(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156848
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】運転支援装置及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20221006BHJP
B60W 30/09 20120101ALI20221006BHJP
G09B 29/10 20060101ALI20221006BHJP
G16Y 10/40 20200101ALI20221006BHJP
G16Y 40/50 20200101ALI20221006BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60W30/09
G09B29/10 A
G16Y10/40
G16Y40/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060742
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】二村 光宏
(72)【発明者】
【氏名】長坂 秀則
(72)【発明者】
【氏名】小川 啓太
【テーマコード(参考)】
2C032
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
2C032HD16
2C032HD23
2C032HD24
3D241BA15
3D241BA33
3D241CC01
3D241CC08
3D241CC17
3D241CD11
3D241CE02
3D241CE04
3D241CE05
3D241DC33Z
5H181AA01
5H181BB04
5H181CC04
5H181FF17
5H181FF22
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】車両の走行予定経路に車両の走行を妨げる要因となる障害物が存在する場合において、車両の乗員に負担を生じさせない適切な運転支援を実施する運転支援装置及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】車両の走行予定経路に車両の走行を妨げる要因となる障害物がある場合に、車両が障害物の位置する車線を走行するとともに車線内で移動して障害物を回避する第1の回避動作と、車両が障害物の位置する車線から該車線の外へと移動して障害物を回避する第2の回避動作と、を含む障害物を回避する為の複数の回避動作の候補に対して乗員への負荷を示すコストを算出し、算出されたコストを比較して複数の回避動作の候補の内から障害物を回避する為に推奨される回避動作を選択し、選択された回避動作に従って車両に走行が推奨される走行軌道を生成し、生成された走行軌道に基づいて車両の運転支援を行うように構成する。
【選択図】
図23
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が走行する走行予定経路を取得する走行予定経路取得手段と、
前記走行予定経路にあって車両の走行を妨げる要因となる障害物の情報を取得する障害物情報取得手段と、
区画線に関する情報を含む地図情報と前記障害物の情報とを用いて、車両が前記障害物の位置する車線を走行するとともに車線内で移動して前記障害物を回避する第1の回避動作と、車両が前記障害物の位置する車線から該車線の外へと移動して前記障害物を回避する第2の回避動作と、を含む前記障害物を回避する為の複数の回避動作の候補に対してコストを算出するコスト算出手段と、
前記コスト算出手段により算出されたコストを比較して前記複数の回避動作の候補の内から前記障害物を回避する為に推奨される回避動作を選択する回避動作選択手段と、
前記回避動作選択手段により選択された回避動作に従って前記走行予定経路に含まれる道路に対して車両に走行が推奨される走行軌道を生成する走行軌道生成手段と、
前記走行軌道生成手段によって生成された走行軌道に基づいて車両の運転支援を行う運転支援手段と、を有する運転支援装置。
【請求項2】
前記第2の回避動作には、
車両が前記障害物の位置する車線から該車線の外へ車体の一部がはみ出すまで移動して前記障害物を回避する回避動作と、
車両が前記障害物の位置する車線から隣接する車線へと走行する車線を変更して前記障害物を回避する回避動作と、を含む請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
車両周辺の所定の検出範囲における道路状況を取得する道路状況取得手段を有し、
前記障害物情報取得手段は、前記検出範囲外にある前記障害物の情報を取得し、
前記走行軌道生成手段は、前記検出範囲外を含む領域を対象にして前記走行軌道を生成する請求項1又は請求項2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記コスト算出手段は、前記複数の回避動作の候補毎に、前記障害物を回避する回避動作を開始してから障害物を回避して元の走行状態に戻るまでに必要な走行時間の長さに応じたコストを加算する請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の運転支援装置。
【請求項5】
コンピュータを、
車両が走行する走行予定経路を取得する走行予定経路取得手段と、
前記走行予定経路にあって車両の走行を妨げる要因となる障害物の情報を取得する障害物情報取得手段と、
区画線に関する情報を含む地図情報と前記障害物の情報とを用いて、車両が前記障害物の位置する車線を走行するとともに車線内で移動して前記障害物を回避する第1の回避動作と、車両が前記障害物の位置する車線から該車線の外へと移動して前記障害物を回避する第2の回避動作と、を含む前記障害物を回避する為の複数の回避動作の候補に対してコストを算出するコスト算出手段と、
前記コスト算出手段により算出されたコストを比較して前記複数の回避動作の候補の内から前記障害物を回避する為に推奨される回避動作を選択する回避動作選択手段と、
前記回避動作選択手段により選択された回避動作に従って前記走行予定経路に含まれる道路に対して車両に走行が推奨される走行軌道を生成する走行軌道生成手段と、
前記走行軌道生成手段によって生成された走行軌道に基づいて車両の運転支援を行う運転支援手段と、
して機能させる為のコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転支援を行う運転支援装置及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の走行形態として、ユーザの運転操作に基づいて走行する手動走行以外に、ユーザの運転操作の一部又は全てを車両側で実行することにより、ユーザによる車両の運転を補助する自動運転支援システムについて新たに提案されている。自動運転支援システムでは、例えば、車両の現在位置、車両が走行する車線、周辺の他車両の位置を随時検出し、予め設定された経路に沿って走行するようにステアリング、駆動源、ブレーキ等の車両制御が自動で行われる。
【0003】
また、自動運転支援による走行を行う場合において、車両の走行予定経路や地図情報等に基づいて走行が推奨される走行軌道を車両が走行する道路上に予め生成し、生成された走行軌道に沿って車両を走行させる制御が行われている。上記走行軌道を生成する場合に、特に走行予定経路に車両の走行を妨げる障害物(例えば路上に駐車された車両)が存在する場合には、それらの障害物を回避する軌道を生成する必要がある。例えば特開2019-151185号公報には、自車両の前方に存在する障害物を検出する為のカメラやミリ波レーダを備え、それらのカメラやミリ波レーダによって障害物を検出した場合に車線変更又は車線内の操舵によって障害物を回避可能か否かを判定し、回避可能である場合には回避動作を決定して車両を制御する技術について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-151185号公報(段落0023-0041)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記特許文献1の技術では車両に搭載されたカメラやミリ波レーダを使って障害物を検出し、障害物が検出された後に障害物を回避する為の回避経路を探索している。しかしながら、これらのカメラやミリ波レーダによる検出範囲は車両の近傍に限られているため、車両が通常の走行速度で走行している状態では障害物を検出してから回避経路を探索すると、取り得る回避動作の選択肢が限られ、乗員に負担のかかる急旋回や急減速を伴う回避経路となる問題があった。
【0006】
本発明は前記従来における問題点を解消するためになされたものであり、車両の走行予定経路に車両の走行を妨げる要因となる障害物が存在する場合において、車両が障害物から離れた位置にある段階で障害物を回避する為の推奨される走行軌道を生成することが可能となり、車両の乗員に負担を生じさせない適切な運転支援を実施することを可能にした運転支援装置及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため本発明に係る運転支援装置は、車両が走行する走行予定経路を取得する走行予定経路取得手段と、前記走行予定経路にあって車両の走行を妨げる要因となる障害物の情報を取得する障害物情報取得手段と、区画線に関する情報を含む地図情報と前記障害物の情報とを用いて、車両が前記障害物の位置する車線を走行するとともに車線内で移動して前記障害物を回避する第1の回避動作と、車両が前記障害物の位置する車線から該車線の外へと移動して前記障害物を回避する第2の回避動作と、を含む前記障害物を回避する為の複数の回避動作の候補に対してコストを算出するコスト算出手段と、前記コスト算出手段により算出されたコストを比較して前記複数の回避動作の候補の内から前記障害物を回避する為に推奨される回避動作を選択する回避動作選択手段と、前記回避動作選択手段により選択された回避動作に従って前記走行予定経路に含まれる道路に対して車両に走行が推奨される走行軌道を生成する走行軌道生成手段と、前記走行軌道生成手段によって生成された走行軌道に基づいて車両の運転支援を行う運転支援手段と、を有する。
尚、「運転支援」とは、運転者の車両操作の少なくとも一部を運転者に代わって行う又は補助する機能、或いは運転を支援する為の表示案内や音声案内を行うことをいう。
また、「区画線に関する情報」は、車線を区画する区画線自体の種類や配置を特定する情報であっても良いし、隣接する車線間で車線変更が可能か否かを特定する情報であっても良いし、車線の形状を直接または間接的に特定する情報であっても良い。
また、「障害物」は、例えば路上に駐車された駐車車両、道路の工事現場に設置される看板や柵、路面の凹凸等が該当する。また、静止物だけではなく動体物についても含めるようにしても良い。
【0008】
また、本発明に係るコンピュータプログラムは、車両において実施する運転支援に用いる支援情報を生成するプログラムである。具体的には、コンピュータを、車両が走行する走行予定経路を取得する走行予定経路取得手段と、前記走行予定経路にあって車両の走行を妨げる要因となる障害物の情報を取得する障害物情報取得手段と、区画線に関する情報を含む地図情報と前記障害物の情報とを用いて、車両が前記障害物の位置する車線を走行するとともに車線内で移動して前記障害物を回避する第1の回避動作と、車両が前記障害物の位置する車線から該車線の外へと移動して前記障害物を回避する第2の回避動作と、を含む前記障害物を回避する為の複数の回避動作の候補に対してコストを算出するコスト算出手段と、前記コスト算出手段により算出されたコストを比較して前記複数の回避動作の候補の内から前記障害物を回避する為に推奨される回避動作を選択する回避動作選択手段と、前記回避動作選択手段により選択された回避動作に従って前記走行予定経路に含まれる道路に対して車両に走行が推奨される走行軌道を生成する走行軌道生成手段と、前記走行軌道生成手段によって生成された走行軌道に基づいて車両の運転支援を行う運転支援手段と、して機能させる。
【発明の効果】
【0009】
前記構成を有する本発明に係る運転支援装置及びコンピュータプログラムによれば、車両の走行予定経路に車両の走行を妨げる要因となる障害物が存在する場合において、車両が障害物から離れた位置にある段階で障害物を回避する為の推奨される回避動作を選択し、選択された回避動作に基づく走行軌道を生成することが可能となる。その結果、車両の乗員に負担を生じさせない適切な運転支援を実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係る運転支援システムを示した概略構成図である。
【
図2】本実施形態に係る運転支援システムの構成を示したブロック図である。
【
図4】本実施形態に係るナビゲーション装置を示したブロック図である。
【
図5】本実施形態に係る自動運転支援プログラムのフローチャートである。
【
図6】高精度地図情報の取得されるエリアを示した図である。
【
図7】静的走行軌道生成処理のサブ処理プログラムのフローチャートである。
【
図8】車両の走行予定経路の一例を示した図である。
【
図9】
図8に示す走行予定経路に対して構築されたレーンネットワークの一例を示した図である。
【
図10】車線内で移動して障害物を回避する回避動作の例を示した図である。
【
図11】車線の外へ車体の一部がはみ出すまで移動して障害物を回避する回避動作の例を示した図である。
【
図12】隣接する車線へと走行する車線を変更して障害物を回避する回避動作の例を示した図である。
【
図13】コスト算出処理のサブ処理プログラムのフローチャートである。
【
図15】最長距離算出処理のサブ処理プログラムのフローチャートである。
【
図17】車線内で移動して障害物を回避する回避動作を行う場合に、障害物との間で確保可能な間隔の算出方法を説明した図である。
【
図18】車線内で移動して障害物を回避する回避動作を行う場合に、推奨される車両の走行軌道を示した図である。
【
図19】隣接する車線へと車線変更して障害物を回避する回避動作を行う場合に、推奨される車両の走行軌道を示した図である。
【
図20】第1回避動作コスト算出処理のサブ処理プログラムのフローチャートである。
【
図21】第2回避動作コスト算出処理のサブ処理プログラムのフローチャートである。
【
図22】第3回避動作コスト算出処理のサブ処理プログラムのフローチャートである。
【
図23】障害物のある道路が片側2車線の道路である場合に、回避動作の候補毎に算出されるコストの例を示した図である。
【
図24】障害物のある道路が片側1車線の道路である場合に、回避動作の候補毎に算出されるコストの例を示した図である。
【
図25】動的走行軌道生成処理のサブ処理プログラムのフローチャートである。
【
図26】動的走行軌道の一つである回避軌道の一例を示した図である。
【
図27】動的走行軌道の一つである追従軌道の一例を示した図である。
【
