(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156857
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】インクジェット装置検査用メディア
(51)【国際特許分類】
B41M 5/52 20060101AFI20221006BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20221006BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B41M5/52 110
B32B27/20 Z
B32B27/30 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060754
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】伊東 隆雅
【テーマコード(参考)】
2H186
4F100
【Fターム(参考)】
2H186AA15
2H186BA11
2H186BB14X
2H186BB19X
2H186BB32X
2H186BB52X
2H186BC05X
2H186BC26X
2H186BC34X
2H186BC52X
2H186BC77X
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2H186BC79X
2H186DA09
4F100AA20B
4F100AK21B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100EH46B
4F100JN01A
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】水性揮発性溶媒を主成分とし、色材などの成分を実質的に含有しないテスト用インクを用いた場合においても、ドットの視認性、ドット形状の再現性に優れたインクジェット装置検査用メディアを提供する。
【解決手段】透明支持体上に、平均二次粒子径が500nm以下の気相法シリカ、ポリビニルアルコール、およびグリコール系溶剤またはグリコールエステル系溶剤から選ばれる少なくとも1つの溶剤を含有するインク受容層を有し、該溶剤の含有量が前記した気相法シリカの固形分に対して2~10質量%である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明支持体上に、平均二次粒子径が500nm以下の気相法シリカ、ポリビニルアルコール、およびグリコール系溶剤またはグリコールエステル系溶剤から選ばれる少なくとも1つの溶剤を含有するインク受容層を有し、該溶剤の含有量が前記した気相法シリカの固形分に対して2~10質量%であるインクジェット装置検査用メディア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット装置検査用メディアに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェットヘッドを有する製造装置を用い、液晶や有機EL等のディスプレイパネル、グルコースセンサーなどの各種センサー、ウェアラブルデバイス、レンズや導光板等の光学部品といった各種デバイスの製造が検討されている。例えば、特開2003-191462号公報においては、インクジェットヘッドを有する描画装置を用いたカラーフィルタや有機ELの製造方法、スペーサ形成方法、金属配線形成方法、レンズ形成方法、レジスト形成方法および光拡散体形成方法等が開示されている。
【0003】
このような各種デバイスを製造する描画装置に用いられるインクは、色材を含有するカラーインクのみならず、UV硬化インク、半導体インク、金属インク、絶縁体インク、誘電体インク、導電性高分子インク、樹脂インク、液晶インク等、様々な機能性物質を含有する機能性インクが使用される。また各種デバイスを製造するために用いられる描画装置においては、特定の機能を有する一種類のインクのみを吐出することが多く、別種類のインクと交換することは、コンタミネーションによる品質低下等の問題が発生するため、通常行われることはない。
【0004】
一般的にインクジェットヘッドは製造後にノズルからの吐出検査を行い、欠陥が無いことを確認した後に、描画装置メーカーへと納入される。インクジェットヘッドの吐出検査は、インクジェット装置検査用メディアに対し、個々のノズルに対応したドットあるいはドットの集合体からなるラインなどのパターンを印刷することにより行われる。ノズルに吐出不良がある場合には前記したパターンなどに欠落が生じるため、この状態をデジタルカメラ等を利用してデータ化し、機械的に検査する。例えば特開2014-94534号公報(特許文献1)には、機能液を浸透させる浸透層と、該浸透層の一方の面に形成された反射層を有する検査用記録媒体に対して、吐出された機能液のドット形状を撮像する方法が開示されている。しかしながら、このような検査方法では、各種デバイスを製造するために用いられるインクとは異なる機能液で検査することとなり、実際に各種デバイスを製造する際に、コンタミネーションによる性能低下等が発生してしまうという問題があった。
