する2,4-へプタジエナール、2,4-デカジエナールが一番茶より三番茶により多く検出されたことが開示されている。これらの文献から、番茶や下級煎茶等のようないわゆる低級な茶葉で淹れた場合、同時に不快臭も抽出され、味に影響を及ぼしていると予想される。
また、低カフェイン処理を施した茶葉は、例えば、荒茶の製造時に生葉を熱水に浸漬してカフェインを溶脱させる方法(特許文献1)、超臨界二酸化炭素により抽出除去する方法(特許文献2)などにより製造されるが、特許文献1では、生葉を熱水に浸漬させてカフェインを溶脱させるので、カフェインと共に渋みの構成成分であるカテキンや旨みの構成成分であるアミノ酸などの有用成分が損失してしまう。また、特許文献2の超臨界二酸化炭素によりカフェインを抽出除去する方法では、カフェインと共に揮発性の香気成分が損失してしまい、香味の点で課題がある。
【0004】
茶葉から淹れるお茶(抽出液)の香味は、茶葉が本来有する渋味、香りの要素のバランスがとれていることが好ましいとされているが、上述したように番茶や下級煎茶のような低級の茶葉や低カフェイン処理された茶葉などはこれらの要素を満たすことができず、特に飲用時に不快な酸化臭や後から感じる渋味や酸味・えぐ味・収斂味が強く感じられ、香味の点で満足できるものではない。
【0005】
これまでに、茶葉の香味劣化を抑制する手段としては、低品位茶の香味改善のためにアスコルビン酸等の水溶液に茶葉を浸漬する方法(特許文献3)、緑茶の香味改善方法としては、E-2-ヘキセナール及びリナロールを添加する方法(特許文献4)、苦渋味を抑制した高香味茶葉を得るために茶葉を加熱する方法(特許文献5)、茶の苦渋味低減を目的として低酸素雰囲気下で茶葉を貯蔵する方法(特許文献6)が開示されている。また、低カフェイン処理された茶葉の香味改善方法に関しては、茶葉を火入れ処理する方法(特許文献7)、茶葉に含まれるテアニンと繊維量に対する単糖類含有量の質量割合を調整する方法(特許文献8)が開示されている。
【0006】
ところで、ホトリエノールは、紅茶、高級烏龍茶に多量に含まれていることが、非特許文献5~7に記載されている。また、特許文献9には、3,7-ジメチル-1,5(E),7-オクタトリエン-3-オール(ホトリエノール)を香料組成物として飲料に添加することによって、自然で天然感のある香気を賦与する方法が、特許文献10には、ホトリエノールが加熱後にも保持された茶飲料として、ホトリエールとアスコルビン酸類を含有し、ホトリエールの含有量が10ppb以上である茶飲料が開示されている。
さらに、ホトリエノールの生理機能効果として、自律神経調節効果(特許文献11)、睡眠改善効果(特許文献12)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7-135902
【特許文献2】特開平1-289448
【特許文献3】特開2013-252128号公報
【特許文献4】特公表2009-523016号公報
【特許文献5】特開2008-206425号公報
【特許文献6】特開2001-145456号公報
【特許文献7】特開2016-182115号公報
【特許文献8】特開2011-155893号公報
【特許文献9】特開2000-192073号公報
【特許文献10】特開2009-089641号公報
【特許文献11】特開2019-163248号公報
【特許文献12】国際公開第2020/059080号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】原利夫、他1名,緑茶の貯蔵中の香気成分の変化、日本農芸化学会誌、1982年、第56巻、第8号、p.625-630
【非特許文献2】小柳津勤、他3名、茶芽の熟度による緑茶香気成分の変化」、日本食品科学工学会誌、2002年5月、 第49巻、第5号2002年5月p327-334
【非特許文献3】Shimoda,M.et al.,Comparison of Volatile Compounds among Different Grades of Green Tea and Their Relations to Odor Attributes」,J.Agric.Food Chem. 1995,43,p1621-1625
