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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156888
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】力覚センサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/1627 20200101AFI20221006BHJP
【FI】
G01L5/1627
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060808
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000105659
【氏名又は名称】日本電産コパル電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 嵩幸
【テーマコード(参考)】
2F051
【Fターム(参考)】
2F051AA10
2F051AB09
2F051BA05
2F051BA07
2F051DA03
2F051DB03
(57)【要約】

【課題】 複数のブリッジ回路の出力電圧を十分に利用して検出精度を向上させることが可能な力覚センサを提供する。
【解決手段】 第1構造体と第2構造体との間に設けられた複数のブリッジ回路51、51…51は、少なくとも3つの歪センサの2つの歪ゲージ群の抵抗値の変化を複数の電圧値として出力する。演算部61は、複数のブリッジ回路の出力電圧を演算する。演算部は、行列式を用いて、3つの力と3つのモーメントを演算し、係数の行列のx方向とy方向の力、z軸回りのモーメントに対応する特定の係数が0以外の値である。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1構造体と、
第2構造体と、
前記第1構造体と前記第2構造体を接続する複数の第3構造体と、
前記複数の第3構造体と異なる位置で、前記第1構造体と第2構造体との間に設けられ、それぞれ2つの歪ゲージ群を有する少なくとも3つの歪センサと、
前記少なくとも3つの歪センサの前記2つの歪ゲージ群の抵抗値の変化を複数の電圧値として出力する複数のブリッジ回路と、
前記複数のブリッジ回路の出力電圧を演算する演算部と、
を具備し、
前記演算部は、次式を用いて、3つの力と3つのモーメントを演算し、
【数1】

ここで、
Fxはx方向の力、Fyはy方向の力、Fzはz方向の力、Mxはx軸回りのモーメント、Myはy軸回りのモーメント、Mzはz軸回りのモーメント、Cは係数の行列、V1~Vmは、m個のブリッジ回路の出力電圧であり、前記係数の行列Cが次式で示され、
【数2】

ここで、
11~C6mは、係数の行列Cの係数
11~F66は、Fx~Mzが印加された時、複数の歪ゲージ群に印加される力、
11~Vm6は、Fx~Mzが印加された時のm個のブリッジ回路の出力電圧であり、
前記ブリッジ回路の数mが6であるとき、係数の行列Cの係数C14、C16、C22、C24、C26、C61が0以外の値であることを特徴とする力覚センサ。
【請求項2】
第1構造体と、
第2構造体と、
前記第1構造体と前記第2構造体を接続する複数の第3構造体と、
前記複数の第3構造体と異なる位置で、前記第1構造体と第2構造体との間に設けられ、それぞれ2つの歪ゲージ群を有する少なくとも3つの歪センサと、
前記少なくとも3つの歪センサの前記2つの歪ゲージ群の抵抗値の変化を複数の電圧値として出力する複数のブリッジ回路と、
前記複数のブリッジ回路の出力電圧を演算する演算部と、
を具備し、
前記演算部は、次式を用いて、3つの力と3つのモーメントを演算し、
【数3】

ここで、
Fxはx方向の力、Fyはy方向の力、Fzはz方向の力、Mxはx軸回りのモーメント、Myはy軸回りのモーメント、Mzはz軸回りのモーメント、Cは係数の行列、V1~Vmは、m個のブリッジ回路の出力電圧であり、前記係数の行列Cが次式で示され、
【数4】

ここで、
11~C6mは、係数の行列Cの係数
11~F66は、Fx~Mzが印加された時、複数の歪ゲージ群に印加される力、
11~Vm6は、Fx~Mzが印加された時のm個のブリッジ回路の出力電圧であり、
