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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156845
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】吸収器および空調システム
(51)【国際特許分類】
   F25B 29/00 20060101AFI20221006BHJP
   F28F 1/32 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
F25B29/00 421
F28F1/32 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060734
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】若林 努
(72)【発明者】
【氏名】服部 沙織
(72)【発明者】
【氏名】八橋 元
(72)【発明者】
【氏名】井上 修行
(72)【発明者】
【氏名】井汲 米造
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 潔
(57)【要約】
【課題】空冷条件で使用される扁平多穴伝熱管を用いた吸収器において、各々の扁平多穴伝熱管の入口部分で、位置による冷媒蒸気の偏りを抑制できる吸収器および空調システムを実現する。
【解決手段】扁平多穴伝熱管2と、扁平多穴伝熱管2の一端側2aにおいて扁平多穴伝熱管2と流体連通する吸収液供給部3と、吸収液供給部3に流体連通する冷媒供給管4と、を備える吸収器1であって、扁平多穴伝熱管2は、伝熱管本体21と、伝熱管本体21の内側を複数の流路23に区分する隔壁部材22と、を有し、一端側2aにおいて、隔壁部材22が伝熱管本体21より引退して設けられている部分が存在する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
扁平多穴伝熱管と、
前記扁平多穴伝熱管の一端側において前記扁平多穴伝熱管と流体連通する吸収液供給部と、
前記吸収液供給部に流体連通する冷媒供給管と、を備える吸収器であって、
前記扁平多穴伝熱管は、伝熱管本体と、前記伝熱管本体の内側を複数の流路に区分する隔壁部材と、を有し、
前記一端側において、前記隔壁部材が前記伝熱管本体より引退して設けられている部分が存在する吸収器。
【請求項2】
前記扁平多穴伝熱管は、前記扁平多穴伝熱管の面方向が前記冷媒供給管の長手方向と交差する配置で、前記冷媒供給管の長手方向に間隔を空けて並べて複数配置され、
複数の前記扁平多穴伝熱管のうちの、前記冷媒供給管の上流側に設けられている少なくとも一つの前記扁平多穴伝熱管は、過冷却器として構成されている請求項1に記載の吸収器。
【請求項3】
前記一端側において前記隔壁部材が前記伝熱管本体より引退する長さの前記伝熱管本体の幅に対する割合は、0.2~2.0である請求項1または2に記載の吸収器。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の吸収器を備える空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収器および空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空調機における冷却システムとして、吸収サイクルが用いられている。吸収サイクルでは、低圧下で冷媒を蒸発させることによって、冷却対象を冷却する。このとき、低圧下での冷媒の蒸発を可能にするため、冷媒が吸収器において吸収液に吸収される。
【0003】
吸収器の性能を向上するべく、吸収器における熱交換の効率を高める種々の検討が行われている。たとえば、特開2006-162154号公報(特許文献1)には、伝熱プレートが積層された積層プレート式吸収器が開示されている。特許文献1の技術によれば、吸収器の小型化と高性能化とを両立しうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-162154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の技術においては、空冷条件で使用される扁平多穴伝熱管は想定されておらず、複数ある各々の扁平多穴伝熱管の入口部分で、位置による冷媒蒸気の偏りが生じ、これによって吸収器の性能が低下する場合があった。
