(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156989
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】造型条件導出装置、造型条件導出方法、機械学習装置及び機械学習方法
(51)【国際特許分類】
B22D 46/00 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
B22D46/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060962
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】野口 陽平
(57)【要約】
【課題】鋳造用の鋳型の造型条件を、ユーザが設定するよりも合理的に設定することができる造型条件導出装置、造型条件導出方法、機械学習装置及び機械学習方法を実現する。
【解決手段】造型条件導出装置(1)は、鋳型の少なくとも1つの造型条件を導出する導出ステップを実行する1又は複数のプロセッサを備えており、導出ステップは、少なくとも1つの造型条件以外の鋳型の造型条件、鋳型の材料である砂の性状条件、及び鋳型の品質条件から、少なくとも1つの造型条件を導出するステップである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳型の少なくとも1つの造型条件を導出する導出ステップを実行する1又は複数のプロセッサを備えており、
前記導出ステップは、前記少なくとも1つの造型条件以外の鋳型の造型条件、前記鋳型の材料である砂の性状条件、及び前記鋳型の品質条件から、前記少なくとも1つの造型条件を導出するステップである、
造型条件導出装置。
【請求項2】
前記導出ステップは、前記少なくとも1つの造型条件以外の鋳型の造型条件、前記鋳型の材料である砂の性状条件、及び前記鋳型の品質条件を入力とし、前記少なくとも1つの造型条件を出力とする学習済モデルを用いて実行される、
ことを特徴とする請求項1に記載の造型条件導出装置。
【請求項3】
前記学習済モデルは、学習用データセットを用いた非線形回帰アルゴリズムにより特定された非線形関数式、又は前記学習用データセットを用いた教師あり学習により構築された学習済ニューラルネットワークモデルである、請求項2に記載の造型条件導出装置。
【請求項4】
前記入力には、前記鋳型を用いて製造される鋳造品の品質条件が更に含まれている、請求項2又は3に記載の造型条件導出装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記学習済モデルから出力された前記少なくとも1つの造型条件を含む前記造型条件を用いて造型機を制御する、請求項2から4のいずれか1項に記載の造型条件導出装置。
【請求項6】
1又は複数のプロセッサが実行する、鋳型の少なくとも1つの造型条件を導出する導出ステップを含んでおり、
前記導出ステップは、前記少なくとも1つの造型条件以外の鋳型の造型条件、前記鋳型の材料である砂の性状条件、及び前記鋳型の品質条件から、前記少なくとも1つの造型条件を導出するステップである、
造型条件導出方法。
【請求項7】
学習用データセットを用いた非線形回帰アルゴリズムによって、鋳型の少なくとも1つの造型条件を演算する非線形関数式を特定するステップ、又は前記学習用データセットを用いた教師あり学習によって、前記少なくとも1つの造型条件を推定する学習済ニューラルネットワークモデルを構築するステップを実行する1又は複数のプロセッサを備えており、
前記非線形関数式、又は前記学習済ニューラルネットワークモデルの入力は、前記少なくとも1つの造型条件以外の鋳型の造型条件、前記鋳型の材料である砂の性状条件、及び前記鋳型の品質条件であり、
前記非線形関数式、又は前記学習済ニューラルネットワークモデルの出力は、前記少なくとも1つの造型条件である、
機械学習装置。
【請求項8】
1又は複数のプロセッサが実行する、学習用データセットを用いた非線形回帰アルゴリズムによって、鋳型の少なくとも1つの造型条件を演算する非線形関数式を特定するステップ、又は前記学習用データセットを用いた教師あり学習によって、前記少なくとも1つの造型条件を推定する学習済ニューラルネットワークモデルを構築するステップを含んでおり、
前記非線形関数式、又は前記学習済ニューラルネットワークモデルの入力は、前記少なくとも1つの造型条件以外の鋳型の造型条件、前記鋳型の材料である砂の性状条件、及び前記鋳型の品質条件であり、
前記非線形関数式、又は前記学習済ニューラルネットワークモデルの出力は、前記少なくとも1つの造型条件である、
機械学習方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造型条件導出装置、造型条件導出方法、機械学習装置及び機械学習方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳造品を製造するためには、まず鋳物砂で鋳型を造型し、次いでその鋳型に溶湯を注湯する。そのため、所定の品質を満たす鋳造品を製造するためには、鋳造条件のみならず、鋳型の造型条件についても検討する必要がある。しかし、鋳造条件及び鋳型の造型条件は、互いに影響を与える多くのパラメータが存在するため、これまでは熟練者の経験に基づく判断によって設定されていた。しかし経験に基づく方法では、必ずしも最適な条件を設定することができるとは限らなかった。そのため、これまで様々な改良された条件設定方法が検討されてきた。例えば、特許文献1には、鋳造条件および不具合とその要因に関する経験的知識を知識ベースにまとめておき、入力した初期条件に応じて推論エンジンで推論して最適鋳造条件を設定し、製造した製品の状態等を検出し、再度の推論により鋳造条件を再設定する鋳造機の条件設定方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された技術は、鋳造機の鋳造条件を設定することはできるが、鋳造用の鋳型の造型条件を設定することはできない。
【0005】
本発明の一態様は、鋳造用の鋳型の造型条件を、ユーザが設定するよりも合理的に設定することができる造型条件導出装置、造型条件導出方法、機械学習装置及び機械学習方法を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る造型条件導出装置は、鋳型の少なくとも1つの造型条件を導出する導出ステップを実行する1又は複数のプロセッサを備えており、前記導出ステップは、前記少なくとも1つの造型条件以外の鋳型の造型条件、前記鋳型の材料である砂の性状条件、及び前記鋳型の品質条件から、前記少なくとも1つの造型条件を導出するステップである。
【0007】
本発明の一態様に係る造型条件導出方法は、1又は複数のプロセッサが実行する、鋳型の少なくとも1つの造型条件を導出する導出ステップを含んでおり、前記導出ステップは、前記少なくとも1つの造型条件以外の鋳型の造型条件、前記鋳型の材料である砂の性状条件、及び前記鋳型の品質条件から、前記少なくとも1つの造型条件を導出するステップである。
【0008】
本発明の一態様に係る機械学習装置は、学習用データセットを用いた非線形回帰アルゴリズムによって、鋳型の少なくとも1つの造型条件を演算する非線形関数式を特定するステップ、又は前記学習用データセットを用いた教師あり学習によって、前記少なくとも1つの造型条件を推定する学習済ニューラルネットワークモデルを構築するステップを実行する1又は複数のプロセッサを備えており、前記非線形関数式、又は前記学習済ニューラルネットワークモデルの入力は、前記少なくとも1つの造型条件以外の鋳型の造型条件、前記鋳型の材料である砂の性状条件、及び前記鋳型の品質条件であり、前記非線形関数式、又は前記学習済ニューラルネットワークモデルの出力は、前記少なくとも1つの造型条件である。
