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特開2022-156846接合材、電気化学モジュール、電気化学装置、固体酸化物形燃料電池、固体酸化物形電解セル、エネルギーシステム及び電気化学モジュールの製造方法
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  • 特開-接合材、電気化学モジュール、電気化学装置、固体酸化物形燃料電池、固体酸化物形電解セル、エネルギーシステム及び電気化学モジュールの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156846
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】接合材、電気化学モジュール、電気化学装置、固体酸化物形燃料電池、固体酸化物形電解セル、エネルギーシステム及び電気化学モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/02 20160101AFI20221006BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20221006BHJP
   H01M 8/0208 20160101ALI20221006BHJP
   H01M 8/1213 20160101ALI20221006BHJP
   H01M 8/1226 20160101ALI20221006BHJP
   H01M 8/0612 20160101ALI20221006BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20221006BHJP
   C25B 13/02 20060101ALI20221006BHJP
   C25B 9/65 20210101ALI20221006BHJP
   C25B 9/19 20210101ALI20221006BHJP
【FI】
H01M8/02
H01M8/12 101
H01M8/12 102A
H01M8/0208
H01M8/1213
H01M8/1226
H01M8/0612
H01M8/04 Z
C25B13/02 302
C25B9/65
C25B9/19
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060736
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】中尾 孝之
(72)【発明者】
【氏名】越後 満秋
(72)【発明者】
【氏名】神家 規寿
(72)【発明者】
【氏名】稲家 章雄
(72)【発明者】
【氏名】依田 将和
【テーマコード(参考)】
4K021
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021AA09
4K021BA02
4K021CA07
4K021DB36
4K021DB43
4K021DB48
4K021DB53
4K021DC01
4K021DC03
4K021DC15
4K021EA05
5H126AA02
5H126BB06
5H126GG02
5H126GG08
5H126GG12
5H126JJ01
5H126JJ04
5H127AA07
5H127AB23
5H127BA05
5H127BA13
5H127BA18
5H127BA34
5H127BA37
5H127BA57
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB19
5H127BB37
5H127EE03
5H127GG04
5H127GG09
(57)【要約】
【課題】低温での焼き付けでも接合性能が確保できる接合材を提供する。
【解決手段】Fe及びCrを含む合金部材26と、電解質層4を電極層2と対極電極層6との間に挟んで構成される単セルを有する電気化学素子Eとの間で、両者を接合する接合材10であって、合金部材26と単セルとを接合した状態での平均粒径が0.1μm以上0.2μm以下である複数の微粒子が集合した構造を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Fe及びCrを含む合金部材と、電解質層を電極層と対極電極層との間に挟んで構成される単セルを有する電気化学素子との間で、両者を接合する接合材であって、
前記合金部材と前記単セルとを接合した状態での平均粒径が0.1μm以上0.2μm以下である複数の微粒子が集合した構造を有する接合材。
【請求項2】
Coを含有する請求項1に記載の接合材。
【請求項3】
Niを含有する請求項1又は2に記載の接合材。
【請求項4】
Co、Mn、Cu及びNiの内の少なくとも2つ以上を含有する金属酸化物を含む請求項1に記載の接合材。
【請求項5】
前記合金部材と前記電気化学素子とを接合した状態での空隙率が60%以上である請求項1~4の何れか一項に記載の接合材。
【請求項6】
前記合金部材と、前記電気化学素子と、前記合金部材及び前記電気化学素子の間を接合する請求項1~5の何れか一項に記載の接合材とを備える電気化学モジュール。
【請求項7】
複数の前記電気化学素子を備え、複数の前記電気化学素子同士が前記合金部材によって電気的に接続されている請求項6に記載の電気化学モジュール。
【請求項8】
前記電気化学素子は、前記電解質層と前記対極電極層の間に反応防止層を有する請求項6又は7に記載の電気化学モジュール。
【請求項9】
前記電気化学素子は、前記単セルを支持する金属支持体を有する請求項6又は7に記載の電気化学モジュール。
【請求項10】
請求項6~9の何れか一項に記載の電気化学モジュールを備え、前記単セルで発電反応を生じさせる固体酸化物形燃料電池。
【請求項11】
請求項6~9の何れか一項に記載の電気化学モジュールを備え、前記単セルで電解反応を生じさせる固体酸化物形電解セル。
【請求項12】
請求項6~9の何れか一項に記載の電気化学モジュールと、前記電気化学モジュールに還元性成分を含有するガスを流通する燃料変換器、或いは前記電気化学モジュールで生成する還元性成分を含有するガスを変換する燃料変換器と、を少なくとも有する電気化学装置。
【請求項13】
請求項6~9の何れか一項に記載の電気化学モジュールと、前記電気化学モジュールから電力を取り出す或いは前記電気化学モジュールに電力を流通する電力変換器とを少なくとも有する電気化学装置。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の電気化学装置と、前記電気化学装置から排出される熱を再利用する排熱利用部を有するエネルギーシステム。
【請求項15】
Fe及びCrを含む合金部材と、電解質層を電極層と対極電極層との間に挟んで構成される単セルを有する電気化学素子との間を、両者を接合するための接合材を用いて接合する電気化学モジュールの製造方法であって、
前記合金部材と前記電気化学素子の間に前記接合材の材料を配置して1000℃未満の温度で焼成する接合工程を含む電気化学モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合材、電気化学モジュール、電気化学装置、固体酸化物形燃料電池、固体酸化物形電解セル、エネルギーシステム及び電気化学モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば固体酸化物形燃料電池(SOFC)は、電解質層を燃料極及び空気極で挟んだ構造の単セル同士をそれらの間に合金部材で構成されるセル間接続部材を設けた形態で積層したセルスタックとして構成される。その場合、単セルとセル間接続部材との間を電気的及び物理的に接続するために、接合材が用いられる。接合材には、低抵抗・高密着性であることが求められる。
【0003】