【非特許文献4】Kumazawa,K.,et al., Influence of Manufacturing Conditions and Crop Season on the Formation of 4-Mercapto-4-methyl-2-pentanone in Japanese Green Tea (Sen-cha),J.Agric.Food Chem.2005,53,p5390-5396
【非特許文献5】伊奈和夫、他3名共編、「茶の化学成分と機能」、弘学出版、2002年1月30日発行、p49
【非特許文献6】Ogura,M.,et al.,Identification of Aroma Components during Processing of the Famous Formosa Oolong Tea “Oriental Beauty”,ACS Symposium Series Vol.988,2008 Food Flavor Capter 8,p87-97
【非特許文献7】Kawakami,M.,他3名, Aroma Composition of Oolong Tea and Black Tea by Brewed Extraction Method and Characterizing Compounds of Darjeeling Tea Aroma,J.Agric.Food Chem.1995,43,p200-207
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
茶葉の香味を改善する方法は上記のようないくつかの方法が開示されている。しかしながら、これらの方法では次のような欠点がある。特許文献3,5~7の方法では、茶葉を酵素反応させる工程や、低温での貯蔵工程、加熱工程が必要である。また特許文献8は茶葉の特定の成分を調整しなければならない。特許文献4は緑茶に限定されているものであり、紅茶や烏龍茶のような発酵茶にも適応できるものではない。従って、これらの方法では、下級茶葉やデカフェ茶の香味(渋味、香り、特に茶葉から淹れた際に後口に残る雑味(酸味・えぐ味・収斂味・後切れの悪さ))を解決するためには十分ではなかった。特に、これらの茶葉で淹れた抽出液を容器で保管して冷めた状態ではより一層渋味や雑味を感じやすいが、これまでの方法では解決できなかった。また、別途製造工程や特別な装置を必要とするため、より簡便な改善方法が求められていた。
【0010】
したがって、本発明の課題は、茶本来の香味を有する嗜好性の高い茶葉およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、茶葉にホトリエノールを添加したところ、該茶葉で淹れた飲料の香味において、酸化臭や飲用時に後から感じる渋味や酸味・えぐ味・収斂味が抑えられることを見出した。さらに、爽快な香りが付与され、冷めても保持されることを見出し、本発明の完成に至った。
【0012】
すなわち、本発明は、
[1]茶葉に対して、ホトリエノールを30ppm以上200ppm以下となるように添加することを特徴とする香味が改善された茶葉の製造方法。
[2]前記茶葉が紅茶葉である[1]に記載の製造方法。
[3]前記茶葉のカフェインの含有量が0.5質量%以下である、[1]又は[2]に記載の製造方法。
[4]カフェインが0.5質量%以下及びホトリエノールが30ppm以上200ppm以下含有することを特徴とする茶葉
[5]茶葉が紅茶葉である[4]に記載の茶葉
[6]ホトリエノールを添加することを特徴とする茶葉の香味改善方法
[7]ホトリエノールを茶葉に対して、30ppm以上200ppm以下のとなるように添加することを特徴とする[6]に記載の茶葉の香味改善方法
[8]前記茶葉とはカフェイン0.5質量%以下である[6]または[7]に記載の茶葉の香味改善方法
を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の製造方法によれば、保管により酸化が進んだ茶葉、あるいはデカフェ処理した茶葉や下級茶葉で淹れた茶飲料(抽出液)の古紙臭や油臭なとの酸化臭、後から感じる雑味(酸味・えぐ味・収斂味・後切れの悪さ)を抑制しながらも、爽快な香味を有する茶葉を提供することが可能である。また、茶葉から淹れた飲料が冷めても、また保温容器で保管されたものについても、同様の効果が得られることが確認でき、多様なシーンで利用できる茶葉を提供することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明において「%」とは、質量%を指す。また、「下限値~上限値」の数値範囲は、特に他の意味であることを明記しない限り、「下限値以上、上限値以下」の数値範囲を意味する。
