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特開2022-156983フラックスコートはんだプリフォーム用フラックス、フラックスコートはんだプリフォーム、及び電子基板に電子部品を実装する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156983
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】フラックスコートはんだプリフォーム用フラックス、フラックスコートはんだプリフォーム、及び電子基板に電子部品を実装する方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/363 20060101AFI20221006BHJP
   B23K 35/14 20060101ALI20221006BHJP
   H05K 3/34 20060101ALI20221006BHJP
   B23K 35/26 20060101ALN20221006BHJP
   C22C 13/00 20060101ALN20221006BHJP
【FI】
B23K35/363 C
B23K35/14 Z
H05K3/34 505A
B23K35/26 310A
C22C13/00
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060952
(22)【出願日】2021-03-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000199197
【氏名又は名称】千住金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100112634
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 美奈子
(74)【代理人】
【識別番号】100196597
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】村岡 学
(72)【発明者】
【氏名】平岡 美幸
(72)【発明者】
【氏名】木村 伸仁
【テーマコード(参考)】
5E319
【Fターム(参考)】
5E319AA03
5E319AC02
5E319AC04
5E319BB02
5E319CC33
5E319CD26
5E319GG09
(57)【要約】
【課題】本発明は、リールからフラックスコートはんだプリフォームを引き出す際の作業性が良好であり、かつリフローソルダリング時に電子部品の位置ずれが発生しない、フラックスコートはんだプリフォーム用フラックス、フラックスコートはんだプリフォーム、及び当該フラックスコートはんだプリフォームを使用した電子基板に電子部品を実装する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】フラックスコートはんだプリフォーム用フラックスであって、
前記フラックスの軟化点が80~120℃である、前記フラックス。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラックスコートはんだプリフォーム用フラックスであって、
前記フラックスの軟化点が80~120℃である、前記フラックス。
【請求項2】
前記フラックスが水添酸変性ロジン及び水添ロジンを含むロジン系樹脂を含み、
前記フラックスにおける、前記水添ロジンの含有量(質量%)に対する前記水添酸変性ロジンの含有量(質量%)の比率(水添酸変性ロジンの含有量(質量%)/水添ロジンの含有量(質量%))が、0.2~35である、請求項1に記載のフラックス。
【請求項3】
フラックスコートはんだプリフォームであって、
はんだプリフォーム、及び前記はんだプリフォームの表面に存在するフラックスコート層を含み、
前記フラックスコート層の軟化点が80~120℃である、前記フラックスコートはんだプリフォーム。
【請求項4】
前記フラックスコート層の、130℃の条件で測定したタック力が100gf以上であり、80℃の条件で測定したタック力が100gf以下である、請求項3に記載のフラックスコートはんだプリフォーム。
【請求項5】
フラックスコートはんだプリフォームであって、
はんだプリフォーム、及び前記はんだプリフォームの表面に存在するフラックスコート層を含み、
前記フラックスコート層の、130℃の条件で測定したタック力が100gf以上であり、80℃の条件で測定したタック力が100gf以下である、前記フラックスコートはんだプリフォーム。
【請求項6】
前記フラックスコート層が、水添酸変性ロジン及び水添ロジンを含むロジン系樹脂を含み、
前記フラックスコート層における、前記水添ロジンの含有量(質量%)に対する前記水添酸変性ロジンの含有量(質量%)の比率(水添酸変性ロジンの含有量(質量%)/水添ロジンの含有量(質量%))が、0.2~35である、請求項3~5のいずれかに記載のフラックスコートはんだプリフォーム。
【請求項7】
前記フラックスコートはんだプリフォーム全体に対する前記フラックスコート層の含有量が0.1~12質量%である、請求項3~6のいずれかに記載のフラックスコートはんだプリフォーム。
【請求項8】
前記フラックスコート層が有機酸をさらに含み、
前記フラックスコート層における、前記ロジン系樹脂の含有量(質量%)に対する前記有機酸の含有量(質量%)の比率(有機酸の含有量(質量%)/ロジン系樹脂の含有量(質量%))が、0超0.15以下である、請求項3~7のいずれかに記載のフラックスコートはんだプリフォーム。
【請求項9】
前記フラックスコート層がアミンをさらに含み、
前記フラックスコート層における、前記ロジン系樹脂の含有量(質量%)に対する前記アミンの含有量(質量%)の比率(アミンの含有量(質量%)/ロジン系樹脂の含有量(質量%))が、0超0.1以下である、請求項3~8のいずれかに記載のフラックスコートはんだプリフォーム。
【請求項10】
前記フラックスコート層がアミンハロゲン化水素酸塩をさらに含み、
前記フラックスコート層における、前記ロジン系樹脂の含有量(質量%)に対する前記アミンハロゲン化水素酸塩の含有量(質量%)の比率(アミンハロゲン化水素酸塩の含有量(質量%)/ロジン系樹脂の含有量(質量%))が、0超0.2以下である、請求項3~9のいずれかに記載のフラックスコートはんだプリフォーム。
【請求項11】
前記フラックスコート層が有機臭素化合物をさらに含み、
前記フラックスコート層における、前記ロジン系樹脂の含有量(質量%)に対する前記有機臭素化合物の含有量(質量%)の比率(有機臭素化合物の含有量(質量%)/ロジン系樹脂の含有量(質量%))が、0超0.12以下である、請求項3~10のいずれかに記載のフラックスコートはんだプリフォーム。
【請求項12】
電子基板に電子部品を実装する方法であって、
前記電子基板の上に請求項3~11のいずれかに記載のフラックスコートはんだプリフォームを配置し、前記フラックスコートはんだプリフォームの上に前記電子部品を配置して、前記電子基板、前記フラックスコートはんだプリフォーム、及び前記電子部品を含む積層体を形成する工程、並びに
前記積層体に対して加熱を行って前記フラックスコート層及び前記はんだプリフォームを溶融させ、その後に前記積層体を冷却して前記はんだプリフォームを固化させて、前記電子基板と前記電子部品とを接合する工程
を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラックスコートはんだプリフォーム用フラックス、フラックスコートはんだプリフォーム、及び電子基板に電子部品を実装する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板への電子部品の実装といった、電子機器における電子部品の固定と電気的接続は、コスト面及び信頼性の面で最も有利なはんだ付けにより一般に行われている。
この種のはんだ付けに一般に採用されている方法は、溶融はんだにプリント基板及び電子部品を接触させてはんだ付けを行うフローソルダリング法、並びにはんだプリフォーム、はんだペースト、又ははんだボールの形態のはんだをリフロー炉で再溶融してはんだ付けを行うリフローソルダリング法である。
【0003】
このはんだ付けでは、プリント基板及び電子部品にはんだが付着し易くなるようにする補助剤であるフラックスが使用される。フラックスは、金属表面清浄作用、再酸化防止作用、界面張力低下作用などの多くの有用な作用を果たしている。
【0004】
リフローソルダリング法に使用する上述のはんだプリフォームは、固体状のはんだを予め成形したものであり、様々な形状のはんだプリフォームがある。
また、はんだプリフォームの1種にフラックスコートはんだプリフォームがあり、これは、はんだプリフォームの表面にフラックスを塗布後に乾燥させてフラックスコート層を予め設けたはんだプリフォームである。フラックスコートはんだプリフォームを使用することにより、はんだ付け時のフラックスの塗布工程を省略できる、はんだペーストやフラックスの供給が困難である凹部などの箇所に、はんだ及びフラックスを確実に供給できる、といったメリットがある。結果として、フラックスコートはんだプリフォームを使用することで、はんだ付けを効率的に行うことができる。
また、フラックスコートはんだプリフォームをリボン(テープ、薄くて細長い帯)の形状に成形した場合、一般的に、当該フラックスコートはんだプリフォームをリールに巻いて保管する。フラックスコートはんだプリフォームは、はんだプリフォームの上面及び下面の両面にフラックスコート層を有することがあり、このようなフラックスコートはんだプリフォームをリールに巻いた場合、隣接するフラックスコートはんだプリフォームの間でフラックスコート層同士が接触することになる。保管時のフラックスコート層表面の粘着力が強すぎると、リールに巻いて保管した際に隣接するフラックスコート層同士でくっついてしまい、リールからフラックスコートはんだプリフォームを引き出す際の作業性が低下してしまう。
さらに、リフローソルダリング法を行った場合にフラックスコートはんだプリフォームは高温下に置かれる。このような高温下でのフラックスコート層の粘着力が小さいと、リフローソルダリング時のプリント基板に対する電子部品の仮固定の度合いが不足し、結果として、電子部品の位置ずれが起きてしまう。
【0005】
従来のフラックスコートはんだプリフォームとして、特許文献1には、第1成分と堆積後に柔軟性をもたらすのに有効な量の第2成分とを含むフラックスでプレコートされた部品が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2010-515576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されているような、従来のフラックスコートはんだプリフォームは、上述した、リールからフラックスコートはんだプリフォームを引き出す際の作業性、及びリフローソルダリング時の電子部品の位置ずれを考慮したものではない。
以上のように、リールからフラックスコートはんだプリフォームを引き出す際の作業性が良好であり、かつリフローソルダリング時に電子部品の位置ずれが発生しない、フラックスコートはんだプリフォームが望まれている。
【0008】
