(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156878
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】積層フィルム及び包装体
(51)【国際特許分類】
B32B 27/28 20060101AFI20221006BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20221006BHJP
B65D 65/40 20060101ALN20221006BHJP
【FI】
B32B27/28 101
B32B27/32 C
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060792
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100194250
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 直志
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 研太
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AA01
3E086AB01
3E086AD01
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4F100AA20A
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4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】深絞り包装体を構成可能であり、成形性と耐ピンホール性に優れ、巻きずれを抑制できる樹脂フィルムと、前記樹脂フィルムを用いた包装体と、の提供。
【解決手段】内層11と、柔軟層12と、耐ピンホール層13と、外層14と、がこの順に積層されて構成されており、内層11が直鎖状低密度ポリエチレンを含み、柔軟層12がエチレン-酢酸ビニル共重合体を含み、耐ピンホール層13がナイロンを含み、耐ピンホール層13の厚さT
13が、30~110μmであり、ISO25178に準拠して測定された、内層11の外層14側とは反対側の面11bの算術平均高さ(Sa)が、0.03~0.7μmであり、ISO25178に準拠して測定された、外層14の内層11側とは反対側の面14aの算術平均高さ(Sa)が、0.05~1.4μmである、積層フィルム1。積層フィルム1を備えた包装体。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内層と、柔軟層と、耐ピンホール層と、外層と、がこの順に積層されて構成されており、
前記内層が、直鎖状低密度ポリエチレンを含み、
前記柔軟層が、エチレン-酢酸ビニル共重合体を含み、
前記耐ピンホール層が、ナイロンを含み、
前記耐ピンホール層の厚さが、30~110μmであり、
ISO25178に準拠して測定された、前記内層の前記外層側とは反対側の面の算術平均高さ(Sa)が、0.03~0.7μmであり、
ISO25178に準拠して測定された、前記外層の前記内層側とは反対側の面の算術平均高さ(Sa)が、0.05~1.4μmである、積層フィルム。
【請求項2】
前記内層が、さらにアンチブロッキング剤を含む、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
大きさが100mm×100mmの前記積層フィルムの第1試験片を用い、前記第1試験片の前記外層側の最も外側の表面を上向きで水平にして前記第1試験片を固定し、25℃の温度条件下で、前記第1試験片の前記表面に対して、直径10mmの球状の錘を2.7m/sの速度で衝突させ、前記錘が前記第1試験片を貫通するのに必要な貫通エネルギーを測定したとき、前記貫通エネルギーが0.6J以上となる、請求項1又は2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
前記積層フィルムから、1号ダンベル形の第2試験片を作製し、25℃の温度条件下で、JIS Z1702に準拠して、前記第2試験片の幅が10mm、長さが40mm以上の部位を、引張速度500mm/minで引っ張り、前記第2試験片が破断するまでに測定された引張荷重の最大値を引張破断強度としたとき、前記引張破断強度が75N以上となる、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項5】
前記積層フィルムから、1号ダンベル形の第3試験片を作製し、25℃の温度条件下で、JIS K7127に準拠して、前記第3試験片の幅が10mm、長さが40mm以上の部位を、引張速度2mm/minで引っ張ったとき、前記第3試験片における引張応力及びひずみ量の測定値から算出される、前記第3試験片のヤング率が、300MPa以上となる、請求項1~4のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の積層フィルムを備えた、包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルム及び包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂フィルムで目的物を包装した包装体を、水圧を利用してプレスする技術(本明細書においては、「水圧プレス技術」と称することがある)が知られている。
この水圧プレス技術では、包装体に対して均一に圧力を加える(プレスする)こと、高圧プレスによって包装体を殺菌すること、が可能である。
【0003】
均一に圧力を加えることを利用した水圧プレス技術は、例えば、セラミックチップコンデンサーの包装に利用されており、熱間等方圧プレス(Hot Isostatic Press:HIP)、温間等方圧プレス(Warm Isostatic Press:WIP)、冷間等方圧プレス(Cold Isostatic Press:CIP)等として知られている。
なお、このようなプレス技術では、水以外の液状物を加圧媒体として用いることもできる。
【0004】
高圧プレスによる殺菌作用を利用した水圧プレス技術は、例えば、食品の包装に利用されており、食品用高圧処理装置(High Pressure Processing:HPP)を用いた殺菌包装技術として知られている。
【0005】
このような水圧プレス技術に適用可能な包装体を構成するための樹脂フィルムとして、良好な成形性と耐ピンホール性を有する多層の樹脂フィルムが開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
水圧プレス技術に適用される包装体においては、包装されている収納物に段差が存在する場合がある。そして、包装体の中でも深絞り包装体では、樹脂フィルムが収納物に対して密着し易い。したがって、水圧プレス技術を利用して、段差を有する収納物の深絞り包装体を製造するためには、樹脂フィルムとして、収納物の形状に対して追従し易い高い成形性を有し、段差部分において破損し難い高い耐ピンホール性を有することが望ましい。
【0008】
さらに、包装体の製造に使用される樹脂フィルムは、通常、ロール状で保管される。このとき、樹脂フィルムの種類によっては、ロール中の樹脂フィルムが滑ることで、保管中のロール中の樹脂フィルムの位置がずれたり、運搬中のロールの形状が崩れたりする、いわゆる巻きずれが生じることがある。
【0009】
これに対して、特許文献1で開示されている樹脂フィルムは、深絞り包装体を構成可能な程度の高い成形性と耐ピンホール性を有すること、及び、樹脂フィルムの巻きずれを抑制すること、のすべてを実現することを目的としたものではない。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、深絞り包装体を構成可能であり、成形性と耐ピンホール性に優れ、巻きずれを抑制できる樹脂フィルムと、前記樹脂フィルムを用いた包装体と、を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下の構成を採用する。
[1].内層と、柔軟層と、耐ピンホール層と、外層と、がこの順に積層されて構成されており、前記内層が、直鎖状低密度ポリエチレンを含み、前記柔軟層が、エチレン-酢酸ビニル共重合体を含み、前記耐ピンホール層が、ナイロンを含み、前記耐ピンホール層の厚さが、30~110μmであり、ISO25178に準拠して測定された、前記内層の前記外層側とは反対側の面の算術平均高さ(Sa)が、0.03~0.7μmであり、ISO25178に準拠して測定された、前記外層の前記内層側とは反対側の面の算術平均高さ(Sa)が、0.05~1.4μmである、積層フィルム。
[2].前記内層が、さらにアンチブロッキング剤を含む、[1]に記載の積層フィルム。
[3].大きさが100mm×100mmの前記積層フィルムの第1試験片を用い、前記第1試験片の前記外層側の最も外側の表面を上向きで水平にして前記第1試験片を固定し、25℃の温度条件下で、前記第1試験片の前記表面に対して、直径10mmの球状の錘を2.7m/sの速度で衝突させ、前記錘が前記第1試験片を貫通するのに必要な貫通エネルギーを測定したとき、前記貫通エネルギーが0.6J以上となる、[1]又は[2]に記載の積層フィルム。
【0012】
[4].前記積層フィルムから、1号ダンベル形の第2試験片を作製し、25℃の温度条件下で、JIS Z1702に準拠して、前記第2試験片の幅が10mm、長さが40mm以上の部位を、引張速度500mm/minで引っ張り、前記第2試験片が破断するまでに測定された引張荷重の最大値を引張破断強度としたとき、前記引張破断強度が75N以上となる、[1]~[3]のいずれか一項に記載の積層フィルム。
[5].前記積層フィルムから、1号ダンベル形の第3試験片を作製し、25℃の温度条件下で、JIS K7127に準拠して、前記第3試験片の幅が10mm、長さが40mm以上の部位を、引張速度2mm/minで引っ張ったとき、前記第3試験片における引張応力及びひずみ量の測定値から算出される、前記第3試験片のヤング率が、300MPa以上となる、[1]~[4]のいずれか一項に記載の積層フィルム。