本発明における茶葉の香味改善とは、時間が経って酸化したような臭いである古紙臭や酸化した油臭を示す酸化臭や、後口に残る雑味(酸味・収斂味・えぐ味、後切れの悪さ)がマスキングされて、爽快な香り(茶葉の新鮮な香りのような爽やかな香り)に優れ、全体として香味のバランスに優れていることを示す。
本発明における香味とは、飲料(茶抽出液)を口に含んだ時、飲み込んだ時、または飲み込んだ後に感じる味と香りを意味する。
【0015】
本発明における原料茶葉は、チャノキ(学名:Camellia sinensis)の葉や茎などの摘採物を原料として製造された茶葉であり、荒茶と呼ばれる一次加工品だけでなく、仕上茶と呼ばれる二次加工品も利用することができる。また、茶葉の種類としては例えば、緑茶や花茶等の不発酵茶、烏龍茶等の半発酵茶、紅茶等の完全発酵茶、プアール茶などの後発酵茶などの荒茶や仕上茶を挙げることができる。中でも、紅茶葉を使用することが好ましく、ダージリン、アッサム、ニルギリ、ディンブラ、ウバ、ヌワラエリア、ケニア、キーモン等の紅茶葉を1種あるいは2種以上の茶葉をブレンドしたものを原料として使用できる。また、やぶきた、べにほまれ、べにひかり、べにふじ、べにふうきなどの品種から加工された日本産紅茶葉を使用してもよい。さらに、アールグレイやジャスミン茶等のフレーバーティーも適応可能である。これらはいずれも一般的に流通している茶葉を本発明の香味改善方法、または製造方法に使用することができる。また、緑茶葉の場合は、二番茶、三番茶、秋冬番茶であるいわゆる下級、低品位とされる茶葉がより顕著に香味改善効果が期待できる。
【0016】
超臨界二酸化炭素処理、または熱水シャワーによる低減方法等でカフェインを低減した茶葉(以下デカフェ茶葉ともいう)を使用してもよい。例えば、超臨界二酸化炭素でカフェインを低減させる方法は、特許文献2または7(特開平1-289448、特開2016-182115)の方法が例示できる。この方法によれば、一般的な茶葉中に乾燥重量ベースで2~4%程度含有されるカフェインを、0.001~0.5%程度に低減することができる。また、茶生葉をシャワーや熱水に浸漬させてカフェインを溶脱させる方法では、特許文献1の方法が例示できる。デカフェ茶葉はこれらの工程により茶葉独特の香りや滋味が損失されるため、本発明の方法により、顕著に香味改善効果が期待でき、酸化臭や雑味が抑制されて、かつ茶葉の爽快な香りを味わうことができる。また、これらの効果は液温が冷めても保持することができる。
本発明の原料茶葉の茶葉の形状は、茶葉のサイズが細かいものほど酸化の影響を受けやすいので、本発明の効果が顕著である。特に紅茶葉では、ティーバッグ用に使用される粒子が細かい茶葉、例えばBOP,CTCが挙げられえる。緑茶、ウーロン茶でも同様に茶葉のサイズが細かいティーバッグ用の茶葉を採用することができる。
【0017】
また、過熱水蒸気による気流式殺菌を施した茶葉を用いてもよい。過熱水蒸気による気流式殺菌方法は、特開平11-056238に開示されている方法が例示できる。この方法によれば、茶葉の持つ香りや風味の逸散を抑えることができるとの記載があるものの、高温の水蒸気に接触するため、香りが損失しやすく、酸化臭や雑味の発生は抑制することはできない。この方法によって殺菌された茶葉を本発明の茶葉として使用することによって、一般家庭用の水出し用ティーバッグとして、また工業的にはコールドブリュー等の低温での抽出用として使用することができ、酸化臭、雑味が抑制され、爽快な香りが味わうことができる茶葉を製造することができる。
【0018】
本発明に係る原料茶葉は、茶葉の水分量が5%以下である荒茶、仕上茶、あるいは製茶された茶葉が好ましい。また、茶葉に含まれる茶ポリフェノール、カフェイン、没食子酸は、以下に示す含有量であることが好ましい。
【0019】
本発明の原料茶葉のうち、デカフェ処理されていない茶葉のカフェイン含有量は、乾燥重量ベースで1.0~4.0質量%が好ましく、1.5~3.0質量%がより好ましい。
本発明における原料茶葉であるデカフェ茶葉のカフェイン含有量は、乾燥重量ベースで0.5質量%以下である。好ましくは0.001質量%以上0.4質量%以下であり、なかでも0.005質量%以上0.3質量%以下が好ましく、0.01質量%以上0.1質量%以下がさらに好ましい。なお、本発明における茶葉中カフェイン含量とはHPLC法で定量した値を採用する。詳細な条件は、本明細書の実施例の項に記載する。