本発明は、リールからフラックスコートはんだプリフォームを引き出す際の作業性が良好であり、かつリフローソルダリング時に電子部品の位置ずれが発生しない、フラックスコートはんだプリフォーム用フラックス、フラックスコートはんだプリフォーム、及び当該フラックスコートはんだプリフォームを使用した電子基板に電子部品を実装する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意研究した結果、特定の軟化点を有するフラックスコートはんだプリフォーム用フラックス、又は特定の軟化点を有するフラックスコート層を有するフラックスコートはんだプリフォームを用いることで上記課題を解決できることを知見し、本発明を完成するに至った。本発明の具体的態様は以下のとおりである。
なお、本明細書において、「X~Y」を用いて数値範囲を表す際は、その範囲は両端の数値であるX及びYを含むものとする。
【0010】
[1] フラックスコートはんだプリフォーム用フラックスであって、
前記フラックスの軟化点が80~120℃である、前記フラックス。
[2] 前記フラックスが水添酸変性ロジン及び水添ロジンを含むロジン系樹脂を含み、
前記フラックスにおける、前記水添ロジンの含有量(質量%)に対する前記水添酸変性ロジンの含有量(質量%)の比率(水添酸変性ロジンの含有量(質量%)/水添ロジンの含有量(質量%))が、0.2~35である、[1]に記載のフラックス。
[3] フラックスコートはんだプリフォームであって、
はんだプリフォーム、及び前記はんだプリフォームの表面に存在するフラックスコート層を含み、
前記フラックスコート層の軟化点が80~120℃である、前記フラックスコートはんだプリフォーム。
[4] 前記フラックスコート層の、130℃の条件で測定したタック力が100gf以上であり、80℃の条件で測定したタック力が100gf以下である、[3]に記載のフラックスコートはんだプリフォーム。
[5] フラックスコートはんだプリフォームであって、
はんだプリフォーム、及び前記はんだプリフォームの表面に存在するフラックスコート層を含み、
前記フラックスコート層の、130℃の条件で測定したタック力が100gf以上であり、80℃の条件で測定したタック力が100gf以下である、前記フラックスコートはんだプリフォーム。
[6] 前記フラックスコート層が、水添酸変性ロジン及び水添ロジンを含むロジン系樹脂を含み、
前記フラックスコート層における、前記水添ロジンの含有量(質量%)に対する前記水添酸変性ロジンの含有量(質量%)の比率(水添酸変性ロジンの含有量(質量%)/水添ロジンの含有量(質量%))が、0.2~35である、[3]~[5]のいずれかに記載のフラックスコートはんだプリフォーム。
[7] 前記フラックスコートはんだプリフォーム全体に対する前記フラックスコート層の含有量が0.1~12質量%である、[3]~[6]のいずれかに記載のフラックスコートはんだプリフォーム。
[8] 前記フラックスコート層が有機酸をさらに含み、
前記フラックスコート層における、前記ロジン系樹脂の含有量(質量%)に対する前記有機酸の含有量(質量%)の比率(有機酸の含有量(質量%)/ロジン系樹脂の含有量(質量%))が、0超0.15以下である、[3]~[7]のいずれかに記載のフラックスコートはんだプリフォーム。
[9] 前記フラックスコート層がアミンをさらに含み、
前記フラックスコート層における、前記ロジン系樹脂の含有量(質量%)に対する前記アミンの含有量(質量%)の比率(アミンの含有量(質量%)/ロジン系樹脂の含有量(質量%))が、0超0.1以下である、[3]~[8]のいずれかに記載のフラックスコートはんだプリフォーム。
[10] 前記フラックスコート層がアミンハロゲン化水素酸塩をさらに含み、
前記フラックスコート層における、前記ロジン系樹脂の含有量(質量%)に対する前記アミンハロゲン化水素酸塩の含有量(質量%)の比率(アミンハロゲン化水素酸塩の含有量(質量%)/ロジン系樹脂の含有量(質量%))が、0超0.2以下である、[3]~[9]のいずれかに記載のフラックスコートはんだプリフォーム。
[11] 前記フラックスコート層が有機臭素化合物をさらに含み、
前記フラックスコート層における、前記ロジン系樹脂の含有量(質量%)に対する前記有機臭素化合物の含有量(質量%)の比率(有機臭素化合物の含有量(質量%)/ロジン系樹脂の含有量(質量%))が、0超0.12以下である、[3]~[10]のいずれかに記載のフラックスコートはんだプリフォーム。
[12] 電子基板に電子部品を実装する方法であって、
前記電子基板の上に[3]~[11]のいずれかに記載のフラックスコートはんだプリフォームを配置し、前記フラックスコートはんだプリフォームの上に前記電子部品を配置して、前記電子基板、前記フラックスコートはんだプリフォーム、及び前記電子部品を含む積層体を形成する工程、並びに
前記積層体に対して加熱を行って前記フラックスコート層及び前記はんだプリフォームを溶融させ、その後に前記積層体を冷却して前記はんだプリフォームを固化させて、前記電子基板と前記電子部品とを接合する工程
を含む、前記方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明のフラックスコートはんだプリフォーム用フラックス、フラックスコートはんだプリフォーム、及び当該フラックスコートはんだプリフォームを使用した電子基板に電子部品を実装する方法は、リールからフラックスコートはんだプリフォームを引き出す際の作業性が良好であり、かつリフローソルダリング時に電子部品の位置ずれが発生しない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のフラックスコートはんだプリフォームを示す斜視図である。
図2】本発明のフラックスコートはんだプリフォームを使用して、電子基板に電子部品を実装する手順を示す模式図である。
図3】実施例における位置ずれの評価の試料を構成するQFNを、下面側(プリント基板側)からみた場合の模式図である。
図4】実施例における位置ずれの評価の試料を構成するプリント基板を、上面側(電子部品側)からみた場合の模式図である。
図5】実施例における位置ずれの評価に使用した試料を示す断面図である。
図6】実施例におけるリフローソルダリング時の温度プロファイルを示すグラフである。
図7】リフローソルダリング後の試料のはんだ付け状態を示すX線写真の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のフラックスコートはんだプリフォーム用フラックス、フラックスコートはんだプリフォーム、及び電子基板に電子部品を実装する方法について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
[フラックスコートはんだプリフォーム用フラックス]
本発明のフラックスコートはんだプリフォーム用フラックスは、後述するフラックスコートはんだプリフォームにおけるフラックスコート層を形成するために使用することができる。
【0015】
フラックスの軟化点は、80~120℃である。フラックスの軟化点が上記数値範囲内であると、フラックスコートはんだプリフォームにおけるフラックスコート層の粘着性が適度な範囲となり、リールからフラックスコートはんだプリフォームを引き出す際の作業性が向上し、かつリフローソルダリング時の電子部品の位置ずれを抑制できる。フラックスの軟化点は、80℃、82℃、84℃、87℃、90℃、92℃、94℃、97℃、100℃、103℃、106℃、109℃、112℃、113℃、114℃、115℃、116℃、118℃、又は120℃であってもよく、これらの数値のいずれか2つの間の範囲内であってもよい。フラックスの軟化点は、後述する[実施例]に記載の方法により測定することができる。フラックスの軟化点を測定する際の試料は、フラックスコートはんだプリフォームのフラックスコート層の部分を採取して得られた試料を用いてもよく、また、フラックスコート層の原料となるフラックスを別の基材上に塗布して作成した塗膜(フィルム)を用いてもよい。
【0016】
フラックスは、水添酸変性ロジン及び水添ロジンを含むことが好ましい。
フラックスにおける、水添ロジンの含有量(質量%)に対する水添酸変性ロジンの含有量(質量%)の比率(水添酸変性ロジンの含有量(質量%)/水添ロジンの含有量(質量%))は、特に限定されないが、0.2~35が好ましく、1.5~2.3がより好ましい。当該比率が下限値未満であると、フラックスの軟化点が低下し、フラックスコート層の粘着性が大きくなり過ぎて、リールからフラックスコートはんだプリフォームを引き出す際の作業性が低下する。当該比率が上限値を超えると、フラックスの軟化点が増加し、フラックスコート層の粘着性が小さくなり過ぎて、リフローソルダリング時に電子部品の位置ずれが発生してしまう。当該比率は、0.2、0.5、1.0、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、5、10、15、20、25、30、又は35であってもよく、これらの数値のいずれか2つの間の範囲内であってもよい。
【0017】
フラックス全体を基準とした水添酸変性ロジンの含有量(質量%)は、特に限定されないが、その下限が、8質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、又は20質量%以上であってもよく、また、その上限が、50質量%以下、45質量%以下、又は40質量%以下であってもよい。水添酸変性ロジンの含有量(質量%)は、上記いずれかの下限及び上限を組み合わせた数値範囲内であってもよい。
【0018】
フラックス全体を基準とした水添ロジンの含有量(質量%)は、特に限定されないが、その下限が、1質量%以上、3質量%以上、5質量%以上、又は10質量%以上であってもよく、また、その上限が、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、又は25質量%以下であってもよい。水添ロジンの含有量(質量%)は、上記いずれかの下限及び上限を組み合わせた数値範囲内であってもよい。
水添酸変性ロジンの含有量(質量%)及び水添ロジンの含有量(質量%)が上記数値範囲内であると、フラックスの軟化点を適度な範囲に調整することができる。
【0019】
水添ロジンは、特に限定されないが、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等の原料ロジンを水素化(水添)したロジンを使用することができる。
水添酸変性ロジンは、特に限定されないが、上述の原料ロジンをアクリル酸、マレイン酸、フマル酸等のα,β不飽和カルボン酸により変性し、さらに水素化(水添)したロジンを使用することができる。
【0020】
フラックス全体を基準とした、水添酸変性ロジン及び水添ロジン以外のロジン系樹脂の含有量(質量%)は、特に限定されないが、0質量%(水添酸変性ロジン及び水添ロジン以外のロジン系樹脂を含まない)とすることもできる。この場合、フラックスに含まれるロジン系樹脂は、水添酸変性ロジン及び水添ロジンから構成されることとなる。ここで、水添酸変性ロジン及び水添ロジン以外のロジン系樹脂を「含まない」とは、フラックスの成分として当該ロジン系樹脂を意図的に添加しないことを意味し、他の成分の不純物としての当該ロジン系樹脂は含まれ得る。以下、他の成分に関しても「含まない」の用語は、同様に、意図的に添加しないことを意味し、不純物としては含まれ得るものとして使用する。
