IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 清水建設株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-柱梁接合構造および柱梁接合方法 図1
  • 特開-柱梁接合構造および柱梁接合方法 図2
  • 特開-柱梁接合構造および柱梁接合方法 図3
  • 特開-柱梁接合構造および柱梁接合方法 図4
  • 特開-柱梁接合構造および柱梁接合方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156975
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】柱梁接合構造および柱梁接合方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/30 20060101AFI20221006BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
E04B1/30 E
E04B1/58 508T
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060940
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 誠
(72)【発明者】
【氏名】広瀬 景一
(72)【発明者】
【氏名】貞広 修
(72)【発明者】
【氏名】増田 陽輔
(72)【発明者】
【氏名】河内 武
(72)【発明者】
【氏名】津畑 慎哉
(72)【発明者】
【氏名】中島 忠大
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA04
2E125AA14
2E125AB01
2E125AB12
2E125AC14
2E125AC23
2E125AG03
2E125AG12
2E125BB12
2E125BB22
2E125CA05
(57)【要約】
【課題】施工しやすく耐火性能に優れた木質の柱部材と鉄骨の梁部材の柱梁接合構造および柱梁接合方法を提供する。
【解決手段】柱部材12Bの側面に対向して配置される鉄骨の梁部材14と、鉄骨の梁部材14の側端部に設けられる第一側端部材42と、第一側端部材42と柱部材12Bの側面との間に区画形成される隙間52に充填配置される耐火材52Aと、第一側端部材42から隙間52を跨いで柱部材12Bに横方向に挿入配置され、一端側が第一側端部材42に固定されるとともに、他端側が柱部材12Bに付着固定されるねじ棒状の接合部材56、58と、この接合部材56、58よりも上側において第一側端部材42から隙間52を跨いで柱部材12Bを横方向に貫通して配置され、一端側が第一側端部材42に固定され、他端側が柱部材12Bの反対側の側面に固定される棒状の固定部材54とを備えるようにする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質の柱部材と梁部材とを接合してなる柱梁接合構造であって、
柱部材の少なくとも一つの側面に対向して配置される鉄骨の梁部材と、鉄骨の梁部材の側端部に設けられる第一側端部材と、第一側端部材と柱部材の側面との間に区画形成される隙間に充填配置される耐火材と、第一側端部材から隙間を跨いで柱部材に横方向に挿入配置され、一端側が第一側端部材に固定されるとともに、他端側が柱部材に付着固定されるねじ棒状の接合部材と、この接合部材よりも上側において第一側端部材から隙間を跨いで柱部材を横方向に貫通して配置され、一端側が第一側端部材に固定されるとともに、他端側が柱部材の反対側の側面に固定される棒状の固定部材とを備えることを特徴とする柱梁接合構造。
【請求項2】
柱部材の他の側面に対向して配置される木質の梁部材と、木質の梁部材の側端部に設けられるとともに柱部材の側面に当接配置される第二側端部材と、第二側端部材から柱部材に横方向に挿入配置され、一端側が第二側端部材に固定されるとともに、他端側が柱部材に付着固定されるねじ棒状の接合部材と、この接合部材よりも上側および下側において第二側端部材から柱部材を横方向に貫通して配置され、一端側が第二側端部材に固定されるとともに、他端側が柱部材の反対側の側面に固定される棒状の固定部材と、第二側端部材の周囲の領域に充填配置される耐火材とをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の柱梁接合構造。
