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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156917
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】電波反射板
(51)【国際特許分類】
   H01Q 3/46 20060101AFI20221006BHJP
   H01Q 21/06 20060101ALI20221006BHJP
   H01Q 15/14 20060101ALI20221006BHJP
   H01Q 13/08 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
H01Q3/46
H01Q21/06
H01Q15/14 Z
H01Q13/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060858
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沖田 光隆
(72)【発明者】
【氏名】岡 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】新木 盛右
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大一
(72)【発明者】
【氏名】天野 良晃
(72)【発明者】
【氏名】松野 宏己
【テーマコード(参考)】
5J020
5J021
5J045
【Fターム(参考)】
5J020AA03
5J020BA06
5J020BA16
5J020DA03
5J020DA06
5J021AA05
5J021AA09
5J021AA11
5J021AB06
5J021BA02
5J021DB03
5J021GA02
5J021HA01
5J021JA05
5J045AA12
5J045AA21
5J045DA10
5J045FA02
5J045FA08
5J045MA07
(57)【要約】
【課題】 電波の反射波の位相変化量を大きくすることのできる電波反射板を提供する。
【解決手段】 電波反射板REは、間隔を置いてマトリクス状に並べられた複数のパッチ電極PEを有する第1基板と、前記複数のパッチ電極と対向した共通電極CEを有する第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に保持され複数のパッチ電極PEと対向した液晶層LCと、を備える。各々のパッチ電極PEは、第1スロットO1を有している。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交するX軸及びY軸のそれぞれに沿って間隔を置いてマトリクス状に並べられた複数のパッチ電極を有する第1基板と、
前記X軸及び前記Y軸のそれぞれに直交するZ軸に平行な方向にて前記複数のパッチ電極と対向した共通電極を有する第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に保持され、前記複数のパッチ電極と対向した液晶層と、を備え、
各々の前記パッチ電極は、第1スロットを有している、
電波反射板。
【請求項2】
前記第1スロットのサイズ及び形状は、前記複数のパッチ電極の間で同一であり、
前記パッチ電極における前記第1スロットの相対的な位置は、前記複数のパッチ電極の間で同一である、
請求項1に記載の電波反射板。
【請求項3】
各々の前記パッチ電極は、前記第1スロットから離れて位置した第2スロットをさらに有する、
請求項1に記載の電波反射板。
【請求項4】
前記第1スロットのサイズ及び形状は、前記複数のパッチ電極の間で同一であり、
前記第2スロットのサイズ及び形状は、前記複数のパッチ電極の間で同一であり、
前記パッチ電極における前記第1スロットの相対的な位置は、前記複数のパッチ電極の間で同一であり、
前記パッチ電極における前記第2スロットの相対的な位置は、前記複数のパッチ電極の間で同一である、
請求項3に記載の電波反射板。
【請求項5】
各々の反射制御部は、前記複数のパッチ電極のうち一のパッチ電極と、前記共通電極のうち前記一のパッチ電極と対向した部分と、前記液晶層のうち前記一のパッチ電極の前記第1スロットと対向した第1領域と、前記液晶層のうち前記一のパッチ電極と対向した領域であり前記第1領域を囲んだ領域である第2領域と、を有し、
