(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156967
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】蒸着マスク用基材、蒸着マスク、蒸着マスクの製造方法、および、表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/04 20060101AFI20221006BHJP
C23C 14/12 20060101ALI20221006BHJP
C23C 14/24 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
C23C14/04 A
C23C14/12
C23C14/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060924
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】森田 英裕
(72)【発明者】
【氏名】野村 直裕
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029BA62
4K029CA01
4K029HA02
4K029HA03
(57)【要約】
【課題】蒸着パターンを形成する際の精度の低下を抑えることを可能とした蒸着マスク用基材、蒸着マスク、蒸着マスクの製造方法、および、表示装置の製造方法を提供する。
【解決手段】蒸着マスク用基材10は、薄板ガラスである。ヤング率が、7.10×10
10Pa以上9.50×10
10Pa以下であり、ポアソン比が、0.17以上0.25以下であり、密度が、2200kg/m
3以上2640kg/m
3以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸着マスクを製造するために用いられる蒸着マスク用基材であって、
前記蒸着マスク用基材は、薄板ガラスであり、
ヤング率が、7.10×1010Pa以上9.50×1010Pa以下であり、
ポアソン比が、0.17以上0.25以下であり、
密度が、2200kg/m3以上2640kg/m3以下である
蒸着マスク用基材。
【請求項2】
前記蒸着マスク用基材は、10μm以上50μm以下の厚さを有する
請求項1に記載の蒸着マスク用基材。
【請求項3】
蒸着マスク用基材によって形成された蒸着マスクであって、
前記蒸着マスク用基材は、薄板ガラスであり、
前記薄板ガラスは、複数のマスク孔を有し、
前記薄板ガラスにおいて、
ヤング率が、7.10×1010Pa以上9.50×1010Pa以下であり、
ポアソン比が、0.17以上0.25以下であり、
密度が、2200kg/m3以上2640kg/m3以下である
蒸着マスク。
【請求項4】
蒸着マスク用基材に貫通孔を形成することを含み、
前記蒸着マスク用基材が、薄板ガラスである
蒸着マスクの製造方法。
【請求項5】
前記蒸着マスク用基材において、
ヤング率が、7.10×1010Pa以上9.50×1010Pa以下であり、
ポアソン比が、0.17以上0.25以下であり、
密度が、2200kg/m3以上2640kg/m3以下である
請求項4に記載の蒸着マスクの製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の蒸着マスクの製造方法によって製造された蒸着マスクを準備すること、および、
前記蒸着マスクを用いて蒸着対象に蒸着パターンを形成すること、を含む
表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸着マスク用基材、蒸着マスク、蒸着マスクの製造方法、および、表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸着マスクを製造するためのマスク基材には、金属板が用いられている。金属板は、例えば鉄‐ニッケル系合金から形成されている。金属板に対するウェットエッチングによって金属板がパターニングされ、これによって、金属板から蒸着マスクが形成される(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、蒸着対象の大型化に伴い、蒸着対象に蒸着パターンを形成する効率を高める観点から、蒸着マスクにも大型化することが求められている。大型の蒸着マスクでは蒸着マスクの自重による撓みが顕著であり、蒸着マスクの撓みに起因して、蒸着対象に対して蒸着パターンを形成する際の精度、すなわち、蒸着パターンの形状および位置の少なくとも一方における精度が低下する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための蒸着マスク用基材は、蒸着マスクを製造するために用いられる蒸着マスク用基材である。前記蒸着マスク用基材は、薄板ガラスであり、ヤング率が、7.10×1010Pa以上9.50×1010Pa以下であり、ポアソン比が、0.17以上0.25以下であり、密度が、2200kg/m3以上2640kg/m3以下である。
【0006】
上記課題を解決するための蒸着マスクは、蒸着マスク用基材によって形成された蒸着マスクである。前記蒸着マスク用基材は、薄板ガラスである。前記薄板ガラスは、複数のマスク孔を有する。前記薄板ガラスにおいて、ヤング率が、7.10×1010Pa以上9.50×1010Pa以下であり、ポアソン比が、0.17以上0.25以下であり、密度が、2200kg/m3以上2640kg/m3以下である。
【0007】
上記課題を解決するための表示装置の製造方法は、上記蒸着マスクの製造方法によって製造された蒸着マスクを準備すること、および、前記蒸着マスクを用いて蒸着対象に蒸着パターンを形成すること、を含む。
【0008】
上記蒸着マスク用基材によれば、金属製の蒸着マスク用基材によって蒸着マスクを形成した場合に比べて、蒸着マスクの自重に起因した蒸着マスクの撓みを抑えることが可能である。これにより、蒸着マスクを用いた蒸着パターンの形成における精度を高めることが可能である。
【0009】
上記蒸着マスク用基材において、前記蒸着マスク用基材は、10μm以上50μm以下の厚さを有してもよい。この蒸着マスク用基材によれば、蒸着マスク用基材から形成された蒸着マスクの撓みを抑えることが可能である。
【0010】
上記課題を解決するための蒸着マスクの製造方法は、蒸着マスク用基材に貫通孔を形成することを含み、前記蒸着マスク用基材が、薄板ガラスである。この蒸着マスクの製造方法によれば、金属製の蒸着マスク用基材によって蒸着マスクを形成した場合に比べて、蒸着マスクの自重に起因した蒸着マスクの撓みを抑えることが可能である。これにより、蒸着マスクを用いた蒸着パターンの形成における精度を高めることが可能である。
【0011】
上記蒸着マスクの製造方法では、前記蒸着マスク用基材において、ヤング率が、7.10×1010Pa以上9.50×1010Pa以下であり、ポアソン比が、0.17以上0.25以下であり、密度が、2200kg/m3以上2640kg/m3以下であってもよい。この蒸着マスクの製造方法によれば、蒸着マスクの撓みを抑える確実性を高めることが可能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、蒸着パターンを形成する際の精度の低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態の蒸着マスク用基材の構造を示す斜視図。
