(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156949
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20221006BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20221006BHJP
H01M 8/0432 20160101ALI20221006BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
H01M8/04 J
H01M8/04746
H01M8/0432
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060895
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】森 英文
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 潤也
【テーマコード(参考)】
5H127
【Fターム(参考)】
5H127AB04
5H127AC03
5H127BA02
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB20
5H127BB37
5H127BB39
5H127BB40
5H127CC07
5H127DB71
5H127DB74
5H127DB92
5H127DC34
(57)【要約】
【課題】タービン室内に存在する水がモータ室に侵入することを抑制すること。
【解決手段】制御部45が、モータ室S1内の圧力がタービン室S3内の圧力を下回らないように制御弁44の開度を調整するため、タービン室S3内に存在する水がモータ室S1に侵入してしまうことが抑制される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池スタックと、
前記燃料電池スタックに供給される空気を圧縮する圧縮部、前記圧縮部を駆動する電動モータ、及び前記電動モータの回転軸の回転を補助するタービンホイールを有する流体機械と、
前記電動モータが収容されるモータ室、前記タービンホイールが収容されるタービン室、及び前記モータ室と前記タービン室とを隔てるとともに前記回転軸が貫通する隔壁を有するハウジングと、
前記圧縮部で圧縮された空気を前記燃料電池スタックへ供給する供給流路と、
前記燃料電池スタックから前記タービン室へ空気を排出する排出流路と、
前記供給流路から分岐して前記供給流路を流れる空気の一部を前記モータ室へ導入する上流側分岐流路と、
前記モータ室から空気を排出する下流側分岐流路と、
前記モータ室に導入される空気を冷却するインタークーラと、を備える燃料電池システムであって、
前記下流側分岐流路に設けられ、当該下流側分岐流路の流路断面積を調整する制御弁と、
前記制御弁の開度を調整するように制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記モータ室内の圧力が前記タービン室内の圧力を下回らないように、前記制御弁の開度を調整することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記モータ室には、前記電動モータの温度を検出する温度センサが設けられ、
前記制御部は、前記温度センサにより検出された前記電動モータの温度が所定の温度よりも低いとき、前記制御弁の開度を小さくすることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記ハウジングは、前記圧縮部のインペラを収容するインペラ室を有し、
前記制御部は、前記供給流路の圧力を検出する圧力センサにより検出された圧力と前記ハウジングの外部の大気圧を検出する大気圧センサにより検出された圧力との差から前記モータ室内の圧力を推定し、前記インペラ室に吸入される空気の流量を検出する流量センサにより検出される空気の流量から前記タービン室内の圧力を推定し、前記モータ室内の圧力が前記タービン室内の圧力を下回らないように前記制御弁の開度を調整することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記燃料電池スタックは冷却水回路の冷却水によって冷却され、
前記排出流路には、流路断面積を調整する圧力調整弁が設けられ、