【請求項3】
木質の柱部材は、上側に配置される上側柱部材と、上側柱部材の下側に配置される下側柱部材と、上側柱部材と下側柱部材の間に配置される接合金物とにより構成され、上側柱部材および下側柱部材の内部には、上下方向に挿入配置され、ここに付着固定されるとともに、端部側で接合金物に接合されたねじ棒状の接合部材が設けられ、接合金物の周囲の領域には耐火材が充填配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の柱梁接合構造。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一つに記載の柱梁接合構造を構築する柱梁接合方法であって、
鉄骨の梁部材を柱部材の側面に対向して配置するステップと、
第一側端部材と柱部材とを接合部材で接合する一方、第一側端部材と柱部材とを固定部材で固定するステップと、
第一側端部材と柱部材の側面の間の隙間に耐火材を充填するステップとを有することを特徴とする柱梁接合方法。
【請求項5】
請求項2に記載の柱梁接合構造を構築する柱梁接合方法であって、
木質の梁部材を柱部材の側面に対向して配置するステップと、
第二側端部材と柱部材とを接合部材で接合する一方、第二側端部材と柱部材とを固定部材で固定するステップと、
第二側端部材の周囲の領域に耐火材を充填するステップとを有することを特徴とする柱梁接合方法。
【請求項6】
請求項3に記載の柱梁接合構造を構築する柱梁接合方法であって、
下側柱部材と接合金物とを接合部材で接合するステップと、
上側柱部材と接合金物とを接合部材で接合するステップと、
接合金物の周囲の領域に耐火材を充填するステップとを有することを特徴とする柱梁接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質の柱部材と鉄骨の梁部材とを接合した柱梁接合構造および柱梁接合方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、中高層建物などに用いられる柱梁接合構造として、木質の柱部材と木質の梁部材とを鉄筋コンクリートの仕口部材を介して接合したものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。図5は、従来の柱梁接合構造の要部を分解した斜視図である。この図に示すように、上下の柱部材1と仕口部材2の接合には、仕口部材2の上下端面に設けられた接合金物3と、接合金物3から上下方向に突出して柱部材1の内部に付着固定される棒鋼4が用いられる。一方、仕口部材2と梁部材5の接合には、仕口部材2の側面に固定されたT字状断面の突出金物6と、梁部材5に挿入された突出金物6と梁部材5とを固定するドリフトピン7が用いられる。
【0003】
一方、本特許出願人は、耐火性能に優れた耐火集成材として、特許文献2に記載のものを既に提案している。この特許文献2の耐火集成材は、荷重を支持する集成材からなる芯材と、芯材の外側に設けられ、吸熱性および断熱性を有する無機質材料からなる第2燃え止まり層と、第2燃え止まり層の外側に設けられ、加熱により増厚して断熱性を発現するシート状の第1燃え止まり層と、第1燃え止まり層の外側に設けられる仕上げ材とを備えたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-002641号公報
【特許文献2】特開2015-129431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、長大なスパンの鉄骨梁を木質柱に接合する場合には、木質柱に大きな曲げモーメントが作用することになる。これに対処するために梁端部の固定度を上げると柱梁接合構造が複雑化して、施工が難しくなるおそれがある。このため、梁端部の固定度を可能な限り低く抑えることができて、現場で施工しやすい柱梁接合構造が求められていた。
【0006】