一般的な接合材としては、非金属酸化物材料やAg、Ag-Pd合金やPt等の貴金属材料がある。貴金属材料であるPtやAgは作動環境下で低抵抗かつ高密着性を示すが、Ptは非常に高価な材料である点が課題であり、AgはSOFCの作動環境下で蒸発及び絶縁部での析出による短絡リスク等の課題がある。
【0004】
接合材としての非金属酸化物材料の場合、ペロブスカイト系酸化物、スピネル系酸化物が挙げられる。
【0005】
ペロブスカイト系酸化物は、空気極材料に使用される材料と似た組成のものを用い、組成としては、La-Sr-Co-Fe-O系やLa-Sr-Mn-O系、La-Sr-Ni-O系に代表される酸化物が挙げられる。これらの材料は空気極との親和性もあり、熱膨張係数が一致する点や電子導電性が高い点で好ましい。特許文献1(特開2016-195101号公報)には、接合材として、La、Sr、Pr、Sm、Fe、Co、Mn及びNiから選ばれる金属を含むペロブスカイト型酸化物を主材とする導電性セラミックス材料を用いる例が記載されている。そして、特許文献1では、接合材の焼き付けが、1000℃~1150℃の温度で行われる。
【0006】
このように、単セルとセル間接続部材とを高密着な状態で接合材を焼き付けるには一般的に1000℃以上の温度が必要となり、SOFCセルスタックの構成によっては、温度の制約によりそのような接合材を使用できない場合がある。例えば、金属支持型のSOFCや1000℃以上の温度履歴をかけられないガラスシール部等を備える燃料電池では、電極材料のシンタリング等の悪影響が挙げられるため、1000℃以上の焼き付けが必要になる接合材を使用できない。
【0007】
また、Co-MnやCu-Mn、Co-Ni、Co-Ni-Mn、Ni-Mn等の遷移金属を1種類以上含有するスピネル系酸化物は、高い電子導電性やセル材料との熱膨張係数が一致していることから、ペロブスカイト系酸化物と同様に、接合材の候補として考えられる。
【0008】
しかし、接合材に求められる、低抵抗性能及び高密着性能は、焼成温度とトレードオフの関係にあり、焼成温度が低下するほど密着性が低下して、それにより接触抵抗が増大するという問題があるため、焼成温度の低減は困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2016-195101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のように、燃料電池等を構成する単セルとセル間接続部材などの合金部材とを接合するための接合材は、低温での焼き付けを行った場合でも、低抵抗性能及び高密着性能といった電気的性能及び物理的性能を含む接合性能を確保することが望まれる。
【0011】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、低温での焼き付けでも接合性能が確保できる接合材、電気化学モジュール、電気化学装置、固体酸化物形燃料電池、固体酸化物形電解セル、エネルギーシステム及び電気化学モジュールの製造方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための本発明に係る接合材の特徴構成は、Fe及びCrを含む合金部材と、電解質層を電極層と対極電極層との間に挟んで構成される単セルを有する電気化学素子との間で、両者を接合する接合材であって、
前記合金部材と前記単セルとを接合した状態での平均粒径が0.1μm以上0.2μm以下である複数の微粒子が集合した構造を有する点にある。
ここで、接合材はCoを含有することが好ましい。
また、接合材はNiを含有することが好ましい。
更に、接合材はCo、Mn、Cu及びNiの内の少なくとも2つ以上を含有する金属酸化物を含むことが好ましい。
また更に、前記合金部材と前記電気化学素子とを接合した状態での空隙率が60%以上であることが好ましい。
【0013】
上記特徴構成によれば、合金部材と単セルとを接合した状態での平均粒径が0.1μm以上0.2μm以下である複数の微粒子が集合した構造を有する接合材を用いることで、低温での焼き付けでも低抵抗性能及び高密着性能を確保できた。
従って、低温での焼き付けでも接合性能が確保できる接合材を提供できる。
【0014】
上記目的を達成するための本発明に係る電気化学モジュールの特徴構成は、前記合金部材と、前記電気化学素子と、前記合金部材及び前記電気化学素子の間を接合する上記接合材とを備える点にある。
【0015】
上記特徴構成によれば、低温での焼き付けでも、合金部材と電気化学素子との間の接合性能が確保できる電気化学モジュールを提供できる。
【0016】
本発明に係る電気化学モジュールの別の特徴構成は、複数の前記電気化学素子を備え、複数の前記電気化学素子同士が前記合金部材によって電気的に接続されている点にある。
【0017】
上記特徴構成によれば、上述の電気化学素子が複数集合した状態で配置されるので、電気化学モジュールを構成する一つの電気化学素子の能力は低くても、それらが複数組み合わさった電気化学モジュールの能力を高くすることができる。
【0018】
本発明に係る電気化学モジュールの更に別の特徴構成は、前記電気化学素子は、前記電解質層と前記対極電極層の間に反応防止層を有する点にある。
【0019】
上記特徴構成によれば、電解質層の成分と対極電極層の成分との間の反応を防止して、長期的な耐久性に優れた素子を実現できる。
【0020】
本発明に係る電気化学モジュールの更に別の特徴構成は、前記電気化学素子は、前記単セルを支持する金属支持体を有する点にある。
【0021】
上記特徴構成によれば、金属支持体によって電気化学素子を支持してその強度を保つことができる。
【0022】
上記目的を達成するための本発明に係る固体酸化物形燃料電池の特徴構成は、上記電気化学モジュールを備え、前記単セルで発電反応を生じさせる点にある。
【0023】
上記特徴構成によれば、優れた性能の電気化学モジュールを備えた固体酸化物形燃料電池として発電反応を行うことができるので、優れた性能の固体酸化物形燃料電池を得る事ができる。
【0024】
上記目的を達成するための本発明に係る固体酸化物形電解セルの特徴構成は、上記電気化学モジュールを備え、前記単セルで電解反応を生じさせる点にある。
【0025】
上記特徴構成によれば、優れた性能の電気化学モジュールを備えた固体酸化物形電解セルとして電解反応によるガスの生成を行うことができるので、優れた性能の固体酸化物形電解セルを得る事ができる。
【0026】
上記目的を達成するための本発明に係る電気化学装置の特徴構成は、上記電気化学モジュールと、前記電気化学モジュールに還元性成分を含有するガスを流通する燃料変換器、或いは前記電気化学モジュールで生成する還元性成分を含有するガスを変換する燃料変換器と、を少なくとも有する点にある。
【0027】
上記特徴構成によれば、電気化学モジュールと、電気化学モジュールに還元性成分を含有するガスを流通する燃料変換器を有する。よって、電気化学モジュールを燃料電池として動作させる場合、改質器などの燃料変換器によって、都市ガス等の既存の原燃料供給インフラを用いて供給される天然ガス等から水素を生成し、燃料電池に流通させる構成とすると、優れた性能の電気化学モジュールを備えた電気化学装置を実現できる。
【0028】
更に、上記特徴構成によれば、電気化学モジュールと、電気化学モジュールで生成する還元性成分を含有するガスを変換する燃料変換器を有する。よって、電気化学モジュールを電解セルとして動作させる場合は、例えば、水の電解反応によって生成する水素を燃料変換器で一酸化炭素や二酸化炭素と反応させてメタンなどに変換する電気化学装置とすることが出来るが、このような構成にすると、優れた性能の電気化学モジュールを備えた電気化学装置を実現できる。
【0029】
本発明に係る電気化学装置の更に別の特徴構成は、上記電気化学モジュールと、前記電気化学モジュールから電力を取り出す或いは前記電気化学モジュールに電力を流通する電力変換器とを少なくとも有する点にある。
【0030】