前記制御部は、前記冷却水の温度を検出する水温センサにより検出された温度が、予め設定された上限温度を下回っている場合に前記圧力調整弁の開度を全開となるように調整し、前記水温センサにより検出された温度が、予め設定された上限温度に達している場合に前記圧力調整弁の開度を全開の状態から小さくなるように調整することを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムは、燃料電池スタックと、流体機械と、を備えている。例えば特許文献1のような流体機械は、圧縮部と、電動モータと、タービンホイールと、を有している。圧縮部は、燃料電池スタックに供給される空気を圧縮する。電動モータは、圧縮部を駆動する。タービンホイールは、電動モータの回転軸の回転を補助する。また、燃料電池システムは、ハウジングを備えている。ハウジングは、モータ室、及びタービン室を有している。モータ室には、電動モータが収容されている。タービン室には、タービンホイールが収容されている。ハウジングは、モータ室とタービン室とを隔てる隔壁を有している。回転軸は、隔壁を貫通している。
【0003】
燃料電池システムは、供給流路と、排出流路と、を備えている。供給流路は、圧縮部で圧縮された空気を燃料電池スタックへ供給する。排出流路は、燃料電池スタックからタービン室へ空気を排出する。また、燃料電池システムは、上流側分岐流路と、下流側分岐流路と、を備えている場合がある。上流側分岐流路は、供給流路から分岐して供給流路を流れる空気の一部をモータ室へ導入する。下流側分岐流路は、モータ室から空気を排出する。さらに、このような燃料電池システムは、インタークーラを備えている。インタークーラは、モータ室に導入される空気を冷却する。このように、モータ室に導入される空気がインタークーラによって冷却されているため、圧縮部で圧縮された空気を利用して電動モータを冷却することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、このような燃料電池システムにおいては、燃料電池スタックから排出される空気には、燃料電池スタックが発電した際に生成される水が含まれている。したがって、燃料電池スタックから排出流路を介してタービン室へ導入される空気には、水が含まれている。このとき、モータ室内の圧力が、タービン室内の圧力を下回ると、タービン室内に存在する水が、隔壁と回転軸との間を介してモータ室に侵入する虞がある。モータ室に水が侵入してしまうと、電動モータに悪影響を与えてしまう虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための燃料電池システムは、燃料電池スタックと、前記燃料電池スタックに供給される空気を圧縮する圧縮部、前記圧縮部を駆動する電動モータ、及び前記電動モータの回転軸の回転を補助するタービンホイールを有する流体機械と、前記電動モータが収容されるモータ室、前記タービンホイールが収容されるタービン室、及び前記モータ室と前記タービン室とを隔てるとともに前記回転軸が貫通する隔壁を有するハウジングと、前記圧縮部で圧縮された空気を前記燃料電池スタックへ供給する供給流路と、前記燃料電池スタックから前記タービン室へ空気を排出する排出流路と、前記供給流路から分岐して前記供給流路を流れる空気の一部を前記モータ室へ導入する上流側分岐流路と、前記モータ室から空気を排出する下流側分岐流路と、前記モータ室に導入される空気を冷却するインタークーラと、を備える燃料電池システムであって、前記下流側分岐流路に設けられ、当該下流側分岐流路の流路断面積を調整する制御弁と、前記制御弁の開度を調整するように制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記モータ室内の圧力が前記タービン室内の圧力を下回らないように、前記制御弁の開度を調整する。
【0007】
これによれば、制御部が、モータ室内の圧力がタービン室内の圧力を下回らないように、制御弁の開度を調整するため、タービン室内に存在する水がモータ室に侵入してしまうことを抑制することができる。
【0008】
上記燃料電池システムにおいて、前記モータ室には、前記電動モータの温度を検出する温度センサが設けられ、前記制御部は、前記温度センサにより検出された前記電動モータの温度が所定の温度よりも低いとき、前記制御弁の開度を小さくするとよい。
【0009】
これによれば、制御部が、温度センサにより検出された電動モータの温度が所定の温度よりも低いとき、制御弁の開度を小さくすることで、モータ室内の圧力が高くなる。これにより、供給流路から分岐して上流側分岐流路を介してモータ室内へ導入される空気の流量を少なくすることができる。したがって、電動モータの温度が所定の温度よりも低く、電動モータをそれ以上冷却する必要が無い場合に、モータ室内へ導入する空気の流量を少なくし、供給流路を流れる空気を燃料電池スタックへ効率良く供給することができる。
