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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157037
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】軸受装置および電動垂直離着陸機
(51)【国際特許分類】
   F16C 41/00 20060101AFI20221006BHJP
   F16C 33/78 20060101ALI20221006BHJP
   F16C 19/16 20060101ALI20221006BHJP
   F16C 19/36 20060101ALI20221006BHJP
   F16C 19/52 20060101ALI20221006BHJP
   G01K 1/14 20210101ALI20221006BHJP
   B64C 27/08 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
F16C41/00
F16C33/78 C
F16C19/16
F16C19/36
F16C19/52
F16C33/78 Z
G01K1/14 L
B64C27/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021061039
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(72)【発明者】
【氏名】後藤 知美
【テーマコード(参考)】
2F056
3J216
3J217
3J701
【Fターム(参考)】
2F056CL11
3J216AA02
3J216AA03
3J216AA14
3J216AB03
3J216AB15
3J216AB33
3J216BA05
3J216BA23
3J216BA24
3J216CA02
3J216CB03
3J216CB13
3J216EA03
3J216EA05
3J217JA02
3J217JA13
3J217JA16
3J217JA24
3J217JB17
3J217JB25
3J217JB37
3J217JB64
3J217JB83
3J217JB85
3J217JB87
3J701AA03
3J701AA16
3J701AA32
3J701AA42
3J701AA54
3J701AA62
3J701BA73
3J701BA77
3J701FA06
3J701FA22
3J701FA23
3J701FA26
3J701FA44
3J701FA48
3J701GA03
3J701GA57
(57)【要約】
【課題】メンテナンス時に作業性がよく、静止側軌道輪にクリープが発生しても、センサ出力用のセンサケーブルに異常が発生し難い軸受装置および電動垂直離着陸機を提供する。
【解決手段】軸受装置6は、転がり軸受7と、転がり軸受7の状態を監視するセンサを含むセンサホルダ8とを備える。転がり軸受7における静止側軌道輪である内輪9が車軸18に嵌合固定され、車軸18の軸方向一端にフランジ16が設けられる。センサホルダ8は、フランジ16に臨む内輪9の外周面に固定され内輪9と同心状に設けられる円環部13と、円環部13の軸方向外側面に設けられるセンサ保持部14と、円環部13の軸方向外側面でセンサ保持部14とは異なる円周方向位置に設けられる突起部15とを有する。センサ保持部14および突起部15は、それぞれフランジ16に設けられた孔16a,16cに挿入可能とされた。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
転がり軸受と、この転がり軸受の状態を監視するセンサを含むセンサホルダとを備え、前記転がり軸受における静止側軌道輪である内輪が軸部に嵌合固定され、前記軸部の軸方向一端にフランジが設けられる軸受装置であって、
前記センサホルダは、前記フランジに臨む前記内輪の端面または外周面または前記フランジに固定され前記内輪と同心状に設けられる円環部と、この円環部の軸方向外側面に設けられるセンサ保持部と、前記円環部の軸方向外側面で前記センサ保持部とは異なる円周方向位置に設けられる突起部とを有し、
前記センサ保持部および前記突起部は、それぞれ前記フランジに設けられた孔に挿入可能とされた軸受装置。
【請求項2】
請求項1に記載の軸受装置において、前記転がり軸受は、それぞれ外周に単列の軌道面を有し軸方向に並んで配置される複数の前記内輪と、これら内輪の各軌道面に対向する複列の軌道面を内周に有する回転側の軌道輪である前記外輪と、これら内外輪の軌道面間に介在する複列の転動体とを有する軸受装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の軸受装置において、前記センサホルダは、前記転がり軸受とは分離した状態で前記フランジに固定される軸受装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の軸受装置において、前記センサ保持部および前記突起部は、前記転がり軸受の軸心に対し平行な軸心を有する略円筒形である軸受装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の軸受装置において、前記センサは、前記転がり軸受の温度を検出する温度センサまたは前記転がり軸受の回転加速度を検出する加速度センサを有し、前記温度センサで検出される温度および前記加速度センサで検出される回転加速度のいずれか一方または両方に基づいて、前記転がり軸受の異常を判断する異常判断部を備えた軸受装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の軸受装置において、前記軸部は車両の車軸であり、前記転がり軸受は前記車両の車輪を回転支持する軸受装置。