【0021】
水添酸変性ロジン及び水添ロジン以外のロジン系樹脂は、特に限定されないが、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等の原料ロジン、該原料ロジンから得られる誘導体(水添ロジンを含まない)、又はこれらの組み合わせを使用することができる。該誘導体は、例えば、精製ロジン、不均化ロジン、又は重合ロジン;該重合ロジンの精製物、又は不均化物;該α,β不飽和カルボン酸変性物の精製物、又は不均化物が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を使用することができる。この中でも、アクリル酸変性ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、又はこれらの組み合わせが好ましい。
【0022】
フラックスは、有機酸を含んでいてもよいが、含まなくてもよい。有機酸はフラックスの軟化点を低下させる作用があり、フラックスの有機酸の含有量を調整することにより、フラックスの軟化点を調整することができる。
フラックスにおける、ロジン系樹脂の含有量(質量%)に対する有機酸の含有量(質量%)の比率(有機酸の含有量(質量%)/ロジン系樹脂の含有量(質量%))は、特に限定されないが、0以上0.15以下、又は0超0.15以下とすることができる。上記比率が上記数値範囲内であると、フラックスの軟化点を適度な範囲に調整することができる。
フラックス全体を基準とした有機酸の含有量(質量%)は、特に限定されないが、0質量%以上0.7質量%以下とすることができる。有機酸の含有量(質量%)が上記数値範囲内であると、フラックスの軟化点を適度な範囲に調整することができる。
【0023】
有機酸は、特に限定されないが、アジピン酸、アゼライン酸、エイコサン二酸、クエン酸、グリコール酸、グルタル酸、コハク酸、サリチル酸、ジグリコール酸、ジピコリン酸、ジブチルアニリンジグリコール酸、スベリン酸、セバシン酸、チオグリコール酸、テレフタル酸、ドデカン二酸、パラヒドロキシフェニル酢酸、パルミチン酸、ピコリン酸、フェニルコハク酸、フタル酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、ラウリン酸、安息香酸、酒石酸、イソシアヌル酸トリス(2-カルボキシエチル)、グリシン、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸、2,3-ジヒドロキシ安息香酸、2,4-ジエチルグルタル酸、2-キノリンカルボン酸、3-ヒドロキシ安息香酸、リンゴ酸、p-アニス酸、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸、トリマー酸、水添トリマー酸、クロレンド酸、クロレンド酸無水物、メチルペンタクロロオクタデカノエート、又はこれらのうちの2種以上の組み合わせを使用することができる。一般的に、有機酸の炭素鎖が長くなり過ぎると、アルコール溶剤への溶解性が低下してしまい、一方、有機酸の炭素鎖が短くなり過ぎると、フラックスの軟化点が下がってしまう。このようなアルコール溶剤への溶解性及びフラックスの軟化点の観点から、上述の有機酸の例の中でも、適度な長さの炭素鎖を有する有機酸として、スベリン酸、セバシン酸、又はこれらの組み合わせが好ましい。
【0024】
フラックスは、アミンを含んでいてもよいが、含まなくてもよい。アミンはフラックスの軟化点を低下させる作用があり、フラックスのアミンの含有量を調整することにより、フラックスの軟化点を調整することができる。
フラックスにおける、ロジン系樹脂の含有量(質量%)に対するアミンの含有量(質量%)の比率(アミンの含有量(質量%)/ロジン系樹脂の含有量(質量%))は、特に限定されないが、0以上0.15以下が好ましく、0以上0.015以下がより好ましく、0超0.015以下がさらに好ましく、0.01~0.015が最も好ましい。上記比率が上記数値範囲内であると、フラックスの軟化点を適度な範囲に調整することができる。
フラックス全体を基準としたアミンの含有量(質量%)は、特に限定されないが、0質量%以上4質量%以下が好ましく、0質量%超1.5質量%以下がより好ましく、0.2~1.2質量%が最も好ましい。アミンの含有量(質量%)が上記数値範囲内であると、フラックスの軟化点を適度な範囲に調整することができる。
【0025】
アミンは、特に限定されないが、脂肪族アミン、芳香族アミン、アミノアルコール、イミダゾール、ベンゾトリアゾール、アミノ酸、グアニジン、ヒドラジド、又はこれらのうちの2種以上の組み合わせを使用することができる。
【0026】
脂肪族アミンは、ジメチルアミン、エチルアミン、1-アミノプロパン、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、アリルアミン、n-ブチルアミン、ジエチルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、N,N-ジメチルエチルアミン、イソブチルアミン、トリエチルアミン、シクロヘキシルアミン、又はこれらのうちの2種以上の組み合わせを使用することができる。
芳香族アミンは、アニリン、N-メチルアニリン、ジフェニルアミン、N-イソプロピルアニリン、p-イソプロピルアニリン、又はこれらのうちの2種以上の組み合わせを使用することができる。
【0027】
アミノアルコールは、2-アミノエタノール、2-(エチルアミノ)エタノール、ジエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、N-ブチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-N-シクロヘキシルアミン、N,N,N',N'-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N,N,N',N'',N''-ペンタキス(2-ヒドロキシプロピル)ジエチレントリアミン、又はこれらのうちの2種以上の組み合わせを使用することができる。
【0028】
イミダゾールは、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2'―メチルイミダゾリル-(1')]―エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2'―ウンデシルイミダゾリル-(1')]―エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2'―エチル-4'―メチルイミダゾリル-(1')]―エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2'―メチルイミダゾリル-(1')]―エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン、2,4-ジアミノ-6-ビニル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-ビニル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-s-トリアジン、エポキシ―イミダゾールアダクト、2-メチルベンゾイミダゾール、2-オクチルベンゾイミダゾール、2-ペンチルベンゾイミダゾール、2-(1-エチルペンチル)ベンゾイミダゾール、2-ノニルベンゾイミダゾール、2-(4-チアゾリル)ベンゾイミダゾール、ベンゾイミダゾール、又はこれらのうちの2種以上の組み合わせを使用することができる。
【0029】
ベンゾトリアゾールは、2-(2'―ヒドロキシ-5'―メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'―ヒドロキシ-3',5'―ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'―ヒドロキシ-5'-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’―メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-tert-オクチルフェノール]、6-(2-ベンゾトリアゾリル)-4-tert-オクチル-6'-tert-ブチル-4'-メチル-2,2'-メチレンビスフェノール、1,2,3-ベンゾトリアゾール、1-[N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、1-[N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル]メチルベンゾトリアゾール、2,2’―[[(メチル-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)メチル]イミノ]ビスエタノール、1,2,3-ベンゾトリアゾールナトリウム塩水溶液、1-(1',2'―ジカルボキシエチル)ベンゾトリアゾール、1-(2,3-ジカルボキシプロピル)ベンゾトリアゾール、1-[(2-エチルヘキシルアミノ)メチル]ベンゾトリアゾール、2,6-ビス[(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)メチル]-4-メチルフェノール、5-メチルベンゾトリアゾール、又はこれらのうちの2種以上の組み合わせを使用することができる。
【0030】
アミノ酸は、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、β-アラニン、γ-アミノ酪酸、δ-アミノ吉草酸、ε-アミノヘキサン酸、ε-カプロラクタム、7-アミノヘプタン酸、又はこれらのうちの2種以上の組み合わせを使用することができる。
【0031】
グアニジンは、ジシアンジアミド、1,3-ジフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-トリルグアニジン、又はこれらのうちの2種以上の組み合わせを使用することができる。
【0032】
ヒドラジドは、カルボジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、1,3-ビス(ヒドラジノカルボノエチル)-5-イソプロピルヒダントイン、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、7,11-オクタデカジエン-1,18-ジカルボヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、又はこれらのうちの2種以上の組み合わせを使用することができる
【0033】
これらのアミンの中でも、アルコール溶剤への溶解性、はんだの濡れ性の向上、及びフラックスコート層形成後のロジン系樹脂との相溶性の観点から、モノイソプロパノールアミン、2-メチルイミダゾール、トリエチルアミン、又はこれらのうちの2種以上の組み合わせが好ましい。
【0034】
フラックスはアミンハロゲン化水素酸塩をさらに含むことができる。アミンハロゲン化水素酸塩は、ハロゲン化水素酸塩(HBr、HCl、HF又はHIの塩など)を使用することができる。
【0035】
