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特開2022-156854アミノ基含有ポリエチレングリコール化合物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156854
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】アミノ基含有ポリエチレングリコール化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/322 20060101AFI20221006BHJP
   C07C 213/04 20060101ALN20221006BHJP
   C07C 215/08 20060101ALN20221006BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20221006BHJP
【FI】
C08G65/322
C07C213/04
C07C215/08
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060749
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(74)【代理人】
【識別番号】100165021
【弁理士】
【氏名又は名称】千々松 宏
(72)【発明者】
【氏名】中津原 均
(72)【発明者】
【氏名】田中 睦大
(72)【発明者】
【氏名】太田 雅己
(72)【発明者】
【氏名】間瀬 暢之
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
4J005
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC52
4H006BA23
4H006BA24
4H039CA71
4H039CB30
4J005AA04
4J005BD00
(57)【要約】
【課題】穏和な反応条件の下、ポリエチレングリコール末端のニトリル基を高い反応率かつ優れた生成率で一級アミンへ変換する製造方法を提供すること。
【解決手段】末端にニトリル基を有するポリエチレングリコール化合物を原料として、ルテニウム及びロジウムから選択される少なくとも1種の触媒を使用し、平均直径10nm~50μmの水素ファインバブルと接触させることを特徴とする、アミノ基含有ポリエチレングリコール化合物の製造方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
末端にニトリル基を有するポリエチレングリコール化合物を、ルテニウム及びロジウムから選択される少なくとも1種の触媒の存在下、平均直径10nm~50μmの水素ファインバブルと接触させることを特徴とする、アミノ基含有ポリエチレングリコール化合物の製造方法。
【請求項2】
一級アミンの生成率が70%以上である、請求項1に記載のアミノ基含有ポリエチレングリコール化合物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面修飾や樹脂改質剤、医薬素材等に用いられる、アミノ基含有ポリエチレングリコール化合物の製造方法に関するものである。さらに詳しくは、本発明は、ドラッグデリバリーシステムにおける化学修飾用途として好適に使用される活性化ポリエチレングリコールであり、かつその原料として用いられるアミノ基含有ポリエチレングリコール化合物を得る製造方法である。具体的には、ポリエチレングリコールの末端ニトリル基を金属触媒の存在下で水素ガスと接触させ、高生成率で一級アミノ基を得ることを特徴とする、ポリエチレングリコール末端基の反応に関する。
【背景技術】
【0002】
アミノ基を有するポリエーテルは種々の樹脂の原料や改質剤、添加剤などに幅広く利用される化学品である。特に高純度なものは、ドラッグデリバリーシステムの重要な担体として広く使用されている。このような医薬用途を目的とした活性化ポリエチレングリコールは、これを修飾して製造される薬剤の性能や安全性の観点より、不純物の少ないものが求められてきた。アミノ基を有するポリエチレングリコール化合物はそれ自身が薬物の修飾剤であるとともに、他の活性化ポリエチレングリコール化合物を合成する原料にもなる。一級アミノ基を有するポリエチレングリコール化合物に、二級、三級アミノ基を有するポリエチレングリコール化合物が不純物として含まれていると、これを原料に活性化ポリエチレングリコールを合成した場合、高純度な活性化ポリエチレングリコールは合成できない。そのため薬物と結合した際に修飾率が低下し、期待した効果が得られない可能性がある。不純物である二級、三級アミノ基を有するポリエチレングリコール化合物と一級アミノ基を有するポリエチレングリコール化合物は高分子量体であるため、物理化学的性質が類似しており、一般の技術では分離が困難である。