【0006】
そこで、空冷条件で使用される扁平多穴伝熱管を用いた吸収器において、各々の扁平多穴伝熱管の入口部分で、位置による冷媒蒸気の偏りを抑制できる吸収器および空調システムの実現が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る吸収器の特徴構成は、扁平多穴伝熱管と、前記扁平多穴伝熱管の一端側において前記扁平多穴伝熱管と流体連通する吸収液供給部と、前記吸収液供給部に流体連通する冷媒供給管と、を備える吸収器であって、前記扁平多穴伝熱管は、伝熱管本体と、前記伝熱管本体の内側を複数の流路に区分する隔壁部材と、を有し、前記一端側において、前記隔壁部材が前記伝熱管本体より引退して設けられている部分が存在する点にある。
【0008】
この構成によれば、隔壁部材が扁平多穴伝熱管の一端側において伝熱管本体より引退して設けられていることによって、扁平多穴伝熱管の入口部分において自由空間が形成される。これによって、当該自由空間において冷媒が吸収液に均一に混合されうる。その結果、空冷条件で使用される扁平多穴伝熱管を用いた吸収器の性能向上が可能になる。
【0009】
以下、本発明の好適な態様について説明する。ただし、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定されるわけではない。
【0010】
本発明に係る吸収器のさらなる特徴構成は、前記扁平多穴伝熱管は、前記扁平多穴伝熱管の面方向が前記冷媒供給管の長手方向と交差する配置で、前記冷媒供給管の長手方向に間隔を空けて並べて複数配置され、複数の前記扁平多穴伝熱管のうちの、前記冷媒供給管の上流側に設けられている少なくとも一つの前記扁平多穴伝熱管は、過冷却器として構成されている点にある。
【0011】
この構成によれば、吸収液のフラッシュ蒸気の発生による吸収液の偏りが防止されうる。
【0012】
本発明に係る吸収器のさらなる特徴構成は、前記一端側において前記隔壁部材が前記伝熱管本体より引退する長さの前記伝熱管本体の幅に対する割合は、0.2~2.0である点にある。
【0013】
この構成によれば、冷媒と吸収液とが混合されうる自由空間の大きさを適度に取ることができる。
【0014】
本発明に係る空調システムの特徴構成は、上記のいずれかの吸収器を備える点にある。
【0015】
この構成によれば、吸収器の冷却方式を空冷式とした空調システムを提供しうる。
【0016】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係る空調システムのフロー図である。
図2】実施形態に係る吸収器の断面図である。
図3図2のIII-III線における断面図である。
図4】隔壁部材の第一の変形例を示す図である。
図5】隔壁部材の第二の変形例を示す図である。
図6】隔壁部材の第三の変形例を示す図である。
図7】吸収器の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る吸収器および空調システムの実施形態について、図面を参照して説明する。以下では、本発明に係る吸収器を、カーエアコン用の空調システム100に備えられた吸収器1に適用した例について説明する。
【0019】
〔空調システムの構成〕
本実施形態に係る空調システム100は、吸収冷凍サイクルと圧縮冷凍サイクルとが、冷媒を共用する方式で融合された構成を有する。空調システム100は、高圧段部110、低圧段部120、および気液分離装置130を有する(図1)。
【0020】
高圧段部110には、ポンプ111、溶液減圧装置112、溶液熱交換器113、再生器114、凝縮器115、および冷媒膨張装置116、および吸収器1が設けられている。
【0021】
低圧段部120には、冷媒膨張装置121、蒸発器122、および圧縮機123が設けられている。なお、圧縮機123はモータ124によって駆動される。ただし、圧縮機123はエンジンなどの動力によって駆動されてもよい。
【0022】
気液分離装置130は、高圧段部110と低圧段部120との境界に設けられており、高圧段部110においては冷媒膨張装置116の下流かつ吸収器1の上流の位置に設けられており、低圧段部120においては圧縮機123の下流かつ冷媒膨張装置121の上流に設けられている。