また、火災加熱を受けた場合に、鉄骨梁からの熱伝達によって木質柱の耐火性能が低下するおそれがある。このため、鉄骨梁からの熱伝達による木質柱の耐火性能低下を防ぐことができる耐火性能に優れた柱梁接合構造が求められていた。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、施工しやすく耐火性能に優れた木質の柱部材と鉄骨の梁部材の柱梁接合構造および柱梁接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る柱梁接合構造は、木質の柱部材と梁部材とを接合してなる柱梁接合構造であって、柱部材の少なくとも一つの側面に対向して配置される鉄骨の梁部材と、鉄骨の梁部材の側端部に設けられる第一側端部材と、第一側端部材と柱部材の側面との間に区画形成される隙間に充填配置される耐火材と、第一側端部材から隙間を跨いで柱部材に横方向に挿入配置され、一端側が第一側端部材に固定されるとともに、他端側が柱部材に付着固定されるねじ棒状の接合部材と、この接合部材よりも上側において第一側端部材から隙間を跨いで柱部材を横方向に貫通して配置され、一端側が第一側端部材に固定されるとともに、他端側が柱部材の反対側の側面に固定される棒状の固定部材とを備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る他の柱梁接合構造は、上述した発明において、柱部材の他の側面に対向して配置される木質の梁部材と、木質の梁部材の側端部に設けられるとともに柱部材の側面に当接配置される第二側端部材と、第二側端部材から柱部材に横方向に挿入配置され、一端側が第二側端部材に固定されるとともに、他端側が柱部材に付着固定されるねじ棒状の接合部材と、この接合部材よりも上側および下側において第二側端部材から柱部材を横方向に貫通して配置され、一端側が第二側端部材に固定されるとともに、他端側が柱部材の反対側の側面に固定される棒状の固定部材と、第二側端部材の周囲の領域に充填配置される耐火材とをさらに備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る他の柱梁接合構造は、上述した発明において、木質の柱部材は、上側に配置される上側柱部材と、上側柱部材の下側に配置される下側柱部材と、上側柱部材と下側柱部材の間に配置される接合金物とにより構成され、上側柱部材および下側柱部材の内部には、上下方向に挿入配置され、ここに付着固定されるとともに、端部側で接合金物に接合されたねじ棒状の接合部材が設けられ、接合金物の周囲の領域には耐火材が充填配置されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る柱梁接合方法は、上述した柱梁接合構造を構築する柱梁接合方法であって、鉄骨の梁部材を柱部材の側面に対向して配置するステップと、第一側端部材と柱部材とを接合部材で接合する一方、第一側端部材と柱部材とを固定部材で固定するステップと、第一側端部材と柱部材の側面の間の隙間に耐火材を充填するステップとを有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る他の柱梁接合方法は、上述した柱梁接合構造を構築する柱梁接合方法であって、木質の梁部材を柱部材の側面に対向して配置するステップと、第二側端部材と柱部材とを接合部材で接合する一方、第二側端部材と柱部材とを固定部材で固定するステップと、第二側端部材の周囲の領域に耐火材を充填するステップとを有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る他の柱梁接合方法は、上述した柱梁接合構造を構築する柱梁接合方法であって、下側柱部材と接合金物とを接合部材で接合するステップと、上側柱部材と接合金物とを接合部材で接合するステップと、接合金物の周囲の領域に耐火材を充填するステップとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る柱梁接合構造によれば、木質の柱部材と梁部材とを接合してなる柱梁接合構造であって、柱部材の少なくとも一つの側面に対向して配置される鉄骨の梁部材と、鉄骨の梁部材の側端部に設けられる第一側端部材と、第一側端部材と柱部材の側面との間に区画形成される隙間に充填配置される耐火材と、第一側端部材から隙間を跨いで柱部材に横方向に挿入配置され、一端側が第一側端部材に固定されるとともに、他端側が柱部材に付着固定されるねじ棒状の接合部材と、この接合部材よりも上側において第一側端部材から隙間を跨いで柱部材を横方向に貫通して配置され、一端側が第一側端部材に固定されるとともに、他端側が柱部材の反対側の側面に固定される棒状の固定部材とを備えるので、鉄骨の梁端部の固定度を低く抑えることができ、施工しやすく耐火性能に優れた柱梁接合構造を提供することができるという効果を奏する。
