IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 本田技研工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-電力装置 図1
  • 特開-電力装置 図2
  • 特開-電力装置 図3
  • 特開-電力装置 図4
  • 特開-電力装置 図5
  • 特開-電力装置 図6
  • 特開-電力装置 図7
  • 特開-電力装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156838
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】電力装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/02 20160101AFI20221006BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
H02J7/02 H
H02J7/00 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060726
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】森田 晋二郎
(72)【発明者】
【氏名】今野 亮平
(72)【発明者】
【氏名】西宮 歩
(72)【発明者】
【氏名】少覚 功
(72)【発明者】
【氏名】長 敏之
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA03
5G503BB01
5G503DA07
5G503DA08
5G503FA19
5G503GD03
5G503GD05
5G503GD06
(57)【要約】
【課題】バッテリ及び動作部を含めた電力装置全体を適切に保護する。
【解決手段】電力装置10において、ECU20は、コンタクタ14又はバッテリ12のスイッチ60a、60bを遮断状態又は接続状態に切り替える第1制御経路48と、第1制御経路48と並列に設けられ、コンタクタ14又はバッテリ12のスイッチ60a、60bを遮断状態又は接続状態に切り替える第2制御経路50とを有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電部と、前記蓄電部と電力伝達経路を介して電気的に接続される動作部と、遮断状態及び接続状態に切替可能であり、前記遮断状態で前記電力伝達経路を遮断し、前記接続状態で前記電力伝達経路を接続する断続部と、前記断続部を制御する制御部とを備える電力装置において、
前記制御部は、
前記断続部を前記遮断状態又は前記接続状態に切り替える第1制御経路と、
前記第1制御経路と並列に設けられ、前記断続部を前記遮断状態又は前記接続状態に切り替える第2制御経路と、
を有する、電力装置。
【請求項2】
請求項1記載の電力装置において、
前記制御部は、前記第1制御経路と前記第2制御経路とが前記断続部に対して異なる状態を指示する場合、前記第2制御経路の指示を優先させる、電力装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の電力装置において、
前記第1制御経路は、前記蓄電部から送られてくる第1信号を受信する第1受信部と、前記第1受信部が受信した前記第1信号に基づいて、前記断続部を前記遮断状態又は前記接続状態に切り替えるかどうかの演算処理を行う第1演算部と、前記第1演算部での演算結果を第2信号として前記断続部に送信する第1送信部とを有し、
前記第2制御経路は、前記蓄電部から送られてくる第3信号を受信する第2受信部と、前記第2受信部が受信した前記第3信号に基づいて、前記断続部を前記遮断状態又は前記接続状態に切り替えるかどうかの演算処理を行う第2演算部と、前記第2演算部での演算結果を第4信号として前記断続部に送信する第2送信部とを有する、電力装置。
【請求項4】
請求項3記載の電力装置において、
前記第2演算部は、前記第3信号が前記蓄電部の異常を示す信号であるときに、前記異常を示す信号に基づいて、前記断続部の前記遮断状態への切り替えを指示することを決定する、電力装置。
【請求項5】
請求項3又は4記載の電力装置において、
前記蓄電部は、蓄電装置が着脱可能に装着される装着部を有し、
前記第2受信部は、前記装着部に装着された前記蓄電装置から送られてくる前記第3信号と、前記装着部に前記蓄電装置が装着されているか否かを示す第5信号とを受信し、
前記第2演算部は、前記第3信号及び前記第5信号に基づいて、前記装着部に前記蓄電装置が装着され、且つ、前記第3信号が前記蓄電部の異常を示す信号である場合、前記断続部を前記遮断状態に切り替えることを決定する、電力装置。
【請求項6】
請求項3~5のいずれか1項に記載の電力装置において、
前記蓄電部は、第1通信線を介して、デジタル信号の前記第1信号を前記第1受信部に送信すると共に、第2通信線を介して、アナログ信号の前記第3信号を前記第2受信部に送信する、電力装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の電力装置において、
蓄電装置が着脱可能に装着される装着部を有する前記蓄電部を複数備え、
前記第2制御経路は、
複数の前記装着部に装着された複数の前記蓄電装置から送られてくる複数の第6信号と、複数の前記装着部に複数の前記蓄電装置が装着されているか否かを示す第7信号とを受信する第3受信部と、
複数の前記第3受信部が受信した複数の前記第6信号、及び、前記第7信号に基づいて、前記断続部を前記遮断状態又は前記接続状態に切り替えるかどうかの演算処理を行う第3演算部と、
前記第3演算部の演算結果を第8信号として前記断続部に送信する第3送信部と、
を有する、電力装置。
【請求項8】
請求項7記載の電力装置において、
前記第3演算部は、
複数の前記蓄電部の各々について、前記第6信号が前記蓄電部の異常を示す信号であり、且つ、前記第7信号が前記装着部に前記蓄電装置が装着されていることを示す信号であるかどうかを判断し、