前記ブリッジ回路の数mが8であるとき、係数の行列Cの係数C12、C16、C24、C28が0以外の値であることを特徴とする力覚センサ。
【請求項3】
前記歪センサのそれぞれは、前記第1構造体、第2構造体、及び第3構造体より薄い金属板により構成された起歪体を含み、前記複数の歪ゲージは、前記起歪体の長手方向に対して斜めに配置された複数の第1歪ゲージ群と、前記起歪体の長手方向と平行に配置された複数の第2歪ゲージ群と、を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の力覚センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、例えばロボットアーム等に用いられる力覚センサに関する。
【背景技術】
【0002】
力覚センサは、例えばロボットアーム等に用いられ、直交する3軸(x、y、z)に関して、力(Fx、Fy、Fz)とモーメント(Mx、My、Mz)を検出する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-48915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
力覚センサは、6軸方向、例えば3軸方向及び3軸回り方向に変形可能な複数の歪センサを具備している。各歪センサは、複数の歪ゲージを含み、複数の歪ゲージは、複数のブリッジ回路を構成している。複数のブリッジ回路の出力電圧を用いて、力(Fx、Fy、Fz)とモーメント(Mx、My、Mz)が検出される。しかし、従来の力覚センサは、複数のブリッジ回路の出力電圧が十分に利用されていなかった。
【0005】
本実施形態は、複数のブリッジ回路の出力電圧を十分に利用して検出精度を向上させることが可能な力覚センサを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態の力覚センサは、第1構造体と、第2構造体と、前記第1構造体と前記第2構造体を接続する複数の第3構造体と、前記複数の第3構造体と異なる位置で、前記第1構造体と第2構造体との間に設けられ、それぞれ2つの歪ゲージ群を有する少なくとも3つの歪センサと、前記少なくとも3つの歪センサの前記2つの歪ゲージ群の抵抗値の変化を複数の電圧値として出力する複数のブリッジ回路と、前記複数のブリッジ回路の出力電圧を演算する演算部と、を具備し、前記演算部は、次式を用いて、3つの力と3つのモーメントを演算し、
【0007】
【数1】
【0008】
ここで、
Fxはx方向の力、Fyはy方向の力、Fzはz方向の力、Mxはx軸回りのモーメント、Myはy軸回りのモーメント、Mzはz軸回りのモーメント、Cは係数の行列、V1~Vmは、m個のブリッジ回路の出力電圧であり、前記係数の行列Cが式(2)で示され、
【0009】
【数2】
【0010】
ここで、
11~C6mは、係数の行列Cの係数
11~F66は、Fx~Mzが印加された時、複数の歪ゲージ群に印加される力、
11~Vm6は、Fx~Mzが印加された時のm個のブリッジ回路の出力電圧であり、
前記ブリッジ回路の数mが6であるとき、係数Cの行列の係数C14、C16、C22、C24、C26、C61が0以外の値である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る力覚センサを示す斜視図。
図2図1に示す力覚センサを分解して示す斜視図。
図3図2に示す力覚センサの一部を組み立てた状態を示す斜視図。
図4図2に示す力覚センサの一部をさらに組み立てた状態を示す斜視図。
図5図2に示す力覚センサの一部をさらに分解して示す斜視図。
図6】本実施形態に係る弾性体を取り出して示す平面図。
図7】本実施形態に係る歪センサを模式的に示す図。
図8】ブリッジ回路の一例を示す回路図。
図9】本実施形態に係る力覚センサの制御系を概略的に示す構成図。
図10】3つの歪センサ19-1、19-2、19-3を概略的に示す平面図。
図11】各歪ゲージ群に力やモーメントが印加された場合の張力又は圧縮力を概略的に示す図。
図12】本実施形態の変形例を概略的に示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。図面において、同一部分には同一符号を付している。
【0013】
図1乃至図6を用いて、本実施形態に係る力覚センサ10の構成について説明する。