上記特徴構成によれば、電力変換器は、電気化学モジュールが発電した電力を取り出し、或いは、電気化学モジュールに電力を流通する。これにより、上記のように電気化学モジュールは、燃料電池として作用し、或いは、電解セルとして作用する。よって、上記特徴構成によれば、燃料等の化学的エネルギーを電気エネルギーに変換する、或いは電気エネルギーを燃料等の化学的エネルギーに変換する効率を向上できる電気化学モジュール等を提供できる。例えば、電力変換器としてインバータを用いる場合、優れた性能の電気化学モジュールから得られる電気出力を、インバータによって昇圧したり、直流を交流に変換したりできるため、電気化学モジュールで得られる電気出力を利用しやすくなるので好ましい。また、電気化学モジュールを電解セルとして用いる場合は、電力変換器にて交流電源から直流を得て、電気化学モジュールへ直流の電力を供給できる電気化学装置を構築できるので好ましい。
【0031】
上記目的を達成するための本発明に係るエネルギーシステムの特徴構成は、上記電気化学装置と、前記電気化学装置から排出される熱を再利用する排熱利用部を有する点にある。
【0032】
上記特徴構成によれば、電気化学装置と、電気化学装置から排出される熱を再利用する排熱利用部を有するので、性能に優れ、かつエネルギー効率にも優れたエネルギーシステムを実現することができる。電気化学装置から排出される未利用の燃料ガスの燃焼熱を利用して発電する発電システムと組み合わせてエネルギー効率に優れたハイブリットシステムを実現することもできる。
【0033】
上記目的を達成するための本発明に係る合金部材の製造方法の特徴構成は、Fe及びCrを含む合金部材と、電解質層を電極層と対極電極層との間に挟んで構成される単セルを有する電気化学素子との間を、両者を接合するための接合材を用いて接合する電気化学モジュールの製造方法であって、
前記合金部材と前記電気化学素子との間に前記接合材の材料を配置して1000℃未満の温度で焼成する接合工程を含む点にある。
【0034】
上記特徴構成によれば、合金部材と電気化学素子との間に接合材の材料を配置して焼成する接合工程を、1000℃未満という低温で行うことができる。その結果、電気化学モジュールが熱により受ける悪影響を軽減できる。尚、焼成温度が900℃以下であるとより好ましく、800℃以下であると更に好ましい。このような低温域で焼成する接合工程であると、電気化学モジュールが受けるダメージを抑制し、高性能な電気化学モジュールを得ることができる。また、良好な接合性を確保するために、焼成温度が600℃以上であると好ましく、650℃以上であるとより好ましく、700℃以上であると更に好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】電気化学モジュールの構成を示す図である。
図2】電気化学モジュールを構成する部材を説明する図である。
図3】電気抵抗を測定した結果である。
図4】電気抵抗を測定した結果である。
図5】接合材のSEM画像である。
図6】接合材のSEM画像である。
図7】エネルギーシステム及び電気化学装置の構成を示す図である。
図8】エネルギーシステム及び電気化学装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下に図面を参照して本発明の実施形態に係る接合材10、電気化学モジュールM、電気化学装置Y、固体酸化物形燃料電池、エネルギーシステムZ及び電気化学モジュールMの製造方法について説明する。
図1は、電気化学モジュールMの構成を示す図である。図2は、電気化学モジュールMを構成する部材を説明する図である。図示するように、電気化学モジュールMは、合金部材26と、電気化学素子Eと、合金部材26及び電気化学素子Eの間を接合する接合材10とを備える。特に、図1に示す電気化学モジュールMは、複数の電気化学素子Eを備え、複数の電気化学素子E同士が合金部材26によって電気的に接続されている。
【0037】
電気化学素子Eは、電解質層4を電極層2と対極電極層6との間に挟んで構成される単セルCを有する。本実施形態では、電気化学素子Eは、貫通孔1aを有する金属支持体(金属基板)1の上に単セルCを備える。本実施形態の単セルCは、電極層2と、中間層3と、電解質層4と、反応防止層(中間層)5と、対極電極層6とを備える。
【0038】
電気化学素子Eは、例えば、水素を含む燃料ガスと空気の供給を受けて発電する固体酸化物形燃料電池の構成要素として用いられる。尚、層の位置関係などを説明する場合、例えば電解質層4から見て対極電極層6の側を「上」または「上側」、電極層2の側を「下」または「下側」という場合がある。また、金属支持体1における電極層2が形成されている側の面を表側面、反対側の面を裏側面という場合がある。
【0039】
電気化学素子Eは、金属支持体1と、金属支持体1の上に形成された電極層2と、電極層2の上に形成された中間層3と、中間層3の上に形成された電解質層4と、電解質層4の上に形成された反応防止層5と、反応防止層5の上に形成された対極電極層6とを有する。つまり、対極電極層6は電解質層4の上に形成され、反応防止層5は電解質層4と対極電極層6との間に形成されている。例えば、電極層2は多孔質であり、電解質層4は緻密である。
【0040】
金属支持体1は、電解質層4を電極層2と対極電極層6との間に挟んで構成される単セルCを支持して電気化学素子Eの強度を保つ。つまり、金属支持体1は、電気化学素子Eを支持する支持体としての役割を担う。
【0041】
金属支持体1の材料としては、電子伝導性、耐熱性、耐酸化性および耐腐食性に優れた材料が用いられる。例えば、フェライト系ステンレス、オーステナイト系ステンレス、ニッケル基合金などが用いられるが、これに限られるものではない。特に、Crを含む合金が好適に用いられる。本実施形態において、金属支持体1の材料には、Crを18質量%以上25質量%以下含有するFe-Cr系合金を用いているが、Mnを0.05質量%以上含有すると好ましく、Niを0.05質量%以上1.0質量%以下含有すると好ましい。また、Cuを、下限値については、0.01質量%以上含有すると好ましく、0.10質量%以上含有するとより好ましく、0.20質量%以上含有すると更に好ましく、上限値については、1.0質量%以下含有すると好ましく、0.9質量%以下含有するとより好ましく、0.8質量%以下含有すると更に好ましい。また、Tiを、下限値については、0.05質量%以上含有すると好ましく、0.10質量%以上含有するとより好ましく、0.15質量%以上含有すると更に好ましく、上限値については、1.0質量%以下含有すると好ましく、0.9質量%以下含有するとより好ましく、0.8質量%以下含有すると更に好ましい。このようなFe-Cr系合金を用いると、コストを抑制しつつ、性能や耐久性、耐食性に優れた合金部材を金属支持体1として用いることができる。
【0042】
金属支持体1は全体として板状である。そして金属支持体1は、電極層2が設けられる面を表側面として、表側面と裏側面との間で貫通する複数の貫通孔1aを有する。貫通孔1aは、金属支持体1の表面側と裏面側との間で気体を透過させる機能を有する。これにより、金属支持体1の裏側面から電極層2側への燃料ガス及び酸化剤ガス等の供給をスムーズにできるので高性能な電気化学素子Eを実現できる。尚、板状の金属支持体1を曲げたりして、例えば箱状、円筒状などの形状に変形させて使用することも可能である。
【0043】
電極層2は、金属支持体1の貫通孔1aを覆うように金属支持体1の表面に薄層の状態で設けることができる。薄層とする場合は、その厚さを、例えば、1μm~100μm程度、好ましくは、5μm~50μmとすることができる。このような厚さにすると、高価な電極層2材料の使用量を低減してコストダウンを図りつつ、十分な電極性能を確保することが可能となる。
【0044】