少なくとも1つの前記蓄電部について、前記第6信号が前記蓄電部の異常を示す信号であり、且つ、前記第7信号が前記装着部に前記蓄電装置が装着されていることを示す信号である場合、前記断続部を前記遮断状態に切り替えることを決定する、電力装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電部と動作部との電気的接続を断続部によって接続又は遮断する電力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両に搭載される電源装置であって、該電源装置が蓄電池及びBMU(バッテリマネジメントシステム)を有する補助電源を備えることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-175864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
BMUは、補助電源(蓄電部、蓄電装置)内に組み込まれているスイッチ(断続部)をオンオフさせることで、蓄電池の出力を制御する。また、BMUは、蓄電部の異常を自己診断し、異常である場合には、スイッチをオフすることで蓄電部に対する充放電を停止させることができる。
【0005】
また、近年、蓄電部の大容量化や小型化に伴い、BMUの保護機能の重要性が高まっている。この場合、BMUによる上記の自己保護機能だけでなく、外部に設けられたコンタクタ(断続部)を含むシステム(電力装置)全体の保護機能の構築が望まれている。
【0006】
すなわち、蓄電部は、電力伝達経路を介して、モータ等の動作部と電気的に接続されている。この場合、電力伝達経路には、断続部としてのコンタクタが設けられており、蓄電部が異常である場合には、断続部を接続状態から遮断状態に切り替え、蓄電部と動作部との電気的接続を遮断することで、蓄電部及び動作部等を適切に保護することが可能となる。
【0007】
ところで、BMUは、CAN(Controller Area Network)等の通信線を介して蓄電部の状態を示すデジタル信号を車両のECU(電子制御装置)に送信すると共に、別のケーブルを介して蓄電部の状態を示すアナログ信号(電圧信号)をECUに送信している。これにより、BMUは、蓄電部の異常を外部に通知することが可能になる。そのため、車両やユーザとしては、BMUの自己診断機能に頼らず、BMUからの通知内容に基づき、断続部を遮断状態に切り替えることで、蓄電部の使用を禁止することが可能である。この結果、電力装置の安全性を高めることができる。
【0008】
しかしながら、従来、ECU(制御部)では、BMUからの異常信号を1つのマイクロコンピュータで処理し、その処理結果に基づいて、断続部を接続状態から遮断状態に切り替える。そのため、マイクロコンピュータに故障等が発生している場合、蓄電部の異常を示す信号が制御部に供給されても、断続部を遮断状態に切り替えるかどうかの判断を適切に行うことができない。この結果、断続部を遮断状態に切り替えることができなくなる。
【0009】
本発明は、このような課題を考慮してなされたものであり、蓄電部及び動作部を含めたシステム全体を適切に保護することが可能となる電力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の態様は、蓄電部と、前記蓄電部と電力伝達経路を介して電気的に接続される動作部と、遮断状態及び接続状態に切替可能であり、前記遮断状態で前記電力伝達経路を遮断し、前記接続状態で前記電力伝達経路を接続する断続部と、前記断続部を制御する制御部とを備える電力装置に関する。この場合、前記制御部は、前記断続部を前記遮断状態又は前記接続状態に切り替える第1制御経路と、前記第1制御経路と並列に設けられ、前記断続部を前記遮断状態又は前記接続状態に切り替える第2制御経路とを有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、2つの制御経路の各々が断続部を遮断状態又は接続状態に切り替えるかどうかを判断する。これにより、一方の制御経路に故障等が発生している場合でも、他方の制御経路で断続部を遮断状態又は接続状態に切り替えるかどうかを判断することができる。この結果、断続部を適切に遮断状態又は接続状態に切り替えることができる。従って、本発明では、蓄電部及び動作部を含めた電力装置全体を適切に保護することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係る電力装置の全体構成図である。
図2図1のECUの内部構成図である。
図3図1の電力装置の具体的な回路構成図である。
図4図2のECUの具体的な内部構成図である。
図5】アラート信号のタイミングチャートである。
図6】比較例のECUの内部構成図である。
図7】比較例の電力装置の具体的な回路構成図である。
図8】比較例のECUの具体的な内部構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る電力装置について好適な実施形態を例示し、添付の図面を参照しながら説明する。
【0014】
[1.本実施形態の構成]
本実施形態に係る電力装置10は、図1に示すように、2つのバッテリ12(蓄電部)、コンタクタ14(断続部)、負荷16、モータ18(動作部)及びECU20(制御部)を備える。
【0015】
なお、以下の説明では、2つのバッテリ12を第1バッテリ12a及び第2バッテリ12bと呼称する場合がある。また、以下の説明では、第1バッテリ12aの構成要素、第1バッテリ12aに接続される構成要素、及び、第1バッテリ12aに関わる構成要素に対して、参照数字の後に「a」の文字を付けて説明する場合がある。さらに、第2バッテリ12bの構成要素、第2バッテリ12bに接続される構成要素、及び、第2バッテリ12bに関わる構成要素に対して、参照数字の後に「b」の文字を付けて説明する場合がある。
【0016】
電力装置10では、少なくとも1つのバッテリ12が配置されていればよい。また、バッテリ12は、電力装置10に設けられて充放電可能な蓄電部である。さらに、バッテリ12は、電力装置10に対して着脱可能なモバイルバッテリであってもよいし、又は、電力装置10に固設されているバッテリであってもよい。バッテリ12がモバイルバッテリである場合、例えば、着脱式のリチウムイオンバッテリのバッテリパックが好適である。さらに、電力装置10は、一輪車、二輪車、四輪車等の各種の車両の電源システムに適用される。
【0017】
なお、電力装置10は、車両に限らず、バッテリ12から負荷16等に電力を供給するか、又は、バッテリ12を充電する各種の電源システムに適用可能である。そのため、電力装置10は、車両に限らず、住宅、事業所、公共施設等に設置することも可能である。
【0018】