[6].[1]~[5]のいずれか一項に記載の積層フィルムを備えた、包装体。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、深絞り包装体を構成可能であり、成形性と耐ピンホール性に優れ、巻きずれを抑制できる樹脂フィルムと、前記樹脂フィルムを用いた包装体と、が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る積層フィルムの一例を模式的に示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る包装体の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<<積層フィルム>>
本発明の一実施形態に係る積層フィルムは、内層と、柔軟層と、耐ピンホール層と、外層と、がこの順に積層されて構成されており、前記内層が、直鎖状低密度ポリエチレンを含み、前記柔軟層が、エチレン-酢酸ビニル共重合体を含み、前記耐ピンホール層が、ナイロンを含み、前記耐ピンホール層の厚さが、30~110μmであり、ISO25178に準拠して測定された、前記内層の前記外層側とは反対側の面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)の算術平均高さ(Sa)が、0.03~0.7μmであり、ISO25178に準拠して測定された、前記外層の前記内層側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)の算術平均高さ(Sa)が、0.05~1.4μmである。
【0016】
本実施形態の積層フィルムは、内層、柔軟層、耐ピンホール層及び外層が、上記の特定の構成を有することで、包装体を構成したときに、高い成形性と耐ピンホール性を示し、さらに、ロール状としたときに、巻きずれが抑制される。
本実施形態の積層フィルムは、特に深絞り包装体の底材を構成するのに好適であり、段差を有する収納物の深絞り包装体を構成したときには、収納物の段差部分にも高い密着性を示し、収納物の段差部分において高い耐ピンホール性を示す。
【0017】
<貫通エネルギー>
前記積層フィルムは、耐ピンホール性に優れる。
積層フィルムの耐ピンホール性の程度は、以下に示す第1試験片の貫通エネルギーの大きさによって、判定できる。
すなわち、積層フィルムで大きさが100mm×100mmであるものを第1試験片として用意する。そして、第1試験片の外層側の最も外側の表面(換言すると内層側とは反対側の露出面、より具体的には後述する外層の第1面)を、上向きで水平にして、第1試験片を固定する。
次いで、25℃の温度条件下で、第1試験片の前記表面に対して、直径10mmの球状の錘(ストライカー)を2.7m/sの速度で衝突させ、前記錘が第1試験片を貫通するのに必要な貫通エネルギーを測定する。
前記貫通エネルギーは、JIS K7124-2:1999(ISO 7765-2:1994)に準拠して算出できる。すなわち、第1試験片の破壊時間までに第1試験片に加えられる力積Pを下記式(I):
【0018】
【数1】
により算出する。次いで、第1試験片の破壊までに第1試験片に与えられる貫通エネルギーWを下記式(II):
【0019】
【数2】
により算出する。
以上により求められた第1試験片の貫通エネルギーの大きさによって、積層フィルムの耐ピンホール性の程度を判定できる。
本実施形態においては、このようにして、第1試験片の貫通エネルギーの測定を、5枚の第1試験片を用いて1回ずつ、合計で5回行い、その平均値を第1試験片の貫通エネルギーとして採用してもよい。
【0020】
第1試験片の貫通エネルギーは、0.6J以上であることが好ましく、例えば、0.7J以上、1J以上、1.4J以上、及び1.7J以上のいずれかであってもよい。第1試験片の貫通エネルギーが前記下限値以上である場合、積層フィルムの耐ピンホール性がより高くなっている。
【0021】
第1試験片の貫通エネルギーの上限値は、特に限定されない。例えば、第1試験片の貫通エネルギーが3J以下である場合、積層フィルムの製造はより容易である。
【0022】
第1試験片の貫通エネルギーは、例えば、0.6~3J、0.7~3J、1~3J、1.4~3J、及び1.7~3Jのいずれかであってもよい。
【0023】
第1試験片の貫通エネルギーは、例えば、積層フィルムの各層における含有成分の種類と含有量、又は、各層の厚さ等を調節することで、調節できる。特に、前記耐ピンホール層における含有成分(特にナイロン)の種類と含有量、又は、前記耐ピンホール層の厚さ等を調節することで、より容易に調節できる。
【0024】
<第2試験片の引張破断強度>
積層フィルムの耐ピンホール性の程度は、以下に示す第2試験片の引張破断強度の大きさによっても、判定できる。
すなわち、積層フィルムから1号ダンベル形の第2試験片を作製する。そして、25℃の温度条件下で、JIS Z1702に準拠して、標線間距離を40mmとして、第2試験片の幅が10mm、長さが40mm以上の部位を、引張速度500mm/minで、第2試験片の長さ方向に引っ張る。そして、第2試験片が破断するまでに測定された引張荷重の最大値を引張破断強度として、採用する。
なお、通常、引張破断強度としては、上述の測定値(単位:N)を第2試験片(積層フィルム)の厚さで除した値(単位:MPa)を採用するのが一般的であるが、本実施形態においては、第2試験片(積層フィルム)の厚さも考慮した特性を比較するために、第2試験片(積層フィルム)の厚さで除していない前記測定値(単位:N)を引張破断強度として採用する。
以上により求められた第2試験片の引張破断強度の大きさによって、積層フィルムの耐ピンホール性の程度を判定できる。
本実施形態においては、このようにして、第2試験片の引張破断強度の測定を、5枚の第2試験片を用いて1回ずつ、合計で5回行い、その平均値を第2試験片の引張破断強度として採用してもよい。
【0025】
第2試験片の引張破断強度は、75N以上であることが好ましく、例えば、85N以上、100N以上、及び115N以上のいずれかであってもよい。第2試験片の引張破断強度が前記下限値以上である場合、積層フィルムの耐ピンホール性がより高くなっている。
【0026】
第2試験片の引張破断強度の上限値は、特に限定されない。例えば、第2試験片の引張破断強度が145N以下である場合、積層フィルムの製造はより容易である。
【0027】
第2試験片の引張破断強度は、例えば、75~145N、85~145N、100~145N、及び115~145Nのいずれかであってもよい。
【0028】
第2試験片においては、そのMD方向(樹脂の流れ方向、Machine Direction)と、そのTD方向(直角方向、Transverse Direction)とで、引張破断強度が互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
例えば、第2試験片の、上述の数値範囲の引張破断強度は、第2試験片のMD方向の引張破断強度であってもよいし、第2試験片のTD方向の引張破断強度であってもよい。
【0029】
第2試験片の引張破断強度は、例えば、積層フィルムの各層における含有成分の種類と含有量、又は、各層の厚さ等を調節することで、調節できる。特に、前記耐ピンホール層における含有成分(特にナイロン)の種類と含有量、又は、前記耐ピンホール層の厚さ等を調節することで、より容易に調節できる。
【0030】
<第3試験片のヤング率>
前記積層フィルムは、成形性に優れる。例えば、積層フィルムは、これを用いて深絞り包装体を製造したときの成形性に優れ、例えば、段差を有する収納物の深絞り包装体を製造したときには、積層フィルムが収納物の段差部分に追従し易く、高い成形性を有する。
【0031】
積層フィルムの成形性の程度は、以下に示す第3試験片のヤング率の大きさによって、判定できる。
すなわち、積層フィルムから1号ダンベル形の第3試験片を作製する。そして、25℃の温度条件下で、JIS K7127に準拠して、標線間距離を40mmとして、第3試験片の幅が10mm、長さが40mm以上の部位を、引張速度2mm/minで、第3試験片の長さ方向に引っ張る。そして、このときの第3試験片における引張応力及びひずみ量の測定値から、ヤング率を算出する。
以上により求められた第3試験片のヤング率の大きさによって、積層フィルムの耐ピンホール性の程度を判定できる。
本実施形態においては、このようにして、第3試験片のヤング率の測定を、5枚の第3試験片を用いて1回ずつ、合計で5回行い、その平均値を第3試験片のヤング率として採用してもよい。
【0032】
第3試験片のヤング率は、300MPa以上であることが好ましく、例えば、400MPa以上、及び500MPa以上のいずれかであってもよい。第3試験片のヤング率が前記下限値以上である場合、積層フィルムの、その製造時及び成形時の搬送性が良好となる。
【0033】
第3試験片のヤング率の上限値は、特に限定されない。例えば、第3試験片のヤング率は、800MPa以下であることが好ましく、600MPa以下であることがより好ましい。第3試験片のヤング率が前記上限値以下であることで、積層フィルムの成形性がより高くなる。また、後述する包装体の水圧プレス等の加圧プレス後に、包装体が折れ曲がることによって生じる収納物の突起部が、包装体に突き刺さることによって、包装体が破損することを抑制する効果がより高くなる。
【0034】
第3試験片のヤング率は、例えば、300~800MPa、400~800MPa、及び500~800MPaのいずれかであってもよいし、300~600MPa、400~600MPa、及び500~600MPaのいずれかであってもよい。
【0035】
第3試験片においては、そのMD方向(樹脂の流れ方向、Machine Direction)と、そのTD方向(直角方向、Transverse Direction)とで、ヤング率が互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
例えば、第3試験片の、上述の数値範囲のヤング率は、第3試験片のMD方向のヤング率であってもよいし、第3試験片のTD方向のヤング率であってもよい。
【0036】