【0015】
また、本発明に係る他の柱梁接合構造によれば、柱部材の他の側面に対向して配置される木質の梁部材と、木質の梁部材の側端部に設けられるとともに柱部材の側面に当接配置される第二側端部材と、第二側端部材から柱部材に横方向に挿入配置され、一端側が第二側端部材に固定されるとともに、他端側が柱部材に付着固定されるねじ棒状の接合部材と、この接合部材よりも上側および下側において第二側端部材から柱部材を横方向に貫通して配置され、一端側が第二側端部材に固定されるとともに、他端側が柱部材の反対側の側面に固定される棒状の固定部材と、第二側端部材の周囲の領域に充填配置される耐火材とをさらに備えるので、鉄骨の梁部材と木質の梁部材が木質の柱部材に取り付いた柱梁架構による構造を提供することができるという効果を奏する。
【0016】
また、本発明に係る他の柱梁接合構造によれば、木質の柱部材は、上側に配置される上側柱部材と、上側柱部材の下側に配置される下側柱部材と、上側柱部材と下側柱部材の間に配置される接合金物とにより構成され、上側柱部材および下側柱部材の内部には、上下方向に挿入配置され、ここに付着固定されるとともに、端部側で接合金物に接合されたねじ棒状の接合部材が設けられ、接合金物の周囲の領域には耐火材が充填配置されるので、上側柱部材と下側柱部材を強固に接合するとともに、接合部分の耐火性能を確保することができるという効果を奏する。
【0017】
また、本発明に係る柱梁接合方法によれば、上述した柱梁接合構造を構築する柱梁接合方法であって、鉄骨の梁部材を柱部材の側面に対向して配置するステップと、第一側端部材と柱部材とを接合部材で接合する一方、第一側端部材と柱部材とを固定部材で固定するステップと、第一側端部材と柱部材の側面の間の隙間に耐火材を充填するステップとを有するので、鉄骨の梁端部の固定度を低く抑えることができ、施工しやすく耐火性能に優れた柱梁接合方法を提供することができるという効果を奏する。
【0018】
また、本発明に係る他の柱梁接合方法によれば、上述した柱梁接合構造を構築する柱梁接合方法であって、木質の梁部材を柱部材の側面に対向して配置するステップと、第二側端部材と柱部材とを接合部材で接合する一方、第二側端部材と柱部材とを固定部材で固定するステップと、第二側端部材の周囲の領域に耐火材を充填するステップとを有するので、鉄骨の梁部材と木質の梁部材が木質の柱部材に取り付いた柱梁架構による構造を提供することができるという効果を奏する。
【0019】
また、本発明に係る他の柱梁接合方法によれば、上述した柱梁接合構造を構築する柱梁接合方法であって、下側柱部材と接合金物とを接合部材で接合するステップと、上側柱部材と接合金物とを接合部材で接合するステップと、接合金物の周囲の領域に耐火材を充填するステップとを有するので、上側柱部材と下側柱部材を強固に接合するとともに、接合部分の耐火性能を確保することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明に係る柱梁接合構造および柱梁接合方法の実施の形態を示す正面断面図である。
図2図2は、図1のA-A線に沿った断面図である。
図3図3(1)は図1のB-B線に沿った断面図、(2)は図1のD-D線に沿った断面図、(3)は図2のC-C線に沿った断面図、(4)は図2のE-E線に沿った断面図である。
図4図4は、本発明に係る柱梁接合構造および柱梁接合方法の他の実施の形態を示す要部斜視図である。
図5図5は、従来の柱梁接合構造の要部分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明に係る柱梁接合構造および柱梁接合方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0022】
図1図3に示すように、本実施の形態に係る柱梁接合構造10は、木質の角型断面の柱部材12と、H形鋼(鉄骨)の梁部材14と、木質の梁部材16とを接合してなる構造である。梁部材14のフランジ18と梁部材16の上面にはスラブ20が設けられている。なお、本実施の形態では、柱部材12の断面寸法として580mm角程度のものを想定しており、梁部材14としてH-500×200×10×16mm程度のもの、梁部材16として高さ500mm、幅300mm程度のものを想定している。
【0023】