また、電力装置10は、人が搭乗可能、又は、人が搭乗不能な車両、航空機、飛行体及び船舶等の各種の移動体の電源システムにも適用可能である。この場合、車両の電源システムとしては、電動車両の電源システムや、ハイブリッド車両のような駆動モータが搭載される車両の電源システムに適用可能である。
【0019】
さらに、電力装置10は、人が搭乗しない各種の汎用機器、具体的には、(1)各種の充電器、(2)各種の放電器、(3)汎用作業機、芝刈機、耕うん機及び送風機等の各種の作業機、(4)投光機及び照明機器等の電動機を有しない電気機器、(5)家屋や建物に設置された各種の機器、の電源システムにも適用可能である。この場合、上記(5)の例としては、(A)時計やラジオカセットレコーダ等の音響機器のように直流電力で動作する機器、(B)扇風機、ジューサ、ミキサ、白熱電灯等のように交流電力で動作する機器、(C)テレビ、ラジオ、ステレオ、パーソナルコンピュータ等のように交流電力から変換された直流電力で動作する機器、(D)洗濯機、冷蔵庫、エアコンディショナ、電子レンジ、蛍光灯を含むインバータ方式の機器等のように、交流電力から直流電力に一旦変換された後、該直流電力からさらに変換された交流電力で動作する機器、がある。
【0020】
電力装置10において、第1バッテリ12a及び第2バッテリ12bは、電力線である電力伝達経路22を介して負荷16の入力側と電気的に接続されている。また、電力伝達経路22において、第1バッテリ12aと第2バッテリ12bとの間の箇所には、コンタクタ14が設けられている。図1では、第1バッテリ12a、コンタクタ14及び第2バッテリ12bの直列回路が負荷16の入力側に電気的に接続されている場合を図示している。従って、電力装置10において、複数のバッテリ12を備える場合、これらのバッテリ12及びコンタクタ14は直列に接続されて負荷16の入力側に電気的に接続される。一方、負荷16の出力側にはモータ18が電気的に接続されている。
【0021】
コンタクタ14が接続状態である場合、第1バッテリ12a及び第2バッテリ12bから電力伝達経路22を介して負荷16に直流電力が供給(放電)される。負荷16は、インバータを含むモータコントローラである。負荷16は、第1バッテリ12a及び第2バッテリ12bから供給される直流電力を交流電力に変換し、変換後の交流電力をモータ18に供給することで、該モータ18を駆動させる。あるいは、モータ18が発電機として機能する場合、負荷16は、モータ18が発電した交流電力を直流電力に変換し、変換後の直流電力を第1バッテリ12a及び第2バッテリ12bに供給して充電させる。
【0022】
従って、第1バッテリ12a及び第2バッテリ12bは、電力伝達経路22及び負荷16を介して、モータ18と電気的に接続されている。また、図1では、電力伝達経路22のように、第1バッテリ12a及び第2バッテリ12bとモータ18との間で電力が伝達される配線を太線で図示している。さらに、コンタクタ14は、接続状態又は遮断状態に切り替わることで、第1バッテリ12a及び第2バッテリ12bと負荷16及びモータ18とを電気的に接続し、又は、電気的接続を遮断するものであればよい。従って、コンタクタ14は、電力伝達経路22における第1バッテリ12aと負荷16との間に設けてもよいし、又は、電力伝達経路22における第2バッテリ12bと負荷16との間に設けてもよい。
【0023】
なお、電力装置10では、モータ18に代えて、他の電気負荷を負荷16の出力側に電気的に接続してもよい。具体的には、電力消費部、電力発生部又は電力変換部を負荷16の出力側に接続してもよい。
【0024】
第1バッテリ12a及び第2バッテリ12bは、CAN等の通信線24(第1通信線)を介して、ECU20との間で、デジタル信号の送受信が可能である。この場合、第1バッテリ12a及び第2バッテリ12bからECU20に送られるデジタル信号としては、バッテリ12が正常又は異常であることを示す信号等がある。
【0025】
なお、バッテリ12が正常である場合とは、該バッテリ12が所定の動作を正常に実行することができる状態をいう。また、バッテリ12が異常である場合とは、該バッテリ12に何らかの故障等が発生し、バッテリ12が所定の動作を正常に実行することができない状態をいう。
【0026】
一方、ECU20から通信線24を介して第1バッテリ12a及び第2バッテリ12bに送られる信号としては、第1バッテリ12a及び第2バッテリ12bを制御するための制御信号等がある。
【0027】
また、第1バッテリ12a及び第2バッテリ12bは、通信線24とは異なる別のケーブル26(ケーブル26a、26b)を介して、第1バッテリ12a及び第2バッテリ12bの状態を示すアナログの電圧信号をECU20に送信する。この場合、第1バッテリ12a及び第2バッテリ12bからECU20に送られるアナログ信号は、バッテリ12が正常又は異常であることを示す電圧信号(アラート信号)である。すなわち、アラート信号は、バッテリ12が正常又は異常であることをバッテリ12の外部に通知するためのアナログ信号である。
【0028】
ECU20は、通信線24を介して受信されるデジタル信号、及び、ケーブル26を介して受信される電圧信号に基づいて、コンタクタ14を接続状態又は遮断状態に切り替える。また、ECU20は、通信線24を介して、第1バッテリ12a及び第2バッテリ12bを制御する。さらに、ECU20は、負荷16を制御することで、第1バッテリ12a及び第2バッテリ12bとモータ18との間の電力の授受を制御する。
【0029】
図2は、ECU20の内部構成図である。なお、図2では、ECU20の内部構成のうち、複数のバッテリ12(図1参照)の異常の有無を判断する機能と、異常の有無の判断結果に基づいてコンタクタ14を制御する機能とに関わる構成について図示している。
【0030】
ECU20は、トランシーバ30、MCU(Micro Control Unit)32(第1受信部、第1演算部、第1送信部)、複数のバッテリ異常検出部34、ロジック回路36(第2受信部、第2演算部、第2送信部、第3受信部、第3演算部、第3送信部)、駆動回路電源38、及び、コンタクタ駆動回路40を有する。
【0031】