電極層2の材料としては、例えばNiO-GDC、Ni-GDC、NiO-YSZ、Ni-YSZ、CuO-CeO、Cu-CeOなどの複合材を用いることができる。これらの例では、GDC、YSZ、CeOを複合材の骨材と呼ぶことができる。尚、電極層2は、低温焼成法(例えば1100℃より高い高温域での焼成処理をしない低温域での焼成処理を用いる湿式法)やスプレーコーティング法(溶射法やエアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジッション法、パウダージェットデポジッション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法などの方法)、PVD法(スパッタリング法やパルスレーザーデポジション法など)、CVD法などにより形成することが好ましい。
【0045】
電極層2は、気体透過性を持たせるため、その内部および表面に複数の細孔を有する。すなわち電極層2は、多孔質な層として形成される。電極層2は、例えば、その緻密度が30%以上80%未満となるように形成される。細孔のサイズは、電気化学反応を行う際に円滑な反応が進行するのに適したサイズを適宜選ぶことができる。尚緻密度とは、層を構成する材料の空間に占める割合であって、(1-気孔率)と表すことができ、また、相対密度と同等である。
【0046】
中間層3は、電極層2の上に薄層の状態で形成することができる。薄層とする場合は、その厚さを、例えば、1μm~100μm程度、好ましくは2μm~50μm程度、より好ましくは4μm~25μm程度とすることができる。このような厚さにすると、高価な中間層材料の使用量を低減してコストダウンを図りつつ、十分な性能を確保することが可能となる。中間層3の材料としては、例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、SSZ(スカンジウム安定化ジルコニア)やGDC(ガドリウム・ドープ・セリア)、YDC(イットリウム・ドープ・セリア)、SDC(サマリウム・ドープ・セリア)等を用いることができる。特にセリア系のセラミックスが好適に用いられる。
【0047】
中間層3は、低温焼成法(例えば1100℃より高い高温域での焼成処理をしない低温域での焼成処理を用いる湿式法)やスプレーコーティング法(溶射法やエアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジッション法、パウダージェットデポジッション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法などの方法)、PVD法(スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法など)、CVD法などにより形成することが好ましい。これらの、低温域で使用可能な成膜プロセスにより、例えば1100℃より高い高温域での焼成を用いずに中間層3が得られる。
【0048】
中間層3としては、酸素イオン(酸化物イオン)伝導性を有することが好ましい。また、酸素イオン(酸化物イオン)と電子との混合伝導性を有すると更に好ましい。これらの性質を有する中間層3は、電気化学素子Eへの適用に適している。
【0049】
電解質層4は、中間層3の上に薄層の状態で形成される。また、厚さが10μm以下の薄膜の状態で形成することもできる。
【0050】
電解質層4の材料としては、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、SSZ(スカンジウム安定化ジルコニア)やGDC(ガドリウム・ドープ・セリア)、YDC(イットリウム・ドープ・セリア)、SDC(サマリウム・ドープ・セリア)、LSGM(ストロンチウム・マグネシウム添加ランタンガレート)、LSO(ランタンシリケート、La9.33+xSi26+2x/3)等の酸素イオンを伝導する電解質材料や、ペロブスカイト型酸化物等の水素イオンを伝導する電解質材料を用いることができる。特にジルコニア系のセラミックスが好適に用いられる。電解質層4をジルコニア系セラミックスとすると、電気化学素子Eを用いたSOFCの稼働温度をセリア系セラミックスや種々の水素イオン伝導性材料に比べて高くすることができる。例えば電気化学素子EをSOFCに用いる場合、電解質層4の材料としてYSZのような650℃程度以上の高温域でも高い電解質性能を発揮できる材料を用い、システムの原燃料に都市ガスやLPG等の炭化水素系の原燃料を用い、原燃料を水蒸気改質等によってSOFCのアノードガスとするシステム構成とすると、SOFCのセルスタックで生じる熱を原燃料ガスの改質に用いる高効率なSOFCシステムを構築することができる。
【0051】
電解質層4は、低温焼成法(例えば1100℃を越える高温域での焼成処理をしない低温域での焼成処理を用いる湿式法)やスプレーコーティング法(溶射法やエアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジッション法、パウダージェットデポジッション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法などの方法)、PVD法(スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法など)、CVD法などにより形成することが好ましい。これらの、低温域で使用可能な成膜プロセスにより、例えば1100℃を越える高温域での焼成を用いずに、緻密で気密性およびガスバリア性の高い電解質層4が得られる。特に、低温焼成法やスプレーコーティング法などを用いると低コストな素子が実現できるので好ましい。更に、スプレーコーティング法を用いると、緻密で気密性およびガスバリア性の高い電解質層4が低温域で容易に得られやすいので更に好ましい。
【0052】
電解質層4は、アノードガスやカソードガスのガスリークを遮蔽し、かつ、高いイオン伝導性を発現するために、緻密に構成される。電解質層4の緻密度は90%以上が好ましく、95%以上であるとより好ましく、98%以上であると更に好ましい。電解質層4は、均一な層である場合は、その緻密度が95%以上であると好ましく、98%以上であるとより好ましい。また、電解質層4が、複数の層状に構成されているような場合は、そのうちの少なくとも一部が、緻密度が98%以上である層(緻密電解質層)を含んでいると好ましく、99%以上である層(緻密電解質層)を含んでいるとより好ましい。このような緻密電解質層が電解質層4の一部に含まれていると、電解質層4が複数の層状に構成されている場合であっても、緻密で気密性およびガスバリア性の高い電解質層4を形成しやすくできるからである。
【0053】
反応防止層5は、電解質層4の上に薄層の状態で形成することができる。薄層とする場合は、その厚さを、例えば、1μm~100μm程度、好ましくは2μm~50μm程度、より好ましくは3μm~15μm程度とすることができる。このような厚さにすると、高価な反応防止層材料の使用量を低減してコストダウンを図りつつ、十分な性能を確保することが可能となる。
【0054】
反応防止層5の材料としては、電解質層4の成分と対極電極層6の成分との間の反応を防止できる材料であれば良いが、例えばセリア系材料等が用いられる。また反応防止層5の材料として、Sm、GdおよびYからなる群から選ばれる元素のうち少なくとも1つを含有する材料が好適に用いられる。尚、Sm、GdおよびYからなる群から選ばれる元素のうち少なくとも1つを含有し、これら元素の含有率の合計が1.0質量%以上10質量%以下であるとよい。反応防止層5を電解質層4と対極電極層6との間に導入することにより、対極電極層6の構成材料と電解質層4の構成材料との反応が効果的に抑制され、電気化学素子Eの性能の長期安定性を向上できる。反応防止層5の形成は、1100℃以下の処理温度で形成できる方法を適宜用いて行うと、金属支持体1の損傷を抑制し、また、金属支持体1と電極層2との元素拡散を抑制でき、性能・耐久性に優れた電気化学素子Eを実現できるので好ましい。例えば、低温焼成法(例えば1100℃を越える高温域での焼成処理をしない低温域での焼成処理を用いる湿式法)、スプレーコーティング法(溶射法やエアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジッション法、パウダージェットデポジッション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法などの方法)、PVD法(スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法など)、CVD法などを適宜用いて行うことができる。特に、低温焼成法やスプレーコーティング法などを用いると低コストな素子が実現できるので好ましい。更に、低温焼成法を用いると、原材料のハンドリングが容易になるので更に好ましい。