また、本実施の形態の柱部材12は、上記の特許文献2の耐火集成材を用いることを想定している。この柱部材12は、荷重を支持する集成材からなる芯材22と、芯材22の外側に設けられた被覆材24を備えている。被覆材24は、吸熱性および断熱性を有する無機質材料からなる第2燃え止まり層と、第2燃え止まり層の外側に設けられ、加熱により増厚して断熱性を発現するシート状の第1燃え止まり層と、第1燃え止まり層の外側に設けられる仕上げ材とからなる。
【0024】
柱部材12は、上側柱部材12Aと、下側柱部材12Bにより構成されており、少量の金物を用いて接合される。具体的には、上側柱部材12Aと下側柱部材12Bの間には、鉄骨の接合金物26が設けられている。この接合金物26は、上下に平行に配置されて部材の上下端面を構成する二枚のベースプレート28と、ベースプレート28間を接続する複数の縦型のリブプレート30とからなる。リブプレート30は、平面視で柱軸の周囲四方に井の字状に配置されている。ベースプレート28には接続棒鋼用の挿通孔32が複数設けられている。
【0025】
ベースプレート28の上面には上側柱部材12Aが当接配置され、下側のベースプレート28の下面にはレベル調整のプレート34を挟んで下側柱部材12Bが当接配置される。上側柱部材12Aおよび下側柱部材12Bの内部には、接続棒鋼36(接合部材)が上下方向に挿入配置されている。接続棒鋼36は、平面視で柱軸の周囲に複数配置され、上側柱部材12Aおよび下側柱部材12Bの内部に上下方向に延びて付着固定されるとともに、端部はベースプレート28にネジ接合している。これにより、接合金物26と上側柱部材12Aおよび下側柱部材12Bを接続棒鋼36で一体化して強固に接合する。
【0026】
より具体的には、接続棒鋼36は、木材(上側柱部材12A、下側柱部材12B)に挿入する部分にはラグスクリューの加工が、ナット締めする部分にはナット締め用のネジ切り加工が施され、それ以外は無加工となっている。接続棒鋼36の端部はベースプレート28の挿通孔32に通されており、ベースプレート28の外側で螺合したナット38によってベースプレート28に締結固定されている。接続棒鋼36は、例えばLSB(ラグスクリューボルト)やGIR(グルードインロッド)形式で構成することができる。接合金物26の周囲には、無収縮モルタル等の現場施工モルタル40(耐火材)が充填配置される。こうすることで、上側柱部材12Aの軸力が接合金物26を介して効率よく下側柱部材12Bに伝達される。また、接合部分の耐火性能を確保することができる。なお、上側柱部材12A、接合金物26および下側柱部材12Bの外側は、同じ被覆材24で被覆される。
【0027】
鉄骨の梁部材14は、下側柱部材12Bの上側の一つの側面に突出金物42(第一側端部材)を介して接合される。突出金物42は、ガセットプレート44とベースプレート46とを溶接してなるT字状断面の金物である。ガセットプレート44は、梁部材14のウェブ48の側端部にボルト50で固定される。ベースプレート46は、下側柱部材12Bの側面に対して隙間52を開けて対向配置される。本実施の形態の隙間52は40mm程度を想定している。ベースプレート46には複数(図の例ではガセットプレート44を挟んだ左右両側に4つずつ)のボルト孔が上下方向に間隔をあけて設けられており、各ボルト孔には上から順に引きボルト54、LSB56、LSB58、LSB60が下側柱部材12Bに挿入配置されている。
【0028】
LSB56、58は、ベースプレート46から下側柱部材12Bの内部に挿入配置される接合部材であり、梁部材14のせん断力を受けるシアキーとして機能する。梁部材14の重量は主にLSB56、58とベースプレート46で支持される。LSB56、58の頭部は、ベースプレート46の外側に位置し、それぞれ所定の埋め込み長を有している。LSB56、58には、隙間52内で押しナット70が装着されている。この押しナット70を回すことでベースプレート46を外側(隙間52を拡げる側)に押圧可能である。押しナット70は、上段の引きボルト54、下段のLSB60と合わせてベースプレート46の位置決めに利用することができる。なお、本実施の形態のLSB56、58はφ40mm程度のものを想定している。
【0029】