トランシーバ30は、複数のバッテリ12から送られてくるデジタル信号(第1信号)を受信する。MCU32は、デジタル信号に基づいて、複数のバッテリ12が異常であるかどうかを判断する。MCU32は、複数のバッテリ12のいずれも正常である場合、コンタクタ14を接続状態に切り替えるか、又は、コンタクタ14の接続状態を維持することを決定(判断)し、その判断結果(演算結果)を示す信号(第2信号)をコンタクタ駆動回路40に出力する。また、MCU32は、いずれかのバッテリ12が異常である場合、コンタクタ14を遮断状態に切り替えるか、又は、コンタクタ14の遮断状態を維持することを決定し、その判断結果を示す信号(第2信号)をコンタクタ駆動回路40に出力する。
【0032】
一方、ECU20には、バッテリ12の個数(例えば、n個(nは1以上の整数))と同じ数のバッテリ異常検出部34が設けられている。図2では、第1バッテリ異常検出部34a、第2バッテリ異常検出部34b、…、第nバッテリ異常検出部34nを図示している。
【0033】
複数のバッテリ異常検出部34の各々は、該当するバッテリ12から送られてくる電圧信号(第3信号、第6信号)を受信し、受信した電圧信号に基づいて、当該バッテリ12が異常であるかどうかを判断する。例えば、第1バッテリ異常検出部34aは、第1バッテリ12aから送られてくる電圧信号に基づいて、第1バッテリ12aが異常であるかどうかを判断する。また、第2バッテリ異常検出部34bは、第2バッテリ12bから送られてくる電圧信号に基づいて、第2バッテリ12bが異常であるかどうかを判断する。
【0034】
なお、図2において、V1は、第1バッテリ異常検出部34aに入力される電圧信号を示す。また、V2は、第2バッテリ異常検出部34bに入力される電圧信号を示す。さらに、Vnは、第nバッテリ異常検出部34nに入力される電圧信号を示す。
【0035】
複数のバッテリ異常検出部34は、電圧信号の信号レベル(電圧値)が所定範囲内であれば、該当するバッテリ12が正常であると判断し、正常である旨の判断結果を示す信号をロジック回路36に出力する。また、複数のバッテリ異常検出部34は、電圧信号の示す電圧値が所定範囲を外れる場合には、該当するバッテリ12が異常であると判断し、異常である旨の判断結果を示す信号をロジック回路36に出力する。
【0036】
ロジック回路36は、複数のAND回路42と1つのOR回路44とを有する論理演算部である。ロジック回路36には、バッテリ12の個数及びバッテリ異常検出部34の個数と同じ数のAND回路42が設けられている。図2では、第1AND回路42a、第2AND回路42b、…、第nAND回路42nを図示している。
【0037】
ところで、バッテリ12は、モバイルバッテリとしての蓄電装置が電力装置10に備わる装着部に装着されることで構成される。ここで、MCU32内の不図示のメモリ、又は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等の外部記憶部46には、複数のバッテリ12について、装着部に蓄電装置が装着されているか否かの情報(第5信号、第7信号)が予め格納されている。
【0038】
複数のAND回路42の各々には、対応するバッテリ異常検出部34からの信号と、MCU32又は外部記憶部46に記憶された上記の情報とが入力される。ここで、バッテリ異常検出部34からの信号がバッテリ12の異常を示す信号であり、且つ、入力された情報が当該バッテリ12において装着部に蓄電装置が装着されている旨の情報である場合、AND回路42は、当該バッテリ12が異常である旨の信号を出力する。
【0039】
一方、バッテリ異常検出部34からの信号と、MCU32又は外部記憶部46からの情報とのいずれか、又は、いずれもが、上記の内容ではない場合、AND回路42は、当該バッテリ12が異常ではない旨の信号、すなわち、正常である旨の信号を出力する。
【0040】
OR回路44には、複数のAND回路42の出力が入力される。この場合、いずれかのAND回路42からの出力がバッテリ12の異常を示す信号であれば、OR回路44は、いずれかのバッテリ12が異常であることを示す信号(第4信号、第8信号)を駆動回路電源38に出力する。具体的に、OR回路44は、異常であることを示す信号として、駆動回路電源38からコンタクタ駆動回路40への電力供給を停止させるための0レベル(グランドレベル)の信号を駆動回路電源38に出力する。
【0041】
また、OR回路44は、全てのAND回路42からの出力が、バッテリ12が正常であることを示す信号であれば、全てのバッテリ12が正常であることを示す信号(第4信号)を駆動回路電源38に出力する。具体的に、OR回路44は、正常であることを示す信号として、駆動回路電源38からコンタクタ駆動回路40への電力供給を指示するための所定レベルの信号を駆動回路電源38に出力する。
【0042】
駆動回路電源38は、コンタクタ駆動回路40の駆動用電源である。駆動回路電源38は、OR回路44から出力される信号が、バッテリ12が正常であることを示す信号であれば、コンタクタ駆動回路40への電力供給を行う。すなわち、駆動回路電源38からコンタクタ駆動回路40への電力供給は、バッテリ12が正常である旨の判断結果を意味している。
【0043】
また、駆動回路電源38は、OR回路44から出力される信号が、バッテリ12が異常であることを示す信号であれば、コンタクタ駆動回路40への電力供給を停止する。すなわち、駆動回路電源38からコンタクタ駆動回路40への電力供給の停止は、バッテリ12が異常である旨の判断結果を意味している。
【0044】
コンタクタ駆動回路40は、MCU32の判断結果、及び、駆動回路電源38からの電力供給の有無に基づいて、コンタクタ14を接続状態又は遮断状態に切り替える。この場合、MCU32の判断結果がバッテリ12が正常である旨の判断結果であり、且つ、駆動回路電源38からの電力供給があれば、コンタクタ駆動回路40は、コンタクタ14に制御信号を供給し、コンタクタ14を接続状態に切り替えるか、又は、接続状態を維持する。すなわち、MCU32及びロジック回路36の各判断結果が、いずれもバッテリ12が正常である旨の判断結果であれば、コンタクタ14は、接続状態に切り替わるか、又は、接続状態を維持する。
【0045】
また、MCU32の判断結果がバッテリ12が異常である旨の判断結果であり、且つ、駆動回路電源38からの電力供給がなければ、コンタクタ駆動回路40は、コンタクタ14に対する制御信号の供給を停止する。これにより、コンタクタ14は、遮断状態に切り替わるか、又は、遮断状態を維持する。すなわち、MCU32及びロジック回路36の各判断結果が、いずれもバッテリ12が異常である旨の判断結果であれば、コンタクタ14は、遮断状態に切り替わるか、又は、遮断状態を維持する。