【0005】
上記したコンタミネーションが生じても問題が生じないインクとして、各種デバイスの製造に用いるカラーインクや機能性インクが含有する揮発性溶媒を主成分とし、色材などの成分を実質的に含有しないテスト用インクが例示される。
【0006】
しかしながら、上記した揮発性溶媒を主成分とし、色材などの成分を実質的に含有しないテスト用インクを用いた場合、従来のインクジェット装置検査用メディアでは、吐出検査が困難であるという問題があった。
【0007】
例えば、特開2006-88466号公報(特許文献2)には、無色あるいは淡色インクの付着部と非付着部の濃度差が0.02以上で、かつ、L*a*b*表色系におけるΔEが10.0以下である液体確認用フィルムを用いる方法が開示されており、該液体確認用フィルムとしては、フィルムの表面をサンドペーパーで粗くしたものが記載されている。また前述した特許文献1には、インクの浸透層と、該浸透層の一方の面に、光を反射させる反射層を有する検査用記録媒体が開示されており、該浸透層はシリカやアルミナ等を含有する透明な空隙層であり、反射層はアルミニウムや銀等を蒸着することで浸透層上に形成される。また特開2014-131846号公報(特許文献3)には、インクを吸収することにより膨潤し、厚さ方向に隆起するインク受容層を備えた検査用メディアが開示されている。しかしながら、特許文献1に記載される検査用記録媒体では、水性揮発性溶媒を主成分とするテスト用インクを使用した場合、十分なインク着弾部の視認性が得られない場合があった。同じく特許文献3の検査用メディアにおいても、水性揮発性溶媒を主成分とするテスト用インクを使用した場合、十分なインク液滴の視認性とドット形状の再現性が得られない場合があった。また、特許文献2に記載される液体確認用フィルムでは、水性揮発性溶媒を主成分とするテスト用インクを用いた場合でもインク付着部の視認性は得られるものの、ドット形状の再現性については更なる改善が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2014-94534号公報
【特許文献2】特開2006-88466号公報
【特許文献3】特開2014-131846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、水性揮発性溶媒を主成分とし、色材などの成分を実質的に含有しないテスト用インクを用いた場合においても、ドットの視認性、ドット形状の再現性に優れたインクジェット装置検査用メディアを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、以下の発明によって基本的に達成された。
透明支持体上に、平均二次粒子径が500nm以下の気相法シリカ、ポリビニルアルコール、およびグリコール系溶剤またはグリコールエステル系溶剤から選ばれる少なくとも1つの溶剤を含有するインク受容層を有し、該溶剤の含有量が前記した気相法シリカの固形分に対して2~10質量%であるインクジェット装置検査用メディア。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、水性揮発性溶媒を主成分とし、色材などの成分を実質的に含有しないテスト用インクを用いた場合においても、ドットの視認性、ドット形状の再現性に優れたインクジェット装置検査用メディアを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明のインクジェット装置検査用メディアを用いた、インクジェットヘッドの吐出検査方法としては、該インクジェット装置検査用メディアが有するインク受容層上に、水性揮発性溶媒を主成分とし、色材などの成分を実質的に含有しないテスト用インクを印字し、印字部分の痕跡を画像データとし、この痕跡を画像処理ソフトウエアにより検出する方法が例示される。
【0014】
本発明のインクジェット装置検査用メディアが有するインク受容層は、インクジェットヘッドから吐出された水性揮発性溶媒を主成分とし、色材などの成分を実質的に含有しないテスト用インクを速やかに吸収することができる。そして該インクが揮発すると、該インクを吸収した部分のインク受容層はヘイズが上昇する現象が発現する。本発明のインクジェット装置検査用メディアによれば、この痕跡が明確に視認でき、またドットの再現性にも優れる。
【0015】
上記した現象について、更に詳細に説明する。本発明のインクジェット装置検査用メディアが有するインク受容層は、グリコール系溶剤またはグリコールエステル系溶剤から選ばれる少なくとも1つの溶剤を含有する。グリコール系溶剤またはグリコールエステル系溶剤はインク受容層のヘイズを変化させる効果を有している。
【0016】