最上段の引きボルト54は、下側柱部材12Bを横方向に貫通する通しボルトとして配置される固定部材である。この引きボルト54は、梁部材14の自重で梁部材14が反時計回りに回転しようとする力に抵抗するために設けられる。引きボルト54の頭部62は、下側柱部材12Bの背面の凹部に配置されたプレート64に当接配置され、先端部66は、ベースプレート46の外側に配置されたナット68でベースプレート46に固定される。下側のLSB56、58の押しナット70がベースプレート46を押圧することで引きボルト54とバランスをとることができる。最下段のLSB60は、非貫通の引きボルトとして機能する。
【0030】
隙間52には、耐火材52Aが充填配置される。この耐火材52Aは、鉄骨の梁部材14から木質の下側柱部材12Bへの熱伝導を抑制するために設けられる。耐火材52Aには、例えばグラスウール、ロックウールや無収縮モルタルなどの材料を用いることができる。なお、梁部材14の下面と側面は、各種耐火被覆材、耐火塗料または柱部材12と同じ被覆材24で被覆される。
【0031】
木質の梁部材16は、下側柱部材12Bの上側の背向する二つの側面に突出金物72(第二側端部材)を介してそれぞれ接合される。突出金物72は、ガセットプレート74とエンドプレート76とを溶接してなるT字状断面の金物である。ガセットプレート74は、梁部材16の側端部から突出するガセットプレート16Aにボルト16Bで固定されている。ガセットプレート16Aは、梁部材16の側端部に設けられた凹溝に挿入配置され、梁部材16に対してドリフトピン78で接合されている。
【0032】
エンドプレート76は、下側柱部材12Bの側面に当接配置される。エンドプレート76と下側柱部材12Bとの間に、耐火材は設けていない。ガセットプレート74とエンドプレート76からなるT字状の突出金物72と接続するガセットプレート16Aが、柱部材12と同様の被覆材90を備えた梁部材16の芯材88と接続している所以である。つまり、この柱梁接合部では鋼材は直火で炙られないため、接触面に耐火材を挟む必要がないのである。エンドプレート76には複数(図の例ではガセットプレート74を挟んだ左右両側に3つずつ)のボルト孔が設けられており、各ボルト孔には上から順に引きボルト80、LSB82、引きボルト84が下側柱部材12Bに挿入配置されている。上下方向端部側に位置する引きボルト80、84は、下側柱部材12Bを横方向に貫通して配置される固定部材である。引きボルト80、84の端部は、エンドプレート76の外側に配置されたナット86でエンドプレート76に固定される。上下方向略中央に位置するLSB82は、エンドプレート76から下側柱部材12Bの内部に挿入配置される接合部材である。突出金物72の周囲には、耐火材72Aが充填配置される。耐火材72Aには、例えばグラスウール、ロックウールや無収縮モルタルなどの材料を用いることができる。
【0033】
本実施の形態の木質の梁部材16は、上記の特許文献2の耐火集成材を用いることを想定している。この梁部材16は、荷重を支持する集成材からなる芯材88と、芯材88の外側に設けられた被覆材90を備えている。被覆材90は、吸熱性および断熱性を有する無機質材料からなる第2燃え止まり層と、第2燃え止まり層の外側に設けられ、加熱により増厚して断熱性を発現するシート状の第1燃え止まり層と、第1燃え止まり層の外側に設けられる仕上げ材とからなる。
【0034】
本実施の形態によれば、木質の柱部材12と鉄骨の梁部材14の接合を、鉄筋コンクリートのような仕口部材を介さないで簡易に行うことができる。また、鉄骨の梁端部の固定度を低く抑えることができるので、柱部材12に曲げが生じないようにすることができる。このため、ロングスパン(例えば9m程度)の鉄骨梁を木質柱に接合した架設構造に有利である。特に、木質柱の片側にのみ鉄骨梁が接合する場合は、木質柱の負担が大きくなるが、本実施の形態によれば、その負担を低減することが可能である。
【0035】
また、火災加熱された鉄骨の梁部材14の熱は隙間52の耐火材52Aによって柱部材12の芯材に伝わりにくくなるため、所定の耐火性能を確保することができる。したがって、施工しやすく耐火性能に優れた柱梁接合構造を提供することができる。さらに、鉄骨の梁部材14と木質の梁部材16が木質の柱部材12に取り付いたハイブリッド柱梁架構による構造を提供することができる。
【0036】
図4は、本実施の形態の柱梁接合構造10を有するハイブリッド架構の模式図である。