【
図2】第1実施形態の蒸着マスクの構造を示す平面図。
【
図3】
図2が示すIII‐III線に沿う構造の第1例を示す断面図。
【
図4】
図2が示すIII‐III線に沿う構造の第2例を示す断面図。
【
図5】
図2が示すIII‐III線に沿う構造の第3例を示す断面図。
【
図6】第1実施形態の蒸着マスクの製造方法を説明するための工程図。
【
図7】第1実施形態の蒸着マスクの製造方法を説明するための工程図。
【
図8】第1実施形態の蒸着マスクの製造方法を説明するための工程図。
【
図9】第1実施形態の蒸着マスクの製造方法を説明するための工程図。
【
図10】第1実施形態の蒸着マスクの製造方法を説明するための工程図。
【
図11】第1実施形態の蒸着マスクの製造方法を説明するための工程図。
【
図12】第1実施形態の蒸着マスクの製造方法を説明するための工程図。
【
図13】第1実施形態の蒸着マスクの製造方法を説明するための工程図。
【
図14】第1実施形態の蒸着マスクの製造方法を説明するための工程図。
【
図15】第1実施形態の蒸着マスクの製造方法を説明するための工程図。
【
図16】第1実施形態の表示装置の製造方法を説明するための工程図。
【
図17】第2実施形態の蒸着マスクの構造を示す平面図。
【
図18】
図17が示すXVIII‐XVIII線に沿う構造を示す断面図。
【
図19】第3実施形態の蒸着マスクの構造を示す平面図。
【
図20】
図18が示すXX‐XX線に沿う構造の第1例を示す断面図。
【
図21】
図19が示すXX‐XX線に沿う構造の第2例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1実施形態]
図1から
図16を参照して、蒸着マスク用基材、蒸着マスク、蒸着マスクの製造方法、および、表示装置の製造方法の一実施形態を説明する。
【0015】
[蒸着マスク用基材]
図1を参照して蒸着マスク用基材を説明する。
図1が示す蒸着マスク用基材10は、帯状を有した薄板ガラスである。蒸着マスク用基材10は、長手方向と、長手方向に直交する幅方向とを有してよい。なお、本実施形態の蒸着マスク用基材10は、幅方向に対して長手方向が十分に長い帯状を有するが、蒸着マスク用基材10は、1つの方向と当該方向に直交する方向との長さがほぼ等しい四角形状を有してもよい。
【0016】
蒸着マスク用基材10は、蒸着マスクを製造するために用いられる。蒸着マスク用基材10によって形成される蒸着マスクは、例えば、有機EL表示装置が備える有機発光層を形成する際に用いられるマスクである。なお、蒸着マスクは、有機発光層に限らず、例えば、有機EL表示装置を含む表示装置が備える金属製の配線を形成するためのマスクであってもよい。
【0017】
蒸着マスク用基材10は、以下の条件1から条件3を満たす。
(条件1)ヤング率が7.10×1010Pa以上9.50×1010Pa以下である。
(条件2)ポアソン比が0.17以上0.25以下である。
(条件3)密度が2200kg/m3以上2640kg/m3以下である。
【0018】
蒸着マスク用基材10のヤング率、および、ポアソン比は、超音波パルス法によって測定した値である。詳細には、ヤング率およびポアソン比は、JIS R 1602‐1995「ファインセラミックスの弾性率試験方法」の「5.3 超音波パルス法」に準拠した方法によって測定された値である。蒸着マスク用基材10の密度は、液中ひょう量法によって測定した値である。詳細には、密度は、JIS Z 8807:2012「固体の密度及び比重の測定方法」の「8 液中ひょう量法による密度及び比重の測定方法」に準拠した方法によって測定された値である。
【0019】
蒸着マスク用基材10が条件1から条件3を満たすから、金属製の蒸着マスク用基材によって蒸着マスクを形成した場合に比べて、蒸着マスクの自重に起因した蒸着マスクの撓みを抑えることが可能である。これにより、蒸着マスクを用いた蒸着パターンの形成における精度を高めることが可能である。
【0020】
蒸着マスク用基材10は、第1面10f1と第2面10f2とを含んでいる。第2面10f2は、第1面10f1とは反対側の面である。蒸着マスク用基材10は、10μm以上50μm以下の厚さTを有する。蒸着マスク用基材10は、ガラスから形成される。ガラスは、網目形成体と網目修飾体とを含む。網目形成体は、ケイ素(Si)、ホウ素(B)、リン(P)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、および、バナジウム(V)などである。網目形成体は、酸化ケイ素(SiO2)によって形成される網目状構造に含まれる。網目修飾体は、アルカリ金属およびアルカリ土類金属などである。アルカリ金属は、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、および、リチウム(Li)である。アルカリ土類金属は、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、および、バリウム(Ba)である。ガラスは、網目形成と網目修飾との両方の役割を有する中間酸化物を含むことができる。中間酸化物は、例えば、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、および、ジルコニウム(Zr)などの酸化物である。
【0021】
蒸着マスク用基材10は、石英ガラス、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス(無アルカリガラス)、アルミノケイ酸ガラス(高歪点ガラス)、および、結晶化ガラスから構成された群から選択されるいずれか1つから形成されている。石英ガラスは、シリカ(SiO2)の網目状構造から形成され、網目修飾イオンを有しない。
【0022】
ソーダ石灰ガラスの主成分は、Na2O・CaO・5SiO2である。ソーダ石灰ガラスの組成(質量%)において、SiO2が65質量%以上75質量%以下であり、Na2Oが10質量%以上20質量%以下であり、CaOが0.5質量%以上15質量%以下であり、Al2O3が0.5質量%以上4質量%以下であり、MgOが0.5質量%以上4.5質量%以下であり、Fe2O3が2質量%未満である。ソーダ石灰ガラスにおいて、ソーダ石灰ガラスの総質量が100質量%であるように、各酸化物の割合が決められる。
【0023】
ホウケイ酸ガラスは、ホウ酸とケイ酸との共重合によって形成された網目構造を有する。ホウ酸は、例えばオルトホウ酸(H3BO3)であり、ケイ酸は、例えばオルトケイ酸(H4SiO4)である。ホウケイ酸ガラスの組成(質量%)において、SiO2が73質量%以上82質量%以下であり、B2O5が7質量%以上14質量%以下であり、Al2O3が1.5%質量%以上6.5質量%以下である。また、ホウケイ酸ガラスの組成において、Na2OとK2Oとの総量が4質量%以上14質量%以下であり、CaOが0質量%以上0.5質量%以下である。ホウケイ酸ガラスにおいて、ホウケイ酸ガラスの総質量が100質量%であるように、各酸化物の割合が決められる。
【0024】
結晶化ガラスは、加熱によってガラス内に結晶が析出したガラスである。結晶化ガラスは、結晶とガラスとを含む。結晶化ガラスの組成(質量%)において、例えば、SiO2が50質量%以上80質量%以下であり、Al2O3が15質量%以上27質量%以下であり、Li2O、ZnO、TiO2、ZrO2がそれぞれ0質量%以上5質量%以下である。結晶化ガラスの組成(質量%)において、MgO、CaO、BaOは、それぞれ0質量%以上8質量%以下であり、Na2O、K2Oは、それぞれ0質量%以上2質量%以下である。結晶化ガラスにおいて、結晶化ガラスの総質量が100質量%であるように、各酸化物の割合が決められる。