【0009】
本発明の一態様に係る機械学習方法は、1又は複数のプロセッサが実行する、学習用データセットを用いた非線形回帰アルゴリズムによって、鋳型の少なくとも1つの造型条件を演算する非線形関数式を特定するステップ、又は前記学習用データセットを用いた教師あり学習によって、前記少なくとも1つの造型条件を推定する学習済ニューラルネットワークモデルを構築するステップを含んでおり、前記非線形関数式、又は前記学習済ニューラルネットワークモデルの入力は、前記少なくとも1つの造型条件以外の鋳型の造型条件、前記鋳型の材料である砂の性状条件、及び前記鋳型の品質条件であり、前記非線形関数式、又は前記学習済ニューラルネットワークモデルの出力は、前記少なくとも1つの造型条件である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、鋳造用の鋳型の造型条件を、ユーザが設定するよりも合理的に設定することができる造型条件導出装置、造型条件導出方法、機械学習装置及び機械学習方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態1に係る造型条件演算システムの全体構成図である。
【
図2】実施形態1に係る造型条件演算装置のブロック構成図である。
【
図3】実施形態1に係る造型条件演算方法を示すフローチャートである。
【
図4】実施形態1に係る機械学習方法を示すフローチャートである。
【
図6】造型条件演算装置が実施する関係式特定ステップの流れを示すフローチャートである。
【
図7】造型条件演算装置が実施する処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】サブツリー突然変異の内容を例示する図である。
【
図10】ホイスト突然変異の内容を例示する図である。
【
図12】本発明の実施形態2に係る造型条件推定システムの全体構成図である。
【
図13】実施形態2に係る造型条件推定装置の構成を示すブロック構成図である。
【
図14】実施形態2に係る造型条件推定方法のフローチャートである。
【
図15】実施形態2に係る機械学習方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態1に係る造型条件演算システムS1の全体構成図である。
【0013】
造型条件演算システムS1は、鋳型の造型条件(以下、単に「造型条件」と称する)を演算して設定するためのシステムである。造型条件演算システムS1は、
図1に示すように、造型条件演算装置1と、データロガー5とを備える。造型条件演算システムS1は、機械学習装置2を備えてもよい。造型条件演算装置1は、特許請求の範囲に記載した「造型条件導出装置」の一形態である。
【0014】
鋳型は、造型機7によって造型される。鋳型は、鋳物砂に粘結剤(バインダー)を含む添加物を加えて混練し、混練された鋳物砂を造型機7の鋳枠に充填し、押し固めることによって造型される。粘結剤は、例えば、水ガラス等の無機材料である。造型される鋳型は例えば、主型又は中子である。
【0015】
鋳型造型機の運転条件は、鋳型の材料である砂の性状によって変更される。以下、鋳型造型機の運転条件を造型条件と称し、砂の性状に関する条件を砂性状条件と称する。造型条件は多くの種類があり、1つの造型条件を変えると、他の造型条件も変える必要がある。従って、所定の品質条件を満たす鋳型を造型するためには、複数の砂性状条件に応じて複数の造型条件を適切に組み合わせる必要がある。そのため、品質条件を満たす鋳型を製造するための砂性状条件と造型条件との最適な組み合わせを見つけることは容易なことではない。従来は、熟練者の経験則に基づく判断で造型条件の組み合わせが設定されていた。しかし、本実施形態では、造型条件演算装置1を用いて、所定の品質条件を満たす鋳型を製造するための、砂性状条件と造型条件の最適な組み合わせを設定する。
【0016】
砂性状条件は、コンパクタビリティ、水分量、通気度、及び砂温度のうちの少なくとも1つである。コンパクタビリティは、砂に所定の圧縮力を加えて圧縮した場合の、圧縮前後の体積の減少率である。水分量は、砂に含まれる水分割合であり、砂を加熱乾燥した場合の重量の減少量で求めることができる。通気度は、注湯時に発生するガスを透過させる(外部に放出する)能力である。砂温度は、造型前の砂の温度である。これらは、例えば専用の砂性状測定装置で測定することができる。
【0017】
造型条件は、スクイズ圧力、ボードセット位置、砂入れ時間、砂入れ時のエアレーション圧力及び/又はブロー圧力(本明細書では、両者を併せてエアレーション条件と称する。)、パターンプレートの種類(型)、離型剤の塗布量、及びレベリングフレームの動作タイミングのうちの少なくとも1つである。
【0018】
スクイズ圧力は、砂を充填した後にスクイズボードを押し込む圧力である。ボードセット位置は、砂を投入する前のスクイズボードの初期位置である。ボードセット位置により、投入する砂の量が変わる。砂入れ時間は、砂を投入する時間である。砂入れ時のエアレーション条件は、砂を投入する際に砂を均一に充填するために供給するエアの圧力である。パターンプレートの種類は、鋳型の形状(鋳造品の形状)を決める型の種類である。離型剤の塗布量は、パターンプレートに塗布する離型剤の塗布量である。レベリングフレームの動作タイミングは、枠付き造型機に設けられているレベリングフレームを動作させるタイミングである。
【0019】
また、造型された鋳型の品質条件(品質を評価するための評価項目)は、鋳型強度、型落ちの有無、及び砂付着の有無のうちの少なくとも1つである。鋳型強度は、鋳型を所定の方向に圧力をかけた場合に、変形又は亀裂等の破損が生じない圧力である。型落ちとは、鋳型の一部が剥落することである。砂付着とは、鋳型に余分な砂が付着することである。鋳型強度は、例えば強度計測機で計測される。型落ちの有無、及び砂付着の有無は、例えば鋳型判定機によって判定される。あるいは、これらは作業者が目視で判定してもよい。
【0020】
品質評価については、例えば、所定の値以上の強度を有する場合に、所定の品質を満たすと評価される。あるいは、鋳型強度に加えて、所定量以上の型落ちがないこと、及び砂付着が認められないこと、を満たす場合に、所定の品質を満たすと評価してもよい。
【0021】
(造型条件演算装置)
造型条件演算装置1について説明する。造型条件演算装置1は、造型条件演算方法M1を実施するための装置である。造型条件演算装置1は、データロガー5から、砂性状データ(砂性状条件とも称する)を取得する。具体的には、データロガー5は、砂性状条件を砂性状測定装置6から収集し、収集した砂性状条件を造型条件演算装置1に提供する。また、造型条件演算装置1は、データロガー5から、少なくとも1つの造型条件以外の造型条件を取得する。具体的には、データロガー5は、少なくとも1つの造型条件以外の造型条件を造型機7から収集し、造型条件演算装置1に提供する。あるいは、ユーザが少なくとも1つの造型条件以外の造型条件を直接、造型条件演算装置1に入力してもよい。品質条件は、ユーザが造型条件演算装置1に入力したものである。データロガー5は、例えば、PLC(Programmable Logic Controller)やIPC(Industrial PC)などにより構成することができる。
【0022】
造型条件演算装置1は、少なくとも1つの造型条件を、学習用データセットを用いた非線形回帰アルゴリズムLMにより特定された関係式(本実施形態では非線形関数式)Fを用いて演算する。具体的には、造型条件演算装置1は、データロガー5から取得した砂性状条件、少なくとも1つの造型条件以外の造型条件、及び品質条件を非線形関数式Fに入力することにより、少なくとも1つの造型条件を演算する。言い換えれば、非線形関数式Fの入力は、少なくとも1つの造型条件以外の鋳型の造型条件、鋳型の材料である砂の性状条件、及び鋳型の品質条件であり、非線形関数式Fの出力は、少なくとも1つの造型条件である。非線形関数式Fは、特許請求の範囲に記載した「学習済モデル」の一形態である。