【請求項7】
請求項6に記載の軸受装置において、前記車両は大型自動車である軸受装置。
【請求項8】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の軸受装置を備えた電動垂直離着陸機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車輪または回転翼等を回転支持する軸受装置および電動垂直離着陸機に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用車、商用車等の車両の車軸を支持する軸受装置には、この軸受装置の状態を監視するセンサを搭載して、有線で前記軸受装置の外部に出力するものがある。
特許文献1に示す温度センサ付軸受は、固定側の軌道輪に取り付けられるシール部材に温度センサを固定し、この温度センサから配線で外部に引き出される。
【0003】
特許文献2に示す車輪用軸受装置は、2個の内輪が軸方向に付き合わせられる端面間に、軸力、温度、回転速度等のセンサが配置されている。前記2個の内輪の内周に、これら内輪と同心のスリーブを嵌合させ、このスリーブと前記内輪の間に前記センサの配線を引き出す配線引き出し路が設けられる。
特許文献1,2のいずれの構造も、静止側軌道輪から配線が引き出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-130263号公報
【特許文献2】特開2010-121639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、静止側軌道輪がクリープすると、センサケーブルである配線に負荷がかかり異常が発生する可能性が想定される。この場合、軸受装置の状態監視ができなくなることが懸念される。例えば、軸受装置に電源として電池を搭載し、センサ信号を無線通信にすればセンサケーブルが無くなるのでセンサケーブルの異常の恐れは低減されるが、軸受装置の周辺に導電性(金属)材料があると、無線の電波を伝播させることが難しい。
【0006】
センサ信号をセンサケーブルで引き出す場合には、センサケーブルに異常が発生しないよう、静止側軌道輪のクリープを防止する必要がある。例えば、車軸または静止側軌道輪にキー材、ピン等の回り止め手段を設けることが考えられるが、車両のメンテナンス時に、車軸と静止側軌道輪に位相合わせが必要となる。また、センサケーブルに異常が発生しないように作業するため、作業性が低下する。
【0007】
本発明の目的は、メンテナンス時に作業性がよく、静止側軌道輪にクリープが発生しても、センサ出力用のセンサケーブルに異常が発生し難い軸受装置および電動垂直離着陸機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の軸受装置は、転がり軸受と、この転がり軸受の状態を監視するセンサを含むセンサホルダとを備え、前記転がり軸受における静止側軌道輪である内輪が軸部に嵌合固定され、前記軸部の軸方向一端にフランジが設けられる軸受装置であって、
前記センサホルダは、前記フランジに臨む前記内輪の端面または外周面または前記フランジに固定され前記内輪と同心状に設けられる円環部と、この円環部の軸方向外側面に設けられるセンサ保持部と、前記円環部の軸方向外側面で前記センサ保持部とは異なる円周方向位置に設けられる突起部とを有し、
前記センサ保持部および前記突起部は、それぞれ前記フランジに設けられた孔に挿入可能とされている。
前記「転がり軸受の状態を監視する」とは、転がり軸受の例えば、温度、回転速度、回転加速度、振動等の各種パラメータを監視すること等である。前記回転速度は、単位時間当たりの回転数と同義である。
【0009】
この構成によると、センサから延びる配線であるセンサケーブルは、センサホルダのセンサ保持部から外部に引き出される。センサ保持部および突起部は、軸部のフランジ部の孔にそれぞれ挿入可能とされたため、転がり軸受の運転時に、軸部に対して静止側軌道輪である内輪が回転するいわゆるクリープによるセンサホルダの回転を抑制し、センサケーブルに不所望な負荷がかからないようにすることで、センサケーブルの異常発生を防止する。この軸受装置は、センサ保持部および突起部を、それぞれフランジに設けられた孔に挿入または離脱することで、容易にメンテナンスを行うことができ作業性の向上を図れる。
【0010】
前記転がり軸受は、それぞれ外周に単列の軌道面を有し軸方向に並んで配置される複数の前記内輪と、これら内輪の各軌道面に対向する複列の軌道面を内周に有する回転側の軌道輪である前記外輪と、これら内外輪の軌道面間に介在する複列の転動体とを有してもよい。この場合、この軸受装置を、例えば、外輪回転方式の乗用車等における従動輪用に適用することができる。
【0011】