【0025】
蒸着マスク用基材10は、アルミノホウケイ酸ガラス(無アルカリガラス)から形成されることが好ましい。アルミノホウケイ酸ガラスは、0.1質量%以下のアルカリ酸化物を含むガラスである。アルカリ酸化物は、上述したアルカリ金属の酸化物である。アルミノホウケイ酸ガラスは、他のガラスに比べて、熱収縮が小さく、また、耐薬品性を有するから好ましい。
【0026】
アルミノホウケイ酸ガラスの組成(質量%)において、例えば、SiO2が61質量%以上81質量%以下であり、Al2O3が2質量%以上22質量%以下であり、B2O3が4質量%以上15質量%以下であり、Na2Oが0質量%以上10質量%以下である。アルミノホウケイ酸ガラスの組成(質量%)において、MgOが0質量%以上5質量%以下であり、CaOが0質量%以上8質量%以下である。アルミノホウケイ酸ガラスの組成(質量%)において、SrOが0質量%以上10質量%以下であり、BaOが0質量%以上17質量%以下であり、ZnOが0質量%以上10質量%以下である。アルミノホウケイ酸ガラスにおいて、アルミノホウケイ酸ガラスの総質量が100質量%であるように、各酸化物の割合が決められる。
【0027】
蒸着マスク用基材10が0.1質量%を超えるアルカリ酸化物を含む場合には、蒸着マスク用基材10から形成された蒸着マスクを用いた蒸着工程において、アルカリ酸化物に由来するアルカリイオンが、蒸着マスクから蒸着対象に移行する場合がある。この点、蒸着マスク用基材10がアルミノホウケイ酸ガラスから形成される場合には、アルカリイオンの移行が抑えられる。そのため、蒸着対象へのアルカリイオンの移行を抑える観点において、蒸着マスク用基材10は、アルミノホウケイ酸ガラスから形成されることが好ましい。
【0028】
なお、上述したように、表示装置を製造するための蒸着工程におけるアルカリイオンの移行を抑える観点では、蒸着マスク用基材10がアルカリホウケイ酸ガラスから形成されることが好ましい。ただし、アルミノホウケイ酸ガラス以外のガラスにおいて、アルカリイオンの移行が抑えられる場合には、蒸着マスク用基材10がアルミノホウケイ酸ガラス以外のガラスから形成されてもよい。
【0029】
[マスク装置]
図2から
図5を参照して、蒸着マスクを備えるマスク装置を説明する。
図2は、蒸着マスクを備えるマスク装置の平面構造を示している。
【0030】
図2が示すように、マスク装置20は、蒸着マスク21とマスクフレーム22とを備えている。蒸着マスク21は、蒸着マスク用基材10から形成される。蒸着マスク21は、蒸着マスク用基材10と同様に、上述した条件1から条件3を満たす。マスクフレーム22は、ガラス板から形成されてよい。ガラス板、および、マスクフレーム22は、蒸着マスク21と同様に、条件1から条件3を満たすことが好ましい。
【0031】
図2が示す例では、蒸着マスク21は長方形状を有している。蒸着マスク21は、マスク領域21aと周辺領域21bとを含んでいる。本例の蒸着マスク21は、複数のマスク領域21aを備え、かつ、各マスク領域21aが周辺領域21bによって囲まれている。
【0032】
マスク領域21aは、複数のマスク孔21hを有している。各マスク孔21hは、蒸着マスク21の第1面21f1と第2面21f2との間を貫通している。各マスク領域21aにおいて、複数のマスク孔21hは規則的に並んでいる。本例では、複数のマスク孔21hは、正方格子の格子点上に1つのマスク孔21hが位置するようにマスク領域21aにおいて並んでいる。本例では、マスク孔21hは、第1面21f1と対向する視点から見て、長方形状を有している。各マスク孔21hは、蒸着対象に蒸着パターンを形成するための蒸着材料の通路である。
【0033】
周辺領域21bは、上述したように各マスク領域21aを囲んでいる。周辺領域21bは、マスク孔21hを有しない。周辺領域21bは、アライメントマーク21mを備えている。本例では、周辺領域21bは複数のアライメントマーク21mを備えている。第1面21f1と対向する視点から見て、蒸着マスク21の各角部に1つのアライメントマーク21mが位置している。アライメントマーク21mは、マスクフレーム22に対する蒸着マスク21の位置を決める際に用いられる。
【0034】
マスクフレーム22は、蒸着マスク21の第1面21f1と対向する視点から見て、蒸着マスク21を囲んでいる。マスクフレーム22の外形は、長方形状を有している。マスクフレーム22は、フレーム孔22hを有している。フレーム孔22h内には、蒸着マスク21のマスク領域21aが位置している。マスクフレーム22は、アライメントマーク22mを備えている。本例では、マスクフレーム22は、複数のアライメントマーク22mを備えている。マスクフレーム22の各角部に1つのアライメントマーク22mが位置している。アライメントマーク22mは、マスクフレーム22に対する蒸着マスク21の位置を決める際に用いられる。
【0035】
図3から
図5は、
図2のIII‐III線に沿うマスク装置20の断面構造を示している。なお、
図3は断面構造の第1例を、
図4は断面構造の第2例を、
図5は断面構造の第3例をそれぞれ示している。
【0036】
図3が示すように、III‐III線に沿う断面において、すなわち、第1面21f1に直交する断面において、各マスク孔21hは、長方形状を有している。各マスク孔21hでは、紙面の奥行き方向に沿って、長方形状を有した断面が連なっている。
【0037】
マスク装置20が蒸着装置に搭載された場合に、蒸着マスク21の第1面21f1が蒸着源と対向し、かつ、第2面21f2が蒸着対象と対向する。そのため、蒸着源から放出された蒸着材料は、フレーム孔22hを通過した後に、蒸着マスク21の第1面21f1から第2面21f2に向かう方向に沿って、マスク孔21hを通過する。
【0038】
図4が示す第2例では、マスク孔21hの形状が、第1例におけるマスク孔21hの形状とは異なっている。
図4が示すように、各マスク孔21hの第1開口21h1は、第1面21f1に位置している。マスク孔21hの第2開口21h2は、第2面21f2に位置している。第1開口21h1は、第2開口21h2よりも大きい。第1面21f1に平行な平面に沿うマスク孔21hの断面積は、第1面21f1から第2面21f2に向けて単調減少する。言い換えれば、第1面21f1に直交する断面において、各マスク孔21hは、台形状を有している。各マスク孔21hでは、紙面の奥行き方向に沿って、台形状を有した断面が連なっている。なお、各マスク孔21hは、第1面21f1に直交する断面において、円弧状を有してもよい。当該マスク孔21hでは、紙面の奥行き方向に沿って、円弧状を有した断面が連なっている。
【0039】
図5が示す第3例では、マスク孔21hの形状が、第1例および第2例におけるマスク孔21hの形状とは異なっている。
図5が示すように、各マスク孔21hは、大孔部21hLと小孔部21hSとを備えている。大孔部21hLの開口は、第1面21f1に位置している。小孔部21hSの開口は、第2面21f2に位置している。大孔部21hLは、第1面21f1から第2面21f2に向かう途中において、小孔部21hSに繋がっている。
【0040】
