(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157001
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】コイル部品およびコイル部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 41/04 20060101AFI20221006BHJP
H01F 27/29 20060101ALI20221006BHJP
H01F 27/02 20060101ALI20221006BHJP
H01F 27/32 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
H01F41/04 B
H01F27/29 123
H01F27/02 120
H01F27/32 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060987
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】高橋 修
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 扶桑
(72)【発明者】
【氏名】石井 浩司
(72)【発明者】
【氏名】山坂 勇喜
(72)【発明者】
【氏名】坂詰 賢治
【テーマコード(参考)】
5E062
5E070
【Fターム(参考)】
5E062DD04
5E062FF01
5E062FG15
5E070AA01
5E070AB02
5E070BA03
5E070BA12
5E070CB03
5E070CB13
5E070DA15
5E070EA01
5E070EB04
(57)【要約】
【課題】外部電極における金属層とめっき層の接合強度を向上させること。
【解決手段】コイル部品の製造方法は、コイル導体30の前駆体のパターンが内部に形成された、金属磁性粒子を含む成形体を形成する工程と、成形体を熱処理して磁性基体10とする工程と、磁性基体10の表面に、金属粒子が焼結してなり、コイル導体30に電気的に接続される、金属層62を形成する工程と、磁性基体10および金属層62の内部に樹脂を含浸させる工程と、金属層62を酸処理することで、金属層62の表面から内部にかけて金属粒子の間に入り込んだ樹脂の一部を除去する工程と、金属層62を酸処理した後、金属層62上および一部の金属層62内部の金属粒子の間にめっき法を用いてめっき層64を形成することで、金属層62とめっき層64とを有する外部電極60を形成する工程と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル導体の前駆体のパターンが内部に形成された、金属磁性粒子を含む成形体を形成する工程と、
前記成形体を熱処理して磁性基体とする工程と、
前記磁性基体の表面に、金属粒子が焼結してなり、前記コイル導体に電気的に接続される、金属層を形成する工程と、
前記磁性基体および前記金属層の内部に樹脂を含浸させる工程と、
前記金属層を酸処理することで、前記金属層の表面から内部にかけて前記金属粒子の間に入り込んだ前記樹脂の一部を除去する工程と、
前記金属層を酸処理した後、前記金属層上および一部の前記金属層内部の前記金属粒子の間にめっき法を用いてめっき層を形成することで、金属層とめっき層とを有する外部電極を形成する工程と、を備えるコイル部品の製造方法。
【請求項2】
金属磁性粒子を含む成形体を形成する工程と、
前記成形体を熱処理して磁性基体とする工程と、
前記磁性基体の表面に、金属粒子が焼結してなる、金属層を形成する工程と、
前記磁性基体および前記金属層の内部に樹脂を含浸させる工程と、
前記金属層を酸処理することで、前記金属層の表面から内部にかけて前記金属粒子の間に入り込んだ前記樹脂の一部を除去する工程と、
前記金属層を酸処理した後、前記金属層上および一部の前記金属層内部の前記金属粒子の間にめっき法を用いてめっき層を形成する工程と、
前記磁性基体にコイル導体を巻回する工程と、
前記磁性基体の表面の前記金属層と前記めっき層に前記コイル導体の端部を接続することで金属層とめっき層とを有する外部電極を形成する工程と、を備えるコイル部品の製造方法。
【請求項3】
前記金属層を酸処理することで、前記金属層の表面に前記金属粒子が取り除かれた窪み部を形成する工程を備える、請求項1または2に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項4】
前記窪み部を形成する工程は、前記窪み部内において前記金属粒子の表面が露出する前記窪み部を形成する、請求項3に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項5】
前記めっき層は、銅めっき層またはニッケルめっき層を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項6】
前記金属粒子は、銀粒子または銅粒子である、請求項1から5のいずれか一項に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項7】
磁性基体と、
前記磁性基体に設けられるコイル導体と、