【0010】
上記燃料電池システムにおいて、前記ハウジングは、前記圧縮部のインペラを収容するインペラ室を有し、前記制御部は、前記供給流路の圧力を検出する圧力センサにより検出された圧力と前記ハウジングの外部の大気圧を検出する大気圧センサにより検出された圧力との差から前記モータ室内の圧力を推定し、前記インペラ室に吸入される空気の流量を検出する流量センサにより検出される空気の流量から前記タービン室内の圧力を推定し、前記モータ室内の圧力が前記タービン室内の圧力を下回らないように前記制御弁の開度を調整するとよい。
【0011】
これによれば、制御部が、圧力センサにより検出される圧力と大気圧センサにより検出される圧力との差から、モータ室内の圧力を推定している。したがって、大気圧センサにより検出される圧力をモータ室内の圧力を推定するパラメータとして用いている。よって、高地のように大気圧が低く、結果として、タービン室内の圧力が比較的高くなりがちな条件であっても、推定したモータ室内の圧力がタービン室内の圧力を下回らないように制御弁の開度を調整し易くすることができる。
【0012】
上記燃料電池システムにおいて、前記燃料電池スタックは冷却水回路の冷却水によって冷却され、前記排出流路には、流路断面積を調整する圧力調整弁が設けられ、前記制御部は、前記冷却水の温度を検出する水温センサにより検出された温度が、予め設定された上限温度を下回っている場合に前記圧力調整弁の開度を全開となるように調整し、前記水温センサにより検出された温度が、予め設定された上限温度に達している場合に前記圧力調整弁の開度を全開の状態から小さくなるように調整するとよい。
【0013】
これによれば、制御部が、水温センサにより検出された温度が、予め設定された上限温度に達している場合に圧力調整弁の開度を全開の状態から小さくなるように調整する。したがって、燃料電池スタックに供給される空気の圧力が高くなるため、燃料電池スタック内の湿度が予め定められた所望の湿度に調整される。その結果、水温センサにより検出された冷却水の温度が、予め設定された上限温度に達していても、燃料電池スタックの発電が効率良く行われる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、タービン室内に存在する水がモータ室に侵入することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態における燃料電池システムの概略構成図。
【
図2】別の実施形態における燃料電池システムの概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、燃料電池システムを具体化した一実施形態を
図1にしたがって説明する。本実施形態の燃料電池システムは、例えば、燃料電池車などの車両に搭載されている。
<燃料電池システム10の全体構成>
図1に示すように、燃料電池システム10は、燃料電池スタック11と、流体機械20と、を備えている。流体機械20は、燃料電池スタック11に空気を供給する。燃料電池スタック11は、図示しない複数の電池セルを有している。各電池セルは、酸素極と、水素極と、両極の間に配置された電解質膜と、が積層されることによって構成されている。燃料電池スタック11は、燃料ガスである水素と空気中の酸素とを化学反応させることにより発電する。燃料電池スタック11は、図示しない走行用モータに電気的に接続されている。走行用モータは、燃料電池スタック11により発電された電力を電力源として駆動する。走行用モータの動力は、図示しない動力伝達機構を介して車軸に伝達される。これにより、車両は、アクセルペダルのアクセル開度に応じた車速で走行する。
【0017】
燃料電池スタック11の発電に寄与する酸素は、空気中に2割程度しか存在しないことから、燃料電池スタック11に供給された空気の8割程度は、燃料電池スタック11の発電に寄与されることなく燃料電池スタック11から排出される。また、燃料電池スタック11が発電すると、燃料電池スタック11の内部には、水素と酸素との化学反応によって水が生成される。したがって、燃料電池スタック11から排出される空気には、燃料電池スタック11が発電した際に生成される水が含まれている。
【0018】