大孔部21hLの開口は、小孔部21hSの開口よりも大きい。第1面21f1に平行な平面に沿う大孔部21hLの断面積は、第1面21f1から第2面21f2に向かう方向に沿って単調減少する。言い換えれば、第1面21f1に直交する断面において、各大孔部21hLは、台形状を有している。第1面21f1に平行な平面に沿う小孔部21hSの断面積は、第2面21f2から第1面21f1に向かう方向に沿って単調減少する。言い換えれば、第1面21f1に直交する断面において、各小孔部21hSは、台形状を有している。
【0041】
なお、大孔部21hLは、第1面21f1に直交する断面において、円弧状を有してもよい。当該大孔部21hLでは、紙面の奥行き方向に沿って、円弧状を有した断面が連なっている。小孔部21hSは、第1面21f1に直交する断面において、円弧状を有してもよい。当該小孔部21hSでは、紙面の奥行き方向に沿って、円弧状を有した断面が連なっている。
【0042】
[蒸着マスク用基材の製造方法]
蒸着マスク用基材10は、ガラス原料を溶融し、これにより得られた溶融ガラスを板状に成形する。これにより、帯状を有した薄板ガラスが得られる。薄板ガラスの成形方法は、例えば、フロート法、フュージョン法、ダウンドロー法、リドロー法、または、プレス成形法などであってよい。
【0043】
薄板ガラスは、薄板ガラスが含むAl2O3の量が増えることによって、薄板ガラスのヤング率が高くなる傾向を有する。そのため、例えば、薄板ガラスが含むAl2O3の量を第1の量から第2の量に増やすことによって、第2の量のAl2O3を含む薄板ガラスのヤング率を、第1の量のAl2O3を含む薄板ガラスのヤング率よりも高くすることが可能である。
【0044】
超音波パルス法では、ヤング率(E)(N/m2)、剛性率(G)(N/m2)、および、ポアソン比(ν)が以下に記載の関係を満たす。なお、以下に記載の数式において、ρはかさ密度(kg/m3)であり、VLは縦波音速(m/s)であり、VSは横波音速(m/s)である。
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
薄板ガラスの密度は、例えば、薄板ガラスの熱履歴、および、薄板ガラスに印加される圧力によって変わる。例えば、薄板ガラスが石英ガラスから形成される場合には、薄板ガラスを常温、かつ、所定以上の高い圧力に曝すことによって、薄板ガラスを加圧しない場合に比べて、薄板ガラスの密度を高めることが可能である。また例えば、薄板ガラスを所定以上の高い温度、および、所定以上の高い圧力に曝すことによって、薄板ガラスを加熱および加圧しない場合に比べて、薄板ガラスの密度を高めることが可能である。
【0049】
そのため、上述した各成形方法を用いた場合において、薄板ガラスのヤング率、ポアソン比、および、密度を調整することが可能である。
なお、蒸着マスク用基材10の製造方法は、上述した薄板ガラスの形成方法によって薄板ガラスを形成した後に、薄板ガラスの厚さを薄くする工程を含んでもよい。この場合には、例えば、数百μmの厚さを有した薄板ガラスを形成した後に、薄板ガラスの厚さが10μm以上50μm以下になるように、薄板ガラスの厚さを薄くしてもよい。
【0050】
[蒸着マスクの製造方法]
図6から
図15を参照して、蒸着マスク21の製造方法を説明する。以下では、蒸着マスク21の製造方法のうち、マスク孔21hの形成に関わる工程であり、かつ、マスク孔21hが上述した第3例の形状を有する場合の工程を説明する。また、蒸着マスク21にマスク孔21hが形成される際には、複数のマスク孔21hが蒸着マスク用基材10に対して一度に形成されるが、
図6から
図15では、図示の便宜上、1つのマスク孔21hのみが示される。また、
図6から
図15では、各製造工程における蒸着マスク用基材10を含む積層体の断面構造が示されている。
【0051】
図6が示すように、蒸着マスク21を製造する際には、まず、蒸着マスク用基材10を準備する。蒸着マスク用基材10は、第1面10f1と、第1面10f1とは反対側の第2面10f2とを備えている。第1面10f1に第1クロム層31aを形成し、第2面10f2に第2クロム層31bを形成する。クロム層31a,31bの形成には、例えば、スパッタ法または蒸着法を用いることができる。
【0052】
クロム層31a、31b上にレジスト層を形成する。レジスト層を形成する材料には、フッ酸に対する耐性を有したポジ型レジスト材料を用いる。第1クロム層31a上に形成したレジスト層をパターン露光および現像する。これにより、第1クロム層31a上に貫通孔を有した第1レジスト層32aを形成する。一方で、第2クロム層31b上に第2レジスト層32bを形成する。次いで、第1レジスト層32aを用いて第1クロム層31aをエッチングする。これにより、第1クロム層31aに貫通孔を形成する。
【0053】
なお、第2クロム層31bが以下に説明するエッチングに用いられるフッ酸に対して十分な耐性を有するのであれば、第2レジスト層32bを省略してもよい。ただし、一対のクロム層の両方にレジスト層を形成することによって、レジスト層が存在しないクロム層に対してパターン露光および現像を行うことを避けることが可能である。
【0054】
図7が示すように、第1クロム層31aを用いて蒸着マスク用基材10を第1面10f1からエッチングする。この際に、超音波を印加したフッ酸を用いて蒸着マスク用基材10をウェットエッチングする。これにより、蒸着マスク用基材10に大孔部10hLを形成する。フッ酸に対してフッ酸よりも高い粘度を有した酸を添加することが可能である。高い粘度を有した酸は、例えば硫酸である。高い粘度を有した酸をフッ酸に添加することによって、高い粘度を有した酸をフッ酸に添加しない場合に比べて、蒸着マスク用基材10の厚さあたりにおいて、第1面10f1に平行な平面に沿う大孔部10hLの面積が減少する割合を大きくすることが可能である。
【0055】
図8が示すように、第3レジスト層33を第1レジスト層32a上に形成する。第3レジスト層33の厚さは、第1レジスト層32aの厚さよりも厚いことが好ましい。第3レジスト層33の一部は、第1クロム層31aの貫通孔、および、第1レジスト層32aの貫通孔に充填される。
【0056】
図9が示すように、第3レジスト層33を支持板34に固定する。支持板34は、フッ酸に対する耐性を有する。そして、剥離液を用いて第2クロム層31bから第2レジスト層32bを剥離する。その後、第2クロム層31bをエッチングして、第2面10f2から第2クロム層31bを取り除く。
【0057】
図10が示すように、蒸着マスク用基材10を第2面10f2からエッチングする。この際に、大孔部10hLが第2面10f2に繋がらないように蒸着マスク用基材10をエッチングする。蒸着マスク用基材10のエッチングには、フッ酸を用いる。
【0058】
図11が示すように、第3レジスト層33から支持板34を取り外す。そして、第2面10f2上に第3クロム層35を形成する。次いで、第3クロム層35上にレジスト層を形成する。レジスト層を形成する材料には、フッ酸に対する耐性を有したポジ型レジスト材料を用いる。レジスト層をパターン露光および現像する。これにより、第3クロム層35上に貫通孔を有した第4レジスト層36を形成する。次いで、第4レジスト層36を用いて第3クロム層35をエッチングする。これにより、第3クロム層35に貫通孔を形成する。
【0059】
図12が示すように、第3クロム層35を用いて蒸着マスク用基材10を第2面10f2からエッチングする。この際に、超音波を印加したフッ酸を用いて蒸着マスク用基材10をウェットエッチングする。これにより、蒸着マスク用基材10に小孔部10hSを形成する。小孔部10hSの一部が大孔部10hLの一部に繋がるように、小孔部10hSが蒸着マスク用基材10に形成される。