【0046】
さらに、MCU32の判断結果が、バッテリ12が正常である旨の判断結果であっても、駆動回路電源38からの電力供給がなければ、コンタクタ駆動回路40は、コンタクタ14に対する制御信号の供給を停止する。この場合も、コンタクタ14は、遮断状態に切り替わるか、又は、遮断状態を維持する。
【0047】
さらにまた、MCU32の判断結果が、バッテリ12が異常である旨の判断結果であっても、駆動回路電源38からの電力供給があれば、コンタクタ駆動回路40は、コンタクタ14に制御信号を供給する。この場合、コンタクタ14は、接続状態に切り替わるか、又は、接続状態を維持する。
【0048】
つまり、MCU32の判断結果とロジック回路36の判断結果とが異なる場合、コンタクタ駆動回路40は、ロジック回路36の判断結果に応じた駆動回路電源38からの電力供給の有無に従って、コンタクタ14に制御信号を供給し、又は、制御信号の供給を停止する。つまり、コンタクタ駆動回路40は、ロジック回路36の判断結果を優先させる。
【0049】
このように、ECU20内には、コンタクタ14を遮断状態又は接続状態に切り替えるための2つの制御経路48、50が設けられている。すなわち、トランシーバ30、MCU32及びコンタクタ駆動回路40によって、コンタクタ14を遮断状態又は接続状態に切り替えるための第1制御経路48が構成される。また、複数のバッテリ異常検出部34、ロジック回路36、駆動回路電源38及びコンタクタ駆動回路40によって、コンタクタ14を遮断状態又は接続状態に切り替える第2制御経路50が構成される。
【0050】
なお、前述のように、バッテリ異常検出部34及びAND回路42は、バッテリ12の数だけ設けられる。従って、図1のように、バッテリ12が2個であれば、2つのバッテリ異常検出部34(第1バッテリ異常検出部34a、第2バッテリ異常検出部34b)と2つのAND回路42(第1AND回路42a、第2AND回路42b)とがECU20に設けられる。また、バッテリ12が1個の場合、1つのAND回路42のみでロジック回路36を構成し、OR回路44を省略してもよい。
【0051】
図3及び図4は、図2のECU20を組み込んだ電力装置10の具体的構成を示す。なお、図4では、バッテリ12の異常検出以外のECU20の構成も図示している。図3及び図4では、車両駆動用の電源装置に適用した場合を図示している。図3及び図4において、図1及び図2にも図示されている構成要素については、説明を簡略化するか、又は、説明を省略する。また、図3及び図4では、図1及び図2と同様に、電力装置10が第1バッテリ12a及び第2バッテリ12bを備える場合について説明する。
【0052】
図3及び図4において、電力装置10はサブバッテリ52をさらに備える。また、図3及び図4において、負荷16はPDU(Power Drive Unit)54である。さらに、コンタクタ14は、第1バッテリ12aとPDU54との間に配置されている。
【0053】
第1バッテリ12a及び第2バッテリ12bは、同じ構成を有する。すなわち、第1バッテリ12aは、バッテリ本体56a、BMU58a、スイッチ60a(断続部)、絶縁部62a、トランシーバ64a、電源部66a及びコネクタ68aを有する。また、第2バッテリ12bは、バッテリ本体56b、BMU58b、スイッチ60b(断続部)、絶縁部62b、トランシーバ64b、電源部66b及びコネクタ68bを有する。
【0054】
バッテリ本体56a、56bは、直列に接続された複数のセルによる2次電池を構成する。スイッチ60a、60bは、バッテリ本体56a、56bと直列に設けられ、BMU58a、58bからの制御によって導通状態が決定される。BMU58a、58bは、バッテリ本体56a、56bの状態を検出し、検出した状態をECU20等に通知する。この場合、ECU20等からの制御によりBMU58a、58bの動作状態が決定され、BMU58a、58bは、決定された動作状態に従ってスイッチ60a、60bの導通状態を制御する。
【0055】
絶縁部62a、62bは、BMU58a、58bとトランシーバ64a、64bとの間に設けられ光カプラ等であり、BMU58a、58bとコネクタ68a、68bとの間の信号について、BMU58a、58b側とコネクタ68a、68b側とを電気的に絶縁する。例えば、絶縁部62a、62bは、コネクタ68a、68bのA端子70a、70bからBMU58a、58bに向けて供給される活性化信号を電気的に絶縁して変換し、BMU58a、58bに供給する。従って、BMU58a、58bとトランシーバ64a、64bとは、絶縁部62a、62bを介して、電気的に絶縁されている。なお、A端子70a、70bは、活性化信号送信線72a、72bを介してECU20に接続される。
【0056】
トランシーバ64a、64bは、コネクタ68a、68bと絶縁部62a、62bとの間に設けられ、BMU58a、58bとECU20との間の通信に利用する信号を変換して双方向に中継する。この場合、トランシーバ64a、64bに接続されるコネクタ68a、68bのB端子74a、74bとC端子76a、76bとは、通信線24に接続される。電源部66a、66bは、バッテリ本体56a、56bから電力の供給を受け、BMU58a、58b及び絶縁部62a、62b等に電力の一部を供給する。この場合、電源部66a、66bは、絶縁部62a、62bよりもバッテリ本体56a、56b側に設けられており、コネクタ68a、68b側とは電気的に絶縁されている。
【0057】
コネクタ68a、68bは、上述のように、第1バッテリ12a及び第2バッテリ12bを制御するための信号を授受するための複数の信号端子を含む。例えば、コネクタ68a、68bを介して授受される信号には、バッテリ12を活性化するための活性化信号と、BMU58a、58bがECU20と通信するための信号が含まれる。コネクタ68a、68bは、これらの信号用の端子の他に、接地端子78a、78b等を含む。上記のコネクタ68a、68bは、電気的信号を授受する場合の一例であり、これに制限されることはなく、光学的に信号を授受するようにしてもよい。
【0058】
BMU58a、58bは、第1バッテリ12a及び第2バッテリ12bの充放電の状況、バッテリ本体56a、56bの蓄電量、温度等を監視する。監視結果は、ECU20と共有される。また、BMU58a、58bは、ECU20からの制御指令、又は、上記の監視結果に基づきスイッチ60a、60b等を制御することにより、バッテリ本体56a、56b等の充放電を制御する。