図28】走行軌道反映処理のサブ処理プログラムのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る運転支援装置をナビゲーション装置1に具体化した一実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。先ず、本実施形態に係るナビゲーション装置1を含む運転支援システム2の概略構成について
図1及び
図2を用いて説明する。
図1は本実施形態に係る運転支援システム2を示した概略構成図である。
図2は本実施形態に係る運転支援システム2の構成を示したブロック図である。
【0012】
図1に示すように、本実施形態に係る運転支援システム2は、情報配信センタ3が備えるサーバ装置4と、車両5に搭載されて車両5の自動運転に関する各種支援を行うナビゲーション装置1とを基本的に有する。また、サーバ装置4とナビゲーション装置1とは通信ネットワーク網6を介して互いに電子データを送受信可能に構成されている。尚、ナビゲーション装置1の代わりに、車両5に搭載された他の車載器や車両5に関する制御を行う車両制御装置を用いても良い。
【0013】
ここで、車両5はユーザの運転操作に基づいて走行する手動運転走行に加えて、ユーザの運転操作によらず車両が予め設定された経路や道なりに沿って自動的に走行を行う自動運転支援による支援走行が可能な車両とする。
【0014】
また、自動運転支援は全ての道路区間に対して行っても良いし、特定の道路区間(例えば境界にゲート(有人無人、有料無料は問わない)が設けられた高速道路)を車両が走行する間のみ行う構成としても良い。以下の説明では車両の自動運転支援が行われる自動運転区間は、一般道や高速道路を含む全ての道路区間に加えて駐車場も含むこととし、車両が走行を開始してから走行を終了するまで(車両を駐車するまで)の間において基本的に自動運転支援が行われるとして説明する。但し、車両が自動運転区間を走行する場合には必ず自動運転支援が行われるのではなく、ユーザにより自動運転支援を行うことが選択され(例えば自動運転開始ボタンをONする)、且つ自動運転支援による走行を行わせることが可能と判定された状況でのみ行うのが望ましい。一方で、車両5は自動運転支援による支援走行のみ可能な車両としても良い。
【0015】
そして、自動運転支援における車両制御では、例えば、車両の現在位置、車両が走行する車線、周辺の障害物の位置を随時検出し、後述のようにナビゲーション装置1で生成された走行軌道に沿って、同じく生成された速度計画に従った速度で走行するようにステアリング、駆動源、ブレーキ等の車両制御が自動で行われる。尚、本実施形態の自動運転支援による支援走行では、車線変更や右左折や駐車操作についても上記自動運転支援による車両制御を行うことにより走行するが、車線変更や右左折や駐車操作等の特殊な走行については自動運転支援による走行は行わずに手動運転により行う構成としても良い。
【0016】
一方、ナビゲーション装置1は、車両5に搭載され、ナビゲーション装置1が有する地図データ或いは外部から取得した地図データや障害物情報に基づいて自車位置周辺の地図を表示したり、ユーザの目的地の入力を行ったり、地図画像上において車両の現在位置を表示したり、設定された案内経路に沿った移動案内を行う車載機である。本実施形態では特に自動運転支援による支援走行を車両が行う場合に、自動運転支援に関する各種支援情報を生成する。支援情報としては例えば車両の走行が推奨される走行軌道(推奨される車線移動態様を含む)、目的地において車両を駐車する駐車位置の選択、走行する際の車速を示す速度計画等がある。尚、ナビゲーション装置1の詳細については後述する。
【0017】
また、サーバ装置4は全国を走行する各車両から現在時刻や走行情報等を含むプローブ情報(材料情報)を適宜収集して蓄積するとともに、蓄積されたプローブ情報から道路に関する各種支援情報(例えば道路の通行止め情報、障害物情報、事故情報、渋滞情報、旅行時間等)を生成し、生成された支援情報をナビゲーション装置1に対して配信したり、支援情報を用いた各種処理を行う情報管理サーバである。特に本実施形態では、サーバ装置4は、車両5の現在位置座標、車速、及び車両5が備える車載カメラによって周辺を撮像した撮像画像を各車両5から収集し、収集した各情報を統計或いは解析することによって道路上にあって車両の走行を妨げる要因となる障害物に関するデータ(障害物情報)を生成し、車両5に対して配信する。尚、障害物は、例えば路上に駐車された駐車車両、道路の工事現場に設置される看板や柵、路面の凹凸等が該当する。
【0018】
また、サーバ装置4は、ナビゲーション装置1の要求に応じて経路探索の実行についても行う。具体的には、ナビゲーション装置1からサーバ装置4へと出発地や目的地等の経路探索に必要な情報が経路探索要求とともに送信される(但し、再探索の場合には目的地に関する情報は必ずしも送信する必要は無い)。そして経路探索要求を受信したサーバ装置4は、サーバ装置4の有する地図情報を用いて経路探索を行い、出発地から目的地までの推奨経路を特定する。その後、特定された推奨経路を要求元のナビゲーション装置1へと送信する。そして、ナビゲーション装置1は受信した推奨経路に関する情報をユーザに提供したり、推奨経路を使って後述のように自動運転支援に関する各種支援情報を生成することも可能である。
【0019】
更に、サーバ装置4は、上記経路探索に用いる通常の地図情報とは別に、より精度の高い地図情報である高精度地図情報を有している。高精度地図情報は、例えば道路のレーン形状(車線単位の道路形状や曲率、車線幅等)と道路に描かれた区画線(車道中央線、車線境界線、車道外側線、誘導線等)に関する情報が含まれる。また、その他に交差点に関する情報、駐車場に関する情報等も含まれる。そして、サーバ装置4はナビゲーション装置1からの要求に応じて上記障害物情報とともに高精度地図情報を配信し、ナビゲーション装置1はサーバ装置4から配信された障害物情報や高精度地図情報を用いて後述のように自動運転支援に関する各種支援情報を生成する。尚、高精度地図情報は基本的に道路(リンク)とその周辺のみを対象とした地図情報であるが、道路周辺以外のエリアについても含む地図情報としても良い。
【0020】
但し、上述した経路探索処理については必ずしもサーバ装置4で行う必要は無く、地図情報を有するナビゲーション装置1であればナビゲーション装置1で行っても良い。また、高精度地図情報についてもサーバ装置4から配信されるのではなくナビゲーション装置1が予め有するようにしても良い。
【0021】
また、通信ネットワーク網6は全国各地に配置された多数の基地局と、各基地局を管理及び制御する通信会社とを含み、基地局及び通信会社を有線(光ファイバー、ISDN等)又は無線で互いに接続することにより構成されている。ここで、基地局はナビゲーション装置1との通信をするトランシーバー(送受信機)とアンテナを有する。そして、基地局は通信会社の間で無線通信を行う一方、通信ネットワーク網6の末端となり、基地局の電波が届く範囲(セル)にあるナビゲーション装置1の通信をサーバ装置4との間で中継する役割を持つ。
【0022】
続いて、運転支援システム2におけるサーバ装置4の構成について
図2を用いてより詳細に説明する。サーバ装置4は、
図2に示すようにサーバ制御部11と、サーバ制御部11に接続された情報記録手段としてのサーバ側地
図DB12と、高精度地
図DB13と、障害物情報DB14と、サーバ側通信装置15とを備える。
【0023】
サーバ制御部11は、サーバ装置4の全体の制御を行う制御ユニット(MCU、MPU等)であり、演算装置及び制御装置としてのCPU21、並びにCPU21が各種の演算処理を行うにあたってワーキングメモリとして使用されるRAM22、制御用のプログラム等が記録されたROM23、ROM23から読み出したプログラムを記憶するフラッシュメモリ24等の内部記憶装置を備えている。尚、サーバ制御部11は、後述のナビゲーション装置1のECUとともに処理アルゴリズムとしての各種手段を有する。
【0024】
一方、サーバ側地
図DB12は、外部からの入力データや入力操作に基づいて登録された最新のバージョンの地図情報であるサーバ側地図情報が記憶される記憶手段である。ここで、サーバ側地図情報は、道路網を始めとして経路探索、経路案内及び地図表示に必要な各種情報から構成されている。例えば、道路網を示すノード及びリンクを含むネットワークデータ、道路(リンク)に関するリンクデータ、ノード点に関するノードデータ、各交差点に関する交差点データ、施設等の地点に関する地点データ、地図を表示するための地図表示データ、経路を探索するための探索データ、地点を検索するための検索データ等からなる。
【0025】
また、高精度地
図DB13は、上記サーバ側地図情報よりも精度の高い地図情報である高精度地図情報16が記憶される記憶手段である。高精度地図情報16は、特に車両が走行対象となる道路や駐車場等に関してより詳細な情報を格納した地図情報であり、本実施形態では例えば道路に関してはレーン形状(車線単位の道路形状や曲率、車線幅等)と道路に描かれた区画線(車道中央線、車線境界線、車道外側線、誘導線等)に関する情報が含まれる。更に、道路の勾(こう)配、カント、バンク、合流区間、車線数の減少する箇所、幅員の狭くなる箇所、踏切等を表すデータが、コーナに関して、曲率半径、交差点、T字路、コーナの入口及び出口等を表すデータが、道路属性に関して、降坂路、登坂路等を表すデータが、道路種別に関して、国道、県道、細街路等の一般道のほか、高速自動車国道、都市高速道路、自動車専用道路、一般有料道路、有料橋等の有料道路を表すデータがそれぞれ記録される。特に本実施形態では、道路の車線数に加えて、車線毎の進行方向の通行区分や道路の繋がり(具体的には、交差点の通過前の道路に含まれる車線と交差点の通過後の道路に含まれる車線との対応関係)を特定する情報についても記憶されている。更に、道路に設定されている制限速度についても記憶されている。また、高精度地図情報は基本的に道路(リンク)及びその周辺のみを対象とした地図情報であるが、道路周辺以外のエリアについても含む地図情報としても良い。また、
図2に示す例ではサーバ側地
図DB12に格納されるサーバ側地図情報と高精度地図情報16とは異なる地図情報としているが、高精度地図情報16はサーバ側地図情報の一部としても良い。
【0026】
一方、障害物情報DB14は、各車両から収集されるプローブ情報を統計或いは解析することによって生成された障害物に関する情報(障害物情報)を累積的に記憶する記憶手段である。尚、障害物は、道路を走行する車両の走行を妨げる要因となる障害物であり、例えば路上に駐車された駐車車両、道路の工事現場に設置される看板や柵、路面の凹凸等が該当する。尚、本実施形態においては、車両から収集されるプローブ情報として、特に(a)車両が備える車載カメラやその他のセンサを用いた障害物の検出結果、(b)車両の位置座標及び車速が含まれる。そして、それらのプローブ情報を統計或いは解析することによって、全国の道路上にある障害物の種類や位置をサーバ装置4側で管理し、障害物情報DB14に格納する。但し、障害物に関する情報はプローブ情報以外から取得するようにしても良い。
【0027】
図3は障害物情報DB14に記憶される障害物情報の一例を示した図である。
図3に示すように障害物情報は、障害物を検出した日時を特定する情報と、障害物の種類と、障害物の位置を特定する情報を含む。更に障害物の位置は、障害物の位置するリンクのリンクIDと、リンクの始点からの距離と、障害物の位置する車線と、車線内において障害物が位置する範囲で特定しており、例えば
図3に示す例ではリンクID“100001”のリンクの始点から20mの位置において、最も左側の車線の左端から0.2mまでの範囲に、駐車車両が位置することを示している。また、リンクID“100013”のリンクの始点から30mの位置において、最も左側の車線の左端から0.5mまでの範囲に、駐車車両が位置することを示している。また、リンクID“100101”のリンクの始点から50mの位置において、最も左側の車線の左端から0.4mまでの範囲に、駐車車両が位置することを示している。尚、『車線No.』は、例えばリンクに含まれる複数の車線について、左から順に1、2、3・・・と規定する。
【0028】
そして、サーバ装置4は、障害物情報DB14に記憶された障害物情報をナビゲーション装置1の要求に応じてナビゲーション装置1に配信する。一方で、障害物情報の配信されたナビゲーション装置1は、配信された障害物情報を用いて後述のように自動運転支援に関する各種支援情報を生成する。
【0029】
一方、サーバ側通信装置15は各車両5のナビゲーション装置1と通信ネットワーク網6を介して通信を行う為の通信装置である。また、ナビゲーション装置1以外にインターネット網や、交通情報センタ、例えば、VICS(登録商標:Vehicle Information and Communication System)センタ等から送信された渋滞情報、規制情報、交通事故情報等の各情報から成る交通情報の受信についても可能である。
【0030】
次に、車両5に搭載されたナビゲーション装置1の概略構成について
図4を用いて説明する。
図4は本実施形態に係るナビゲーション装置1を示したブロック図である。
【0031】
図4に示すように本実施形態に係るナビゲーション装置1は、ナビゲーション装置1が搭載された車両の現在位置を検出する現在位置検出部31と、各種のデータが記録されたデータ記録部32と、入力された情報に基づいて、各種の演算処理を行うナビゲーションECU33と、ユーザからの操作を受け付ける操作部34と、ユーザに対して車両周辺の地図やナビゲーション装置1で設定されている案内経路(車両の走行予定経路)に関する情報等を表示する液晶ディスプレイ35と、経路案内に関する音声ガイダンスを出力するスピーカ36と、記憶媒体であるDVDを読み取るDVDドライブ37と、プローブセンタやVICSセンタ等の情報センタとの間で通信を行う通信モジュール38と、を有する。また、ナビゲーション装置1はCAN等の車載ネットワークを介して、ナビゲーション装置1の搭載された車両に対して設置された車外カメラ39や各種センサが接続されている。更に、ナビゲーション装置1の搭載された車両に対する各種制御を行う車両制御ECU40とも双方向通信可能に接続されている。
【0032】
以下に、ナビゲーション装置1が有する各構成要素について順に説明する。
現在位置検出部31は、GPS41、車速センサ42、ステアリングセンサ43、ジャイロセンサ44等からなり、現在の車両の位置、方位、車両の走行速度、現在時刻等を検出することが可能となっている。ここで、特に車速センサ42は、車両の移動距離や車速を検出する為のセンサであり、車両の駆動輪の回転に応じてパルスを発生させ、パルス信号をナビゲーションECU33に出力する。そして、ナビゲーションECU33は発生するパルスを計数することにより駆動輪の回転速度や移動距離を算出する。尚、上記4種類のセンサをナビゲーション装置1が全て備える必要はなく、これらの内の1又は複数種類のセンサのみをナビゲーション装置1が備える構成としても良い。
【0033】