力覚センサ10は、例えばロボットアーム等に用いられ、X、Y、Z軸方向の力(Fx、Fy、Fz)、及びX、Y、Z軸回りのトルク(モーメント:Mx、My、Mz)を検出する。
【0014】
図1図2に示すように、力覚センサ10は、円筒状の本体11と、本体11を覆う円筒状のカバー12とを備えている。カバー12の内部には、本体11に対して動作可能な可動体としての取付けプレート13が設けられ、取付けプレート13は、複数のネジ14によりカバー12に固定される。カバー12及び取付けプレート13は、本体11に対して動作可能に設けられる。
【0015】
本体11は、図示せぬロボットアームの例えば本体に固定される。取付けプレート13は、ロボットアームの例えばハンド部分に固定される。
【0016】
本体11とカバー12との間には、リング状のシール部材15が設けられている。シール部材15は、弾性材、例えばゴム製又は発泡部材により形成され、本体11とカバー12との間隙をシールするとともに、カバー12が本体11に対して動作可能としている。
【0017】
本体11と取付けプレート13との間には、弾性体16が設けられる。弾性体16は、例えば金属製であり、後述するように、1つの第1構造体16-1と、複数に分かれた第2構造体16-2と、第1構造体16-1と第2構造体16-2との間に設けられた複数の第3構造体16-3等と、を具備する。複数の第2構造体16-2は、第1構造体16-1の周囲に等間隔に配置される。
【0018】
本実施形態において、弾性体16は、例えば3つの第2構造体16-2を具備している。しかし、第2構造体16-2の数は3つに限定されるものではなく、3つ以上であってもよい。また、本実施形態を、力覚センサ以外の例えばトルクセンサに適用する場合、第2構造体16-2の数は、2つであってもよい。
【0019】
図3に示すように、第1構造体16-1は、周囲に6つの第1弾性部16-4を具備している。第1弾性部16-4は、第1構造体16-1の周囲に沿い、直線状の形状を有している。
【0020】
第2構造体16-2のそれぞれは、略U字状の2つの第2弾性部16-5と、2つの第2弾性部16-5の間で、2つの第2弾性部16-5を繋ぐ直線上の中継部16-6を具備している。
【0021】
第3構造体16-3は、一端部が第1弾性部16-4に接続され、他端部が中継部16-6に接続される。第1構造体16-1と1つの第2構造体16-2との間に設けられた2つの第3構造体16-3は、平行に配置される。
【0022】
第2構造体16-2は、複数のネジ17により本体11に固定され、第1構造体16-1は、図2図4に示すように、複数のネジ18により取付けプレート13に固定される。
【0023】
図2図3に示すように、歪センサ19は、第1構造体16-1と中継部16-6との間に設けられる。具体的には、歪センサ19の一端部は、固定プレート20と第1弾性部16-4の裏面に挿入されたネジ21により、2つの第1弾性部16-4の間の第1構造体16-1に固定され、歪センサ19の他端部は固定プレート22と中継部16-6の裏面に挿入されたネジ23により、中継部16-6の中央部に固定される。歪センサ19は、後述するように、金属製の起歪体の表面に複数の歪ゲージが配置されている。
【0024】
取付けプレート13及びカバー12が外力により、本体11に対して動作すると、第3構造体16-3、第1弾性部16-4、第2弾性部16-5、及び中継部16-6が変形する。これに伴い、歪センサ19の起歪体が変形し、歪ゲージから電気信号が出力される。
【0025】
各歪センサ19の各歪ゲージは、後述するように、ブリッジ回路を構成し、ブリッジ回路により、X、Y、Z軸方向の力(Fx、Fy、Fz)、及びX、Y、Z軸回りのトルク(モーメント:Mx、My、Mz)が検出される。
【0026】
図2に示すように、本体11には、弾性体16を外力から保護する複数のストッパ30が設けられている。各ストッパ30は、円筒状のストッパ部材31と、固定部材としてのネジ32と、取付けプレート13に設けられた複数の開口部13aと、により構成される。
【0027】
本実施形態は、3つのストッパ30を具備する場合を示している。しかし、ストッパ30の数は、3つに限定されるものではなく、3つ以上であってもよい。3つのストッパ30は、3つの第2構造体16-2の相互間にそれぞれ配置される。
【0028】
ストッパ30を第2構造体16-2の相互間に配置することにより、弾性体16及び力覚センサ全体の直径及び外形の大型化を抑制することが可能である。