【0059】
ECU20は、活性化信号生成部80をさらに有する。なお、図4において、ECU20の管理部82は、前述のMCU32(図2参照)に対応する。活性化信号生成部80は、第1バッテリ12a及び第2バッテリ12b(図3参照)を利用可能な状態にするための活性化信号を生成する。活性化信号生成部80は、生成した活性化信号を、活性化信号送信線72a、72bを介して第1バッテリ12a及び第2バッテリ12bに供給する。この場合、活性化信号送信線72a、72bは、第1バッテリ12a及び第2バッテリ12bについて互いに異なる配線としている。これにより、活性化信号生成部80は、第1バッテリ12a及び第2バッテリ12bを個別に活性化(起動) することができる。
【0060】
活性化信号生成部80は、サブバッテリ52からECU20に供給される電圧と同等の電圧を活性化信号が有意な状態を示すものとする。つまり、活性化信号生成部80は、活性化信号が有意な状態を示す場合に、サブバッテリ52からECU20に供給される電圧と同等の電圧を活性化信号として出力する。例えば、活性化信号生成部80は、不図示のスイッチを含み、このスイッチの導通状態を制御することにより、活性化信号を生成してもよい。また、活性化信号生成部80は、第1バッテリ12a及び第2バッテリ12bの各々に対して活性化信号を生成する。これにより、第1バッテリ12a及び第2バッテリ12bの活性化状態を個々に制御することが可能になる。
【0061】
トランシーバ30は、BMU58a、58bとECU20との間の通信等に利用する信号を変換して双方向に中継する。管理部82は、活性化信号を受けた第1バッテリ12a及び第2バッテリ12bと、第1バッテリ12a及び第2バッテリ12bの識別情報とを対応付け、その識別情報を第1バッテリ12a及び第2バッテリ12bにそれぞれ付与する。管理部82は、活性化信号により活性化されるトランシーバ64a、64bを介して、第1バッテリ12a及び第2バッテリ12bの識別情報をBMU58a、58bに送る。
【0062】
さらに、ECU20には、車両に備わるスロットルセンサ84(アクセルセンサ)からの出力要求情報が入力される。管理部82は、活性化信号の供給による第1バッテリ12a及び第2バッテリ12bの初期化処理を終えた後、ECU20に入力された出力要求情報に基づいて、コンタクタ14、第1バッテリ12a、第2バッテリ12b及びPDU54等を制御する。ECU20は、第1バッテリ12a及び第2バッテリ12bを制御することにより、第1バッテリ12a及び第2バッテリ12bの充放電を制御する。
【0063】
図3に示すように、BMU58a、58bは、活性化処理部86a、86b、電池制御部88a、88b及び通信処理部90a、90bを有する。
【0064】
活性化処理部86a、86bは、ECU20から供給される活性化信号に基づいて、第1バッテリ12a及び第2バッテリ12bの状態を、電力の出力が可能な活性化状態にする。例えば、活性化処理部86a、86bは、活性化信号が有意な状態であることを検出して、第1バッテリ12a及び第2バッテリ12bの状態を、電力の出力が可能な活性化状態にする。活性化処理部86a、86bは、活性化信号が有意ではない状態になったことを検出して、第1バッテリ12a及び第2バッテリ12bの状態を、電力を出力しない非活性化状態にする。
【0065】
電池制御部88a、88bは、例えば、バッテリ本体56a、56bの各セルの状態(電圧、SOC等)の変化を検出し、各セルの充電状態が均一になるように調整する。また、電池制御部88a、88bは、ECU20からの制御等により、スイッチ60a、60bを制御して、第1バッテリ12a及び第2バッテリ12bを利用可能にする。
【0066】
通信処理部90a、90bは、ECU20と所定のプロトコルに従って通信する。例えば、通信処理部90a、90bは、第1バッテリ12a及び第2バッテリ12bの充放電を制御するための情報を、ECU20との間で通信する。通信処理部90a、90bは、ECU20が第1バッテリ12a及び第2バッテリ12bを識別するための識別情報を上記の情報に含めて通信する。通信処理部90a、90bは、ECU20から通知される識別情報を、BMU58a、58b内の不図示の記憶領域に格納する。
【0067】
そして、BMU58a、58bの電池制御部88a、88bは、第1バッテリ12a及び第2バッテリ12bの異常を通知するアラート信号を絶縁部62a、62b、コネクタ68a、68bのD端子92a、92b及びケーブル26a、26bを介してECU20に出力する。この場合、アラート信号は、第1バッテリ12a及び第2バッテリ12bの電圧を分圧した電圧信号(アナログ信号)であり、第1バッテリ12a及び第2バッテリ12bに故障等の異常が発生している場合には、所定の正常範囲を外れた信号レベルの電圧信号がECU20に出力される。
【0068】
また、本実施形態では、第1バッテリ12a又は第2バッテリ12bが異常である場合、第1バッテリ12a及び第2バッテリ12bとPDU54とを接続する電力伝達経路22を遮断して、第1バッテリ12a及び第2バッテリ12bとPDU54との間の電力の授受を停止することで、第1バッテリ12a、第2バッテリ12b、PDU54及びモータ18等を適切に保護する。そのため、コンタクタ駆動回路40は、コンタクタ14を遮断状態に切り替える態様に代えて、活性化信号生成部80を制御することで、正常なバッテリ12に対する活性化信号の生成及び送信を停止させてもよい。この場合、正常なバッテリ12において、BMU58a、58bへの活性化信号の供給が停止、すなわち、活性化信号が有意でない状態になれば、BMU58a、58bの動作が停止する。これにより、スイッチ60a、60bがオフとなり、電力伝達経路22を遮断することができる。
【0069】
[2.本実施形態の動作]
本実施形態に係る電力装置10は、以上のように構成されるものであり、次に、その動作について、図5を参照しながら説明する。ここでは、必要に応じて、図1図4も参照しながら説明する。この動作は、バッテリ12(例えば、第1バッテリ12a又は第2バッテリ12b)の異常を検出し、その検出結果に基づいて、コンタクタ14を遮断状態に切り替えるための動作である。
【0070】
図5は、電池制御部88a、88b(図3参照)から出力されるアラート信号(電圧信号)の時間変化を示すタイミングチャートである。
【0071】