また、データ記録部32は、外部記憶装置及び記録媒体としてのハードディスク(図示せず)と、ハードディスクに記録された地図情報DB45やキャッシュ46や所定のプログラム等を読み出すとともにハードディスクに所定のデータを書き込む為のドライバである記録ヘッド(図示せず)とを備えている。尚、データ記録部32をハードディスクの代わりにフラッシュメモリやメモリーカードやCDやDVD等の光ディスクを有しても良い。また、本実施形態では上述したようにサーバ装置4において目的地までの経路を探索するので、地図情報DB45については省略しても良い。地図情報DB45を省略した場合であっても、必要に応じてサーバ装置4から地図情報を取得することも可能である。
【0034】
ここで、地図情報DB45は、例えば、道路(リンク)に関するリンクデータ、ノード点に関するノードデータ、経路の探索や変更に係る処理に用いられる探索データ、施設に関する施設データ、地図を表示するための地図表示データ、各交差点に関する交差点データ、地点を検索するための検索データ等が記憶された記憶手段である。
【0035】
一方、キャッシュ46は、過去にサーバ装置4から配信された高精度地図情報16や障害物情報が保管される記憶手段である。保管する期間は適宜設定可能であるが、例えば記憶されてから所定期間(例えば1カ月)としても良いし、車両のACC電源(accessory power supply)がOFFされるまでとしても良い。また、キャッシュ46に格納されるデータ量が上限となった後に古いデータから順次削除するようにしても良い。そして、ナビゲーションECU33は、キャッシュ46に格納された高精度地図情報16や障害物情報を用いて、自動運転支援に関する各種支援情報を生成する。詳細については後述する。
【0036】
一方、ナビゲーションECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)33は、ナビゲーション装置1の全体の制御を行う電子制御ユニットであり、演算装置及び制御装置としてのCPU51、並びにCPU51が各種の演算処理を行うにあたってワーキングメモリとして使用されるとともに、経路が探索されたときの経路データ等が記憶されるRAM52、制御用のプログラムのほか、後述の自動運転支援プログラム(
図5参照)等が記録されたROM53、ROM53から読み出したプログラムを記憶するフラッシュメモリ54等の内部記憶装置を備えている。尚、ナビゲーションECU33は、処理アルゴリズムとしての各種手段を有する。例えば、走行予定経路取得手段は、車両が走行する走行予定経路を取得する。障害物情報取得手段は、走行予定経路にあって車両の走行を妨げる要因となる障害物の情報を取得する。コスト算出手段は、区画線に関する情報を含む地図情報と障害物の情報とを用いて、車両が障害物の位置する車線を走行するとともに車線内で移動して障害物を回避する第1の回避動作と、車両が障害物の位置する車線から該車線の外へと移動して障害物を回避する第2の回避動作と、を含む障害物を回避する為の複数の回避動作の候補に対して乗員への負荷を示すコストを算出する。回避動作選択手段は、算出されたコストを比較して複数の回避動作の候補の内から障害物を回避する為に推奨される回避動作を選択する。走行軌道生成手段は、選択された回避動作に従って走行予定経路に含まれる道路に対して車両に走行が推奨される走行軌道を生成する。運転支援手段は、生成された走行軌道に基づいて車両の運転支援を行う。
【0037】
操作部34は、走行開始地点としての出発地及び走行終了地点としての目的地を入力する際等に操作され、各種のキー、ボタン等の複数の操作スイッチ(図示せず)を有する。そして、ナビゲーションECU33は、各スイッチの押下等により出力されるスイッチ信号に基づき、対応する各種の動作を実行すべく制御を行う。尚、操作部34は液晶ディスプレイ35の前面に設けたタッチパネルを有しても良い。また、マイクと音声認識装置を有しても良い。
【0038】
また、液晶ディスプレイ35には、道路を含む地図画像、交通情報、操作案内、操作メニュー、キーの案内、案内経路(走行予定経路)に沿った案内情報、ニュース、天気予報、時刻、メール、テレビ番組等が表示される。尚、液晶ディスプレイ35の代わりに、HUDやHMDを用いても良い。
【0039】
また、スピーカ36は、ナビゲーションECU33からの指示に基づいて案内経路(走行予定経路)に沿った走行を案内する音声ガイダンスや、交通情報の案内を出力する。
【0040】
また、DVDドライブ37は、DVDやCD等の記録媒体に記録されたデータを読み取り可能なドライブである。そして、読み取ったデータに基づいて音楽や映像の再生、地図情報DB45の更新等が行われる。尚、DVDドライブ37に替えてメモリーカードを読み書きする為のカードスロットを設けても良い。
【0041】
また、通信モジュール38は、交通情報センタ、例えば、VICSセンタやプローブセンタ等から送信された交通情報、プローブ情報、天候情報等を受信する為の通信装置であり、例えば携帯電話機やDCMが該当する。また、車車間で通信を行う車車間通信装置や路側機との間で通信を行う路車間通信装置も含む。また、サーバ装置4で探索された経路情報や高精度地図情報16、障害物情報等をサーバ装置4との間で送受信するのにも用いられる。
【0042】
また、車外カメラ39は、例えばCCD等の固体撮像素子を用いたカメラにより構成され、車両のフロントバンパの上方に取り付けられるとともに光軸方向を水平より所定角度下方に向けて設置される。そして、車外カメラ39は、車両が自動運転区間を走行する場合において、車両の進行方向前方を撮像する。また、ナビゲーションECU33は撮像された撮像画像に対して画像処理を行うことによって、車両が走行する道路に描かれた区画線や障害物を検出する。更に、車両の周辺に路上に駐車された駐車車両、道路の工事現場に設置される看板や柵、路面の凹凸等の車両の走行を妨げる要因となる障害物を検出した場合については、検出した障害物の位置や種類を特定する情報をプローブ情報としてサーバ装置4へと送信する。一方で、障害物の検出結果に基づいて自動運転支援に関する新たな各種支援情報の生成についても行う。例えば、現在の走行軌道上に新たに障害物(プローブ情報での送信対象とならない走行中の前方車両なども含む)を検出した場合については、障害物を回避或いは追従して走行する新たな走行軌道を生成する。尚、車外カメラ39は車両前方以外に後方や側方に配置するように構成しても良い。また、障害物を検出する手段としてはカメラの代わりにミリ波レーダやレーザセンサ等のセンサや車車間通信や路車間通信を用いても良い。
【0043】
また、車両制御ECU40は、ナビゲーション装置1が搭載された車両の制御を行う電子制御ユニットである。また、車両制御ECU40にはステアリング、ブレーキ、アクセル等の車両の各駆動部と接続されており、本実施形態では特に車両において自動運転支援が開始された後に、各駆動部を制御することにより車両の自動運転支援を実施する。また、自動運転支援中にユーザによってオーバーライドが行われた場合には、オーバーライドが行われたことを検出する。
【0044】
ここで、ナビゲーションECU33は、走行開始後にCANを介して車両制御ECU40に対してナビゲーション装置1で生成された自動運転支援に関する各種支援情報を送信する。そして、車両制御ECU40は受信した各種支援情報を用いて走行開始後の自動運転支援を実施する。支援情報としては例えば車両の走行が推奨される走行軌道、走行する際の車速を示す速度計画等がある。
【0045】
続いて、上記構成を有する本実施形態に係るナビゲーション装置1においてCPU51が実行する自動運転支援プログラムについて
図5に基づき説明する。
図5は本実施形態に係る自動運転支援プログラムのフローチャートである。ここで、自動運転支援プログラムは、車両のACC電源(accessory power supply)がONされた後であって自動運転支援による車両の走行が開始された場合に実行され、ナビゲーション装置1で生成された支援情報に従って自動運転支援による支援走行を実施するプログラムである。また、以下の
図5、
図7、
図13、
図15、
図20~
図22、
図25及び
図28にフローチャートで示されるプログラムは、ナビゲーション装置1が備えているRAM52やROM53に記憶されており、CPU51により実行される。
【0046】
先ず、自動運転支援プログラムではステップ(以下、Sと略記する)1において、CPU51は、車両が今後走行する予定にある経路(以下、走行予定経路という)を取得する。尚、車両の走行予定経路は、例えばユーザが目的地を設定することによってサーバ装置4により探索された目的地までの推奨経路とする。尚、目的地が設定されていない場合には、車両の現在位置から道なりに走行する経路を走行予定経路としても良い。
【0047】
また、推奨経路の探索を行う場合に先ずCPU51は、サーバ装置4に対して経路探索要求を送信する。尚、経路探索要求には、経路探索要求の送信元のナビゲーション装置1を特定する端末IDと、出発地(例えば車両の現在位置)及び目的地を特定する情報と、が含まれている。尚、再探索時については目的地を特定する情報は必ずしも必要では無い。その後、CPU51は経路探索要求に応じてサーバ装置4から送信された探索経路情報を受信する。探索経路情報は、送信した経路探索要求に基づいてサーバ装置4が最新のバージョンの地図情報を用いて探索した出発地から目的地までの推奨経路(センタールート)を特定する情報(例えば推奨経路に含まれるリンク列)である。例えば公知のダイクストラ法を用いて探索される。
【0048】
尚、上記推奨経路の探索では、目的地において駐車場で車両を駐車する為に推奨される駐車位置(駐車スペース)を選択し、選択された駐車位置までの推奨経路を探索するのが望ましい。即ち、探索される推奨経路には駐車場までの経路に加えて駐車場内での車の移動を示す経路についても含むのが望ましい。また、駐車位置の選択については、駐車位置までの車両の移動に加えて車両を駐車した後の徒歩の移動も考慮してユーザの負担が軽くなる駐車位置を選択するのが望ましい。
【0049】
次に、S2においてCPU51は、車両の現在位置から前記S1で取得された走行予定経路に沿った所定距離以内の区間を対象として高精度地図情報16を取得する。例えば車両が現在位置する2次メッシュに含まれる走行予定経路を対象として高精度地図情報16を取得する。但し、高精度地図情報16を取得する対象となるエリアは適宜変更可能であり、例えば車両の現在位置から走行予定経路に沿って3km以内のエリアの高精度地図情報16を取得するようにしても良い。また、走行予定経路の全体を対象として高精度地図情報16を取得しても良い。
【0050】
ここで、高精度地図情報16は
図6に示すように矩形形状(例えば500m×1km)に区分されてサーバ装置4の高精度地
図DB13に格納されている。従って、例えば
図6に示すように走行予定経路61が取得された場合には、車両の現在位置を含む2次メッシュ内にある走行予定経路61を含むエリア62~64を対象として高精度地図情報16が取得される。高精度地図情報16には例えば道路のレーン形状と車線幅と道路に描かれた区画線(車道中央線、車線境界線、車道外側線、誘導線等)に関する情報が含まれる。また、その他に交差点に関する情報、駐車場に関する情報等も含まれる。
【0051】
また、高精度地図情報16は基本的にサーバ装置4から取得されるが、キャッシュ46に既に格納されているエリアの高精度地図情報16が存在する場合には、キャッシュ46から取得する。また、サーバ装置4から取得された高精度地図情報16はキャッシュ46に一旦格納される。
【0052】
その後、S3においてCPU51は、後述の静的走行軌道生成処理(
図7)を実行する。ここで、静的走行軌道生成処理は、車両の走行予定経路と前記S2で取得した高精度地図情報16と更に走行予定経路にある障害物とに基づいて、走行予定経路に含まれる道路に対して車両に走行が推奨される走行軌道である静的走行軌道を生成する処理である。特に、CPU51は走行予定経路に含まれる車線単位で車両に走行が推奨される走行軌道を静的走行軌道として特定する。尚、静的走行軌道は後述のように車両の現在位置から進行方向に沿って所定距離前方までの区間(例えば車両が現在位置する2次メッシュ内、或いは目的地までの全区間)を対象として生成される。尚、所定距離については適宜変更可能であるが、少なくとも車外カメラ39やその他のセンサによって車両周辺の道路状況を検出することが可能な範囲(検出範囲)外を含む領域を対象として静的走行軌道を生成する。
【0053】
次に、S4においてCPU51は、前記S2で取得した高精度地図情報16に基づいて、前記S3で生成された静的走行軌道を走行する際の車両の速度計画を生成する。例えば、制限速度情報や走行予定経路上にある速度変化地点(例えば交差点、カーブ、踏切、横断歩道など)を考慮して、静的走行軌道を走行する際に推奨される車両の走行速度を算出する。
【0054】
そして、前記S4で生成された速度計画は、自動運転支援に用いる支援情報としてフラッシュメモリ54等に格納される。また、前記S4で生成された速度計画を実現する為に必要な車両の加減速を示す加速度の計画についても自動運転支援に用いる支援情報として生成するようにしても良い。
【0055】
続いて、S5においてCPU51は、車外カメラ39で撮像された撮像画像に対して画像処理を行うことによって、周辺の道路状況として、特に自車両の周辺に自車両の走行に影響が生じる要因が存在するか否かを判定する。ここで、前記S5で判定対象となる“自車両の走行に影響が生じる要因”は、リアルタイムで変化する動的な要因とし、道路構造に基づくような静的な要因は除かれる。例えば、自車両の進行方向前方を走行又は駐車する他車両、渋滞車両、自車両の進行方向前方に位置する歩行者、自車両の進行方向前方にある工事区間等が該当する。一方で、交差点、カーブ、踏切、合流区間、車線減少区間等は除かれる。また、他車両、歩行者、工事区間が存在する場合であっても、それらが自車両の今後の走行軌道と重複する虞のない場合(例えば自車両の今後の走行軌道から離れた位置にある場合)については“自車両の走行に影響が生じる要因”からは除かれる。従って、後述のように静的走行軌道の生成(S3)を行う際に回避対象とされた障害物(障害物情報DB14に管理されている障害物)については、既に障害物を回避した走行軌道が生成されており、現在の走行軌道と重複しないので“自車両の走行に影響が生じる要因”からは除かれる。また、車両の走行に影響が生じる可能性のある要因を検出する手段としてはカメラの代わりにミリ波レーダやレーザセンサ等のセンサや車車間通信や路車間通信を用いても良い。
【0056】
また、例えば全国の道路を走行する各車両のリアルタイムの位置等を外部のサーバで管理し、CPU51は自車両の周辺に位置する他車両の位置を外部のサーバから取得して前記S5の判定処理を行うようにしても良い。
【0057】
そして、自車両の周辺に自車両の走行に影響が生じる要因が存在すると判定された場合(S5:YES)には、S6へと移行する。それに対して、自車両の周辺に自車両の走行に影響が生じる要因が存在しないと判定された場合(S5:NO)には、S9へと移行する。
【0058】
S6においてCPU51は、後述の動的走行軌道生成処理(
