(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157022
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】雑草防除方法
(51)【国際特許分類】
A01N 33/18 20060101AFI20221006BHJP
A01N 25/00 20060101ALI20221006BHJP
A01P 13/00 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
A01N33/18 B
A01N25/00 102
A01P13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021061018
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】織田 知宏
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 隆雄
(72)【発明者】
【氏名】藤井 清一
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AB01
4H011BB04
4H011DA16
4H011DD04
(57)【要約】
【課題】
新規な雑草防除方法を提供する。
【解決手段】
雑草を防除する方法であって、トリフルラリンを含む液体農薬組成物の作物栽培土壌への施用時又は施用後に土壌混和することを特徴とする雑草防除方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
雑草を防除する方法であって、トリフルラリンを含む液体農薬組成物の作物栽培土壌への施用時又は施用後に土壌混和することを特徴とする雑草防除方法。
【請求項2】
前記作物が、ダイズである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記雑草が、帰化アサガオ類又はアレチウリである請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記帰化アサガオ類が、マルバアサガオ、アメリカアサガオ、マメアサガオ、ホシアサガオ又はマルバルコウである請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記液体農薬組成物が、トリフルラリン乳剤を水で希釈した組成物である、請求項1乃至請求項4のうち何れか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雑草防除方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明の雑草防除方法に使用されるトリフルラリン[2,6-ジニトロ-N,N-ジプロピル-4-(トリフルオロメチル)アニリン]は、除草活性成分として既に広く知られており、例えば特許文献1及び非特許文献1に記載されている。
【0003】
従来、トリフルラリンを含む除草剤として、トリフルラリンと他の除草活性成分が混合された除草剤が報告されている(特許文献2及び特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】英国特許出願公開第917253号明細書
【特許文献2】特開平01-261310号公報
【特許文献3】特開2009-120503号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Proceedings of the Southern Weed Conference, 1961, P.86-90
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
今日、農園芸分野において様々な雑草防除方法の開発が広く進められているが、従来知られている除草剤や除草方法が必ずしも有効ではない雑草もある。従って、従来の方法では防除が難しい雑草を含む広い草種の雑草に対して、より高い防除効果を示す雑草防除方法の開発が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題解決を目標に鋭意研究を重ねた結果、有効成分としてトリフルラリンを含む液体農薬組成物の作物栽培土壌への施用時又は施用後に土壌混和することで、防除が難しい雑草を含む広い草種の雑草に対して、より高い防除効果を示すことを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は下記〔1〕~〔5〕に関するものである。
〔1〕
雑草を防除する方法であって、トリフルラリンを含む液体農薬組成物の作物栽培土壌への施用時又は施用後に土壌混和することを特徴とする雑草防除方法。