前記第1基板は、前記第2基板と対向する側とは反対側に入射面を有し、
各々の前記反射制御部は、前記パッチ電極に印加される電圧に応じて前記入射面側から入射される電波の位相を調整し、前記電波を前記入射面側に反射させる、
請求項1に記載の電波反射板。
【請求項6】
前記一のパッチ電極と前記共通電極との間に電圧が印加されていない状態において、前記第1領域の誘電率と、前記第2領域の誘電率とは、同一であり、
前記一のパッチ電極と前記共通電極との間に電圧が印加されている状態において、前記第1領域の誘電率と、前記第2領域の誘電率とは、互いに異なる、
請求項5に記載の電波反射板。
【請求項7】
互いに直交するX軸及びY軸のそれぞれに沿って間隔を置いてマトリクス状に並べられた複数のパッチ電極を有する第1基板と、
前記X軸及び前記Y軸のそれぞれに直交するZ軸に平行な方向にて前記複数のパッチ電極と対向した共通電極を有する第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に保持され、前記複数のパッチ電極と対向した液晶層と、を備え、
前記共通電極は、複数の第1スロットを有し、
各々の前記第1スロットは、前記複数のパッチ電極のうち対応する一のパッチ電極に重なっている、
電波反射板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電波反射板に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶を利用して電波の反射方向を制御できる電波反射板の検討が行われている。この電波反射板において、反射電極を有する反射制御部が1次元(又は2次元)に並べられている。電波反射板においても、反射される電波の位相差が隣り合う反射制御部間で一定となるよう、液晶の誘電率を調整する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2019-530387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本実施形態は、電波の反射波の位相変化量を大きくすることのできる電波反射板を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態に係る電波反射板は、
互いに直交するX軸及びY軸のそれぞれに沿って間隔を置いてマトリクス状に並べられた複数のパッチ電極を有する第1基板と、前記X軸及び前記Y軸のそれぞれに直交するZ軸に平行な方向にて前記複数のパッチ電極と対向した共通電極を有する第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に保持され、前記複数のパッチ電極と対向した液晶層と、を備え、各々の前記パッチ電極は、第1スロットを有している。
【0006】
また、一実施形態に係る電波反射板は、
互いに直交するX軸及びY軸のそれぞれに沿って間隔を置いてマトリクス状に並べられた複数のパッチ電極を有する第1基板と、前記X軸及び前記Y軸のそれぞれに直交するZ軸に平行な方向にて前記複数のパッチ電極と対向した共通電極を有する第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に保持され、前記複数のパッチ電極と対向した液晶層と、を備え、前記共通電極は、複数の第1スロットを有し、各々の前記第1スロットは、前記複数のパッチ電極のうち対応する一のパッチ電極に重なっている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、一実施形態に係る電波反射板を示す断面図である。
図2図2は、図1に示した電波反射板を示す平面図である。
図3図3は、図1及び図2に示したパッチ電極を示す拡大平面図である。
図4図4は、上記電波反射板の一部を示す拡大断面図であり、単一の反射制御部を示す図である。
図5図5は、上記電波反射板の一部を示す拡大断面図であり、複数の反射制御部を示す図である。
図6図6は、上記実施形態の電波反射板の駆動方法において、期間毎にパッチ電極に印加する電圧の変化を示すタイミングチャートである。
図7図7は、上記実施形態及び比較例において、反射波の位相変化量を棒グラフで示す図である。
図8図8は、上記実施形態及び上記比較例において、反射波の減衰量を棒グラフで示す図である。
図9図9は、上記実施形態の変形例1に係る複数のパッチ電極及び複数の接続配線を示す拡大平面図である。