【0020】
本発明の原料茶葉の茶ポリフェノール含有量は乾燥重量ベースで、5.0質量%以上20.0質量%以下である。香味の観点から、8.0質量%以上15.0質量%以下が好ましい。特にデカフェ処理した茶葉の場合は、茶ポリフェノール含有量は、特にカフェイン含有量に対して、好ましくは10~25000倍、より好ましくは25~4000倍、さらに好ましくは50~1000倍である。なお、茶ポリフェノールの分析条件は「七訂 日本食品標準成分表2015年版(七訂)分析マニュアル・解説」(文部科学省監修、建帛社、2016年2月発行)に記載の酒石酸鉄吸光光度法を採用する。詳細な条件は、本明細書の実施例の項に記載する。
【0021】
また、本発明の原料茶葉は没食子酸を含み、その含有量は乾燥重量ベースで、0.03質量%以上20.0質量%以下であることが好ましい。特に香味の観点から、0.1質量%以上15質量%以下がより好ましい。茶種やデカフェ処理の有無にもよるが、通常、没食子酸は、酸味を呈するため、その含有量が多い場合、強い酸味が雑味に感じられ香味が劣化しやすい。しかしながら、本発明の方法によれば、没食子酸に由来する雑味のマスキングも期待できる。なお、没食子酸の分析条件はHPLC法で定量した値を採用する。詳細な条件は、本明細書の実施例の項に記載する。
【0022】
本発明における茶葉中の茶ポリフェノール、カフェイン、没食子酸を調整する方法としては、上記のデカフェ処理方法以外にも、産地や茶期のことなる茶葉をブレンドして、これらを所望とする範囲に適宜調整することができる。また、茶葉にタンナーゼ等で酵素処理を施すことで、没食子酸量を調整することができる。
【0023】
〈ホトリエノール〉
本発明におけるホトリエノールは、化学式C10H16Oで表される、CAS登録番号20053-88-7のモノテルペンアルコール系化合物である。ホトリエノールは、3位に不斉炭素があり、3R-(-)-3,7-ジメチル-1,5(E),7-トリエン-3-オール(以下、3R-(-)体という。)と3S-(+)-3,7-ジメチル-1,5(E),7-トリエン-3-オール(以下、3S-(+)体という。)の光学活性体が存在するが、本発明に用いられるホトリエノールは、3R-(-)体であっても、3S-(+)体であってもよく、また、それらの混合物であってもよく、ラセミ混合物であってもよい。
本発明のホトリエノールは、発酵茶等の天然物から抽出されたものであっても、化学的に全合成されたものであっても、又は発酵茶等の天然物から抽出物を化学処理して半合成されたものであっても良い。天然物からの抽出物の場合に、ホトリエノールが含まれる抽出物をそのまま又は濃縮等の操作をして用いることができ、抽出物を蒸留、カラムクロマトグラフィー等の分離精製操作を行って、ホトリエノールを単離精製したもの又はその他の成分を含む画分として用いることができる。
得られたホトリエノールまたはホトリエノールを含む画分は目的に応じて適宜製剤化して香味改善用に用いることができる。また、ホトリエノールを含む組成物はエタノールなどの有機溶媒を含んでいても良い。また、食品上許容される安定剤等を配合してもよい。さらに、窒素置換等で気中の酸素濃度を低くしたうえで冷凍保存することで、保存性を高めることもできる。茶葉に添加する際のホトリエノールの形態は、特に限定されるものではなく、例えば、粉末状、顆粒状、液体状またはペースト状のものでもよいが、製造しやすさの点から液体状であることが好ましい。
【0024】
〈香味改善方法〉
本発明の製造方法では、ホトリエノールを含有する香料を茶葉に噴霧あるいは滴下して添加することを特徴とする。
詳細な方法は後述する。
【0025】
本発明の香味が改善された茶葉の製造方法は、原料茶葉に対して、ホトリエノールを30ppm以上200ppm以下添加する。香味の改善効果の顕著さから40ppm以上180ppm以下が好ましく、80ppm以上120ppm以下がより好ましい。これらの範囲においては、茶葉を抽出した後に蓋つきのカップや水筒に保管しても、古紙臭や油臭である酸化臭、酸味やえぐ味、収斂味である後口の雑味が抑制され、茶葉の新鮮な香りが保持された茶飲料を味わうことができる。
また、ホトリエノールを添加した茶葉を抽出した際のホトリエノールの濃度は、茶葉2gを150mLで抽出した場合、150ppb以上800ppb以下が好ましく、200ppb以上500ppb以下が特に好ましい。