【0023】
(造型条件演算装置の構成)
造型条件演算装置1の構成について、
図2を参照して説明する。
図2は、実施形態1に係る造型条件演算装置1の構成を示すブロック構成図である。
【0024】
造型条件演算装置1は、汎用コンピュータを用いて実現されており、プロセッサ11と、一次メモリ12と、二次メモリ13と、入出力インタフェース14と、通信インタフェース15と、バス16とを備えている。プロセッサ11、一次メモリ12、二次メモリ13、入出力インタフェース14、及び通信インタフェース15は、バス16を介して相互に接続されている。
【0025】
二次メモリ13には、造型条件演算プログラムP1、非線形関数式F、砂性状条件、造型データ(造型条件とも称する)、及び品質データ(品質条件とも称する)が格納されている。プロセッサ11は、二次メモリ13に格納されている造型条件演算プログラムP1、非線形関数式F、砂性状条件、造型条件、及び品質条件を一次メモリ12上に展開する。そして、プロセッサ11は、一次メモリ12上に展開された造型条件演算プログラムP1に含まれる命令に従って、造型条件演算方法M1に含まれる各ステップを実行する。一次メモリ12上に展開された砂性状条件、造型条件、及び品質条件は、造型条件演算方法M1の造型条件演算ステップM12(後述)をプロセッサ11が実行する際に利用される。なお、造型条件演算プログラムP1が二次メモリ13に格納されているとは、ソースコード、又は、ソースコードをコンパイルすることにより得られた実行形式ファイルが二次メモリ13に記憶されていることを指す。
【0026】
プロセッサ11として利用可能なデバイスとしては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、MPU(Micro Processing Unit)、FPU(Floating point number Processing Unit)、PPU(Physics Processing Unit)、マイクロコントローラ、又は、これらの組み合わせを挙げることができる。
【0027】
また、一次メモリ12として利用可能なデバイスとしては、例えば、半導体RAM(Random Access Memory)を挙げることができる。一次メモリ12は、「主記憶装置」と呼ばれることもある。また、二次メモリ13として利用可能なデバイスとしては、例えば、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、ODD(Optical Disk Drive)、FDD(Floppy Disk Drive)、又は、これらの組み合わせを挙げることができる。二次メモリ13は、「補助記憶装置」と呼ばれることもある。なお、二次メモリ13は、造型条件演算装置1に内蔵されていてもよいし、入出力インタフェース14又は通信インタフェース15を介して造型条件演算装置1と接続された他のコンピュータ(例えば、クラウドサーバを構成するコンピュータ)に内蔵されていてもよい。なお、本実施形態においては、造型条件演算装置1における記憶を2つのメモリ(一次メモリ12及び二次メモリ13)により実現しているが、これに限定されない。すなわち、造型条件演算装置1における記憶を1つのメモリにより実現してもよい。この場合、例えば、そのメモリの或る記憶領域を一次メモリ12として利用し、そのメモリの他の記憶領域を二次メモリ13として利用すればよい。
【0028】
入出力インタフェース14には、入力デバイス及び/又は出力デバイスが接続される。入出力インタフェース14としては、例えば、USB(Universal Serial Bus)、ATA(Advanced Technology Attachment)、SCSI(Small Computer System Interface)、PCI(Peripheral Component Interconnect)などのインタフェースが挙げられる。入出力インタフェース14に接続される入力デバイスとしては、データロガー5が挙げられる。造型条件演算方法M1において取得するデータは、データロガー5を介して造型条件演算装置1に入力され、一次メモリ12に記憶される。また、入出力インタフェース14に接続される入力デバイスとしては、キーボード、マウス、タッチパッド、マイク、又は、これらの組み合わせが挙げられる。また、入出力インタフェース14に接続される出力デバイスとしては、ディスプレイ、プロジェクタ、プリンタ、スピーカ、ヘッドホン、又は、これらの組み合わせが挙げられる。造型条件演算方法M1においてユーザから取得するデータは、これらの出力デバイスを介して造型条件演算装置1に入力され、一次メモリ12に記憶される。なお、造型条件演算装置1は、ラップトップ型コンピュータのように、入力デバイスとして機能するキーボードと、出力デバイスとして機能するディスプレイとを、それぞれ内蔵してもよい。或いは、造型条件演算装置1は、タブレット型コンピュータのように、入力デバイス及び出力デバイスの両方として機能するタッチパネルを内蔵していてもよい。
【0029】
通信インタフェース15には、ネットワークを介して他のコンピュータが有線接続又は無線接続される。通信インタフェース15としては、例えば、イーサネット(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)などのインタフェースが挙げられる。利用可能なネットワークとしては、PAN(Personal Area Network)、LAN(Local Area Network)、CAN(Campus Area Network)、MAN(Metropolitan Area Network)、WAN(Wide Area Network)、GAN(Global Area Network)、又は、これらのネットワークを含むインターネットワークが挙げられる。インターネットワークは、イントラネットであってもよいし、エクストラネットであってもよいし、インターネットであってもよい。造型条件演算方法M1において造型条件演算装置1が他のコンピュータ(例えば、データロガー5)から取得するデータ(例えば、砂性状条件、造型条件、及び品質条件)、及び、造型条件演算方法M1において造型条件演算装置1が他のコンピュータに提供するデータは、これらのネットワークを介して送受信される。
【0030】
なお、本実施形態においては、単一のプロセッサ(プロセッサ11)を用いて造型条件演算方法M1を実行する構成を採用しているが、本発明は、これに限定されない。すなわち、複数のプロセッサを用いて造型条件演算方法M1を実行する構成を採用してもよい。この場合、連携して造型条件演算方法M1を実行する複数のプロセッサは、単一のコンピュータに設けられ、バスを介して相互に通信可能に構成されていてもよいし、複数のコンピュータに分散して設けられ、ネットワークを介して相互に通信可能に構成されていてもよい。一例として、クラウドサーバを構成するコンピュータに内蔵されたプロセッサと、そのクラウドサーバの利用者が所有するコンピュータに内蔵されたプロセッサとが、連携して造型条件演算方法M1を実行する態様などが考えられる。
【0031】
また、本実施形態においては、造型条件演算方法M1を実行するプロセッサ(プロセッサ11)と同じコンピュータに内蔵されたメモリ(二次メモリ13)に砂性状条件、造型条件、又は品質条件を格納する構成を採用しているが、本発明は、これに限定されない。すなわち、造型条件演算方法M1を実行するプロセッサと異なるコンピュータに内蔵されたメモリに砂性状条件、造型条件、又は品質条件を格納する構成を採用してもよい。この場合、砂性状条件、造型条件、又は品質条件を格納するメモリが内蔵されたコンピュータは、造型条件演算方法M1を実行するプロセッサが内蔵されたコンピュータとネットワークを介して相互に通信可能に構成される。一例として、クラウドサーバを構成するコンピュータに内蔵されたメモリに砂性状条件、造型条件、又は品質条件を格納し、そのクラウドサーバの利用者が所有するコンピュータに内蔵されたプロセッサが造型条件演算方法M1を実行する態様などが考えられる。