前記磁性基体の表面に前記コイル導体に電気的に接続して設けられ、金属層と、前記金属層上に設けられ、前記金属層の表面から離れた内部に位置する前記金属層の金属粒子の間に一部が入り込んだめっき層と、を有する外部電極と、を備えるコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品およびコイル部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コイル部品では、コイル導体に電気的に接続される外部電極が磁性基体の表面に形成される。ここで、磁性基体の表面にレーザを照射することで樹脂を除去して金属磁性粒子を露出させ、磁性基体の表面の電気抵抗を低くしてから、磁性基体の表面にめっき法を用いて外部電極を形成することが知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
磁性基体の表面に形成された金属層上にめっき法を用いてめっき層を形成することで、金属層とめっき層とを有する外部電極を形成する場合、金属層とめっき層の接合強度を向上させることが望まれている。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、外部電極における金属層とめっき層の接合強度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、コイル導体の前駆体のパターンが内部に形成された、金属磁性粒子を含む成形体を形成する工程と、前記成形体を熱処理して磁性基体とする工程と、前記磁性基体の表面に、金属粒子が焼結してなり、前記コイル導体に電気的に接続される、金属層を形成する工程と、前記磁性基体および前記金属層の内部に樹脂を含浸させる工程と、前記金属層を酸処理することで、前記金属層の表面から内部にかけて前記金属粒子の間に入り込んだ前記樹脂の一部を除去する工程と、前記金属層を酸処理した後、前記金属層上および一部の前記金属層内部の前記金属粒子の間にめっき法を用いてめっき層を形成することで、金属層とめっき層とを有する外部電極を形成する工程と、を備えるコイル部品の製造方法である。
【0007】
本発明は、金属磁性粒子を含む成形体を形成する工程と、前記成形体を熱処理して磁性基体とする工程と、前記磁性基体の表面に、金属粒子が焼結してなる、金属層を形成する工程と、前記磁性基体および前記金属層の内部に樹脂を含浸させる工程と、前記金属層を酸処理することで、前記金属層の表面から内部にかけて前記金属粒子の間に入り込んだ前記樹脂の一部を除去する工程と、前記金属層を酸処理した後、前記金属層上および一部の前記金属層内部の前記金属粒子の間にめっき法を用いてめっき層を形成する工程と、前記磁性基体にコイル導体を巻回する工程と、前記磁性基体の表面の前記金属層と前記めっき層に前記コイル導体の端部を接続することで金属層とめっき層とを有する外部電極を形成する工程と、を備えるコイル部品の製造方法である。
【0008】
上記構成において、前記金属層を酸処理することで、前記金属層の表面に前記金属粒子が取り除かれた窪み部を形成する工程を備える構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記窪み部を形成する工程は、前記窪み部内において前記金属粒子の表面が露出する前記窪み部を形成する構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記めっき層は、銅めっき層またはニッケルめっき層を含む構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記金属粒子は、銀粒子または銅粒子である構成とすることができる。
【0012】
本発明は、磁性基体と、前記磁性基体に設けられるコイル導体と、前記磁性基体の表面に前記コイル導体に電気的に接続して設けられ、金属層と、前記金属層上に設けられ、前記金属層の表面から離れた内部に位置する前記金属層の金属粒子の間に一部が入り込んだめっき層と、を有する外部電極と、を備えるコイル部品である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、外部電極における金属層とめっき層の接合強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係るコイル部品の斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1のコイル部品の磁性基体の分解斜視図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係るコイル部品の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5(a)は、比較の形態に係るコイル部品の外部電極近傍の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したSEM像の模式図、
図5(b)は、
図5(a)の部分の、エネルギー分散型X線分析(EDS)画像の模式図である。
【
図6】
図6(a)は、第1の実施形態に係るコイル部品の外部電極近傍の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したSEM像の模式図であり、
図6(b)および
図6(c)は、
図6(a)の部分の、エネルギー分散型X線分析(EDS)画像の模式図である。
【
図7】
図7は、第2の実施形態に係るコイル部品の側面図である。
【
図8】
図8は、第2の実施形態に係るコイル部品の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を適宜参照しながら、本願発明の実施形態について説明する。但し、本願発明は図示された態様に限定される訳ではない。また、複数の図面において共通する構成要素には当該複数の図面を通じて同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。