図10図10は、上記実施形態の変形例2に係る複数のパッチ電極及び複数の接続配線を示す拡大平面図である。
図11図11は、上記実施形態の変形例3に係る電波反射板の一部を示す拡大平面図であり、複数のパッチ電極、複数の接続配線、及び共通電極を示す図である。
図12図12は、上記変形例3に係る電波反射板の一部を示す拡大断面図であり、単一の反射制御部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0009】
(一実施形態)
まず、一実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る電波反射板REを示す断面図である。電波反射板REは、電波を反射させることができ、電波のための中継装置として機能している。
【0010】
図1に示すように、電波反射板REは、第1基板SUB1と、第2基板SUB2と、液晶層LCと、を備えている。第1基板SUB1は、電気絶縁性の基板1と、複数のパッチ電極PEと、配向膜AL1と、有している。基板1は、平板状に形成され、互いに直交するX軸及びY軸を含むX-Y平面に沿って延在している。配向膜AL1は、複数のパッチ電極PEを覆っている。
【0011】
第2基板SUB2は、第1基板SUB1に所定の隙間を空けて対向配置されている。第2基板SUB2は、電気絶縁性の基板2と、共通電極CEと、配向膜AL2と、を有している。基板2は、平板状に形成され、X-Y平面に沿って延在している。共通電極CEは、X軸及びY軸のそれぞれに直交するZ軸に平行な方向にて複数のパッチ電極PEと対向している。配向膜AL2は、共通電極CEを覆っている。本実施形態において、配向膜AL1及び配向膜AL2は、それぞれ水平配向膜である。
【0012】
第1基板SUB1及び第2基板SUB2は、それぞれの周縁部に配置されたシール材SEにより接合されている。液晶層LCは、第1基板SUB1、第2基板SUB2、及びシール材SEで囲まれた空間に設けられている。液晶層LCは、第1基板SUB1と第2基板SUB2との間に保持されている。液晶層LCは、一方で複数のパッチ電極PEと対向し、他方で共通電極CEと対向している。
【0013】
ここで、液晶層LCの厚み(セルギャップ)をdとする。厚みdは、通常の液晶表示パネルの液晶層の厚みより大きい。本実施形態において、厚みdは50μmである。但し、電波の反射位相を十分に調整できるのであれば、厚みdは、50μm未満であってもよい。又は、電波の反射角を大きくするため、厚みdは、50μmを超えてもよい。電波反射板REの液晶層LCに使用する液晶材料は、通常の液晶表示パネルに使用する液晶材料と異なっている。なお、上述した電波の反射位相に関しては後述する。
【0014】
共通電極CEにはコモン電圧が印加され、共通電極CEの電位は固定される。本実施形態において、コモン電圧は0Vである。パッチ電極PEにも電圧が印加される。本実施形態において、パッチ電極PEは、交流駆動される。液晶層LCは、いわゆる縦電界により駆動される。パッチ電極PEと共通電極CEとの間に印加される電圧が液晶層LCに作用することで、液晶層LCの誘電率は変化する。
【0015】
液晶層LCの誘電率が変わると、液晶層LCにおける電波の伝搬速度も変わる。そのため、液晶層LCに作用させる電圧を調整することで、電波の反射位相を調整することができる。ひいては、電波の反射方向を調整することができる。本実施形態において、液晶層LCに作用させる電圧の絶対値は、10V以下である。10Vで液晶層LCの誘電率が飽和状態となるためである。但し、液晶層LCの誘電率によっては、その飽和状態となる電圧は異なってくるため、液晶層LCに作用させる電圧の絶対値は、10Vを超えてもよい。例えば、液晶の応答速度の向上が求められる場合、10Vを超える電圧を液晶層LCに作用させた後、10V以下の電圧を液晶層LCに作用させてもよい。
第1基板SUB1は、第2基板SUB2と対向する側とは反対側に入射面Saを有している。なお、図中、入射波w1は電波反射板REに入射される電波であり、反射波w2は電波反射板REで反射された電波である。
【0016】
図2は、図1に示した電波反射板REを示す平面図である。図2に示すように、複数のパッチ電極PEは、X軸及びY軸のそれぞれに沿って間隔を置いてマトリクス状に並べられている。X-Y平面において、複数のパッチ電極PEは、同一形状及び同一サイズを有している。
【0017】