【0060】
図13が示すように、剥離液を用いて第3クロム層35から第4レジスト層36を剥離する。その後、第3クロム層35をエッチングして、第2面10f2から第3クロム層35を取り除く。
【0061】
図14が示すように、第2面10f2から蒸着マスク用基材10をエッチングすることによって、蒸着マスク用基材10の厚さを薄くする。この際に、蒸着マスク用基材10の厚さを小孔部10hSの深さ未満の厚さだけ薄くする。これにより、蒸着マスク用基材10を薄くし、かつ、小孔部10hSの深さを浅くする。小孔部10hSの深さは2μm以下であってよく、1μmであることが好ましく、0.5μm以下であることがより好ましい。
【0062】
図15が示すように、剥離液を用いて蒸着マスク用基材10から第3レジスト層33および第2レジスト層32bを剥離する。その後、第1クロム層31aをエッチングして、第2面10f2から第1クロム層31aを取り除く。これにより、マスク孔10hを有した蒸着マスク用基材10が得られる。次いで、所定の大きさを有する蒸着マスク21を蒸着マスク用基材10から切り出す。これにより、蒸着マスク21が得られる。
【0063】
なお、蒸着マスク用基材10の第1面10f1が、蒸着マスク21の第1面21f1に対応する。蒸着マスク用基材10の第2面10f2が、蒸着マスク21の第2面21f2に対応する。蒸着マスク用基材10のマスク孔10hが、蒸着マスク21のマスク孔21hに対応する。
【0064】
[表示装置の製造方法]
図16を参照して、表示装置の製造方法を説明する。
表示装置の製造方法は、蒸着マスク21の製造方法によって製造された蒸着マスク21を用いて蒸着対象にパターンを形成することを含んでいる。以下、蒸着装置の一例とともに、パターンを形成する工程を説明する。
【0065】
図16が示すように、蒸着装置100は、マスク装置20と、蒸着対象Sとを収容する収容槽101を備えている。収容槽101は、蒸着対象Sとマスク装置20とを収容槽101内における所定の位置に保持するように構成されている。収容槽101内には、蒸着材料Mvdを保持する保持部102と、蒸着材料Mvdを加熱する加熱部103とが位置している。保持部102に保持される蒸着材料Mvdは、有機発光材料である。収容槽101は、蒸着対象Sとマスク装置20とを、蒸着対象Sと保持部102との間にマスク装置20が位置し、かつ、マスク装置20と保持部102とが対向するように、収容槽101内に位置させる。マスク装置20は、蒸着マスク21の第2面21f2が蒸着対象Sに密着した状態で、もしくは近接した状態で、収容槽101内に配置される。
【0066】
パターンを形成する工程では、蒸着材料Mvdが加熱部103によって加熱されることにより、蒸着材料Mvdが気化または昇華する。気化または昇華した蒸着材料Mvdは、蒸着マスク21のマスク孔21hを通過して蒸着対象Sに付着する。これにより、蒸着マスク21が有するマスク孔21hの形状および位置に対応した形状を有する有機層が、蒸着対象Sにおける所定の位置に形成される。
【0067】
[試験例]
表1を参照して、試験例を説明する。
[試験例1]
フロート法を用いて、以下を満たすアルミノホウケイ酸ガラス製の蒸着マスク用基材を得た。蒸着マスク用基材において、SiO2が72.4質量%であり、Al2O3が4.7質量%であり、B2O3が9.2質量%であり、Li2Oが0.1質量%であり、Na2Oが6.1質量%であり、K2Oが0.5質量%であり、CaOが0.3質量%であり、BaOが3.5質量%であり、ZnOが2.7質量%であり、Fe2O3が0.1質量%であり、Clが0.3質量%であり、Fが0.1質量%であった。
【0068】
[試験例2]
試験例1において、Al2O3の量を増やした以外は、試験例1と同様の方法によって試験例2の蒸着マスク用基材を得た。
【0069】
[試験例3]
試験例1において、Al2O3の量を試験例1よりも多くし、かつ、試験例2よりも少なくした以外は、試験例1と同様の方法によって、試験例3の蒸着マスク用基材を得た。
【0070】
[試験例4]
VAD(Vapor phase Axial Deposition :気相軸付け)法を用いて、以下を満たす石英ガラス製の蒸着マスク用基材を得た。蒸着マスク用基材において、Alが0.1×10-4質量%であり、FeとNaとKがそれぞれ、0.05×10-4質量%であり、Cuが0.01×10-4質量%であり、Liが0.03×10-4質量%であり、OH基が0.8×10-4質量%であった。蒸着マスク用基材において、残部がSiO2であった。
【0071】
[試験例5]
フロート法を用いて、ソーダ石灰ガラス製の蒸着マスク用基材を得た。蒸着マスク用基材において、SiO2が71.4質量%であり、Al2O3が1.8質量%あり、MgOが4.3質量%であり、CaOが8.3質量%以下であり、Na2Oが12.8質量%であり、K2Oが0.6質量%であり、Fe2O3が0.7質量%であり、SO3が0.1質量%であった。
【0072】
[試験例6]
フロート法を用いて、以下を満たす結晶化ガラス製の蒸着マスク用基材を得た。蒸着マスク用基材において、Li2Oが3.8質量%であり、Na2Oが0.6質量%であり、K2Oが0.3質量%であり、MgOが0.3質量%であり、CaOが0.4質量%であり、BaOが2.3質量%であり、ZnOが1.5質量%であり、Al2O3が20.6質量%であり、SiO2が65.4質量%であり、TiO2が3.1質量%であり、ZrO2が1.4質量%であり、SnO2が0.2質量%であり、Fe2O3が0.1質量%であった。
【0073】
[試験例7]
試験例6において、Al2O3の量を増やした以外は、試験例6と同様の方法によって試験例7の蒸着マスク用基材を得た。
【0074】
[試験例8]
ダウンドロー法を用いて、ホウ酸とケイ酸とを用いて、ホウケイ酸ガラス製の蒸着マスク用基材を得た。蒸着マスク用基材において、SiO2が80.91質量%であり、B2O5が12.72質量%であり、Al2O3が2.3質量%であり、Na2Oが4.0質量%であり、K2Oが0.04質量%であり、Fe2O3が0.03質量%であった。
【0075】
[試験例9]
試験例9の蒸着マスク用基材として、インバー(36Ni‐Fe)製の金属板を準備した。
【0076】
[試験例10]
試験例10の蒸着マスク用基材として、スーパーインバー(32Ni‐5Co‐Fe)製の金属板を準備した。
【0077】
[評価方法]
[ヤング率およびポアソン比]
JIS R 1602‐1995「ファインセラミックスの弾性率試験方法」の「5.3 超音波パルス法」に準拠した方法によって、各試験例の蒸着マスク用基材のヤング率およびポアソン比を算出した。この際に、音速測定装置(RITEC社製、RAM‐5000型)を用いた。
【0078】
[密度]
JIS Z 8807:2012「固体の密度及び比重の測定方法」の「8 液中ひょう量法による密度及び比重の測定方法」に準拠した方補得によって、各試験例の蒸着マスク用基材の密度を算出した。この際に、電子天びん精密比重計((株)島津製作所製、AUW320、簡易比重測定キットSMK‐401)を用いた。
【0079】
[撓み量]