【0029】
本体11の表面で、3つの第2構造体16-2の相互間に対応する位置には、3つ突起11aがそれぞれ設けられている。
【0030】
図4に示すように、ストッパ部材31は、取付けプレート13の開口部13a内に挿入された状態で、ネジ32により本体11の突起11aに固定される。ストッパ部材31の外径は、後述するように、開口部13aの内径より若干小さく設定されている。取付けプレート13が本体11に対して動作し、ストッパ部材31の外面が開口部13aの内面に当接すると、取付けプレート13の動作が阻止され、弾性体16及び歪センサ19の起歪体の破壊が防止される。
【0031】
図5に示すように、本体11の裏面部には、印刷基板41、複数のフレキシブル印刷基板42、裏蓋43、リード線アセンブリ44、中空管45が設けられている。印刷基板41は、ブリッジ回路に電源を供給したり、ブリッジ回路の出力信号を処理したりする図示せぬ処理回路などを具備している。
【0032】
複数のフレキシブル印刷基板42の一端部は、図2に示すように、本体11の上面側に配置され、各歪センサ19に接続される。複数のフレキシブル印刷基板42の他端部は、印刷基板41の裏面において、処理回路などに接続される。複数のフレキシブル印刷基板42は、歪ゲージに電源を供給したり、歪ゲージからの信号を処理回路に供給したりする。
【0033】
リード線アセンブリ44は、印刷基板41に接続され、処理回路に電源を供給したり、処理回路からの信号を伝送したりする。裏蓋43は、複数のネジにより本体11に固定され、印刷基板41をカバーする。
【0034】
本体11、カバー12、取付けプレート13、及び弾性体16の第1構造体16-1、印刷基板41、裏蓋43の中央部には、開口部が連通して設けられており、中空管45は、この開口部内に設けられる。
【0035】
図2図3に示すように、中空管45の一端部は、裏蓋43、印刷基板41、第1構造体16-1を貫通し、第1構造体16-1の表面に突出される。中空管45の第1構造体16-1の表面に突出された一端部には、リング状のシール部材26が設けられる。このシール部材26は、例えばゴム又は発泡材料により形成され、取付けプレート13の開口部と中空管25の一端部との間隙をシールする。これにより、カバー12の外部から取付けプレート13の内部に塵埃が侵入することが防止される。
【0036】
(弾性体の構成)
図6は、弾性体16と歪センサ19を示している。前述したように、弾性体16は、1つの第1構造体16-1と、3つの第2構造体16-2、複数の第3構造体16-3、第1構造体16-1に設けられた6つの第1弾性部16-4、3つの第2構造体16-2のそれぞれに設けられた2つの第2弾性部16-5、及び2つの第2弾性部16-5の間に設けられた中継部16-6を具備している。
【0037】
第2弾性部16-5は、略U字状であり、第2構造体16-2に比べて低い曲げ又はねじれ剛性を有している。第1弾性部16-4は、第2弾性部16-5と同程度以下のねじれ剛性を有している。
【0038】
歪センサ19は、2つの第1弾性部16-4の間に位置する第1構造体16-1と、中継部16-6の中央部との間に設けられる。さらに、歪センサ19は、2つの第3構造体16-3の間に位置され、2つの第3構造体16-3と平行に配置される。
【0039】
第1弾性部16-4、第2弾性部16-5、及び中継部16-6の厚みは、第1構造体16-1、第2構造体16-2、第3構造体16-3の厚みと等しく、第1弾性部16-4、第2弾性部16-5、及び中継部16-6の幅Wは、第3構造体16-3の幅と等しくされている。第2弾性部16-5は、U字状部の長さL1及びL2が長い程、及びU字状部の幅Wが細い程、柔軟であり、第1弾性部16-4及び中継部16-6も、幅が細い程、柔軟である。
【0040】
歪センサ19を構成する起歪体19aの厚みは、第1構造体16-1、第2構造体16-2、第3構造体16-3、第1弾性部16-4、第2弾性部16-5、及び中継部16-6の厚みより薄く、起歪体19aの幅は、第3構造体16-3、第1弾性部16-4、第2弾性部16-5、及び中継部16-6の幅より広い。但し、第1弾性部16-4、第2弾性部16-5、中継部16-6、第3構造体16-3の厚み、幅の寸法、及び大小関係は、必要に応じて変更できる。
【0041】
第2構造体16-2の構成は、これに限定されるものではなく、3つの第2構造体16-2は、破線で示すように、例えば環状に一体的に構成されていてもよい。