〔2〕
上記作物が、ダイズである上記〔1〕に記載の方法。
〔3〕
上記雑草が、帰化アサガオ類又はアレチウリである上記〔1〕又は〔2〕に記載の方法。
〔4〕
上記帰化アサガオ類が、マルバアサガオ、アメリカアサガオ、マメアサガオ、ホシアサガオ又はマルバルコウである上記〔3〕に記載の方法。
〔5〕
上記液体農薬組成物が、トリフルラリン乳剤を水で希釈した組成物である、上記〔1〕
乃至〔4〕のうち何れか一に記載の方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の方法は、防除が難しい雑草を含む広い草種の雑草に対して、優れた防除効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の雑草防除方法を更に詳細に説明する。
【0011】
本発明におけるトリフルラリンとは、2,6-dinitro-N,N-dipropyl-4-(trifluoromethyl)benzenamine(CAS登録番号:1582-09-8)である。
【0012】
本発明における作物とは、農作物類、野菜類、果実類、果樹以外の樹木類、芝生類、油糧作物類、花卉類及び観葉植物などを包含する。
農作物類としては、例えば、トウモロコシ、イネ、コムギ、オオムギ、ライムギ、エンバク、ソルガム、ワタ、ダイズ(エダマメを含む)、ラッカセイ、ソバ、テンサイ、ナタネ、ヒマワリ、サトウキビ、タバコ等が挙げられる。
野菜類としては、例えば、ナス科野菜(ナス、トマト、ピーマン、ジャガイモ、トウガラシ等)、ウリ科野菜(キュウリ、カボチャ、スイカ、メロン、マクワウリ、ニガウリ、トウガン、シラウリ、ズッキーニ等)、アブラナ科野菜(ダイコン、カブ、セイヨウワサビ、コールラビ、ハクサイ、キャベツ、カラシナ、ブロッコリー、カリフラワー、アブラナ等)、キク科野菜(ゴボウ、シュンギク、アーティチョーク、レタス等)、ユリ科野菜(ネギ、ニラ、タマネギ、ニンニク、ラッキョウ、ワケギ、アスパラガス等)、セリ科野菜(ニンジン、パセリ、セロリ、アメリカボウフウ等)、アカザ科野菜(ホウレンソウ、フダンソウ等)、シソ科野菜(シソ、ミント、バジル等)、イチゴ、サツマイモ、ヤマノイモ、ナガイモ、サトイモ、コンニャク、イチョウイモ、ハス、ショウガ等が挙げられる。
果実類としては、例えば、仁果類(リンゴ、セイヨウナシ、ニホンナシ、カリン、マルメロ等)、核果類(モモ、スモモ、ネクタリン、ウメ、オウトウ、アンズ、プルーン等)、カンキツ類(ウンシュウミカン、オレンジ、レモン、ライム、グレープフルーツ等)、堅果類(クリ、クルミ、ハシバミ、アーモンド、ピスタチオ、カシューナッツ、マカダミアナッツ等)、液果類(ブルーベリー、クランベリー、ブラックベリー、ラズベリー等)、ブドウ、カキ、オリーブ、ビワ、バナナ、コーヒー、ナツメヤシ、ココヤシ、アブラヤシ等が挙げられる。
果樹以外の樹木類としては、例えば、チャ、クワ、花木類(ツツジ、ボタン、サツキ、ツバキ、アジサイ、サザンカ、シキミ、サクラ、ユリノキ、サルスベリ、キンモクセイ等)、街路樹(トネリコ、カバノキ、ハナミズキ、ユーカリ、イチョウ、ライラック、カエデ、カシ、ポプラ、ハナズオウ、フウ、プラタナス、ケヤキ、クロベ、モミノキ、ツガ、ネズ、マツ、トウヒ、イチイ、ニレ、トチノキ等)、サンゴジュ、イヌマキ、スギ、ヒノキ、クロトン、マサキ、カナメモチ等が挙げられる。
芝生類としては、例えば、シバ類(ノシバ、コウライシバ等)、バミューダグラス類(ギョウギシバ等)、ベントグラス類(コヌカグサ、ハイコヌカグサ、イトコヌカグサ等)、ブルーグラス類(ナガハグサ、オオスズメノカタビラ等)、フェスク類(オニウシノケグサ、イトウシノケグサ、ハイウシノケグサ等)、ライグラス類(ネズミムギ、ホソムギ等)、カモガヤ及びオオアワガエリ等が挙げられる。
油糧作物類としては、例えば、オイルパーム及びナンヨウアブラギリ等が挙げられる。
花卉類としては、例えば、バラ、カスミソウ、マリーゴールド、サルビア、バーベナ、アスター、リンドウ、パンジー、シクラメン、ラン、スズラン、ラベンダー、ストック、ハボタン、プリムラ、ポインセチア、グラジオラス、カトレア、デージー、シンビジューム、ベゴニア、チューリップ、ユリ、アヤメ、ペチュニア、キク、トルコギキョウ、ガー
ベラ、カーネーション等が挙げられる。
上記の作物の中でも、キャベツ、ハクサイ、タマネギ、ニンジン、ダイコン、スイカ、トマト、トウガラシ、ラッカセイ、ナタネ、チャ、クワ及びダイズが好ましく、特にダイズが好ましい。
【0013】