【0026】
本発明の原料茶葉へのホトリエノールの添加方法は、水分量5%以下の原料茶葉である荒茶または仕上茶に、直接ホトリエノール配合溶液を噴霧あるいは滴下して添加する。具体的には、密閉可能なアルミ蒸着フィルム製の袋に原料茶葉を入れ、ホトリエノール配合香料を所定量滴下して添加し、均等になるように十分に茶葉になじませ、さらに常温にて保管し均質化を行う。保管は12時間以上が好ましく、1日以上がより好ましい。また、前述のホトリエノール配合溶液は、ホトリエノールを10%以下配合した溶液が例示でき、溶媒は食品として適したものであればよく、水、エタノール溶液が挙げられる。
工業的に製造する場合は、一般的に用いる香料を添加する方法を用いればよい。例えば、茶葉約100~300kgをブレンダー内に投入し、液体状のホトリエノールを添加後、数分から1時間程度撹拌し、密閉容器内で保管する。
【0027】
本発明における茶葉中のホトリエノールは、茶葉抽出液中の値を測定する。ホトリエノールの抽出液中の検出量は、添加量の40~60%となる。
ホトリエノールの抽出液中の含有量は、ガスクロマトグラフ質量分析法により定量することができる。詳細な条件は本明細書の実施例の項に記載する。
【0028】
本発明の方法で得られた茶葉は、ホトリエノール以外の食品香料を添加することができる。例えば、レモン、アップル、ピーチ等のフルーツフレーバー、ローズ等の花様フレーバーが挙げられる。また、レモン等果実ピール、花びら(例えば、バラ、桜)またはハーブを添加して、フルーツティーやハーブティーとしても利用することができる。これらの添加量は目的とする香味に合わせて、適宜添加することができ、茶葉に対して約1~5%程度が例示できる。
【0029】
本発明で得られた茶葉は様々な用途に利用することができる。例えば、各種容器に茶葉を包装して製品とするほか、ティーバッグ等の形態としても利用が可能である。ティーバッグは茶葉を封入できるものであれば特に限定しないが、ティーバッグに使用する素材は、パルプ等の天然素材やナイロン、ポリエステル等合成繊維が例示できる。、また、ティーバッグのサイズ、形状は公知の方法を適宜利用することできる。抽出方法は、1カップ用のティーバッグを使用して抽出する場合、水(お湯)は約150~200mLを使用し、茶葉の種類によって、水の温度を、例えば紅茶では沸騰直後あるいは90~95℃、緑茶(煎茶の場合)では70~80℃、ウーロン茶では80~95℃が例示できる。お湯の場合は、抽出時間は1~2分間が好ましい。殺菌済みの茶葉を使用して低温(水出し)で抽出する場合はさらに長時間ティーバッグを抽出液に浸漬してもよい。
【0030】
本発明の茶葉は、インスタント茶や容器詰め茶飲料の茶エキスの抽出原料として利用することもできる。また、得られた茶葉を粉末状に粉砕することによって、微粉末状にして、粉茶として利用してもよい。ただし、本発明の製造方法で得られる茶葉の利用用途はこれらに限定されるものではない。
【実施例0031】
以下に本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0032】
本発明で得られた茶葉の茶ポリフェノール含量およびカフェイン含量、没食子酸量を以下の条件で測定した。
<茶ポリフェノール、没食子酸およびカフェイン測定用試料液の調製方法>
フードプロセッサーで粉砕した茶葉を約150mgずつ秤量し、100mLメスフラスコに移した後、80%メタノール(v/v)を40mL加え、30分間超音波抽出を行った。次いで、1M塩酸0.4mLを加えて超純水で仮定容し、室温に戻るまで静置後、超純水で100mLに定容した。その抽出液を親水性PTFEフィルター(アドバンテック(株)製,DISMIC-13HP;0.45μm)でろ過し、ろ液の2mL以降を測定用試料液とした。
<茶ポリフェノールの測定方法>
本発明における茶ポリフェノール量とは酒石酸鉄法によって定量されるポリフェノール類を意味する。例えば「七訂 日本食品標準成分表2015年版(七訂)分析マニュアル・解説」(文部科学省監修、建帛社、2016年2月発行)に記載の酒石酸鉄吸光光度法を採用して測定することができる。なお、定量用標準物質には没食子酸エチル(東京化成工業(株)製)を用い、調製溶液には1M塩酸を0.4%添加した32%メタノール(v/v)を用いた。また、本発明において茶ポリフェノールは茶に含まれるポリフェノールのことであり、タンニンや茶タンニン等の用語と同義に扱う。
