(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156988
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】有色透明な回折光学素子加飾成形品
(51)【国際特許分類】
G02B 5/18 20060101AFI20221006BHJP
B42D 25/328 20140101ALI20221006BHJP
G09F 19/12 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
G02B5/18
B42D25/328 100
G09F19/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060960
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000147350
【氏名又は名称】株式会社精工技研
(72)【発明者】
【氏名】安田 崇志
(72)【発明者】
【氏名】柿沼 憲宏
(72)【発明者】
【氏名】高師 修一
【テーマコード(参考)】
2C005
2H249
【Fターム(参考)】
2C005HA02
2H249AA03
2H249AA13
2H249AA39
2H249AA60
2H249AA65
(57)【要約】
【課題】視認裏面側からの照光時には、表側に絵柄等のマークが視認でき、非照光時は光回折格子パターンが視認されず目立たない外観が得られる、裏面照光可能な光回折光学素子加飾成形品を提供する。
【解決手段】有色透明な成形品は、光透過性のある板状部を有し、光を出射し視認する平坦面側と、その裏面側に複数の微細凹凸部が形成されている光回折格子面を備え、その微細凹凸部の領域が図柄等によって形成され、裏面側から照光した際に侵入してきた光の一部が導光および乱反射され、微細凹凸部図柄領域によって、成形品本体の外面部となる平坦面側から図柄が視認可能となり、非照光時は回折格子部の発色が目立たない外観を特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性のある板状部分を有する、成形品であって、
前記成形品は、平坦面を有する第一の面と、平坦面部と複数の微細凹凸部が形成されている第二の面と、を備え、
該第二の面の複数の微細凹凸部は光回折格子構造を備えた構成とし、
前記微細凹凸部のある回折光学素子(DOE)の領域形状が文字、図形、記号、絵柄、模様となっている成形品において、
前記回折光学素子(DOE)によって、光ビーム整形が可能となり、文字、図形、記号、絵柄、模様が投影可能なことを特徴とする成形品。
【請求項2】
請求項1に記載の成形品であって、
該成形品は有色透明であり、
前記成形品を外部から 前記 第一の面に向かって見たときに、
前記回折光学素子(DOE)の領域形状が視認できない成形品であって、
裏面側である前記第二の面側から照光時に、
前記回折光学素子(DOE)の領域形状を視認することが可能であり、
裏面側から照光可能なことを特徴とする回折光学素子(DOE)成形品。
【請求項3】
請求項1または2の何れか1項に記載の成形品であって、
前記第二の面の平坦面部と、前記複数の微細凹凸部に高低差があることを特徴とした成形品。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1項に記載の成形品であって、
前記第二の面側の回折光学素子(DOE)の干渉色が視認できない有色透明度を有した、樹脂であることを特徴とする成形品。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1項に記載の成形品であって、
透過部が赤外線のみに透過特性を有する成形品。
【請求項6】
請求項1から5の何れか1項に記載の成形品であって、
前記光透過性の板状部分がくさび形状である成形品。
【請求項7】
請求項1から6の何れか1項に記載の成形品であって、
前記回折光学素子(DOE)の領域形状の文字、図形、記号、絵柄、模様の図柄と、前記光ビーム整形による投影の文字、図形、記号、絵柄、模様の図柄の形状が相似形状である成形品。
【請求項8】
請求項1から7の何れか1項に記載の成形品であって、
前記光ビーム整形による投影の文字、図形、記号、絵柄、模様の図柄の形状が偽造防止判定として使用される成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回折光学素子であるが製品外観からは虹色に見えず、一見すると回折光学素子に見えない、裏面照光可能な成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
回折光学素子(DOE: Diffractive Optical Element) は、光の回折現象を利用した光学素子であり、任意の光学設計された微細パターンが形成されたDOEにレーザ光源等を照射させることにより、光ビーム形状を設計パターン形状に整形し、その形状をスクリーンに投影することが可能である。DOEを使用する従来のパターン照射器として、例えば、特許文献1の固定パターンを遠距離まで照射できるプロジェクターがある。