第3試験片のヤング率は、例えば、積層フィルムの各層における含有成分の種類と含有量、又は、各層の厚さ等を調節することで、調節できる。特に、前記柔軟層における含有成分(例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体)の種類と含有量、又は、前記柔軟層の厚さ等を調節することで、より容易に調節できる。
【0037】
<内層>
前記内層は、積層フィルムの一方の最表層である。内層は前記積層フィルムをシールして包装体を製造するときの、シールを行う層(シーラント層)であってよい。
前記内層は、積層フィルムの耐熱性を向上させることもできる。
【0038】
前記内層は、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を含む樹脂層である。
内層が含む直鎖状低密度ポリエチレンは、メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレン(mLLDPE)であってもよいし、メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレンでなくてもよい。
【0039】
内層が含む直鎖状低密度ポリエチレンの融点は、100~130℃であることが好ましく、110~127℃であることがより好ましく、115~124℃であることがさらに好ましい。前記直鎖状低密度ポリエチレンの融点が前記下限値以上であることで、後述する包装体の水圧プレス等の加圧プレス時において、包装体を加熱した場合であっても、内層が溶融せず、内層の収納物への貼り付きが抑制される。前記直鎖状低密度ポリエチレンの融点が前記上限値以下であることで、前記加圧プレス時において、包装体の、収納物に対する追従性がより高くなる。
【0040】
内層が含む直鎖状低密度ポリエチレンは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0041】
内層は、直鎖状低密度ポリエチレンのみを含んでいてもよい(すなわち、直鎖状低密度ポリエチレンからなる層であってもよい)し、直鎖状低密度ポリエチレンと、それ以外の他の成分と、を含んでいてもよい(すなわち、直鎖状低密度ポリエチレンと、それ以外の他の成分と、からなる層であってもよい)。
【0042】
前記他の成分は、本発明の効果を損なわなに限り特に限定されず、樹脂成分(本明細書においては、「他の樹脂成分」と称することがある)及び非樹脂成分(本明細書においては、「他の非樹脂成分」と称することがある)のいずれであってもよい。
【0043】
前記他の樹脂成分は、直鎖状低密度ポリエチレン以外の樹脂であれば、特に限定されない。
前記他の樹脂成分としては、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン以外のポリオレフィンが挙げられる。
前記ポリオレフィンとしては、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン以外の低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等の直鎖状低密度ポリエチレン以外のポリエチレン;ポリプロピレン(ホモポリプロピレン)等が挙げられる。
【0044】
ポリエチレンの、その密度ごとの分類は、例えば、旧JIS K 6748:1995において定義されていた。本明細書においては、この定義によって、ポリエチレンを、その密度ごとに分類する。
すなわち、本明細書において、低密度ポリエチレン(LDPE)とは、密度が0.91g/cm3以上、0.93g/cm3未満であるポリエチレンを意味する。
また、中密度ポリエチレン(MDPE)とは、密度が0.93g/cm3以上、0.942g/cm3未満であるポリエチレンを意味する。
また、高密度ポリエチレン(HDPE)とは、密度が0.942g/cm3以上であるポリエチレンを意味する。
【0045】
前記他の非樹脂成分としては、例えば、当該分野で公知の添加剤が挙げられる。
前記添加剤としては、例えば、アンチブロッキング剤、スリップ剤、防曇剤、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、無機粒子、減粘剤、増粘剤、熱安定化剤、滑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0046】
内層が含む前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0047】
内層が前記他の成分を含む場合、特に好ましい前記他の成分としては、アンチブロッキング剤が挙げられる。
すなわち、特に好ましい内層としては、さらにアンチブロッキング剤を含むものが挙げられる。
【0048】
前記アンチブロッキング剤としては、例えば、シリカ、アルミノケイ酸塩等の無機材料からなる無機粒子;アクリルビーズ、ポリスチレンビーズ等の有機粒子等が挙げられる。
【0049】
前記スリップ剤としては、例えば、エルカ酸アミド、オレイン酸アミド、モンタン酸ワックス等が挙げられる。
【0050】
内層において、内層の総質量に対する、直鎖状低密度ポリエチレンの含有量の割合は、95質量%以上であることが好ましく、例えば、97質量%以上、98質量%以上、及び99質量%以上のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、内層が直鎖状低密度ポリエチレンを含んでいることによる効果が、より顕著に得られる。
前記割合の上限値は100質量%であり、例えば、前記割合は99.5質量%以下であってもよい。
前記割合は、通常、後述する内層形成用組成物における、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)に対する、直鎖状低密度ポリエチレンの含有量(質量部)の割合、と同じである。
【0051】
本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15~25℃の温度等が挙げられる。
【0052】
換言すると、内層において、内層の総質量に対する、前記他の成分の含有量の割合は、5質量%以下であることが好ましく、例えば、3質量%以下、2質量%以下、及び1質量%以下のいずれかであってもよい。前記割合が前記上限値以下であることで、内層が直鎖状低密度ポリエチレンを含んでいることによる効果が、より顕著に得られる。
前記割合の下限値は、前記他の成分の種類に応じて、適宜調節できるが、例えば、前記割合は0.5質量%以上であってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、内層が前記他の成分を含んでいることによる効果が、より顕著に得られる。
前記割合の数値範囲は、例えば、前記他の成分がアンチブロッキング剤である場合にも好適である。
前記他の成分がスリップ剤である場合には、前記割合は、0.05~1質量%であることが好ましく、0.1~0.5質量%であることがより好ましい。
【0053】
内層は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。内層が複数層からなる場合、これら複数層は互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0054】
本明細書においては、内層の場合に限らず、「複数層が互いに同一でも異なっていてもよい」とは、「すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよいし、一部の層のみが同一であってもよい」ことを意味し、さらに「複数層が互いに異なる」とは、「各層の構成材料及び厚さの少なくとも一方が互いに異なる」ことを意味する。
【0055】
ISO25178に準拠して測定された、内層の外層側とは反対側の面(換言すると、後述する第2面、又は露出面)の算術平均高さ(Sa)は、0.03~0.7μmである。内層の前記面のSaがこのような範囲であり、かつ、後述するように、ISO25178に準拠して測定された、外層の内層側とは反対側の面の算術平均高さ(Sa)が、特定範囲であることにより、積層フィルムをロール状としたときに、巻きずれが抑制される。
内層が複数層からなる場合には、内層の露出面(外層側とは反対側の最表面)の算術平均高さ(Sa)が、0.03~0.7μmであればよい。
【0056】
内層の外層側とは反対側の面(第2面)の前記算術平均高さ(Sa)が0.03μm以上であることで、積層フィルムを用いて後述する包装体を構成したとき、収納物の内層への貼り付きが抑制される。
一方、内層の外層側とは反対側の面(第2面)の算術平均高さ(Sa)が0.7μm以下であることで、積層フィルムをロール状としたときに、巻きずれの抑制が可能となる。また、例えば、内層がアンチブロッキング剤を含む場合には、アンチブロッキング剤の影響で、内層の前記面のSaが過度に大きくなることがある。その場合には、内層の前記面の形状が後述する包装体中の収納物の表面に転写され、この表面における平滑性や、収納物の厚さの精度に悪影響を及ぼしてしまう。しかし、内層の前記面のSaが0.7μm以下であれば、このような不具合も抑制される。
【0057】
上述の効果がより高くなる点では、内層の外層側とは反対側の面(第2面)の前記算術平均高さ(Sa)は、例えば、0.03~0.55μm、及び0.03~0.35μmのいずれかであってもよいし、0.1~0.7μm、及び0.15~0.7μmのいずれかであってもよいし、0.1~0.55μm、及び0.15~0.35μmのいずれかであってもよい。
【0058】
内層の前記面(第2面)の算術平均高さ(Sa)は、例えば、内層の形成時に、内層の前記面(第2面)にロールのロール面を接触させる場合には、前記ロール面の粗さを調節することで、調節できる。また、内層が前記アンチブロッキング剤を含む場合には、内層の前記面(第2面)の算術平均高さ(Sa)は、内層におけるアンチブロッキング剤の種類と含有量を調節することで、調節できる。
【0059】
内層の厚さは、特に限定されないが、5~40μmであることが好ましく、10~35μmであることがより好ましく、15~30μmであることがさらに好ましい。内層の厚さが前記下限値以上であることで、積層フィルムの内層を備えていることにより得られる効果がより高くなる。内層の厚さが前記上限値以下であることで、過剰な厚さとなることが抑制される。
内層が複数層からなる場合には、これら複数層の合計の厚さが、上記の好ましい内層の厚さとなるようにするとよい。