【0016】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係るコイル部品300の斜視図である。
図2は、
図1のコイル部品300の断面図である。
図3は、
図1のコイル部品300の磁性基体10の分解斜視図である。
図1、
図2、および
図3には、様々な回路で受動素子として用いられる積層インダクタが示されている。積層インダクタは、本願発明に適用可能なコイル部品の一例である。本願発明は、DC-DCコンバータに用いられるパワーインダクタまたはそれ以外の様々なコイル部品に適用することができる。また、本願発明で示した各工程は、それぞれの依存関係が明示されている場合を除いて、任意の順番に行われてもよく、一つの工程が複数回行われてもよい。各工程の前後及び間には、記載されていない任意の工程を含んでいてもよい。
【0017】
本第1の実施形態におけるコイル部品300は、
図1、
図2、および
図3に示すように、磁性基体10と、磁性基体10に埋設されたコイル導体30と、コイル導体30に電気的に接続された一対の外部電極60と、を備える。コイル部品300の「長さ」方向、「幅」方向、「高さ」方向をそれぞれ、「L軸」方向、「W軸」方向、「T軸」方向とする。L軸、W軸、T軸は、互いに直交している。コイル導体30のコイル軸Aの方向は特に規制されないが、例えばT軸方向に沿って延びている。磁性基体10の大きさは、特に制限を受けないが、例えば長さ寸法(L軸方向の寸法)が0.2mm~6.0mm、幅寸法(W軸方向の寸法)が0.1mm~4.5mm、高さ寸法(T軸方向の寸法)が0.1mm~4.0mmである。
【0018】
磁性基体10は、概ね直方体の形状(略直方体形状)をしている。磁性基体10は、6つの面によって外面が画定されている。なお、略直方体形状とは、各頂点が丸みを帯びている場合、各辺(各面の境界部)が丸みを帯びている場合、または各面が曲面を有している場合などを含むものである。
【0019】
本第1の実施形態において、コイル部品300の上下方向を言及する場合には、
図1、
図2、および
図3における上下方向を基準とする。つまり、T軸方向の正方向を上方向、負方向を下方向とする。
【0020】
磁性基体10は、複数の金属磁性粒子と熱硬化性または熱可塑性の樹脂とを含んで形成されている。本第1の実施形態では、磁性基体10は、複数の金属磁性粒子が、金属磁性粒子の表面に形成された酸化膜を介して結合している場合を例に説明する。金属磁性粒子の表面に形成された酸化膜は、金属磁性粒子を構成する元素の酸化物である。金属磁性粒子は、鉄-シリコン-クロム系、鉄-シリコン-アルミニウム系、または鉄-シリコン-クロム-アルミニウム系などの軟磁性合金材料、鉄またはニッケルなどの金属磁性材料、アモルファス磁性金属材料、或いはナノ結晶磁性金属材料などにより形成される。本第1の実施形態では、金属磁性粒子は鉄を主成分とする軟磁性合金材料により形成されている場合を例に説明する。鉄を主成分とするとは、軟磁性合金を構成する元素の合計量に対する鉄の割合が50wt%(重量%)以上の場合であり、70wt%以上の場合でもよく、80wt%以上の場合でもよく、90wt%以上の場合でもよい。
【0021】
複数の金属磁性粒子が、金属磁性粒子の表面に形成された酸化膜を介して結合している磁性基体10内の樹脂は、含浸処理により樹脂を金属磁性粒子の間の空隙に導入することにより形成される。磁性基体10は、金属磁性粒子と樹脂の混合物を用いて成型体を作成し、これを熱処理により硬化させて形成することも出来る。磁性基体10内の樹脂は、例えば、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、イミド系樹脂、アミド系樹脂、シリケート系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、及びポリエチレン系樹脂のうち少なくとも1種から形成される。
【0022】
コイル導体30は、周回部32を有する。周回部32は、周回パターンC11~C15とビアV1~V4とを有する。周回パターンC11~C15は、コイル軸Aに直交する平面(LW平面)に沿って延びるとともに、コイル軸Aの方向(T軸方向)において互いに離れている。周回パターンC11~C15のうちT軸方向で隣接する周回パターンは、ビアV1~V4を介して電気的に接続されている。これにより、コイル軸Aを周回する周回部32が形成される。
【0023】
周回部32の一端は、ビアV5、V6により形成される引出部34aにより一方の外部電極60に電気的に接続されている。周回部32の他端は、ビアV11~V16により形成される引出部34bにより他方の外部電極60に電気的に接続されている。
【0024】
磁性基体10は、周回部32が設けられた磁性体層11~15からなる本体部20と、本体部20上に設けられ、1または複数の層からなる上部カバー層16と、本体部20下に設けられ、1または複数の層からなる下部カバー層17と、を有する。周回パターンC11およびビアV1、V11は磁性体層11に形成され、周回パターンC12およびビアV2、V12は磁性体層12に形成され、周回パターンC13およびビアV3、V13は磁性体層13に形成され、周回パターンC14およびビアV4、V14は磁性体層14に形成され、周回パターンC15およびビアV5、V15は磁性体層15に形成されている。ビアV6、V16は下部カバー層17に形成されている。
【0025】
周回パターンC11~C15およびビアV1~V6、V11~V16は、導電性に優れた金属材料、例えば銀、パラジウム、銅、アルミニウム、またはこれらの合金により形成される。