本発明のインクジェット装置検査用メディアに対し、インクジェットヘッドからテスト用インクの液滴が吐出され、ドットが形成されると、該インク液滴はインク受容層内部へ吸収され、インク中の水性揮発性溶媒がインク受容層に含まれるグリコール系溶剤またはグリコールエステル系溶剤と相溶する。その際、相溶したグリコール系溶剤またはグリコールエステル系溶剤がインク受容層の透明支持体近傍へ移動することによって、インク液滴が着弾した部分のヘイズが上昇する現象が生じる。ドットが形成された部分のヘイズの上昇は、インクの水性揮発性溶媒が揮発し乾燥した後も維持されるため、ドットが形成された部分と周囲とのヘイズの差によって良好な視認性にてドットを確認することが可能となる。また、インク吸収性等にも悪影響を及ぼさないため、ドット形状は真円となり、ドット形状の再現性にも優れる。
【0017】
本発明において、テスト用インクが含有する水性揮発性溶媒としては、水および水に混和あるいは溶解可能な公知の有機溶媒を例示することができる。かかる有機溶媒としてはアルコール系、グリコール系、エーテル系、カルボン酸系、ケトン系、ニトリル系、アミド系等の各種有機溶媒が例示される。アルコール系有機溶媒としてはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、t-ブチルアルコールなどを、グリコール系有機溶媒としてはエチレングリコール、プロピレングリコールなどを、エーテル系有機溶媒としてはエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどを、カルボン酸系有機溶媒としては酢酸を、ケトン系有機溶媒としてはアセトンを、ニトリル系有機溶媒としてはアセトニトリルを、アミド系有機溶媒としてはジメチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミドなどを例示することができる。これら水に混和あるいは溶解可能な有機溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、テスト用インクが含有する水性揮発性溶媒中の水が占める割合は30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましい。
【0018】
本発明においてテスト用インクは、上記した水性揮発性溶媒を主成分として含有することが好ましい。ここで主成分とは、テスト用インクの全質量に対し、上記した水性揮発性溶媒の占める割合が95質量%以上であることを意味し、好ましくは99質量%以上であり、より好ましくは99.5質量%以上である。水性揮発性溶媒以外に含まれる化合物としては、界面活性剤、ポリマーやベントナイト等のレオロジーコントロール剤(増粘剤)が例示され、色材などは実質的に含有しないテスト用インクが好適である。ここで実質的にとは、色材に代表される着色成分の含有量が0.1質量%未満であることを意味し、より好ましくは0.01質量%未満である。
【0019】
本発明のインクジェット装置検査用メディアが有する透明支持体としては、全光線透過率が85%以上、ヘイズ値は30%以下である透明支持体が好適であり、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリメチルメタクリレートに代表されるアクリル樹脂、トリアセチルセルロース、セロファン、ナイロン、ポリスチレン系樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリイミド、ポリフェニレンスルファイド等の各種樹脂フィルムを挙げることができる。これらの中でもコスト、汎用性の観点からトリアセチルセルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネートから選ばれる樹脂フィルムが好ましい。
【0020】
インク受容層の透明支持体に対する接着性を改善するため、透明支持体はゼラチンや各種ウレタン樹脂、ポリビニルアルコール等を含有する公知の下塗層を有していてもよく、予め接着性を改善するための層が設けられた易接着処理品(例えば易接着処理がなされたポリエチレンテレフタレートフィルム)を用いることも可能である。また透明支持体をコロナ処理あるいはプラズマ処理により濡れ性を改善することも好ましい。
【0021】
上記した下塗層の固形分量としては、0.5g/m2以下であることが好ましく、より好ましくは0.3g/m2以下、更に好ましくは0.1g/m2以下である。下限は0.01g/m2以上であることが望ましい。
【0022】
本発明のインクジェット装置検査用メディアが有するインク受容層は、平均二次粒子径が500nm以下の気相法シリカを含有する。これにより、インク吸収性と透明性に優れたインク受容層が得られる。
【0023】
気相法シリカがインク受容層の全固形分中に占める割合は50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上である。これにより、テスト用インクが含有する水性揮発性溶媒をより効率的に吸収することができる。
【0024】