【0032】
また、本実施形態においては、単一のメモリ(二次メモリ13)に砂性状条件、造型条件、又は品質条件を格納する構成を採用しているが、本発明は、これに限定されない。すなわち、複数のメモリに砂性状条件、造型条件、又は品質条件を分散して格納する構成を採用してもよい。この場合、砂性状条件、造型条件、又は品質条件を格納する複数のメモリは、単一のコンピュータ(造型条件演算方法M1を実行するプロセッサが内蔵されたコンピュータであってもよいし、そうでなくてもよい)に設けられていてもよいし、複数のコンピュータ(造型条件演算方法M1を実行するプロセッサが内蔵されたコンピュータを含んでいてもよいし、そうでなくてもよい)に分散して設けられていてもよい。一例として、クラウドサーバを構成する複数のコンピュータの各々に内蔵されたメモリに砂性状条件、造型条件、又は品質条件を分散して格納する構成などが考えられる。
【0033】
(造型条件演算方法)
次に、造型条件演算装置1が実施する造型条件演算方法M1の流れについて説明する。造型条件演算方法M1は、砂性状条件、少なくとも1つの造型条件以外の造型条件、及び品質条件から、少なくとも1つの造型条件を演算する方法である。造型条件演算方法は、特許請求の範囲に記載した「造型条件導出方法」の一形態である。
【0034】
図3は、実施形態1に係る造型条件演算方法M1のフローチャートである。
図3に示すように、造型条件演算方法M1は、データ収集ステップM11と、造型条件演算ステップM12と、を含む。なお、造型条件演算方法M1は、プロセッサ11が、非線形関数式Fから出力された少なくとも1つの造型条件を含む造型条件を用いて、造型機7を制御する制御ステップM13をさらに含んでもよい。その場合、造型条件演算装置1は、造型機7を制御する制御装置を兼ねる。非線形関数式Fから出力された少なくとも1つの造型条件を含む造型条件とは、例えば、非線形関数式Fから出力された造型条件と、出力された造型条件以外の造型条件を併せた造型条件である。
【0035】
データ収集ステップM11は、造型条件演算装置1のプロセッサ11が砂性状条件、少なくとも1つの造型条件以外の造型条件、及び品質条件を取得するステップである。具体的には、プロセッサ11は、データロガー5から砂性状条件を取得し、造型機7から少なくとも1つの造型条件以外の造型条件を取得し、ユーザの入力から品質条件を取得する。
【0036】
造型条件演算ステップM12は、プロセッサ11が、一部の造型条件以外の造型条件を、非線形関数式Fを用いて演算するステップである。造型条件演算ステップM12は、特許請求の範囲に記載した「鋳型の少なくとも1つの造型条件を導出する導出ステップ」の一例である。造型条件演算ステップM12において、少なくとも1つの造型条件以外の造型条件と砂性状条件と品質条件とを組み合わせた条件から、少なくとも1つの造型条件が導出される。
【0037】
少なくとも1つの造型条件と、その少なくとも1つの造型条件以外の造型条件について説明する。鋳型を製造するにあたっては、所定の造型条件(少なくとも1つの造型条件)が鋳型の品質に大きな影響を与えることがこれまでの経験から判明している。所定の造型条件とは、例えば、スクイズ圧力、ボードセット位置、及びエアレーション条件のうちの少なくとも1つである。そのため、これらのうちの少なくとも1つの造型条件を除いた造型条件と砂性状条件とから、品質条件を満たす最適な少なくとも1つの造型条件を決めることが重要となる。
【0038】
例えば、砂性状条件をx(x1,x2,…,xl)、造型条件をy(y1,y2,…,ym)、及び品質条件をz(z1,z2,…,zn)とする。所定の造型条件をy1(例えばスクイズ圧力)とすると、所定の造型条件を除いた造型条件は(y2,…,ym)の(m-1)個の造型条件である。所定の造型条件y1は、砂性状条件(x1,x2,…,xl)、y1を除いた造型条件(y2,…,ym)、品質条件(z1,z2,…,zn)を関数式Fに入れることにより演算される。つまり、
y1=F(x1,x2,…,xl,y2,…,ym,z1,z2,…,zn)
である。関数式Fの特定方法については後述する。なお、所定の造型条件は1つに限らず、複数であってもよい。その場合、関数式Fに入力される造型条件は、その複数の造型条件を除いた造型条件である。
【0039】
制御ステップM13は、演算した少なくとも1つの造型条件、並びにステップM11で取得した少なくとも1つの造型条件以外の造型条件及び砂性状条件を用いて、プロセッサ11が造型機7を制御するステップである。このステップにより、ステップM11で取得した品質条件を満たす鋳型が造型機7により造型される。
【0040】
以上の造型条件演算装置1又は造型条件演算方法M1によれば、鋳造用の鋳型の最適な造型条件を、非線形関数式Fを用いて演算して設定することができる。従って、鋳造用の鋳型の造型条件を、ユーザが設定するよりも合理的に設定することができる。
【0041】
(変形例1)
上述の実施形態では、非線形関数式Fに入力されるデータは、砂性状条件、少なくとも1つの造型条件以外の造型条件、及び品質条件である。しかし、データの内容はこれに限らない。例えば、非線形関数式Fの入力に、鋳型を用いて製造される鋳造品の品質条件が含まれていてもよい。鋳造品の品質条件は、鋳造品の強度、及び欠陥(「す」等)の有無のうちの少なくとも1つである。
【0042】
鋳型の品質は鋳造される鋳造品の品質に直接関連するため、基本的には、鋳型の品質を管理することにより鋳造品の品質も管理される。しかし、鋳型で製造される鋳造品の品質を、鋳型の造型条件を決定する際のデータに加えることで、より精度の良い鋳型の造型条件を設定できる。
【0043】
(機械学習装置)
次に、実施形態1に係る機械学習装置2について説明する。機械学習装置2は、砂性状条件、造型条件、及び品質条件のデータセットを学習用データセットDSとして取得し、学習用データセットDSに基づいて砂性状条件、造型条件、及び品質条件の間の関係式を特定する。
【0044】
機械学習装置2は、機械学習方法M2を実施するための装置である。
図1に示すように、機械学習装置2は、実際に鋳型を製造した際に、データロガー5から、砂性状条件と、造型条件と、品質条件と、を取得する。具体的には、データロガー5は、砂性状測定装置6から砂性状条件を収集し、造型機7から造型条件を取得し、鋳型判定機8から品質条件を取得して学習用データセットDSを作成する。なお、機械学習装置2は、砂性状条件、造型条件、及び品質条件の少なくとも1つをユーザから取得してもよい。
【0045】
データロガー5は、収集した砂性状条件、造型条件、及び品質条件を機械学習装置2に提供する。機械学習装置2は、取得した砂性状条件、造型条件、及び品質条件を含む学習用データセットDSを非線形回帰アルゴリズムARに入力し、非線形関数式Fを特定する。
【0046】
また、ユーザが、過去に鋳型を製造した際に記録された、砂性状条件、造型条件、及び品質条件を集めて、学習用データセットDSとして機械学習装置2に入力してもよい。新たに鋳型を製造した際のデータのみを用いる場合は、学習用データセットDSの数を大きくして非線形関数式Fの精度を高めるまでに時間がかかる。しかし、過去に鋳型を製造した際のデータセットを学習用データセットDSに含めることにより、非線形関数式Fの精度を高めることができる。
【0047】