【0026】
一対の外部電極60は、磁性基体10の表面に設けられている。本第1の実施形態では、一対の外部電極60は磁性基体10の下面にL軸方向に分離して設けられている場合を例に説明する。一対の外部電極60のうちの一方は引出部34aを介して周回部32の一端に電気的に接続され、他方は引出部34bを介して周回部32の他端に電気的に接続されている。外部電極60は、金属層62とめっき層64とを含む。めっき層64は、例えばニッケルめっき層と錫めっき層の積層膜である。
【0027】
[製造方法]
図4は、第1の実施形態に係るコイル部品300の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図4に示すように、まず初めに、コイル導体30の前駆体のパターンを内部に有する成形体を形成する(ステップS10)。成形体は以下の方法により形成する。まず、上部カバー層16となる上部積層体を形成する。上部積層体は、複数の磁性体シートを積層することにより形成される。磁性体シートは、例えば、プラスチック製のベースフィルムの表面にスラリーを塗布して乾燥させ、乾燥後のスラリーを所定のサイズに切断することで得られる。スラリーは、鉄を主成分とする軟磁性合金からなる金属磁性粒子を有機バインダーおよび溶剤などと混合して作製される。有機バインダーとしては、例えばポリビニルブチラール(PVB)樹脂またはエポキシ樹脂などの熱処理による脱脂性に優れた樹脂材料が用いられる。溶剤としては、例えばトルエンなどが用いられる。
【0028】
次に、下部カバー層17となる下部積層体を形成する。下部積層体は、上述した磁性体シートに未焼成の導体ビアが設けられた複合シートを積層することにより形成される。複合シートは、磁性体シートのビアV6、V16に相当する位置に貫通孔を形成し、この貫通孔に例えばスクリーン印刷を用いて導電ペーストを埋め込むことで得られる。なお、導体ビアは、スクリーン印刷以外の方法により形成されてもよい。
【0029】
次に、本体部20となる中間積層体を形成する。中間積層体は、磁性体層11~15となる磁性体シートに周回パターンC11~C15となる未焼成の導体パターンとビアV1~V5、V11~V15となる未焼成の導体ビアが設けられた複合シートを積層することにより形成される(導体パターンと導体ビアがコイル導体の前駆体のパターンとなる)。この複合シートを形成するために、まず上述した磁性体シートのビアV1~V5、V11~V15に相当する位置に貫通孔を形成する。次に、磁性体シートに例えばスクリーン印刷を用いて導電ペーストを印刷することで、磁性体シートに未焼成の導体パターンを形成する。このとき、磁性体シートに形成された貫通孔に導電ペーストが埋め込まれるようにする。これにより、磁性体シートに、周回パターンC11~C15となる未焼成の導体パターンおよびビアV1~V5、V11~V15となる未焼成の導体ビアが形成される。なお、導体パターンおよび導体ビアは、スクリーン印刷以外の方法により形成されてもよい。
【0030】
次に、下部積層体、中間積層体、および上部積層体をT軸方向の負方向側から正方向側に向かってこの順序で積層する。この積層体をプレス機などにより熱圧着することで本体積層体を形成する。そして、ダイシング機またはレーザ加工機などの切断機を用いて本体積層体を所望のサイズに個片化することで、コイル導体30の前駆体のパターンを内部に有する成形体を形成する。
【0031】
次に、成形体に対して焼成のための熱処理を行うことで磁性基体10を形成する(ステップS12)。熱処理は、酸素を含む雰囲気下で所定温度にて行われる。この熱処理によって、成形体に含まれる金属磁性粒子の表面に金属磁性粒子の材料成分の酸化物からなる酸化膜が形成され、かつ、複数の金属磁性粒子が酸化膜を介して互いに結合する。磁性基体10の内部にはコイル導体30が形成される。
【0032】
なお、金属磁性粒子の表面に金属磁性粒子の材料成分の酸化物からなる酸化膜が形成され、かつ、複数の金属磁性粒子が酸化膜を介して互いに結合した磁性基体10の代わりに、金属磁性粒子の周りに樹脂が設けられた磁性基体10を形成してもよい。すなわち、
図4のフローチャートにおいて、ステップS10において、金属磁性粒子と樹脂の混合物を用いて磁性シートを形成し、これに必要な箇所にビアを設け、さらに導電性ペーストからなる導体パターンを形成し、これらを積層することによってコイル導体の前駆体が埋め込まれた成形体を形成してもよい。この場合に用いられる樹脂は、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、イミド系樹脂、アミド系樹脂、シリケート系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、及びポリエチレン系樹脂のうち少なくとも1種から形成される。そして、ステップS12において、この成形体を熱処理して樹脂を硬化させることで、金属磁性粒子が樹脂で固められた磁性基体10を形成してもよい。
【0033】
次に、磁性基体10の表面に、コイル導体30に電気的に接続される、外部電極60を構成する金属層62を形成する(ステップS14)。例えば、銀ペースト(導電ペースト)を塗布して焼成することで金属層62を形成する。これにより、磁性基体10の表面に、銀粒子(金属粒子)が焼結した金属層62が得られる。なお、金属層62は、ステップS10において、磁性基体10の最下層となる下部積層体の磁性体シートに銀ペースト(導電ペースト)を塗布して金属層62となる導体パターンを形成することで形成してもよいし、積層体を圧着して本体積層体を形成した後もしくは本体積層体をチップに個片化した後に銀ペースト(導電ペースト)を塗布して金属層62となる導体パターンを形成することで形成してもよい。