図25)を実行する。ここで、動的走行軌道生成処理は、車両の現在位置から前記S5で検出された“自車両の走行に影響が生じる要因”を回避或いは追従して静的走行軌道に戻る為の新たな軌道を動的走行軌道として生成する。尚、動的走行軌道は後述のように“自車両の走行に影響が生じる要因”を含む区間を対象として生成される。また、区間の長さは要因の内容によって変化する。例えば、“自車両の走行に影響が生じる要因”が車両の前方を走行する他車両(前方車両)である場合には、一例として右側に車線変更して前方車両を追い越し、その後に左側に車線変更して元の車線に戻るまでの軌道が動的走行軌道として生成される。尚、動的走行軌道は、車外カメラ39やその他のセンサで取得した車両周辺の道路状況に基づいて生成されるので、動的走行軌道が生成される対象となる領域は、少なくとも車外カメラ39やその他のセンサによって車両周辺の道路状況を検出することが可能な範囲(検出範囲)内となる。
【0059】
続いて、S7においてCPU51は、後述の走行軌道反映処理(
図28)を実行する。ここで、走行軌道反映処理は、前記S6で新たに生成された動的走行軌道を、前記S3で生成された静的走行軌道に反映する処理である。具体的には、車両の現在位置から“自車両の走行に影響が生じる要因”を含む区間の終端まで、静的走行軌道、及び少なくとも一以上の動的走行軌道の夫々のコストを算出し、該コストが最少となる走行軌道を選択する。結果的に、必要に応じて静的走行軌道の一部が動的走行軌道に置き換わることになる。尚、状況によっては動的走行軌道の置き換えが行われない場合、即ち動的走行軌道の反映が行われても前記S3で生成された静的走行軌道から変化しない場合もある。更に、動的走行軌道と静的走行軌道が同じ軌道である場合には、置き換えが行われても前記S3で生成された静的走行軌道から変化しない場合もある。
【0060】
次に、S8においてCPU51は、前記S7で動的走行軌道が反映された後の静的走行軌道について、反映された動的走行軌道の内容に基づいて前記S4で生成された車両の速度計画を修正する。尚、動的走行軌道の反映が行われた結果、前記S3で生成された静的走行軌道から変化しない場合には、S8の処理については省略しても良い。
【0061】
続いて、S9においてCPU51は、前記S3で生成された静的走行軌道(前記S7で動的走行軌道の反映が行われている場合には反映後の軌道)を前記S4で生成された速度計画(前記S8で速度計画の修正が行われている場合には修正後の計画)に従った速度で車両が走行する為の制御量を演算する。具体的には、アクセル、ブレーキ、ギヤ及びステアリングの制御量が夫々演算される。尚、S9及びS10の処理についてはナビゲーション装置1ではなく車両を制御する車両制御ECU40が行うようにしても良い。
【0062】
その後、S10においてCPU51は、S9において演算された制御量を反映する。具体的には、演算された制御量を、CANを介して車両制御ECU40へと送信する。車両制御ECU40では受信した制御量に基づいてアクセル、ブレーキ、ギヤ及びステアリングの各車両制御が行われる。その結果、前記S3で生成された静的走行軌道(前記S7で動的走行軌道の反映が行われている場合には反映後の軌道)を前記S4で生成された速度計画(前記S8で速度計画の修正が行われている場合には修正後の計画)に従った速度で走行する走行支援制御が可能となる。
【0063】
次に、S11においてCPU51は、前記S3で静的走行軌道の生成が行われてから車両が一定距離走行したか否かを判定する。例えば一定距離は1kmとする。
【0064】
そして、前記S3で静的走行軌道の生成が行われてから車両が一定距離走行したと判定された場合(S11:YES)には、S2へと戻る。その後、車両の現在位置から走行予定経路に沿った所定距離以内の区間を対象として、静的走行軌道の生成が再度行われる(S2~S4)。尚、第1実施形態では車両が一定距離(例えば1km)走行する度に、車両の現在位置から走行予定経路に沿った所定距離以内の区間を対象として、静的走行軌道の生成が繰り返し行われることとしているが、目的地までの距離が短い場合には走行開始時点において目的地までの静的走行軌道の生成を一度に行うようにしても良い。
【0065】
一方、前記S3で静的走行軌道の生成が行われてから車両が一定距離走行していないと判定された場合(S11:NO)には、自動運転支援による支援走行を終了するか否かを判定する(S12)。自動運転支援による支援走行を終了する場合としては、目的地に到着した場合以外に、ユーザが車両に設けられた操作パネルを操作したり、ハンドル操作やブレーキ操作などが行われることによって自動運転支援による走行を意図的に解除(オーバーライド)した場合がある。
【0066】
そして、自動運転支援による支援走行を終了すると判定された場合(S12:YES)には、当該自動運転支援プログラムを終了する。それに対して自動運転支援による支援走行を継続すると判定された場合(S12:NO)には、S5へと戻る。
【0067】
次に、前記S3において実行される静的走行軌道生成処理のサブ処理について
図7に基づき説明する。
図7は静的走行軌道生成処理のサブ処理プログラムのフローチャートである。
【0068】
先ず、S21においてCPU51は、現在位置検出部31により検出した車両の現在位置を取得する。尚、車両の現在位置は、例えば高精度のGPS情報や高精度ロケーション技術を用いて詳細に特定することが望ましい。ここで、高精度ロケーション技術とは、車両に設置されたカメラから取り込んだ白線や路面ペイント情報を画像認識により検出し、更に、検出した白線や路面ペイント情報を例えば高精度地図情報16と照合することにより、走行車線や高精度な車両位置を検出可能にする技術である。更に、車両が複数の車線からなる道路を走行する場合には車両の走行する車線についても特定する。
【0069】
次に、S22においてCPU51は、前記S2で取得した高精度地図情報16に基づいて、車両の進行方向前方の静的走行軌道を生成する区間(例えば車両の現在位置を含む2次メッシュ内)を対象として、レーン形状、区画線情報、交差点に関する情報等を取得する。尚、前記S22で取得されるレーン形状と区画線情報には、車線数、車線幅、車線数の増減がある場合にはどの位置でどのように増減するか、車線毎の進行方向の通行区分や道路の繋がり(具体的には、交差点の通過前の道路に含まれる車線と交差点の通過後の道路に含まれる車線との対応関係)を特定する情報等を含む。また、交差点に関する情報としては、交差点の形状に加えて交差点上に配置された地物の位置や形状に関する情報を含む。更に、“交差点上に配置された地物”には、誘導線(ガイド白線)、交差点中央に配置されるひし形の導流帯(ダイヤマーク)等の路面に描かれた路面表示の他、ポール等の構造物がある。
【0070】
続いて、S23においてCPU51は、前記S22で取得したレーン形状と区画線情報とに基づいて、車両の進行方向前方の静的走行軌道を生成する区間を対象としてレーンネットワークの構築を行う。ここで、レーンネットワークは車両が選択し得る車線移動を示したネットワークである。
【0071】
ここで、前記S23におけるレーンネットワークを構築する例として、例えば
図8に示す走行予定経路を車両が走行する場合を例に挙げて説明する。
図8に示す走行予定経路は、車両の現在位置から直進した後に次の交差点71で右折し、更に次の交差点72でも右折し、次の交差点73で左折する経路とする。
図8に示す走行予定経路では、例えば交差点71で右折する場合に右側の車線に進入することも可能であるし、左側の車線に進入することも可能である。但し、次の交差点72で右折する必要があるので、交差点72の進入時点では最も右側の車線に車線移動する必要がある。また、交差点72で右折する場合においても右側の車線に進入することも可能であるし、左側の車線に進入することも可能である。但し、次の交差点73で左折する必要があるので、交差点73の進入時点では最も左側の車線に車線移動する必要がある。このような車線移動が可能な区間を対象として構築したレーンネットワークを
図9に示す。
【0072】
図9に示すようにレーンネットワークは、車両の進行方向前方の静的走行軌道を生成する区間を複数の区画(グループ)に区分する。具体的には、交差点の進入位置、交差点の退出位置、車線が増減する位置を境界として区分する。そして、区分された各区画の境界に位置する各車線に対してノード点(以下、レーンノードという)75が設定されている。更に、レーンノード75間をつなぐリンク(以下、レーンリンクという)76が設定されている。
【0073】
また、上記レーンネットワークは、特に交差点でのレーンノードとレーンリンクとの接続によって、交差点の通過前の道路に含まれる車線と交差点の通過後の道路に含まれる車線との対応関係、即ち交差点の通過前の車線に対して交差点の通過後に移動可能な車線を特定する情報を含んでいる。具体的には交差点の通過前の道路に設定されたレーンノードと、交差点の通過後の道路に設定されたレーンノードとの内、レーンリンクによって接続されたレーンノードに対応する車線間において車両が移動可能なことを示している。このようなレーンネットワークを生成する為に高精度地図情報16には、交差点に接続する各道路について、交差点へと進入する道路と退出する道路の組み合わせごとに、車線の対応関係を示すレーンフラグが設定されて格納されている。CPU51は前記S23においてレーンネットワークを構築する際に、レーンフラグを参照して交差点におけるレーンノードとレーンリンクとの接続を形成する。
【0074】
次に、S24においてCPU51は、前記S23で構築されたレーンネットワークに対して、レーンネットワークの始点に位置するレーンノードに対して車両が移動を開始する開始レーン(出発ノード)を設定し、レーンネットワークの終点に位置するレーンノードに対して車両が移動する目標となる目標レーン(目的ノード)を設定する。尚、レーンネットワークの始点が片側複数車線の道路である場合には、車両の現在位置する車線に対応するレーンノードが開始レーンとなる。一方、レーンネットワークの終点が片側複数車線の道路である場合には、最も左側の車線(左側通行の場合)に対応するレーンノードが目標レーンとなる。
【0075】
その後、S25においてCPU51は、前記S23で構築されたレーンネットワークを参照し、開始レーンから目標レーンまでを連続して繋ぐルートの内、レーンコストの最も小さいルート(以下、推奨ルートという)を導出する。例えばダイクストラ法を用いて目標レーン側からルートの探索を行う。但し、開始レーンから目標レーンまでを連続して繋ぐルートを探索できるのであればダイクストラ法以外の探索手段を用いても良い。導出された推奨ルートは、車両が移動する際に推奨される車両の車線移動態様となる。
【0076】
また、上記ルートの探索に用いられるレーンコストは、レーンリンク76毎に付与されている。各レーンリンク76に付与されるレーンコストは、各レーンリンク76の長さ或いは移動に係る所要時間を基準値とする。特に本実施形態ではレーンリンクの長さ(m単位)をレーンコストの基準値とする。また、車線変更を伴うレーンリンクについては車線変更コスト(例えば50)を上記基準値に加算する。尚、車線変更コストについては車線変更の回数や車線変更の位置に応じて値を変えても良い。例えば交差点に近い位置で行われる車線変更や2車線分の車線変更が行われる場合については加算される車線変更コストの値をより高くすることが可能である。
【0077】
続いて、S26においてCPU51は、車両が走行する走行予定経路を対象として、サーバ装置4から走行予定経路にある障害物に関する障害物情報を取得する。尚、障害物とは特に車両の走行を妨げる要因となる障害物であり、例えば路上に駐車された駐車車両、道路の工事現場に設置される看板や柵、路面の凹凸等が該当する。また、障害物情報は、具体的には障害物を検出した日時を特定する情報と、障害物の種類と、障害物の位置を特定する情報とを含み、特に障害物の位置については障害物の位置するリンクのリンクIDと、リンクの始点からの距離と、障害物の位置する車線と、車線内において障害物が位置する範囲について特定される。そして、上記障害物情報は、全国を走行する各車両から収集されるプローブ情報に基づいて予めサーバ装置4により管理され、サーバ装置4が有する障害物情報DB14に格納されている(
図3)。従って、前記S26では自車両の車外カメラ39やその他のセンサによって車両周辺の道路状況を検出することが可能な範囲(検出範囲)外にある障害物の情報についても取得可能となる。
【0078】
次に、S27においてCPU51は、前記S2で取得した高精度地図情報16と前記S26で取得した障害物情報に基づいて、前記S25で選択された推奨ルートで走行予定経路を走行する場合において、車両の走行する車線内に障害物があるか否か判定する。
【0079】
そして、前記S25で選択された推奨ルートで走行予定経路を走行する場合において、車両の走行する車線内に障害物があると判定された場合(S27:YES)には、S28へと移行する。それに対して、車両の走行する車線内に障害物がないと判定された場合(S27:NO)には、現在の推奨ルートを維持してS32へと移行する。
【0080】
S28においてCPU51は、車両の走行する車線内にあると判定された障害物を回避する為の回避動作の候補を設定する。例えば回避動作の候補としては以下の(1)~(3)の動作が挙げられる。
【0081】
(1)
図10に示すように自車両81が障害物(
図10では路肩に駐車された駐車車両)82の位置する車線を走行するとともに車線内で移動して障害物82を回避する回避動作
(2)
図11に示すように自車両81が障害物(
図11では路肩に駐車された駐車車両)82の位置する車線から該車線の外へ車体の一部がはみ出すまで移動して障害物82を回避する回避動作
(3)
図12に示すように自車両81が障害物(
図12では路肩に駐車された駐車車両)82の位置する車線から隣接する車線へと走行する車線を変更して障害物82を回避する回避動作
【0082】
但し、必ずしも上記(1)~(3)の全てが回避動作の候補になるとは限らず、障害物の位置、道路種別、道路形状、区画線の配置態様等によって変化する。例えば、一車線のみの道路である場合には(3)の回避動作ができないので(1)と(2)が回避動作の候補となる。また、車線内で障害物が占める領域が大きく、車線内での移動で障害物を回避することができない(車線内で通過可能な領域が車幅よりも小さい)場合には、(1)の回避動作ができないので(2)と(3)が回避動作の候補となる。
【0083】
次に、S29においてCPU51は、後述のコスト算出処理(
図13)を行う。コスト算出処理は、前記S28で設定された回避動作の各候補について、車両の乗員への負荷を示すコストを算出する処理である。
【0084】
続いて、S30においてCPU51は、前記S29で算出されたコストを比較し、前記S28で設定された複数の回避動作の候補の内から障害物を回避する為に推奨される回避動作(以下、推奨回避動作という)を選択する。基本的には算出されたコストが最も小さい回避動作の候補を、推奨回避動作として選択する。
【0085】