本実施形態においては、機械学習装置2は、造型条件演算装置1が兼ねている。つまり、機械学習装置2は、造型条件演算装置1で説明したプロセッサ11と、一次メモリ12と、二次メモリ13と、入出力インタフェース14と、通信インタフェース15と、バス16とによって構成される。以下ではその前提で説明するが、機械学習装置2は、造型条件演算装置1と情報通信可能な異なるコンピュータで構成されてもよい。
【0048】
二次メモリ13には、機械学習プログラムP2及び学習用データセットDSが格納されている。学習用データセットDSは、教師データDS1,DS2…の集合である。プロセッサ11の機能は、先に説明したものと同様である。二次メモリ13に格納された学習用データセットDSは、機械学習方法M2の学習用データセット構築ステップM21(後述)にて構築され、機械学習方法M2の関係式特定ステップM22(後述)において利用される。また、機械学習方法M2の関係式特定ステップM22にて特定された関係式Fも、二次メモリ13に格納される。
【0049】
機械学習方法M2においてユーザから取得するデータは、入力デバイスを介して機械学習装置2に入力され、一次メモリ12に記憶される。機械学習方法M2においてユーザに提供する情報は、出力デバイスを介して機械学習装置2から出力される。機械学習装置2が造型条件演算装置1とは別のコンピュータとして構成されている場合は、造型条件演算装置1に提供するデータ(例えば、非線形関数式F)は、ネットワークを介して送受信されてもよい。
【0050】
(機械学習方法)
次に、機械学習方法M2の流れについて説明する。機械学習方法M2は、砂性状条件と、造型条件と、品質条件とから、これらの条件の間の関係式Fを、アルゴリズム(本実施形態においては非線形回帰アルゴリズムAR)を用いて特定する方法である。本実施形態においては、非線形回帰アルゴリズムARとして遺伝的アルゴリズムを用いている。しかし、本発明はこれに限定されず、例えばロジスティック回帰等の遺伝的アルゴリズム以外の非線形回帰アルゴリズムを用いてもよい。
【0051】
図4は、実施形態1に係る機械学習方法M2を示すフローチャートである。機械学習方法M2は、学習用データセット構築ステップM21と、関係式特定ステップM22と、関係式出力ステップM23と、判定ステップM24と、を含んでいる。
【0052】
学習用データセット構築ステップM21は、プロセッサ11が、教師データDS1,DS2,…の集合である学習用データセットDSを構築するステップである。
【0053】
各教師データDSi(i=1,2,…)には、砂性状条件、造型条件、及び品質条件が含まれている。教師データDSiに含まれる砂性状条件、造型条件、及び品質条件は、造型条件演算装置1が非線形関数式Fに入力する砂性状条件、造型条件、及び品質条件と同様のデータである。学習用データセット構築ステップM21において、プロセッサ11は、データロガー5からこれらのデータを取得し、学習用データセットDSを構築する。構築した学習用データセットDSは、二次メモリ13に格納される。
【0054】
関係式特定ステップM22は、プロセッサ11が、学習用データセットを用いた非線形回帰アルゴリズムによって、鋳型の少なくとも1つの造型条件を演算する非線形関数式を特定するステップである。具体的には、関係式特定ステップM22では、プロセッサ11が、砂性状条件x1,x2,…,xl、造型条件y1,y2,…,ym、及び品質条件z1,z2,…,znを含む学習用データセットDSを参照して、条件x、y、zの間の関係を表す非線形関数式を、非線形回帰アルゴリズムを用いて特定する。本実施形態において、プロセッサ11は、遺伝的アルゴリズムを用いて関係式を特定する。
【0055】
関係式特定ステップM22においては、例えば、砂性状条件、少なくとも1つの造型条件以外の鋳型の造型条件、及び品質条件の組み合わせと、少なくとも1つの造型条件との関係を特定する。ユーザは、少なくとも1つの造型条件以外の鋳型の造型条件と、砂性状条件と、品質条件とを入力した場合に、少なくとも1つの造型条件を出力する関係式を特定するように、プロセッサ11に入力する。
【0056】
例えば、プロセッサ11に、スクイズ圧力を除いた造型条件と、砂性状条件と、品質条件とを入力した場合に、スクイズ圧力を出力する関係式を特定させることが好ましい。また、例えばプロセッサ11に、ボードセット位置を除いた造型条件と、砂性状条件と、品質条件とを入力した場合に、ボードセット位置を出力する関係式を特定させることが好ましい。あるいは、例えばプロセッサ11に、エアレーション条件を除いた造型条件と、砂性状条件と、品質条件とを入力した場合に、エアレーション条件を出力する関係式を特定させることが好ましい。あるいは、プロセッサ11に、スクイズ圧力、ボードセット位置、及びエアレーション条件のうちの2つ、又は3つを除いた造型条件を含むデータセットを入力した場合に、除かれた2つ、又は3つの条件を出力する関係式を特定させることが好ましい。
【0057】
関係式出力ステップM23は、プロセッサ11が、関係式特定ステップM22にて特定した関係式を出力するステップである。本実施形態において、プロセッサ11は、関係式をディスプレイに出力(表示)する。このとき、プロセッサ11は、関係式を表すグラフをディスプレイに表示してもよい。
【0058】
ディスプレイに出力された関係式を目視により確認したユーザは、造型条件演算装置1が特定した関係式が適切な関係式であるか否かを判断する。そして、この判断を終えたユーザは、判断結果を機械学習装置2に入力するためのユーザ操作を行う。
【0059】
判定ステップM24は、プロセッサ11が、関係式特定ステップM22にて特定した関係式が適切な関係式であるか否かを、上述したユーザ操作に応じて判定するステップである。判定ステップM24にて「適切な関係式である」と判定された場合、プロセッサ11は、特定された関係式Fを二次メモリ13に格納する。一方、判定ステップM24にて「適切な関係式でない」と判定された場合、プロセッサ11は、前述した関係式特定ステップM22以降の処理を再び実行する。なお、関係式特定ステップM22以降の処理を再び実行する場合、プロセッサ11は、関係式特定ステップM22において用いる砂性状条件、造型条件、及び品質条件のセットを変更したり、遺伝的アルゴリズムで用いるパラメータを変更したりする処理を行ってもよい。
【0060】
(関係式特定ステップの具体例)
機械学習方法M2に含まれる関係式特定ステップM22の具体例について、
図5及び
図6を参照して説明する。
図5は、遺伝的アルゴリズムGAを例示する図である。
図6は、プロセッサ11が実行する関係式特定ステップM22の流れを例示するフローチャートである。
図5の例では、遺伝的アルゴリズムGAは、第一世代G1~第四世代G4を含む。
【0061】
本具体例に係る関係式特定ステップM22においては、遺伝的アルゴリズムを用いて条件x、y、zの間の関係を表す非線形関数式を特定する。ここで、遺伝的アルゴリズムとは、解の候補を遺伝子で表現した個体iを複数用意し、適応度Diの高い個体iを優先的に選択して交叉、突然変異などの操作を繰り返しながら解を探索するアルゴリズムのことを指す。本実施形態において、個体iは、非線形の関係式をツリー構造で表したものであり、関係式に含まれる演算子及び引数がツリーのノードで表される。
適応度Diは適応度関数によって与えられる。
【0062】
プロセッサ11は、所定のモジュール(以下、「Aモジュール」という)を用いて関係式特定ステップM22を実行する。Aモジュールは、遺伝的アルゴリズムを実行するモジュールである。Aモジュールでは、プロセッサ11は、まず、新しいデータを予測するために、既知の独立変数とそれらの従属変数ターゲットの間の関係を表す単純なランダム式の母集団を作成することから始める。次に、プロセッサ11は、遺伝子操作を受ける集団から最も適した個体を選択することにより、集団を進化させて次の世代の集団を生成する。上記の操作により、上記関係を最もよく示す関係式が特定される。
【0063】