本発明における雑草とは、作物の栽培において望ましくない全ての植物を意味する。本発明の防除対象の雑草としては、例えば、オオクサキビ(fall panicum, Panicum dichotomiflorum)、シャッターケーン(shattercane, Sorgham bicolor)、ジョンソングラス(johnson grass , Sorghum halepense)、イヌビエ(barnyard grass, Echinochloa crus-galli var. crus-galli)、ヒメイヌビエ(cockspur grass, Echinochloa crus-galli var. praticola)、栽培ビエ(japanese barnyard millet , Echinochloa utilis)、メヒシバ(southern crabgrass, Digitaria ciliaris)、ススキメヒシバ(sourgrass, Digitaria insularis)、ムレメヒシバ(jamaican crabgrass, Digitaria horizontalis)、カラスムギ(wild oat, Avena fatua)、スズメノテッポウ(shortawn foxtail, Alopecurus aequalis)、ネズミムギ(italian ryegrass , Lolium multiflorum)、ボウムギ(rigid ryegrass, Lolium rigidum)、スズメノカタビラ(annual bluegrass, Poa annua)、オヒシバ(goosegrass, Eleusine indica)、エノコログサ(green foxtail, Setaria viridis)、アキノエノコログサ(giant foxtail, Setaria faberi)、シグナルグラス(signalgrass, Brachiaria decumbens)、並びにシンクリノイガ(southern sandbur, Cenchrus echinatus )等に代表されるイネ科(Poaceae)雑草、ハマスゲ(purple nutsedge, Cyperus rotundus)等に代表されるカヤツリグサ科(Cyperaceae)雑草、イヌホオズキ(black nightshade, Solanum nigrum)、並びにシロバナヨウシュチョウセンアサガオ(jimsonweed, Datura stramonium)等に代表されるナス科(Solanaceae)雑草、イチビ(velvetleaf, Abutilon theophrasti)、並びにアメリカキンゴジカ(prickly sida, Sida spinosa)等に代表されるアオイ科(Malvaceae)雑草、マルバアサガオ(tall morning-glory, Ipomoea purpurea)、アメリカアサガオ(ivyleaf morning-glory, Ipomoea hederacea)、マルバアメリカアサガオ(entireleaf morning glory, Ipomoea hederacea var.
integriuscula)、マメアサガオ(pitted morning-glory,Ipomoea lacunosa)、マルバルコウ(red morning glory, Ipomoea coccinea)、ホシアサガオ(three-lobed morning, gloryIpomoea triloba)、ネナシカズラ(Japanese dodder,Cuscuta japonica)、セイヨウヒルガオ(field bindweed, Convolvulus arvensis)、並びにコヒルガオ(japanese
bindweed, Calystegia hederacea)等に代表されるヒルガオ科(Convolvulaceae)雑草、イヌビユ(purple amaranth, Amaranthus lividus)、アオゲイトウ(redroot pigweed, Amaranthus retroflexus)、ホナガアオゲイトウ(smooth pigweed, Amaranthus hybridus)、並びにヒユモドキ(tall waterhemp, Amaranthus tuberculatus)等に代表されるヒユ科(Amaranthaceae)雑草、オナモミ(common cocklebur, Xanthium strumarium)、ブタクサ(common ragweed, Ambrosia artemisiifolia)、オオブタクサ(giant ragweed, Ambrosia trifida)、ヒメムカシヨモギ(horseweed, Conyza canadensis)、ヒマワリ(common sunflower, Helianthus annuus)、コシカギク(pineappleweed, Matricaria matricarioides)、ハキダメギク(hairy galinsoga, Galinsoga