【0034】
次に、磁性基体10および金属層62の内部に樹脂を含浸させて硬化させる(ステップS16)。樹脂には、例えば、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、イミド系樹脂、アミド系樹脂、シリケート系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、及びポリエチレン系樹脂のうち少なくとも1種から形成された、絶縁性に優れた樹脂が用いられる。樹脂は磁性基体10の表面から磁性基体10の内部に向かって金属磁性粒子の間を浸入していく。これにより、金属磁性粒子の表面と、粒子間の空隙部分の一部に樹脂膜が形成される。磁性基体10に樹脂を含浸させるのは、後述するめっき液や水分などが磁性基体10の内部に浸入して金属磁性粒子が腐食することを抑制するためである。また、樹脂は金属層62の表面から金属層62の内部に向かって金属層62の銀粒子(金属粒子)の間を浸入していく。これにより、金属層62の銀粒子の表面と、粒子間の空隙部分の一部に樹脂膜が形成される。磁性基体10内への樹脂含浸は、製品内部のめっき液及び湿度浸入防止等の理由のため、磁性基体10の表面に金属層62を形成した後に行うことが好ましい。金属層62を形成する際に焼結のための加熱処理を行う場合は、焼結のための高い温度により樹脂が分解してしまう。このような場合、樹脂含浸は磁性基体10の表面に金属層62を形成した後に行う。このようなことから、金属層62内にも樹脂が含浸される。また、金属層62の金属粒子(銀粒子)の間の通路を通って製品内部へのめっき液及び湿度浸入防止の理由のため、金属層62内にも樹脂を含浸させることが好ましい。金属層62の表面に付着した樹脂は金属層62とめっき層64との導通を阻害するため、樹脂を含浸させた後に金属層62の表面の樹脂を取り除くことを行う。
【0035】
次に、金属層62を酸処理する(ステップS18)。酸処理は、例えばリン酸溶液、塩酸溶液、硫酸溶液などの酸溶液を用いて行う。この酸処理の条件(例えば濃度、温度、処理時間、pHなど)を適切にすることで、酸溶液が金属層62の銀粒子(金属粒子)の間の樹脂膜がない空隙部分に浸入するとともに、銀粒子(金属粒子)の表面に形成された樹脂膜の一部と、粒子間の空隙部分の一部に形成された樹脂膜の一部とを溶解させることができる。例えば、酸溶液は金属層62の表面に露出した金属粒子の間から磁性基体10に接している金属粒子の間まで浸入していく。また、酸処理の条件を適切にすることで、樹脂が取り除かれて金属層62の表面に露出した銀粒子(金属粒子)の一部を溶解して取り除いて、金属層62の表面に窪み部を形成することができる。銀粒子(金属粒子)が取り除かれて形成された窪み部内において、金属層62の銀粒子(金属粒子)の表面の樹脂膜を酸処理によって溶解して、銀粒子(金属粒子)の少なくとも一部を露出させることができる。なお、金属層62の内部では、酸処理によって金属層62の上部表面に近い側の樹脂膜の一部は溶解するが、大部分の樹脂膜は残存するため、金属層62の内部に位置する銀粒子(金属粒子)は、酸処理が行われてもその周りに樹脂膜があるために溶解せずにそのまま残存する。金属層62内部の銀粒子(金属粒子)の表面に形成された樹脂膜の一部と粒子間の空隙部分の一部に形成された樹脂膜の一部とを溶解させることと、金属層62の表面に窪み部を形成することとを、一度の酸処理で行ってもよいし、別々の酸処理で行ってもよい。
【0036】
次に、金属層62上に、電解めっき法を用いて、外部電極60を構成するめっき層64を形成する(ステップS20)。ステップS18で行った酸処理によって、金属層62の銀粒子(金属粒子)の周りに形成された樹脂膜の一部が溶解して通路が形成されているため、めっき液が金属粒子(銀粒子)の間の通路を通って金属層62の内部まで浸入するようになる。例えば、酸処理によって、めっき液が浸入可能な通路が金属層62の表面から磁性基体10まで続いて形成される。このため、めっき層64は、金属層62の表面から離れた内部に位置する銀粒子(金属粒子)の間にまで一部が入り込んで形成される。また、酸処理によって、金属層62の表面の銀粒子(金属粒子)が取り除かれることで形成された窪み部内にもめっき液が浸入するため、この窪み部内にもめっき層64は入り込んで形成される。これにより、コイル導体30に電気的に接続された、金属層62とめっき層64からなる外部電極60が形成される。めっき層64は、ニッケルめっき層と錫めっき層の積層膜であってもよい。
【0037】
[比較の形態]
比較の形態に係るコイル部品は、
図4に示した製造方法において金属層を酸処理することを行わない点以外は、第1の実施形態と同じ方法により形成される。
【0038】
図5(a)は、比較の形態に係るコイル部品の外部電極近傍の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したSEM像の模式図、
図5(b)は、
図5(a)の部分の、エネルギー分散型X線分析(EDS)画像の模式図である。観察したコイル部品は、磁性基体110の表面に外部電極160の金属層162を、銀ペーストを塗布して焼成することで形成した。めっき層164を、電解めっき法で形成し、ニッケルめっき層とニッケルめっき層上の錫めっき層との積層膜とした。
図5(b)では、ニッケルのL線をマッピングしている。ハッチング領域はニッケルが多く含まれている領域である。
【0039】