【0023】
本実施形態では、冷媒としてHFO系冷媒(たとえばR1234yf)を用いうるが、これらに限定されない。また、本実施形態では、吸収液としてエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、およびジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどを用いうるが、これらに限定されない。
【0024】
〔空調システムの動作〕
空調システム100が冷房動作する場合を記載する。蒸発器122において車内の空気の冷却が行われる。すなわち、蒸発器122において冷媒が車内の空気から熱を受け取り、冷媒が蒸発する。冷媒は圧縮機123において圧縮され過熱蒸気となり、気液分離装置130に導入される。
【0025】
後述するが、再生器114において冷媒を吸収した吸収液(強溶液)から分離された冷媒が、凝縮器115において凝縮される。凝縮された冷媒は、冷媒膨張装置116において減圧されて湿り蒸気となり、気液分離装置130に導入される。当該湿り蒸気の冷媒は、気液分離装置130において、圧縮機123において圧縮された前述の過熱蒸気の冷媒と混合されたのちに、飽和液と飽和蒸気に気液分離される。
【0026】
気液分離装置130において分離された冷媒の気体成分(飽和蒸気)は、高圧段部110を流通する。冷媒の気体成分は、吸収器1において吸収液に吸収される。本実施形態では吸収器1を空冷式としており、冷媒と吸収液との混合により生じる発熱は、空冷により取り除かれる。冷媒を吸収した吸収液(強溶液)は、ポンプ111によって昇圧されて溶液熱交換器113に至り、溶液熱交換器113において予熱された後に再生器114に至る。
【0027】
再生器114において、冷媒を吸収した吸収液(強溶液)が加熱される。このとき、冷媒と吸収液との沸点の違いにより、一部の冷媒が気化する。なお、加熱のエネルギーは、エンジンの排熱により賄われる。
【0028】
再生器114において一部の冷媒が分離された吸収液(弱溶液)は、溶液熱交換器113において冷却されたのちに、溶液減圧装置112において減圧されて吸収器1に戻る。
【0029】
再生器114において吸収液(強溶液)から分離された冷媒は、凝縮器115において凝縮される。前述したように、凝縮された冷媒は、冷媒膨張装置116において減圧されて湿り蒸気となり、気液分離装置130に導入される。
【0030】
ただし、車両の始動直後などのエンジンの排熱が少ない状況では、再生器114において冷媒を吸収した吸収液(強溶液)を加熱するためのエネルギーが不足する場合がある。この場合は、吸収器1、ポンプ111、溶液熱交換器113、および再生器114が設けられた経路に加えて、圧縮機117が設けられた経路も使用される。この場合、気液分離装置130において分離された冷媒の気体成分の一部が、圧縮機117で圧縮されて過熱蒸気となり、再生器114において吸収液(強溶液)から分離された冷媒とともに凝縮器115に導入される。なお、圧縮機117は、モータ118によって駆動される。ただし、圧縮機117はエンジンなどの動力によって駆動されてもよい。再生器114において冷媒を吸収した吸収液(強溶液)を加熱するためのエネルギーがほとんどない場合は、気液分離装置130において分離された冷媒の気体成分のすべてが、圧縮機117で圧縮されて過熱蒸気となり、凝縮器115に導入される。
【0031】
〔吸収器の構成〕
本実施形態に係る吸収器1は、扁平多穴伝熱管2と、吸収液供給部3と、冷媒供給管4と、フィン5と、を備える(図2図3)。扁平多穴伝熱管2は、その一端側2aにおいて吸収液供給部3と流体連通している。吸収液供給部3には、冷媒供給管4が収容されており、冷媒供給管4に設けられた開口部41を介して吸収液供給部3と冷媒供給管4とが流体連通している。
【0032】
扁平多穴伝熱管2は複数設けられており、扁平多穴伝熱管2の面方向(図3のYZ平面方向)が冷媒供給管4の長手方向(図2のX方向)と交差(略直交)する配置で、冷媒供給管4の長手方向(図2のX方向)に間隔を空けて並べて配置されている。扁平多穴伝熱管2の面方向(図3のYZ平面方向)と直交する断面は、角丸四角形状に形成されている。また、扁平多穴伝熱管2の間には、コルゲート状のフィン5が設けられている。
【0033】