【0003】
その他の応用例として、例えば特許文献2のように、3Dマッピングなどのジェスチャーセンサー、顔認証センサーに応用されている。
【0004】
DOEとしての微細凹凸形状は、例えば特許文献3で示される周期的、ステップ形状の微細構造で形成されている。
【0005】
回折光学素子(DOE)は、光回折格子と同様に、外観が虹色に輝く特性を有する。光回折格子の虹色に輝く特性は、バイオミメティクス分野における構造色として知られ、装飾などの美観品に応用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-96918号公報
【特許文献2】特許第6048895号公報
【特許文献3】JPWO2019/093146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、外観装飾部品として虹色を避けたい場合、光回折格子の特性上、回折光学素子(DOE)は虹色の外観を呈してしまう。また、成形品として単色を有している場合、虹色に光輝することで外観の統一性を欠いてしまう問題があった。
【0008】
本発明の目的は、上記課題に鑑み、回折光学素子成形品ではあるが製品外観からは虹色に見えず、一見すると回折光学素子に見えない、裏面照光可能な成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の一の観点に係る成形品は、単一の材料から構成され、光透過性のある板状部分を有し、視認する側となる平坦面を有する第一の面と、複数の微細凹凸部が形成されている、光源を照光する裏面側となる第二の面に、回折光学素子となる微小凹凸部を備えた形状領域の区画以外に平坦状の透明部分を配置し、その透明部分の形状が文字、図形、記号となっており、透明部分によって文字、図形、記号を裏面照光時に表示してもよいし、又は、微細凹凸部を組み合わせた回折光学素子の境界領域が曲線等でもよく、裏面からの照光時に微細凹凸部の光散乱によって見え方の変わる文字、図形、記号、マーク、キャラクター、図柄を表示してもよい。
【0010】
請求項1の発明の回折光学素子(DOE)成形品は、光透過性のある板状部分を有する、成形品であって、前記成形品は、平坦面を有する第一の面と、平坦面部と複数の微細凹凸部が形成されている第二の面と、を備え、第二の面の前記複数の微細凹凸部は光回折格子構造を備えた構成とし、前記微細凹凸部のある光回折格子の領域形状が文字、図形、記号、絵柄、模様となっている成形品において、前記、光回折格子によって、光ビーム整形が可能で、文字、図形、記号、絵柄、模様が投影可能な特徴を有する成形品である。
【0011】
請求項2の発明の回折光学素子(DOE)成形品は、請求項1に記載の成形品であって、成形品が有色透明であり、前記成形品を外部から 前記 第一の面に向かって見たときに、前記、光回折格子の領域形状が視認できない成形品であって、第二の面である裏面側から照光時に、前記、光回折格子の領域形状が視認することが可能な特徴を有する、裏面から照光可能な光回折格子成形品である。
【0012】
請求項3の発明の回折光学素子(DOE)成形品は、請求項1または2の何れか1項に記載の成形品であって、前記、第二の面の平坦面部と、前記複数の微細凹凸部に高低差があることを特徴とした成形品である。
【0013】
請求項4の発明の回折光学素子(DOE)成形品は、前記、第二の面側の回折光学素子(DOE)の干渉色が視認できない有色透明度を有した、樹脂であることを特徴とする成形品である。
【0014】
請求項5の発明の回折光学素子(DOE)成形品は、請求項1から4の何れか1項に記載の成形品であって、透過部が赤外線のみに透過特性を有する成形品である。
【0015】
請求項6の発明の回折光学素子(DOE)成形品は、請求項1から5の何れか1項に記載の成形品であって、前記、光透過性の板状部分がくさび形状である成形品である。
【0016】
請求項7の発明の回折光学素子(DOE)成形品は、請求項1から6の何れか1項に記載の成形品であって、前記、光回折格子の領域形状の図柄と、光ビーム整形による投影の図柄の形状が相似形状である成形品である。
【0017】
請求項8の発明の回折光学素子(DOE)成形品は、請求項1から7の何れか1項に記載の成形品であって、前記、光ビーム整形による投影の図柄の形状が偽造防止判定として使用される成形品である。
【発明の効果】
【0018】
以上、本発明により、有色透明な成形品は、光透過性のある板状部分を有し、光を出射し視認する平坦面側と、その裏面側に複数の微細凹凸部が形成されている光回折格子面を備え、その微細凹凸部の領域が図柄等によって形成され、裏面側から照光した際に侵入してきた光の一部が導光および乱反射され、微細凹凸部の図柄領域によって、成形品本体の外面部となる平坦面側から図柄が視認可能となり、非照光時は回折格子部の発色が目立たない外観を特徴とする成形品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態に係る成形品の概略を示す斜映図である。