図5(a)に示すように、比較の形態に係るコイル部品では、金属層162上にニッケルめっき層とニッケルめっき層上の錫めっき層との積層膜であるめっき層164が形成されている。
図5(a)および
図5(b)に示すように、めっき層164は、金属層162上に凹凸が小さな状態で形成されている。また、ニッケル成分が金属層162の内部には見られないことから、めっき層164に含まれるニッケルめっき層は、金属層162の内部には入り込まずに、金属層162の表面に形成されていることが分かる。
【0040】
[第1の実施形態の評価]
図6(a)は、第1の実施形態に係るコイル部品300の外部電極60近傍の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したSEM像の模式図であり、
図6(b)および
図6(c)は、
図6(a)の部分の、エネルギー分散型X線分析(EDS)画像の模式図である。観察したコイル部品300は、磁性基体10の表面に外部電極60の金属層62を、銀ペーストを塗布して焼成することで形成した。めっき層64を、電解めっき法で形成し、ニッケルめっき層とニッケルめっき層上の錫めっき層との積層膜とした。また、
図4のステップS18で説明した酸処理は、濃度が10vol%(体積%)、温度が60℃のリン酸溶液を用いて15分間行った。酸処理条件は例えばリン酸処理の場合、濃度が5~25vol%(体積%)で、温度が50~70℃のリン酸溶液に金属層62を5~30分間浸す処理を行うことができる。
図6(b)および
図6(c)は、銀およびニッケルのL線をマッピングしている。ハッチング領域は該当する元素が多く含まれる領域である。
図6(c)においては、破線で囲まれた島状部分は、破線で囲まれていない帯状部分に比べて、ニッケルの含有量は少なかった。
【0041】
図6(a)に示すように、第1の実施形態に係るコイル部品300では、金属層62上にニッケルめっき層とニッケルめっき層上の錫めっき層との積層膜であるめっき層64が形成されている。
図6(b)および
図6(c)のように、めっき層64に含まれるニッケルめっき層のニッケル成分は、銀で形成された金属層62の表面だけでなく、表面から離れた内部で表面に露出していない銀粒子の間にも入り込んでいることが分かる。
図6(b)を同視野の電子線像(図示せず)と照らし合わせることで銀の粒子の様態を知ることができる。例えば、金属層62の表面の銀粒子の間のみならず、金属層62の表面から銀粒子の3個分の大きさ以上離れた内部にまでニッケル成分が入り込んでいる。
【0042】
このように、金属層62の内部にまでめっき層64に含まれるニッケルめっき層が入り込んだのは以下のためと考えられる。すなわち、金属層62を酸処理することで、金属層62の銀粒子の間に形成された樹脂膜の一部が溶解し、めっき液が浸入可能な通路が形成されたと考えられる。この状態で、電解めっき法によりめっき層64に含まれるニッケルめっき層を形成することで、めっき液が銀粒子の間を浸入していき、その結果、金属層62の表面から離れた内部にまでニッケルめっき層の一部が入り込んだと考えられる。
【0043】
また、
図6(a)および
図6(b)のように、金属層62の表面には窪み部70が形成されている。この窪み部70は、金属層62を酸処理することで、金属層62の表面に露出していた銀粒子が溶解して取り除かれることで形成されたと考えられる。金属層62の表面に銀粒子が取り除かれた窪み部70が形成されているため、
図6(a)および
図6(c)に示すように、めっき層64に含まれるニッケルめっき層の一部がこの窪み部70に入り込んで形成されている。
【0044】
このように、めっき層64の一部が金属層62の内部に位置して表面に現れていない銀粒子の間に入り込んで形成されることで、比較の形態のようにめっき層164が金属層162の表面にだけ形成される場合に比べて、金属層62とめっき層64の接合強度を向上させることができる。また、めっき層64の一部が金属層62の表面に形成された窪み部70に入り込んで形成されることで、アンカー効果によって、金属層62とめっき層64の接合強度を向上させることができる。
【0045】
以上説明したように、本第1の実施形態によれば、
図4に示すように、コイル導体30の前駆体のパターンが内部に形成された、金属磁性粒子を含む成形体を形成する(ステップS10)。成形体を熱処理して磁性基体10を形成する(ステップS12)。磁性基体10の表面に、金属粒子が焼結してなり、コイル導体30に電気的に接続される、金属層62を形成する(ステップS14)。磁性基体10および金属層62の内部に樹脂を含浸させる(ステップS16)。金属層62を酸処理することで、金属層62の表面から内部にかけて金属粒子の間に入り込んだ樹脂の一部を除去する(ステップS18)。金属層62を酸処理した後、金属層62上および一部の金属層62内部の金属粒子の間にめっき法を用いてめっき層64を形成することで、金属層62とめっき層64とを有する外部電極60を形成する(ステップS20)。金属層62を酸処理した後に金属層62上にめっき法を用いてめっき層64を形成することで、金属層62の表面から内部にかけて金属粒子間に入り込んだ樹脂の一部が除去されることで形成された通路にめっき液が浸入し、めっき層64は金属層62の表面から離れた内部に位置する金属粒子の間に一部が入り込んで形成される。このため、金属層62とめっき層64の接合強度を向上させることができる。
【0046】
また、本第1の実施形態では、金属層62を酸処理することで、金属層62の表面の金属粒子が取り除かれた窪み部70を形成する。金属層62を酸処理して窪み部70を形成した後に金属層62上にめっき法を用いてめっき層64を形成することで、めっき層64は窪み部70に一部が入り込んで形成される。このため、アンカー効果が生じ、金属層62とめっき層64の接合強度を向上させることができる。