【0003】
一方、ポリエチレングリコール結合後の薬剤の精製も同様に、その分離が困難であるという技術的問題がある。精製を実施した場合、薬物収率が顕著に低下するため、製造コストが高くなる。よって、不純物であるポリエチレングリコール化合物は、反応工程でできるだけ生成しないことが望ましく、不純物を生成させない反応系は非常に有用である。
このアミノ基含有ポリエチレングリコール化合物の合成法としてはニトリル基の還元が知られている。一般的に従来のニトリル基の水素還元反応における反応温度は水素ガスの基質溶液への溶解性を高める観点から100~200℃の高温が要求される。この温度が100℃より低いと反応が進みにくく、200℃より高いと原料の分解など副反応が生じるため好ましくない(特許文献1)。
【0004】
また、一級アミンを選択的に生成させるためには、アンモニアを添加することが一般的な技術として知られている(特許文献1)。しかしこの従来技術においては、反応条件を達成するための高温高圧反応設備やアンモニアを使用する上での安全管理が必要であり、アンモニアを添加した場合でも二級、三級アミンが不純物として生成する。これらの不純物は目的物である一級アミンと物性が類似しているため、精製後の分離除去が困難である。
ニトリル基の水素還元反応において、一級アミンを選択的に得るためには触媒の選択が重要となる。一般的にはラネーニッケル触媒やラネーコバルト触媒などが用いられるが、いずれも前述のとおりアンモニアをはじめとする強アルカリの共存が必要となる。
【0005】
このような気液反応において、液相へ気体を導入する技術としてファインバブルが知られている。ファインバブルは気泡の大きさが50μm以下の微細な泡であり、液相中では気泡の上昇速度が遅く、自己加圧効果を有する等、通常の気泡とは異なる特性を有する(特許文献2)。
ファインバブルの化学合成への利用例として、芳香族ニトロ化合物の還元(特許文献2)や、液相中のオレフィンの還元(特許文献3)がある。しかしながらいずれも低分子化合物への適用であり、ポリマー中のニトリル基の水素還元反応への利用については知られていない。基質がポリマーである場合、生産効率の観点から反応溶液の基質濃度を増加させることは困難である。また、濃度を増加させた場合、溶液粘度が上昇することにより撹拌効率が低下し、反応効率の向上が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8-165343号公報
【特許文献2】特開2014-5217号公報
【特許文献3】特開2013-23460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、ポリエチレングリコール末端のニトリル基の水素化により一級アミンを選択的に得るためには、副生成物である二級、三級アミンの生成を抑制する必要があり、その為、反応系内にアンモニアを添加し、水素ガスの溶解性を高めるために、高温高圧の条件を必要としていた。そのため、高温高圧条件や強塩基性に耐える製造設備や、安全上の管理が不可欠となる。さらに不純物として生成する二級、三級アミンは目的物である一級アミンと物性が類似しているため、精製後の分離除去が困難である。
そこで、本発明の課題は、末端にニトリル基を有するポリエチレングリコール化合物からアミノ基含有ポリエチレングリコール化合物を製造する際に、常温常圧に近い温和な条件で、末端のニトリル基を高い反応率かつ優れた生成率で一級アミンに変換できる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討した結果、ポリエチレングリコール末端のニトリル基の水素化において、特定の金属触媒の存在下、水素ファインバブルを使用する方法により上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の[1]~[2]に関する。
[1]末端にニトリル基を有するポリエチレングリコール化合物を、ルテニウム含有触媒及びロジウム含有触媒から選択される少なくとも1種の触媒の存在下、平均直径10nm~50μmの水素ファインバブルと接触させることを特徴とする、アミノ基含有ポリエチレングリコール化合物の製造方法。
[2]一級アミン生成率が70%以上である、上記[1]に記載のアミノ基含有ポリエチレングリコール化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明に記載の特定の触媒と水素ファインバブルを使用する反応条件を用いることで、穏和な反応条件の下、ポリエチレングリコール末端のニトリル基を高い反応率かつ優れた生成率で一級アミンへ変換することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において、反応率とは水素還元反応において使用した全ポリエチレングリコール末端のニトリル基に対する、当該反応にて消費されたニトリル基のモル比を指し、一級アミンの生成率とは、全反応生成物における一級アミンのモル比を指す。