<カフェインの分析条件>
カフェインの定量はHPLC分析法により次の条件で行った。
・標準物質:カフェイン(関東化学(株)製)
・装置:Alliance HPLCシステム(ウォーターズ社製)
・カラム:Poroshell 120 EC‐C18(4.6×100mm,粒子径2.7μm、アジレント社製)
・カラム温度:40℃
・移動相:A液0.05%リン酸水/アセトニトリル=1000/25(体積比)、B液メタノール
・グラジエントプログラム:0~1分(B液0%)、1~11分(B液0~33%)、11~11.25分(B液33~95%)、11.25~13.25分(B95%)、13.25~13.5分(B液95~0%)、13.5~15.5分(B液0%)
・流速:1.5mL/min
・検出:UV275nm
<没食子酸の分析条件>
没食子酸の定量はHPLC分析法により次の条件で行った。
・標準物質:没食子酸(gallic acid)(関東化学(株)製)
・装置:Alliance HPLCシステム(ウォーターズ社製)
・カラム:Poroshell 120 EC‐C18(4.6×100mm,粒子径2.7μm、アジレント社製)
・カラム温度:40℃
・移動相:A液0.05%リン酸水/アセトニトリル=1000/25(体積比)、B液メタノール
・グラジエントプログラム:0~1分(B液0%)、1~11分(B液0~33%)、11~11.25分(B液33~95%)、11.25~13.25分(B液95%)、13.25~13.5分(B液95~0%)、13.5~15.5分(B液0%)
・流速:1.5mL/min
・検出:UV270nm
【0033】
《ホトリエノールの分析方法》
本発明で得られた茶葉の茶抽出液を適宜希釈し、希釈液10mLと塩化ナトリウム3gを20mLバイアルに入れ、内部標準物質としてシクロヘプタノール(東京化成工業(株)製を終濃度で500ppbとなるように添加した。このサンプル液について下記条件で固相マイクロ抽出法(Solid Phase Micro Extraction:SPME)を用いたGC/MS分析に供した。評価はホトリエノールのピークエリアと内部標準物質のピークエリアの比によって求めた。
<SPME-GC/MS条件>
GC:TRACE GC ULTRA(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)
MS:TSQ QUANTUM XLS(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)
SPMEファイバー:50/30μm Divinylbenzene/Carboxen/Polydimethylsiloxane Stableflex
抽出:60℃、30分
カラム:SUPELCO WAX10(0.25mmI.D.×60m×0.25μm、シグマアルドリッチ社製)
オーブンプログラム:40℃で2分間保持した後、100℃まで3℃/分で昇温、200℃まで5℃/分で昇温、240℃まで8℃/分で昇温し、240℃で8分間保持した
キャリアーガス:ヘリウム(100kPa、一定圧力)
インジェクター:スプリット(スプリットフロー 10mL/分)、240℃
イオン化:電子イオン化
イオン化電圧:70eV
測定モード:スキャン
モニタリングイオン:ホトリエノール;m/z=71
【0034】
<参考例1~4>茶葉の香味確認、淹れた直後と冷めた状態での比較
参考例1~4はリーフまたティーバッグの市販の茶葉を原料に用いて、淹れた直後と冷めたものとの官能評価を下記の方法で行った。
参考例1と2は、紅茶葉(リーフ)2g(三井農林(株)、スリランカ、インド、その他ブレンド、茶葉の形状:BOP、CTC)を使用した。茶葉中の茶ポリフェノールは10.20質量%、カフェインは2.79質量%、没食子酸は0.13質量%であった。また、参考例3と4は、ティーバッグ(三井農林(株)、日東紅茶カフェインレス オリジナルブレンド、茶葉2g配合)を使用した。茶葉中の茶ポリフェノール5.48質量%、カフェイン0.25質量%、没食子酸0.42質量%であり、超臨界二酸化炭素抽出によるデカフェ処理した茶葉(表中デカフェ茶葉)を使用した。
前記茶葉2gに熱湯150mLを注いで90秒分間抽出させ、参考例1と2は茶こしで茶殻を取り除き、参考例3と4はティーバッグをお湯から引き揚げて茶抽出液を調製した。
【0035】