フラックスにおける、ロジン系樹脂の含有量(質量%)に対するアミンハロゲン化水素酸塩の含有量(質量%)の比率(アミンハロゲン化水素酸塩の含有量(質量%)/ロジン系樹脂の含有量(質量%))は、特に限定されないが、0以上0.2以下が好ましく、0超0.05以下がより好ましく、0.03~0.04が最も好ましい。上記比率が上記数値範囲内であると、フラックスに十分な活性を与えることができる。
【0036】
フラックスがアミン臭化水素酸塩及び後述の有機臭素化合物を含み、有機酸及びアミンを含まない場合、フラックスの軟化点を適度な範囲に調整するために、上述の比率(アミン臭化水素酸塩の含有量(質量%)/ロジン系樹脂の含有量(質量%))は0.001~0.01が好ましく、上述の比率(有機臭素化合物の含有量(質量%)/ロジン系樹脂の含有量(質量%))は0.01~0.03が好ましい。フラックスがアミン臭化水素酸塩を含み、有機酸、アミン、及び後述の有機臭素化合物を含まない場合、フラックスの軟化点を適度な範囲に調整するために、上述の比率(アミン臭化水素酸塩の含有量(質量%)/ロジン系樹脂の含有量(質量%))は0.03~0.05が好ましい。フラックスが有機酸及びアミン臭化水素酸塩を含み、アミン及び後述の有機臭素化合物を含まない場合、フラックスの軟化点を適度な範囲に調整するために、上述の比率(有機酸の含有量(質量%)/ロジン系樹脂の含有量(質量%))は0.001~0.15が好ましく、上述の比率(アミン臭化水素酸塩の含有量(質量%)/ロジン系樹脂の含有量(質量%))は0.001~0.05が好ましい。フラックスがアミン及びアミン臭化水素酸塩を含み、有機酸及び後述の有機臭素化合物を含まない場合、フラックスの軟化点を適度な範囲に調整するために、上述の比率(アミンの含有量(質量%)/ロジン系樹脂の含有量(質量%))は0.001~0.015が好ましく、上述の比率(アミン臭化水素酸塩の含有量(質量%)/ロジン系樹脂の含有量(質量%))は0.001~0.05が好ましい。
【0037】
フラックス全体を基準としたアミンハロゲン化水素酸塩の含有量(質量%)は、特に限定されないが、0質量%以上9質量%以下が好ましく、0質量%以上4質量%以下がより好ましく、0質量%超4質量%以下がさらに好ましく、0.1~3.5質量%が最も好ましい。アミンハロゲン化水素酸塩の含有量(質量%)が上記数値範囲内であると、フラックスに十分な活性を付与することができる。
【0038】
アミンハロゲン化水素酸塩は、特に限定されないが、2-エチルヘキシルアミン臭化水素酸塩、ピリジン臭化水素酸塩、イソプロピルアミン臭化水素酸塩、シクロヘキシルアミン臭化水素酸塩、モノエチルアミン臭化水素酸塩、ジエチルアミン臭化水素酸塩、トリエチルアミン臭化水素酸塩、1,3-ジフェニルグアニジン臭化水素酸塩、ジメチルアミン臭化水素酸塩、ロジンアミン臭化水素酸塩、2-ピペコリン臭化水素酸塩、ヒドラジンヒドラート臭化水素酸塩、トリノニルアミン臭化水素酸塩、ジエチルアニリン臭化水素酸塩、2-ジエチルアミノエタノール臭化水素酸塩、ジアリルアミン臭化水素酸塩、ヒドラジン一臭化水素酸塩、ヒドラジン二臭化水素酸塩、アニリン臭化水素酸塩、ジメチルシクロヘキシルアミン臭化水素酸塩、エチレンジアミン二臭化水素酸塩、2-フェニルイミダゾール臭化水素酸塩、4-ベンジルピリジン臭化水素酸塩、ステアリルアミン塩酸塩、ジエチルアニリン塩酸塩、ジエタノールアミン塩酸塩、ジメチルアミン塩酸塩、2-エチルヘキシルアミン塩酸塩、イソプロピルアミン塩酸塩、シクロヘキシルアミン塩酸塩、1,3-ジフェニルグアニジン塩酸塩、ジメチルベンジルアミン塩酸塩、ジメチルシクロヘキシルアミン塩酸塩、2-ジエチルアミノエタノール塩酸塩、ジアリルアミン塩酸塩、モノエチルアミン塩酸塩、ジエチルアミン塩酸塩、トリエチルアミン塩酸塩、ヒドラジン一塩酸塩、ヒドラジン二塩酸塩、ピリジン塩酸塩、ブチルアミン塩酸塩、へキシルアミン塩酸塩、n-オクチルアミン塩酸塩、ドデシルアミン塩酸塩、L-グルタミン酸塩酸塩、N-メチルモルホリン塩酸塩、ベタイン塩酸塩、塩化アンモニウム、2-ピペコリンヨウ化水素酸塩、シクロヘキシルアミンヨウ化水素酸塩、1,3-ジフェニルグアニジンフッ化水素酸塩、ジエチルアミンフッ化水素酸塩、2-エチルヘキシルアミンフッ化水素酸塩、シクロヘキシルアミンフッ化水素酸塩、エチルアミンフッ化水素酸塩、ロジンアミンフッ化水素酸塩、シクロヘキシルアミンテトラフルオロホウ酸塩、ジシクロヘキシルアミンテトラフルオロホウ酸塩、又はこれらのうちの2種以上の組み合わせを使用することができる。この中でも、アルコール溶剤への溶解性、はんだの濡れ性の向上の観点から、アミン臭化水素酸塩、特に、1,3-ジフェニルグアニジン臭化水素酸塩、モノエチルアミン臭化水素酸塩、ジエチルアミン臭化水素酸塩、シクロヘキシルアミン臭化水素酸塩、又はこれらのうちの2種以上の組み合わせが好ましい。
【0039】
フラックスは、有機臭素化合物を含んでいてもよいが、含まなくてもよい。
フラックスにおける、ロジン系樹脂の含有量(質量%)に対する有機臭素化合物の含有量(質量%)の比率(有機臭素化合物の含有量(質量%)/ロジン系樹脂の含有量(質量%))は、特に限定されないが、0以上0.12以下が好ましく、0超0.05以下がより好ましく、0.01~0.02が最も好ましい。上記比率が上記数値範囲内であると、フラックスに十分な活性を付与することができる。
【0040】
フラックス全体を基準とした有機臭素化合物の含有量(質量%)は、特に限定されないが、0質量%以上5質量%以下が好ましく、0質量%超3質量%以下がより好ましく、0.5~2質量%が好ましい。有機臭素化合物の含有量(質量%)が上記数値範囲内であると、フラックスに十分な活性を付与することができる。
【0041】
有機臭素化合物は、特に限定されないが、トランス-2,3-ジブロモ-2-ブテン-1,4-ジオール、2,3-ジブロモ-1,4-ブタンジオール、2,3-ジブロモ-1-プロパノール、1,1,2,2-テトラブロモエタン、2,2,2-トリブロモエタノール、ペンタブロモエタン、四臭化炭素、2,2-ビス(ブロモメチル)-1,3-プロパンジオール、meso-2,3-ジブロモこはく酸、臭化n-ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、トリアリルイソシアヌレート6臭化物、2,2-ビス[3,5-ジブロモ-4-(2,3-ジブロモプロポキシ)フェニル]プロパン、ビス[3,5-ジブロモ-4-(2,3-ジブロモプロポキシ)フェニル]スルホン、エチレンビスペンタブロモベンゼン、臭化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、又はこれらのうちの2種以上の組み合わせを使用することができる。この中でも、アルコール溶剤への溶解性、はんだの濡れ性の向上の観点より、トランス-2,3-ジブロモ-2-ブテン-1,4-ジオール、2,3-ジブロモ-1,4-ブタンジオール、又はこれらの組み合わせが好ましい。
【0042】
フラックスは、溶剤を含むことができる。
フラックス全体を基準とした溶剤の含有量(質量%)は、特に限定されないが、10~90質量%、20~80質量%、又は30~70質量%とすることができる。溶剤の含有量(質量%)が上記数値範囲内であると、溶剤に対してその他の成分を完全に溶解させることができ、均一なフラックスのコーティングが可能となる。
【0043】
溶剤は、特に限定されないが、水、アルコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、テルピネオール類等が挙げられる。アルコール系溶剤としてはイソプロピルアルコール、1,2-ブタンジオール、イソボルニルシクロヘキサノール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、2,5-ジメチル-3-ヘキシン-2,5-ジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)エタン、2-エチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、2,2′-オキシビス(メチレン)ビス(2-エチル-1,3-プロパンジオール)、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール、1,2,6-トリヒドロキシヘキサン、ビス[2,2,2-トリス(ヒドロキシメチル)エチル]エーテル、1-エチニル-1-シクロヘキサノール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、エリトリトール、トレイトール、グアヤコールグリセロールエーテル、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール等が挙げられる。グリコールエーテル系溶剤としては、ジエチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、2-メチルペンタン-2,4-ジオール、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。これらの溶剤のうちの1種又は2種以上の組み合わせを使用することができる。この中でも、ロジン系樹脂及び活性剤の溶解性、毒性の低さの観点より、イソプロピルアルコールが好ましい。
【0044】
フラックスは、ロジン系樹脂以外のその他の樹脂を含まなくてもよいが、含むこともできる。
ロジン系樹脂以外のその他の樹脂は、特に限定されないが、アクリル樹脂、テルペン樹脂、変性テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、変性テルペンフェノール樹脂、スチレン樹脂、変性スチレン樹脂、キシレン樹脂、変性キシレン樹脂、又はこれらのうちの2種以上の組み合わせを使用することができる。変性テルペン樹脂は、芳香族変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、水添芳香族変性テルペン樹脂、又はこれらのうちの2種以上の組み合わせを使用することができる。変性テルペンフェノール樹脂は、水添テルペンフェノール樹脂を使用することができる。変性スチレン樹脂は、スチレンアクリル樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、又はこれらのうちの2種以上の組み合わせを使用することができる。変性キシレン樹脂は、フェノール変性キシレン樹脂、アルキルフェノール変性キシレン樹脂、フェノール変性レゾール型キシレン樹脂、ポリオール変性キシレン樹脂、ポリオキシエチレン付加キシレン樹脂、又はこれらのうちの2種以上の組み合わせを使用することができる。
【0045】
フラックスは、上述の有機酸、アミン、アミンハロゲン化水素酸塩、及び有機臭素化合物以外の活性剤を含まなくてもよいが、さらに含んでもよい。このような活性剤は、特に限定されないが、有機ハロゲン化合物を使用することができる。
【0046】
有機ハロゲン化合物は、上述の有機臭素化合物以外の有機ハロゲン化合物を使用することができる。有機臭素化合物以外の有機ハロゲン化合物は、特に限定されないが、クロレンド酸、クロレンド酸無水物、メチルペンタクロロオクタデカノエート、2,3-ジクロロ-1-プロパノール、又はこれらのうちの2種以上の組み合わせを使用することができる。
【0047】
フラックスは、着色剤、界面活性剤、又はこれらの組み合わせをさらに含むことができる。
【0048】
[フラックスコートはんだプリフォーム]