燃料電池スタック11は、供給口11aと、排出口11bと、空気流路11cと、を有している。供給口11aには、空気が供給される。排出口11bからは、空気が排出される。空気流路11cは、供給口11aと排出口11bとを接続する。空気流路11cでは、供給口11aから供給された空気が排出口11bに向かって流れる。
【0019】
<流体機械20の構成>
燃料電池システム10は、ハウジング21を備えている。ハウジング21は、流体機械20のハウジングである。ハウジング21は、モータ室S1、インペラ室S2、及びタービン室S3を有している。さらに、流体機械20は、電動モータ23を有している。電動モータ23は、回転軸22を有している。
【0020】
ハウジング21は、第1隔壁21aと、第2隔壁21bと、を有している。第1隔壁21aは、ハウジング21内をモータ室S1とタービン室S3とに仕切る。回転軸22の一端は、第1隔壁21aを貫通してタービン室S3内に突出している。したがって、第1隔壁21aは、モータ室S1とタービン室S3とを隔てるとともに回転軸22が貫通する隔壁である。
【0021】
第2隔壁21bは、ハウジング21内をモータ室S1とインペラ室S2とに仕切る。回転軸22の他端は、第2隔壁21bを貫通してインペラ室S2内に突出している。モータ室S1には、電動モータ23が収容されている。インペラ室S2には、インペラ25が収容されている。タービン室S3には、タービンホイール24が収容されている。
【0022】
回転軸22の一端には、タービンホイール24が取り付けられている。回転軸22の他端には、インペラ25が取り付けられている。電動モータ23は、図示しないバッテリから電力が供給されることにより駆動する。そして、回転軸22は、電動モータ23の駆動に伴い回転する。
【0023】
ハウジング21は、吸入口21cと、吐出口21dと、供給口21eと、排出口21fと、供給口21gと、排出口21hと、を有している。吸入口21cは、インペラ室S2に連通している。吐出口21dは、インペラ室S2に連通している。供給口21eは、モータ室S1に連通している。排出口21fは、モータ室S1に連通している。供給口21gは、タービン室S3に連通している。排出口21hは、タービン室S3に連通している。
【0024】
燃料電池システム10は、供給流路30と、排出流路31と、を備えている。供給流路30の一端は、燃料電池スタック11の供給口11aに接続されている。供給流路30の他端は、吐出口21dに接続されている。
【0025】
排出流路31の一端は、燃料電池スタック11の排出口11bに接続されている。排出流路31の他端は、供給口21gに接続されている。排出流路31には、圧力調整弁42が設けられている。圧力調整弁42は、排出流路31の流路断面積を調整する。
【0026】
燃料電池システム10は、第1外部流路36と、第2外部流路37と、を備えている。第1外部流路36の一端は、大気に開放されている。第1外部流路36の他端は、吸入口21cに接続されている。第2外部流路37の一端は、排出口21hに接続されている。第2外部流路37の他端は、大気に開放されている。
【0027】
<空気の流れについて>
電動モータ23が駆動に伴い回転軸22が回転すると、インペラ25が回転軸22と一体的に回転する。したがって、電動モータ23は、インペラ25を駆動する。
【0028】
そして、インペラ25が駆動すると、外部の空気が第1外部流路36及び吸入口21cを介してインペラ室S2に吸入される。インペラ室S2内に吸入された空気は、インペラ25によって圧縮される。そして、圧縮された空気は、吐出口21dから供給流路30へ吐出される。吐出口21dから供給流路30へ吐出された空気は、供給流路30及び供給口11aを介して燃料電池スタック11に供給される。したがって、インペラ室S2及びインペラ25は、燃料電池スタック11に供給される空気を圧縮する圧縮部C1を構成している。そして、供給流路30は、流体機械20で圧縮された空気を燃料電池スタック11に供給する。
【0029】
排出口11bから排出される空気は、排出流路31及び供給口21gを介してタービン室S3へ排出される。したがって、排出流路31は、燃料電池スタック11からタービン室S3へ空気を排出する。タービン室S3へ排出された空気は、タービン室S3を流れる途中でタービンホイール24を回転させる。これにより、回転軸22は、電動モータ23の駆動による回転に加え、燃料電池スタック11から排出された空気により回転するタービンホイール24の回転によっても回転する。したがって、タービンホイール24は、電動モータ23の回転軸22の回転を補助する。そして、タービン室S3を流れる空気は、排出口21hから第2外部流路37へ排出され、第2外部流路37を介して大気へ排出される。