複数のパッチ電極PEは、X軸に沿って等間隔に並べられ、Y軸に沿って等間隔に並べられている。複数のパッチ電極PEは、Y軸に沿って延在しX軸に沿って並べられた複数のパッチ電極群GPに含まれている。複数のパッチ電極群GPは、第1パッチ電極群GP1乃至第8パッチ電極群GP8を有している。
【0018】
第1パッチ電極群GP1は複数の第1パッチ電極PE1を有し、第2パッチ電極群GP2は複数の第2パッチ電極PE2を有し、第3パッチ電極群GP3は複数の第3パッチ電極PE3を有し、第4パッチ電極群GP4は複数の第4パッチ電極PE4を有し、第5パッチ電極群GP5は複数の第5パッチ電極PE5を有し、第6パッチ電極群GP6は複数の第6パッチ電極PE6を有し、第7パッチ電極群GP7は複数の第7パッチ電極PE7を有し、第8パッチ電極群GP8は複数の第8パッチ電極PE8を有している。例えば、第2パッチ電極PE2は、X軸に沿った方向において、第1パッチ電極PE1と第3パッチ電極PE3との間に位置している。
【0019】
各々のパッチ電極群GPは、Y軸に沿って並べられ互いに電気的に接続された複数のパッチ電極PEを含んでいる。本実施形態において、各々のパッチ電極群GPの複数のパッチ電極PEは、接続配線Lにより電気的に接続されている。なお、第1基板SUB1は、Y軸に沿って延在し、X軸に沿って並べられた複数の接続配線Lを有している。接続配線Lは、基板1のうち第2基板SUB2と対向していない領域まで延在している。なお、本実施形態と異なり、複数の接続配線Lは、複数のパッチ電極PEと一対一で接続されてもよい。
【0020】
本実施形態において、Y軸に沿って並んだ複数のパッチ電極PEと、接続配線Lとは、同一の導体で一体に形成されている。なお、複数のパッチ電極PEと、接続配線Lとは、互いに異なる導体で形成されてもよい。パッチ電極PE、接続配線L、及び上記共通電極CEは、金属、又は金属に準ずる導体で形成されている。例えば、パッチ電極PE、接続配線L、及び上記共通電極CEは、ITO(インジウム・ティン・オキサイド)等の透明な導電材料で形成されてもよい。接続配線Lは、図示しないアウターリードボンディング(OLB)のパッドに接続されてもよい。
【0021】
接続配線Lは細線であり、接続配線Lの幅は後述する長さPxと比べて十分に小さい。接続配線Lの幅は、数μm乃至数十μmであり、μmオーダーである。なお、接続配線Lの幅を大きくし過ぎると、電波の周波数成分の感度が変わってしまうため望ましくない。
【0022】
シール材SEは、第1基板SUB1と第2基板SUB2とが対向した領域の周縁部に配置されている。
【0023】
図2には、X軸に沿った方向及びY軸に沿った方向にそれぞれ8個のパッチ電極PEが並べられた例を示した。但し、パッチ電極PEの個数は、種々変形可能である。例示すると、パッチ電極PEは、X軸に沿った方向に100個並べられ、Y軸に沿った方向に複数個(例えば100個)並べられてもよい。電波反射板RE(第1基板SUB1)のX軸に沿った方向の長さは、例えば40乃至80cmである。
【0024】
図3は、図1及び図2に示したパッチ電極PEを示す拡大平面図である。図3に示すように、パッチ電極PEは、正方形の形状を有している。パッチ電極PEの形状は得に限定されるものではないが、正方形や真円が望ましい。パッチ電極PEの外形に注目すると、縦横のアスペクト比が1:1となる形状が望ましい。なぜなら、横偏波及び縦偏波に対応するためには90°の回転対称構造が望ましいためである。
【0025】
パッチ電極PEは、X軸に沿った方向に長さPxを有し、Y軸に沿った方向に長さPyを有している。長さPx及び長さPyは、入射波w1の周波数帯に応じて調整した方が望ましい。次に、上記入射波w1の周波数帯と、長さPx及び長さPyと、の望ましい関係を例示する。
2.4GHz: Px=Py=35mm
5.0GHz: Px=Py=16.8mm
28GHz: Px=Py=3.0mm
【0026】
パッチ電極PEは、スロットと呼ばれる孔を有している。本実施形態において、各々のパッチ電極PEは、単一の第1スロットO1を有している。本実施形態において、第1スロットO1は四角形(正方形)の形状を有している。第1スロットO1は、X軸に沿った方向に長さOxを有し、Y軸に沿った方向に長さOyを有している。長さOx及び長さOyは、それぞれ百μm乃至数百μmである。
【0027】
ここで、複数のパッチ電極PEに注目する。
図2及び図3に示すように、第1スロットO1のサイズ及び形状は、複数のパッチ電極PEの間で同一である。パッチ電極PEにおける第1スロットO1の相対的な位置は、複数のパッチ電極PEの間で同一である。