インク受容層が含有する気相法シリカは、一般的には火炎加水分解法によって作られる。具体的には四塩化ケイ素を水素及び酸素と共に燃焼して作る方法が一般的に知られているが、四塩化ケイ素の代わりにメチルトリクロロシランやトリクロロシラン等のシラン類も、単独または四塩化ケイ素と混合した状態で使用することができる。気相法シリカは日本アエロジル(株)からアエロジル(登録商標)、(株)トクヤマからレオロシール(登録商標)として市販されている。
【0025】
インク受容層が含有する気相法シリカの平均一次粒子径は40nm以下が好ましく、15nm以下がより好ましい。更に好ましくは平均一次粒子径が3~15nmでかつBET法による比表面積が200m2/g以上(好ましくは250~500m2/g)のものを用いることである。
【0026】
本発明でいう平均一次粒子径とは、微粒子の電子顕微鏡観察により一定面積内に存在する100個の一次粒子各々の投影面積に等しい円の直径を粒子径として平均粒子径を求めたものである。また平均二次粒子径とは、透過型電子顕微鏡による写真撮影で求めることができるが、簡易的にはレーザー散乱方式の粒度分布計(例えば、(株)堀場製作所製、LA910)や動的光散乱方式の粒度分布計(例えば、大塚電子(株)製、PAR-III)を用いて、個数メジアン径として測定することができる。
【0027】
本発明でいうBET法とは、気相吸着法による粉体の表面積測定法の一つであり、吸着等温線から1gの試料の持つ総表面積、即ち比表面積を求める方法である。通常吸着気体としては、窒素ガスが多く用いられ吸着量を被吸着気体の圧、または容積の変化から測定する方法が最も多く用いられている。多分子吸着の等温線を表すのに最も著名なものは、Brunauer、Emmett、Tellerの式であってBET式と呼ばれ表面積決定に広く用いられている。BET式に基づいて吸着量を求め、吸着分子1個が表面で占める面積を掛けて表面積が得られる。
【0028】
気相法シリカの平均二次粒子径は500nm以下であり、より好ましくは10~300nmである。気相法シリカは水性媒体中に分散された気相法シリカ微粒子分散液の形で使用される。具体的には、プロペラ羽根型撹拌機、のこぎり歯状ブレード型撹拌機、ホモミキサー型撹拌機等で気相法シリカと水性媒体を予備混合した後、ボールミル、ビーズミル、サンドグラインダー等のメディアミル、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー等の圧力式分散機、超音波分散機、及び薄膜旋回型分散機等を使用して分散し、気相法シリカ微粒子分散液とすることが好ましい。
【0029】
本発明において、上記した平均二次粒子径500nm以下の気相法シリカ微粒子分散液の製造にあたり、分散液の高濃度化や分散安定性を向上させるため、公知の種々の方法を用いてもよい。例えば、特開2002-144701号公報、特開2005-1117号公報に記載されているアルカリ性化合物、またはカチオン性化合物、あるいはシランカップリング剤を用いることができるが、カチオン性化合物を用いることがより好ましい。
【0030】
上記したカチオン性化合物としては、ポリエチレンイミン、ポリジアリルアミン、ジアリルアミン誘導体由来の構造単位を有する重合物、ポリアリルアミン、アルキルアミン重合物、1~3級アミノ基や4級アンモニウム塩基を有するポリマーが好ましく用いられる。特にジアリルアミン誘導体由来の構造単位を有する重合物が好ましく用いられる。湿式法シリカあるいは気相法シリカの分散性および分散液粘度の面で、これらのカチオン性化合物の分子量は、2,000~10万程度が好ましく、特に2,000~3万程度が好ましい。
【0031】
本発明のインクジェット装置検査用メディアが有するインク受容層は、ポリビニルアルコールを含有する。
【0032】
本発明において、インク受容層が含有するポリビニルアルコールとしては、一般的なポリビニルアルコールに加え、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール及びその他ポリビニルアルコールの誘導体も含まれる。ポリビニルアルコールは1種単独でもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
これらのうち、好ましいのは、ケン化度が80%以上の部分ケン化または完全ケン化したポリビニルアルコールあるいはシラノール変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコールである。これらポリビニルアルコールの平均重合度は200~5000であることが好ましい。なお前記したポリビニルのケン化度と平均重合度は、JIS K6726-1994に準拠した値である。
【0034】
インク受容層におけるポリビニルアルコールの含有量は特に限定されないが、気相法シリカの固形分に対して3~80質量%であることが好ましく、より好ましくは5~50質量%の範囲である。これによりテスト用インクの吸収性およびドット形状の再現性に優れたインク受容層を形成することができる。
【0035】