【0030】
燃料電池システム10は、上流側分岐流路33と、下流側分岐流路34と、を備えている。上流側分岐流路33の一端は、供給流路30の途中に接続されている。上流側分岐流路33の他端は、供給口21eに接続されている。上流側分岐流路33は、供給流路30から分岐して供給流路30を流れる空気の一部を供給口21eを介してモータ室S1へ導入する。
【0031】
燃料電池システム10は、インタークーラ35を備えている。インタークーラ35は、上流側分岐流路33に設けられている。インタークーラ35は、上流側分岐流路33を流れる空気を冷却する。したがって、インタークーラ35は、モータ室S1に導入される空気を冷却する。そして、モータ室S1へ導入された空気は、モータ室S1を通過する際に、電動モータ23を冷却し、排出口21fから排出される。
【0032】
下流側分岐流路34の一端は、排出口21fに接続されている。下流側分岐流路34の他端は、第2外部流路37に接続されている。また、燃料電池システム10は、制御弁44を備えている。制御弁44は、下流側分岐流路34に設けられている。制御弁44は、下流側分岐流路34の流路断面積を調整し、下流側分岐流路34を流れる空気の流量を調整する。排出口21fから排出された空気は、下流側分岐流路34を介して第2外部流路37に流入する。そして、下流側分岐流路34から第2外部流路37に流入した空気は、排出口21hから第2外部流路37へ排出される空気と共に第2外部流路37を介して大気へ排出される。
【0033】
<冷却水回路W1の構成>
燃料電池システム10は、冷却水回路W1を備えている。冷却水回路W1は、ポンプP1と、ラジエータR1と、を有している。冷却水回路W1には、燃料電池スタック11を冷却するための冷却水(LLC)が循環する。ポンプP1は、冷却水回路W1を流れる冷却水を圧送する。冷却水回路W1を流れる冷却水は、ラジエータR1を通過する際に、ラジエータR1を介した外気との熱交換が行われることで冷却される。燃料電池スタック11は、ラジエータR1を通過後の冷却水によって冷却される。したがって、燃料電池スタック11は冷却水回路W1の冷却水によって冷却される。
【0034】
<燃料電池システム10の電気的構成>
燃料電池システム10は、制御部45を備えている。制御部45は、中央処理制御装置(CPU)を備えている。また、制御部45は、各種プログラムやマップ等を予め記憶した読出専用メモリ(ROM)、CPUの演算結果等を一時記憶するランダムアクセスメモリ(RAM)等により構成されるメモリを備えている。
【0035】
制御部45は、電動モータ23に電気的に接続されている。制御部45には、電動モータ23の駆動を制御するプログラムが予め記憶されている。制御部45は、アクセルペダルの操作態様等に基づいて燃料電池スタック11に要求される要求発電量を算出する。そして、制御部45は、要求発電量に基づいて、燃料電池スタック11に供給される空気の目標流量を算出し、燃料電池スタック11に供給される空気の流量が目標流量となるように、電動モータ23の駆動を制御する。
【0036】
制御部45は、圧力調整弁42に電気的に接続されている。制御部45には、圧力調整弁42の開度を調整するプログラムが予め記憶されている。さらに、制御部45は、制御弁44に電気的に接続されている。制御部45には、制御弁44の開度を調整するプログラムが予め記憶されている。
【0037】
燃料電池システム10は、水温センサ46を備えている。水温センサ46は、冷却水回路W1を流れる冷却水の温度を検出する。制御部45は、水温センサ46と電気的に接続されている。そして、水温センサ46により検出された冷却水の温度に関する検出信号が制御部45に送信される。制御部45には、水温センサ46により検出された冷却水の温度が、予め設定された上限温度に達しているか否かを判定するプログラムが予め記憶されている。
【0038】
燃料電池システム10は、圧力センサ47を備えている。圧力センサ47は、供給流路30の圧力を検出する。供給流路30の圧力は、燃料電池スタック11に供給される空気の圧力である。制御部45は、圧力センサ47と電気的に接続されている。そして、圧力センサ47により検出された圧力に関する検出信号が制御部45に送信される。
【0039】