本発明のフラックスコートはんだプリフォームは、はんだプリフォーム、及び前記はんだプリフォームの表面に存在するフラックスコート層を含み、前記フラックスコート層が、上述のフラックスから形成されたものであることを特徴とする。本発明のフラックスコートはんだプリフォームは、フラックスコート層の軟化点が80~120℃であるか、又は前記フラックスコート層の、130℃の条件で測定したタック力が100gf以上であり、80℃の条件で測定したタック力が100gf以下である。
【0049】
図1は、本発明のフラックスコートはんだプリフォーム10の一つの実施形態を示す斜視図である。図1に示した実施形態では、フラックスコート層30が、はんだプリフォーム20の上面及び下面(底面)に形成されている。
【0050】
はんだプリフォームを構成する金属は、特に限定されないが、Sn-Ag系、Sn-Cu系、Sn-Sb系、Sn-Ag-Cu系、Sn-Ag-Cu-Sb系、Sn-Ag-Cu-In系、Sn-Ag-Cu-Bi系、Sn-Ag-Cu-Bi-Sb系、Sn-Pb系、Sn-Bi系、Sn-In系等が挙げられ、この中でもSn-Ag-Cu系、Sn-Ag-Cu-Sb系が好ましい。具体例としては、Sn-3Ag-0.5Cu(Ag:3質量%、Cu:0.5質量%、Sn:残部)のはんだ組成が好ましい。
はんだプリフォームの形状は、特に限定されないが、リボン(テープ、薄くて細長い帯)、スクエア(上面及び下面が四角形である、厚みが小さい六面体、厚みの例:0.05~2.5mm)、ディスク(円盤)、ワッシャー(座金)、チップ(上面及び下面が四角形であり、スクエアより厚みが大きい六面体、厚みの例:0.3~1.6mm)、ワイヤ(針金、細長い糸状の金属)等が挙げられ、ランドパターンに合わせることが好ましい。
はんだプリフォームの厚みは、特に限定されないが、50~500μmが好ましく、100~400μmがより好ましく、150~300μmが最も好ましい。
【0051】
フラックスコート層の軟化点は、80~120℃である。フラックスコート層の軟化点が上記数値範囲内であると、フラックスコート層の粘着性が適度な範囲となり、リールからフラックスコートはんだプリフォームを引き出す際の作業性が向上し、かつリフローソルダリング時の電子部品の位置ずれを抑制できる。フラックスコート層の軟化点は、上記フラックスコートはんだプリフォーム用フラックスの項目で述べた、フラックスの軟化点と同様の数値及び数値範囲を使用できる。フラックスコート層の軟化点の測定方法及び測定用試料は、上記フラックスコートはんだプリフォーム用フラックスの項目で述べた、フラックスの軟化点と同様のものを使用できる。
【0052】
フラックスコート層の130℃の条件で測定したタック力は、100gf以上が好ましく、105gf以上がより好ましく、110gf以上が最も好ましい。フラックスコート層の80℃の条件で測定したタック力は、100gf以下が好ましく、50gf以下、30gf以下、20gf以下、又は10gf以下の順により好ましい。フラックスコート層の120℃の条件で測定したタック力は、特に限定されないが、100gf以上が好ましく、105gf以上がより好ましく、110gf以上が最も好ましい。
フラックスコート層の130℃の条件で測定したタック力及び80℃の条件で測定したタック力が上記数値範囲内であると、フラックスコート層の粘着性が適度な範囲となり、リールからフラックスコートはんだプリフォームを引き出す際の作業性が向上し、かつリフローソルダリング時の電子部品の位置ずれを抑制できる。フラックスコート層のタック力は、後述する[実施例]に記載の方法により測定することができる。
【0053】
フラックスコート層は、はんだプリフォームの表面にフラックス(液体状)を塗布した後、塗布したフラックスの層を乾燥させて溶剤成分を揮発させることにより形成することができる。はんだプリフォームに塗布する前のフラックスは、ロジン系樹脂、活性剤、溶剤等の成分を含む。当該フラックスを乾燥して得られるフラックスコート層は、フラックスに含まれる成分のうち、乾燥による揮発によって失われる成分(溶剤等)以外の成分を全て含むことになる。溶剤は、沸点が比較的低く揮発しやすいため、基本的には当該フラックスコート層に残留しないが、乾燥条件によっては溶剤の一部が当該フラックスコート層に残留し得るので、上記組成の他に残留溶剤を含んでいてもよい。
【0054】
フラックスコート層は、特に限定されないが、はんだプリフォームの上面、下面(底面)、側面、又はこれらの2種以上の面に形成することができ、上面及び下面の両方に形成することが好ましい。
【0055】
フラックスコート層の厚みは、特に限定されないが、上面及び下面の両方に形成した場合、上面及び下面の合計の厚みは、10~50μmが好ましく、20~30μm、又は35~45μmがより好ましい。上面のみ、下面のみ、又は上面及び下面の両方に形成した場合、上面又は下面の厚みは、5~25μmが好ましく、10~15μm、又は17.5~22.5μmがより好ましい。
【0056】
フラックスコートはんだプリフォーム全体に対するフラックスコート層の含有量は、特に限定されないが、0.1~12質量%が好ましく、1~5質量%がより好ましく、1~3質量%が最も好ましい。
【0057】
フラックスコート層は、水添酸変性ロジン及び水添ロジンを含むことが好ましい。
フラックスコート層における、水添ロジンの含有量(質量%)に対する水添酸変性ロジンの含有量(質量%)の比率(水添酸変性ロジンの含有量(質量%)/水添ロジンの含有量(質量%))は、特に限定されないが、上記フラックスコートはんだプリフォーム用フラックスの項目で述べた、フラックスにおける比率と同様の数値及び数値範囲を使用できる。当該比率が下限値未満であると、フラックスコート層の軟化点が低下し、フラックスコート層の粘着性が大きくなり過ぎて、リールからフラックスコートはんだプリフォームを引き出す際の作業性が低下する。当該比率が上限値を超えると、フラックスコート層の軟化点が増加し、フラックスコート層の粘着性が小さくなり過ぎて、リフローソルダリング時に電子部品の位置ずれが発生してしまう。
【0058】
フラックスコート層全体を基準とした水添酸変性ロジンの含有量(質量%)は、特に限定されないが、特に限定されないが、その下限が、15質量%以上、45質量%以上、50質量%以上、又は55質量%以上であってもよく、また、その上限が、80質量%以下、75質量%以下、又は70質量%以下であってもよい。水添酸変性ロジンの含有量(質量%)は、上記いずれかの下限及び上限を組み合わせた数値範囲内であってもよい。
【0059】
フラックスコート層全体を基準とした水添ロジンの含有量(質量%)は、特に限定されないが、その下限が、2質量%以上、20質量%以上、25質量%以上、又は30質量%以上であってもよく、また、その上限が、85質量%以下、50質量%以下、45質量%以下、又は40質量%以下であってもよい。水添ロジンの含有量(質量%)は、上記いずれかの下限及び上限を組み合わせた数値範囲内であってもよい。
水添酸変性ロジンの含有量(質量%)及び水添ロジンの含有量(質量%)が上記数値範囲内であると、フラックスコート層の軟化点を適度な範囲に調整することができる。
【0060】
水添ロジン及び水添酸変性ロジンは、特に限定されないが、上記フラックスコートはんだプリフォーム用フラックスの項目で述べた化合物を使用できる。
【0061】
フラックスコート層全体を基準とした、水添酸変性ロジン及び水添ロジン以外のロジン系樹脂の含有量(質量%)は、特に限定されないが、上記フラックスコートはんだプリフォーム用フラックスの項目で述べた、フラックスにおける含有量と同様に、0質量%(水添酸変性ロジン及び水添ロジン以外のロジン系樹脂を含まない)とすることもできる。この場合、フラックスコート層に含まれるロジン系樹脂は、水添酸変性ロジン及び水添ロジンから構成されることとなる。
水添酸変性ロジン及び水添ロジン以外のロジン系樹脂は、特に限定されないが、上記フラックスコートはんだプリフォーム用フラックスの項目で述べた化合物を使用できる。
【0062】
フラックスコート層は、有機酸を含んでいてもよいが、含まなくてもよい。有機酸はフラックスコート層の軟化点を低下させる作用があり、フラックスコート層の有機酸の含有量を調整することにより、フラックスコート層の軟化点を調整することができる。
【0063】
フラックスコート層における、ロジン系樹脂の含有量(質量%)に対する有機酸の含有量(質量%)の比率(有機酸の含有量(質量%)/ロジン系樹脂の含有量(質量%))は、特に限定されないが、上記フラックスコートはんだプリフォーム用フラックスの項目で述べた、フラックスにおける比率と同様の数値及び数値範囲を使用できる。
【0064】
フラックスコート層全体を基準とした有機酸の含有量(質量%)は、特に限定されないが、0質量%以上0.7質量%以下が好ましい。有機酸の含有量(質量%)が上記数値範囲内であると、フラックスコート層の軟化点を適度な範囲に調整することができる。
【0065】
有機酸は、特に限定されないが、上記フラックスコートはんだプリフォーム用フラックスの項目で述べた化合物を使用できる。上記フラックスコートはんだプリフォーム用フラックスの項目で述べた同様の理由により、アルコール溶剤への溶解性及びフラックスコート層の軟化点の観点から、上述の有機酸の例の中でも、適度な長さの炭素鎖を有する有機酸として、スベリン酸、セバシン酸、又はこれらの組み合わせが好ましい。
【0066】
フラックスコート層は、アミンを含んでいてもよいが、含まなくてもよい。アミンはフラックスコート層の軟化点を低下させる作用があり、フラックスコート層のアミンの含有量を調整することにより、フラックスコート層の軟化点を調整することができる。
【0067】
フラックスコート層における、ロジン系樹脂の含有量(質量%)に対するアミンの含有量(質量%)の比率(アミンの含有量(質量%)/ロジン系樹脂の含有量(質量%))は、特に限定されないが、上記フラックスコートはんだプリフォーム用フラックスの項目で述べた比率と同様の数値及び数値範囲を使用できる。上記比率が上記数値範囲内であると、フラックスコート層の軟化点を適度な範囲に調整することができる。
【0068】
フラックスコート層全体を基準としたアミンの含有量(質量%)は、特に限定されないが、0質量%以上10質量%以下が好ましく、0質量%以上1.5質量%以下がより好ましく、0質量%超かつ1.5質量%以下がさらに好ましく、0.8~1.2質量%が最も好ましい。アミンの含有量(質量%)が上記数値範囲内であると、フラックスコート層の軟化点を適度な範囲に調整することができる。
【0069】
アミンは、特に限定されないが、上記フラックスコートはんだプリフォーム用フラックスの項目で述べた化合物を使用できる。これらのアミンの中でも、アルコール溶剤への溶解性、はんだの濡れ性の向上、及びフラックスコート層におけるロジン系樹脂との相溶性の観点から、モノイソプロパノールアミン、2-メチルイミダゾール、トリエチルアミン、又はこれらのうちの2種以上の組み合わせが好ましい。
【0070】
フラックスコート層はアミンハロゲン化水素酸塩をさらに含むことができる。
フラックスコート層における、ロジン系樹脂の含有量(質量%)に対するアミンハロゲン化水素酸塩の含有量(質量%)の比率(アミンハロゲン化水素酸塩の含有量(質量%)/ロジン系樹脂の含有量(質量%))は、特に限定されないが、上記フラックスコートはんだプリフォーム用フラックスの項目で述べた、フラックスにおける比率と同様の数値及び数値範囲を使用できる。上記比率が上記数値範囲内であると、フラックスコート層に十分な活性を与えることができる。