本発明において、インク受容層はポリビニルアルコールの架橋剤を含有することが好ましい。具体的な例としては、グリオキシル酸ナトリウム、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、グリオキザール、グルタルアルデヒドの如きアルデヒド系化合物、ジアセチル、クロルペンタンジオンの如きケトン化合物、ビス(2-クロロエチル)尿素、2-ヒドロキシ-4,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジン、塩化ジルコニウム、臭化ジルコニウム、チタンアセチルアセテートの如き多価金属化合物、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミンの如きアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、1,3-ビス(ヒドラジノカルボノエチル)-5-イソプロピルヒダントインの如きヒドラジン化合物、米国特許第3,288,775号記載の如き反応性のハロゲンを有する化合物、米国特許第3,635,718号記載の如き反応性のオレフィンを持つ化合物、米国特許第2,732,316号記載の如きN-メチロール化合物、米国特許第3,103,437号記載の如きイソシアナート類、米国特許第3,017,280号、同2,983,611号記載の如きアジリジン化合物類、米国特許第3,100,704号記載の如きカルボジイミド系化合物類、米国特許第3,091,537号記載の如きエポキシ化合物、ジヒドロキシジオキサンの如きジオキサン誘導体、ホウ砂、ホウ酸、ホウ酸塩類の如き無機架橋剤等があり、これらを1種または2種以上組み合わせて用いることができる。架橋剤の含有量は特に限定されないが、ポリビニルアルコールに対して、50質量%以下が好ましく、より好ましくは40質量%以下であり、特に好ましくは30質量%以下である。下限は0.1質量%以上であることが好ましい。
【0036】
本発明のインクジェット装置検査用メディアが有するインク受容層は、グリコール系溶剤またはグリコールエステル系溶剤から選ばれる少なくとも1つの溶剤を含有する。
【0037】
グリコール系溶剤としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール等が例示され、グリコールエステル系溶剤としては、例えばエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等が例示され、何れも市販品を入手して用いることができる。
【0038】
インク受容層中におけるグリコール系溶剤またはグリコールエステル系溶剤の含有量は、気相法シリカの固形分に対して2~10質量%である。この範囲より少ないとドット形状の再現性が低下し、この範囲より多いとドットの視認性が低下するため、インク受容層が前記した範囲でグリコール系溶剤またはグリコールエステル系溶剤を含有することが必要である。
【0039】
インク受容層はその他、必要に応じ、防腐剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、分散剤、消泡剤、レベリング剤、粘度安定剤、pH調節剤など公知の添加剤を含有することができる。
【0040】
インク受容層の固形分量は15~40g/m2が好ましく、20~30g/m2がより好ましい。
【0041】
透明支持体上にインク受容層を形成する塗布方式としては、スライドカーテン方式、スライドビード方式、スロットダイ方式、ダイレクトグラビアロール方式、リバースグラビアロール方式、スプレー方式、エアナイフ方式、ブレードコーティング方式、ロッドバーコーティング方式、スピンコート方式等の各種塗布方式が例示される。
【0042】
本発明のインクジェット装置検査用メディアのインク受容層を有する面とは反対側の透明支持体上には、例えば埃やごみの付着を防止するために帯電防止層を設けたり、カール矯正のためにバックコート層を設けたり、種々目的に応じて公知の層を設けることもできる。
【実施例0043】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限られるものではない。
【0044】
(実施例1)
<気相法シリカ分散液の作製>
水にジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー(分子量9000)4質量部と気相法シリカ(平均一次粒径7nm、BET法による比表面積300m2/g)100質量部を添加し予備分散液を作製した後、高圧ホモジナイザーにて30MPaの条件下で2回通過処理して、固形分濃度20質量%の気相法シリカ分散液を作製した。該気相法シリカの平均二次粒子径は135nmであった。
【0045】
<インク受容層塗布液>
気相法シリカ分散液 (気相法シリカの固形分として)100質量部
ホウ酸 4質量部
ポリビニルアルコール(ケン化度88%、平均重合度3500) 23質量部
プロピレングリコール 2質量部
塗布液の固形分濃度は水で12.5質量%に調整した。
【0046】