この図に示すように、この架構は、木質の柱部材12と、鉄骨の梁部材14と、木質の梁部材16とからなる柱梁接合構造10を有している。この構造を用いて鉄骨架構と木質架構のハイブリッド架構を形成することができる。このようなハイブリッド架構は、木質の中高層建物(例えば10階建程度)の架構として好適である。この架構を建物に適用することで、例えば、材料の特性を活かして地震力を鉄骨架構で負担し、居室エリア外周の木質架構で鉛直力のみを負担する構造を実現することができる。木質の柱部材12の節割りを、図示しない周囲の鉄骨柱の節割りに合わせて複数層ごと(例えば2層ごと)の接合とし(2層1節構造)、工程が木質架構によってクリティカルにならないように施工性を向上させてもよい。
【0037】
なお、上記の実施の形態においては、鉄骨の梁部材14が柱部材12の一側面に接合する場合を例にとり説明したが、本発明はこれに限るものではなく、柱部材12の左右に鉄骨の梁部材14を配置するとともに、これらを柱部材12の両側面に接合した構造であってもよい。このようにしても、同様の作用効果を奏することができる。また、上記の実施の形態においては、鉄骨の梁部材14に加えて、木質の梁部材16が柱部材12の両側面に接合される場合を例にとり説明したが、本発明はこれに限るものではなく、木質の梁部材16が存在しない構造であってもよいし、柱部材12の一つの側面または三つの側面に木質の梁部材16が接合する構造であってもよい。このようにしても、同様の作用効果を奏することができる。
【0038】
また、上記の実施の形態においては、下側柱部材12Bの上側の側面(上下柱の継手に近い側面)に鉄骨の梁部材14を接合する場合を例にとり説明したが、本発明はこれに限るものではなく、柱部材12の継手(接合金物26)のない部分の側面に鉄骨の梁部材14を接合してもよい。このようにしても、同様の作用効果を奏することができる。
【0039】
次に、上記の柱梁接合構造10の構築方法の一例について説明する。
まず、下側柱部材12Bに突出金物42を取り付けて工場で製作しておく。また、木質の梁部材16の端部にガセットプレート16Aを取り付けて工場で製作しておく。また、木質の上側柱部材12Aおよび下側柱部材12Bは、予め接続棒鋼36を内部に挿入して工場で製作しておき、接合金物26と一体化しておくことが望ましい。
【0040】
施工現場では、下側柱部材12Bから上に突出した接続棒鋼36の端部をプレート34を介して接合金物26のベースプレート28にナット38等で止め付けることで施工精度を確保する。さらに、接合金物26の上に上側柱部材12Aを配置し、上側柱部材12Aから下に突出した接続棒鋼36の端部を接合金物26のベースプレート28にナット38等で止め付ける。その後、接合金物26の周囲に無収縮モルタル等の現場施工モルタル20を充填する。
【0041】
次に、鉄骨の梁部材14を下側柱部材12Bの側面に対向して配置し、突出金物42のガセットプレート44と梁部材14のウェブ48をボルト50で接合する。また、突出金物42と下側柱部材12Bとを引きボルト54、LSB56、LSB58、LSB60で接合する。その後、隙間52に耐火材52Aを充填する。
【0042】
次に、下側柱部材12Bの側面に突出金物72を配置し、引きボルト80、LSB82、引きボルト84を挿入して突出金物72を下側柱部材12Bに固定する。続いて、木質の梁部材16を突出金物72に対向して配置し、ガセットプレート16Aと突出金物72をボルト接合する。その後、突出金物72の周囲に耐火材72Aを充填する。柱部材12の側面と、梁部材14、16の側面および下面を被覆材24、90で被覆する。柱部材12、梁部材14の被覆は、現場で接合する部分に干渉しない範囲を予め工場で施工してもよい。また、ボルト16Bを用いる代わりに、ガセットプレート16Aと突出金物72を一体として製作しておき、現場にてドリフトピン78を施工して柱部材12と梁部材16を一体化してもよい。
【0043】
以上の手順により、柱梁接合構造10を簡易に構築することができる。この構築方法によれば、鉄骨の梁端部の固定度を低く抑えることができ、施工しやすく耐火性能に優れた柱梁接合構造10を提供することができる。
【0044】
以上説明したように、本発明に係る柱梁接合構造によれば、木質の柱部材と梁部材とを接合してなる柱梁接合構造であって、柱部材の少なくとも一つの側面に対向して配置される鉄骨の梁部材と、鉄骨の梁部材の側端部に設けられる第一側端部材と、第一側端部材と柱部材の側面との間に区画形成される隙間に充填配置される耐火材と、第一側端部材から隙間を跨いで柱部材に横方向に挿入配置され、一端側が第一側端部材に固定されるとともに、他端側が柱部材に付着固定されるねじ棒状の接合部材と、この接合部材よりも上側において第一側端部材から隙間を跨いで柱部材を横方向に貫通して配置され、一端側が第一側端部材に固定されるとともに、他端側が柱部材の反対側の側面に固定される棒状の固定部材とを備えるので、鉄骨の梁端部の固定度を低く抑えることができ、施工しやすく耐火性能に優れた柱梁接合構造を提供することができる。