【0055】
対極電極層6は、反応防止層5の上に薄層の状態で形成することができる。反応防止層5を設けない場合、対極電極層6は電解質層4の上に形成される。薄層とする場合は、その厚さを、例えば、1μm~100μm程度、好ましくは、5μm~50μmとすることができる。このような厚さにすると、高価な対極電極層材料の使用量を低減してコストダウンを図りつつ、十分な電極性能を確保することが可能となる。対極電極層6の材料としては、例えば、LSCF、LSM等の複合酸化物、セリア系酸化物およびこれらの混合物を用いることができる。特に対極電極層6が、La、Sr、Sm、Mn、CoおよびFeからなる群から選ばれる2種類以上の元素を含有するペロブスカイト型酸化物を含むことが好ましい。以上の材料を用いて構成される対極電極層6は、カソードとして機能する。
【0056】
尚、対極電極層6の形成は、1100℃以下の処理温度で形成できる方法を適宜用いて行うと、金属支持体1の損傷を抑制し、また、金属支持体1と電極層2との元素拡散を抑制でき、性能・耐久性に優れた電気化学素子Eを実現できるので好ましい。例えば、低温焼成法(例えば1100℃を越える高温域での焼成処理をしない低温域での焼成処理を用いる湿式法)、スプレーコーティング法(溶射法やエアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジッション法、パウダージェットデポジッション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法などの方法)、PDV法(スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法など)、CVD法などを適宜用いて行うことができる。特に、低温焼成法やスプレーコーティング法などを用いると低コストな素子が実現できるので好ましい。更に、低温焼成法を用いると、原材料のハンドリングが容易になるので更に好ましい。
【0057】
以上のように電気化学素子Eを構成することで、電気化学素子Eを固体酸化物形燃料電池の発電セルとして用いることができる。例えば、金属支持体1の裏側の面から貫通孔1aを通じて水素を含む燃料ガスを電極層2へ流通し、電極層2の対極となる対極電極層6へ空気を流通し、例えば、500℃以上900℃以下の温度で作動させる。そうすると、対極電極層6において空気に含まれる酸素Oが電子eと反応して酸素イオンO2-が生成される。その酸素イオンO2-が電解質層4を通って電極層2へ移動する。電極層2においては、供給された燃料ガスに含まれる水素Hが酸素イオンO2-と反応し、水HOと電子eが生成される。電解質層4に水素イオンを伝導する電解質材料を用いた場合には、電極層2において流通された燃料ガスに含まれる水素Hが電子e-を放出して水素イオンHが生成される。その水素イオンHが電解質層4を通って対極電極層6へ移動する。対極電極層6において空気に含まれる酸素Oと水素イオンH、電子eが反応し水HOが生成される。
以上の反応により、電極層2と対極電極層6との間に起電力が発生する。この場合、電極層2はSOFCの燃料極(アノード)として機能し、対極電極層6は空気極(カソード)として機能する。このように、電気化学モジュールMを備え、単セルCで発電反応を生じさせる固体酸化物形燃料電池が実現される。
【0058】
次に、電気化学モジュールMの製造方法について説明する。
【0059】
電極層形成ステップでは、金属支持体1上に電極層2が薄膜の状態で形成される。電極層2の形成は、上述したように、低温焼成法(1100℃以下の低温域での焼成処理を行う湿式法)、スプレーコーティング法(溶射法やエアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジッション法、パウダージェットデポジッション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法などの方法)、PVD法(スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法など)、CVD法などの方法を用いることができる。いずれの方法を用いる場合であっても、金属支持体1の劣化を抑制するため、1100℃以下の温度で行うことが望ましい。
【0060】
電極層形成ステップを低温焼成法で行う場合には、具体的には以下の例のように行う。まず、電極層2の材料粉末と溶媒(分散媒)とを混合して材料ペーストを作成し、金属支持体1の表側の面に塗布する。そして電極層2を圧縮成形し(電極層平滑化工程)、1100℃以下で焼成する(電極層焼成工程)。電極層2の圧縮成形は、例えば、CIP(Cold Isostatic Pressing 、冷間静水圧加圧)成形、ロール加圧成形、RIP(Rubber Isostatic Pressing)成形などにより行うことができる。また、電極層2の焼成は、800℃以上1100℃以下の温度で行うと好適である。また、電極層平滑化工程と電極層焼成工程の順序を入れ替えることもできる。
尚、中間層3を有する電気化学素子Eを形成する場合では、電極層平滑化工程や電極層焼成工程を省いたり、電極層平滑化工程や電極層焼成工程を後述する中間層平滑化工程や中間層焼成工程に含めることもできる。尚、電極層平滑化工程は、ラップ成形やレベリング処理、表面の切削・研磨処理などを施すことによって行うことでもできる。
【0061】
中間層形成ステップでは、電極層2を覆う形態で、電極層2の上に中間層3が薄層の状態で形成される。中間層3の形成は、上述したように、低温焼成法(1100℃以下の低温域での焼成処理を行う湿式法)、スプレーコーティング法(溶射法やエアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジッション法、パウダージェットデポジッション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法などの方法)、PVD法(スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法など)、CVD法などの方法を用いることができる。いずれの方法を用いる場合であっても、金属支持体1の劣化を抑制するため、1100℃以下の温度で行うことが望ましい。
【0062】
中間層形成ステップを低温焼成法で行う場合には、具体的には以下の例のように行う。まず、中間層3の材料粉末と溶媒(分散媒)とを混合して材料ペーストを作成し、金属支持体1の表側の面に塗布する。そして中間層3を圧縮成形し(中間層平滑化工程)、1100℃以下で焼成する(中間層焼成工程)。中間層3の圧延は、例えば、CIP(Cold Isostatic Pressing 、冷間静水圧加圧)成形、ロール加圧成形、RIP(Rubber Isostatic Pressing)成形などにより行うことができる。また、中間層3の焼成は、800℃以上1100℃以下の温度で行うと好適である。このような温度であると、金属支持体1の損傷・劣化を抑制しつつ、強度の高い中間層3を形成できるためである。また、中間層3の焼成を1050℃以下で行うとより好ましく、1000℃以下で行うと更に好ましい。これは、中間層3の焼成温度を低下させる程に、金属支持体1の損傷・劣化をより抑制しつつ、電気化学素子Eを形成できるからである。また、中間層平滑化工程と中間層焼成工程の順序を入れ替えることもできる。尚、中間層平滑化工程は、ラップ成形やレベリング処理、表面の切削・研磨処理などを施すことによって行うことでもできる。