【
図2】実施形態に係る成形品の機能概略を示す斜映図である。
【
図3】実施形態に係る成形品の投影機能を示す概略図である。
【
図4】実施形態に係る成形品の概略の断面図である。
【
図5】実施形態に係る成形品の面の形状例を示す図である。
【
図6】実施形態に係る微細凹凸部高さの高低差例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に示す実施形態、実施例の例示にのみ狭く限定されるわけではない。以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。係る実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0021】
図1は、本実施形態に係る回折光学素子(DOE)成形品(以下「本成形品」という。)1の概略を示す図である。
【0022】
より具体的に説明すると、本成形品1は、光透過性のある板状部分を有する成形品であって、平坦面110が形成された第一の面11と、設計された回折光学素子(DOE)2となる微細構造を備えた複数の微細凹凸部21が形成された第二の面12と、を備えている。
【0023】
本成形品は、光透過性を有していれば材質はガラス、樹脂でも構わない。要求とされる耐熱性、耐久性に特に問題が無ければより量産性に優れた樹脂が材質に選定される。
【0024】
本成形品1において、主要な部材である樹脂は、透過性を有し、所望の形状に加工、成形できる高分子材料が好ましい。本成形品1において用いることのできる樹脂としては、後述するように、所望の屈折率を得ることができる限りにおいて限定されるわけではないが、例えば、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、アクリル、シクロオレフィンポリマー(COP)、環状オレフィンコポリマー(COC)等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、熱硬化性ポリイミドなどの熱硬化性樹脂、又は光硬化性樹脂を例示することができる。また、樹脂は、無色透明、無色半透明、有色透明、有色半透明のいずれかであっても構わない。
樹脂は、電波反射用樹脂組成物や、その成形体の使用目的に応じて適宜調整すればよ
く、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂のいずれであってもよい。具体的に、樹脂としては、
オレフィン系樹脂、スチレン樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂(AS樹脂) 、ポリアクリロニトリル、ブタジエン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS樹脂) 、アクリル樹脂、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイミド、ポリスルフィド、ポリウレタン、酢酸ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、脂肪族ポリアミド、合成ゴム、芳香族ポリアミド、ポリビニルアルコールなどを用いることができる。オレフィン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレンなどが挙げられる。ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどが挙げられる。脂肪族ポリアミドとしては、例えば、ナイロン6 、ナイロン66などが挙げられる。合成ゴムとしては、例えば、エチレン- プロピレン-(非共役ジエン) ゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン- ブタジエンゴム、アクリロニトリル- ブタジエンゴムなどが挙げられる。芳香族ポリアミドとしては、例えば、ポリメタフェニレンイソフタルアミド、ポリパラフェニレンテレフタルアミドなどが挙げられる。
【0025】
成形品部は、染料、顔料、コーティング、蒸着、スパッタリング等によって覆われていても、適宜透過性が保たれていれば着色されていても構わない。
【0026】
成形品の着色の度合いとしては、裏面側の回折格子の発色が視認できない程度の濃さが好ましく、黒や濃灰などの無彩色、また濃紺、濃緑、濃赤などの濃い有彩色でも構わない。着色部は本発明の効果が発揮されれば、成形品内部、成形品外面部のどちらでも構わない。
【0027】
図2に示すように、本成形品1において、樹脂は光透過性を備えている。ここで「光透過性」とは、入射された光の少なくとも一部を透過する性質をいう。この限りにおいて限定されるわけではないが、具体的には、樹脂の板状部分であって、平坦部および微細凹凸部分における光(633nm)の透過率が10%より高く60%以下であることが好ましく、より好ましくは20%以上50%以下である。10%より低くすることによって、