【0045】
また、本発明に係る他の柱梁接合構造によれば、柱部材の他の側面に対向して配置される木質の梁部材と、木質の梁部材の側端部に設けられるとともに柱部材の側面に当接配置される第二側端部材と、第二側端部材から柱部材に横方向に挿入配置され、一端側が第二側端部材に固定されるとともに、他端側が柱部材に付着固定されるねじ棒状の接合部材と、この接合部材よりも上側および下側において第二側端部材から柱部材を横方向に貫通して配置され、一端側が第二側端部材に固定されるとともに、他端側が柱部材の反対側の側面に固定される棒状の固定部材と、第二側端部材の周囲の領域に充填配置される耐火材とをさらに備えるので、鉄骨の梁部材と木質の梁部材が木質の柱部材に取り付いた柱梁架構による構造を提供することができる。
【0046】
また、本発明に係る他の柱梁接合構造によれば、木質の柱部材は、上側に配置される上側柱部材と、上側柱部材の下側に配置される下側柱部材と、上側柱部材と下側柱部材の間に配置される接合金物とにより構成され、上側柱部材および下側柱部材の内部には、上下方向に挿入配置され、ここに付着固定されるとともに、端部側で接合金物に接合されたねじ棒状の接合部材が設けられ、接合金物の周囲の領域には耐火材が充填配置されるので、上側柱部材と下側柱部材を強固に接合するとともに、接合部分の耐火性能を確保することができる。
【0047】
また、本発明に係る柱梁接合方法によれば、上述した柱梁接合構造を構築する柱梁接合方法であって、鉄骨の梁部材を柱部材の側面に対向して配置するステップと、第一側端部材と柱部材とを接合部材で接合する一方、第一側端部材と柱部材とを固定部材で固定するステップと、第一側端部材と柱部材の側面の間の隙間に耐火材を充填するステップとを有するので、鉄骨の梁端部の固定度を低く抑えることができ、施工しやすく耐火性能に優れた柱梁接合方法を提供することができる。
【0048】
また、本発明に係る他の柱梁接合方法によれば、上述した柱梁接合構造を構築する柱梁接合方法であって、木質の梁部材を柱部材の側面に対向して配置するステップと、第二側端部材と柱部材とを接合部材で接合する一方、第二側端部材と柱部材とを固定部材で固定するステップと、第二側端部材の周囲の領域に耐火材を充填するステップとを有するので、鉄骨の梁部材と木質の梁部材が木質の柱部材に取り付いた柱梁架構による構造を提供することができる。
【0049】
また、本発明に係る他の柱梁接合方法によれば、上述した柱梁接合構造を構築する柱梁接合方法であって、下側柱部材と接合金物とを接合部材で接合するステップと、上側柱部材と接合金物とを接合部材で接合するステップと、接合金物の周囲の領域に耐火材を充填するステップとを有するので、上側柱部材と下側柱部材を強固に接合するとともに、接合部分の耐火性能を確保することができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上のように、本発明に係る柱梁接合構造および柱梁接合方法は、木質の柱部材と鉄骨の梁部材の柱梁接合構造に有用であり、特に、施工しやすく耐火性能に優れた柱梁接合構造を実現するのに適している。
【符号の説明】
【0051】
10 柱梁接合構造
12 柱部材
12A 上側柱部材
12B 上側柱部材
14 鉄骨の梁部材
16 木質の梁部材
18 フランジ
20 スラブ
22,88 芯材
24,90 被覆材
26 接合金物
28 ベースプレート
30 リブプレート
32 挿通孔
34,64 プレート
36 接続棒鋼(接合部材)
38,68,86 ナット
40 モルタル(耐火材)
42 突出金物(第一側端部材)
44,74,16A ガセットプレート
46 ベースプレート
48 ウェブ
50,16B ボルト
52 隙間
52A,72A 耐火材
54,80,84 引きボルト(固定部材)
56,58,60,82 LSB(接合部材)
62 頭部
66 先端部
70 押しナット
72 突出金物(第二側端部材)
76 エンドプレート
78 ドリフトピン
図1
図2
図3
図4
図5