この場合、活性化信号生成部80は、時点t1で、BMU58a、58bへの活性化信号の供給を開始、すなわち、活性化信号を有意な状態にする。そのため、時点t1前の時間帯において、バッテリ12(例えば、第1バッテリ12a及び第2バッテリ12b)は、活性化信号が供給されない待機状態(状態A)にある。状態Aでは、バッテリ12が起動していないため、アラート信号は0レベル(0V)である。また、状態Aでは、スイッチ60a、60bがオフしており、バッテリ12とPDU54との間の電力伝達経路22は遮断されている。すなわち、バッテリ12は、電力伝達経路22に対して未接続状態にある。
【0072】
時点t1で、活性化信号生成部80からBMU58a、58bへの活性化信号の供給が開始されると、BMU58a、58bは、活性化信号の供給を受けて、バッテリ12の初期化処理、すなわち、バッテリ12の起動処理を行う。起動処理は、時点t1から時点t2の時間帯に実行される。これにより、BMU58a、58bとECU20との間で各種の信号の送受信が可能な状態となる。ここで、バッテリ12の電圧値をVaとすると、この時間帯において、電池制御部88a、88bは、バッテリ12の電圧を分圧した電圧値Vb(Va>Vb)のアラート信号を出力する。この状態を状態Bと呼称する。
【0073】
起動処理が完了した時点t2から時点t3までの時間帯において、バッテリ12は、充放電処理を実行する。この時間帯において、電池制御部88a、88bは、電圧値Vbのパルスをアラート信号として所定の時間間隔で出力する。この状態を状態Cと呼称する。すなわち、状態Cにおいて、アラート信号は、最大値が電圧値Vb、且つ、最小値が電圧値Ve(Vb>Ve)のパルス信号である。なお、電圧値Veは、0Vに近い低レベルの電圧値である。また、状態Cでは、活性化信号生成部80からBMU58a、58bへの活性化信号の供給が継続して行われている。
【0074】
時点t3において、活性化信号生成部80がBMU58a、58bへの活性化信号の供給を停止、すなわち、活性化信号が有意でない状態になると、BMU58a、58bは、活性化信号生成部80からの活性化信号の供給再開を待つ状態に移行する。
【0075】
そして、時点t3から一定時間経過した時点t4で活性化信号の供給がない場合、BMU58a、58bは、バッテリ12の駆動を停止させる。これにより、電池制御部88a、88bから出力されるアラート信号は、0レベルになる。すなわち、バッテリ12は、時点t4以降、状態Aに移行する。
【0076】
ここで、時点t3から時点t4の時間帯において、バッテリ12が正常な状態にある場合、一点鎖線に示すように、アラート信号は、電圧値Vbの電圧信号として出力される。一方、時点t3から時点t4の時間帯において、バッテリ12が故障等の異常な状態にある場合、二点鎖線に示すように、アラート信号は、電圧値Vbよりも低い電圧値Veの電圧信号として出力される。
【0077】
すなわち、バッテリ12が正常な状態にあれば、時点t3から時点t4までの時間帯では、時点t1から時点t2までの起動処理の時間帯と同様に、状態Bとなる。しかしながら、バッテリ12が異常な状態にある場合、アラート信号は、正常時の信号レベルから外れた低レベルの電圧信号となる。この状態を状態Eと呼称する。
【0078】
前述のように、ECU20側では、ロジック回路36がアラート信号を直接読み取っている。そのため、ロジック回路36が状態Eのアラート信号を受信することで、バッテリ12の異常を確実に検出することができる。また、ロジック回路36の判断結果に基づき、駆動回路電源38がコンタクタ駆動回路40への電力供給を停止、すなわち、コンタクタ駆動回路40の動作を直接遮断することで、コンタクタ14を速やかに遮断状態に切り替え、電力装置10のシステム動作を停止させることができる。
【0079】
なお、図5では、一例として、t3~t4の時間帯におけるアラート信号の信号レベルに基づき、バッテリ12が異常であるかどうかを判断している。本実施形態では、ロジック回路36がバッテリ12から送信されるアラート信号を直接読み取ってバッテリ12の状態を監視している。そのため、ロジック回路36は、下記の場合でも、コンタクタ14を遮断状態に切り替えることが可能である。すなわち、バッテリ12の状態が時点t1前の未接続状態又は待機状態(状態A)である場合、バッテリ12の状態がt1~t2の時間帯での起動処理中(状態B)である場合、バッテリ12の状態がt3~t4の時間帯での停止処理(待機処理)中(状態B)である場合も、ロジック回路36は、これらの状態を検出し、コンタクタ14を遮断状態に切り替えることができる。
【0080】
図6図8は、比較例の電力装置100を示す。なお、比較例の電力装置100において、本実施形態に係る電力装置10(図1図6参照)と同じ構成要素については、同じ参照符号を付けて、詳細な説明を省略する。
【0081】
比較例の電力装置100では、ECU20内にロジック回路36及び駆動回路電源38が設けられていない。そのため、比較例では、ECU20内のMCU32が、トランシーバ30で受信されたデジタル信号と、各バッテリ異常検出部34での検出結果とに基づいて、コンタクタ14を接続状態又は遮断状態に切り替えるかどうかを判断する。
【0082】
すなわち、比較例では、MCU32のみでコンタクタ14を接続状態又は遮断状態に切り替えるかどうかを判断する。そのため、MCU32が故障等している場合には、バッテリ12の異常を示すデジタル信号及びアナログ信号がECU20に送信されても、MCU32でコンタクタ14を遮断状態に切り替えるかどうかの判断を適切に行うことができない。この結果、バッテリ12が異常である場合でも、コンタクタ14を遮断状態に切り替えることができなくなる。
【0083】
これに対して、本実施形態に係る電力装置10では、前述のように、MCU32が故障等している場合でも、ロジック回路36を用いて、コンタクタ14を遮断状態又は接続状態に切り替えるかどうかを判断するので、コンタクタ14を適切に遮断状態又は接続状態に切り替えることができる。
【0084】
[3.本実施形態の効果]
以上説明したように、本実施形態に係る電力装置10は、バッテリ12(12a、12b)(蓄電部)と、バッテリ12と電力伝達経路22を介して電気的に接続されるモータ18(動作部)と、遮断状態及び接続状態に切替可能であり、遮断状態で電力伝達経路22を遮断し、接続状態で電力伝達経路22を接続する断続部(コンタクタ14、スイッチ60a、60b)と、断続部を制御するECU20(制御部)とを備える。