【0063】
電解質層形成ステップでは、電極層2および中間層3を覆った状態で、電解質層4が中間層3の上に薄層の状態で形成される。また、厚さが10μm以下の薄膜の状態で形成されても良い。電解質層4の形成は、上述したように、低温焼成法(1100℃以下の低温域での焼成処理を行う湿式法)、スプレーコーティング法(溶射法やエアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジッション法、パウダージェットデポジッション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法などの方法)、PVD法(スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法など)、CVD法などの方法を用いることができる。いずれの方法を用いる場合であっても、金属支持体1の劣化を抑制するため、1100℃以下の温度で行うことが望ましい。
【0064】
緻密で気密性およびガスバリア性能の高い、良質な電解質層4を1100℃以下の温度域で形成するためには、電解質層形成ステップをスプレーコーティング法で行うことが望ましい。その場合、電解質層4の材料を金属支持体1上の中間層3に向けて噴射し、電解質層4を形成する。
【0065】
反応防止層形成ステップでは、反応防止層5が電解質層4の上に薄層の状態で形成される。反応防止層5の形成は、上述したように、低温焼成法(1100℃以下の低温域での焼成処理を行う湿式法)、スプレーコーティング法(溶射法やエアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジッション法、パウダージェットデポジッション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法などの方法)、PVD法(スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法など)、CVD法などの方法を用いることができる。いずれの方法を用いる場合であっても、金属支持体1の劣化を抑制するため、1100℃以下の温度で行うことが望ましい。尚、反応防止層5の上側の面を平坦にするために、例えば反応防止層5の形成後にレベリング処理や表面を切削・研磨処理を施したり、湿式形成後焼成前に、プレス加工を施してもよい。
【0066】
対極電極層形成ステップでは、対極電極層6が反応防止層5の上に薄層の状態で形成される。対極電極層6の形成は、上述したように、低温焼成法(1100℃以下の低温域での焼成処理を行う湿式法)、スプレーコーティング法(溶射法やエアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジッション法、パウダージェットデポジッション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法などの方法)、PVD法(スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法など)、CVD法などの方法を用いることができる。いずれの方法を用いる場合であっても、金属支持体1の劣化を抑制するため、1100℃以下の温度で行うことが望ましい。
【0067】
上述のように作製した電気化学素子Eと合金部材26とを接合材10を用いて順次直列に接合することによって、図1及び図2に示したような電気化学モジュールMを作製できる。具体的には、電気化学素子Eの対極電極層6と合金部材26とを、接合材10を用いて接合している。また、電気化学素子Eの金属支持体1の裏側面にはU字部材9が接合され、そのU字部材9に対して合金部材26が接合されている。つまり、合金部材26は、電気化学素子Eの対極電極層6と、U字部材9とに接合され、両者を電気的に接続している。金属支持体1とU字部材9とで筒状支持体が形成される。そして、筒状支持体の内部空間を通流するガスが、金属支持体1の貫通孔1aを通って電極層2に供給される。尚、金属支持体1との熱膨張差の低減や、溶接などの接合性の信頼性確保の観点から、U字部材9の材料は、金属支持体1と同様の金属材料であることが好ましい。
【0068】
合金部材26は、Fe及びCrを含む材料である。例えば、合金部材26としては、フェライト系ステンレス鋼や、耐熱性により優れたオーステナイト系ステンレス鋼であるFe-Cr-Ni合金や、ニッケル基合金などが用いられる。尚、合金部材26の材料は、金属支持体1との熱膨張差の低減などの観点から、金属支持体1と同様の材料であることが好ましい。
【0069】
本実施形態の電気化学モジュールMの製造方法について説明すると、図1に示すように、複数の電気化学素子Eのそれぞれが、対極電極層6の側に接合材10を介して合金部材26と相対し、金属支持体1の側にU字部材9を介して別の合金部材26と相対して積層配置される。そして、電気化学モジュールMの製造方法の一部として、合金部材26と電気化学素子Eとの間に接合材10の材料を配置して1000℃未満の温度で焼成する接合工程が実行される。例えば、接合材10の材料微粒子を含むペーストを合金部材26と電気化学素子Eとの間に配置して焼成する接合工程が実行される。その結果、合金部材26と電気化学素子Eとの間を、両者を接合するための接合材10を用いて接合できる。尚、接合工程における焼成温度は、低いほど電気化学モジュールMに与えるダメージを軽減できるので、900℃以下であるとより好ましく、800℃以下であると更に好ましい。また、良好な接合性を確保するために、焼成温度が600℃以上であると好ましく、650℃以上であるとより好ましく、700℃以上であると更に好ましい。
【0070】
接合材10はCoを含有する材料であることが好ましい。或いは、接合材10はNiを含有する材料であることが好ましい。また或いは、接合材10はCo、Mn、Cu及びNiの内の少なくとも2つ以上を含有する金属酸化物を含む材料であることが好ましい。更に、接合材10は、合金部材26と電気化学素子Eの単セルCとを接合した状態での平均粒径が0.1μm以上0.2μm以下である複数の微粒子が集合した構造を有する。加えて、接合材10は、合金部材26と電気化学素子Eの単セルCとを接合した状態での空隙率が60%以上であることが好ましい。また、その空隙率が65%以上であることが更に好ましい。また、接合材10の厚みは、特に限定されるものではないが、費用対効果の観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、更に好ましくは10μm以上であり、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下、更に好ましくは100μm以下であるとよい。
【0071】
次に、接合材10の特性について説明する。
図3は、接合工程での接合材10の焼成(焼き付け)を700℃で行った試料と850℃で行った試料とについて、接合材10を間に挟んだ対極電極層6と合金部材26との間での電気抵抗を測定した結果である。接合材10の材料はCo1.5Mn1.5を用いた。電気抵抗の測定は、固体酸化物形燃料電池の作動温度範囲に相当する600℃~900℃で行った。図3から分かるように、600℃~900℃の範囲において、何れの試料も低い電気抵抗を示している。
【0072】