【0060】
<柔軟層>
前記柔軟層は、内層の一方の面上に設けられている。
前記柔軟層は、積層フィルムに柔軟性を付与し、積層フィルムの成形性を向上させるための層である。
前記柔軟層は、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)を含む樹脂層である。
【0061】
柔軟層が含むエチレン-酢酸ビニル共重合体において、構成単位の全量(モル)に対する、酢酸ビニルから誘導された構成単位の量(モル)の割合(本明細書においては、「酢酸ビニル含有量」と称することがある)は、9~20モル%であることが好ましく、9~16モル%であることがより好ましく、10~14モル%であることがさらに好ましい。エチレン-酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含有量が前記下限値以上であることで、積層フィルムの柔軟性がより高くなり、成形性がより良好となる。前記酢酸ビニル含有量が前記上限値以下であることで、後述する包装体の水圧プレス等の加圧プレス時において、包装体を加熱した場合であっても、柔軟層の溶融が抑制され、包装体(前記積層フィルム)でのピンホール発生の抑制効果が高くなる。
【0062】
柔軟層が含むエチレン-酢酸ビニル共重合体の融点は、80℃以上であることが好ましく、98℃以下であることが好ましい。
【0063】
柔軟層は、エチレン-酢酸ビニル共重合体のみを含んでいてもよい(すなわち、エチレン-酢酸ビニル共重合体からなる層であってもよい)し、エチレン-酢酸ビニル共重合体と、それ以外の他の成分と、を含んでいてもよい(すなわち、エチレン-酢酸ビニル共重合体と、それ以外の他の成分と、からなる層であってもよい)。
【0064】
前記他の成分は、本発明の効果を損なわなに限り特に限定されず、樹脂成分(本明細書においては、「他の樹脂成分」と称することがある)及び非樹脂成分(本明細書においては、「他の非樹脂成分」と称することがある)のいずれであってもよい。
【0065】
前記他の樹脂成分は、エチレン-酢酸ビニル共重合体以外の樹脂であれば、特に限定されない。
前記他の樹脂成分としては、例えば、エチレン-アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)等のエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体;エチレン-アクリル酸共重合体(EAA);エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA);エチレン-アクリル酸エチル-無水マレイン酸共重合体(E-EA-MAH);アイオノマー(ION)等が挙げられる。
前記アイオノマーとしては、例えば、エチレンと少量のアクリル酸又はメタクリル酸との共重合体が、その中の酸部分と、金属イオンと、の塩形成によって、イオン橋かけ構造を有している樹脂が挙げられる。
【0066】
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の両方を包含する概念である。
【0067】
前記他の非樹脂成分としては、例えば、当該分野で公知の添加剤が挙げられる。
前記添加剤としては、例えば、内層が含んでいてもよいものとして先に挙げた添加剤と同じものが挙げられる。
【0068】
柔軟層が含む前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0069】
柔軟層において、柔軟層の総質量に対する、エチレン-酢酸ビニル共重合体の含有量の割合は、90質量%以上であることが好ましく、例えば、95質量%以上、97質量%以上、及び99質量%以上のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、積層フィルムの柔軟性がより高くなる。特に、後述する包装体の水圧プレス等の加圧プレス時において、水等の加圧媒体の温度(例えば、50~100℃)に対応して、柔軟層(積層フィルム)の柔軟性が顕著に向上する。
前記割合の上限値は100質量%である。
前記割合は、通常、後述する柔軟層形成用組成物における、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)に対する、エチレン-酢酸ビニル共重合体の含有量(質量部)の割合、と同じである。
【0070】
柔軟層は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。柔軟層が複数層からなる場合、これら複数層は互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0071】
柔軟層の厚さは、特に限定されないが、30~120μmであることが好ましく、50~105μmであることがより好ましく、例えば、60~90μmであってもよい。柔軟層の厚さがこのような範囲であることで、積層フィルムの柔軟性がより高くなる。柔軟層の厚さが前記下限値以上であることで、柔軟層の強度がより向上する。柔軟層の厚さが前記上限値以下であることで、過剰な厚さとなることが抑制される。
柔軟層が複数層からなる場合には、これら複数層の合計の厚さが、上記の好ましい柔軟層の厚さとなるようにするとよい。
【0072】
<耐ピンホール層>
前記耐ピンホール層は、柔軟層の内層側とは反対側の面上に設けられている。
前記耐ピンホール層は、積層フィルムに耐ピンホール性と剛性を付与するための層である。
前記耐ピンホール層は、ナイロン(ポリアミド)を含む樹脂層である。
【0073】
耐ピンホール層が含むナイロンとしては、例えば、4-ナイロン、6-ナイロン、7-ナイロン、11-ナイロン、12-ナイロン、46-ナイロン、66-ナイロン、69-ナイロン、610-ナイロン、611-ナイロン、612-ナイロン、6T-ナイロン、6Iナイロン、6-ナイロンと66-ナイロンとのコポリマー(ナイロン6/66)、6-ナイロンと610-ナイロンとのコポリマー、6-ナイロンと611-ナイロンとのコポリマー、6-ナイロンと12-ナイロンとのコポリマー(ナイロン6/12)、6-ナイロンと612ナイロンとのコポリマー、6-ナイロンと6T-ナイロンとのコポリマー、6-ナイロンと6I-ナイロンとのコポリマー、6-ナイロンと66-ナイロンと610-ナイロンとのコポリマー、6-ナイロンと66-ナイロンと12-ナイロンとのコポリマー(ナイロン6/66/12)、6-ナイロンと66-ナイロンと612-ナイロンとのコポリマー、66-ナイロンと6T-ナイロンとのコポリマー、66-ナイロンと6I-ナイロンとのコポリマー、6T-ナイロンと6I-ナイロンとのコポリマー、66-ナイロンと6T-ナイロンと6I-ナイロンとのコポリマー等が挙げられる。
耐ピンホール層が含むナイロンとしては、例えば、イソフタル酸とテレフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの重縮合物等の、非晶質ナイロンも挙げられる。
【0074】
ナイロンは、耐熱性、機械的強度、及び入手の容易さ等の点においては、6-ナイロン(本明細書においては、「Ny6」と略記することがある)、12-ナイロン、66-ナイロン、ナイロン6/66(本明細書においては、「Ny6/66」と略記することがある)、ナイロン6/12又はナイロン6/66/12であることが好ましい。
【0075】
耐ピンホール層が含むナイロンは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0076】
耐ピンホール層は、ナイロンのみを含んでいてもよい(すなわち、ナイロンからなる層であってもよい)し、ナイロンと、それ以外の他の成分と、を含んでいてもよい(すなわち、ナイロンと、それ以外の他の成分と、からなる層であってもよい)。
【0077】
前記他の成分は、本発明の効果を損なわなに限り特に限定されず、樹脂成分(本明細書においては、「他の樹脂成分」と称することがある)及び非樹脂成分(本明細書においては、「他の非樹脂成分」と称することがある)のいずれであってもよい。
【0078】
前記他の樹脂成分は、ナイロン以外の樹脂であれば、特に限定されない。
【0079】
前記他の非樹脂成分としては、例えば、当該分野で公知の添加剤が挙げられる。
前記添加剤としては、例えば、内層が含んでいてもよいものとして先に挙げた添加剤と同じものが挙げられる。
【0080】
耐ピンホール層が含む前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0081】
耐ピンホール層において、耐ピンホール層の総質量に対する、ナイロンの含有量の割合は、90質量%以上であることが好ましく、例えば、95質量%以上、97質量%以上、及び99質量%以上のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、積層フィルムの耐ピンホール性がより高くなる。
前記割合の上限値は100質量%である。
前記割合は、通常、後述する耐ピンホール層形成用組成物における、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)に対する、ナイロンの含有量(質量部)の割合、と同じである。
【0082】
耐ピンホール層は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。耐ピンホール層が複数層からなる場合、これら複数層は互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0083】
耐ピンホール層の厚さは、30~110μmである。耐ピンホール層の厚さが前記下限値以上であることで、積層フィルム(耐ピンホール層)の耐ピンホール性が高くなる。耐ピンホール層の厚さが前記上限値以下であることで、積層フィルムの柔軟性が高く、積層フィルムの成形性が高くなり、積層フィルムを用いて得られた包装体の、収納物に対する追従性が高くなる。例えば、積層フィルムを用いて、凹凸(例えば、段差等)を有する収納物の深絞り包装体を製造したときに、包装体(積層フィルム)が収納物の凹凸に追従し易くなる。
【0084】