【0071】
フラックスコート層がアミン臭化水素酸塩及び後述の有機臭素化合物を含み、有機酸及びアミンを含まない場合、フラックスコート層の軟化点を適度な範囲に調整するために、上述の比率(アミン臭化水素酸塩の含有量(質量%)/ロジン系樹脂の含有量(質量%))は0.001~0.01が好ましく、上述の比率(有機臭素化合物の含有量(質量%)/ロジン系樹脂の含有量(質量%))は0.01~0.03が好ましい。フラックスコート層がアミン臭化水素酸塩を含み、有機酸、アミン、及び後述の有機臭素化合物を含まない場合、フラックスコート層の軟化点を適度な範囲に調整するために、上述の比率(アミン臭化水素酸塩の含有量(質量%)/ロジン系樹脂の含有量(質量%))は0.03~0.05が好ましい。フラックスコート層が有機酸及びアミン臭化水素酸塩を含み、アミン及び後述の有機臭素化合物を含まない場合、フラックスコート層の軟化点を適度な範囲に調整するために、上述の比率(有機酸の含有量(質量%)/ロジン系樹脂の含有量(質量%))は0.001~0.15が好ましく、上述の比率(アミン臭化水素酸塩の含有量(質量%)/ロジン系樹脂の含有量(質量%))は0.001~0.05が好ましい。フラックスコート層がアミン及びアミン臭化水素酸塩を含み、有機酸及び後述の有機臭素化合物を含まない場合、フラックスコート層の軟化点を適度な範囲に調整するために、上述の比率(アミンの含有量(質量%)/ロジン系樹脂の含有量(質量%))は0.001~0.015が好ましく、上述の比率(アミン臭化水素酸塩の含有量(質量%)/ロジン系樹脂の含有量(質量%))は0.001~0.05が好ましい。
【0072】
フラックスコート層全体を基準としたアミンハロゲン化水素酸塩の含有量(質量%)は、特に限定されないが、0質量%以上4質量%以下が好ましく、0質量%超4質量%以下がより好ましく、0.4~3.5質量%が好ましい。アミンハロゲン化水素酸塩の含有量(質量%)が上記数値範囲内であると、フラックスコート層に十分な活性を付与することができる。
【0073】
アミンハロゲン化水素酸塩は、特に限定されないが、上記フラックスコートはんだプリフォーム用フラックスの項目で述べた化合物を使用できる。この中でも、アルコール溶剤への溶解性、はんだの濡れ性の向上の観点から、アミン臭化水素酸塩、特に、1,3-ジフェニルグアニジン臭化水素酸塩、モノエチルアミン臭化水素酸塩、ジエチルアミン臭化水素酸塩、シクロヘキシルアミン臭化水素酸塩、又はこれらのうちの2種以上の組み合わせが好ましい。
【0074】
フラックスコート層は、有機臭素化合物を含んでいてもよいが、含まなくてもよい。
フラックスコート層における、ロジン系樹脂の含有量(質量%)に対する有機臭素化合物の含有量(質量%)の比率(有機臭素化合物の含有量(質量%)/ロジン系樹脂の含有量(質量%))は、特に限定されないが、上記フラックスコートはんだプリフォーム用フラックスの項目で述べた、フラックスにおける比率と同様の数値及び数値範囲を使用できる。上記比率が上記数値範囲内であると、フラックスコート層に十分な活性を付与することができる。
【0075】
フラックスコート層全体を基準とした有機臭素化合物の含有量(質量%)は、特に限定されないが、0質量%以上10質量%以下が好ましく、0質量%超4質量%以下がより好ましく、1~2質量%が最も好ましい。有機臭素化合物の含有量(質量%)が上記数値範囲内であると、フラックスコート層に十分な活性を付与することができる。
【0076】
有機臭素化合物は、特に限定されないが、上記フラックスコートはんだプリフォーム用フラックスの項目で述べた化合物を使用できる。この中でも、アルコール溶剤への溶解性、はんだの濡れ性の向上の観点より、トランス-2,3-ジブロモ-2-ブテン-1,4-ジオール、2,3-ジブロモ-1,4-ブタンジオール、又はこれらの組み合わせが好ましい。
【0077】
フラックスコート層は、ロジン系樹脂以外のその他の樹脂を含まなくてもよいが、含むこともできる。
ロジン系樹脂以外のその他の樹脂は、特に限定されないが、上記フラックスコートはんだプリフォーム用フラックスの項目で述べた化合物を使用できる。
【0078】
フラックスコート層は、上述の有機酸、アミン、アミンハロゲン化水素酸塩、及び有機臭素化合物以外の活性剤を含まなくてもよいが、さらに含んでもよい。このような活性剤は、特に限定されないが、上記フラックスコートはんだプリフォーム用フラックスの項目で述べた化合物を使用できる。
【0079】
フラックスコート層は、着色剤、界面活性剤、又はこれらの組み合わせをさらに含むことができる。
【0080】
[電子基板に電子部品を実装する方法]
本発明の電子基板に電子部品を実装する方法は、前記電子基板の上に上述のフラックスコートはんだプリフォームを配置し、前記フラックスコートはんだプリフォームの上に前記電子部品を配置して、前記電子基板、前記フラックスコートはんだプリフォーム、及び前記電子部品を含む積層体を形成する工程、並びに前記積層体に対して加熱を行って前記フラックスコート層及び前記はんだプリフォームを溶融させ、その後に前記積層体を冷却して前記はんだプリフォームを固化させて、前記電子基板と前記電子部品とを接合する工程を含む。
【0081】
(電子基板に電子部品を実装する方法の実施形態)
図2は、本発明の電子基板に電子部品を実装する方法の実施形態の1つであり、通信基地局用の基板を製造する手順を示したものである。まず、プリント基板40とヒートシンク50との積層体を準備する。当該積層体には凹部が設けられており、当該凹部に、図1に示したフラックスコートはんだプリフォーム10(上面及び下面にフラックスコート層を有する)を配置する。得られた積層体(プリント基板40、ヒートシンク50、及びフラックスコートはんだプリフォーム10を含む)のフラックスコートはんだプリフォーム10の上に電子部品(信号増幅デバイス)60を配置する。得られた積層体(プリント基板40、ヒートシンク50、フラックスコートはんだプリフォーム10、及び電子部品60を含む)に対して加熱を行って、フラックスコートはんだプリフォーム10のフラックスコート層及びはんだプリフォームを溶融させ、その後に当該積層体を冷却してはんだプリフォームを固化させて、電子部品(信号増幅デバイス)60と当該積層体とを接合する。
【0082】
本発明の実装方法を適用する電子基板は、特に限定されないが、耐熱性のグレードがFR4の高耐熱性のガラス繊維強化エポキシ系プリント基板やポリイミド系の基板、セラミックス基板、などが挙げられる。電子基板のランドには金属メッキが施されていてもよく、金属メッキに使用する金属としては、金、銀、ニッケル、スズ等が挙げられる。
【0083】
本発明の実装方法を適用する電子部品は、特に限定されないが、信号増幅デバイス又はPCB(プリント配線板)を使用することが好ましい。
【0084】
電子基板、フラックスコートはんだプリフォーム、及び電子部品を含む積層体を加熱してフラックスコートはんだプリフォームを溶融させる際の温度は、はんだプリフォームの組成により異なるが、通常は、はんだ合金の融点+20~50℃が好ましく、はんだ合金の融点+20~30℃がより好ましい。フラックスコートはんだプリフォームを溶融させる際の加熱時間は、20~60秒が好ましく、30~60秒がより好ましく、30~45秒が最も好ましい。
本発明の電子基板に電子部品を実装する方法においては、リフローソルダリングを行うことが好ましい。
【0085】
以下、本発明について実施例により具体的に説明するが、本発明は実施例に記載の内容に限定されるものではない。
【実施例0086】
(実施例1~22、比較例1~4)
以下の表2及び4に示す組成で実施例1~22及び比較例1~4のフラックスを調製した。
表2及び4に示す各成分の数値は、フラックス全体を基準とした各成分の含有量(質量%)を表し、成分A(質量%)/成分B(質量%)の記載は、フラックスにおける、成分Bの含有量(質量%)に対する成分Aの含有量(質量%)の比率(割合)を表す。
ここで、フラックスをはんだプリフォームの表面に塗布して100℃程度で乾燥させてフラックスコート層を形成した場合、フラックスに含まれ、沸点が比較的低い溶剤のみが揮発して、他の成分はフラックスコート層に残留すると考えられる。この点を考慮して、表2及び4の各成分の数値を用いて、フラックスコート層全体(溶剤以外の成分の合計)を基準とした各成分の含有量(質量%)を算出すると、表3及び5の「フラックスコート層」の各成分の数値となる。
なお、上述のとおり、溶剤が揮発する以外の点ではフラックスとフラックスコート層との間で成分の変化はないとみなすことができるので、表2及び4に示した「フラックス」に関する成分A(質量%)/成分B(質量%)の比率は、フラックスコート層に関する成分A(質量%)/成分B(質量%)の比率とみなすことができる。
【0087】
上記のようにして調製した実施例1~22及び比較例1~4それぞれのフラックス 100mlを、100ml メスシリンダーに入れた。また、エレシリンダー(登録商標) EC-S6S-150-2-B(株式会社アイエーアイ製)の駆動部に板を固定し、当該板の先端に、はんだプリフォーム(千住金属工業株式会社製、ECO SOLDER RIBBON S M705、組成:SAC305(SnAg3Cu0.5)、形状:リボン、幅25mm×長さ200mm×厚さ0.25mm)の一端をテープにより固定した。フラックスの入ったメスシリンダーの上方においてエレシリンダー(登録商標)を駆動させ、はんだプリフォームの一部(長さ150mm)をフラックスに浸漬させ、1秒間静置した。その後、エレシリンダー(登録商標)を駆動させてはんだプリフォームをフラックスから引き上げ、当該はんだプリフォームを恒温槽内で100℃の条件で2分間乾燥させて溶剤を揮発させ、フラックスコート層を形成した。乾燥後のはんだプリフォームのうちのフラックスコート層が形成された部分について、両端部それぞれから20mmの部分を切り落とし、長さ110mmの中央部分を得て、当該中央部分をフラックスコートはんだプリフォームの試料とした。
ここで、フラックスコートはんだプリフォーム全体に対するフラックスコート層の含有量(質量%)(Mx)は、上記と同様にして得られたフラックスコートはんだプリフォームの試料を使用して算出できる。具体的には、フラックスコートはんだプリフォームの試料の質量(Ma)を測定し、その後、当該試料をイソプロピルアルコールにより洗浄しフラックスコート層の部分を完全に除去し、乾燥させる。乾燥後のはんだプリフォーム部分のみの質量(Mb)を測定し、下記式に基づいて上記Mxを算出できる。上述の手順で得られた、実施例1~22及び比較例1~4のフラックスコートはんだプリフォームの試料においては、Mxは約2質量%となった。
【0088】
【数1】
【0089】
また、表3及び5の「フラックスコート層」の欄に示す各組成となるように、実施例1~22及び比較例1~4のフラックスの固形分(溶剤以外の成分の合計)を調製し、フラックスの軟化点(フラックスコートはんだプリフォームにおけるフラックスコート層の軟化点)を測定した。具体的な手順を以下に示す。