【0047】
また、本第1の実施形態では、金属層62を酸処理することで窪み部70を形成する際に、窪み部70内において金属層62の金属粒子の表面が露出する窪み部70を形成する。金属層62の金属粒子とめっき層64との間に樹脂がある場合は接合強度が低下する恐れがあるが、窪み部70内で金属層62の金属粒子の表面を露出させることで、この金属粒子の表面が露出している箇所ではめっき層64との間に樹脂がないため、金属層62とめっき層64の接合強度を向上させることができる。
【0048】
金属層62の表面から内部にかけて金属粒子の間に入り込んだ樹脂の一部を除去する酸処理の例として、濃度が5~25vol%(体積%)で、温度が50~70℃のリン酸溶液に金属層62を5~30分間浸す条件が挙げられる。また、この条件で行うことで、金属層62の表面に金属粒子が取り除かれた窪み部70を形成し、この窪み部70内で金属層62の金属粒子の表面を露出させることができる。なお、従来、金属磁性粒子の表面の酸化膜(絶縁膜)がダメージを受けて欠陥となって金属磁性粒子が露出している部分に、リン酸塩を析出させて絶縁性を高めるために、リン酸処理を行うことが知られている。このときのリン酸処理は、金属磁性粒子を溶解しない条件に調整され、例えば濃度が0.1vol%(体積%)で、温度が50℃のリン酸溶液に5分間浸す処理などが採用されている。このような条件では金属層62の表面から内部にかけて金属粒子の間に入り込んだ樹脂の一部を除去することはできない。
【0049】
また、本第1の実施形態では、金属層62を構成する金属粒子が銀粒子であり(すなわち金属層62が銀により形成され)、めっき層64がニッケルめっき層を含む場合を例に示したが、めっき層64は銅めっき層を含む場合でもよい。また、金属層62を構成する金属粒子が銅粒子であり(すなわち金属層62が銅により形成され)、めっき層64がニッケルめっき層を含む場合でもよい。このように、金属層62およびめっき層64のいずれか一方が銅を含んで形成され、他方が銀またはニッケルを含んで形成されることで、金属層62とめっき層64の接合強度を向上させることができる。
【0050】
また、本第1の実施形態によれば、磁性基体10の表面に設けられた外部電極60は、金属層62と、金属層62上に設けられ、金属層62の表面から離れた内部に位置する金属層62の金属粒子の間に一部が入り込んだめっき層64と、を備える。これにより、金属層62とめっき層64の接合強度を向上させることができる。
【0051】
なお、上記第1の実施形態では、外部電極60は磁性基体10の下面のみに設けられている場合、すなわち1面電極である場合を例に示したがこの場合に限られない。外部電極60は、磁性基体10の下面から端面(WT面)にかけて延びる2面電極の場合でもよいし、磁性基体10の下面から端面(WT面)および側面(LT面)を経由して上面まで延びる5面電極の場合でもよい。
【0052】
[第2の実施形態]
上記第1の実施形態では、積層型のコイル部品の場合を例に示したが、第2の実施形態では、巻線型のコイル部品の場合の例を示す。
図7は、第2の実施形態に係るコイル部品400の側面図である。第2の実施形態に係るコイル部品400は、
図7に示すように、磁性基体10aは、軸部80と、軸部80の両端に設けられた一対の鍔部82と、を有する。コイル導体30は、絶縁被膜付きの導線84が軸部80の周りに巻回されることで形成されている。絶縁被膜付きの導線84は、例えば銅、銀、パラジウム、または銀パラジウム合金からなる芯線の周面が、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリウレタン、またはポリエステルなどの樹脂材料からなる絶縁被膜で覆われている。芯線の断面形状は、円形でもよいし、矩形でもよい。
【0053】
一対の鍔部82のうちの一方の鍔部82の表面に、2つの外部電極60が設けられている。一方の外部電極60は、コイル導体30の一端に電気的に接続し、他方のコイル導体30は、コイル導体30の他端に電気的に接続している。
【0054】
なお、本第2の実施形態において、一対の鍔部82それぞれに外部電極60が1つずつ設けられている場合でもよい。外部電極60の位置はこの例にとらわれず磁性基体10aの表面上であれば任意に設定し得る。
【0055】
[製造方法]
図8は、第2の実施形態に係るコイル部品400の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図8に示すように、まず、磁性基体10aを形成するための成形体を形成する(ステップS30)。例えば、金属磁性粒子を含む磁性体ペーストを金型のキャビティ内に充填してプレス形成することにより軸部80と一対の鍔部82を有する成形体を形成する。
【0056】
次に、成形体に対して焼成のための熱処理を行うことで磁性基体10aを形成する(ステップS32)。熱処理は、酸素を含む雰囲気下で所定温度にて行われる。この熱処理によって、成形体に含まれる金属磁性粒子の表面に金属磁性粒子の材料成分の酸化物からなる酸化膜が形成され、かつ、複数の金属磁性粒子が酸化膜を介して互いに結合する。
【0057】
次に、磁性基体10aの鍔部82の表面に外部電極60を構成する金属層62を形成する(ステップS34)。例えば、導電ペーストを塗布して焼成することで金属層62を形成する。これにより、磁性基体10aの表面に、金属粒子が焼結した金属層62が得られる。
【0058】