【0042】
(歪センサの構成)
図7は、歪センサ19の一例を示している。前述したように、歪センサ19は、起歪体19aと、起歪体19aの表面に設けられた複数の歪ゲージR1~R8により構成される。起歪体19aは、金属により構成され、その厚みは、幅より薄くされている。このため、起歪体19aは、厚み方向に変形しやすく、幅方向に変形し難い。
【0043】
起歪体19aの一端部は第1構造体16-1に設けられ、他端部は第2構造体16-2の中継部16-6に設けられる。
【0044】
起歪体19aの表面に例えば薄膜抵抗体からなる歪ゲージR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8が設けられる。Fx、Fy、Mzを検出するための歪ゲージR1、R2、R3、R4は、起歪体19aの長手方向に対して斜めに配置される。具体的には、歪ゲージR1、R2、R3、R4は、起歪体19aの対角線に沿って、起歪体19aの角部に配置される。一方、Mx、My、Fzを検出するための歪ゲージR5、R6、R7、R8は、起歪体19aの長手方向に対して平行で、起歪体19aの中央部に配置される。さらに、歪ゲージR1、R3、R5、R8は、起歪体19aの長手方向の一端部近傍に配置され、歪ゲージR2、R4、R6、R7は、起歪体19aの長手方向の他端部近傍に配置される。
【0045】
図8は、上記歪ゲージR1~R8を用いたブリッジ回路の一例を示している。歪ゲージR1、R2、R3、R4は、第1ブリッジ回路BC1を構成し、歪ゲージR5、R6、R7、R8は、第2ブリッジ回路BC2を構成する。
【0046】
第1ブリッジ回路BC1は、電源Vと接地GNDとの間に歪ゲージR2と歪ゲージR1の直列回路と、歪ゲージR4と歪ゲージR3の直列回路が配置される。歪ゲージR2と歪ゲージR1の接続ノードから出力電圧Vout+が出力され、歪ゲージR4と歪ゲージR3の接続ノードから出力電圧Vout-が出力される。出力電圧Vout+及び出力電圧Vout-は、演算増幅器OP1に供給され、演算増幅器OP1の出力端から出力電圧Voutが出力される。
【0047】
第2ブリッジ回路BC2は、電源Vと接地GNDとの間に歪ゲージR6と歪ゲージR5の直列回路と、歪ゲージR8と歪ゲージR7の直列回路が配置される。歪ゲージR6と歪ゲージR5の接続ノードから出力電圧Vout+が出力され、歪ゲージR8と歪ゲージR7の接続ノードから出力電圧Vout-が出力される。出力電圧Vout+及び出力電圧Vout-は、演算増幅器OP2に供給され、演算増幅器OP2の出力端から出力電圧Voutが出力される。
【0048】
以下、第1ブリッジ回路BC1と演算増幅器OP1と、第2ブリッジ回路BC2と演算増幅器OP2とを、それぞれ単にブリッジ回路と称す。
【0049】
本実施形態の力覚センサ10は、3つの歪センサ19を具備し、各歪センサ19に一対のブリッジ回路が配置されている。このため、力覚センサ10は、合計6つのブリッジ回路を有している。
【0050】
図9は、力覚センサ10の制御系の構成を示している。複数のブリッジ回路51、51~51の出力電圧V、V…Vは、演算部61に供給される。本実施形態の場合、m=6である。演算部61は、例えばマイクロコンピュータにより構成され、マイクロコンピュータは、マイクロプロセッサやメモリ、及びソフトウェア又はファームウェアを含んでいる。しかし、演算部61は、これに限定されるものではない。演算部61は、ブリッジ回路51、51~51の出力電圧V、V…VからFx、Fy、Mz、Mx、My、Fzを演算する。
【0051】
(演算動作)
先ず、原理について説明する。
図10は、3つの歪センサ19(19-1、19-2、19-3)を概略的に示している。ここで、歪センサ19-1の角部の歪ゲージR1、R2、R3、R4を歪ゲージ群(1)で示し、中央部の歪ゲージR5、R6、R7、R8を歪ゲージ群(2)で示す。歪センサ19-2の角部の歪ゲージR1、R2、R3、R4を歪ゲージ群(3)で示し、中央部の歪ゲージR5、R6、R7、R8を歪ゲージ群(4)で示す。歪センサ19-3の角部の歪ゲージR1、R2、R3、R4を歪ゲージ群(5)で示し、中央部の歪ゲージR5、R6、R7、R8を歪ゲージ群(6)で示す。
【0052】