図2(a)のように、第一の面から入射された光が、第二の面の裏面側のDOEの微細凹凸形状による回折干渉よって第一の面に戻る干渉光を減衰させることができるため、観測者に裏面側の虹色に光輝するDOEの光回折格子を認識できないようにする効果を得ることが可能となる。0%とすることは投影用の光源よって散乱された光と、投影用の光が透過しないため好ましくない。
【0028】
また本成形品1では、上記のとおり平坦面が形成された第一の面11を備えている。
図2(b)のように、本成形品1では、第2の面12から光が入射され、樹脂内を伝播し、少なくとも一部の光が散乱され、第一の面1から光が放出され、観測者の目に入ることで形状を認識させることが可能となる。ここで「平坦面」は、第二の面の凸部等と異なり、光を散乱させてしまうような凹凸を有しておらず、鏡面程度の滑らかさを有している面をいう。
【0029】
本成形品1では、微細凹凸部21とは別の平坦状の透明部分の区画を配置し、その透明部分の形状を文字、図形、記号とし、その透明部分によって文字、図形、記号を裏面照光時に表示することもできる。又、微小凹凸部の区画形状を文字、図形、記号とし、微小凹凸部における光散乱によって文字、図形、記号を裏面照光時に表示することもできる。
【0030】
図3に示すように、DOE領域に光源ビーム5を照射すると、設計された形状に光ビームを整形し、投影面に図柄等を映し出すことができる。
【0031】
回折光学素子22の設計には、例えば反復フーリエ変換法(IFTA)を用いることができる。反復フーリエ変換法を用いた場合、投影面5 が回折光学素子22から遠方にあることを前提として処理し、投影面上の回折像をフラウンホーファ回折像とすることができる。本成形品における複数の微細凹凸部は、上記の機能を有することができる限りにおいて様々な形状を採用することができるが、周期的に配置された構造を備えていることが好ましい。ただし、本成形品の機能を発揮できる限りにおいて幾何学的構造は適宜調整可能であることはいうまでもない。
【0032】
またDOEの領域形状と投影画像は、設計理論上、同じ形状である必要はないが、応用されるデバイスとしてスイッチを想定した場合、発光部の形状と投影する形状を同じ相似形状とすることで、アイコンとしてのユーザビリティを高めることが狙える。
【0033】
図4に示すように、DOEの微細凹凸としては、単純な凹凸の2段のレベルのバイナリ型や、段数レベルを増やした構造がある。レベルを増やした方が0次光を低減し、光利用効率が向上する。所望する仕様と生産工程の兼ね合いで、微細凹凸部の構造は適宜選定される。
【0034】
本成形品1において微細凹凸部21のサイズとしては、ピッチPとしては、光を十分に回折および干渉させることができる範囲として、例えば、0.1μm以上10μm以内であることが好ましく、より好ましくは0.4μm以上2μm以下である。
【0035】
DOEとしての微細凹凸部の作製に関しては、電子線リソグラフィとプラズマエッチングを組み合わせた方法や、X線や光リソグラフィによる製法が一般的に知られている。形成された微細凹凸部は金型として、転写、量産が可能となる。
【0036】
回折光学素子領域2内の領域は設計により、コヒーレント光を設計光源としたDOE以外に、CGH(Computer-Generated Hologram)やGCA(Grating Cell Array)として設計されていても構わない。DOEの光源としては、コヒーレント光であるレーザーが設計の容易さがある。GCAの場合は光源がLEDあることが好ましい。LEDの場合は、光回折格子の領域を裏面照光時に浮かび上がらせる効果の他に、投影する光源が同一のLEDとすることが可能なため、本発明品を用いた製品の部品点数を減らすことができる。一方で裏面照光光源と、投影用の光源を分けることで、裏面照光用光源がOFFの際に、すなわち図柄等のDOE領域が発光していない際にでも、DOEにより投影面に整形ビーム光を投影することが可能となる。
【0037】
本発明では、CGHやGCAを含め、光を回折し、光源ビームを整形し投影することを想定した光学素子をDOEと称している。
【0038】
DOEには、投影、図柄等の領域よりも小さい。その際は、最小セルを周期的に繰り返し平面にタイル状に配置することができる。
【0039】
DOE領域2内において、DOE投影に寄与しない図柄内の領域に関しては回折格子、または光を散乱する微細凹凸構造としても良い。そうすることで、第二の面側の発光領域の図柄形状の図柄が増える。
【0040】
投影するパターンは、図柄以外にドットや格子、マトリクス、ターゲットマークでも構わない。その際に、投影光源42が赤外線レーザーやLEDの場合、人間の目には見えないが、ディテクターでは認知することができるため、成形品面に回折光学素子形状を浮かび上がらせる効果と併せて、赤外線によるセンサーとしても使用ができる。例えば、裏面照光可能なボタンスイッチと組み合わせた顔認証などのセンサーとして応用ができる。また投影面は板状の拡散板とすることもでき、光源側とは反対側から拡散板を挟んで投影された整形ビーム光を視認することもできる。