各試験例の蒸着マスク用基材について、解析シミュレーションソフト(ムラタソフトウェア(株)製、Femtet)(Femtetは登録商標)を用いたシミュレーションによって蒸着マスク用基材の撓み量を算出した。この際に、各試験例の蒸着マスク用基材のヤング率、ポアソン比、および、密度の各々の値を用いた。シミュレーションにおいて、各試験例の蒸着マスク用基材の形状を正方形状に設定し、一辺の長さを500mmに設定した。各試験例について、第1の厚さである10μmと、第2の厚さである30μmとを設定した。また、各試験例の蒸着マスク用基材の各辺が固定され、かつ、各辺に対して圧力が印加されていない条件において、蒸着マスク用基材の撓み量を算出した。なお、蒸着マスク用基材の撓み量は、蒸着マスク用基材の撓み量の最大値である。
【0080】
[評価結果]
各試験例の蒸着マスク用基材について、ヤング率、ポアソン比、および、密度の測定結果、および、撓み量のシミュレーション結果は、以下の表1が示す通りであった。
【0081】
【0082】
表1が示すように、試験例1から試験例8の蒸着マスク用基材におけるヤング率は、7.10×1010Pa以上9.50×1010Pa以下の範囲に含まれることが認められた。これに対して、試験例9および試験例10の蒸着マスク用基材におけるヤング率は、1.37×1011Pa以上1.41×1011Pa以下の範囲に含まれることが認められた。
【0083】
試験例1から試験例8の蒸着マスク用基材におけるポアソン比は、0.17以上0.25の範囲に含まれることが認められた。これに対して、試験例9および試験例10の蒸着マスク用基材におけるポアソン比は、0.29であることが認められた。
【0084】
試験例1から試験例8の蒸着マスク用基材における密度は、2200kg/m3以上2640kg/m3以下の範囲に含まれることが認められた。これに対して、試験例9および試験例10の蒸着マスク用基材における密度は、8140kg/m3以上8150kg/m3以下の範囲に含まれることが認められた。
【0085】
蒸着マスク用基材の厚さが10μmである場合には、試験例1から試験例8の蒸着マスク用基材における撓み量は、1.58mm以上2.04mm以下の範囲に含まれることが認められた。これに対して、試験例9および試験例10の蒸着マスク用基材における撓み量は、3.52mm以上3.62mm以下の範囲に含まれることが認められた。
【0086】
蒸着マスク用基材の厚さが30μmである場合には、試験例1から試験例8の蒸着マスク用基材における撓み量は、1.57mm以上2.02mm以下の範囲に含まれることが認められた。これに対して、試験例9および試験例10の蒸着マスク用基材における撓み量は、3.49mm以上3.60mm以下の範囲に含まれることが認められた。
【0087】
このように、薄板ガラス製の蒸着マスク用基材によれば、インバー製の蒸着マスク用基材、および、スーパーインバー製の蒸着マスク用基材に比べて、蒸着マスク用基材、ひいては、蒸着マスク用基材から形成された蒸着マスクの撓みが抑えられることが認められた。そのため、こうした蒸着マスクによれば、蒸着マスクを用いた蒸着パターンの形成における精度、すなわち、蒸着パターンの位置および形状の少なくとも一方における精度を高めることが可能であるといえる。
【0088】
以上説明したように、蒸着マスク用基材、蒸着マスク、蒸着マスクの製造方法、および、表示装置の製造方法によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)金属製の蒸着マスク用基材によって蒸着マスクを形成した場合に比べて、蒸着マスク21の自重に起因した蒸着マスク21の撓みを抑えることが可能である。これにより、蒸着マスク21を用いた蒸着パターンの形成における精度を高めることが可能である。
【0089】
(2)蒸着マスク用基材10の厚さが10μm以上30μm以下であることによって、蒸着マスク用基材10から形成された蒸着マスクの撓みを抑えることが可能である。
【0090】
[第2実施形態]
図17および
図18を参照して、蒸着マスクの第2実施形態を説明する。第2実施形態の蒸着マスクは、マスク孔が形成された樹脂層を備える点において、第1実施形態の蒸着マスク21と異なっている。そのため以下では、こうした相違点を詳しく説明する一方で、第2実施形態の蒸着マスクにおいて第1実施形態の蒸着マスク21と共通する構造には同一の符号を付すことによって、当該構造の詳しい説明を省略する。
【0091】
[マスク装置]
図17および
図18を参照して、蒸着マスクを備えるマスク装置を説明する。
図17は、蒸着マスクを備えるマスク装置の平面構造を示している。
【0092】
図17が示すように、マスク装置40は、蒸着マスク41とマスクフレーム22とを備えている。蒸着マスク41は、ガラス層41aと樹脂層41bとを備えている。ガラス層41aは、上述した蒸着マスク用基材10から形成されている。ガラス層41aは、上述した条件1から条件3を満たす。ガラス層41aは、10μm以上50μm以下の厚さを有することができる。
【0093】
ガラス層41aは、第1面41af1、第2面41af2(
図18参照)、および、貫通孔41ahを備えている。貫通孔41ahは、第1面41af1と第2面41af2との間を貫通している。貫通孔41ahは、第1面41af1と対向する視点から見て、蒸着対象に蒸着パターンを形成するためのマスク孔よりも大きい。貫通孔41ahは、複数のマスク孔を含むことが可能な大きさを有している。
図17が示す例では、ガラス層41aは、複数の貫通孔41ahを備えている。
【0094】
ガラス層41aは、第1アライメントマーク41am1と、第2アライメントマーク41am2とを備えている。第1アライメントマーク41am1は、第1実施形態の蒸着マスク21が備えるアライメントマーク21mに対応する。本例では、ガラス層41aは、複数の第2アライメントマーク41am2を備えている。ガラス層41aにおいて、貫通孔41ahの全てを含む長方形状の領域であって、かつ、各貫通孔41ahの外形の一部が当該領域の縁に位置するように設定される領域の角部に、第2アライメントマーク41am2が1つずつ位置している。第2アライメントマーク41am2は、ガラス層41aに対する樹脂層41bの位置を決める際に用いられる。
【0095】
樹脂層41bは、樹脂層41bの厚さ方向において、ガラス層41aに対してマスクフレーム22とは反対側に位置している。樹脂層41bは、ガラス層41aに積層されている。樹脂層41bは、複数のマスク孔41bhを備えている。各マスク孔41bhは、樹脂層41bの厚さ方向に沿って樹脂層41bを貫通している。マスク孔41bhは、蒸着対象に対して所定の形状を有した蒸着パターンを形成するための孔である。
【0096】
図18は、
図17が示すXVIII‐XVIII線に沿う断面構造を示している。
図18が示すように、樹脂層41bは、ガラス層41aの第2面41af2に接合されている。樹脂層41bは、マスク領域41baと周辺領域41bbとを備えている。本例では、樹脂層41bは、複数のマスク領域41baであって、ガラス層41aの貫通孔41ahと同数のマスク領域41baを備えている。ガラス層41aの第1面41af1と対向する視点から見て、マスク領域41baは、貫通孔41ah内に位置している。
【0097】
各マスク領域41baは、複数のマスク孔41bhを有している。複数のマスク孔41bhは、正方格子の格子点上に1つのマスク孔41bhが位置するようにマスク領域41baにおいて並んでいる。本例では、マスク孔41bhは、ガラス層41aの第1面41af1と対向する視点から見て、長方形状を有している。各マスク孔41bhは、蒸着対象に蒸着パターンを形成するための蒸着材料の通路である。