上述の効果がより高くなる点では、耐ピンホール層の厚さは、例えば、30~90μm、30~75μm、及び30~60μmのいずれかであってもよいし、50~110μm、65~110μm、及び80~110μm、のいずれかであってもよいし、50~90μmであってもよい。
【0085】
耐ピンホール層が複数層からなる場合には、これら複数層の合計の厚さが、上記の耐ピンホール層の厚さとなるようにするとよい。
【0086】
<外層>
前記外層は、耐ピンホール層の柔軟層側とは反対側の面上に設けられている。
前記外層は、積層フィルムの他方の最表層である。
前記外層は、積層フィルムに成形性と剛性を付与できる。
【0087】
前記外層は、主成分として樹脂を含む樹脂層であることが好ましい。
外層が含む前記樹脂(主成分)としては、例えば、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH、別名:エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物)が挙げられる。エチレン-ビニルアルコール共重合体を含む外層は、酸素バリア性を有する。
【0088】
外層が含むエチレン-ビニルアルコール共重合体において、構成単位の全量(モル)に対する、エチレンから誘導された構成単位の量(モル)の割合(本明細書においては、「エチレン含有量」と称することがある)は、20~60モル%であることが好ましく、30~50モル%であることがより好ましく、38~44モル%であることがさらに好ましい。エチレン-ビニルアルコール共重合体のエチレン含有量がこのような範囲であることで、外層がエチレン-ビニルアルコール共重合体を含んでいることにより得られる効果が、より高くなる。前記エチレン含有量が前記下限値以上であることで、積層フィルムの成形性がより高くなる。前記エチレン含有量が前記上限値以下であることで、積層フィルムの耐熱性が向上し、積層フィルムの成形時及びプレス時に、積層フィルムの表面の荒れが抑制される。
【0089】
外層がエチレン-ビニルアルコール共重合体を含んでいる場合、外層は、エチレン-ビニルアルコール共重合体のみを含んでいてもよい(すなわち、エチレン-ビニルアルコール共重合体からなる層であってもよい)し、エチレン-ビニルアルコール共重合体と、それ以外の他の成分と、を含んでいてもよい(すなわち、エチレン-ビニルアルコール共重合体と、それ以外の他の成分と、からなる層であってもよい)。
【0090】
前記他の成分は、本発明の効果を損なわなに限り特に限定されず、樹脂成分(本明細書においては、「他の樹脂成分」と称することがある)及び非樹脂成分(本明細書においては、「他の非樹脂成分」と称することがある)のいずれであってもよい。
【0091】
前記他の樹脂成分は、エチレン-ビニルアルコール共重合体以外の樹脂であれば、特に限定されない。
【0092】
前記他の非樹脂成分としては、例えば、当該分野で公知の添加剤が挙げられる。
前記添加剤としては、例えば、内層が含んでいてもよいものとして先に挙げた添加剤と同じものが挙げられる。
【0093】
外層が含む前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0094】
外層において、外層の総質量に対する、主成分である前記樹脂(例えば、エチレン-ビニルアルコール共重合体)の含有量の割合は、90質量%以上であることが好ましく、例えば、95質量%以上、97質量%以上、及び99質量%以上のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、積層フィルムの外層を備えていることにより得られる効果がより高くなる。
前記割合の上限値は100質量%である。
前記割合は、通常、後述する外層形成用組成物における、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)に対する、主成分である前記樹脂の含有量(質量部)の割合、と同じである。
【0095】
外層は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。外層が複数層からなる場合、これら複数層は互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0096】
ISO25178に準拠して測定された、外層の内層側とは反対側の面(換言すると、後述する第1面、又は露出面)の算術平均高さ(Sa)は、0.05~1.4μmである。外層の前記面のSaがこのような範囲であり、かつ、上述のように、ISO25178に準拠して測定された、内層の外層側とは反対側の面(後述する第2面)の算術平均高さ(Sa)が、特定範囲であることにより、積層フィルムをロール状としたときに、巻きずれが抑制される。
外層が複数層からなる場合には、外層の露出面(内層側とは反対側の最表面)の算術平均高さ(Sa)が、0.05~1.4μmであればよい。
【0097】
外層の内層側とは反対側の面(第1面)の算術平均高さ(Sa)が0.05μm以上である外層は、その滑り性が良好であるため、積層フィルムの製造時により容易に形成できる。
一方、外層の内層側とは反対側の面(第1面)の算術平均高さ(Sa)が1.4μm以下であることで、積層フィルムをロール状としたときに、巻きずれの抑制が可能となる。また、例えば、外層の前記面のSaが過度に大きい場合には、後述する包装体の水圧プレス等の加圧プレス時において、外層の前記面の形状が後述する包装体中の収納物の表面に転写され、この表面における平滑性や、収納物の厚さの精度に悪影響を及ぼしてしまう。しかし、外層の前記面のSaが1.4μm以下であれば、このような不具合も抑制される。
【0098】
外層の前記面(第1面)の算術平均高さ(Sa)は、例えば、ロール面の粗さが調節されたロールを用い、このロール面を、外層の形成時に外層の前記面(第1面)に接触させることで、調節できる。また、外層がアンチブロッキング剤を含む場合には、外層の前記面(第1面)の算術平均高さ(Sa)は、外層におけるアンチブロッキング剤の種類と含有量を調節することで、調節できる。外層が含むアンチブロッキング剤としては、先に説明した、内層が含むアンチブロッキング剤と同様のものが挙げられる。
【0099】
外層の厚さは、特に限定されないが、10~70μmであることが好ましく、例えば、30~50μm、及び30~40μmのいずれかであってもよい。外層の厚さが前記下限値以上であることで、積層フィルムの外層を備えていることにより得られる効果がより高くなる。外層の厚さが前記上限値以下であることで、過剰な厚さとなることが抑制される。
外層が複数層からなる場合には、これら複数層の合計の厚さが、上記の好ましい外層の厚さとなるようにするとよい。
【0100】
<他の層>
前記積層フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲で、内層と、柔軟層と、耐ピンホール層と、外層と、のいずれにも該当しない、他の層を備えていてもよい。
【0101】
前記他の層の種類及び配置位置は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
【0102】
積層フィルムが備えている前記他の層は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0103】
前記他の層は、その1種あたり、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。前記他の層が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0104】
前記他の層の厚さは、その種類に応じて任意に設定でき、特に限定されない。
【0105】
[接着層]
前記他の層としては、例えば、積層フィルム中の隣り合う2層を接着するための接着層が挙げられる。
前記接着層は接着剤を含む。
【0106】
接着層は、例えば、柔軟層の内層側とは反対側の面上に設けられ、柔軟層と耐ピンホール層との間に配置されていてもよい。
接着層は、例えば、耐ピンホール層の柔軟層側とは反対側の面上に設けられ、耐ピンホール層と外層との間に配置されていてもよい。
【0107】
接着層が含む前記接着剤は、接着対象の2層を十分な強度で接着できるものであれば、特に限定されない。
前記接着剤としては、例えば、オレフィン系樹脂(すなわち、1種又は2種以上のモノマーであるオレフィンの重合体)等の接着性樹脂が挙げられる。
【0108】
接着層が含む前記オレフィン系樹脂として、より具体的には、例えば、エチレン系共重合体、プロピレン系共重合体、ブテン系共重合体等が挙げられる。
前記エチレン系共重合体とは、エチレンと、エチレン以外のモノマーと、の共重合体である。
前記プロピレン系共重合体とは、プロピレンと、プロピレン以外のモノマーと、の共重合体である。
前記ブテン系共重合体とは、ブテンと、ブテン以外のモノマーと、の共重合体である。
【0109】
接着層が含む前記エチレン系共重合体としては、例えば、エチレンとビニル基含有モノマーとの共重合体等が挙げられる。
エチレンとビニル基含有モノマーとの共重合体としては、例えば、無水マレイン酸グラフト変性直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-アクリル酸エチル-無水マレイン酸共重合体(E-EA-MAH)、アイオノマー(ION)、エチレン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
前記アイオノマーとしては、例えば、エチレンと少量のアクリル酸又はメタクリル酸との共重合体が、その中の酸部分と、金属イオンと、の塩形成によって、イオン橋かけ構造を有している樹脂が挙げられる。
【0110】
接着層が含む前記プロピレン系共重合体としては、例えば、プロピレンとビニル基含有モノマーとの共重合体等が挙げられる。
プロピレンとビニル基含有モノマーとの共重合体としては、例えば、無水マレイン酸グラフト変性直鎖状低密度ポリプロピレン、プロピレン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0111】
接着層が含む前記ブテン系共重合体としては、例えば、1-ブテンとビニル基含有モノマーとの共重合体、2-ブテンとビニル基含有モノマーとの共重合体、これら共重合体の変性物(変性共重合体)等が挙げられる。
【0112】