前記センサホルダは、前記転がり軸受とは分離した状態で前記フランジに固定されてもよい。この場合、メンテナンス時において、センサケーブルの負荷等に留意することなく、軸部に対する転がり軸受の離脱、嵌合を容易に行える。また、センサホルダは転がり軸受とは分離した状態でフランジに固定されているため、転がり軸受の運転時に静止側軌道輪に仮にクリープが発生しても、センサホルダは静止側軌道輪に追従することなく所期の位置に保持される。このようにセンサケーブルに異常が発生し難い構造とすることができる。
【0012】
前記センサ保持部および前記突起部は、前記転がり軸受の軸心に対し平行な軸心を有する略円筒形であってもよい。前記「略円筒形」は、円周方向の一部に切欠き等が設けられる略円筒形も含む。円筒形のセンサ保持部および突起部をフランジの各孔に嵌合固定した場合には、静止側軌道輪がクリープすることをよるセンサホルダの回転を確実に防止する。またフランジの各孔に対し、円筒形のセンサ保持部および突起部を軸方向に容易に離脱および挿入し得る。
【0013】
前記センサは、前記転がり軸受の温度を検出する温度センサまたは前記転がり軸受の回転加速度を検出する加速度センサを有し、前記温度センサで検出される温度および前記加速度センサで検出される回転加速度のいずれか一方または両方に基づいて、前記転がり軸受の異常を判断する異常判断部を備えてもよい。
【0014】
この場合、異常判断部は、温度センサで検出される温度が例えば閾値以上となったとき、転がり軸受に異常が発生していると判断してもよい。前記「閾値」は設計等によって任意に定める値であって、例えば、試験およびシミュレーションのいずれか一方または両方等により適切な値を求めて定められる。
異常判断部は、例えば、加速度センサで検出される回転加速度と、この回転加速度に追従する温度との関係に基づいて、転がり軸受の異常を判断してもよい。異常判断部は、前記回転加速度と温度センサで検出される温度との関係を常時にまたは定められた時間監視し、両者の関係に齟齬が生じた場合、転がり軸受の異常と判断してもよい。このように温度センサと加速度センサを併用すれば、温度センサのみを採用する場合と比べて、より正確な異常検知が可能となる。
【0015】
前記軸部は車両の車軸であり、前記転がり軸受は前記車両の車輪を回転支持してもよい。
前記車両は大型自動車であってもよい。
前記「大型自動車」とは、車両の総重量11トン以上、最大積載量6.5トン以上、または乗車定員が30人以上の自動車である。
この場合、大型自動車の車輪を回転支持する転がり軸受の状態を監視することができる。
【0016】
本発明の電動垂直離着陸機は、この発明の上記いずれかの構成の軸受装置を備えている。そのため、本発明の軸受装置につき前述した各効果が得られる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の軸受装置および電動垂直離着陸機によれば、センサ保持部および突起部は、軸部のフランジ部の孔にそれぞれ挿入可能とされたため、メンテナンス時に作業性がよく、静止側軌道輪にクリープが発生しても、センサ出力用のセンサケーブルに異常が発生し難い。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1の実施形態に係る軸受装置の縦断面図である。
図2】同軸受装置のセンサホルダの斜視図である。
図3図1のIII部の部分拡大図である。
図4】本発明の第2の実施形態に係る軸受装置の縦断面図である。
図5図4のV部の部分拡大図である。
図6図4のVI部の部分拡大図である。
図7】同軸受装置の側面図である。
図8】本発明の第3の実施形態に係る軸受装置を車両の車軸に固定した状態を示す縦断面図である。
図9】同軸受装置の側面図である。
図10】同軸受装置のセンサホルダの斜視図である。
図11】本発明の第4の実施形態に係る軸受装置を車両の車軸に固定した状態を示す縦断面図である。
図12】同軸受装置の側面図である。
図13】同軸受装置のセンサホルダの斜視図である。
図14】本発明の軸受装置を備えた電動垂直離着陸機の斜視図である。
図15】同電動垂直離着陸機の軸受装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1の実施形態]
本発明の実施形態に係る軸受装置を図1ないし図3と共に説明する。
図1に示すように、軸受装置6は、転がり軸受7と、この転がり軸受7の状態を監視するセンサを含むセンサホルダ8とを備える。転がり軸受7は、第2世代に分類される複列の円すいころ軸受であり、外輪回転タイプでかつ従動輪支持用のものである。複列の円すいころ軸受はこの例では背面組み合わせで配置される。
【0020】
この例の軸受装置6は自動車用の軸受装置である。この軸受装置6が適用される自動車として特に大型自動車が挙げられるが、大型自動車以外の自動車に適用してもよい。この明細書において、軸受装置6が自動車である車両に取付けられた状態で車両の車幅方向の外側寄りとなる側をアウトボード側A1と呼び、車両の車幅方向の中央寄りとなる側をインボード側A2と呼ぶ。
【0021】
<転がり軸受>
転がり軸受7は、車軸18に固定されて車両の車輪Wを回転支持する。転がり軸受7は、静止側軌道輪である複数(この例では2個)の内輪9と、回転側の軌道輪である外輪10と、これら内外輪9,10の軌道面9a,10a間に介在する複列(この例では2列)の転動体11と、これら転動体11を保持する図示外の保持器と、内外輪9,10間の環状空間の両端を密封する一対のシール12,12とを有する。前記転動体11は円すいころである。静止側軌道輪は「固定輪」とも称される。