ciliata)、セイヨウトゲアザミ(canada thistle, Cirsium arvense)、ノボロギク(common groundsel, Senecio vulgaris)、並びにヒメジョオン(annual fleabane, Erigeron annuus)等に代表されるキク科(Asteraceae)雑草、イヌガラシ(variableleaf yellowcress, Rorippa indica)、ノハラガラシ(wild mustard , Sinapis arvensis)、並びにナズナ(shepherd's purse, Capsella bursa-pastoris)等に代表されるアブラナ科(Brassicaceae)雑草、イヌタデ(oriental lady's thumb, Persicaria longiseta)、並びにソバカズラ(wild buckwheat, Polygonum convolvulus)等に代表されるタデ科(Polygonaceae)雑草、スベリヒユ(common purslane, Portulaca oleracea)等に代表されるスベリヒユ科(Portulacaceae)雑草、シロザ(lambsquarters, Chenopodium album)、コアカザ(figleaved goosefoot, Chenopodium ficifolium)、ホウキギ(kochia, Kochia scoparia)、並びにロシ
アアザミ(russian thistle, Salsola tragus)等に代表されるアカザ科(Chenopodiaceae)雑草、コハコベ(common chickweed, Stellaria media)等に代表されるナデシコ科(Caryophyllaceae)雑草、オオイヌノフグリ(persian speedwell, Veronica persica)等に代表されるオオバコ科(Plantaginaceae)雑草、ツユクサ(asiatic dayflower, Commelina communis)、マルバツユクサ(benghal dayflower, Commelina benghalensis)並びにカロライナツユクサ(carolina dayflower, Commelina caroliniana)等に代表されるツユクサ科(Commelinaceae)雑草、ホトケノザ(henbit, Lamium amplexicaule)、並びにヒメオドリコソウ(purple deadnettle, Lamium purpureum)等に代表されるシソ科(Lamiaceae)雑草、ショウジョウソウ(wild poinsettia, Euphorbia heterophylla)、並びにオオニシキソウ(spotted spurge, Euphorbia maculata)等に代表されるトウダイグサ科(Euphorbiaceae)雑草、ヤエムグラ(false cleavers , Galium spurium)、並びにアカネ(asian madder , Rubia akane)等に代表されるアカネ科(Rubiaceae)雑草、サンシキスミレ(pansy, Viola tricolor )等に代表されるスミレ科(Violaceae)雑草、ヒナゲシ(field poppy, Papaver rhoeas)等に代表されるケシ科(Papaveraceae)雑草、クサネム(indian jointvetch, Aeschynomene indica)、並びにエビスグサ(sicklepod, Cassia obtusifolia)等に代表されるマメ科(Fabaceae)雑草、並びにカタバミ(creeping woodsorrel, Oxalis corniculata)等に代表されるカタバミ科(Oxalidaceae)雑草、アレチウリ(Burcucumber, Sicyos angulatus)等に代表されるウリ科(Cucurbitaceae)雑草等が挙げられ、好ましくは、ヒルガオ科雑草及びウリ科雑草であり、さらに好ましくは、帰化アサガオ類及びアレチウリであり、帰化アサガオ類において特に好ましくは、アメリカアサガオ、マルバアサガオ、マメアサガオ、ホシアサガオ及びマルバルコウが挙げられる。
【0014】
特に近年、帰化アサガオ類及びアレチウリの雑草化が深刻な問題となっている。帰化アサガオ類は、熱帯産の帰化雑草で、つる性、発生期間が長期に渡るなどの理由により、耕地に侵入すると防除が難しく甚大な被害をもたらすことが知られている。また、アレチウリは、北米原産の帰化植物であり、つる性、発生期間が長期に渡り、さらに帰化アサガオ類より生育スピードが速く、果実には鋭い刺が密生するなどの理由により、作物に壊滅的な被害をもたらし収穫不能となる場合もあることが知られている。両草種とも他の雑草よりも土中深くから発生し、長期間にわたり発生してくるため、従来知られている除草剤や除草方法は、必ずしも有効ではない。本発明の雑草防除方法は、帰化アサガオ類及びアレチウリに対しても有効な雑草防除方法である。