本具体例では、Aモジュールとして、遺伝的プログラミングを実行するモジュールが用いられる。遺伝的プログラミングとは、遺伝的アルゴリズムを拡張したものであり、遺伝子型の表現としてツリー構造を用いる。なお、
図6に示す関係式特定ステップM22の流れは例示であり、遺伝的アルゴリズムGAを用いた関係式の特定方法は
図6に示した方法に限定されるものではない。遺伝的アルゴリズムGAを用いた関係式の特定方法として、他の種々の手法が採用され得る。
【0064】
ステップM221において、プロセッサ11は、データセットDSを取得する。本動作例では、プロセッサ11は、二次メモリ13に記憶されたデータセットDSを読み出すことにより、砂性状データ、造型データ、及び品質データを取得する。
【0065】
ステップM222において、プロセッサ11は、遺伝的アルゴリズムGAで用いるパラメータ(以下「個体パラメータ」という)を取得する。個体パラメータは例えば、生成個体数N、トーナメントサイズNt、交叉確率Pc、突然変異確率Pms、進化世代数Ng、構文木に用いる演算子Oj、構文木の最大の深さd、事象発生確率Pk1~Pk5を含む。各個体パラメータの値は例えば、ユーザが造型条件演算装置1に入力する。
【0066】
生成個体数Nは、集合に含める個体iの数を表す。トーナメントサイズNtは、現世代の集合からランダムに選択する個体iの数である。突然変異確率Pmsは、遺伝子が突然変異をする確率である。構文木に用いる演算子Oiは、例えば、Max、Min、sqrt(ルート)、log(自然対数)、+、-、×、÷、sin(ラジアン)、cos(ラジアン)、tan(ラジアン)、abs、neg、invである。Maxは、最大値を選択する演算子である。Minは、最小値を選択する演算子である。negは符号をマイナスにする演算子である。invはゼロに近い引数を0にする演算子である。
【0067】
事象発生確率Pk1~Pk5は、次世代の集合を進化させる操作として操作m1~m5がそれぞれ選択される確率である。プロセッサ11は、操作m1~m5のいずれかの方法で次世代の集合を進化させる。事象発生確率Pk1~Pk5の総和は1とする。一例として、事象発生確率Pk1、Pk2、Pk3、Pk4、Pk5の値は、それぞれ、「0.1」、「0.2」、「0.3」、「0.4」、「0.1」である。操作m1~m5については参照する図面を代えて後述する。
【0068】
ステップM223において、プロセッサ11は、指定された個体パラメータ(構文木に用いる演算子Oi、構文木の最大の深さd、等)に基づいて、N個の個体iをランダムに生成し、最初の現世代となるN個の個体iの集合を生成する。
【0069】
ステップM224において、プロセッサ11は、現世代の集合に含まれる個体iのそれぞれの適応度Diを算出する。適応度Diは、適応度関数によって与えられる。
【0070】
ステップM225において、プロセッサ11は、現世代の集合からトーナメントサイズNtの数の個体iをランダムに取り出し、その中で最も適応度Diの高い個体iを選択し、次世代の集合に追加する。ステップM225において選択された個体i、すなわち、次世代の集合に追加された個体iを「勝者ツリー」ともいう。
【0071】
プロセッサ11は、次世代の個体数が現世代と同じN個になるまで、すなわち次世代の個体数がNに達していない間は(ステップM226;NO)、ステップM225の処理を繰り返す。プロセッサ11は、次世代の個体数がNに達すると(ステップM226;YES)ステップM227の処理を実行する。
【0072】
ステップM227において、プロセッサ11は、次世代の集合を進化させる処理を実行する。なお、ステップM227の詳細については、参照する図面を代えて後述する。
【0073】
ステップM230において、プロセッサ11は、次世代の集合を現世代の集合に上書きする。ステップM231において、プロセッサ11は、進化世代数Ngに達したかを判定する。進化世代数Ngに達していない場合(ステップM231;NO)、プロセッサ11はステップM224の処理に戻る。一方、進化世代数Ngに達している場合(ステップM231;YES)、プロセッサ11は、ステップM232の処理に進む。
【0074】
ステップM232において、プロセッサ11は、現世代の集合に含まれる個体iの中から適応度Diが最も高い個体iを特定する。以上の処理により、プロセッサ11は、砂性状データ、造型データ、及び品質データの関係を表す非線形の関係式を特定する。
【0075】
図7は、プロセッサ11が実行するステップM227の流れを例示するフローチャートである。ステップM501において、プロセッサ11は、ユーザにより設定された事象発生確率Pk1~Pk5に基づき、操作m1~m5のいずれかを選択する。操作m1を選択した場合(ステップM501;「操作m1」)、プロセッサ11は、ステップM502の処理に進む。操作m2を選択した場合(ステップM501;「操作m2」)、プロセッサ11は、ステップM511の処理に進む。操作m3を選択した場合(ステップM501;「操作m3」)、プロセッサ11は、ステップM521の処理に進む。操作m4を選択した場合(ステップM501;「操作m4」)、プロセッサ11は、ステップM531の処理に進む。操作m5を選択した場合(ステップM501;「操作m5」)、プロセッサ11は、処理を終了する。
【0076】
操作m1は、クロスオーバーである。クロスオーバーとは、個体間で遺伝物質を混合する方法である。クロスオーバーの場合、ステップM502において、プロセッサ11は、次世代の集合に含まれる勝者ツリーについて、各勝者ツリーに含まれるサブツリーをランダムに選択する。
【0077】
ステップM503において、プロセッサ11は、ドナー用の次世代の集合を生成する。ステップM503の処理の内容は、
図6のステップM223~M225の内容と同様である。すなわち、プロセッサ11は、まず、ユーザにより指定された個体パラメータに基づいて、N個の個体iをランダムに生成し、N個の個体iの集合(以下「ドナー集合」という)を生成する。次いで、プロセッサ11は、ドナー集合に含まれる個体iのそれぞれの適応度Diを算出する。次いで、プロセッサ11は、ドナー集合からトーナメントサイズNtの数の個体iをランダムに取り出し、その中で最も適応度Diの高い個体iを選択し、次世代のドナー集合に追加する。この処理により選択される個体iを「ドナーツリー」ともいう。プロセッサ11は、次世代のドナーツリーの数がNになるまで、ドナーツリーの選択処理を繰り返す。
【0078】
ステップM504において、プロセッサ11は、ドナーツリーに含まれるサブツリー(以下「ドナーサブツリー」という)をランダムに選択する。
【0079】
ステップM505において、プロセッサ11は、勝者ツリーにおいてサブツリーの入れ替えを行う。本実施形態では、プロセッサ11は、勝者ツリーからステップM502で選択したサブツリー取り除き、そのサブツリーがあった箇所にステップM503で選択したドナーサブツリーを移植する。すなわち、プロセッサ11は、勝者ツリーに含まれるサブツリーをドナーサブツリーで置換する。このサブツリーが置換された勝者ツリーが、次世代の子孫(個体)となる。
【0080】
操作m2は、サブツリーを突然変異させる操作である。サブツリーを突然変異させることにより、絶滅した機能とオペレーターを集団に再導入し、多様性を維持することができる。この場合、ステップM511において、プロセッサ11は、勝者ツリーに含まれるサブツリーをランダムに選択する。
【0081】
ステップM512において、プロセッサ11は、サブツリーをランダムに生成する。ステップM513において、プロセッサ11は、勝者ツリーにおいてサブツリーの入れ替えを行う。本実施形態では、プロセッサ11は、勝者ツリーからステップM502で選択したサブツリーを取り除き、取り除いたサブツリーがあった箇所に、ステップM512で生成したサブツリーを移植する。すなわち、プロセッサ11は、勝者ツリーに含まれるサブツリーをステップM512で生成したサブツリーで置換する。このサブツリーが置換された勝者ツリーが、次世代の子孫(個体)となる。