その後、S31においてCPU51は、前記S30で選択された推奨回避動作に基づいて前記S25で選択された推奨ルートを修正する。具体的には(1)の回避動作が推奨回避動作として選択された場合には、
図10に示すように右側への移動を開始(即ち回避動作を開始)する地点A1と、その後に障害物82を通過して左側へと移動を開始する地点A2と、を推奨ルートに対して夫々追加する。尚、地点A1、A2の位置は障害物を回避可能な範囲で適宜設定可能であるが、例えば地点A1は障害物82の位置からS29のコスト算出処理において特定される最長距離Lだけ手前側の地点とし、地点A2は障害物の通過直後の地点とする。また、(2)の回避動作が推奨回避動作として選択された場合には、
図11に示すように右側への移動を開始(即ち回避動作を開始)する地点B1と、その後に障害物82を通過して左側へと移動を開始する地点B2と、を推奨ルートに対して夫々追加する。尚、地点B1、B2の位置は障害物を回避可能な範囲で適宜設定可能であるが、例えば地点B1は障害物82の位置からS29のコスト算出処理において特定される最長距離Lだけ手前側の地点とし、地点B2は障害物の通過直後の地点とする。また、(3)の回避動作が推奨回避動作として選択された場合には、
図12に示すように右側への車線変更を開始(即ち回避動作を開始)する地点C1と、その後に障害物82を通過して左側への車線変更を開始する地点C2と、を推奨ルートに対して夫々追加する。尚、地点C1、C2の位置は障害物を回避可能な範囲で適宜設定可能であるが、例えば地点C1は障害物82の位置からS29のコスト算出処理において特定される最長距離Lだけ手前側の地点とし、地点C2は障害物の通過直後の地点とする。
【0086】
その後、S32においてCPU51は、前記S25で導出された推奨ルート(S31で修正が行われた場合には修正後の推奨ルート)に沿って走行する為の具体的な走行軌道を生成する。尚、車線変更を伴う区間の走行軌道については、できる限り車線変更が連続せず、且つ交差点から離れた位置で行うように車線変更の位置を設定する。また、特に交差点での右左折、車線変更、障害物を回避する上記(1)~(3)の回避動作をする際の走行軌道を生成する場合には、車両に生じる横方向の加速度(横G)を算出し、横Gが自動運転支援に支障が生じることなく、また車両の乗員に不快感を与えない上限値(例えば0.2G)を超えないことを条件として、クロソイド曲線を用いてできる限り円滑に結ぶ軌道を算出する。尚、上記(1)~(3)の回避動作をする際の走行軌道についてはS29のコスト算出処理においても算出されるので、詳細については後述する。上記処理を行うことによって、走行予定経路に含まれる道路に対して車両に走行が推奨される走行軌道である静的走行軌道が生成される。尚、車線変更を行う区画でもなく回避運動を行う区間でもなく交差点内の区画でもない区画については、車線の中央を通過する軌道を車両の走行が推奨される走行軌道とする。
【0087】
そして、前記S32で生成された静的走行軌道は、自動運転支援に用いる支援情報としてフラッシュメモリ54等に格納される。
【0088】
次に、前記S29において実行されるコスト算出処理のサブ処理について
図13に基づき説明する。
図13はコスト算出処理のサブ処理プログラムのフローチャートである。
【0089】
先ず、S41においてCPU51は、ナビゲーション装置1が搭載されている自車両の車幅を取得する。また、障害物を回避する場合に車両に生じる横方向の加速度(横G)の許容上限値についても取得する。尚、加速度(横G)の許容上限値は固定値としても良いし、変更可能な値としても良い。例えば0.2Gとする。
【0090】
次に、S42においてCPU51は、前記S2で取得した高精度地図情報16に基づいて、前記S27において障害物があると判定された道路の道路形状について取得する。具体的には、車線数及び車線幅について取得する。
【0091】
続いて、S43においてCPU51は、前記S27において障害物があると判定された道路を走行する際の自車両の走行速度V0を取得する。走行速度V0は、例えば道路の制限速度としても良いし、道路種別に基づいて決定しても良いし、プローブ情報に基づいて算出した該当道路の平均車速としても良いし、自車両の走行履歴から推定しても良い。また、走行速度V0については渋滞等の現在の道路状況についても考慮して取得するのが望ましい。
【0092】
その後、S44においてCPU51は、障害物情報DB14に記憶される障害物情報に基づいて、前記S27において車両の走行する車線内にあると判定された障害物のより詳細な位置を取得する。具体的には、障害物が車両の走行する車線のどちらの端からどの程度の範囲までを占めているかを取得する。例えば、
図14に示すように路肩に駐車された駐車車両が障害物82として存在する場合には、車線の左端から0.2mまでの範囲に障害物82が位置すると取得される。
【0093】
その後、S45においてCPU51は、後述の最長距離算出処理(
図15)を実行する。ここで、最長距離算出処理は、前記S27において車両の走行する車線内にあると判定された障害物を上記(1)~(3)の回避動作によって回避すると仮定した場合に、上記(1)~(3)の各回避動作により障害物の回避を行うのに必要な距離の内、最も長い距離(以下、最長距離Lという)を算出する処理である。尚、“障害物の回避を行うのに必要な距離”とは、障害物を回避して元の走行状態に戻るまでではなく、障害物を回避するまでの距離とする。例えば
図10に示す(1)の回避動作では、障害物82と接触する虞のない車線内の右端にまで車両を移動させるのに必要な距離である。また、
図11に示す(2)の回避動作では、障害物82と接触する虞のない車線外に車体の一部がはみ出す状態にまで車両を移動させるのに必要な距離である。また、
図12に示す(3)の回避動作では、右側の車線へと車線変更を完了するまでに必要な距離である。
【0094】
次に、S46においてCPU51は、仮に車両が障害物を回避せずに走行したと仮定した場合に、最長距離Lを走行するのに必要な走行時間T0を算出する。具体的には以下の式(1)により算出される。
T0=L/V0・・・・(1)
【0095】
続いて、S47においてCPU51は、前記S46で算出された走行時間T0を2倍した時間を往復走行時間として算出する。尚、往復走行時間は後述のように上記(1)~(3)の回避動作について走行時間に基づくコストを算出する際に基準の時間となる。
【0096】
次に、S48においてCPU51は、後述の第1回避動作コスト算出処理(
図20)を行う。第1回避動作コスト算出処理では前記S28で設定された回避動作の候補の内、特に上記(1)の回避動作に対して車両の乗員への負荷を示すコストを算出する処理である。但し、前記S28で設定された回避動作の候補に上記(1)の回避動作が含まれていない場合についてはS48の処理は行われない。
【0097】
続いて、S49においてCPU51は、後述の第2回避動作コスト算出処理(
図21)を行う。第2回避動作コスト算出処理では前記S28で設定された回避動作の候補の内、特に上記(2)の回避動作に対して車両の乗員への負荷を示すコストを算出する処理である。但し、前記S28で設定された回避動作の候補に上記(2)の回避動作が含まれていない場合についてはS49の処理は行われない。
【0098】
続いて、S50においてCPU51は、後述の第3回避動作コスト算出処理(
図22)を行う。第3回避動作コスト算出処理では前記S28で設定された回避動作の候補の内、特に上記(3)の回避動作に対して車両の乗員への負荷を示すコストを算出する処理である。但し、前記S28で設定された回避動作の候補に上記(3)の回避動作が含まれていない場合についてはS50の処理は行われない。
【0099】
その後、S30へと移行し、CPU51は前記S48~S50で算出された各コストを比較し、前記S28で設定された複数の回避動作の候補の内から算出されたコストが最も小さい回避動作の候補を、推奨回避動作として選択する。
【0100】
次に、前記S45において実行される最長距離算出処理のサブ処理について
図15に基づき説明する。
図15は最長距離算出処理のサブ処理プログラムのフローチャートである。
【0101】
先ず、S51においてCPU51は、前記S27において車両の走行する車線内にあると判定された障害物を上記(1)の回避動作によって回避すると仮定した場合に、障害物を回避する際の推奨速度V1を算出する。
【0102】
尚、推奨速度V
1は安全間隔と車両が通過時に障害物との間で確保可能な間隔を考慮して算出される。ここで、
図16は安全間隔を示した図である。安全間隔とは、ある速度で車両が障害物の横を通過する際に障害物との間で空けることが推奨される距離である。例えば、車両が50km/hで走行する際には障害物との間で1.5mの間隔を空けることが推奨される。また、車両が100km/hで走行する際には障害物との間で3mの間隔を空けることが推奨される。具体的には以下の式(2)の関係で特定される。
安全間隔[m]=0.03×車速[km/h]・・・・(2)
【0103】
そして、CPU51は先ず前記S41で取得した自車両の車幅と、前記S42で取得した車線幅と、前記S44で取得した障害物が車線に占める範囲を参照し、車両が車線内の移動で障害物を回避する場合に、障害物との間で確保可能な最大の間隔Wを算出する。例えば
図17に示すように路肩に駐車された駐車車両が障害物82として存在し、車線の左端から0.2mまでの範囲に障害物82が位置し、車線幅が3.5mで自車両81の車幅が1.8mの場合には、間隔Wは1.5mとなる。次に、前記S43で取得された走行速度V
0で走行した場合に推奨される安全間隔を
図16から特定し、間隔Wが安全間隔よりも大きい場合には、走行速度V
0で走行した場合であっても安全間隔を確保可能であると判定されるので、走行速度V
0を推奨速度V
1に算出する。一方で、走行速度V
0で走行した場合に推奨される安全間隔が間隔Wよりも大きい場合には、走行速度V
0で走行すると安全間隔を確保できないと判定されるので、間隔Wを安全間隔とした場合に対応する車速を
図16から特定し、推奨速度V
1として算出する。
【0104】
次に、S52においてCPU51は、前記S43で取得された走行速度V0でから推奨速度V1までの減速に必要な距離(以下、減速距離D1という)を算出する。尚、減速する際に車両に生じることを許容する前後方向の加速度の上限は0.2Gとして、減速距離D1を算出する。また、走行速度V0と推奨速度V1が同じである場合には減速距離D1は0となる。
【0105】
続いて、S53においてCPU51は、推奨速度V
1まで減速した後に(1)の回避動作により障害物の回避を行うまでに必要な距離(以下、回避距離D2という)を算出する。ここで、回避距離D2を算出するために、先ず車両が車線内の移動で障害物を回避する場合の推奨される車両の走行軌道を算出する。ここで、車両が車線内の移動で障害物を回避する場合の推奨される車両の走行軌道は、曲率が連続して変化するクロソイド曲線を含む。より具体的には形状の異なる複数のクロソイド曲線を接続した軌道となる。
図18は例えば車線内の右側に移動する場合の推奨される車両の走行軌道を示した図である。
図18に示すように車線内の右側に移動する場合の推奨される車両の走行軌道は、移動の開始点P1からステアリングを右方向に徐々に旋回させながら(即ち曲率が徐々に大きく変化させながら)第1の中継地点P2まで進む第1のクロソイド曲線85と、第1の中継地点P2からステアリングを徐々に直進方向に戻しながら(即ち曲率が徐々に小さく変化させながら)中間点P3まで進む第2のクロソイド曲線86と、中間点P3から今度はステアリングを左方向に徐々に旋回させながら(即ち曲率が徐々に大きく変化させながら)第2の中継地点P4まで進む第3のクロソイド曲線87と、その後に第2の中継地点P4からステアリングを徐々に直進方向に戻しながら(即ち曲率が徐々に小さく変化させながら)移動の終了点P5まで進む第4のクロソイド曲線88とからなる。尚、クロソイド曲線85~88による横方向の移動幅についてはP5の時点で障害物82との間で安全間隔が確保可能な距離とする。そして、CPU51は各クロソイド曲線85~88について車線変更を行う際に生じる加速度(横G)が車両の乗員に不快感を与えない上限値(例えば0.2G)を超えることなく、更にクロソイド曲線を用いてできる限り円滑で、且つできる限り車線変更に必要な距離が短くした軌道となるように算出する。そして、算出された各クロソイド曲線85~88を接続することにより車両が車線内の移動で障害物を回避する場合の推奨される車両の走行軌道が算出される。更に、算出された走行軌道の全長から回避距離D2についても算出される。
【0106】
その後、S54においてCPU51は、前記S52で算出された減速距離D1と前記S53で算出された回避距離D2の合計を、(1)の回避動作によって障害物を回避すると仮定した場合に、(1)の回避動作により障害物の回避を行うのに必要な距離として算出する。
【0107】
次に、S55においてCPU51は、前記S43で取得された走行速度V
0で隣接する車線への車線変更を行うのに必要な距離(以下、車線変更距離D3という)を算出する。ここで、車線変更距離D3を算出するために、先ず車両が走行速度V
0で車線変更を行う場合の推奨される車両の走行軌道を算出する。ここで、車両が車線変更を行う場合の推奨される車両の走行軌道は、曲率が連続して変化するクロソイド曲線を含む。より具体的には形状の異なる複数のクロソイド曲線を接続した軌道となる。
図19は例えば右側に隣接する車線に移動する場合の推奨される車両の走行軌道を示した図である。
図19に示すように右側に隣接する車線に移動する場合の推奨される車両の走行軌道は、車線移動の開始点P1からステアリングを右方向に徐々に旋回させながら(即ち曲率が徐々に大きく変化させながら)第1の中継地点P2まで進む第1のクロソイド曲線85と、第1の中継地点P2からステアリングを徐々に直進方向に戻しながら(即ち曲率が徐々に小さく変化させながら)車線の境界P3まで進む第2のクロソイド曲線86と、車線の境界P3から今度はステアリングを左方向に徐々に旋回させながら(即ち曲率が徐々に大きく変化させながら)第2の中継地点P4まで進む第3のクロソイド曲線87と、その後に第2の中継地点P4からステアリングを徐々に直進方向に戻しながら(即ち曲率が徐々に小さく変化させながら)車線移動の終了点P5まで進む第4のクロソイド曲線88とからなる。尚、クロソイド曲線85~88による横方向の移動幅については隣接する車線との間の距離(例えば3.5m)とする。そして、CPU51は各クロソイド曲線85~88について車線変更を行う際に生じる加速度(横G)が車両の乗員に不快感を与えない上限値(例えば0.2G)を超えることなく、更にクロソイド曲線を用いてできる限り円滑で、且つできる限り車線変更に必要な距離が短くした軌道となるように算出する。そして、算出された各クロソイド曲線85~88を接続することにより車両が走行速度V
0で車線変更を行う場合の推奨される車両の走行軌道が算出される。更に、算出された走行軌道の全長から車線変更距離D3についても算出される。
【0108】
その後、S56においてCPU51は、前記S55で算出された車線変更距離D3を、(3)の回避動作によって障害物を回避すると仮定した場合に、(3)の回避動作により障害物の回避を行うのに必要な距離として算出する。