本発明において「一級アミンを高生成率で得る」とは、一級アミンの生成率が通常は60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上で得ることを意味する。一級アミンの生成率の上限は100%である。
【0011】
(触媒)
本発明の製造方法において使用する触媒は、ルテニウム及びロジウムから選択される少なくとも1種を挙げることができる。触媒は担体に担持されていることが好ましく、担体としては例えば、炭素、シリカ、アルミナ、酸化チタンが挙げられ、好ましくは炭素である。
触媒の使用量は特に制限されないが、原料であるポリエチレングリコール化合物100質量部に対して、好ましくは5~30質量部であり、より好ましくは15~25質量部である。
【0012】
(末端にニトリル基を有するポリエチレングリコール化合物)
末端にニトリル基を有するポリエチレングリコール化合物のエチレングリコールユニットの合計平均付加モル数は4以上であり、好ましくは40以上であり、そして好ましくは1900以下である。
また、該ポリエチレングリコール化合物の分子量は90000以下であるが、好ましくは80000以下であり、最も好ましくは60000以下であり、そして好ましくは150以上である。
【0013】
本発明の製造方法においては、原料として末端にニトリル基を有するポリエチレングリコール化合物を使用する。該ポリエチレングリコール化合物は、エチレングリコールに由来する構造(-CH-CH-O-)の繰り返し単位を有し、かつ末端にニトリル基を有する化合物であれば特に制限されない。
末端にニトリル基を有するポリエチレングリコール化合物としては、具体的には、直鎖状のポリエチレングリコールの少なくとも1つの末端にニトリル基を有するもの、又は分岐状のポリエチレングリコールの少なくとも1つの末端にニトリル基を有するものが挙げられる。
ここで、分岐状のポリエチレングリコールとしては、ポリオールとエチレンオキシドの反応物が挙げられ、ポリオールとしては、好ましくはグリセリン、ペンタエリスリトール、キシリトールが挙げられる。すなわち、分岐状のポリエチレングリコールとしては、グリセリン骨格のポリエチレングリコール、ペンタエリスリトール骨格のポリエチレングリコール、キシリトール骨格のポリエチレングリコールが好ましい。
【0014】
末端のニトリル基は、ポリエチレングリコールの末端の水酸基に対して導入されており、好ましくは水酸基の酸素原子にスペーサーを介して導入されている。ここでスペーサーとしては、好ましくは炭素数2~6の有機基である。該有機基は、エステル結合、エーテル結合、ウレタン結合、アミド結合などを含んでいてもよい。中でも、スペーサーとしては好ましくは炭素数2~3のアルキレン基である。
【0015】
末端にニトリル基を有するポリエチレングリコール化合物の末端のうち、ニトリル基を有していない末端は、好ましくは水酸基又は水酸基の水素原子が置換基に置換された構造である。ここで置換基としては、炭素数1から7の炭化水素基、または官能基の保護基であることが好ましい。炭素数1から7の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、イソヘプチル基などのアルキル基、フェニル基、ベンジル基などを挙げることができる。好ましくは、炭化水素基としてはメチル基、エチル基、tert-ブチル基、ベンジル基、であり、より好ましくはメチル基である。官能基の保護基は、好ましくはアミノ基、カルボキシル基、水酸基、チオール基、ヒドラジン基、ヒドラジド基、オキシアミン基、の保護基であり、より好ましくは水酸基の保護基である。官能基の保護基としては、例えば、トリチル基、t-ブチルジメチルシリル基、t-ブチルジフェニルシリル基等が挙げられる。
【0016】
末端にニトリル基を有するポリエチレングリコール化合物は、例えば特許文献(特開2004-197077号公報)のように1価または多価の水酸基を有する出発物質よりエチレンオキシドを重合する工程とその後の活性化工程を経て得られるか、または特許文献(特表平9-504299号公報)のように典型的には2本以上の直鎖型ポリエチレングリコールのカップリング反応と活性化工程を経て得られる。活性化工程は、末端にニトリル基を導入する工程であり、例えば、ポリエチレングリコールの末端の水酸基とアクリロニトリルとを反応させる工程が挙げられる。
【0017】
(水素ファインバブル)