扁平多穴伝熱管2は、扁平形状の伝熱管本体21の内側に、複数の隔壁部材22が設けられた構造を有する(図3)。伝熱管本体21の内側は、複数の隔壁部材22によって複数の流路23に区分される。なお、隔壁部材22は、内部を流れる流体(冷媒と吸収液の混合物)の伝熱改良を図るフィンの役割をする。
【0034】
隔壁部材22は、扁平多穴伝熱管2の面方向(図3のYZ平面方向)と交わる方向(図2のXZ平面方向)に面を有する平板状の形状を有し、扁平多穴伝熱管2の一端側2aにおいて伝熱管本体21より引退して設けられている。これによって、扁平多穴伝熱管2の一端側2aには、隔壁部材22によって区分されていない自由空間24が形成される。扁平多穴伝熱管2の一端側2aにおいて隔壁部材22が伝熱管本体21より引退する長さL(すなわち自由空間24の長さL)の伝熱管本体21の幅W(図3のY方向の幅W)に対する割合は、0.2~2.0である。
【0035】
複数の扁平多穴伝熱管2の流路は、他端側2bにおいて集約されて、ポンプ111に接続される。
【0036】
吸収液供給部3は、扁平多穴伝熱管2の一端側2aに吸収液を供給できるように構成されている。溶液減圧装置112において減圧された吸収液が、配管31を介して吸収液供給部3に供給される。
【0037】
冷媒供給管4は、扁平多穴伝熱管2の一端側2aに冷媒を供給できるように構成されている。気液分離装置130において分離された冷媒の気体成分が、冷媒供給管4を経て吸収器1に供給される。冷媒供給管4と吸収液供給部3の配管31とは二重管構造に形成されている。図3に示すように、冷媒供給管4は、扁平多穴伝熱管2の一端側2aの略中央(図3のY方向に沿う扁平多穴伝熱管2の幅の略中央)に相対して配置されている。また、冷媒供給管4は、吸収液供給部3の幅方向(図3のY方向)および高さ方向(図3のZ軸方向)の略中央に配置されている。
【0038】
冷媒供給管4は、複数の開口部41を有する。開口部41が設けられている冷媒供給管4の長手方向の位置(図2のX方向)は、扁平多穴伝熱管2が設けられている位置と略一致している。
【0039】
冷媒供給管4を流通する冷媒は、開口部41を通じて吸収液供給部3に流入し、ここで吸収液と混合される。本実施形態では、扁平多穴伝熱管2の一端側2aにおいて、伝熱管本体21の内部に自由空間24が形成されているため、自由空間24において冷媒が吸収液中に十分に拡散しうる。これによって、複数の扁平多穴伝熱管2において、冷媒と吸収液とが十分に混合されやすく、かつ、吸収液中の冷媒の濃度が均一になりやすい。
【0040】
フィン5は、吸収器に用いられるフィンとして公知の材料により形成され、公知の形状を有する。フィン5は、たとえば銅製、アルミニウム製などでありうる。本実施形態では、吸収器1を冷却する方式として空冷式を採用しており、フィン5の隙間には、図2の紙面に直交する方向に空気が流通する。そして、フィン5および扁平多穴伝熱管2の表面において、扁平多穴伝熱管2の内側を流れる流体(冷媒と吸収液との混合物)と空気との間での熱交換が行われる。
【0041】
〔隔壁部材の変形例〕
以下では、隔壁部材22の変形例について説明する。なお、いずれの変形例においても伝熱管本体21の構造は上記の実施形態と同様である。
【0042】
図4に示す第一の変形例では、波板状に形成された隔壁部材22Aが用いられる。上記の実施形態では複数の隔壁部材22が用いられているが、この変形例では、隔壁部材22Aは一体に形成されている。また、隔壁部材22Aには空孔221が設けられている。これによって、流路23を流通する冷媒と吸収液との混合物の流れが複雑になり、冷媒と吸収液との混合が促進される。
【0043】
図5に示す第二の変形例では、平板状の隔壁部材22Bが用いられる。隔壁部材22Bには空孔222が設けられている。空孔222がもたらす作用効果は第一の変形例の空孔221と同様である。なお、図5では隔壁部材22Bが一つのみ示されているが、隔壁部材22Bが複数設けられてもよい。
【0044】
図6に示す第三の変形例では、オフセット構造の隔壁部材22Cが用いられる。隔壁部材22Cでは、波型部分223が互い違いに設けられており、これによって複雑な流路23が形成される。
【0045】
〔吸収器の変形例〕