図4は、接合材10の材料を異ならせた場合の電気抵抗の測定結果である。試料は、接合材10として、本発明の実施例としてのCo-Mn-O(Co1.5Mn1.5)を用いた試料、比較例としての銀パラジウム(AgPd)ペーストを用いた試料、比較例としてのLSCF(La0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8)を用いた試料である。接合工程での焼成温度は700℃であり、電気抵抗の測定は750℃で行った。図4から明らかなように、接合材10としてCo1.5Mn1.5を用いた実施例の試料は、測定開始時から低い電気抵抗を示し、60時間が経過しても電気抵抗は低いままである。それに対して、接合材10として銀パラジウムペーストを用いた試料は高い電気抵抗を示している。また、接合材10としてLa0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8を用いた試料は、測定開始時は低い電気抵抗を示しているものの、時間が経過するにつれて電気抵抗が上昇している。
【0073】
次に、9種類の接合材10の特性を比較した結果を表1に示す。
試料1~試料3は、接合材10を構成する金属酸化物としてCo1.5Mn1.5を用いており、接合工程での接合材10の焼成(焼き付け)を700℃、800℃、1000℃で行ったものである。試料4~試料6は、接合材10を構成する金属酸化物としてCoMnOを用いており、接合工程での接合材10の焼成(焼き付け)を700℃、800℃、1000℃で行ったものである。試料7~試料9は、接合材10を構成する金属酸化物としてLa0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8を用いており、接合工程での接合材10の焼成(焼き付け)を700℃、800℃、1000℃で行ったものである。
【0074】
表1から分かるように、焼成温度を高くすると、平均粒径が大きくなり、空隙率が小さくなっている。
【0075】
【表1】
【0076】
図5は、試料1~試料9の接合材10の接合面(端面)を示すSEM画像である。図6は、試料1~試料9の切断面を示すSEM画像である。表1に記載した平均粒径は図5に示した画像からソフトウェアによって算出した値である。表1に記載した空隙率は図6に示した画像からソフトウェアによって算出した値である。具体的に説明すると、平均粒径の算出は、SEM画像をImageJで読み込み、コントラストを二値化(閾値は自動計算で統一)し、ソフトウェアにて各粒子を分割し、粒子面積をピクセル単位で算出し、その粒子面積に相当する円の直径を平均粒径とした。ここで、二値化にはMakeBinary、粒子分割にはWatershed、粒子面積算出にはAnalyzeParticleをImageJソフト解析内にて実施した。空隙率の算出は、ImageJにて、medianフィルタをかけて、Threshouldにて空隙部を抽出し、閾値を自動計算にて算出した。つまり、空隙部分と粒子が存在する部分とでコントラストが異なるので、そのコントラスト差を閾値にて自動計算した。
【0077】
以上のように、接合工程における接合材10の焼成温度が高くなればなるほど、接合材10の焼結が進行し、平均粒径は大きく、空隙率は小さくなっている。つまり、接合材10の焼成温度を高くすればするほど、密着性が良くなり、接触抵抗が低くなるのだが、本実施形態では、接合工程における接合材10の焼成温度を1000℃未満にすることで、電気化学モジュールMに与えるダメージを軽減している。特に、図3及び図4の結果と表1の結果とを併せて考えると、接合材10の材料がCo-Mn系のスピネル系酸化物であり、平均粒径が0.1μm以上0.2μm以下あれば、接合工程における接合材10の焼成温度を700℃及び850℃という相対的に低い温度に抑制しながら、良好な低抵抗性能及び高密着性能が得られた。尚、表1の試料4~試料6に対応するCoMnOについての電気抵抗の測定結果は示していないが、試料1~試料3と同様の平均粒径及び空隙率を示していることから、良好な低抵抗性能及び高密着性能を示すと推測される。
【0078】
図7は、エネルギーシステムZおよび電気化学装置Yの構成を示す図である。
エネルギーシステムZは、電気化学装置Yと、電気化学装置Yから排出される熱を再利用する排熱利用部としての熱交換器53とを有する。
電気化学装置Yは、電気化学モジュールMと、電気化学モジュールMに還元性成分を含有するガスを流通する燃料変換器としての改質器34と、を少なくとも有する。加えて、電気化学装置Yは、電気化学モジュールMと、電気化学モジュールMから電力を取り出す電力変換器としてのインバータ38とを有する。また、電気化学装置Yが有する燃料供給モジュールは、脱硫器20、気化器33及び改質器34等からなり、電気化学モジュールMに対して還元性成分を含有する燃料ガスを供給する。
【0079】
その他、電気化学装置Yは、改質水タンク21、ブロア35、燃焼部36、制御部39、収納容器40、昇圧ポンプ41、改質水ポンプ43等を有する。
【0080】
気化器33、改質器34、電気化学モジュールMおよび燃焼部36は、収納容器40内に収納される。そして改質器34は、燃焼部36での反応排ガスの燃焼により発生する燃焼熱を用いて原燃料の改質処理を行う。
【0081】
原燃料は、昇圧ポンプ41の作動により原燃料供給路42を通して脱硫器20に供給される。改質水タンク21の改質水は、改質水ポンプ43の作動により改質水供給路44を通して気化器33に供給される。そして、原燃料供給路42は脱硫器20よりも下流側の部位で、改質水供給路44に合流されており、収納容器40外にて合流された改質水と原燃料とが収納容器40内に備えられた気化器33に供給される。
【0082】
脱硫器20は、都市ガス等の炭化水素系の原燃料に含まれる硫黄化合物成分を除去(脱硫)する。原燃料中に硫黄化合物が含有される場合、脱硫器20を備えることにより、硫黄化合物による改質器34あるいは電気化学モジュールMを構成する電気化学素子Eの単セルCに対する影響を抑制することができる。気化器33は、改質水タンク21から供給される改質水から水蒸気を生成する。気化器33にて生成された水蒸気を含む原燃料は、水蒸気含有原燃料供給路45を通して改質器34に供給される。
【0083】
改質器34は、気化器33にて生成された水蒸気を用いて脱硫器20にて脱硫された原燃料を水蒸気改質して、水素を含む改質ガスを生成する。改質器34にて生成された改質ガスは、改質ガス供給路46を通して電気化学モジュールMのガスマニホールド17に供給される。
【0084】
電気化学モジュールMを構成する電気化学素子Eは互いに電気的に接続された状態で並列して配置され、電気化学素子Eの一方の端部(下端部)がガスマニホールド17に固定されている。ガスマニホールド17に供給された改質ガスは、複数の電気化学素子Eに対して分配される。電気化学モジュールMを構成する電気化学素子Eは、改質器34から供給された改質ガスと、ブロア35から供給された空気とを用いて、電気化学反応させて発電する。反応に用いられなかった残余の水素ガスを含む反応排ガスが、電気化学モジュールMの上端から燃焼部36に排出される。燃焼部36は、電気化学モジュールMから排出される反応排ガスと空気とを混合させて、反応排ガス中の可燃成分を燃焼させる。
【0085】
燃焼部36で燃焼された反応排ガスは、燃焼排ガスとなって燃焼排ガス排出口50から収納容器40の外部に排出される。燃焼排ガス排出口50には燃焼触媒部51(例えば、白金系触媒)が配置され、燃焼排ガスに含有される一酸化炭素や水素等の還元性成分を燃焼除去する。燃焼排ガス排出口50から排出された燃焼排ガスは、燃焼排ガス排出路52により熱交換器53に送られる。
【0086】
熱交換器53は、燃焼部36における燃焼で生じた燃焼排ガスと、供給される冷水とを熱交換させ、温水を生成する。つまり、熱交換器53は、電気化学装置Yから排出される熱を再利用する排熱利用部として動作する。
【0087】
尚、排熱利用部の代わりに、電気化学モジュールMから(燃焼されずに)排出される反応排ガスを利用する反応排ガス利用部を設けてもよい。反応排ガスには、電気化学モジュールMを構成する電気化学素子Eにて反応に用いられなかった残余の水素ガスが含まれる。反応排ガス利用部では、残余の水素ガスを利用して、燃焼による熱利用や、燃料電池等による発電が行われ、エネルギーの有効利用がなされる。