【0028】
図4は、電波反射板REの一部を示す拡大断面図であり、単一の反射制御部RHを示す図である。図4において、基板1等の図示を省略している。
図4に示すように、液晶層LCの厚みd(セルギャップ)は、複数のスペーサSSにより保持されている。本実施形態において、スペーサSSは、柱状スペーサであり、第2基板SUB2に形成され、第1基板SUB1側に突出している。第1スロットO1に対向する領域に、スペーサSSは存在していない。
【0029】
スペーサSSのX方向の断面径は10乃至20μmである。パッチ電極PEの長さPx及び長さPyがmmオーダーであるのに対し、スペーサSSのX方向の断面径はμmオーダーである。そのため、パッチ電極PEと対向する領域にスペーサSSを存在させる必要がある。また、パッチ電極PEと対向する領域のうち、複数のスペーサSSが存在する領域の割合は1%程度である。
【0030】
そのため、上記領域にスペーサSSが存在しても、スペーサSSが反射波w2に及ぼす影響は僅かである。なお、スペーサSSは、第1基板SUB1に形成され、第2基板SUB2側に突出してもよい。又は、スペーサSSは球状スペーサであってもよい。
また、本実施形態と異なり、第1スロットO1に対向する領域に、スペーサSSが存在してもよい。
【0031】
電波反射板REは、複数の反射制御部RHを備えている。各々の反射制御部RHは、複数のパッチ電極PEのうち一のパッチ電極PEと、共通電極CEのうち上記一のパッチ電極PEと対向した部分と、液晶層LCの第1領域A1と、液晶層LCの第2領域A2と、を有している。第1領域A1は、液晶層LCのうち一のパッチ電極PEの第1スロットO1と対向した領域である。第2領域A2は、液晶層LCのうち一のパッチ電極PEと対向した領域であり、第1領域A1を囲んだ領域である。
【0032】
パッチ電極PEと共通電極CEとの間に電圧が印加されていない状態において、第1領域A1の誘電率と、第2領域A2の誘電率とは、同一である。パッチ電極PEと共通電極CEとの間に電圧が印加されると、第1領域A1の誘電率は実質的に変化しないが、第2領域A2の誘電率は変化する。なお、液晶層LCの誘電率は、パッチ電極PEと共通電極CEとの間に印加される電圧に比例している。そのため、パッチ電極PEと共通電極CEとの間に電圧が印加されている状態において、第1領域A1の誘電率と、第2領域A2の誘電率とは、互いに異なっている。
【0033】
図5は、電波反射板REの一部を示す拡大断面図であり、複数の反射制御部RHを示す図である。図5において、基板1、スペーサSS等の図示を省略している。
図5に示すように、各々の反射制御部RHは、パッチ電極PEに印加される電圧に応じて入射面Sa側から入射される電波(入射波w1)の位相を調整し、電波を入射面Sa側に反射させ、反射波w2とするように機能する。各々の反射制御部RHにおいて、反射波w2は、パッチ電極PEで反射した電波と共通電極CEで反射した電波との合成波である。
【0034】
X軸に沿った方向において、パッチ電極PEは等間隔に並べられている。隣り合うパッチ電極PE間の長さ(ピッチ)をdとする。長さdは、一のパッチ電極PEの幾何学中心から、隣のパッチ電極PEの幾何学中心までの距離に相当している。本実施形態において、反射波w2を第1反射方向d1において同位相とするものとして説明する。図5のX-Z平面において、第1反射方向d1は、Z軸との間に第1角度θ1を成す方向である。第1反射方向d1は、X-Z平面に平行である。
【0035】
複数の反射制御部RHで反射される電波が第1反射方向d1で位相を揃えるには、直線状の二点鎖線上で電波の位相が揃っていればよいことになる。例えば、点Q1bでの反射波w2の位相と、点Q2aでの反射波w2の位相とが、揃っていればよい。第1パッチ電極PE1の点Q1aから点Q1bまでの物理的な直線距離はd×sinθ1である。そのため、第1反射制御部RH1と第2反射制御部RH2とに注目すると、第2反射制御部RH2からの反射波w2の位相を第1反射制御部RH1からの反射波w2の位相より、位相量δ1だけ遅らせればよい。ここで、位相量δ1は次の式で表される。
δ1=d×sinθ1×2π/λ
【0036】
次に、電波反射板REの駆動方法について説明する。図6は、本実施形態の電波反射板REの駆動方法において、期間毎にパッチ電極PEに印加する電圧の変化を示すタイミングチャートである。図6において、電波反射板REの駆動期間のうち、第1期間Pd1乃至第5期間Pd5を示している。
【0037】