接着層が含む接着剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0113】
接着層は、接着剤のみを含んでいてもよい(すなわち、接着剤からなる層であってもよい)し、接着剤と、それ以外の他の成分と、を含んでいてもよい(すなわち、接着剤と、それ以外の他の成分と、からなる層であってもよい)。
【0114】
前記他の成分は、本発明の効果を損なわなに限り特に限定されず、樹脂成分(本明細書においては、「他の樹脂成分」と称することがある)及び非樹脂成分(本明細書においては、「他の非樹脂成分」と称することがある)のいずれであってもよい。
【0115】
前記他の樹脂成分は、接着剤以外の樹脂であれば、特に限定されない。
【0116】
前記他の非樹脂成分としては、例えば、当該分野で公知の添加剤が挙げられる。
前記添加剤としては、例えば、内層が含んでいてもよいものとして先に挙げた添加剤と同じものが挙げられる。
【0117】
接着層が含む前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0118】
接着層において、接着層の総質量に対する、接着剤の含有量の割合は、90質量%以上であることが好ましく、例えば、95質量%以上、97質量%以上、及び99質量%以上のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、接着層の接着力がより大きくなる。
前記割合の上限値は100質量%である。
前記割合は、通常、後述する接着層形成用組成物における、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)に対する、接着剤の含有量(質量部)の割合、と同じである。
【0119】
接着層は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。接着層が複数層からなる場合、これら複数層は互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0120】
接着層の厚さは、特に限定されないが、5~40μmであることが好ましく、7~30μmであることがより好ましく、10~25μmであることがさらに好ましい。接着層の厚さが前記下限値以上であることで、接着層の接着力がより大きくなる。接着層の厚さが前記上限値以下であることで、過剰な厚さとなることが抑制される。
接着層が複数層からなる場合には、これら複数層の合計の厚さが、上記の好ましい接着層の厚さとなるようにするとよい。
【0121】
前記積層フィルムの厚さ(換言すると、積層フィルムを構成するすべての層の合計の厚さ)は、特に限定されない。
積層フィルムの製造適性がより高くなる点では、積層フィルムの厚さは、150μm以上であることが好ましく、175μm以上であることがより好ましく、200μm以上であることがさらに好ましく、225μm以上であることが特に好ましい。
積層フィルムの成形性及び柔軟性がより高くなる点では、積層フィルムの厚さは、265μm以下であることが好ましい。
積層フィルムの厚さは、例えば、150~265μm、175~265μm、200~265μm、及び225~265μmのいずれかであってもよい。
【0122】
以下、図面を参照しながら、本発明についてより詳細に説明する。なお、以降の説明で用いる図は、本発明の特徴を分かり易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
【0123】
図1は、本実施形態の積層フィルムの一例を模式的に示す断面図である。
ここに示す積層フィルム1は、内層11と、柔軟層12と、耐ピンホール層13と、外層14と、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて、構成されている。
【0124】
さらに、積層フィルム1は、柔軟層12と耐ピンホール層13との間に接着層(本明細書においては、「第1接着層」とも称する)151を備え、耐ピンホール層13と外層14との間に接着層(本明細書においては、「第2接着層」とも称する)152を備えている。
第1接着層151は柔軟層12と耐ピンホール層13を接着し、第2接着層152は耐ピンホール層13と外層14を接着している。
【0125】
すなわち、積層フィルム1は、内層11と、柔軟層12と、第1接着層151と、耐ピンホール層13と、第2接着層152と、外層14と、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて、構成されている。
【0126】
内層11は直鎖状低密度ポリエチレンを含む。
ISO25178に準拠して測定された、内層13の外層14側とは反対側の面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)11bの算術平均高さ(Sa)は、0.03~0.7μmである。
【0127】
柔軟層12は、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)を含む。
【0128】
耐ピンホール層13はナイロンを含む。
耐ピンホール層13の厚さT13は、30~110μmである。
【0129】
ISO25178に準拠して測定された、外層14の内層11側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)14aの算術平均高さ(Sa)は、0.05~1.4μmである。
【0130】
<<積層フィルムの製造方法>>
前記積層フィルムは、例えば、数台の押出機を用いて、各層の形成材料となる樹脂又は樹脂組成物等を溶融押出するフィードブロック法や、マルチマニホールド法等の共押出Tダイ法、空冷式又は水冷式共押出インフレーション法等により、製造できる。
【0131】
また、前記積層フィルムは、そのうちのいずれか2層以上を構成するための2枚以上のフィルムをあらかじめ別々に作製しておき、接着剤を用いずに、サーマル(熱)ラミネート法等によって貼り合わせて積層し、必要に応じて、これら以外の層を目的とする配置形態となるようにさらに積層することでも、製造できる。
【0132】
前記積層フィルム中のいずれかの層の形成材料となる前記樹脂組成物は、形成する層が目的とする成分を、目的とする含有量で含むように、含有成分の種類と含有量を調節して、製造すればよい。例えば、前記樹脂組成物中の、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、この樹脂組成物から形成された層中の、前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。
【0133】
内層(
図1に示す積層フィルム1においては、内層11)を形成するための樹脂組成物(本明細書においては、「内層形成用組成物」と称することがある)としては、例えば、直鎖状低密度ポリエチレンと、必要に応じてそれ以外の他の成分と、を含有するものが挙げられる。前記他の成分は、先に説明した成分である。
【0134】
柔軟層(
図1に示す積層フィルム1においては、柔軟層12)を形成するための樹脂組成物(本明細書においては、「柔軟層形成用組成物」と称することがある)としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体と、必要に応じてそれ以外の他の成分と、を含有するものが挙げられる。前記他の成分は、先に説明した成分である。
【0135】
耐ピンホール層(
図1に示す積層フィルム1においては、耐ピンホール層13)を形成するための樹脂組成物(本明細書においては、「耐ピンホール層形成用組成物」と称することがある)としては、例えば、ナイロンと、必要に応じてそれ以外の他の成分と、を含有するものが挙げられる。前記他の成分は、先に説明した成分である。
【0136】
外層(
図1に示す積層フィルム1においては、外層14)を形成するための樹脂組成物(本明細書においては、「外層形成用組成物」と称することがある)としては、例えば、外層の主成分である前記樹脂と、必要に応じてそれ以外の他の成分と、を含有するものが挙げられる。前記他の成分は、先に説明した成分である。外層の主成分である前記樹脂も、先に説明した樹脂であり、その一例としては、エチレン-ビニルアルコール共重合体が挙げられる。
【0137】
接着層(
図1に示す積層フィルム1においては、第1接着層151及び第2接着層152)を形成するための樹脂組成物(本明細書においては、「接着層形成用組成物」と称することがある)としては、例えば、接着剤と、必要に応じてそれ以外の他の成分と、を含有するものが挙げられる。前記他の成分は、先に説明した成分である。
【0138】
製造直後の積層フィルムは、例えば、直ちにロールのロール面に押し当てながら、巻き取ることにより、ロール状とすることが好ましい。
このとき、積層フィルムの外層側をロールのロール面に押し当てることが好ましい。その場合、ロールのロール面の粗さを調節することで、外層の前記面(第1面)の算術平均高さ(Sa)を調節できる。積層フィルムの巻き取りは、冷却されたロールを用いて行うことが好ましい。
積層フィルムの巻き取り時には、積層フィルムの内層側にロールのロール面を押し当てることで、積層フィルムの外層側をロールのロール面に押し当ててもよい。その場合、ロールのロール面の粗さを調節することで、内層の前記面(第2面)の算術平均高さ(Sa)を調節できる。積層フィルムの巻き取り時には、積層フィルムの内層側にエアナイフから風を当てることで、積層フィルムの外層側をロールのロール面に押し当ててもよい。エアナイフから風を当てる方法は、内層がアンチブロッキング剤を含む場合に、アンチブロッキング剤による内層の前記面(第2面)の算術平均高さ(Sa)の調節を容易とする点で好ましい。
【0139】
<<包装体>>
前記積層フィルムは、包装体の構成材料として好適である。
すなわち、本発明の一実施形態に係る包装体は、前記積層フィルムを備えている。
本実施形態の包装体は、前記積層フィルムを用いて、包装対象物を包装することで、製造できる。包装体の製造時には、前記積層フィルム中の内層を包装対象物側に配置し、外層を包装対象物側とは反対側に配置して、包装対象物を包装できる。
【0140】
前記積層フィルムは、深絞り包装体の底材を構成するのに好適である。