【0109】
続いて、S57においてCPU51は、前記S54で算出された(1)の回避動作により障害物の回避を行うのに必要な距離と、前記S56で算出された(3)の回避動作により障害物の回避を行うのに必要な距離の内、長い方を最長距離Lとして算出する。
【0110】
尚、基本的に(2)の回避動作により障害物の回避を行うのに必要な距離が、(3)の回避動作により障害物の回避を行うのに必要な距離よりも長くなることはない為、本実施形態では
図15に示す最長距離算出処理において(2)の回避動作により障害物の回避を行うのに必要な距離を算出していない。しかしながら、(2)の回避動作により障害物の回避を行うのに必要な距離を算出しても良い。また、前記S28で設定された回避動作の候補に上記(3)の回避動作が含まれていない場合については、(1)の回避動作により障害物の回避を行うのに必要な距離と(2)の回避動作により障害物の回避を行うのに必要な距離とを比較し、長い方を最長距離Lとして算出しても良い。また、前記S28で設定された回避動作の候補に上記(1)の回避動作が含まれていない場合については、(3)の回避動作により障害物の回避を行うのに必要な距離のみを算出して最長距離Lとしても良い。
【0111】
次に、前記S48において実行される第1回避動作コスト算出処理のサブ処理について
図20に基づき説明する。
図20は第1回避動作コスト算出処理のサブ処理プログラムのフローチャートである。
【0112】
先ず、S61においてCPU51は、前記S43で取得された走行速度V0から前記S51で算出された推奨速度V1までの減速に必要な時間(以下、減速時間T1という)を算出する。尚、減速する際に車両に生じることを許容する前後方向の加速度の上限は0.2Gとして、減速時間T1を算出する。また、走行速度V0と推奨速度V1が同じである場合には減速時間T1は0となる。
【0113】
続いて、S62においてCPU51は、推奨速度V
1まで減速した後に(1)の回避動作により障害物の回避を行うまでに必要な時間(以下、回避時間T2という)を算出する。ここで、回避時間T2は前記S53で算出された車両が車線内の移動で障害物を回避する場合の推奨される車両の走行軌道(
図18)に基づいて算出する。即ち、算出された走行軌道を推奨速度V
1で走行した場合に必要な時間を回避時間T2として算出する。
【0114】
その後、S63においてCPU51は、前記S54で算出された(1)の回避動作により障害物の回避を行うのに必要な距離が最長距離Lよりも短い場合について、その差分距離を走行速度V0で走行するのに必要な時間(以下、走行時間T3という)を算出する。尚、前記S54で算出された(1)の回避動作により障害物の回避を行うのに必要な距離が最長距離Lと同じ場合には、走行時間T3は0となる。
【0115】
続いて、S64においてCPU51は、前記S61で算出した減速時間T1と前記S62で算出した回避時間T2と前記S63で算出した走行時間T3の合計を2倍した時間を、(1)の回避動作により障害物を回避して元の走行状態に戻るまで(即ち走行速度V0で車線の中央付近を走行する状態に戻るまで)のトータルの所要時間として算出する。
【0116】
その後、S65においてCPU51は、上記(1)の回避動作に対して車両の乗員への負荷を示すコストとして、特に走行時間に基づくコストを算出する。具体的には、前記S47で算出した往復走行時間(T0×2)と前記S65で算出したトータルの所要時間((T1+T2+T3)×2)との差分(sec)をコストとして算出する。尚、前記S65で算出されるコストが大きい程、障害物を回避するのに必要な時間が長く、乗員への負荷が大きいことを示す。
【0117】
次に、S66においてCPU51は、上記(1)の回避動作に対して車両の乗員への負荷を示すコストとして、特に車線変更に基づくコストを算出する。(1)の回避動作は車線内での移動で障害物を回避する動作であるので、他の車線への移動はなく車線変更に基づく乗員の負担は小さいと推定され、“0”をコストとして算出する。尚、前記S66で算出されるコストが大きい程、障害物を回避するのに車線変更に伴う困難な操作が要求され、乗員への負荷が大きいことを示す。
【0118】
更に、S67においてCPU51は、上記(1)の回避動作に対して車両の乗員への負荷を示すコストとして、特に危険度に基づくコストを算出する。ここで、危険度に基づくコストについては前記S42で取得した障害物のある道路の道路形状に基づいて算出される。具体的には、障害物のある道路が片側2車線以上の道路である場合には、障害物を回避するために自車両が車線の片側に寄ると、隣接する車線を走行する大型の車両と接近する可能性がある。従って、危険度は中と推定され、“1”をコストとして算出する。一方で、障害物のある道路が片側1車線或いは1車線のみの道路である場合には、障害物を回避するために自車両が車線の片側に寄ったとしても他の車両と接近する虞は極めて小さい。従って、危険度は小と推定され、“0”をコストとして算出する。
【0119】
前記S65~S67で算出された各コストの合計が上記(1)の回避動作に対して車両の乗員への負荷を示すコストとして最終的に算出される。
【0120】
次に、前記S49において実行される第2回避動作コスト算出処理のサブ処理について
図21に基づき説明する。
図21は第2回避動作コスト算出処理のサブ処理プログラムのフローチャートである。
【0121】
先ず、S71においてCPU51は、前記S43で取得された走行速度V
0で(2)の回避動作により障害物の回避を行うのに必要な時間(以下、回避時間T4という)を算出する。尚、回避時間T4は(2)の回避動作により障害物を回避する場合の推奨される車両の走行軌道を先ず特定し、特定された走行軌道から算出しても良いが、
図18や
図19に示すクロソイド曲線を直線に近似しても算出される走行時間の差が無視できるほどに小さいことから、本実施形態では走行軌道を直線に近似して回避時間T4を算出する。従って最長距離Lを走行速度V
0で走行した場合に必要な時間を回避時間T4として算出する。
【0122】
次に、S72においてCPU51は、前記S71で算出した回避時間T4を2倍した時間を、(2)の回避動作により障害物を回避して元の走行状態に戻るまで(即ち車線のはみ出しが解消するまで)のトータルの所要時間として算出する。
【0123】
その後、S73においてCPU51は、上記(2)の回避動作に対して車両の乗員への負荷を示すコストとして、特に走行時間に基づくコストを算出する。具体的には、前記S47で算出した往復走行時間(T0×2)と前記S72で算出したトータルの所要時間((T4×2)との差分(sec)をコストとして算出する。尚、前記S73で算出されるコストが大きい程、障害物を回避するのに必要な時間が長く、乗員への負荷が大きいことを示す。
【0124】
次に、S74においてCPU51は、上記(2)の回避動作に対して車両の乗員への負荷を示すコストとして、特に車線変更に基づくコストを算出する。(2)の回避動作は車線外への移動で障害物を回避する動作であるが、車線変更に比べると移動量は大きくなく、車線変更に基づく乗員の負担は中程度と推定され、“1”をコストとして算出する。尚、前記S74で算出されるコストが大きい程、障害物を回避するのに車線変更に伴う困難な操作が要求され、乗員への負荷が大きいことを示す。
【0125】
更に、S75においてCPU51は、上記(2)の回避動作に対して車両の乗員への負荷を示すコストとして、特に危険度に基づくコストを算出する。ここで、危険度に基づくコストについては前記S42で取得した障害物のある道路の道路形状に基づいて算出される。具体的には、障害物のある道路が片側2車線以上の道路である場合には、障害物を回避するために自車両が車線からはみ出ると、はみ出した車線を走行する他車両と接近する可能性が高い。従って、危険度は大と推定され、“2”をコストとして算出する。一方で、障害物のある道路が片側1車線或いは1車線のみの道路である場合には、障害物を回避するために自車両が車線からはみ出したとしても他の車両と接近する虞は小さいが、対向車や歩行者などと接近する可能性がある。従って、危険度は中程度と推定され、“1”をコストとして算出する。
【0126】
前記S73~S75で算出された各コストの合計が上記(2)の回避動作に対して車両の乗員への負荷を示すコストとして最終的に算出される。
【0127】
次に、前記S50において実行される第3回避動作コスト算出処理のサブ処理について
図22に基づき説明する。
図22は第3回避動作コスト算出処理のサブ処理プログラムのフローチャートである。
【0128】
先ず、S81においてCPU51は、前記S43で取得された走行速度V
0で(3)の回避動作により障害物の回避を行うのに必要な時間(以下、回避時間T5という)を算出する。尚、回避時間T5は(3)の回避動作により障害物を回避する場合の推奨される車両の走行軌道を先ず特定し、特定された走行軌道から算出しても良いが、
図18や
図19に示すクロソイド曲線を直線に近似しても算出される走行時間の差が無視できるほどに小さいことから、本実施形態では走行軌道を直線に近似して回避時間T5を算出する。従って最長距離Lを走行速度V
0で走行した場合に必要な時間を回避時間T5として算出する。
【0129】
次に、S82においてCPU51は、前記S81で算出した回避時間T5を2倍した時間を、(3)の回避動作により障害物を回避して元の走行状態に戻るまで(即ち回避前の元の車線に戻るまで)のトータルの所要時間として算出する。
【0130】
その後、S83においてCPU51は、上記(3)の回避動作に対して車両の乗員への負荷を示すコストとして、特に走行時間に基づくコストを算出する。具体的には、前記S47で算出した往復走行時間(T0×2)と前記S82で算出したトータルの所要時間((T5×2)との差分(sec)をコストとして算出する。尚、前記S83で算出されるコストが大きい程、障害物を回避するのに必要な時間が長く、乗員への負荷が大きいことを示す。
【0131】
次に、S84においてCPU51は、上記(3)の回避動作に対して車両の乗員への負荷を示すコストとして、特に車線変更に基づくコストを算出する。(3)の回避動作は隣接する他の車線へと完全に車両を移動させるものであるので、車線変更に基づく乗員の負担は大と推定され、“2”をコストとして算出する。尚、前記S84で算出されるコストが大きい程、障害物を回避するのに車線変更に伴う困難な操作が要求され、乗員への負荷が大きいことを示す。
【0132】
更に、S85においてCPU51は、上記(3)の回避動作に対して車両の乗員への負荷を示すコストとして、特に危険度に基づくコストを算出する。ここで、危険度に基づくコストについては前記S42で取得した障害物のある道路の道路形状に基づいて算出される。具体的には、障害物のある道路が片側2車線以上の道路である場合には、障害物を回避するために自車両が走行する車線を移ることとなるが、走行する車線を完全に移動するものであるので、操作負担は大きい一方で他車両と接近する可能性は低い。従って、危険度は小と推定され、“0”をコストとして算出する。一方で、障害物のある道路が片側1車線の道路である場合には、障害物を回避するために自車両が対向車線を走行することとなるので、対向車と接近する可能性がある。従って、危険度は大と推定され、“2”をコストとして算出する。
【0133】
前記S83~S85で算出された各コストの合計が上記(3)の回避動作に対して車両の乗員への負荷を示すコストとして最終的に算出される。その後、S30へと移行し、上記(1)~(3)の回避動作の候補の内から障害物を回避する為に推奨される推奨回避動作を選択することとなる。基本的には算出されたコストの合計が最も小さい回避動作の候補を、推奨回避動作として選択する。
【0134】
ここで、
図23及び
図24は上述した第1回避動作コスト算出処理(
図20)、第2回避動作コスト算出処理(
図21)、第3回避動作コスト算出処理(
図22)において実際に算出されるコストについて具体例を挙げて示した図である。
【0135】
例えば
図23は障害物のある道路が片側2車線の道路であって、車線幅が3.5m、車幅が1.8m、障害物が車線左端から0.8mの範囲を占め、走行速度V
0が50km/h、許容する上限加速度が0.2Gである場合に算出されるコストを示す。
図23に示す例では、(1)の回避動作が最もコストの合計が大きくなり、(3)の回避動作が最もコストの合計が小さくなる。従って、(3)の回避動作が推奨回避動作として選択される。
【0136】
一方、
図24は障害物のある道路が片側1車線の道路であって車線幅が3.5m、車幅が1.8m、障害物が車線左端から0.8mの範囲を占め、走行速度V
0が40km/h、許容する上限加速度が0.2Gである場合に算出されるコストを示す。
図24に示す例では、(3)の回避動作が最もコストの合計が大きくなり、(1)の回避動作が最もコストの合計が小さくなる。従って、(1)の回避動作が推奨回避動作として選択される。
【0137】
次に、前記S6において実行される動的走行軌道生成処理のサブ処理について
図25に基づき説明する。
図25は動的走行軌道生成処理のサブ処理プログラムのフローチャートである。
【0138】
先ず、S91においてCPU51は、現在位置検出部31により検出した自車両の現在位置を取得する。尚、車両の現在位置は、例えば高精度のGPS情報や高精度ロケーション技術を用いて詳細に特定することが望ましい。ここで、高精度ロケーション技術とは、車両に設置されたカメラから取り込んだ白線や路面ペイント情報を画像認識により検出し、更に、検出した白線や路面ペイント情報を例えば高精度地図情報16と照合することにより、走行車線や高精度な車両位置を検出可能にする技術である。更に、車両が複数の車線からなる道路を走行する場合には車両の走行する車線についても特定する。
【0139】
次に、S92においてCPU51は、前記S3で生成された静的走行軌道(即ち、自車両が今後に走行する予定の軌道)と、前記S4で生成された速度計画(即ち、自車両の今後の予定速度)を取得する。
【0140】
次に、S93においてCPU51は、前記S2で取得した高精度地図情報16に基づいて、車両の進行方向前方の特に前記S5で検出された“自車両の走行に影響が生じる要因(以下、影響要因という)”の周辺を対象として、レーン形状、区画線情報等を取得する。尚、前記S93で取得されるレーン形状と区画線情報には、車線数、車線数の増減がある場合にはどの位置でどのように増減するかを特定する情報等を含む。
【0141】
続いて、S94においてCPU51は、前記S5で検出された影響要因について、現時点の影響要因の位置と、影響要因が移動している場合には移動状況(移動方向、移動速度)について取得する。尚、影響要因の位置と移動状況については、例えば車外カメラ39で車両周辺の所定の検出範囲を撮像した撮像画像に対して画像処理等を行うことによって取得する。
【0142】
また、例えば全国の道路を走行する各車両のリアルタイムの位置、移動方向、移動速度等を外部のサーバで管理し、CPU51は自車両の周辺に位置する他車両が影響要因である場合には、前記S94において該当する他車両の位置、移動方向、移動速度を外部のサーバから取得するようにしても良い。