本発明では末端にニトリル基を有するポリエチレングリコール化合物と、水素ファインバブルとを接触させて反応を行う。ここで、水素ファインバブルとは、平均直径10nm~50μm、好ましくは平均直径10nm~500nm、最も好ましくは平均直径10nm~100nmの水素ガスの気泡であり、この範囲の平均直径である場合溶媒中で浮上せず、長時間留まることが可能であることから、溶液中の濃度を向上させ、原料であるポリエチレングリコールとの接触確率を上昇させることが可能である。水素ファインバブルの平均直径は、ファインバブルのミクロブラウン運動の光散乱を観察するNanoSight LM-10(NanoSight社製)などにより測定することができる。
【0018】
本発明で用いる水素ファインバブルは、一般的に市販されているファインバブル発生装置等により発生させることが可能である。ファインバブル発生装置は発生原理により、旋回液流式、スタティックミキサー式、エジェクター式、ベンチュリー式、加圧溶解式の5種類に大別される。本発明ではせん断力を発生原理としたスタティックミキサー式、または加圧溶解式の原理を用いてファインバブルを発生させることが好ましい。
スタティックミキサー式では、エレメント積層型(Mixer with Stacked Elements: MSE)撹拌翼を用い、反応溶液中で撹拌を行うことにより、別途導入された水素ガスをせん断し、微細なファインバブルを調製する。MSE撹拌翼は多孔板状の混合エレメントを積層させ、かご状にしたものに撹拌軸を取り付け、撹拌翼としたものであり、混合エレメント内への吸引と吐出により効率的なせん断を行うことが可能である。また、装置自体の構造がシンプルであることから、製作が容易であり、目的に合った材質を選択可能で、低コストでの利用が可能である。
加圧溶解式では、ポンプを用いて反応溶液中に水素ガスを加圧溶解し、背圧バルブを通して圧力を開放することにより過飽和となった水素ガスが溶液中でファインバブルを形成する。本手法においても設備構造がシンプルであり、従来設備への後付けが容易であるという利点がある。
【0019】
(反応条件)
本発明のアミノ基含有ポリエチレングリコール化合物の製造方法においては、溶媒を使用することが好ましい。溶媒としては、例えば、水、メタノール、テトラヒドロフラン、トルエンなどを使用することができ、中でも水、又はメタノールが好ましい。また、2級アミン及び3級アミンの生成を抑制する観点から、アンモニアを含有させた溶媒を使用することが好ましい。
本発明は高温高圧の条件下でなくても二級、三級アミンの副生を抑えることが可能であることから、反応温度として好ましくは10~70℃であり、より好ましくは20~60℃である。また、反応圧力は好ましくは1~6atmであり、より好ましくは1~2atmである。
反応時間は特に制限されず、ファインバブルの発生装置の種類、反応温度、触媒の量にも依存するが、好ましくは0.5~12時間であり、より好ましくは1~8時間である。
【0020】
以上のようにして、原料であるポリエチレングリコール化合物の末端のニトリル基を水素化して一級アミンとすることができ、アミノ基含有ポリエチレングリコール化合物が製造される。
アミノ基含有ポリエチレングリコール化合物は、少なくとも1つの末端にアミノ基を有する。アミノ基含有ポリエチレングリコール化合物の末端のうちアミノ基を有していない末端は、原料として用いるポリエチレングリコール化合物のニトリル基を有していない末端として説明した事項と同様である。
本発明のアミノ基含有ポリエチレングリコール化合物の製造方法によって、穏和な反応条件の下、ポリエチレングリコール末端のニトリル基を高い反応率かつ優れた生成率で一級アミンへ変換することができる。
【実施例0021】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は実施例の態様に限定されるものではない。
【0022】
(生成物の評価方法)
各実施例及び比較例で行った反応後は重クロロホルム中での1H-NMR測定により、ポリエチレングリコール末端ニトリル基α位プロトンピーク(δ2.628)からニトリル基の残存率を算出して反応率を求めた。二級アミンのβ位プロトンピーク(δ1.755)から二級アミン生成率、一級アミンのα位、β位プロトンピーク(δ2.791, 1.725)から一級アミン生成率を算出した。
【0023】
[実施例1]
(加圧溶解式により発生させた水素ファインバブルを利用した製造方法)
末端にニトリル基を有するポリエチレングリコール化合物であるα-シアノエチル-ω-メトキシポリエチレングリコール(MeO-PEG-CN、分子量2000、0.5g)およびアンモニア含有メタノール(10g)をガラスフラスコに導入して混合し、5%溶液とした。この溶液をポンプにて送液し、チューブ内で水素を気-液混合後、背圧バルブを通して圧力を開放して、溶液内で水素ファインバブル(平均直径52nm)を形成させた。そして、該溶液を25℃にてロジウム/炭素触媒(0.1 g)を充填したラジアルフローカラムへ注入し、1時間の反応後に目的物を得た。得られた目的物は1H-NMRにより分析した。分析の結果、MeO-PEG-CNの反応率は100%、一級アミン生成率は88%、二級アミン生成率は4%であった。