制御部45には、水温センサ46により検出された冷却水の温度が、予め設定された上限温度を下回っていると判定したときには、圧力調整弁42の開度が全開となるように圧力調整弁42の開度を調整するプログラムが予め記憶されている。また、制御部45には、水温センサ46により検出された冷却水の温度が、予め設定された上限温度に達していると判定したときには、圧力調整弁42の開度を全開の状態から小さくなるように圧力調整弁42の開度を調整するプログラムが予め記憶されている。そして、制御部45には、圧力センサ47により検出される圧力が、予め設定された所望の圧力に達するまで圧力調整弁42の開度を小さくするプログラムが予め記憶されている。
【0040】
燃料電池システム10は、流量センサ40を備えている。流量センサ40は、第1外部流路36を流れる空気の流量を検出する。制御部45は、流量センサ40と電気的に接続されている。そして、流量センサ40により検出された空気の流量に関する検出信号が制御部45に送信される。
【0041】
ところで、燃料電池システム10においては、インペラ室S2を通過する空気の流量が小さいときに吐出口21dから供給流路30に吐出される吐出圧力が高いと、インペラ室S2を通過する空気の流れに逆流が生じるサージングが発生することが知られている。インペラ室S2を通過する空気の流量は、第1外部流路36を流れる空気の流量であり、流量センサ40により検出される空気の流量である。したがって、流量センサ40は、インペラ室S2に吸入される空気の流量を検出していると言える。吐出口21dから供給流路30に吐出される吐出圧力は、供給流路30の圧力であり、圧力センサ47により検出される圧力である。
【0042】
そこで、本実施形態では、インペラ室S2を通過する空気において、サージングを回避するために最低限必要な流量が、圧力センサ47により検出される圧力に対応付けられて予め実験等によって求められている。そして、制御部45には、流量センサ40により検出される空気の流量が、圧力センサ47によって検出される圧力に対応付けられた最低限必要な空気の流量を上回るように、電動モータ23を駆動するプログラムが予め記憶されている。
【0043】
また、第1外部流路36を流れる空気の流量と、タービン室S3内の圧力とは相関関係がある。そして、制御部45には、流量センサ40により検出された空気の流量からタービン室S3内の圧力を推定するタービン室圧力推定マップが予め記憶されている。
【0044】
燃料電池システム10は、大気圧センサ41を備えている。大気圧センサ41は、ハウジング21の外部の大気圧を検出する。制御部45は、大気圧センサ41と電気的に接続されている。そして、大気圧センサ41により検出された圧力に関する検出信号が制御部45に送信される。
【0045】
ここで、圧力センサ47により検出される圧力は、モータ室S1よりも空気の流れ方向の上流側の圧力に相当し、大気圧センサ41により検出される圧力は、モータ室S1よりも空気の流れ方向の下流側の圧力に相当する。したがって、圧力センサ47により検出される圧力と大気圧センサ41により検出される圧力との差から、モータ室S1内の圧力が推定可能である。したがって、制御部45には、圧力センサ47により検出される圧力と大気圧センサ41により検出される圧力との差からモータ室S1内の圧力を推定するモータ室圧力推定マップが予め記憶されている。
【0046】
そして、制御部45には、モータ室圧力推定マップにより推定されたモータ室S1内の圧力が、タービン室圧力推定マップにより推定されたタービン室S3内の圧力を下回らないように、制御弁44の開度を調整する弁開度マップが予め記憶されている。したがって、制御部45は、モータ室S1内の圧力、及びタービン室S3内の圧力に応じて、制御弁44の開度を調整し、モータ室S1内の圧力がタービン室S3内の圧力を下回らないように、制御弁44の開度を調整する。モータ室S1内の圧力は、制御部45の開度が小さくなるほど高くなっていき、制御部45の開度が大きくなるほど低くなっていく。
【0047】
燃料電池システム10は、温度センサ43を備えている。温度センサ43は、モータ室S1に設けられている。温度センサ43は、電動モータ23の温度を検出する。制御部45は、温度センサ43と電気的に接続されている。そして、温度センサ43により検出された温度に関する検出信号が制御部45に送信される。そして、制御部45には、温度センサ43により検出された温度が所定の温度よりも低いとき、制御弁44の開度を小さくするプログラムが予め記憶されている。したがって、制御部45は、電動モータ23の温度が所定の温度よりも低いとき、制御弁44の開度を小さくする。
【0048】
<作用>
次に、本実施形態の作用について説明する。