【0143】
その後、S95においてCPU51は、先ず前記S94で取得した影響要因の現在位置及び移動状況に基づいて影響要因の今後の移動軌跡を予測する。尚、影響要因が他車両である場合には、他車両のウィンカーやブレーキランプの点灯状態について考慮して予測しても良い。更に、車車間通信などで他車両の今後の走行軌道や速度計画が取得可能であれば、それらを考慮して予測しても良い。その後、予測された影響要因の今後の移動軌跡と前記S92で取得した自車両の静的走行軌道及び速度計画とに基づいて、影響要因が自車両の走行に影響があるか否かをより正確に判定する。具体的には自車両と影響要因が現時点又は将来において同一の車線上に位置し、その間の距離が適切な車間距離D以内に接近すると予測される場合に、影響要因が自車両の走行に影響があると判定する。尚、適切な車間距離Dは例えば以下の式(5)により算出する。
D=自車両の車速×2sec+自車両の制動距離-影響要因の制動距離(但し、影響要因が移動体の場合に限る)・・・・(5)
【0144】
そして、影響要因が自車両の走行に影響があると判定された場合(S95:YES)には、S96へと移行する。一方、影響要因が自車両の走行に影響がないと判定された場合(S95:NO)には、動的走行軌道を生成することなくS9(S7、S8は省略する)へと移行する。尚、影響要因が静的走行軌道生成処理(
図7)において走行軌道を生成する際に既に回避対象とされた障害物(S26、S27)である場合については、既に障害物を回避する走行軌道が生成されているので、基本的に影響要因は自車両の走行に影響がないと判定される。但し、静的走行軌道が生成されたタイミングから現時点までの間に障害物の位置や障害物が車線内で占める範囲が変化している場合等についてはこの限りでない。
【0145】
S96においてCPU51は、自車両が影響要因を回避して静的走行軌道に戻る(即ち追い越しする)為の新たな軌道を生成することが可能か否かを判定する。具体的には、影響要因と自車両が現時点で同一車線に位置する場合には、自車両が右側に車線変更して制限速度を超えない範囲で影響要因を追い越し、その後に左側に車線変更して元の車線に戻るまでの軌道について、影響要因と適切な車間距離D以上を維持する軌道を描くことができる場合には、自車両が影響要因を回避して静的走行軌道に戻る為の新たな軌道を生成することが可能と判定される。また、影響要因と自車両が現時点で異なる車線に位置し、その後に同一車線上へと移動する場合には、自車両が制限速度を超えない範囲で影響要因を追い越し、その後に影響要因と同一車線に車線変更するまでの軌道について、影響要因と適切な車間距離D以上を維持する軌道を描くことができる場合には、自車両が影響要因を回避して静的走行軌道に戻る為の新たな軌道を生成することが可能と判定される。上記S96の判定処理は、前記S93で取得した車両の進行方向前方のレーン形状及び区画線情報と、車両の現在位置と、影響要因の今後の移動軌跡と、道路の制限速度とに基づいて判定される。
【0146】
そして、自車両が影響要因を回避して静的走行軌道に戻る(即ち追い越しする)為の新たな軌道を生成することが可能と判定された場合(S96:YES)には、S97へと移行する。それに対して、自車両が影響要因を回避して静的走行軌道に戻る(即ち追い越しする)為の新たな軌道を生成することができないと判定された場合(S96:NO)には、S98へと移行する。
【0147】
S97においてCPU51は、自車両が影響要因を回避して静的走行軌道に戻る(即ち追い越しする)為の軌道(以下、回避軌道という)を算出する。例えば自車両と影響要因が現時点で同一車線上にある場合には、
図26に示すように自車両が右側に車線変更して影響要因を追い越し、その後に左側に車線変更して元の車線に戻るまでの軌道が回避軌道に該当する。
【0148】
ここで、
図26は片側2車線の道路において自車両81が左側車線を走行し、影響要因が同車線を走行する前方車両90である場合に前記S97で生成される回避軌道の一例を示す。
先ず、
図26に示す例では、ステアリングの旋回を開始して右側の車線へと移動し、且つステアリングの位置が直進方向に戻るのに必要な第1の軌道L1を算出する。尚、第1の軌道L1は車両の現在の車速に基づいて車線変更を行う際に生じる横方向の加速度(横G)を算出し、横Gが自動運転支援に支障が生じることなく、また車両の乗員に不快感を与えない上限値(例えば0.2G)を超えないことを条件として、クロソイド曲線を用いてできる限り円滑で、且つできる限り車線変更に必要な距離が短くなる軌道を算出する。また、前方車両90との間に適切な車間距離D以上を維持することについても条件とする。
次に、右側の車線を制限速度を上限に走行して前方車両90を追い越し、且つ前方車両90との間を適切な車間距離D以上とするまでの第2の軌道L2を算出する。尚、第2の軌道L2は基本的に直線の軌道であり、また軌道の長さは、前方車両90の車速と道路の制限速度に基づいて算出される。
続いて、ステアリングの旋回を開始して左側の車線へと戻り、且つステアリングの位置が直進方向に戻るのに必要な第3の軌道L3を算出する。尚、第3の軌道L3は車両の現在の車速に基づいて車線変更を行う際に生じる横方向の加速度(横G)を算出し、横Gが自動運転支援に支障が生じることなく、また車両の乗員に不快感を与えない上限値(例えば0.2G)を超えないことを条件として、クロソイド曲線を用いてできる限り円滑で、且つできる限り車線変更に必要な距離が短くなる軌道を算出する。また、前方車両90との間に適切な車間距離D以上を維持することについても条件とする。
【0149】
また、前記S97では上記回避軌道を走行する際の自車両の推奨速度についても算出する。自車両の推奨速度については、制限速度を上限として、車線変更時において車両に生じる横方向の加速度(横G)が自動運転支援に支障が生じることなく、また車両の乗員に不快感を与えない上限値(例えば0.2G)を超えない速度を推奨速度とする。例えば回避軌道の曲率や制限速度などに基づいて算出される。
【0150】
一方で、S98においてCPU51は、自車両が影響要因に追従(或いは並走)して走行する為の軌道(以下、追従軌道という)を算出する。具体的には、自車両と影響要因が現時点で同一車線上にある場合には、
図27に示すように自車両81が車線変更することなく現在の車線を継続して走行し、影響要因(例えば前方車両90)に対して追従する軌道が追従軌道に該当する。尚、追従軌道は基本的に静的走行軌道と同一の軌道となる。但し、影響要因との間の車間距離を適切に維持する必要がある為、後述のように速度計画については修正することとなる(S8)。
【0151】
また、前記S98では上記追従軌道を走行する際の自車両の推奨速度についても算出する。自車両の追従速度については、制限速度を上限として、前方の影響要因との間の車間距離について適切な車間距離D以上を維持する速度を推奨速度とする。尚、適切な車間距離Dについては前述した式(5)に基づいて算出される。
【0152】
その後、S99においてCPU51は、前記S97で算出された回避軌道(回避軌道に関しては算出された場合のみ)及び前記S98で算出された追従軌道を、周辺の道路状況を考慮した上で走行予定経路に含まれる道路に対して車両に走行が推奨される走行軌道である動的走行軌道として生成する。
【0153】
そして、前記S99で生成された動的走行軌道は、自動運転支援に用いる支援情報としてフラッシュメモリ54等に格納される。
【0154】
次に、前記S7において実行される走行軌道反映処理のサブ処理について
図28に基づき説明する。
図28は走行軌道反映処理のサブ処理プログラムのフローチャートである。
【0155】
先ず、S101においてCPU51は、前記S3で生成された静的走行軌道と、前記S6で生成された動的走行軌道をフラッシュメモリ54等の記憶媒体から読み出す。
【0156】
続いて、S102においてCPU51は、前記S101で読み出された各走行軌道について、走行軌道毎に車両の走行軌道としての適正度を示すパスコストを算出する。ここで、パスコストは、(a)走行時間(平均車速)、(b)車線変更回数、(c)車線変更を行う位置、(d)走行車線の少なくとも一以上を考慮して算出する。具体的には、以下の条件に基づいて算出する。
【0157】
(a)“走行時間(平均車速)”については、走行時間が長い(即ち平均車速が遅い)走行軌道程、パスコストを高く算出する。尚、静的走行軌道の平均車速については前記S4で生成された速度計画に基づいて特定する。一方、動的走行軌道については前記S97又はS98で算出された推奨速度に基づいて特定する。
(b)“車線変更回数”については、車線変更回数が多い走行軌道程、パスコストを高く算出する。
(c)“車線変更を行う位置”については、複数回の車線変更を行う場合には、車線変更の間隔が短くなる走行軌道程、パスコストを高く算出する。また、交差点の手前側所定距離(例えば一般道700m、高速道路2km)以内で車線変更を行う走行軌道については、パスコストを加算する。
(d)“走行車線”については、追い越し車線の走行距離が長い走行軌道程、パスコストを高く算出する。
【0158】
但し、上記(a)~(d)の条件に関わらず、自車両が前記S5で検出された影響要因と接触すると判定される走行軌道についてはコストを無限大とする。
【0159】
その後、S103においてCPU51は、前記S102で算出された走行軌道毎のパスコストを比較し、静的走行軌道と動的走行軌道の内、パスコストの値が小さい走行軌道を車両の走行が推奨される走行軌道として選択する。
【0160】
次に、S104においてCPU51は、前記S103において動的走行軌道が選択されたか否かを判定する。
【0161】
そして、前記S103において動的走行軌道が選択されたと判定された場合(S104:YES)には、S105へと移行する。
【0162】
S105においてCPU51は、選択された動的走行軌道が生成された再構築区間を対象として、静的走行軌道を動的走行軌道へと置き換える。尚、再構築区間の静的走行軌道を動的走行軌道へと置き換えた場合には、基本的に動的走行軌道の始点及び終点は静的走行軌道と繋がることとなるが、前記S97やS98で選択されるルートによっては動的走行軌道の終点が静的走行軌道と繋がらない場合もある。そのような場合には、動的走行軌道の終点を始点として静的走行軌道の生成を新たに行っても良いし、静的走行軌道に繋がるまで動的走行軌道の生成を一定間隔で繰り返し行うようにしても良い。
【0163】
その後、再構築区間が動的走行軌道に置き換えられた静的走行軌道に基づいて、自動運転支援による支援走行が行われる(S9、S10)
【0164】
一方、前記S103において静的走行軌道が選択されたと判定された場合(S104:NO)には、動的走行軌道への置き換えを行うことなくS8へと移行する。
【0165】
ここで、パスコストの値が小さい走行軌道として静的走行軌道が選択された場合には、車線変更することなく現在の車線を継続して走行し、影響要因に対して追従する軌道となる。従って、動的走行軌道への置き換えは行われないが、追従する軌道では影響要因との間の車間距離を適切に維持する必要がある為、速度計画については修正することとなる(S8)。
【0166】
以上詳細に説明した通り、本実施形態に係るナビゲーション装置1及びナビゲーション装置1で実行されるコンピュータプログラムでは、車両が走行する走行予定経路を取得し(S1)、走行予定経路にあって車両の走行を妨げる要因となる障害物の情報を取得し(S26)、区画線に関する情報を含む地図情報(16)と障害物の情報とを用いて、車両が障害物の位置する車線を走行するとともに車線内で移動して障害物を回避する第1の回避動作と、車両が障害物の位置する車線から該車線の外へと移動して障害物を回避する第2の回避動作と、を含む障害物を回避する為の複数の回避動作の候補に対して乗員への負荷を示すコストを算出し(S29)、算出されたコストを比較して複数の回避動作の候補の内から障害物を回避する為に推奨される回避動作を選択し(S30)、選択された回避動作に従って走行予定経路に含まれる道路に対して車両に走行が推奨される走行軌道を生成し(S32)、生成された走行軌道に基づいて車両の運転支援を行う(S9、S10)ので、車両の走行予定経路に車両の走行を妨げる要因となる障害物が存在する場合において、車両が障害物から離れた位置にある段階で障害物を回避する為の推奨される回避動作を選択し、選択された回避動作に基づく走行軌道を生成することが可能となる。その結果、車両の乗員に負担を生じさせない適切な運転支援を実施することが可能となる。
また、第2の回避動作には、車両が障害物の位置する車線から該車線の外へ車体の一部がはみ出すまで移動して障害物を回避する回避動作と、車両が障害物の位置する車線から隣接する車線へと走行する車線を変更して障害物を回避する回避動作と、を含むので、障害物を回避するために車両が取り得ることが可能な様々な回避動作を候補として、その候補の内から障害物を回避する為の推奨される回避動作を選択することが可能となる。その結果、障害物を回避する為のより適切な回避動作を選択することが可能となる。
また、カメラやセンサによる検出範囲外にある障害物の情報を取得し(S26)、検出範囲外を含む領域を対象にして走行軌道を生成する(S32)ので、車両が障害物から離れた位置にある段階で障害物を回避する為の推奨される回避動作を選択し、選択された回避動作に基づく走行軌道を生成することが可能となる。その結果、車両の乗員に負担を生じさせない適切な運転支援を実施することが可能となる。
また、複数の回避動作の候補毎に、障害物を回避する回避動作を開始してから障害物を回避して元の走行状態に戻るまでに必要な走行時間の長さに応じたコストを加算する(S65、S73、S83)ので、障害物を回避するのに必要な走行時間に基づいて乗員の負担を正確にコストに反映することが可能となる。
【0167】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
例えば、本実施形態では、車両の走行を妨げる要因となる障害物に関する障害物情報(
図3)について障害物を検出した車両からプローブ情報としてサーバ装置4が収集しているが、車両から収集するのはセンサ情報のみで収集したセンサ情報からサーバ装置が障害物情報を生成しても良い。また、情報配信センタ3以外の外部のセンタが生成した障害物情報をサーバ装置4が取得するようにしても良い。
【0168】
また、本実施形態では、最終的に生成される静的走行軌道は車両が走行する具体的な軌道(座標の集合や線)を特定する情報となっているが、具体的な軌道までは特定せずに車両が走行する対象となる道路及び車線が特定できる程度の情報としても良い。
【0169】
また、本実施形態では、車両の走行を妨げる要因となる障害物を路上に駐車された駐車車両としているが、車両の走行を妨げる要因となるのであれば他の物であっても良い。また、静止物だけではなく動体物についても含めるようにしても良い。
【0170】