【0082】
操作m3は、ホイスト突然変異である。ホイスト突然変異は、ツリーの膨らみと戦う突然変異操作である。ステップM521において、プロセッサは、勝者ツリーに含まれるサブツリーをランダムに選択する。ステップM522において、プロセッサ11は、ステップM521で選択したサブツリーに含まれるサブツリーをランダムに選択する。
【0083】
ステップM523において、プロセッサ11は、ステップM522で選択したサブツリーを、元のサブツリー(ステップM521で選択したサブツリー)の位置まで巻き上げる。このサブツリーが巻き上げられた勝者ツリーが、次世代の子孫(個体)となる。
【0084】
操作m4は、点突然変異である。点突然変異は、多様性を維持するために、絶滅した関係式と演算子を集団に再導入する操作である。ステップM531において、プロセッサ11は、勝者ツリーのノードをランダムに選択する。ステップM532において、プロセッサ11は、ステップM531で選択したノードを、他のノードに置換する。これにより、勝者ツリーの表す関係式は、元のノードと同じ数の引数を必要とする他の関係式に置き換えられる。置き換えにより得られる勝者ツリーが、次世代の子孫(個体)となる。
【0085】
操作m5は、再生である。この場合、勝者ツリーは複製され、変更されることなく次の世代に含められる。
【0086】
図8~
図11は、勝者ツリーに対して行われる操作の内容を例示する図である。
図8は、操作m1(クロスオーバー)の内容を例示する図である。
図8の例では、勝者ツリーtr11のサブツリーtr111が、ドナーツリーtr12のサブツリーtr121で置換され、勝者ツリーtr13となる。勝者ツリーtr13が、次世代の子孫(個体)となる。
【0087】
図9は、操作m2(サブツリー突然変異)の内容を例示する図である。
図9の例では、勝者ツリーtr11のサブツリーtr111が、サブツリーtr22で置換され、勝者ツリーtr23となる。勝者ツリーtr23が、次世代の子孫(個体)となる。
【0088】
図10は、操作m3(ホイスト突然変異)の内容を例示する図である。
図10の例では、勝者ツリーtr11のサブツリーtr1121が、サブツリーtr112の位置まで巻き上げられ、勝者ツリーtr31となる。勝者ツリーtr31が、次世代の子孫(個体)となる。
【0089】
図11は、操作m4(点突然変異)の内容を例示する図である。
図11の例では、勝者ツリーtr11に含まれるノードn21及びノードn34が、ノードn421及びノードn434に置換され、勝者ツリーtr41となる。勝者ツリーtr41が、次世代の子孫(個体)となる。
【0090】
以上の機械学習装置2及び機械学習方法M2によれば、機械学習装置2が、非線形回帰アルゴリズムによって、造型条件を合理的に導出できる関係式(非線形関数式)を特定することができる。
【0091】
(変形例2)
上述の実施形態では、機械学習装置2が取得するデータセットは、砂性状条件、造型条件、及び品質条件から構成される。しかし、データセットの内容はこれに限らない。例えば、非線形関数式Fに入力するデータセットに、鋳型を用いて製造された鋳造品の品質条件を加えてもよい。
【0092】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に図面を参照して説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
図12は、本発明の実施形態2に係る造型条件推定システムS2の全体構成図である。
【0093】
造型条件推定システムS2は、鋳型の造型条件を推定して設定するためのシステムである。造型条件推定システムS2は、
図12に示すように、造型条件推定装置3と、データロガー5とを備える。造型条件演算システムS1は、機械学習装置4を備えてもよい。造型条件推定装置3は、特許請求の範囲に記載した「造型条件導出装置」の一形態である。
【0094】
(造型条件推定装置)
造型条件推定装置3について説明する。造型条件推定装置3は、造型条件推定方法M3を実施するための装置である。造型条件推定装置3は、データロガー5から、砂性状条件と少なくとも1つの造型条件以外の造型条件を取得する。また、造型条件推定装置3は、ユーザが造型条件推定装置3に入力した品質条件を取得する。
【0095】
造型条件推定装置3は、少なくとも1つの造型条件を、学習用データセットを用いた教師あり学習により構築された学習済ニューラルネットワークモデルLMを用いて推定する。学習済ニューラルネットワークモデルLMは、少なくとも1つの造形条件を、この造型条件以外の鋳型の造型条件、鋳型の材料である砂の性状条件、及び鋳型の品質条件から推定するニューラルネットワークモデル(より具体的には、ディープニューラルネットワークモデル)である。言い換えれば、学習済ニューラルネットワークモデルLMの入力は、少なくとも1つの造型条件以外の鋳型の造型条件、鋳型の材料である砂の性状条件、及び鋳型の品質条件であり、学習済ニューラルネットワークモデルLMの出力は、少なくとも1つの造型条件である。学習済ニューラルネットワークモデルLMは、特許請求の範囲に記載した「学習済モデル」の一形態である。
【0096】
(造型条件推定装置の構成)
造型条件推定装置3の構成について、
図13を参照して説明する。造型条件推定装置3は、造型条件推定方法M3を実施するための装置である。
図13は、実施形態2に係る造型条件推定装置3の構成を示すブロック構成図である。
【0097】
造型条件推定装置3は、汎用コンピュータを用いて実現されており、プロセッサ31と、一次メモリ32と、二次メモリ33と、入出力インタフェース34と、通信インタフェース35と、バス36とを備えている。学習済ニューラルネットワークモデルLMは、例えば二次メモリ33に格納されている。各要素は、実施形態1の造型条件演算装置1で説明した要素と対応している。また、プロセッサ31及びメモリ(一次メモリ32と二次メモリ33)の構成についても、造型条件演算装置1で説明したバリエーションが適用可能である。従ってこれらの詳細については説明を省略する。
【0098】
二次メモリ33には、造型条件推定プログラムP3、学習済ニューラルネットワークモデルLM、砂性状条件、造型条件、及び品質条件が格納されている。プロセッサ31の機能は、実施形態1で説明したプロセッサ11と同様である。一次メモリ32上に展開された砂性状条件、造型条件、及び品質条件は、造型条件推定方法M3の推定ステップM32(後述)をプロセッサ31が実行する際に利用される。
【0099】
(造型条件推定方法)
次に、造型条件推定装置3が実施する造型条件推定方法M3の流れについて説明する。造型条件推定方法M3は、砂性状条件、少なくとも1つの造型条件以外の鋳型の造型条件、及び品質条件から、少なくとも1つの造型条件を推定する方法である。造型条件推定方法は、特許請求の範囲に記載した「造型条件導出方法」の一形態である。
【0100】
図14は、実施形態2に係る造型条件推定方法M3のフローチャートである。
図14に示すように、造型条件推定方法M3は、データ収集ステップM31と、推定ステップM32と、を含む。なお、造型条件推定方法M3は、プロセッサ31が、推定した造型条件、及び先に取得した造型条件を用いて、造型機7を制御する制御ステップM33をさらに含んでもよい。その場合、造型条件推定装置3は、造型機7を制御する制御装置を兼ねる。
【0101】
データ収集ステップM31は、プロセッサ31が砂性状条件、少なくとも1つの造型条件以外の鋳型の造型条件、及び品質条件を取得するステップである。データ収集ステップM31は、実施形態1で説明したデータ収集ステップM11と同様である。
【0102】