制御部45は、水温センサ46により検出された冷却水の温度が、予め設定された上限温度を下回っていると判定したときには、圧力調整弁42の開度が全開となるように圧力調整弁42の開度を調整する。そして、燃料電池スタック11に供給される空気の流量が目標流量となるように電動モータ23の駆動を制御する。このとき、制御部45は、流量センサ40により検出される空気の流量が、圧力センサ47によって検出される圧力に対応付けられた最低限必要な空気の流量を上回るように、電動モータ23を駆動する。これにより、インペラ室S2を通過する空気の流れに逆流が生じるといったサージングの発生が抑制されている。
【0049】
また、燃料電池スタック11に空気が過剰に供給されると、燃料電池スタック11内の湿度が低下し、燃料電池スタック11の発電効率の低下を招く。そこで、本実施形態では、供給流路30を流れる空気の一部が上流側分岐流路33へ流入し、上流側分岐流路33及び供給口21eを介してモータ室S1へ導入される。したがって、燃料電池スタック11に空気が過剰に供給されることが回避されている。そして、上流側分岐流路33及び供給口21eを介してモータ室S1へ導入された空気によって電動モータ23が冷却される。
【0050】
一方で、制御部45は、水温センサ46により検出された冷却水の温度が、予め設定された上限温度に達していると判定したときには、圧力調整弁42の開度を全開の状態から小さくなるように圧力調整弁42の開度を調整する。そして、制御部45は、圧力センサ47により検出される圧力が、予め設定された所望の圧力に達するまで圧力調整弁42の開度を小さくする。これにより、燃料電池スタック11に供給される空気の圧力が高くなるため、燃料電池スタック11内の湿度が予め定められた所望の湿度に調整される。その結果、水温センサ46により検出された冷却水の温度が、予め設定された上限温度に達していても、電池セルの電解質膜の表面が乾いてしまうことが抑制され、燃料電池スタック11の発電が効率良く行われる。
【0051】
ところで、このような燃料電池システム10においては、燃料電池スタック11から排出される空気には水が含まれているため、燃料電池スタック11から排出流路31及び供給口21gを介してタービン室S3へ導入される空気には水が含まれている。したがって、タービン室S3内には水が存在している。
【0052】
ここで、例えば、制御部45によって、圧力調整弁42の開度が全開となるように圧力調整弁42の開度が調整されている場合、圧力調整弁42の開度が全開よりも小さい場合に比べると、燃料電池スタック11に供給される空気の圧力は低くなる。したがって、供給流路30の圧力が低くなるため、圧力センサ47により検出される圧力は低くなる。そして、制御部45は、圧力センサ47により検出される圧力と大気圧センサ41により検出される圧力との差から、モータ室S1内の圧力を推定する。また、制御部45は、流量センサ40により検出された空気の流量からタービン室S3内の圧力を推定する。そして、制御部45は、推定したモータ室S1内の圧力が推定したタービン室S3内の圧力を下回らないように、制御弁44の開度を調整する。これにより、モータ室S1内の圧力がタービン室S3内の圧力を下回ることが抑制されるため、タービン室S3内に存在する水が、第1隔壁21aと回転軸22との間を介してモータ室S1に侵入してしまうことが抑制されている。
【0053】
制御部45は、温度センサ43により検出された温度が所定の温度よりも低いとき、制御弁44の開度を小さくする。制御弁44の開度が小さくなると、モータ室S1内の圧力が高くなる。これにより、供給流路30から分岐して上流側分岐流路33を介してモータ室S1内へ導入される空気の流量が少なくなる。したがって、電動モータ23の温度が所定の温度よりも低く、電動モータ23をそれ以上冷却する必要が無い場合に、モータ室S1内へ導入する空気の流量が少なくなり、供給流路30を流れる空気が燃料電池スタック11へ効率良く供給される。
【0054】
<効果>
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)制御部45が、モータ室S1内の圧力がタービン室S3内の圧力を下回らないように、制御弁44の開度を調整するため、タービン室S3内に存在する水がモータ室S1に侵入してしまうことを抑制することができる。
【0055】