【0098】
周辺領域41bbは、各マスク領域41baを囲んでいる。周辺領域41bbは、マスク孔41bhを有しない。周辺領域41bbのうち、ガラス層41aに接する部分は、ガラス層41aに接合されている。周辺領域41bbの一部は、ガラス層41aに接合されている。
【0099】
樹脂層41bは、3μm以上10μm以下の厚さを有することができる。樹脂層41bを形成する材料は、レーザー加工などによって高精細な開口部の形成が可能であること、熱あるいは経時での寸法変化率および吸湿率が小さいこと、および、軽量であることを満たす材料を用いることが好ましい。樹脂層41bは、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂、エチレン‐メタクリル酸共重合体樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、セロファン、アイオノマー樹脂などから形成されてよい。ガラス層41aの線膨張係数と樹脂層41bの線膨張係数との差を小さくする観点では、樹脂層41bは、ポリイミド樹脂から形成されることが好ましい。
【0100】
[蒸着マスクの製造方法]
以下、蒸着マスク41の製造方法を説明する。
蒸着マスク41を製造する際には、ガラス層41aと樹脂層41bとを別々に形成する。ガラス層41aを形成する際には、上述した蒸着マスク用基材10を準備する。次いで、第1実施形態と同様に、フッ酸を用いたウェットエッチングによって、蒸着マスク用基材10に貫通孔を形成する。なお、貫通孔を形成する際には、蒸着マスク用基材10を第1面10f1からエッチングすることによって、蒸着マスク用基材10の凹部を形成する。そして、蒸着マスク用基材10を第2面10f2から第1面10f1に向かう方向に沿って、蒸着マスク用基材10を凹部の底部まで削る。これにより、蒸着マスク用基材10に貫通孔が形成される。
【0101】
樹脂層41bを形成する際には、上述したように、例えばポリイミド樹脂によって形成された前駆層を準備する。次いで、前駆層に対してレーザー光線を照射することによって、前駆層に貫通孔を形成する。これにより、樹脂層41bを形成することが可能である。ガラス層41aが有する第2アライメントマーク41am2を用いてガラス層41aに対する樹脂層41bの位置を決める。そして、樹脂層41bの周辺領域41bbにガラス層41aとは反対側からレーザー光線を照射することによって、ガラス層41aに樹脂層41bを溶接することが可能である。これにより、蒸着マスク41を得ることができる。
【0102】
以上説明したように、蒸着マスクの第2実施形態によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(3)蒸着マスク41がガラス層41aと樹脂層41bとから形成されるから、ガラス層のみから形成される場合に比べて、蒸着マスク41の軽量化が可能である。それゆえに、蒸着マスク41の撓みをより抑えることが可能である。
【0103】
[第3実施形態]
図19から
図21を参照して、蒸着マスクの第3実施形態を説明する。第3実施形態の蒸着マスクは、樹脂層が備える貫通孔とガラス層が備える貫通孔とがマスク孔を形成する点において、第1実施形態の蒸着マスク21と異なっている。そのため以下では、こうした相違点を詳しく説明する一方で、第3実施形態の蒸着マスクにおいて第1実施形態の蒸着マスク21と共通する構造には同一の符号を付すことによって、当該構造の説明を省略する。
【0104】
[マスク装置]
図19から
図21を参照して、蒸着マスクを備えるマスク装置を説明する。
図19は、蒸着マスクを備えるマスク装置の平面構造を示している。
【0105】
図19が示すように、マスク装置50は、蒸着マスク51とマスクフレーム22とを備えている。蒸着マスク51は、ガラス層51aと樹脂層51bとを備えている。ガラス層51aは、上述した蒸着マスク用基材10から形成されている。ガラス層51aは、上述した条件1から条件3を満たす。ガラス層51aは、10μm以上50μm以下の厚さを有することができる。
【0106】
ガラス層51aは、第1面51af1、第2面51af2(
図20参照)、および、複数の第1マスク孔51ahを備えている。第1マスク孔51ahは、第1面51af1と第2面51af2との間を貫通している。ガラス層51aは、マスク領域51aaと周辺領域51abとを備えている。
図19が示す例では、ガラス層51aは、複数のマスク領域51aaを備えている。各マスク領域51aaは、複数の第1マスク孔51ahを備えている。複数の第1マスク孔51ahは、正方格子の格子点上に1つの第1マスク孔51ahが位置するようにマスク領域51aaにおいて並んでいる。各マスク孔51ahは、第1面51af1と対向する視点から見て、長方形状を有している。周辺領域51abは、各マスク領域51aaを囲んでいる。周辺領域51abは、第1マスク孔51ahを有しない。
【0107】
ガラス層51aはさらに、アライメントマーク51amを備えている。アライメントマーク51amは、第1実施形態の蒸着マスク21が備えるアライメントマーク21mに対応する。アライメントマーク51amは、マスクフレーム22に対する蒸着マスク51の位置を決める際に用いられる。
【0108】
樹脂層51bは、樹脂層51bの厚さ方向において、ガラス層51aに対してマスクフレーム22とは反対側に位置している。樹脂層51bは、ガラス層51aに積層されている。樹脂層51bは、複数の第2マスク孔51bhを備えている。各第2マスク孔51bhは、樹脂層51bの厚さ方向に沿って樹脂層51bを貫通している。各第2マスク孔51bhは、ガラス層51aの第1面51af1と対向する視点から見て、第1マスク孔51ah内に位置している。
【0109】
図20は、
図19が示すXX‐XX線に沿う断面構造であって、蒸着マスク51の断面構造の第1例を示している。これに対して、
図21は、
図19が示すXX‐XX線に沿う断面構造であって、蒸着マスク51の断面構造の第2例を示している。
【0110】
図20が示すように、第1例において、第1マスク孔51ahは、第1面51af1と第2面51af2との間を貫通している。XX‐XX線に沿う断面において、すなわち、第1面51af1に直交する断面において、各第1マスク孔51ahは、長方形状を有している。各第1マスク孔51ahでは、紙面の奥行き方向に沿って、長方形状を有した断面が連なっている。
【0111】
樹脂層51bは、ガラス層51aの第2面51af2に接合されている。樹脂層51bは、マスク領域51baと周辺領域51bbとを備えている。本例では、樹脂層51bは、複数のマスク領域51baであって、ガラス層51aのマスク領域51aaと同数のマスク領域51baを備えている。ガラス層51aの第1面51af1と対向する視点から見て、マスク領域51baは、ガラス層51aのマスク領域51aa内に位置している。
【0112】
各マスク領域51baは、複数の第2マスク孔51bhを有している。複数のマスク孔51bhは、正方格子の格子点上に1つの第2マスク孔51bhが位置するようにマスク領域51baにおいて並んでいる。本例では、第2マスク孔51bhは、ガラス層51aの第1面51af1と対向する視点から見て、長方形状を有している。第2マスク孔51bhは、XX‐XX線に沿う断面において、すなわち、第1面51af1に直交する断面において、各第2マスク孔51bhは、長方形状を有している。各第2マスク孔51bhでは、紙面の奥行き方向に沿って、長方形状を有した断面が連なっている。