【0085】
この場合、ECU20は、断続部を遮断状態又は接続状態に切り替える第1制御経路48と、第1制御経路48と並列に設けられ、断続部を遮断状態又は接続状態に切り替える第2制御経路50とを有する。
【0086】
この構成によれば、2つの制御経路48、50の各々が断続部を遮断状態又は接続状態に切り替えるかどうかを判断する。これにより、一方の制御経路48に故障等が発生している場合でも、他方の制御経路50で断続部を遮断状態又は接続状態に切り替えるかどうかを判断することができる。そのため、断続部を適切に遮断状態又は接続状態に切り替えることができる。従って、本実施形態では、バッテリ12及びモータ18を含めた電力装置10全体を適切に保護することが可能となる。
【0087】
この場合、ECU20は、第1制御経路48と第2制御経路50とが断続部に対して異なる状態を指示する場合、第2制御経路50の指示を優先させる。
【0088】
これにより、第1制御経路48が故障等によって断続部を遮断状態又は接続状態に切り替えるかどうかの判断ができない場合でも、第2制御経路50で断続部を遮断状態又は接続状態に切り替えるかどうかを正しく判断することができるので、断続部を適切に遮断状態又は接続状態に切り替えることができる。
【0089】
また、第1制御経路48では、MCU32が、バッテリ12から送られてくるデジタル信号(第1信号)を受信する第1受信部と、受信したデジタル信号に基づいて、断続部を遮断状態又は接続状態に切り替えるかどうかの演算処理を行う第1演算部と、この演算結果を示す信号(第2信号)を断続部に送信する第1送信部として機能する。一方、第2制御経路50では、ロジック回路36が、バッテリ12から送られてくるアナログ信号(第3信号)を受信する第2受信部と、受信したアナログ信号に基づいて、断続部を遮断状態又は接続状態に切り替えるかどうかの演算処理を行う第2演算部と、この演算結果を示す信号(第4信号)を断続部に送信する第2送信部として機能する。
【0090】
これにより、MCU32が故障し、断続部を遮断状態又は接続状態に切り替えるかどうかの判断ができない場合でも、ロジック回路36がバッテリ12から送られてくるアナログ信号を直接読み込み、該アナログ信号を用いて断続部を遮断状態又は接続状態に切り替えるかどうかの判断処理(演算処理)を的確に行うことができる。
【0091】
また、ロジック回路36は、アナログ信号がバッテリ12の異常を示す信号であるときに、異常を示す信号に基づいて、断続部の遮断状態への切り替えを指示することを決定する。
【0092】
これにより、ロジック回路36は、バッテリ12が異常である場合、異常を示す信号に基づいて、断続部を遮断状態に確実に切り替えることができる。
【0093】
バッテリ12は、蓄電装置が着脱可能に装着される装着部を有する。ロジック回路36は、装着部に装着された蓄電装置のバッテリ12から送られてくるアナログ信号(第3信号)と、装着部に蓄電装置が装着されているか否かを示す情報(第5信号)とを受信し、アナログ信号と該情報とに基づいて、装着部に蓄電装置が装着され、且つ、アナログ信号が蓄電部の異常を示す信号である場合、断続部を遮断状態に切り替えることを決定する。
【0094】
これにより、装着部に蓄電装置が装着されているバッテリ12について、該バッテリ12が異常である場合に、断続部を遮断状態に正確に切り替えることができる。
【0095】
また、バッテリ12は、通信線24(第1通信線)を介して、デジタル信号(第1信号)をMCU32に送信すると共に、ケーブル26(26a、26b)(第2通信線)を介して、アナログ信号(第3信号)をロジック回路36に送信する。
【0096】
この場合、アナログ信号は、バッテリ12が正常又は異常であることをバッテリ12の外部に通知するためのアラート信号である。そのため、このアラート信号をロジック回路36で直接読み取り、該アナログ信号に基づいて、バッテリ12が異常であるかどうかを判断することで、断続部を遮断状態又は接続状態に切り替えるかどうかを正確に判断することができる。また、デジタル信号とアナログ信号とが異なる経路でECU20に送信されるので、MCU32がデジタル信号を受信することができない場合でも、ロジック回路36は、受信したアナログ信号に基づいて、バッテリ12が異常であるかどうかを判断することができる。断続部の遮断状態又は接続状態への切り替えを確実に行うことができる。
【0097】
また、バッテリ12は、蓄電装置が着脱可能に装着される装着部を有する。第2制御経路50では、ロジック回路36が、複数の装着部に装着された複数の蓄電装置を備える複数のバッテリ12から送られてくる複数のアナログ信号(第6信号)と、複数の装着部に複数の蓄電装置が装着されているか否かを示す情報(第7信号)とを受信する第3受信部と、ロジック回路36が受信した複数のアナログ信号、及び、当該情報に基づいて、断続部を遮断状態又は接続状態に切り替えるかどうかの演算処理を行う第3演算部と、この演算結果を示す信号(第8信号)を断続部に送信する第3送信部として機能する。
【0098】
これにより、電力装置10が複数のバッテリ12を備える場合でも、断続部を遮断状態又は接続状態に切り替えるかどうかを適切に判断することができる。
【0099】
この場合、ロジック回路36は、複数のバッテリ12の各々について、アナログ信号(第6信号)がバッテリ12の異常を示す信号であり、且つ、上記の情報が装着部に蓄電装置が装着されていることを示す信号であるかどうかを判断する。そして、ロジック回路36は、少なくとも1つのバッテリ12について、アナログ信号がバッテリ12の異常を示す信号であり、且つ、上記の情報が装着部に蓄電装置が装着されていることを示す信号である場合、断続部を遮断状態に切り替えることを決定する。
【0100】
これにより、電力装置10が複数のバッテリ12を備える場合でも、断続部を遮断状態に確実に切り替えることができる。
【0101】
なお、本発明は、上述の実施形態に限らず、この明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0102】
10…電力装置
12、12a、12b…バッテリ(蓄電部)
14…コンタクタ(断続部) 18…モータ(動作部)
20…ECU(制御部) 22…電力伝達経路
48…第1制御経路 50…第2制御経路
60a、60b…スイッチ(断続部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8