深絞り包装とは、包装容器に用いる一対のフィルムのうち一方のフィルムを深絞り包装機の容器形成部で製品に適した形に凹み成形して底材とし、成形した底材の中に製品を収容した後、蓋材となる他方のフィルムを底材に重ねて脱気すると共に、一対の上記フィルムの当接部分をヒートシールして構成された包装形態である。
【0141】
本実施形態の包装体は、上記のようにして得られた深絞り包装体が、さらに、後述するように、水圧を利用してプレス(本明細書においては、単に「水圧プレス」と称することがある)されたものであってもよい。
【0142】
図2は、本実施形態の積層フィルムを備えた包装体の一例を模式的に示す断面図である。
ここに示す包装体101は、蓋材8と、底材10と、を備えた深絞り包装体である。
底材10は、
図1に示す積層フィルム1を深絞り成形して得られたものである。
なお、
図2中の底材10においては、これを構成している積層フィルム1中の各層の区別を省略している。
【0143】
底材10には、凹部100が形成されている。
底材10の一方の面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)10bのうち、凹部100が形成されていない領域と、蓋材8の一方の面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)8bとは、いずれもシール面であり、互いに対向している。
そして、包装体101は、蓋材8及び底材10のシールによって構成されている。より具体的には、底材10の凹部100を除く領域の第2面10bと、蓋材8の第2面8bは、重ね合わされ、互いにこれらの周縁部近傍の領域においてシールされている。その結果、底材10の凹部100の領域において、底材10の第2面10bと、蓋材8の第2面8bと、の間に、収納部が形成されている。そして、この収納部内に、収納物9が収納されている。
【0144】
底材10は積層フィルム1を用いて構成されている。したがって、底材10の第2面10bは、積層フィルム1中の内層11の第2面11bと同じであり、底材10の他方の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)10aは、積層フィルム1中の外層14の第1面14aと同じである。
【0145】
収納物9は、その表面9aに段差(凸部及び凹部)を有していても、積層フィルム1が成形性に優れているため、包装体101中の底材10は、収納物9への追従性が高くなっている。例えば、収納物9に対しては、その平坦部だけでなく凸部及び凹部に対しても、底材10の密着性が高くなっている。なお、
図2においては、収納物9における段差の図示を省略している。
【0146】
また、収納物9の凸部及び凹部に接触している樹脂フィルムは、その厚さが薄くなる(薄肉部となる)ため、通常はピンホール(破れ)が発生し易いが、積層フィルム1が耐ピンホール性に優れているため、底材10のうち、収納物9の凸部及び凹部に接触している部位においては、ピンホールの発生が抑制される。
【0147】
包装体101において、底材10は、収納物9へ追従することによって、凸状部19a及び凹状部19bを有しているが、収納物9の前記段差(凸部及び凹部)に対する部位と同様に、底材10のこれら凸状部19a及び凹状部19bにおいても、底材10の収納物9に対する密着性は高くなっており、底材10におけるピンホールの発生が抑制される。
【0148】
底材10のその平坦部における厚さは、先に説明した積層フィルム1の厚さと同様である。
【0149】
蓋材8は、通常の深絞り包装体で使用可能なものであればよい。このような蓋材8としては、例えば、単層又は複数層の樹脂フィルムからなるものが挙げられる。
【0150】
ここまでは、本実施形態の包装体として、積層フィルム1を備えたものを例に挙げて説明したが、本実施形態の包装体は、上述の本発明の一実施形態に係る、積層フィルム1以外の積層フィルムを備えたものであってもよい。
また、ここまでは、本実施形態の包装体として、深絞り包装体を例に挙げて説明したが、本実施形態の包装体は、深絞り包装体以外の、他の包装体であってもよい。
【0151】
<<包装体の製造方法>>
前記包装体は、例えば、前記積層フィルムと、前記積層フィルム以外の他の樹脂フィルムと、によって、包装対象物(換言すると収納物)を収納するための収納部を形成しながら、包装対象物を収納して行き、これらフィルムの前記収納部以外の領域を加熱シールすることにより、製造できる。
深絞り包装体は、上記の製造方法において、前記積層フィルムを包装対象物に適した形に深絞り成形して底材とし、他の樹脂フィルムを蓋材として、収納部に包装対象物を収納し、収納部内を脱気しながら、これら底材と蓋材をヒートシールすることにより、製造できる。
【0152】
得られた深絞り包装体は、水圧プレス技術を適用するのに好適である。
水圧プレス技術としては、例えば、熱間等方圧プレス(Hot Isostatic Press:HIP)、温間等方圧プレス(Warm Isostatic Press:WIP)、冷間等方圧プレス(Cold Isostatic Press:CIP)等の公知の技術を適用できる。また、水圧プレス技術としては、食品用高圧処理装置(High Pressure Processing:HPP)を用いた殺菌包装技術等の公知の技術も適用できる。
水圧プレスされた前記包装体においても、前記底材を備えている(前記積層フィルムを用いている)ことにより、高い耐ピンホール性が維持される。例えば、段差を有する収納物を深絞り包装した包装体においても、収納物の平坦な部分は言うまでもなく、段差を有する部分においても、ピンホールの発生が抑制される。
【0153】
前記深絞り包装体において水圧プレスを行う場合、深絞り包装体に加える圧力は、例えば、100~1000MPaであることが好ましい。この場合の水(換言すると加圧媒体)の温度は、特に限定されないが、水圧プレス時の包装体(積層フィルム)の追従性をより高めるためには、例えば、50~100℃であることが好ましい。
【0154】
本実施形態においては、水以外の液状物を加圧媒体として用いてもよい。すなわち、水圧プレスに代えて、水以外の液状物を加圧媒体として用いる加圧プレスを行ってもよい。
【実施例0155】
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0156】
[実施例1]
<<積層フィルムの製造>>
以下に示す手順により、
図1に示す構成の積層フィルムを製造した。
すなわち、内層を構成する樹脂として、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)(プライムポリマー社製「ウルトゼックス2022L」、密度0.919g/cm
3、融点120℃、メルトフローレート2g/10min)を用意した。
柔軟層を構成する樹脂として、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)(三井・ダウポリケミカル社製「エバフレックス(登録商標)V5716C」、酢酸ビニル含有量10モル%、融点93℃、メルトフローレート3g/10min)を用意した。
第1接着層及び第2接着層を構成する樹脂として、酸変性ポリエチレン(酸変性PE、接着性樹脂、三井化学社製「アドマー(登録商標)NF536」)を用意した。
耐ピンホール層を構成する樹脂として、6-ナイロンと66-ナイロンとのコポリマー(Ny6/66)(宇部興産社製「5023」、融点196℃)を用意した。
外層を構成する樹脂として、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)(クラレ社製「エバール(登録商標)E173B」、エチレン含有量44モル%)を用意した。
アンチブロッキング剤として、シリカ(AB(1))(アドマテックス社製「アドマファインSO-C5」、平均粒子径1.5μm)を用意した。
【0157】
前記LLDPEと前記AB(1)を混合することにより、内層形成用組成物を製造した。前記内層形成用組成物における、前記内層形成用組成物の総質量に対する、前記AB(1)の含有量の割合は、1質量%であった。
【0158】
前記内層形成用組成物と、前記EVAと、前記酸変性PEと、前記Ny6/66と、前記酸変性PEと、EVOHとを、この順で共押出し、直ちに、押し出されたフィルムの内層側にエアナイフから風を当てて、前記フィルムの外層側を冷却ロールのロール面に押し当てながら、前記フィルムを前記冷却ロールで巻き取った。
以上により、内層(厚さ24μm)と、柔軟層(厚さ102μm)と、第1接着層(厚さ23μm)と、耐ピンホール層(厚さ42μm)と、第2接着層(厚さ20μm)と、外層(厚さ36μm)と、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された積層フィルム(厚さ247μm)のロールを得た。
【0159】
<<積層フィルムの評価>>
<積層フィルムの巻きずれの抑制効果の評価>
上記で得られた積層フィルムのロールに対して、そのロール面を指で擦ったとき、及びその端面を指で強く押したときに、それぞれロールの状態を確認し、下記基準に従って、積層フィルムの巻きずれの抑制効果を評価した。結果を表1に示す。
[評価基準]
A:ロール面を指で擦ったとき、及び端面を指で強く押したとき、のいずれの場合も、巻きずれが生じなかった。
B:ロール面を指で擦ったときには、巻きずれが生じなかったが、端面を指で強く押したときには、巻きずれが生じた。又は、ロール面を指で擦ったときには、巻きずれが生じたが、端面を指で強く押したときには、巻きずれが生じなかった。
C:ロール面を指で擦ったとき、及び端面を指で強く押したとき、のいずれの場合も、巻きずれが生じた。
【0160】
<内層の第2面のSaの測定>
三次元非接触表面形状計測システム(菱化システム社製「VertScan(登録商標) R3300H」)を用いて、上記で得られた積層フィルムについて、ISO25178に準拠して、内層の第2面の算術平均高さ(Sa)を測定した。結果を表1に示す。
【0161】
<外層の第1面のSaの測定>
三次元非接触表面形状計測システム(菱化システム社製「VertScan(登録商標) R3300H」)を用いて、上記で得られた積層フィルムについて、ISO25178に準拠して、外層の第1面の算術平均高さ(Sa)を測定した。結果を表1に示す。
【0162】