透明支持体として、易接着処理がなされた厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱ケミカル(株)製、全光線透過率89%、ヘイズ値6%)に、上記インク受容層塗布液を、固形分量として22.0g/m2になるようにスライドビード塗布装置にて塗布し乾燥してインク受容層を形成した。
【0047】
(実施例2)
実施例1において、インク受容層塗布液のプロピレングリコールの添加量を5質量部にした以外は実施例1と同様にして、実施例2のインクジェット装置検査用メディアを得た。
【0048】
(実施例3)
実施例1において、インク受容層塗布液のプロピレングリコールの添加量を10質量部にした以外は実施例1と同様にして、実施例3のインクジェット装置検査用メディアを得た。
【0049】
(実施例4)
実施例1において、インク受容層塗布液のプロピレングリコールをジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートにした以外は実施例1と同様にして、実施例4のインクジェット装置検査用メディアを得た。
【0050】
(実施例5)
実施例2において、インク受容層塗布液のプロピレングリコールをジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートにした以外は実施例2と同様にして、実施例5のインクジェット装置検査用メディアを得た。
【0051】
(実施例6)
実施例3において、インク受容層塗布液のプロピレングリコールをジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートにした以外は実施例3と同様にして、実施例6のインクジェット装置検査用メディアを得た。
【0052】
(実施例7)
実施例2において、インク受容層塗布液のプロピレングリコールをトリエチレングリコールにした以外は実施例2と同様にして、実施例7のインクジェット装置検査用メディアを得た。
【0053】
(実施例8)
実施例2において、インク受容層塗布液のプロピレングリコールをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートにした以外は実施例2と同様にして、実施例8のインクジェット装置検査用メディアを得た。
【0054】
(実施例9)
実施例2において、インク受容層塗布液のプロピレングリコールをプロピレングリコール2.5質量部とトリエチレングリコール2.5質量部の併用にした以外は実施例2と同様にして、実施例9のインクジェット装置検査用メディアを得た。
【0055】
(比較例1)
実施例1において、インク受容層塗布液のプロピレングリコールを添加しない以外は実施例1と同様にして、比較例1のインクジェット装置検査用メディアを得た。
【0056】
(比較例2)
実施例1において、インク受容層塗布液のプロピレングリコールの添加量を12質量部にした以外は実施例1と同様にして、比較例2のインクジェット装置検査用メディアを得た。
【0057】
(比較例3)
実施例4において、インク受容層塗布液のジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートの添加量を12質量部にした以外は実施例4と同様にして、比較例3のインクジェット装置検査用メディアを得た。
【0058】
<インクジェット印刷>
上記した実施例1~9および比較例1~3のインクジェット装置検査用メディアをA4サイズにそれぞれ裁断し、テスト用インクとして水80gにエチレングリコール20g(富士フイルム和光純薬(株)製、試薬特級)と界面活性剤(泰光油脂化学工業(株)製タイポールNLES-227)0.15gを添加したインクを作製し、ピエゾタイプのインクジェットプリンタにて約10pLの液滴を12個吐出しドットを印刷した後、室温にて48時間放置し乾燥させた。
【0059】
<ドットの視認性評価>
インクジェット装置検査用メディアに印刷されたドットをデジタルマイクロスコープ((株)キーエンス製VHX-5000)を用い、倍率500倍、透過照明で撮影し、画像データを得た。次いで該画像データを画像処理ソフトウエア((株)ファースト製WIL-Builder)を用い、以下の基準にてドットの視認性を評価した。結果を表1に示す。
<ドットの視認性評価基準>
○:印刷されたドットを視認することができた。
×:印刷されたドットを視認することができなかった。
【0060】
<ドットの再現性評価>
上記した視認性の評価で得られた実施例1~9および比較例1~3の画像データから、印刷されたドット径の最大値と最小値をDmaxとDminとして求め、更に以下の式によりそれぞれのドットの真円度を求めた。
真円度=(Dmax-Dmin)/2
各検査用メディアの真円度の平均値から、以下の基準に従ってドットの再現性を評価した。結果を表1に示す。
<ドットの再現性評価基準>
○:印刷された12個のドットの真円度の平均が2.5μm未満。
△:印刷された12個のドットの真円度の平均が2.5μm以上、7.5μm未満。
×:印刷された12個のドットの真円度の平均が7.5μm以上。
【0061】
【0062】
表1の結果より、本発明の効果が分かる。