図5及び図6に示すように、電波反射板REの駆動が開始されると、第1期間Pd1に、複数の反射制御部RHにて反射される電波が第1反射方向d1において同位相となるように、複数のパッチ電極PEに電圧Vを印加する。例えば、第1パッチ電極PE1に第1電圧V1を印加し、第2パッチ電極PE2に第2電圧V2を印加し、第3パッチ電極PE3に第3電圧V3を印加し、第4パッチ電極PE4に第4電圧V4を印加する。各々のパッチ電極PEに印加される電圧Vの絶対値は、全ての期間Pdにわたって同一である。
【0038】
共通電極CEの電位を基準とすると、各々のパッチ電極PEに印加される電圧の極性は、定期的に反転される。例えば、パッチ電極PEは60Hzの駆動周波数で駆動される。上記のように、パッチ電極PEは交流駆動される。
【0039】
期間Pdが別の期間Pdに変わっても、一の反射制御部RHにて第1反射方向d1に反射される電波と、隣の反射制御部RHにて第1反射方向d1に反射される電波との位相量δ1は維持されている。本実施形態において、位相量δ1は35°である。そのため、第1パッチ電極PE1を含む第1反射制御部RH1にて第1反射方向d1に反射される電波と、第8パッチ電極PE8を含む第8反射制御部RH8にて第1反射方向d1に反射される電波と、の間に245°の位相差を与えている。
【0040】
次に、本実施形態の電波反射板REによる反射波w2の特性と、比較例の電波反射板による反射波の特性と、について比較しながら説明する。図7は、本実施形態及び比較例において、反射波の位相変化量を棒グラフで示す図である。図8は、本実施形態及び比較例において、反射波の減衰量を棒グラフで示す図である。なお、比較例の電波反射板は、第1スロットO1無しにパッチ電極PEが形成されている点を除き、本実施形態の電波反射板REと同様に構成されている。
【0041】
反射波の位相変化量及び反射波の減衰量を求めるため、本実施形態の電波反射板REのパラメータと、比較例の電波反射板のパラメータとは、次の表1に示すように設定されている。
【0042】
【表1】
【0043】
図7に示すように、パッチ電極PEにスロットが形成されていない比較例より、パッチ電極PEにスロット(第1スロットO1)が形成されている実施形態の方が、反射波の位相変化量が大きくなることが分かる。そのため、実施形態の電波反射板REにおいて、反射波の位相制御の自由度の向上を図ることができる。例えば、反射波w2の反射方向をZ軸からより傾けること(角度θを大きくすること)ができる。また、本実施形態と比較例とで反射波の位相量を同一に設定する場合、本実施形態にてパッチ電極PEと共通電極CEとの間に印加する電圧の絶対値を、比較例にてパッチ電極PEと共通電極CEとの間に印加する電圧の絶対値より低くすることができる。
【0044】
ここで、反射波の位相変化量とは、反射波の最小の位相量と、反射波の最大の位相量との差である。次に、反射波の最小の位相量δminと、反射波の位相量が最小(δmin)となる場合にパッチ電極PEと共通電極CEとの間に印加される電圧の絶対値(Vmin)と、反射波の最大の位相量δmaxと、反射波の位相量が最大(δmax)となる場合にパッチ電極PEと共通電極CEとの間に印加される電圧の絶対値(Vmax)と、に関して表2に示す。なお、電圧の絶対値が閾値を超えると、反射波の位相量は飽和する。位相量(δmax)を得ることのできる電圧の値には幅があるが、表2には、位相量(δmax)を得ることのできる電圧の一例として電圧の絶対値(Vmax)を示している。
【0045】
【表2】
【0046】
図4に示したように、本実施形態は、液晶層LCの第1領域A1の分、液晶層LCを駆動する対象が比較例より減少することとなる。
図8に示すように、しかしながら、実施形態における反射波の振幅の減衰量は、抑えられ、比較例における反射波の振幅の減衰量と同等となることが分かった。なお、電波反射板REにて電波を全反射する場合が0dBである。図8には、反射波の振幅の減衰量が最大となる場合を示している。次に、反射波の振幅の減衰量が最大となる場合に関する、パッチ電極PEと共通電極CEとの間に印加される電圧の絶対値(V)と、反射波の位相量(δ)と、について表3に示す。
【0047】
【表3】
【0048】
パッチ電極PEにスロット(第1スロットO1)を設けることで、図7及び図8から分かるように、本実施形態の電波反射板REは、電波の反射効率の低下を比較例のそれと同等に抑えつつ、反射波の位相変化量を比較例のそれより拡大することができるものである。