【0113】
上述したように、第1面51af1と対向する平面視において、1つの第1マスク孔51ah内に1つの第2マスク孔51bhが位置している。これにより、第1マスク孔51ahと第2マスク孔51bhとが、蒸着対象に蒸着パターンを形成するための蒸着材料の通路を形成する。マスク装置50が蒸着装置に搭載された場合に、ガラス層51aの第1面51af1が蒸着源と対向し、かつ、樹脂層51bのうちで、ガラス層51aに接する面とは反対側の面が、蒸着対象と対向する。そのため、蒸着源から放出された蒸着材料は、フレーム孔22hを通過した後に、蒸着マスク51の第1マスク孔51ahと、その第1マスク孔51ah内に位置する第2マスク孔51bhを通過する。
【0114】
図21が示す第2例では、第1マスク孔51ahの形状が、第1例における第1マスク孔51ahの形状とは異なり、かつ、第2マスク孔51bhの形状が、第1例における第2マスク孔51bhの形状とは異なっている。
【0115】
図21が示すように、第2例において、XX‐XX線に沿う断面において、すなわち、第1面51af1に直交する断面において、第1マスク孔51ahは台形状を有している。第1面51af1に平行な平面に沿う第1マスク孔51ahの断面積は、第1面51af1から第2面51af2に向けて単調減少する。各第1マスク孔51ahでは、紙面の奥行き方向に沿って、台形状を有した断面が連なっている。
【0116】
XX‐XX線に沿う断面において、すなわち、第1面51af1に直交する断面において、第2マスク孔51bhは台形状を有している。第1面51af1に平行な平面に沿う第2マスク孔51bhの断面積は、第1面51af1から第2面51af2に向かう方向に沿って単調減少する。各第2マスク孔51bhでは、紙面の奥行き方向に沿って、台形状を有した断面が連なっている。
【0117】
ガラス層51aに接する面に位置する第2マスク孔51bhの開口は、第1面51af1に位置する第1マスク孔51ahの開口と同じ大きさを有する。そのため、第1マスク孔51ahと第2マスク孔51bhとによって形成されるマスク孔では、第1面51af1と平行な平面に沿う断面積が、第1面51af1から、樹脂層51bにおいてガラス層51aに接する面とは反対側の面に向けて単調減少する。
【0118】
[蒸着マスクの製造方法]
以下、蒸着マスク51の製造方法を説明する。
蒸着マスク51を製造する際には、まず、蒸着マスク用基材10に樹脂製の前駆層を形成する。次いで、第1実施形態と同様に、フッ酸を用いて蒸着マスク用基材10に貫通孔を形成する。この際に、蒸着マスク用基材10のうち、前駆層が形成された面とは反対側の面から蒸着マスク用基材10に貫通孔を形成する。これにより、ガラス層51aを得ることができる。
【0119】
次いで、前駆層にレーザー光線を照射することによって、前駆層に貫通孔を形成する。この際に、ガラス層51aを通じてレーザー光線を前駆層に照射してもよいし、前駆層に対するガラス層51aとは反対側からレーザー光線を前駆層に照射してもよい。これにより、樹脂層51bを得ることができる。結果として、ガラス層51aと樹脂層51bとを備える蒸着マスク51を得ることが可能である。
【0120】
なお、上述した蒸着マスク51の第1例と蒸着マスク51の第2例との間では、ガラス層51aのウェットエッチングに用いられるエッチング液が含む硫酸の量を変えることによって、ガラス層51aに形成される第1マスク孔51ahの形状を変えることが可能である。また、蒸着マスク51の第1例と蒸着マスク51の第2例との間では、樹脂層51bに照射するレーザー光線の条件を変えることによって、樹脂層51bに形成される第2マスク孔51bhの形状を変えることが可能である。
【0121】
以上説明したように、蒸着マスクの第3実施形態によれば、上述した(3)と同等の効果を得ることが可能である。
【0122】
[変更例]
なお、上述した各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
[蒸着マスク]
・第1実施形態の蒸着マスク21をマスクフレーム22に取り付ける際には、蒸着マスク21の各辺に、その辺が対向する辺から離れるような力を作用させ、これによって、蒸着マスク21の全体に張力を印加してもよい。この場合には、蒸着マスク21の第2面21f2のうち、周辺領域21bに含まれる部分が、張力が印加される被印加部を有してよい。被印加部は、磁石あるいは強磁性体製の薄膜によって形成される。蒸着マスク21は、蒸着マスク21の各辺に沿って少なくとも1つの被印加部を有することが可能である。蒸着マスク21が被印加部を有するため、被印加部を通じて磁石を用いて蒸着マスク21に張力を印加することが可能である。
【0123】
[ガラス層]
・第2実施形態の蒸着マスク41、および、第3実施形態の蒸着マスク51がマスクフレーム22に取り付けられる際にも、第1実施形態の蒸着マスク21と同様に、蒸着マスク41,51の全体に張力が印加されてもよい。この場合には、ガラス層41aの第2面41af2の一部が、上述した被印加部を有してよい。また、ガラス層51aの第2面51af2のうち、周辺領域51abに含まれる部分が、上述した被印加部を有してよい。これらの場合であっても、蒸着マスク41,51が被印加部を有するから、被印加部を通じて磁石を用いて蒸着マスク41,51に張力を印加することが可能である。
【0124】
[蒸着マスクの製造方法]
・
図3が示すマスク装置20が備える蒸着マスク21のマスク孔21h、および、
図4が示すマスク装置20が備える蒸着マスク21のマスク孔21hは、例えば、以下に記載の方法によって形成することができる。
【0125】
すなわち、第1面10f1から蒸着マスク用基材10をエッチングすることによって、蒸着マスク用基材10に凹部を形成する。次いで、第2面10f2から蒸着マスク用基材10を削ることによって、蒸着マスク用基材10の厚さを減らす。この際に、凹部が第2面10f2に開口するまで蒸着マスク用基材10を削ることによって、第1面10f1と第2面10f2とに開口が位置するマスク孔を有した蒸着マスク用基材10を得ることが可能である。
【0126】
・蒸着マスク21のマスク孔21hを形成する際には、小孔部10hSを形成した後に、大孔部10hLを形成してもよい。
【0127】
[マスクフレーム]
・マスクフレームは、条件1から条件3の少なくとも1つを満たさないガラスから形成されてもよい。あるいは、マスクフレームは、金属から形成されてもよい。この場合であっても、蒸着マスクが条件1から条件3を満たすガラスから形成される以上は、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
【0128】
[マスク装置]
・マスク装置20,40,50が蒸着装置に搭載される際には、マスク装置20,40,50が、水平方向に沿い、かつ、鉛直方向において蒸着対象よりも下方に位置してもよい。あるいは、マスク装置20,40,50は、水平方向に沿い、かつ、鉛直方向において蒸着対象よりも上方に位置してもよい。あるいは、マスク装置20,40,50は、鉛直方向に沿い、かつ、水平方向において蒸着対象と対向するように、収容槽101内に配置されてもよい。
【符号の説明】
【0129】
10…蒸着マスク用基材
20,40,50…マスク装置
21,41,51…蒸着マスク
41a,51a…ガラス層
41b,51b…樹脂層
22…マスクフレーム