まず、ロジン系樹脂のみをアルミニウム製の皿に入れ、250℃の温度に設定したホットプレートを用いて皿を加熱した。ホットプレート上の皿中において、ロジン系樹脂が完全に液化し全体が均一に混ざり合ったことを確認した後、ロジン系樹脂以外の他の成分を皿に追加した。ホットプレート上の皿中の全ての成分が均一に溶解したことを確認した後、すぐに皿をホットプレートから外して冷却し、フラックスの固形分を得た。得られたフラックスの固形分の軟化点を、JIS K 5902-1969の基準に従って測定し、得られたフラックスの軟化点を、フラックスコートはんだプリフォームにおけるフラックスコート層の軟化点とみなした。フラックス又はフラックスコート層の軟化点の測定結果を表2~5に示す。
【0090】
(評価)
実施例1~22及び比較例1~4それぞれのフラックスコートはんだプリフォームを使用して、以下の(1)タック力の評価、及び(2)位置ずれの評価を行った。上記(1)及び(2)の結果を表2~5に示す。
【0091】
(1)タック力の評価
「試験条件」
(タック試験)
フラックスコートはんだプリフォームのタック力を、以下の方法により測定した。以下の測定方法は、「JISZ 3284-3:2014 4.5 粘着性試験」に基づくものであるが、一部の測定条件を変更している。
フラックスコートはんだプリフォームを、タッキネステスター TK-1(株式会社 マルコム製)のステージ上に置いた。当該ステージを加熱し、80℃、120℃、又は130℃のステージの温度に安定するように調節した。ステージの温度は熱電対により測定した。次に、タッキネステスターのプローブ(ステンレス製、円柱形、直径5.0mm、面積19.6mm)を2.0mm/sの速度で降下させ、プローブにより400gfの一定加圧力で、フラックスコートはんだプリフォームにおけるフラックスコート層を加圧した。加圧後、10秒以内に10mm/sでプローブをフラックスコート層から引き上げ、引き剥がすために必要な最大の力を測定し、得られた測定値を80℃、120℃、又は130℃におけるタック力(gf)とした。
【0092】
80℃におけるタック力が100gf以下であると、リボンの形状のフラックスコートはんだプリフォームをリールに巻き取り保存する際に、隣接して接触するフラックスコート層同士がくっつくことがない。そのため、当該当該リールからフラックスコートはんだプリフォームを引き出す際の作業性が良好となる。一方、80℃におけるタック力が100gfを超えると、リールの中で隣接して接触するフラックスコート層同士がくっついてしまい、上述の作業性が不良となる。
また、130℃におけるタック力が100gf以上であると、リフローソルダリング時の電子部品の保持性が向上し、電子部品の位置ずれが発生しにくくなる。一方、130℃におけるタック力が100gf未満であると、リフローソルダリング時の電子部品の保持性が低下し、電子部品の位置ずれが発生しやすくなる。
【0093】
(2)位置ずれの評価
プリント基板40(ガラスエポキシ基板、縦105mm×横105mm×厚み1.5mm; 端子部:1mm×0.2mm、0.4mmピッチ、一辺当たり16個、合計64個/QFN1個、; 表面:Cu-OSP)と、端子部電極611及び下面電極612を有するQFN(Quad Flat Non-leaded package)61(縦8mm×横8mm×厚み1.5mm; 下面電極:縦5mm×横5mm; 端子部:1mm×0.2mm、0.4mmピッチ、一辺当たり16個、合計64個/QFN1個、; 表面:Cu-(電解)Snめっき)とを準備した。QFN61を下面側(プリント基板側)からみた場合の模式図を図3に示し、プリント基板40を上面側(電子部品側)からみた場合の模式図を図4に示す。図4に示すように、QFN61の下面電極612に対応する、プリント基板40の中央部分にフラックスコートはんだプリフォーム10を搭載した。得られたプリント基板40のフラックスコートはんだプリフォーム10を搭載した部分が、QFN61の下面電極612に対応するように、プリント基板40上にQFN61を積層させ、位置ずれの評価用の試料を得た。得られた試料の模式図を図5に示す。
得られた試料に対して、図6に示す温度プロファイル(40~150℃における昇温速度:1.1℃/秒、150~180℃でのプリヒート時間:90秒、220℃以上でのはんだ溶融時間:75秒、ピーク温度:240℃)にてリフロー炉(千住金属工業株式会社製、SNR-850B)を使用してリフローソルダリングを行ない、プリント基板40とQFN61との接合をおこなった。リフローソルダリング後の各試料を、はんだ付けの状態を確認するために、X線撮影した。実施例1~22及び比較例1~4それぞれに関して、上記の試料を10個ずつ準備し、X線撮影した。10個の試料それぞれのX線写真を目視で観察し、プリント基板40の下面電極に対応する部分(はんだプリフォーム10を搭載した部分)とQFN61の下面電極612との間で位置ずれが生じているかどうかを確認した。そして、以下の表1の基準に基づいて位置ずれの評価を行なった。位置ずれ評価におけるX線写真の例を図7に示す。図7の上側の写真が合格の例、下側の写真が不合格の例である。
【0094】
【表1】
【0095】
【表2】
【0096】
【表3】
【0097】
【表4】
【0098】
【表5】
【0099】
実施例1~22のフラックスコートはんだプリフォームは、フラックスコート層の軟化点が80~120℃である。
一方、比較例1のフラックスコートはんだプリフォームは、フラックスコート層の軟化点が80℃未満である。比較例2のフラックスコートはんだプリフォームは、フラックスコート層の軟化点が120℃超である。比較例3のフラックスコートはんだプリフォームは、フラックスコート層の軟化点が120℃超である。また、比較例4のフラックスコートはんだプリフォームは、フラックスコート層の軟化点が80℃未満である。
【0100】
上記表2~5の結果に示すように、実施例1~22のフラックスコートはんだプリフォームは、80℃におけるタック力が100gf以下、かつ130℃におけるタック力が100gf以上であり、リールからフラックスコートはんだプリフォームを引き出す際の作業性が良好であり、かつリフローソルダリング時の電子部品の保持性が向上し、位置ずれが発生しにくいことがわかった。実際に、実施例1~22のフラックスコートはんだプリフォームは、位置ずれの評価において位置ずれが発生しなかった。
一方、比較例1及び4のフラックスコートはんだプリフォームは、80℃におけるタック力が100gf超であり、リールからフラックスコートはんだプリフォームを引き出す際の作業性に劣ることがわかった。また、比較例2及び3のフラックスコートはんだプリフォームは、130℃におけるタック力が100gf未満であり、リフローソルダリング時の電子部品の保持性が低下し位置ずれが発生しやすく、実際に、位置ずれの評価において位置ずれが発生した。
【符号の説明】
【0101】
10 :フラックスコートはんだプリフォーム
20 :はんだプリフォーム
30 :フラックスコート層
40 :プリント基板
50 :ヒートシンク
60 :電子部品(信号増幅デバイス)
61 :QFN
611:端子部電極
612:下面電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2021-09-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラックスコートはんだプリフォーム用フラックスであって、
前記フラックスの軟化点が80~120℃であ
前記フラックスが、水添酸変性ロジン及び水添ロジンからなるロジン系樹脂を含み、
前記フラックスにおける、前記水添ロジンの含有量(質量%)に対する前記水添酸変性ロジンの含有量(質量%)の比率(水添酸変性ロジンの含有量(質量%)/水添ロジンの含有量(質量%))が、0.2~35であり、
前記フラックス全体を基準とした、前記水添酸変性ロジンの含有量(質量%)が8質量%以上50質量%以下であり、前記水添ロジンの含有量(質量%)が1質量%以上40質量%以下であり、
前記フラックスが前記ロジン系樹脂以外のその他の樹脂を含まない、前記フラックス。
【請求項2】
フラックスコートはんだプリフォームであって、
はんだプリフォーム、及び前記はんだプリフォームの表面に存在するフラックスコート層を含み、
前記フラックスコート層の軟化点が80~120℃であ
前記フラックスコート層の、130℃の条件で測定したタック力が0.98N(100gf)以上であり、80℃の条件で測定したタック力が0.98N(100gf)以下であり、
前記フラックスコート層が、水添酸変性ロジン及び水添ロジンからなるロジン系樹脂を含み、
前記フラックスコート層における、前記水添ロジンの含有量(質量%)に対する前記水添酸変性ロジンの含有量(質量%)の比率(水添酸変性ロジンの含有量(質量%)/水添ロジンの含有量(質量%))が、0.2~35であり、
前記フラックスコート層全体を基準とした、前記水添酸変性ロジンの含有量(質量%)が15質量%以上85.8質量%以下であり、前記水添ロジンの含有量(質量%)が2質量%以上85質量%以下であり、
前記フラックスコート層が前記ロジン系樹脂以外のその他の樹脂を含まない、前記フラックスコートはんだプリフォーム。
【請求項3】
フラックスコートはんだプリフォームであって、
はんだプリフォーム、及び前記はんだプリフォームの表面に存在するフラックスコート層を含み、
前記フラックスコート層の、130℃の条件で測定したタック力が0.98N(100gf)以上であり、80℃の条件で測定したタック力が0.98N(100gf)以下であ
前記フラックスコート層が、水添酸変性ロジン及び水添ロジンからなるロジン系樹脂を含み、
前記フラックスコート層における、前記水添ロジンの含有量(質量%)に対する前記水添酸変性ロジンの含有量(質量%)の比率(水添酸変性ロジンの含有量(質量%)/水添ロジンの含有量(質量%))が、0.2~35であり、
前記フラックスコート層全体を基準とした、前記水添酸変性ロジンの含有量(質量%)が15質量%以上85.8質量%以下であり、前記水添ロジンの含有量(質量%)が2質量%以上85質量%以下であり、
前記フラックスコート層が前記ロジン系樹脂以外のその他の樹脂を含まない、前記フラックスコートはんだプリフォーム。
【請求項4】
前記フラックスコートはんだプリフォーム全体に対する前記フラックスコート層の含有量が0.1~12質量%である、請求項2又は3に記載のフラックスコートはんだプリフォーム。
【請求項5】
前記フラックスコート層が有機酸をさらに含み、
前記フラックスコート層における、前記ロジン系樹脂の含有量(質量%)に対する前記有機酸の含有量(質量%)の比率(有機酸の含有量(質量%)/ロジン系樹脂の含有量(質量%))が、0超0.15以下である、請求項のいずれかに記載のフラックスコートはんだプリフォーム。
【請求項6】
前記フラックスコート層がアミンをさらに含み、
前記フラックスコート層における、前記ロジン系樹脂の含有量(質量%)に対する前記アミンの含有量(質量%)の比率(アミンの含有量(質量%)/ロジン系樹脂の含有量(質量%))が、0超0.1以下である、請求項のいずれかに記載のフラックスコートはんだプリフォーム。
【請求項7】
前記フラックスコート層がアミンハロゲン化水素酸塩をさらに含み、
前記フラックスコート層における、前記ロジン系樹脂の含有量(質量%)に対する前記アミンハロゲン化水素酸塩の含有量(質量%)の比率(アミンハロゲン化水素酸塩の含有量(質量%)/ロジン系樹脂の含有量(質量%))が、0超0.2以下である、請求項のいずれかに記載のフラックスコートはんだプリフォーム。