<第1試験片の貫通エネルギーの測定>
上記で得られた積層フィルムから、大きさが100mm×100mmの切片を切り出し、これを第1試験片とした。
落錘衝撃試験機(インストロン社製)に前記第1試験片をセットした。このとき、第1試験片の外層の第1面を上向きで水平にして、前記落錘衝撃試験機中に第1試験片を固定した。
次いで、25℃の温度条件下で、前記第1試験片の外層の第1面に対して、直径10mmの球状の錘(ストライカー)を2.7m/sの速度で衝突させ、前記錘が前記第1試験片を貫通するのに必要な貫通エネルギーを、JIS K7124-2:1999(ISO 7765-2:1994)に準拠して算出した。すなわち、第1試験片の破壊時間までに第1試験片に加えられる力積Pを前記式(I)により算出し、次いで、第1試験片の破壊までに第1試験片に与えられる貫通エネルギーWを前記式(II)により算出した。
このエネルギー量の算出を5枚の第1試験片で行い(エネルギー量の算出を5回行い)、それら算出値の平均値を、第1試験片の前記貫通エネルギーとして採用した。結果を表1に示す。
【0163】
<第2試験片の引張破断強度の測定>
上記で得られた積層フィルムから、1号ダンベル形の第2試験片を作製した。この第2試験片では、その長さ方向を積層フィルムのMD方向と一致させた。
オートグラフ試験機を用いて、この第2試験片の、その長さ方向において40mm以上離れた2つの部位を保持(固定)した。そして、25℃の温度条件下で、JIS Z1702に準拠して、標線間距離を40mmとして、第2試験片の幅が10mm、長さが40mm以上の部位を、引張速度500mm/minで、第2試験片の長さ方向に引っ張り、第2試験片が破断するまでに測定された引張荷重の最大値を引張破断強度として採用した。
別途、第2試験片として、その長さ方向を積層フィルムのTD方向と一致させたものを作製し、上記と同じ方法で、引張破断強度を測定した。
これらの結果を表1に示す。
【0164】
<第3試験片のヤング率の測定>
上記で得られた積層フィルムから、1号ダンベル形の第3試験片を作製した。この第3試験片では、その長さ方向を積層フィルムのMD方向と一致させた。
オートグラフ試験機を用いて、この第3試験片の、その長さ方向において40mm以上離れた2つの部位を保持(固定)した。そして、25℃の温度条件下で、JIS K7127に準拠して、標線間距離を40mmとして、第3試験片の幅が10mm、長さが40mm以上の部位を、引張速度2mm/minで、第3試験片の長さ方向に引っ張り、第3試験片における引張応力及びひずみ量を測定した。そして、これら測定値から第3試験片のヤング率を算出した。
別途、第3試験片として、その長さ方向を積層フィルムのTD方向と一致させたものを作製し、上記と同じ方法で、ヤング率を測定した。
これらの結果を表1に示す。
【0165】
<積層フィルムの深絞り成形性の評価>
成形型として、その側面と底面が曲面(曲率半径3mm)で連結されている、絞り深さが12mmのものを用い、成型機として深絞り包装機(ムルチバック社製)を用いて、成形温度80℃、加熱時間1.5秒、圧空時間1.5秒の条件で、上記で得られた積層フィルムを深絞り成形した。このとき、積層フィルム中の外層側を成形型に対向させて、配置した。
また、成形温度を80℃に代えて、90℃、100℃及び110℃とした点以外は、上記と同じ方法で、積層フィルムを深絞り成形した。
このように、80℃、90℃、100℃及び110℃の4とおりの成形温度で積層フィルムを深絞り成形し、型どおりに深絞り成形できた成形温度帯を確認し、成形温度帯が100℃以下であった場合には、積層フィルムの深絞り成形性を「A」と判定し、成形温度帯が100℃超(換言すると110℃)であった場合には、積層フィルムの深絞り成形性を「B」と判定した。結果を表1に示す。
【0166】
<積層フィルムの溝埋め込み性の評価>
ステンレス鋼板の表面に、深さ50μm、幅2mmの溝を形成した。
上記で得られた積層フィルムを、この溝を形成したステンレス鋼板の表面に加熱プレスした。このとき、積層フィルムの加熱温度を90℃とし、積層フィルムに加える圧力を100MPaとした。そして、積層フィルムの外層側を、前記ステンレス鋼板の表面に対向させて、配置した。
次いで、得られた積層フィルムの加熱プレス体を観察し、ステンレス鋼板の前記溝に追従して成形できた場合には、積層フィルムの溝埋め込み性を「A」と判定し、ステンレス鋼板の前記溝に追従して成形できなかった場合には、積層フィルムの溝埋め込み性を「B」と判定した。結果を表1に示す。
【0167】
<<積層フィルムの製造及び評価>>
[実施例2~5、比較例1~2]
積層フィルムの各層を形成するための樹脂又は組成物の使用量を変更することで、各層の厚さを表1又は表2に示すように変更した点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、積層フィルムを製造し、評価した。結果を表1又は表2に示す。
【0168】
[実施例6]
耐ピンホール層を構成する樹脂として、6-ナイロン(Ny6)(宇部興産社製「1030B2」、融点225℃)と、非晶質ナイロン(Ny(1))(三井・デュポンポリケミカル社製「シーラーPA」、メルトフローレート3.5g/10min、ガラス転移点125℃)を用意した。
そして、前記Ny6と前記Ny(1)を混合することにより、耐ピンホール層形成用組成物を製造した。前記耐ピンホール層形成用組成物における、前記耐ピンホール層形成用組成物の総質量に対する、前記Ny6の含有量の割合は50質量%であり、前記Ny(1)の含有量の割合は50質量%であった。
そして、Ny6/66に代えて、前記耐ピンホール層形成用組成を用いた点と、積層フィルムの各層を形成するための樹脂又は組成物の使用量を変更することで、各層の厚さを表1に示すように変更した点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、積層フィルムを製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0169】
[実施例7]
耐ピンホール層を構成する樹脂として、Ny6/66に代えてNy6を用いた点と、積層フィルムの各層を形成するための樹脂又は組成物の使用量を変更することで、各層の厚さを表2に示すように変更した点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、積層フィルムを製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0170】
[比較例3~4]
内層形成用組成物の製造時に、アンチブロッキング剤として、前記AB(1)に代えて、同量のシリカ(AB(2))(デンカ社製「FB-D5」、平均粒子径4.7μm)を用いた点と、積層フィルムの各層を形成するための樹脂又は組成物の使用量を変更することで、各層の厚さを表2に示すように変更した点、以外は、実施例1の場合と同じ方法で、積層フィルムを製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0171】
【0172】
【0173】
上記結果から明らかなように、実施例1~7においては、積層フィルムの巻きずれが抑制されていた。実施例1~7においては、内層の第2面のSaが0.11~0.55μmであり、外層の第1面のSaが0.08~0.69μmであった。
【0174】
さらに、実施例1~7においては、積層フィルムの深絞り成形性と溝埋め込み性が高く、成形性が高かった。実施例1~7においては、ナイロンを含む耐ピンホール層の厚さが42~109μmであった。また、実施例1~7においては、第3試験片のMD方向のヤング率が355MPa以上(355~738MPa)であり、第3試験片のTD方向のヤング率が356MPa以上(356~683MPa)であった。
【0175】
さらに、実施例1~7においては、第1試験片の貫通エネルギーが0.61J以上(0.61~2.36J)であり、第2試験片のMD方向の引張破断強度が85N以上(85~128N)であり、第2試験片のTD方向の引張破断強度が79N以上(79~136N)であった。これらの結果から、実施例1~7の積層フィルムの耐ピンホール性は、高いと判断できた。
【0176】
これに対して、比較例1においては、積層フィルムの溝埋め込み性が不十分であった。比較例1においては、耐ピンホール層の厚さが薄過ぎたため、ステンレス鋼板の表面の溝の近傍で積層フィルム、特に積層フィルム中の内層の流動が不十分であったと推測された。
さらに、比較例1においては、耐ピンホール層の厚さが19μmであり、薄過ぎた。そのため、第1試験片の貫通エネルギーが0.42Jであり、第2試験片のMD方向及びTD方向の引張破断強度がいずれも、41Nであった。これらの結果から、比較例1の積層フィルムの耐ピンホール性は、不十分であると判断できた。
【0177】
比較例2においては、積層フィルムの深絞り成形性と溝埋め込み性がいずれも不十分であり、成形性が不十分であった。比較例2においては、耐ピンホール層の厚さが150μmであり、厚過ぎたため、積層フィルムが硬過ぎ、柔軟性が不十分であったと推測された。
【0178】
比較例3においては、積層フィルムの巻きずれが抑制されていなかった。比較例3においては、内層の第2面のSaが0.90μmであった。
さらに、比較例3においては、耐ピンホール層の厚さが29μmであり、薄過ぎた。そのため、第1試験片の貫通エネルギーが0.6Jであり、第2試験片のTD方向の引張破断強度が71Nであった。これらの結果から、比較例3の積層フィルムの耐ピンホール性は、不十分であると判断できた。
【0179】
比較例4においても、積層フィルムの巻きずれが抑制されていなかった。比較例4においては、外層の第1面のSaが1.50μmであった。
さらに、比較例4においては、耐ピンホール層の厚さが26μmであり、薄過ぎた。そのため、第1試験片の貫通エネルギーが0.59Jであり、第2試験片のMD方向の引張破断強度が61Nであり、TD方向の引張破断強度が59Nであった。これらの結果から、比較例4の積層フィルムの耐ピンホール性も、不十分であると判断できた。
本発明は、包装体として利用可能であり、特に深絞り包装体として利用するのに好適である。さらに、本発明は、水圧プレスを行うための、又は水圧プレスを行った深絞り包装体として利用するのにも好適である。