上記操作によって得られた参考例1~4の茶葉の抽出液について、訓練された専門のパネル5名で香味評価を行った。なお、参考例1と3の淹れたての抽出液は約85℃で、また参考例2と4の冷めた抽出液は、淹れたての抽出液を30分間常温で保管して冷めた状態(約20℃)にしたものを評価した。評価項目は、爽快な香り、酸化臭、雑味、香味のバランスとして、下記のように点数を付けた。
官能評価方法:淹れたての抽出液をコントロール(0点)として評価し、パネル5名の中央値を採用した。結果を表1に示す。
〈爽快な香り〉新鮮な茶葉のような香り
+3:コントロールと比較して非常に強く感じる
+2:コントロールと比較して強く感じる
+1:コントロールと比較してやや強く感じる
0:コントロールと同等
-1:コントロールと比較してやや弱く感じる
-2:コントロールと比較して弱く感じる
-3:コントロールと比較してほとんど感じない
〈酸化臭〉古紙臭または酸化した油臭
+3:コントロールと比較して全く感じない
+2:コントロールと比較してやや弱く感じる
+1:コントロールと比較して弱く感じる
0:コントロールと同等
-1:コントロールと比較してやや強く感じる
-2:コントロールと比較して強く感じる
-3:コントロールとより非常に強く感じる
〈雑味〉後口に残る雑味(酸味、えぐ味、収斂味、後切れの悪さ)を感じる
+3:コントロールと比較して全く感じない
+2:コントロールと比較して弱く感じる
+1:コントロールと比較して弱く感じる
0:コントロールと同等
-1:コントロールと比較してやや強く感じる
-2:コントロールと比較して強く感じる
-3:コントロールとより非常に強く感じる
〈香味のバランス〉香味のバランスを評価
+3:コントロールと比較して非常に優れている
+2:コントロールと比較して優れている
+1:コントロールと比較してやや優れている
0:コントロールと同等
-1:コントロールと比較してやや劣る
-2:コントロールと比較して劣る
-3:コントロールとよりかなり劣る
【0036】
【0037】
参考例1~4の市販の茶葉は、表1の結果に示されている通り、茶葉の淹れたてと冷めたもので比較すると、冷めた状態のほうが、古紙臭や酸化した油臭をより感じ、後口に残る雑味(酸味、えぐ味、収斂味、後切れの悪さ)がより顕著に感じられることが確認できた。
以下の実施例では、冷めた状態で官能評価を実施する。
【0038】
<実施例1>ホトリエノールの香味改善効果
ホトリエノール、リナロール、ゲラニオールを添加して、香味改善効果を比較した。
密閉可能なアルミ蒸着フィルム製の袋に入れた茶葉に、ホトリエノール、リナロール、ゲラニオールを茶葉に対して150ppmをそれぞれ添加し、撹拌後常温にて一日保管してホトリエノールを添加した茶葉を作製した。得られた茶葉を以下のように抽出し、香味評価を実施した。
紅茶葉(三井農林(株)、超臨界二酸化炭素法でデカフェイン処理を使用した紅茶葉(スリランカ、インド、その他ブレンド)、茶ポリフェノール5.48%、カフェイン0.25%、没食子酸0.42%)を原料茶葉として使用した。前記茶葉は、酸化臭や雑味を感じることがあらかじめ確認されているものを使用した。
ホトリエノール:5%ホトリエノール配合の香料組成物(エタノール溶液)
リナロール:東京化成工業(株)製リナロール
ゲラニオール:東京化成工業(株)製ゲラニオール
評価方法:得られた茶葉2gを150mL95℃の熱湯にて2分間抽出した。その後、室温で30分間保管後(液温約20℃)官能評価を実施した。
参考例に記載の官能評価方法に加えて、最終的な評価として、下記の基準に基づいて好適、適、不適と評価した。結果を表2に示す。最終的な評価として、下記の基準に基づいて好適、適、不適と評価した。結果を表2に示す。
好適:各評価がすべて+2以上(実施例)
適 :各評価がすべて+1以上(実施例)
不適:各評価において、0以下の評価が一つでもある場合(比較例)
【0039】
【0040】
官能評価のコメントとして、リナロールはリナロール自体の香りの強さから、茶葉本来の香りを感じられない、人工的な香味を感じる、香味のバランスが悪いと評価され、ゲラニオールは、酸化臭が残り、リナロールと同様人工的な香味を感じたと評価された。ホトリエノールは、酸化臭、雑味が改善され、香味のバランスに優れ茶飲料としての自然な香味が付与されたと評価され、ホトリエノールの茶葉の香味改善効果が確認できた。
【0041】
<実施例2>ホトリエノールの添加量
ホトリエノールを茶葉に対して0~350ppmとなるように添加し、茶葉の香味改善効果を評価した。添加方法は実施例1と同様に行った。