(2)制御部45は、温度センサ43により検出された電動モータ23の温度が所定の温度よりも低いとき、制御弁44の開度を小さくする。これによれば、制御部45が、電動モータ23の温度が所定の温度よりも低いとき、制御弁44の開度を小さくすることで、モータ室内の圧力が高くなる。これにより、供給流路30から分岐して上流側分岐流路33を介してモータ室S1内へ導入される空気の流量を少なくすることができる。したがって、電動モータ23の温度が所定の温度よりも低く、電動モータ23をそれ以上冷却する必要が無い場合に、モータ室S1内へ導入する空気の流量を少なくし、供給流路30を流れる空気を燃料電池スタック11へ効率良く供給することができる。
【0056】
(3)例えば、燃料電池車が高地を走行している場合には、燃料電池車が平地を走行している場合に比べて、大気圧が低くなることから、排出口21hの圧力が低くなって、結果として、タービン室S3内の圧力が比較的高くなりがちである。このとき、制御部45が、圧力センサ47により検出される圧力と大気圧センサ41により検出される圧力との差から、モータ室S1内の圧力を推定している。したがって、大気圧センサ41により検出される圧力をモータ室S1内の圧力を推定するパラメータとして用いている。よって、高地のように大気圧が低く、結果として、タービン室S3内の圧力が比較的高くなりがちな条件であっても、推定したモータ室S1内の圧力がタービン室S3内の圧力を下回らないように制御弁44の開度を調整し易くすることができる。
【0057】
(4)制御部45は、水温センサ46により検出された温度が、予め設定された上限温度に達している場合に圧力調整弁42の開度を全開の状態から小さくなるように調整する。したがって、燃料電池スタック11に供給される空気の圧力が高くなるため、燃料電池スタック11内の湿度が予め定められた所望の湿度に調整される。その結果、水温センサ46により検出された冷却水の温度が、予め設定された上限温度に達していても、燃料電池スタック11の発電が効率良く行われる。
【0058】
(5)制御部45は、流量センサ40により検出される空気の流量が、圧力センサ47によって検出される圧力に対応付けられた最低限必要な空気の流量を上回るように、電動モータ23を駆動する。これにより、インペラ室S2を通過する空気の流れに逆流が生じるといったサージングの発生を抑制することができる。また、供給流路30を流れる空気の一部が上流側分岐流路33へ流入し、上流側分岐流路33及び供給口21eを介してモータ室S1へ導入される。したがって、燃料電池スタック11に空気が過剰に供給されることを回避することができる。そして、上流側分岐流路33及び供給口21eを介してモータ室S1へ導入された空気によって電動モータ23を冷却することができる。
【0059】
(6)下流側分岐流路34が第2外部流路37に接続されている。これによれば、例えば、下流側分岐流路34が第2外部流路37に接続されていない場合に比べて、大気へ連通する配管の数を減らすことができる。したがって、燃料電池システム10の構成を簡素化することができる。
【0060】
<変更例>
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0061】
○
図2に示すように、インタークーラ35は、供給流路30に設けられていてもよい。この場合、インタークーラ35は、供給流路30における上流側分岐流路33が接続される部位よりも流体機械20寄りに配置される。
【0062】
○ 実施形態において、制御部45は、水温センサ46により検出された冷却水の温度以外にも、燃料電池スタック11への要求発電量と他の各センサの値に応じて、圧力調整弁42の開度を調整してもよい。
【0063】
○ 実施形態において、燃料電池システム10は、圧力調整弁42を備えていなくてもよい。
○ 実施形態において、圧力センサ47が、排出流路31における圧力調整弁42よりも排出口11b寄りの位置に設けられていてもよい。
【0064】
○ 実施形態において、下流側分岐流路34は、第2外部流路37に接続されずに直接大気に開放されていてもよい。
○ 実施形態において、圧縮部C1は、例えば、スクロール式やルーツ式であってもよい。
【符号の説明】
【0065】
10…燃料電池システム、11…燃料電池スタック、20…流体機械、21…ハウジング、21a…隔壁である第1隔壁、22…回転軸、23…電動モータ、24…タービンホイール、25…インペラ、30…供給流路、31…排出流路、33…上流側分岐流路、34…下流側分岐流路、35…インタークーラ、40…流量センサ、41…大気圧センサ、42…圧力調整弁、43…温度センサ、44…制御弁、45…制御部、46…水温センサ、47…圧力センサ、C1…圧縮部、S1…モータ室、S2…インペラ室、S3…タービン室、W1…冷却水回路。