【0015】
本発明の雑草防除方法に使用されるトリフルラリンを含む農薬液体組成物とは、トリフルラリンを有効成分とする製剤を溶媒で希釈した組成物であり、例えばトリフルラリン乳剤を水で希釈した組成物等が挙げられる。
本発明の雑草防除方法に使用される、例えばトリフルラリン乳剤は、日本の畑作分野で広く使用されている除草剤である。使用方法としては、一般的には全面土壌散布する方法が採られており、当該方法は、雑草が発芽する前に除草剤を散布することで、土壌中で作用させ、雑草が発芽するときに有効成分が吸収されて、枯死させるものである。また、トリフルラリン乳剤は、製品名としてトレファノサイド乳剤との名称で広く知られている。
【0016】
本発明の雑草防除方法は、トリフルラリンを含む農薬液体組成物の作物栽培土壌への施用時又は施用後に土壌混和することを特徴とする。
土壌混和とは、薬剤を圃場の土壌に混ぜ込む農薬処理方法を表す。
本発明の雑草防除方法においては、圃場全体の土壌表面に薬剤を均一に散布し、土壌に混ぜ込む方法である全面土壌混和が好ましいが、対象雑草の発生が多い目的部分のみに混和する方法でも構わない。
土壌に混ぜ込む方法は、特に限定されないが、例えば圃場において全面土壌混和を行う場合は、通常耕耘機を用いる。耕耘機としては、一般的に乗用トラクタ、ハンドトラクタ
が知られており、どちらも使用できる。その他、土壌混和において必要であれば、例えば、プラウ(すき)、ハロー、ローラー、代かき機、鎮圧機、均平機、うね立機、みぞ切り機、抜根機、心土破砕機、みぞ掘り機、モールドレイナ(暗渠せん孔機)、穴掘機、バックホー等も使用できる。
【0017】
本発明の雑草防除方法において、トリフルラリンを含む農薬液体組成物の作物栽培土壌への施用直後から168時間後までに土壌混和することが好ましいが、施用時に土壌混和してもよい。
施用時に土壌混和するとは、トリフルラリンを含む農薬液体組成物を施用する過程に合わせて土壌混和を為すことを云い、例えば、全面土壌混和において、土壌全面にトリフルラリンを含む農薬液体組成物を施用する工程を終える前に土壌混和の工程も行う場合も包含する。その場合、全面の一部の面にトリフルラリンを含む農薬液体組成物を施用しつつ土壌混和を行う工程を繰り返し、結果全面に土壌混和を行うような場合と、半分の面に施用した後、土壌混和を行っている最中に残りの半分の面にトリフルラリンを含む農薬液体組成物を施用するような場合も、施用時に土壌混和するという意味に含まれる。
一方、施用後に土壌混和するとは、例えば、全面土壌混和において、まず土壌全面にトリフルラリンを含む農薬液体組成物を施用する工程を終えた後に土壌混和することを意味する。
トリフルラリンを含む農薬液体組成物の施用から土壌混和までの時間が短い方が好ましく、かつ圃場における実際の作業の観点から、トリフルラリンを含む農薬液体組成物の作物栽培土壌への施用直後から72時間後までに土壌混和することがより好ましい。
【0018】
本発明の雑草防除方法において、有効成分であるトリフルラリンの好ましい処理量は、通常は90g/10a以上が好ましく、150g/10a以下が好ましい。
本発明の雑草防除方法において、トリフルラリンを含む農薬液体組成物は、一般的には水を用いて、例えば、2倍乃至500倍に希釈して使用する。トリフルラリンを含む農薬液体組成物の施用量は、例えば有効成分量が44.5質量%の場合、防除効果を十分に得る観点から、200mL/10a以上が好ましく、経済的な観点から300mL/10a以下が好ましい。
【0019】
本発明の雑草防除方法において、トリフルラリンを含む農薬液体組成物の散布時に、必要に応じて他種の除草剤、各種殺虫剤、殺菌剤、植物生長調節剤又は共力剤等と混合施用しても良い。混合施用にあたっては、各剤を個別に施用しても、混合組成物として施用しても良い。各々個別に施用する場合は、全く同時に施用しても、時間的に近接していれば別々に処理しても良く、いずれの場合も本発明方法に含まれる。
【0020】
本発明の雑草防除方法において、トリフルラリンを含む農薬液体組成物と混和される土壌の深さは、防除効果を十分に得る観点から、土壌表面から0cm乃至30cm、好ましくは3cm乃至15cmが望ましい。
【0021】
本発明の雑草防除方法としては、例えば、帰化アサガオ類等の雑草が発生する前の圃場に、トリフルラリン乳剤(例えば、典型的な有効成分量としては40質量%乃至50質量%が挙げられる。)を水で希釈して土壌表面に均一に散布し、散布後、0乃至168時間までに、乳剤と混和される土壌の深さが3cm乃至15cmとなるように土壌混和する方法が挙げられる。
【0022】