図11は、歪センサ19-1、19-2、19-3にFx、Fy、Mz、Mx、My、Fzが印加された場合に歪ゲージ群(1)(2)(3)(4)(5)(6)に加わる張力又は圧縮力の大小を概略的に示している。ここで、「T」は、張力が大きいことを示し、「t」は、張力が小さいことを示している。「C」は、圧縮力が大きいことを示し、「c」は、圧縮力が小さいことを示している。「-」は、張力及び圧縮力が印加されないことを示している。
【0053】
例えばFxが印加された場合、歪センサ19-1の角部に配置された歪ゲージ群(1)には、大きな張力が印加され、歪センサ19-2、19-3の角部に配置された歪ゲージ群(3)(5)には、小さな圧縮力が印加される。
【0054】
Fx、Fyについては、歪ゲージ群(1)(3)(5)だけでは、検出できない。具体的には、Fxの場合、歪ゲージ群(1)(3)(5)に印加される張力又は圧縮力(T、c、c)と、Myの場合の歪ゲージ群(1)(3)(5)に印加される張力又は圧縮力(t、c、c)とでは、歪ゲージ群(1)に印加される張力の大きさが異なるだけで、歪ゲージ群(3)(5)に印加される圧縮力が等しいため、FxかMyかを判別できず、歪ゲージ群(2)(4)(6)に印加される張力又は圧縮力を判別することにより、FxかMyかを判別できる。
【0055】
また、Fyの場合、歪ゲージ群(1)(3)(5)に印加される張力又は圧縮力(-、C、T)と、-Mx(-は、モーメントの方向が反対であることを示す)の場合の歪ゲージ群(1)(3)(5)に印加される張力又は圧縮力(-、c、t)とでは、歪ゲージ群(1)には、張力又は圧縮力が印加されず、歪ゲージ群(3)(5)に印加される圧縮力と張力の大きさが異なるだけであるため、Fyか-Mxかを判別できず、歪ゲージ群(2)(4)(6)に印加される張力又は圧縮力を判別することにより、Fyか-Mxかを判別できる。
【0056】
次に、演算部61による、ブリッジ回路51、51~51の出力電圧V、V…Vを用いたFx、Fy、Fz、Mx、My、Mzの演算について説明する。
【0057】
Fx、Fy、Fz、Mx、My、Mzは、式(1)で示すように、ブリッジ回路51、51~51の出力電圧V、V…Vに係数の行列Cを掛けて計算される。
【0058】
【数3】
【0059】
係数の行列Cは、Fxのみを3つの歪センサに印加した時に6つの歪ゲージ群に印加される力F及び6つのブリッジ回路から出力される6つの出力電圧と、Fyのみを3つの歪センサに印加した時に6つの歪ゲージ群に印加される力F及び6つのブリッジ回路から出力される6つの出力電圧と、・・・Mzのみを3つの歪センサに印加した時に6つの歪ゲージ群に印加される力F及び6つのブリッジ回路から出力される6つの出力電圧と、を連立方程式により解くことで求められる。具体的には、係数の行列Cは、式(2)で示される。
【0060】
【数4】
【0061】
式(2)は、Fx~Mzが印加された時に6つの歪ゲージ群に印加される力F11~F66の行列に、Fx~Mzが印加された時に6つのブリッジ回路から出力される電圧V11~Vm6の逆行列を乗算することにより係数の行列Cを求めている。
【0062】
具体的には、力覚センサに印加される力を明確化するため、単軸毎に力を印加する(F11=Fx、F22=Fy、F33=Fz、F44=Mx、F55=My、F66=Mz)。すなわち、力覚センサにFx、Fy、Fz、Mx、My、Mzの1つのみを印加し、6つのブリッジ回路の出力電圧V~Vが測定される。この測定が、Fx、Fy、Fz、Mx、My、Mzのそれぞれに対して行われる。この結果、式(1)で示す6つの行列式が求められる。この6つの行列式から式(2)で示す連立方程式を解くことにより、係数C11~Cm6が演算される。これにより、係数の行列Cが求められる。
【0063】
本実施形態において、係数の行列Cは、式(3)で示される。
【0064】
【数5】
【0065】
上記係数の行列Cを予め求め、この係数の行列Cを用いることにより、力覚センサに印加されるFx~Mzを検出することができる。係数の行列Cにおいて、係数C11、C13、C15、C21、C23、C25、C32、C34、C36、C42、C44、C46、C54、C56、C63、C65は、0以外の値である。
【0066】
しかも、係数の行列Cにおいて、x方向の力Fxとy方向の力Fy、及びz軸回りのモーメントMzに対応する係数のうち、特定の係数C14、C16、C22、C24、C26、C61の値が0以外の値である。このため、これらの係数に対応するブリッジ回路の出力電圧を用いてFx、Fy、Mx、Myの値を高精度に検出することが可能である。