また、本実施形態では、高精度地図情報16を用いてレーンネットワークを生成している(S23)が、全国の道路を対象としたレーンネットワークを予めDBに格納しておき、必要に応じてDBから読み出すようにしても良い。
【0171】
また、本実施形態では、サーバ装置4が有する高精度地図情報には、道路のレーン形状(車線単位の道路形状や曲率、車線幅等)と道路に描かれた区画線(車道中央線、車線境界線、車道外側線、誘導線等)に関する情報の両方を含むが、区画線に関する情報のみを含むようにしても良いし、道路のレーン形状に関する情報のみを含むようにしても良い。例えば区画線に関する情報のみを含む場合であっても、区画線に関する情報に基づいて道路のレーン形状に関する情報に相当する情報を推定することが可能である。また、道路のレーン形状に関する情報のみを含む場合であっても、道路のレーン形状に関する情報に基づいて区画線に関する情報に相当する情報を推定することが可能である。また、「区画線に関する情報」は、車線を区画する区画線自体の種類や配置を特定する情報であっても良いし、隣接する車線間で車線変更が可能か否かを特定する情報であっても良いし、車線の形状を直接または間接的に特定する情報であっても良い。
【0172】
また、本実施形態では、車両の走行に影響が生じる影響要因を検出した場合に動的走行軌道を生成するとともに、既存の静的走行軌道と新たに生成された動的走行軌道のパスコストとを比較して(S102、S103)、動的走行軌道の方が推奨されると判定された場合にのみ静的走行軌道を動的走行軌道に置き換えている(S105)が、動的走行軌道が生成された場合には必ず静的走行軌道を動的走行軌道に置き換えるようにしても良い。
【0173】
また、本実施形態では、静的走行軌道に動的走行軌道を反映する手段として、静的走行軌道の一部を動的走行軌道に置き換えている(S9)が、置き換えるのではなく静的走行軌道を動的走行軌道に近づけるように軌道の修正を行っても良い。
【0174】
また、本実施形態では、車両の操作のうち、車両の挙動に関する操作である、アクセル操作、ブレーキ操作及びハンドル操作の全てを車両制御ECU40が制御することをユーザの運転操作によらずに自動的に走行を行う為の自動運転支援として説明してきた。しかし、自動運転支援を、車両の操作のうち、車両の挙動に関する操作である、アクセル操作、ブレーキ操作及びハンドル操作の少なくとも一の操作を車両制御ECU40が制御することとしても良い。一方、ユーザの運転操作による手動運転とは車両の操作のうち、車両の挙動に関する操作である、アクセル操作、ブレーキ操作及びハンドル操作の全てをユーザが行うこととして説明する。
【0175】
また、本発明の運転支援は車両の自動運転に係る自動運転支援に限られない。例えば、前記S5で特定された静的走行軌道や前記S8で生成された動的走行軌道をナビゲーション画面に表示するとともに、音声や画面等を用いた案内(例えば車線変更の案内、推奨車速の案内等)を行うことによる運転支援も可能である。また、静的走行軌道や動的走行軌道をナビゲーション画面に表示することでユーザの運転操作を支援するようにしてもよい。
【0176】
また、通常時は手動運転により走行を行い、障害物を回避する場合にのみ自動運転による走行を行うことでユーザの運転操作を支援するようにしてもよい。
【0177】
また、本実施形態では、自動運転支援プログラム(
図4)をナビゲーション装置1が実行する構成としているが、ナビゲーション装置1以外の車載器や車両制御ECU40が実行する構成としても良い。その場合には、車載器や車両制御ECU40は車両の現在位置や地図情報等をナビゲーション装置1やサーバ装置4から取得する構成とする。更に、サーバ装置4が自動運転支援プログラム(
図4)のステップの一部または全部を実行するようにしても良い。その場合にはサーバ装置4が本願の運転支援装置に相当する。
【0178】
また、本発明はナビゲーション装置以外に、携帯電話機、スマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピュータ等(以下、携帯端末等という)に適用することも可能である。また、サーバと携帯端末等から構成されるシステムに対しても適用することが可能となる。その場合には、上述した自動運転支援プログラム(
図4参照)の各ステップは、サーバと携帯端末等のいずれが実施する構成としても良い。但し、本発明を携帯端末等に適用する場合には、自動運転支援が実行可能な車両と携帯端末等が通信可能に接続(有線無線は問わない)される必要がある。
【符号の説明】
【0179】
1…ナビゲーション装置、2…運転支援システム、3…情報配信センタ、4…サーバ装置、5…車両、14…障害物情報DB、16…高精度地図情報、33…ナビゲーションECU、40…車両制御ECU、51…CPU、75…レーンノード、76…レーンリンク、81…自車両、82…障害物
【手続補正書】
【提出日】2022-03-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両周辺の所定の検出範囲における道路状況を取得する道路状況取得手段と、
車両が走行する走行予定経路を取得する走行予定経路取得手段と、
前記検出範囲外の前記走行予定経路にあって車両の走行を妨げる要因となる障害物の情報を取得する障害物情報取得手段と、
区画線に関する情報を含む地図情報と前記障害物の情報とを用いて、前記検出範囲外を含む領域を対象にして前記走行予定経路を走行する際の前記障害物を回避する為に推奨される走行軌道を生成する走行軌道生成手段と、
前記走行軌道生成手段によって生成された走行軌道に基づいて車両の運転支援を行う運転支援手段と、を有する運転支援装置。
【請求項2】
前記走行軌道生成手段は、
車両が前記障害物の位置する車線を走行するとともに車線内で移動して前記障害物を回避する第1の回避動作と、車両が前記障害物の位置する車線から該車線の外へと移動して前記障害物を回避する第2の回避動作と、を含む前記障害物を回避する為の複数の回避動作の候補に対してコストを算出するコスト算出手段と、
前記コスト算出手段により算出されたコストを比較して前記複数の回避動作の候補の内から前記障害物を回避する為に推奨される回避動作を選択する回避動作選択手段と、を更に備え、
前記回避動作選択手段により選択された回避動作に従って前記走行予定経路に含まれる道路に対して前記走行軌道を生成する請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記第2の回避動作には、
車両が前記障害物の位置する車線から該車線の外へ車体の一部がはみ出すまで移動して前記障害物を回避する回避動作と、
車両が前記障害物の位置する車線から隣接する車線へと走行する車線を変更して前記障害物を回避する回避動作と、を含む請求項2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記コスト算出手段は、前記複数の回避動作の候補毎に、前記障害物を回避する回避動作を開始してから障害物を回避して元の走行状態に戻るまでに必要な走行時間の長さに応じたコストを加算する請求項2又は請求項3に記載の運転支援装置。
【請求項5】
コンピュータを、
車両周辺の所定の検出範囲における道路状況を取得する道路状況取得手段と、
車両が走行する走行予定経路を取得する走行予定経路取得手段と、
前記検出範囲外の前記走行予定経路にあって車両の走行を妨げる要因となる障害物の情報を取得する障害物情報取得手段と、
区画線に関する情報を含む地図情報と前記障害物の情報とを用いて、前記検出範囲外を含む領域を対象にして前記走行予定経路を走行する際の前記障害物を回避する為に推奨される走行軌道を生成する走行軌道生成手段と、
前記走行軌道生成手段によって生成された走行軌道に基づいて車両の運転支援を行う運転支援手段と、
して機能させる為のコンピュータプログラム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
前記目的を達成するため本発明に係る運転支援装置は、車両周辺の所定の検出範囲における道路状況を取得する道路状況取得手段と、車両が走行する走行予定経路を取得する走行予定経路取得手段と、前記検出範囲外の前記走行予定経路にあって車両の走行を妨げる要因となる障害物の情報を取得する障害物情報取得手段と、区画線に関する情報を含む地図情報と前記障害物の情報とを用いて、前記検出範囲外を含む領域を対象にして前記走行予定経路を走行する際の前記障害物を回避する為に推奨される走行軌道を生成する走行軌道生成手段と、前記走行軌道生成手段によって生成された走行軌道に基づいて車両の運転支援を行う運転支援手段と、を有する。
尚、「運転支援」とは、運転者の車両操作の少なくとも一部を運転者に代わって行う又は補助する機能、或いは運転を支援する為の表示案内や音声案内を行うことをいう。
また、「区画線に関する情報」は、車線を区画する区画線自体の種類や配置を特定する情報であっても良いし、隣接する車線間で車線変更が可能か否かを特定する情報であっても良いし、車線の形状を直接または間接的に特定する情報であっても良い。
また、「障害物」は、例えば路上に駐車された駐車車両、道路の工事現場に設置される看板や柵、路面の凹凸等が該当する。また、静止物だけではなく動体物についても含めるようにしても良い。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
また、本発明に係るコンピュータプログラムは、車両において実施する運転支援に用いる支援情報を生成するプログラムである。具体的には、コンピュータを、車両周辺の所定の検出範囲における道路状況を取得する道路状況取得手段と、車両が走行する走行予定経路を取得する走行予定経路取得手段と、前記検出範囲外の前記走行予定経路にあって車両の走行を妨げる要因となる障害物の情報を取得する障害物情報取得手段と、区画線に関する情報を含む地図情報と前記障害物の情報とを用いて、前記検出範囲外を含む領域を対象にして前記走行予定経路を走行する際の前記障害物を回避する為に推奨される走行軌道を生成する走行軌道生成手段と、前記走行軌道生成手段によって生成された走行軌道に基づいて車両の運転支援を行う運転支援手段と、して機能させる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
前記構成を有する本発明に係る運転支援装置及びコンピュータプログラムによれば、車両の走行予定経路に車両の走行を妨げる要因となる障害物が存在する場合において、車両が障害物から離れた位置にある段階で障害物を回避する為の推奨される走行軌道を生成することが可能となる。その結果、車両の乗員に負担を生じさせない適切な運転支援を実施することが可能となる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0036
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0036】
一方、ナビゲーションECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)33は、ナビゲーション装置1の全体の制御を行う電子制御ユニットであり、演算装置及び制御装置としてのCPU51、並びにCPU51が各種の演算処理を行うにあたってワーキングメモリとして使用されるとともに、経路が探索されたときの経路データ等が記憶されるRAM52、制御用のプログラムのほか、後述の自動運転支援プログラム(
図5参照)等が記録されたROM53、ROM53から読み出したプログラムを記憶するフラッシュメモリ54等の内部記憶装置を備えている。尚、ナビゲーションECU33は、処理アルゴリズムとしての各種手段を有する。例えば、
道路状況取得手段は、車両周辺の所定の検出範囲における道路状況を取得する。走行予定経路取得手段は、車両が走行する走行予定経路を取得する。障害物情報取得手段は、
検出範囲外の走行予定経路にあって車両の走行を妨げる要因となる障害物の情報を取得する。走行軌道生成手段は、区画線に関する情報を含む地図情報と障害物の情報とを用いて、
検出範囲外を含む領域を対象にして走行予定経路を走行する際の障害物を回避する為に推奨される走行軌道を生成する。運転支援手段は、生成された走行軌道に基づいて車両の運転支援を行う。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0166
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0166】
以上詳細に説明した通り、本実施形態に係るナビゲーション装置1及びナビゲーション装置1で実行されるコンピュータプログラムでは、車両が走行する走行予定経路を取得し(S1)、カメラやセンサによる検出範囲外の走行予定経路にあって車両の走行を妨げる要因となる障害物の情報を取得し(S26)、区画線に関する情報を含む地図情報(16)と障害物の情報とを用いて、走行予定経路を走行する際の障害物を回避する為に推奨される走行軌道を生成し(S29~S32)、生成された走行軌道に基づいて車両の運転支援を行う(S9、S10)ので、車両の走行予定経路に車両の走行を妨げる要因となる障害物が存在する場合において、車両が障害物から離れた位置にある段階で障害物を回避する為の推奨される走行軌道を生成することが可能となる。その結果、車両の乗員に負担を生じさせない適切な運転支援を実施することが可能となる。
また、障害物を回避する為に推奨される走行軌道を生成するに際しては、区画線に関する情報を含む地図情報(16)と障害物の情報とを用いて、車両が障害物の位置する車線を走行するとともに車線内で移動して障害物を回避する第1の回避動作と、車両が障害物の位置する車線から該車線の外へと移動して障害物を回避する第2の回避動作と、を含む障害物を回避する為の複数の回避動作の候補に対して乗員への負荷を示すコストを算出し(S29)、算出されたコストを比較して複数の回避動作の候補の内から障害物を回避する為に推奨される回避動作を選択し(S30)、選択された回避動作に従って走行予定経路に含まれる道路に対して車両に走行が推奨される走行軌道を生成する(S32)ので、車両の走行予定経路に車両の走行を妨げる要因となる障害物が存在する場合において、車両が障害物から離れた位置にある段階で障害物を回避する為の推奨される回避動作を選択し、選択された回避動作に基づく走行軌道を生成することが可能となる。
また、第2の回避動作には、車両が障害物の位置する車線から該車線の外へ車体の一部がはみ出すまで移動して障害物を回避する回避動作と、車両が障害物の位置する車線から隣接する車線へと走行する車線を変更して障害物を回避する回避動作と、を含むので、障害物を回避するために車両が取り得ることが可能な様々な回避動作を候補として、その候補の内から障害物を回避する為の推奨される回避動作を選択することが可能となる。その結果、障害物を回避する為のより適切な回避動作を選択することが可能となる。
また、複数の回避動作の候補毎に、障害物を回避する回避動作を開始してから障害物を回避して元の走行状態に戻るまでに必要な走行時間の長さに応じたコストを加算する(S65、S73、S83)ので、障害物を回避するのに必要な走行時間に基づいて乗員の負担を正確にコストに反映することが可能となる。