【0041】
第一の面11は裏面からの照光時および、投影時の図柄等の形状を認識できれば、適宜、曲面や、シボ面を有していても構わない。
【0042】
図5で示すように、本成形品1の板状部分は、必ずしも平行平板状である必要はなく、前記第一の面11または前記第二の面12の少なくとも一方の面が曲面であってもよい(
図5(a))。また光学的に出射光を偏角させるためにくさび状の断面でも良い(
図5(b))。光源からの光を直視しないように適宜、光線を偏向ができる。
【0043】
第一の面の形状の自由度により、例えば、車等の機械装置に付される内装部品、スイッチパネル、導光板、表示器、エンブレム等の静的など、様々な部品に付加することもできる。本成形品の背面に液晶発光体を配置することでも本発明を発揮でき、かつ表面側の美観を損なわない効果がある。
【0044】
また、
図6の概略断面図で示すように、各区画の凸部の稜線の段差となる高低差があることで、裏面照光時に形状の輪郭を、光学的に導光、散乱し、より際立たせることが可能となり、発明の効果により有利な形状である。また、生産上、微細形状部を触れない構造とすることで、微細形状部を保護する効果がある。
【0045】
高低差の側面部分23は適宜勾配角度を設けても良い。生産工程上、成形品が樹脂の場合、型からの離型がしやすくなるだけでなく、側面部の光の散乱角度がDOE領域部と異なることにより、裏面からの照光時に図柄の輪郭を際立たせることができる効果がある。
【0046】
成形品が有色の場合、光透過性が落ちる欠点があるが、適宜高低差を調整し、光回折格子部のみを他の面部よりも、第一の面側に光回折格子が虹色に見えない程度に薄くすることで光透過性を上げ、裏面照光用の光源や投影光源の透過率を上げることが可能となる。成形品に色がついている場合は厚み(光路長)に依存した吸光度の理論式によって、微細凹凸部領域の内外の厚みの差による光の減衰量を理論的に予測することができ、DOE領域とその他の領域の成形品部の厚みを適宜設計できる。
【0047】
また本成形品1は、必要に応じて、第一の面及び第二の面に保護膜又は反射防止膜等を設ける構成とすることも、性能向上させることが可能である。
【0048】
本成形品1の板状部分の材質は、紫外線や赤外線など特定の波長域のみを透過するガラスや樹脂で構成されていても良い。第一の面の側と外界から保護するためのカバープレートやカバーガラスを不要とすることができる。
【0049】
本発明は、DOEの投影パターンに固有のデザインを付与することで、通常は裏面照光可能な導光板として使用し、投影用光源を照射し、パターンを判定することで偽造防止効果素子としても応用できる。
【0050】
以上の記載から明らかであるように、本成形品では、回折光学素子(DOE)の光回折格子としての微細凹凸部において、この領域の部分を文字、図形及び記号(以下「文字等」という。)の形状にすることで、裏面からの照光時に文字等として表示することが可能であり、一方、所定の領域にこの微細凹凸部を設ける一方、一部この微細凹凸部を設けない平坦な部分を文字等の形状としておくことで、いわゆる白抜きの文字等表現を行うことができるようになることはいうまでもない。
【実施例0051】
上記実施形態に係る光回折成形品に関し、実際に作製してその効果を確認した。以下具体的に説明する。
【0052】
まず、反復フーリエ変換法によるパターン設計が可能なソフトウェアにより、光ビーム整形光学用のDOEを設計した。設計されたデータを元に光リソグラフィ法により微小凹凸部のレジストパターンを形成した。射出成形法にて生産するための金型に取り付けるためレジストパターンから電鋳法により微細凹凸パターンを転写させ、ニッケル型を製作した。ニッケル型を金型に取り付け、射出成形により樹脂に転写させた。
【0053】
製作した成形品の仕様として、平坦な一対の面を有する厚さ0.8mmの黒色透明な板の一方の面に、凹凸深さ1μm、凹凸ピッチ1μmで複数形成した。微細凹凸形状のある領域は最小セル0.6mm角で繰り返し敷き詰め、25mm角のパターン領域とした。
【0054】
通常の蛍光灯下の状態で成形品を視認観察すると、単一の黒色成形品面に見え、裏面側の回折光学素子の光回折格子による虹色が視認できなかった。そして、裏面照光時に回折光学素子の25mm角の領域形状パターンが光散乱による発光が現れ、裏面から照光していない場合は領域が消える効果が得られることを確認した。また微細凹凸部の無い平坦な領域は光が散乱されておらず、光回折格子の領域によって輪郭模様を表現できることが確認された。
【0055】
また加えて、光回折格子領域に光源として緑色のレーザーポインター(半導体レーザー)を照射したところ、設計された投影パターンをスクリーンに投影することができた。
【0056】
以上、本発明の効果は実際の樹脂成形品において十分に達成できることを確認した。