次に、磁性基体10aおよび金属層62の内部に樹脂を含浸させて硬化させる(ステップS36)。樹脂は磁性基体10aの表面から磁性基体10aの内部に向かって金属磁性粒子の間を浸入していく。これにより、金属磁性粒子の表面と、粒子間の空隙部分の一部に樹脂膜が形成される。また、樹脂は金属層62の表面から金属層62の内部に向かって金属層62の金属粒子の間を浸入していく。これにより、金属層62の金属粒子の表面と、粒子間の空隙部分の一部に樹脂膜が形成される。金属層62の表面に付着した樹脂は金属層62とめっき層64との導通を阻害するため、樹脂を含浸させた後に金属層62の表面の樹脂を取り除くことを行う。
【0059】
次に、金属層62を酸処理する(ステップS38)。酸処理は、例えばリン酸溶液、塩酸溶液、硫酸溶液などの酸溶液を用いて行う。この酸処理の条件を適切にすることで、酸溶液が金属層62の金属粒子の間の樹脂膜がない空隙部分に浸入するとともに、金属粒子の表面に形成された樹脂膜の一部と、粒子間の空隙部分の一部に形成された樹脂膜の一部とを溶解させることができる。また、酸処理の条件を適切にすることで、樹脂が取り除かれて金属層62の表面に露出した金属粒子の一部を溶解して取り除いて、金属層62の表面に窪み部を形成することができる。金属粒子が取り除かれて形成された窪み部内において、金属層62の金属粒子の表面の樹脂膜を酸処理によって溶解して、金属粒子の少なくとも一部を露出させることができる。なお、金属層62の内部では、酸処理によって金属層62の上部表面に近い側の樹脂膜の一部は溶解するが、大部分の樹脂膜は残存するため、金属層62の内部に位置する金属粒子は、酸処理が行われてもその周りに樹脂膜があるために溶解せずにそのまま残存する。
【0060】
次に、金属層62上に、電解めっき法を用いて、外部電極60を構成するめっき層64を形成する(ステップS40)。ステップS38で行った酸処理によって、金属層62の金属粒子の周りに形成された樹脂膜の一部が溶解して通路が形成されているため、めっき液が金属粒子の間の通路を通って金属層62の内部まで浸入するようになる。このため、めっき層64は、金属層62の表面から離れた内部に位置する金属粒子の間にまで一部が入り込んで形成される。また、酸処理によって金属層62の表面の金属粒子が取り除かれることで形成された窪み部内にもめっき液が浸入するため、この窪み内にもめっき層64は入り込んで形成される。
【0061】
次に、磁性基体10aの軸部80に絶縁被膜付きの導線84を巻回してコイル導体30を形成する(ステップS42)。
【0062】
次に、金属層62とめっき層64にコイル導体30の端部を接続することで、金属層62とめっき層64とを有する外部電極60を形成する(ステップS44)。
【0063】
本第2の実施形態によれば、
図8に示すように、金属磁性粒子を含む成形体を形成する(ステップS30)。成形体を熱処理して磁性基体10aを形成する(ステップS32)。磁性基体10aの表面に、金属粒子が焼結してなる、金属層62を形成する(ステップS34)。磁性基体10aおよび金属層62の内部に樹脂を含浸させる(ステップS36)。金属層62を酸処理することで、金属層62の表面から内部にかけて金属粒子の間に入り込んだ樹脂の一部を除去する(ステップS38)。金属層62を酸処理した後、金属層62上および一部の金属層62内部の金属粒子の間にめっき法を用いてめっき層64を形成する(ステップS40)。磁性基体10aにコイル導体30を巻回して形成する(ステップS42)。金属層62とめっき層64にコイル導体30の端部を接続することで金属層62とめっき層64とを有する外部電極60を形成する(ステップS44)。金属層62を酸処理した後に金属層62上にめっき法を用いてめっき層64を形成することで、金属層62の表面から内部にかけて金属粒子間に入り込んだ樹脂の一部が除去されることで形成された通路にめっき液が浸入し、めっき層64は金属層62の表面から離れた内部に位置する金属粒子の間に一部が入り込んで形成される。このため、金属層62とめっき層64の接合強度を向上させることができる。
【0064】
なお、上記第2の実施形態に示した巻線型のコイル部品においても、積層型のコイル部品の第1の実施形態と同様に、金属磁性粒子の表面に金属磁性粒子の材料成分の酸化物からなる酸化膜が形成され、かつ、複数の金属磁性粒子が酸化膜を介して互いに結合した磁性基体10aの代わりに、金属磁性粒子の周りに樹脂が設けられた磁性基体10aを形成してもよい。すなわち、
図8のフローチャートにおいて、ステップS30において、予め酸化膜を有する金属磁性粒子と樹脂の混合物を用いて成形体を形成し、ステップS32において、この成形体を熱処理して樹脂を硬化させることで、金属磁性粒子が樹脂で固められた磁性基体10aを形成してもよい。
【0065】
なお、上記第2の実施形態では、磁性基体10aがドラムコアである場合を例に示したが、Tコアである場合でもよく、他の形のコアとすることも出来る。
【0066】
以上、本願発明の実施形態について詳述したが、本願発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本願発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0067】
10、10a 磁性基体
11~15 磁性体層
16 上部カバー層
17 下部カバー層
20 本体部
30 コイル導体
32 周回部
34a、34b 引出部
60 外部電極
62 金属層
64 めっき層
70 窪み部
80 軸部
82 鍔部
84 導線
110 磁性基体
160 外部電極
162 金属層
164 めっき層
300、400 コイル部品
C11~C15 周回パターン
V1~V6、V11~V16 ビア