推定ステップM32は、プロセッサ31が、少なくとも1つの造型条件を、学習済ニューラルネットワークモデルLMを用いて推定するステップである。推定ステップM32は、特許請求の範囲に記載した「造型条件を導出する導出ステップ」の一例である。推定ステップM32においては、例えば、少なくとも1つの造型条件以外の鋳型の造型条件、砂性状条件、及び品質条件を組み合わせた条件から、その品質条件を満たすその一部以外の造型条件が導出される。
【0103】
例えば、学習済ニューラルネットワークモデルLMの入力は、少なくとも1つの造型条件以外の鋳型の造型条件、鋳型の材料である砂の性状条件、及び鋳型の品質条件であり、学習済ニューラルネットワークモデルLMの出力は、少なくとも1つの造型条件である。
【0104】
制御ステップM33は、導出した造型条件、並びにステップM31で取得した造型条件及び砂性状条件を用いて、プロセッサ31が造型機7を制御するステップである。このステップにより、ステップM31で取得した品質条件を満たす鋳型が造型機7により造型される。
【0105】
以上の造型条件推定装置3又は造型条件推定方法M3によれば、鋳造用の鋳型の造型条件を、学習済ニューラルネットワークモデルLMを用いて推定して設定することができる。従って、鋳造用の鋳型の造型条件を、ユーザが設定するよりも合理的に設定することができる。
【0106】
(機械学習装置)
次に、実施形態2に係る機械学習装置4について説明する。機械学習装置4は、機械学習方法M4を実施するための装置である。機械学習装置4は、砂性状条件、造型条件、及び品質条件のデータセットを学習用データセットDSとして取得する。そして、学習用データセットDSをニューラルネットワークモデルNNMに入力し、学習済ニューラルネットワークモデルLMを生成する。学習済ニューラルネットワークモデルLMは、砂性状条件、少なくとも1つの造型条件以外の鋳型の造型条件、及び品質条件を用いて、少なくとも1つの造型条件を推定して導出する。ニューラルネットワークモデルNNMは、例えば、ディープニューラルネットワークモデル、再帰型ニューラルネットワークモデル等を用いることができる。
【0107】
図12に示すように、機械学習装置4は、データロガー5から、砂性状条件と、造型条件と、品質条件と、を取得する。このプロセスは、実施形態1の機械学習装置2がデータを取得するプロセスと同様である。機械学習装置4は、取得した砂性状条件、造型条件、及び品質条件を含む学習用データセットDSをニューラルネットワークモデルNNMに入力し、学習済ニューラルネットワークモデルLMを生成する。
【0108】
本実施形態においては、機械学習装置4は、造型条件推定装置3が兼ねている。つまり、機械学習装置4は、造型条件推定装置3で説明した構成と同じである。以下ではその前提で説明するが、機械学習装置4は、造型条件推定装置3と情報通信可能な異なるコンピュータで構成されてもよい。
【0109】
二次メモリ33には、機械学習プログラムP4及び学習用データセットDSが格納されている。学習用データセットDSは、教師データDS1,DS2…の集合である。プロセッサ31の機能は、実施形態1で説明したプロセッサ11と同様である。二次メモリ33に格納された学習用データセットDSは、機械学習方法M4の学習用データセット構築ステップM41(後述)にて構築され、機械学習方法M4の学習済モデル構築ステップM42(後述)において利用される。また、機械学習方法M4の学習済モデル構築ステップM42にて構築された学習済ニューラルネットワークモデルLMも、二次メモリ33に格納される。
【0110】
機械学習方法M4においてユーザから取得するデータは、入力デバイスを介して機械学習装置4に入力され、一次メモリ32に記憶される。機械学習方法M4においてユーザに提供する情報は、出力デバイスを介して機械学習装置4から出力される。
【0111】
(機械学習方法)
機械学習方法M4の流れについて説明する。機械学習方法M4は、砂性状条件と、造型条件と、品質条件とを、ニューラルネットワークモデルNNMに入力して、学習済ニューラルネットワークモデルLMを生成する方法である。
【0112】
図15は、実施形態2に係る機械学習方法M4を示すフローチャートである。機械学習方法M4は、学習用データセット構築ステップM41と、学習済モデル構築ステップM42と、を含んでいる。
【0113】
学習用データセット構築ステップM41は、プロセッサ31が、教師データDS1,DS2,…の集合である学習用データセットDSを構築するステップである。
【0114】
各教師データDSi(i=1,2,…)には、砂性状条件、造型条件、及び品質条件が含まれている。教師データDSiに含まれる砂性状条件、造型条件、及び品質条件は、造型条件推定装置3が学習済ニューラルネットワークモデルLMに入力する砂性状条件、造型条件、及び品質条件と同様のデータである。学習用データセット構築ステップM41において、プロセッサ31は、データロガー5からこれらのデータを取得し、学習用データセットDSを構築する。
【0115】
学習済モデル構築ステップM42は、プロセッサ31が、学習用データセットを用いた教師あり学習によって、少なくとも1つの造型条件を推定する学習済ニューラルネットワークモデルを構築するステップである。具体的には、学習済モデル構築ステップM42では、プロセッサ31が、学習用データセットDSをニューラルネットワークモデルNNMに入力することにより、学習済ニューラルネットワークモデルLMを構築する。より具体的には、プロセッサ31は、例えば、砂性状条件、少なくとも1つの造型条件以外の鋳型の造型条件、及び品質条件を入力し、少なくとも1つの造型条件を出力させる学習をニューラルネットワークモデルNNMに対して行う。
【0116】
以上の機械学習装置4及び機械学習方法M4によれば、造型条件を合理的に導出できる学習済ニューラルネットワークモデルLMを構築することができる。
【0117】
なお、実施形態1の変形例1、2に記載した事項は、実施形態2においても適用可能である。つまり、学習済ニューラルネットワークモデル(又は学習済モデル)LMの入力に、鋳型を用いて鋳造された鋳造品の品質条件を加えてもよい。
【0118】
また、実施形態1においては、非線形回帰アルゴリズム(具体的には遺伝的アルゴリズム)を用いて、鋳型の或る造形条件を、鋳型の他の造形条件、砂の性状条件、及び鋳型の品質条件から導出する関数式を構築する構成について説明したが、関係式を構築する方法は、非線形回帰アルゴリズムに限定されない。例えば、モンテカルロ法を用いて関数式を構築してもよい。この場合、例えば、関数式の長さ、及び、関数式の要素(変数や演算子など)をランダムに選択することによって複数の関数式を作成し、これらの関数式のなかから誤差の最も小さい関数式を選択することによって、鋳型の或る造形条件を、鋳型の他の造形条件、砂の性状条件、及び鋳型の品質条件から導出する関数式を構築する。
【0119】
また、実施形態1,2においては、学習済モデル(具体的には関数式又はニューラルネットワーク)を用いて、鋳型の或る造形条件を、鋳型の他の造形条件、砂の性状条件、及び鋳型の品質条件から導出する構成について説明したが、本発明は、これに限定されない。例えば、鋳型の或る造形条件と、鋳型の他の造形条件、砂の性状条件、及び鋳型の品質条件とを関連付けたテーブルを参照して、鋳型の或る造形条件を、鋳型の他の造形条件、砂の性状条件、及び鋳型の品質条件から導出してもよい。
【0120】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0121】
1 造型条件演算装置、2,4 機械学習装置、3 造型条件推定装置、5 データロガー、6 砂性状測定装置、7 造型機、8 鋳型判定機、11,31 プロセッサ、12,32 一次メモリ、13,33 二次メモリ、14,34 入出力IF、15,35 通信IF、16,36 バス