【0067】
すなわち、係数C14、C16、C22、C24、C26、C61は、モーメントMx、Myが印加されたとき、モーメントMx、Myに対応する出力を考慮した係数である。この係数が例えば0である場合、例えば、モーメントMyのみが印加されたにも関わらず、モーメントMyと同時に力Fxも印加されたとして演算されてしまう。これを避けるため、従来、複数の歪ゲージは、Fx、Fy、Fz、Mx、My、Mzに対応する出力がそれぞれ機械的に干渉しない位置に配置される必要があった。この場合、係数C14、C16、C22、C24、C26、C61の値をゼロとすることができるが、弾性体の形状が大型化していた。
【0068】
本実施形態は、モーメントMx、Myに対応する出力を考慮したC14、C16、C22、C24、C26、C61を用いることにより、弾性体16の形状の大型化を防止して、Fx、Fy、Mx、Myの検出精度を向上可能としている。
【0069】
尚、式(4)は、係数の行列Cの各数値の一例を示している。各係数の数値は、変更可能である。
【0070】
【数6】
【0071】
(実施形態の効果)
上記実施形態によれば、第1構造体16-1と3つの第2構造体16-2との間に設けられた3つの歪センサ19と、3つの歪センサ19のそれぞれに設けられた2組の歪ゲージ群の出力信号を6つのブリッジ回路により検出し、6つのブリッジ回路の出力電圧V~Vに係数の行列Cを乗算することによりFx、Fy、Fz、Mx、My、Mzを求めている。しかも、係数の行列Cにおいて、Fx、Fy、Mx、Myに対応する係数のうち、係数C14、C16、C22、C24、C26、C61が0以外の値である。このため、これら係数に対応するブリッジ回路の出力電圧を利用することにより、弾性体の大型化を防止して、Fx、Fy、Mx、Myの値を高精度に検出することが可能である。
【0072】
(変形例)
図12は、本実施形態の変形例を示している。
上記実施形態は、3つの歪センサ19を用いていた。変形例では、4つの歪センサ19が用いられる。同心状に配置された第1構造体16-1と第2構造体16-2は、複数の第3構造体16-3により連結されている。4つの歪センサ19は、複数の第3構造体16-3と異なる位置で、第1構造体16-1と第2構造体16-2との間に設けられている。各歪センサ19の構成は、図7に示すものと同様であり、各歪センサ19により2つのブリッジ回路が構成される。このため、本変形例は、8つのブリッジ回路を具備している。
【0073】
本変形例において、8つのブリッジ回路から8つの出力電圧V~Vが出力され、これら出力電圧V~Vを用いて、力覚センサ10に印加されたFx、Fy、Fz、Mx、My、Mzが検出される。
【0074】
具体的には、上記式(1)、式(2)において、ブリッジ回路の数mが8として計算される。本変形例において、式(2)の係数の行列Cは、式(5)で示される。
【0075】
【数7】
【0076】
本変形例において、係数の行列Cの係数C12、C16、C24、C28の値が0以外の値である。
【0077】
本変形例において、モーメントMxが印加された場合、90°と270°に位置する歪センサ19は、曲げられるのに対して、0°と180°に位置する歪センサ19は、ねじられる。このため、歪ゲージ群(1)(3)(5)(7)でモーメントMxを測定し、係数C12、C16、C24、C28を求めておくことにより、Fx、Fy、Mx、Myの検出精度を向上させることができる。
【0078】
本変形例によれば、係数の行列Cを用いることにより、Fx~Mzを検出することができ、しかも、行列Cの係数C12、C16、C24、C28が0以外の値であるため、これらの係数に対応するブリッジ回路の出力電圧を十分に利用することができ、弾性体の形状の大型化を抑えて、Fx、Fy、Mx、Myの値を高精度に検出することが可能である。
【0079】
その他、本発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0080】
10…力覚センサ、16-1…第1構造体、16-2…第2構造体、16-3…第3構造体、19…歪センサ、19a…起歪体、R1~R8…歪ゲージ、BC1…第1ブリッジ回路、BC2…第2ブリッジ回路、51、51~51…ブリッジ回路、61…演算部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12