図7に示す変形例では、複数の扁平多穴伝熱管2のうち、最も冷媒供給管4の上流側(図7紙面左側)に位置する扁平多穴伝熱管2Aが、過冷却器として構成されている。この変形例では、吸収液供給部3に吸収液を供給する配管31が、吸収器1Aの上部に接続されている。扁平多穴伝熱管2の他端側2bにおいて、扁平多穴伝熱管2A(過冷却器)と他の扁平多穴伝熱管2との間に隔壁32が設けられており、配管31から導入された吸収液は、扁平多穴伝熱管2A(過冷却器)を経由して吸収液供給部3に至る。すなわち、吸収液が吸収液供給部3に至る前に冷却されることになる。この変形例によれば、吸収液のフラッシュ蒸気の発生による吸収液の偏りが防止されうる。
【0046】
〔本実施形態の作用効果〕
従来の吸収器では、伝熱管における冷媒と吸収液との混合が不十分な場合があり、これによって、伝熱管内部に流通する流体の温度が十分に上がらない場合があった。そのため、当該流体を冷却する方式として空冷を採用することが難しい場合があった。本実施形態によれば、自由空間24を設けてあることによって、冷媒と吸収液とが十分に混合されやすく、かつ、吸収液中の冷媒の濃度が均一になりやすいため、伝熱管内部に流通する流体の温度が空冷を採用可能な水準にまで上昇しうる。したがって、吸収器の冷却方式として空冷を採用できるようになった。
【0047】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明に係る吸収器および空調システムのその他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0048】
上記の実施形態では、吸収器1が、圧縮吸収サイクルとして構成されている空調システム100に設けられている例について説明した。しかし、本発明に係る吸収器は、純粋な吸収サイクルに設けられていてもよい。
【0049】
上記の実施形態では高圧段部110に圧縮機117が設けられている構成を例として説明したが、本発明に係る空調システムは、圧縮機を有さないものであってもよい。
【0050】
上記の実施形態では、複数の扁平多穴伝熱管2の全てに自由空間が設けられている構成を例として説明した。しかし、本発明係る吸収器において複数の扁平伝熱管が設けられる場合において、一部の扁平多穴伝熱管においてのみ自由空間が設けられてもよい。すなわち、隔壁部材が伝熱管本体より引退して設けられている扁平多穴伝熱管と、隔壁部材が伝熱管本体より引退していない扁平多穴伝熱管とが混在していてもよい。
【0051】
上記の実施形態では、扁平多穴伝熱管2の一端側2aにおいて隔壁部材22が伝熱管本体21より引退する長さLの伝熱管本体21の幅Wに対する割合が0.2~2.0である構成を例として説明した。しかし、本発明に係る吸収器において、伝熱管本体と隔壁部材との長さの関係は、隔壁部材が一端側において伝熱管本体より引退している限りにおいて限定されない。
【0052】
上記の実施形態では、すべての隔壁部材22が伝熱管本体21より引退している構成を例として説明した。しかし、本発明に係る吸収器において、扁平伝熱管の一端側において、隔壁部材が伝熱管本体より引退して設けられている部分が一部分でも存在すればよい。たとえば、上記の実施形態において、複数の隔壁部材22の一部のみを伝熱管本体21より引退させ、他の隔壁部材22の長さを伝熱管本体21の長さと略同一にしてもよい。なお、扁平伝熱管の一端側のうち、少なくとも冷媒供給管と相対する部分において隔壁部材が伝熱管本体より引退して設けられていることが好ましく、全ての隔壁部材が伝熱管本体より引退して設けられていることがより好ましい。
【0053】
その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、たとえば車載用の空調システムに利用できる。
【符号の説明】
【0055】
1 :吸収器
2 :扁平多穴伝熱管
2a :扁平多穴伝熱管の一端側
2b :扁平多穴伝熱管の他端側
21 :伝熱管本体
22 :隔壁部材
23 :流路
24 :自由空間
3 :吸収液供給部
31 :配管
4 :冷媒供給管
41 :開口部
5 :フィン
100 :空調システム
110 :高圧段部
111 :ポンプ
112 :溶液減圧装置
113 :溶液熱交換器
114 :再生器
115 :凝縮器
116 :冷媒膨張装置
117 :圧縮機
118 :モータ
120 :低圧段部
121 :冷媒膨張装置
122 :蒸発器
123 :圧縮機
124 :モータ
130 :気液分離装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7