【0088】
インバータ38は、電気化学モジュールMの出力電力を調整して、商用系統(図示省略)から受電する電力と同じ電圧および同じ周波数にする。制御部39は電気化学装置YおよびエネルギーシステムZの運転を制御する。
【0089】
<別実施形態>
<1>
上記実施形態では、電気化学素子Eの構造例を説明したが、電気化学素子Eの構造は適宜変更可能である。例えば、電気化学素子Eが金属支持体1を備えない構成、即ち、単セルCを金属支持体1で支持しない構成を採用してもよい。
【0090】
<2>
上記実施形態では、電気化学モジュールMを固体酸化物形燃料電池に用いる例を説明したが、電気化学モジュールMを、固体酸化物形電解セルや、固体酸化物を利用した酸素センサ等に利用することもできる。
【0091】
上記実施形態では、燃料等の化学的エネルギーを電気エネルギーに変換する効率を向上できる構成について説明した。つまり、上記実施形態では、電気化学モジュールMを構成する電気化学素子Eとしての単セルCを燃料電池として動作させ、電極層2に水素ガスが流通され、対極電極層6に酸素ガスが流通される。そうすると、対極電極層6において酸素分子Oが電子eと反応して酸素イオンO2-が生成される。その酸素イオンO2-が電解質層4を通って電極層2へ移動する。電極層2においては、水素分子Hが酸素イオンO2-と反応し、水HOと電子eが生成される。以上の反応により、電極層2と対極電極層6との間に起電力が発生し、発電が行われる。
【0092】
電気化学モジュールMを備え、電気化学素子Eの単セルCで電解反応を生じさせる固体酸化物形電解セルを実現する場合について説明する。図8に示すエネルギーシステムZでは、電気化学モジュールMを構成する電気化学素子Eを電解セルとして動作させる場合は、燃料極としての電極層2に水蒸気や二酸化炭素を含有するガスが流通され、電極層2と空気極としての対極電極層6との間に電圧が印加される。そして、電極層2において電子eと水分子HO、二酸化炭素分子COが反応し水素分子Hや一酸化炭素COと酸素イオンO2-となる。酸素イオンO2-は電解質層4を通って対極電極層6へ移動する。対極電極層6において酸素イオンO2-が電子を放出して酸素分子Oとなる。以上の反応により、水分子HOが水素Hと酸素Oとに、二酸化炭素分子COを含有するガスが流通される場合は一酸化炭素COと酸素Oとに電気分解される。
【0093】
水蒸気と二酸化炭素分子COを含有するガスが流通される場合は上記電気分解により電気化学モジュールMで生成した水素及び一酸化炭素等から炭化水素などの種々の化合物などを合成する燃料変換器91を設けることができる。燃料供給部(図示せず)により、この燃料変換器91が生成した炭化水素等を電気化学モジュールMに流通したり、本システム・装置外に取り出して別途燃料や化学原料として利用することができる。
【0094】
このように、図8に示すエネルギーシステムZにおいて、電気化学装置Yは、電気化学モジュールMと、電気化学モジュールMで生成する還元性成分を含有するガスを変換する燃料変換器91と、を少なくとも有する。また、電気化学装置Yは、電気化学モジュールMと、電気化学モジュールMに電力を流通する電力変換器93とを少なくとも有する。
【0095】
電気化学モジュールMは、複数の電気化学素子Eとガスマニホールド17及びガスマニホールド171とを有する。複数の電気化学素子Eは互いに電気的に接続された状態で並列して配置され、電気化学素子Eの一方の端部(下端部)がガスマニホールド17に固定されており、他方の端部(上端部)がガスマニホールド171に固定されている。電気化学素子Eの一方の端部(下端部)におけるガスマニホールド17は、水蒸気及び二酸化炭素の供給を受ける。そして、電気化学素子Eで上述の反応により生成した水素及び一酸化炭素等が、電気化学素子Eの他方の端部(上端部)と連通するガスマニホールド171によって収集される。
【0096】
図8中の熱交換器90を、燃料変換器91で起きる反応によって生ずる反応熱と水とを熱交換させ気化する排熱利用部として動作させるとともに、図8中の熱交換器92を、電気化学素子Eによって生ずる排熱と水蒸気および二酸化炭素とを熱交換させ予熱する排熱利用部として動作させる構成とすることにより、エネルギー効率を高めることができる。
また、電力変換器93は、電気化学素子Eを構成する単セルCに電力を流通する。これにより、上記のように電気化学素子Eは、電解セルとして作用する。
【0097】
<3>
上記実施形態では、電極層2の材料として例えばNiO-GDC、Ni-GDC、NiO-YSZ、Ni-YSZ、CuO-CeO、Cu-CeOなどの複合材を用い、対極電極層6の材料として例えばLSCF、LSM等の複合酸化物を用いた。このように構成された電気化学素子Eは、電極層2に水素ガスを供給して燃料極(アノード)とし、対極電極層6に空気を供給して空気極(カソード)とし、固体酸化物形燃料電池セルとして用いることが可能である。この構成を変更して、電極層2を空気極とし、対極電極層6を燃料極とすることが可能なように、電気化学素子Eを構成することも可能である。すなわち、電極層2の材料として例えばLSCF、LSM等の複合酸化物を用い、対極電極層6の材料として例えばNiO-GDC、Ni-GDC、NiO-YSZ、Ni-YSZ、CuO-CeO、Cu-CeOなどの複合材を用いる。このように構成した電気化学素子Eであれば、電極層2に空気を供給して空気極とし、対極電極層6に水素ガスを供給して燃料極とし、電気化学素子Eを固体酸化物形燃料電池セルとして用いることができる。
【0098】
<4>
上記実施形態において、電気化学素子Eにおいて、中間層3(挿入層)と反応防止層5とは、何れか一方、あるいは両方を備えない形態とすることも可能である。すなわち、電極層2と電解質層4とが接触して形成される形態、あるいは電解質層4と対極電極層6とが接触して形成される形態も可能である。この場合に上述の製造方法では、中間層形成ステップ、反応防止層形成ステップが省略される。尚、他の層を形成するステップを追加したり、同種の層を複数積層したりすることも可能である。
【0099】
<5>
上記実施形態では、電気化学素子Eとして主に平板型や円筒平板型の固体酸化物形燃料電池を用いたが、円筒型の固体酸化物形燃料電池などの電気化学素子Eに利用することもできる。
【0100】
<6>
上記実施形態において、電気化学装置Yは、複数の電気化学素子Eを備える電気化学モジュールMを備えている。しかし、上記実施形態の電気化学装置Yは1つの電気化学素子Eを備える構成にも適用可能である。
【0101】
<7>
上記実施形態では、電気化学素子Eは、金属支持体1の裏面にU字部材9が取り付けられており、金属支持体1とU字部材9との2部材で筒状支持体を形成する構成としたが、一部材を用いて金属支持体1とU字部材9とを一体的に形成して筒状支持体とする構成としても良く、また、3部材以上の部材を用いて筒状支持体を形成しても良い。また、U字部材9を省略して金属支持体1により電極層2等を支持する構成としても良い。
【0102】
<8>
上記実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。また本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明は、低温での焼き付けでも接合性能が確保できる接合材、電気化学モジュール、電気化学装置、固体酸化物形燃料電池、固体酸化物形電解セル、エネルギーシステム及び電気化学モジュールの製造方法に利用できる。
【符号の説明】
【0104】
1 :金属支持体
2 :電極層
4 :電解質層
5 :反応防止層
6 :対極電極層
10 :接合材
26 :合金部材
91 :燃料変換器
93 :電力変換器
C :単セル
E :電気化学素子
M :電気化学モジュール
Y :電気化学装置
Z :エネルギーシステム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8