紅茶葉(三井農林(株)、スリランカ、インド、その他ブレンド、茶ポリフェノール10.20%、カフェイン2.79%、没食子酸0.13%)を原料茶葉として使用した。前記茶葉は、酸化臭や雑味を感じることがあらかじめ確認されているものを使用した。ホトリエノールは、5%ホトリエノール配合の香料組成物(エタノール溶液)を使用した。
評価方法は、茶葉を抽出後20℃まで冷ました後に官能評価を実施した。
表中の「茶葉中のホトリエノール量」とは、茶葉に対する添加量を示す。また、「抽出液中のホトリエノール量」とは得られた抽出液中のホトリエノールの濃度を上記の分析方法で求めた値である。
参考例に記載の官能評価方法に加えて、最終的な評価として、実施例1と同様に好適、適、不適と評価した。結果を表3に示す。
【0042】
【0043】
表3より、ホトリエノールを30~200ppmの範囲で添加することによって、コントロールの茶抽出液で感じられていた、酸臭(古紙臭・酸化した油臭)、雑味が抑制されたこと、爽快な香りが増強すること、香味のバランスが良好であることが確認できた。
【0044】
<実施例3>
デカフェ紅茶葉(スリランカ、インド、その他ブレンド、超臨界二酸化炭素法で低カフェイン処理を使用した紅茶葉(デカフェ紅茶葉)、茶ポリフェノール5.48%、カフェイン0.25%、没食子酸0.42%)を用いて、茶葉2g配合のティーバッグを作製した。ホトリエノールの添加方法、官能評価は実施例1と同様に行った。
コントロールに使用したデカフェ紅茶葉は、香りが全く感じられず、酸化臭や独特な酸味や後味に強い収斂味が目立った。結果を表4に示す。
【0045】
【0046】
表4の結果に示されている通り、超臨界二酸化炭素でカフェイン低減化処理した茶葉にホトリエノールを添加することによって、爽快な香りが付与されると同時に、酸化臭や後口に残る雑味が抑制できること、香味のバランスが良好であることが確認できた。特に、ホトリエノールを茶葉に対して、85~115ppmの範囲で添加した茶葉は、特に好ましいことが確認できた。
【0047】
<実施例4>緑茶、烏龍茶の製造例
実施例2の紅茶葉を、緑茶葉と烏龍茶葉に変えた以外は実施例2と同様にホトリエノールを添加して官能評価を実施した。
抽出条件を下記に示す。結果を表5に示す。
緑茶葉は、国産の秋冬番茶(茶ポリフェノール12.9%、カフェイン1.5%,没食子酸0.02%)2gを150mL85℃のお湯で3分抽出、中国産烏龍茶葉(茶ポリフェノール12.1%,カフェイン2.7%,没食子酸0.2%)2gを150mL、90℃のお湯で3分抽出を行った。
【0048】
【0049】
表5の結果に示されている通り、緑茶葉、烏龍茶でも紅茶葉同様、酸化臭(古紙臭・酸化した油臭)、雑味が抑制され、爽快な香りが付与されることが確認できた。
【0050】
<製造例1> ホトリエノール配合カフェインレスアールグレイ
下記の茶葉を用いて、実施例と同様に製造し、官能評価を実施した。
茶葉は日東紅茶カフェインレスアールグレイ2g(ティーバッグ、茶葉のカフェイン量0.3質量%)を虐待処理した茶葉(湿度60%、35℃にて2週間保管したもの)を使用した。前記茶葉に対してホトリエノールを85ppmとなるように添加し、アルミ蒸着フィルム製の袋にて常温で1日保管した。得られた茶葉を150mLの熱水にて2分間抽出した。抽出液を蓋つきのカップに保管し、1時間後(液温約20℃)に官能評価を実施した。ホトリエノールを添加していない茶葉をコントロールとして比較したところ、酸化した油様の酸化臭や後口に残る酸味、えぐ味、収斂味等の雑味が抑制され、冷めてもお茶らしい爽快な香りを有し香味のバランスが良好であることが確認できた。
<製造例2> ホトリエノール配合レモンティー
実施例3の試験2-3で得られたホトリエノール配合紅茶葉に、レモンフレーバー、レモンピール0.1gを加えてティーバッグに封入して、レモンティーを作製した。コントロールは、試験例2-1の茶葉を採用してレモンティーを作製し、製造例1と同様に抽出して、蓋つきのカップに保管し1時間後に官能評価を実施した。その結果、レモンフレーバーやレモンピールを添加しても、製造例1と同様にホトリエノールの香味改善効果が確認できた。
本発明の方法により製造された茶葉は、デカフェ処理等によって劣化した茶葉に特有の異味異臭である酸化臭、雑味がマスキングされているため、様々なシーンにおいて茶葉本来の味わいを楽しむことができる。