【0024】
[実施例2]
(加圧溶解式により発生させた水素ファインバブルを利用した製造方法)
試験管内にてMeO-PEG-CN(分子量2000、0.5g)およびアンモニア含有メタノール(10g)を混合し、5%溶液とした。この溶液をポンプにて送液し、チューブ内で水素を気-液混合後、背圧バルブを通して圧力を開放して、溶液内で水素ファインバブル(平均直径52nm)を形成させた。そして、該溶液を60℃にてロジウム/炭素触媒(0.1 g)を充填したラジアルフローカラムへ注入し、1時間の反応後に目的物を得た。得られた目的物は1H-NMRにより分析した。分析の結果、MeO-PEG-CNの反応率は92%、一級アミン生成率は79%、二級アミン生成率は6%であった。
【0025】
[比較例1]
試験管内にてMeO-PEG-CN(分子量2000、0.5g)およびメタノール(4.5g)を混合し、10%溶液とした。この試験管に5wt% ルテニウム/炭素(50mg)を仕込み、スターラーチップにて撹拌しながら60℃にて水素をバブリングすることにより4時間の反応後に目的物を得た。得られた目的物は1H-NMRにより分析した。分析の結果、MeO-PEG-CNの反応率は15%、一級アミン生成率は0%、二級アミン生成率は0%であった。
【0026】
[比較例2]
試験管内にてMeO-PEG-CN(分子量2000、0.5g)およびメタノール(4.5g)を混合し、10%溶液とした。この試験管に5wt% ロジウム/炭素(50mg)を仕込み、スターラーチップにて撹拌しながら60℃にて水素をバブリングすることにより4時間の反応後に目的物を得た。得られた目的物は1H-NMRにより分析した。分析の結果、MeO-PEG-CNの反応率は99%、一級アミン生成率は31%、二級アミン生成率は25%であった。
【0027】
[比較例3]
試験管内にてMeO-PEG-CN(分子量2000、0.5g)および水(4.5g)を混合し、10%溶液とした。この試験管に5wt% ロジウム/炭素(50mg)を仕込み、スターラーチップにて撹拌しながら60℃にて水素をバブリングすることにより4時間の反応後に目的物を得た。得られた目的物は1H-NMRにより分析した。反応後に得られた目的物は1H-NMRにより分析した。分析の結果、MeO-PEG-CNの反応率は53%、一級アミン生成率は22%、二級アミン生成率は6%であった。
【0028】
ファインバブルを発生させて反応を行った実施例1、実施例2ではMeO-PEG-CNの反応率は92~100%、一級アミン生成率は79~88%、二級アミン生成率4~6%であったが、ファインバブルを発生していない比較例1、比較例2、比較例3では、実施例と同じ反応1時間時点では反応率、一級アミン生成率ともに低く、4時間の反応を行った。その結果、MeO-PEG-CNの反応率は15~99%、一級アミン生成率は0~31%、二級アミン生成率0~25%であった。この結果から、発生させたファインバブルによりMeO-PEG-CNの反応効率と、一級アミン生成率が向上し、二級アミン生成率を抑制できることが明らかになった。そこで別の原理によりファインバブルを発生させるMSE撹拌翼を用いて反応を行った。
【0029】
[実施例3]
(スタティックミキサー式により発生させた水素ファインバブルを利用した製造方法)
ガラスフラスコにMeO-PEG-CN(分子量2000、30g)、水(270g)を仕込み溶解させた。この溶液に5wt% ルテニウム/炭素(150mg)を仕込み、700rpmの撹拌速度にてMSE撹拌翼による撹拌を開始後、水素バブリングを行い、系内に水素ファインバブル(平均直径45nm)を発生させた(反応圧1atm)。60℃、8時間の反応後、触媒をろ過により分離し、得られたろ液からクロロホルムにて目的物を抽出した。クロロホルムを留去させ、得られた目的物は1H-NMRにより分析した。分析の結果、MeO-PEG-CNの反応率は98%、一級アミン生成率は78%、二級アミン生成率は0%であった。この結果から、MSE撹拌翼を用いた反応系においても、一級アミン生成率が向上し、二級アミン生成率を抑制できることが明らかになった。
【0030】
【表1】
【0031】
従来、ポリエチレングリコール末端のニトリル基の水素化による一級アミンへの還元反応は、二級、三級アミンの副生を抑えるため、反応系内にアンモニアを添加し、水素ガスの溶解性を高めるために、高温高圧の条件を必要としていた。そのため、高温高圧条件や強塩基性に耐える製造設備や、安全上の管理が不可欠となっていた。本発明によれば、常温常圧に近い温和な反応条件で当該反応を行うことができ、反応率及び一級アミン生成率が向上することから、設備面や保安面での負担を軽減することが可能である。