また、本発明の雑草防除方法としては、例えば、アレチウリ等の雑草が発生する前の圃場に、トリフルラリン乳剤(例えば、典型的な有効成分量としては40質量%乃至50質量%が挙げられる。)を水で希釈して土壌表面に均一に散布し、散布後、0乃至168時間までに、乳剤と混和される土壌の深さが3cm乃至15cmとなるように土壌混和する
方法が挙げられる。
【0023】
本発明の雑草防除方法は、土壌散布する方法よりも薬剤の処理層がより深く作られるために他の雑草よりも土中深くから発生してくる帰化アサガオ類及びアレチウリを防除できる。
【実施例0024】
次に本発明の実施例を記載するが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されるものではない。
【0025】
試験例1:<土壌混和での帰化アサガオ類に対する効果>
〔生物試験方法及び結果〕
土壌を4寸鉢に入れ、トリフルラリンを有効成分とする市販の乳剤(商品名:トレファノサイド乳剤、有効成分量:44.5質量%、日産化学社製)を水で希釈し、乳剤の施用量が300mL/10aとなるよう散布した(散布水量100L/10a)。乳剤散布後、ポットの土壌全量(土壌表面 10cm 相当)をビニール袋へ移して混和した。混和後の土壌を4寸鉢に戻し、帰化アサガオ類の種子を深度3cmに播種した。試験にはマルバアサガオ、マルバルコウ、マメアサガオ、ホシアサガオ、アメリカアサガオを用いた。乳剤処理19日後に、雑草に対する除草効果を目視観察し、0(なし)~100(枯死)の指数で評価した。なお比較対象として、乳剤散布のみ行った場合も評価した。
【0026】
<表1>
乳剤 土壌 マルバ マメ アメリカ ホシ マルバ
施用量 混和 アサガオ アサガオ アサガオ アサガオ ルコウ
(mL/10a)
トリフルラリ 300 あり 96 93 94 78 90
ン44.5%乳剤 300 なし 37 53 50 33 30
【0027】
表1より土壌混和を行うことによって除草効果が大きくなったことから、土壌混和を実施することによりトリフルラリン乳剤の帰化アサガオ類に対する効果が向上し、防除に有効であることが確認された。
【0028】
試験例2:<土壌混和でのマルバアサガオに対する効果>
〔生物試験方法及び結果〕
乳剤処理前日に圃場へマルバアサガオ種子を1m2あたり30粒播き、その直後に耕起した圃場をマルバアサガオ発生圃場とした。
マルバアサガオ発生圃場にトリフルラリンを有効成分とする市販の乳剤(商品名:トレファノサイド乳剤、有効成分量:44.5質量%、日産化学社製)を水で希釈し、乳剤の施用量が200mL、250mL又は300mL/10aとなるよう散布した(散布水量100L/10a)。乳剤散布1時間後に、乳剤と混和される土壌の深さが10cmとなるよう耕起(土壌混和)し、その後ダイズの播種を行った。乳剤処理16日後に、雑草に対する除草効果を目視観察し、0(なし)~100(枯死)の指数で評価した。なお比較対象として、乳剤散布後に土壌混和を行わなかった場合も評価した。
【0029】
<表2>
乳剤 土壌 マルバ
施用量 混和 アサガオ
(mL/10a)
トリフルラリ 200 あり 71
ン44.5%乳剤 250 あり 83
300 あり 92
300 なし 53
【0030】
表2より土壌混和を行うことによって除草効果が大きくなったことから、土壌混和を実施することによりトリフルラリン乳剤のマルバアサガオに対する効果が向上し、防除に有効であることが確認された。
【0031】
試験例3:<土壌混和でのアレチウリに対する効果>
〔生物試験方法及び結果〕
アレチウリ発生圃場にトリフルラリンを有効成分とする市販の乳剤(商品名:トレファノサイド乳剤、有効成分量:44.5質量%、日産化学社製)を水で希釈し、乳剤の施用量が200mL、250mL又は300mL/10aとなるよう散布した(散布水量100L/10a)。乳剤散布1時間後に、乳剤と混和される土壌の深さが10cmとなるよう耕起(土壌混和)し、その後ダイズの播種を行った。乳剤散布から39日後に、試験区内のアレチウリの乾物重を測定し、無処理区内のアレチウリの乾物重に対する試験区内のアレチウリの乾物量の重量比(乾物量重量比)により雑草に対する除草効果を評価した。なお比較対象として、乳剤散布後に土壌混和を行わなかった場合も評価した。
【0032】
<表3>
乳剤 土壌 乾物量重量比
施用量 混和 (試験区/無処理区)
(mL/10a)
トリフルラリ 200 あり 52
ン44.5%乳剤 250 あり 38
300 あり 33
300 なし 93
【0033】
表3より土壌混和を行うことで試験区内のアレチウリの乾物量重量比が小さくなっていることから、土壌混和を実施することによりトリフルラリン乳剤のアレチウリに対する効果が向上し、防除に有効であることが確認された。