【請求項8】
前記フラックスコート層が有機臭素化合物をさらに含み、
前記フラックスコート層における、前記ロジン系樹脂の含有量(質量%)に対する前記有機臭素化合物の含有量(質量%)の比率(有機臭素化合物の含有量(質量%)/ロジン系樹脂の含有量(質量%))が、0超0.12以下である、請求項のいずれかに記載のフラックスコートはんだプリフォーム。
【請求項9】
電子基板に電子部品を実装する方法であって、
前記電子基板の上に請求項のいずれかに記載のフラックスコートはんだプリフォームを配置し、前記フラックスコートはんだプリフォームの上に前記電子部品を配置して、前記電子基板、前記フラックスコートはんだプリフォーム、及び前記電子部品を含む積層体を形成する工程、並びに
前記積層体に対して加熱を行って前記フラックスコート層及び前記はんだプリフォームを溶融させ、その後に前記積層体を冷却して前記はんだプリフォームを固化させて、前記電子基板と前記電子部品とを接合する工程
を含む、前記方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
[1] フラックスコートはんだプリフォーム用フラックスであって、
前記フラックスの軟化点が80~120℃である、前記フラックス。
[2] 前記フラックスが水添酸変性ロジン及び水添ロジンを含むロジン系樹脂を含み、
前記フラックスにおける、前記水添ロジンの含有量(質量%)に対する前記水添酸変性ロジンの含有量(質量%)の比率(水添酸変性ロジンの含有量(質量%)/水添ロジンの含有量(質量%))が、0.2~35である、[1]に記載のフラックス。
[3] フラックスコートはんだプリフォームであって、
はんだプリフォーム、及び前記はんだプリフォームの表面に存在するフラックスコート層を含み、
前記フラックスコート層の軟化点が80~120℃である、前記フラックスコートはんだプリフォーム。
[4] 前記フラックスコート層の、130℃の条件で測定したタック力が0.98N(100gf)以上であり、80℃の条件で測定したタック力が0.98N(100gf)以下である、[3]に記載のフラックスコートはんだプリフォーム。
[5] フラックスコートはんだプリフォームであって、
はんだプリフォーム、及び前記はんだプリフォームの表面に存在するフラックスコート層を含み、
前記フラックスコート層の、130℃の条件で測定したタック力が0.98N(100gf)以上であり、80℃の条件で測定したタック力が0.98N(100gf)以下である、前記フラックスコートはんだプリフォーム。
[6] 前記フラックスコート層が、水添酸変性ロジン及び水添ロジンを含むロジン系樹脂を含み、
前記フラックスコート層における、前記水添ロジンの含有量(質量%)に対する前記水添酸変性ロジンの含有量(質量%)の比率(水添酸変性ロジンの含有量(質量%)/水添ロジンの含有量(質量%))が、0.2~35である、[3]~[5]のいずれかに記載のフラックスコートはんだプリフォーム。
[7] 前記フラックスコートはんだプリフォーム全体に対する前記フラックスコート層の含有量が0.1~12質量%である、[3]~[6]のいずれかに記載のフラックスコートはんだプリフォーム。
[8] 前記フラックスコート層が有機酸をさらに含み、
前記フラックスコート層における、前記ロジン系樹脂の含有量(質量%)に対する前記有機酸の含有量(質量%)の比率(有機酸の含有量(質量%)/ロジン系樹脂の含有量(質量%))が、0超0.15以下である、[3]~[7]のいずれかに記載のフラックスコートはんだプリフォーム。
[9] 前記フラックスコート層がアミンをさらに含み、
前記フラックスコート層における、前記ロジン系樹脂の含有量(質量%)に対する前記アミンの含有量(質量%)の比率(アミンの含有量(質量%)/ロジン系樹脂の含有量(質量%))が、0超0.1以下である、[3]~[8]のいずれかに記載のフラックスコートはんだプリフォーム。
[10] 前記フラックスコート層がアミンハロゲン化水素酸塩をさらに含み、
前記フラックスコート層における、前記ロジン系樹脂の含有量(質量%)に対する前記アミンハロゲン化水素酸塩の含有量(質量%)の比率(アミンハロゲン化水素酸塩の含有量(質量%)/ロジン系樹脂の含有量(質量%))が、0超0.2以下である、[3]~[9]のいずれかに記載のフラックスコートはんだプリフォーム。
[11] 前記フラックスコート層が有機臭素化合物をさらに含み、
前記フラックスコート層における、前記ロジン系樹脂の含有量(質量%)に対する前記有機臭素化合物の含有量(質量%)の比率(有機臭素化合物の含有量(質量%)/ロジン系樹脂の含有量(質量%))が、0超0.12以下である、[3]~[10]のいずれかに記載のフラックスコートはんだプリフォーム。
[12] 電子基板に電子部品を実装する方法であって、
前記電子基板の上に[3]~[11]のいずれかに記載のフラックスコートはんだプリフォームを配置し、前記フラックスコートはんだプリフォームの上に前記電子部品を配置して、前記電子基板、前記フラックスコートはんだプリフォーム、及び前記電子部品を含む積層体を形成する工程、並びに
前記積層体に対して加熱を行って前記フラックスコート層及び前記はんだプリフォームを溶融させ、その後に前記積層体を冷却して前記はんだプリフォームを固化させて、前記電子基板と前記電子部品とを接合する工程
を含む、前記方法。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0048
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0048】
[フラックスコートはんだプリフォーム]
本発明のフラックスコートはんだプリフォームは、はんだプリフォーム、及び前記はんだプリフォームの表面に存在するフラックスコート層を含み、前記フラックスコート層が、上述のフラックスから形成されたものであることを特徴とする。本発明のフラックスコートはんだプリフォームは、フラックスコート層の軟化点が80~120℃であるか、又は前記フラックスコート層の、130℃の条件で測定したタック力が0.98N(100gf)以上であり、80℃の条件で測定したタック力が0.98N(100gf)以下である。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0052
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0052】
フラックスコート層の130℃の条件で測定したタック力は、0.98N(100gf)以上が好ましく、1.03N(105gf)以上がより好ましく、1.08N(110gf)以上が最も好ましい。フラックスコート層の80℃の条件で測定したタック力は、0.98N(100gf)以下が好ましく、0.49N(50gf)以下、0.29N(30gf)以下、0.20N(20gf)以下、又は0.098N(10gf)以下の順により好ましい。フラックスコート層の120℃の条件で測定したタック力は、特に限定されないが、0.98N(100gf)以上が好ましく、1.03N(105gf)以上がより好ましく、1.08N(110gf)以上が最も好ましい。
フラックスコート層の130℃の条件で測定したタック力及び80℃の条件で測定したタック力が上記数値範囲内であると、フラックスコート層の粘着性が適度な範囲となり、リールからフラックスコートはんだプリフォームを引き出す際の作業性が向上し、かつリフローソルダリング時の電子部品の位置ずれを抑制できる。フラックスコート層のタック力は、後述する[実施例]に記載の方法により測定することができる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0091
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0091】
(1)タック力の評価
「試験条件」
(タック試験)
フラックスコートはんだプリフォームのタック力を、以下の方法により測定した。以下の測定方法は、「JISZ 3284-3:2014 4.5 粘着性試験」に基づくものであるが、一部の測定条件を変更している。
フラックスコートはんだプリフォームを、タッキネステスター TK-1(株式会社 マルコム製)のステージ上に置いた。当該ステージを加熱し、80℃、120℃、又は130℃のステージの温度に安定するように調節した。ステージの温度は熱電対により測定した。次に、タッキネステスターのプローブ(ステンレス製、円柱形、直径5.0mm、面積19.6mm)を2.0mm/sの速度で降下させ、プローブにより3.92N(400gf)の一定加圧力で、フラックスコートはんだプリフォームにおけるフラックスコート層を加圧した。加圧後、10秒以内に10mm/sでプローブをフラックスコート層から引き上げ、引き剥がすために必要な最大の力を測定し、得られた測定値を80℃、120℃、又は130℃におけるタック力(gf)とした。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0092
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0092】
80℃におけるタック力が0.98N(100gf)以下であると、リボンの形状のフラックスコートはんだプリフォームをリールに巻き取り保存する際に、隣接して接触するフラックスコート層同士がくっつくことがない。そのため、当該当該リールからフラックスコートはんだプリフォームを引き出す際の作業性が良好となる。一方、80℃におけるタック力が0.98N(100gf)を超えると、リールの中で隣接して接触するフラックスコート層同士がくっついてしまい、上述の作業性が不良となる。
また、130℃におけるタック力が0.98N(100gf)以上であると、リフローソルダリング時の電子部品の保持性が向上し、電子部品の位置ずれが発生しにくくなる。一方、130℃におけるタック力が0.98N(100gf)未満であると、リフローソルダリング時の電子部品の保持性が低下し、電子部品の位置ずれが発生しやすくなる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0100
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0100】
上記表2~5の結果に示すように、実施例1~22のフラックスコートはんだプリフォームは、80℃におけるタック力が0.98N(100gf)以下、かつ130℃におけるタック力が0.98N(100gf)以上であり、リールからフラックスコートはんだプリフォームを引き出す際の作業性が良好であり、かつリフローソルダリング時の電子部品の保持性が向上し、位置ずれが発生しにくいことがわかった。実際に、実施例1~22のフラックスコートはんだプリフォームは、位置ずれの評価において位置ずれが発生しなかった。
一方、比較例1及び4のフラックスコートはんだプリフォームは、80℃におけるタック力が0.98N(100gf)超であり、リールからフラックスコートはんだプリフォームを引き出す際の作業性に劣ることがわかった。また、比較例2及び3のフラックスコートはんだプリフォームは、130℃におけるタック力が0.98N(100gf)未満であり、リフローソルダリング時の電子部品の保持性が低下し位置ずれが発生しやすく、実際に、位置ずれの評価において位置ずれが発生した。