【0049】
上記のように構成された一実施形態に係る電波反射板REによれば、各々のパッチ電極PEは第1スロットO1を有している。パッチ電極PEと共通電極CEとの間に印加する電圧レベルを変えた際に、反射波w2の位相変化量を大きくすることができる。上記のことから、電波の反射波w2の位相変化量を大きくすることのできる電波反射板REを得ることができる。
【0050】
5Gで利用する28GHz帯の電波は直進性が強いため、遮蔽物があると通信環境が悪化する(カバレッジホール)。そのため、対策として、電波反射板REを配置して反射波w2を利用することができる。電波反射板REは、反射波w2の方向を制御できるため、電波環境の変化に対応することができる。
【0051】
(上記実施形態の変形例1)
次に、上記実施形態の変形例1について説明する。図9は、上記実施形態の変形例1に係る複数のパッチ電極PE及び複数の接続配線Lを示す拡大平面図である。
図9に示すように、変形例1の電波反射板REは、第1スロットO1の形状に関して上記実施形態と相違している。第1スロットO1は円形(真円)の形状を有している。なお、第1スロットO1の形状は得に限定されるものではないが、正方形や真円が望ましい。第1スロットO1の輪郭に注目すると、入射する電波の偏波方向、具体的には垂直偏波と水平偏波に対して同じ振る舞いをすることが好ましく、縦横のアスペクト比が1:1となる形状が望ましい。
【0052】
(上記実施形態の変形例2)
次に、上記実施形態の変形例2について説明する。図10は、上記実施形態の変形例2に係るパッチ電極PE及び複数の接続配線Lを示す拡大平面図である。
図10に示すように、各々のパッチ電極PEは、複数のスロットを有してもよい。パッチ電極PEは、第1スロットO1から離れて位置した第2スロットO2と、第1スロットO1及び第2スロットO2から離れて位置した第3スロットO3と、第1スロットO1、第2スロットO2、及び第3スロットO3から離れて位置した第4スロットO4と、をさらに有している。
【0053】
第1スロットO1のサイズ及び形状は、複数のパッチ電極PEの間で同一である。第2スロットO2のサイズ及び形状は、複数のパッチ電極PEの間で同一である。第3スロットO3のサイズ及び形状は、複数のパッチ電極PEの間で同一である。第4スロットO4のサイズ及び形状は、複数のパッチ電極PEの間で同一である。
【0054】
パッチ電極PEにおける第1スロットO1の相対的な位置は、複数のパッチ電極PEの間で同一である。パッチ電極PEにおける第2スロットO2の相対的な位置は、複数のパッチ電極PEの間で同一である。パッチ電極PEにおける第3スロットO3の相対的な位置は、複数のパッチ電極PEの間で同一である。パッチ電極PEにおける第4スロットO4の相対的な位置は、複数のパッチ電極PEの間で同一である。
なお、パッチ電極PEが有するスロットOの個数は、2個、3個、又は5個以上であってもよい。
【0055】
(上記実施形態の変形例3)
次に、上記実施形態の変形例3について説明する。図11は、本変形例3に係る電波反射板REの一部を示す拡大平面図であり、複数のパッチ電極PE、複数の接続配線L、及び共通電極CEを示す図である。図12は、本変形例3に係る電波反射板REの一部を示す拡大断面図であり、単一の反射制御部RHを示す図である。
【0056】
図11に示すように、本変形例3は、パッチ電極PEではなく共通電極CEがスロットと呼ばれる孔を有している点で上記実施形態と相違している。共通電極CEは、複数の第1スロットO1を有している。各々の第1スロットO1は、複数のパッチ電極PEのうち対応する一のパッチ電極PEに重なっている。
【0057】
図12に示すように、本変形例3において、第1スロットO1に対向する領域に、スペーサSSは存在していない。但し、第1スロットO1に対向する領域に、スペーサSSが存在してもよい。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
RE…電波反射板、SUB1…第1基板、SUB2…第2基板、LC…液晶層、
SE…シール材、1,2…基板、L…接続配線、PE,PE1~PE8…パッチ電極、
O,O1~O4…スロット、GP,GP1~GP8…パッチ電極群、RH…反射制御部、
CE…共通電極、AL…配向膜、SS…スペーサ、Sa…入射面、w1…入射波、
w2…反射波、A1…第1領域、A2…第2領域。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12