【0022】
複数の内輪9は、それぞれ外周に単列の軌道面9aを有し軸方向に並んで配置される。各内輪9は両鍔付きである。外輪10は、これら内輪9の各軌道面9aに対向する複列の軌道面10aを内周に有する。
【0023】
<センサホルダについて>
図1および図2に示すように、センサホルダ8は、円環部13と、センサ保持部14と、突起部15とを有する。センサホルダ8は、例えば、機械加工またはプレス加工等により一体に製作されるが、円環部13に、センサ保持部14および突起部15のいずれか一方または両方を溶接等で接合してもよい。前記「一体に製作される」とは、円環部13、センサ保持部14および突起部15が、複数の要素を結合したものではなく単一の材料から機械加工またはプレス加工等により単独の物の一部または全体として成形されることを意味する。
【0024】
<円環部>
図1のフランジ16(後述する)に臨む内輪9の外周面に、この内輪9のインボード側端に繋がる環状凹部17が設けられている。この環状凹部17に、円環部13の内周面が圧入もしくは接着等の方法で固定される。これにより円環部13は内輪9と同心状に設けられる。また図3に示すように、縦断面が立板形状となる円環部13のアウトボード側端を環状凹部17の段差部17aに当接させることで、センサホルダ8が内輪9に対して軸方向に位置決めされる。
【0025】
前記内輪9の外周面におけるインボード側端には、例えば、図示外の対向する平行な二面が設けられ、図2に示すように、円環部13の内周面に、内輪9(図1)の前記二面に嵌まり合う二面13aが設けられている。これにより、内輪9(図1)に対するセンサホルダ8の円周方向位置が規制され、センサホルダ8の回転を抑制する。
【0026】
<センサ保持部>
センサ保持部14は、円環部13の軸方向外側面に設けられる。図1に示すように、センサ保持部14は、転がり軸受7の軸心C1に対し平行な軸心を有する円筒形(図2)である。
図1に示すように、センサ保持部14は、車軸18のフランジ16に設けられた孔16aに挿入可能とされている。この例では、フランジ16に軸方向に貫通する孔16aが設けられ、この孔16aのアウトボード側部分にセンサ保持部14の外周面が嵌合固定される。孔16aのインボード側部分には、この孔16aに同心状の座繰り孔16bが形成されている。車軸18の軸方向一端つまりインボード側端にフランジ16が設けられている。
【0027】
図3に示すように、センサ保持部14内に、軸方向に延びるケーブル収容孔14aが形成され、円環部13には、前記ケーブル収容孔14aに連通し且つ円環部13のアウトボード側端に開口する座繰り孔13bが形成されている。
【0028】
センサとして、転がり軸受7の温度を検出する温度センサS1が設けられている。この温度センサS1は基板19に実装され、基板19が座繰り孔13bの底面に配置されると共に、基板19から延びるセンサケーブル20がケーブル収容孔14aに収容されて外部に引き出されている。座繰り孔13bに、温度センサS1および基板19が収容された状態で樹脂材(図示せず)が充填されることで、センサ保持部14に温度センサS1、基板19およびセンサケーブル20が固定される。これにより、内輪9のインボード側端に対し、温度センサS1が所定の軸方向隙間を介して対向するように配置される。
【0029】
<突起部>
図1および図2に示すように、突起部15は、センサホルダ8の回り止めとなる手段であり、円環部13の軸方向外側面でセンサ保持部14とは異なる円周方向位置に設けられている。この例では、突起部15は、センサ保持部14に対し、180度対称位置に設けられている。突起部15は、転がり軸受7の軸心C1に対し平行な軸心を有する円筒形である。
図1に示すように、突起部15は、車軸18のフランジ16に設けられた孔16cに挿入可能とされている。この例では、フランジ16に軸方向に貫通する孔16cが設けられ、この孔16cのアウトボード側部分に突起部15の外周面が嵌合固定される。孔16cのインボード側部分には、この孔16cに同心状の座繰り孔16dが形成されている。
【0030】
<軸受装置を車軸に固定した例>
車軸18の軸方向中間部における外周面に各内輪9がそれぞれ嵌合固定され、車軸18の軸方向一端に設けられるフランジ16が車両のナックル等の足回りフレーム部品21に固定される。車軸18の軸方向他端つまりアウトボード側端に雄ねじ部18aが設けられている。アウトボード側の内輪9の端面にワッシャー22を介在させ前記雄ねじ部18aにナット23が螺合される。
【0031】
<制御系について>
図1に示すように、軸受装置6は異常判断部24を備えていてもよい。温度センサS1から延び外部に引き出されたセンサケーブル20に、転がり軸受7の異常を判断する異常判断部24が接続される。異常判断部24は、温度センサS1で検出される温度が例えば閾値以上となったとき、転がり軸受7に異常が発生していると判断する。異常判断部24は、例えば、マイクロコントローラ等で構成される。マイクロコントローラは、温度センサS1よりも耐熱温度が低いため、基板19(図3)に実装せず、基板19(図3)から離れた場所に設けられる。
【0032】
異常判断部24は、例えば、車両制御ユニットであるECU(またはVCU)の一部の機能としてもよい。異常判断部24は、転がり軸受7に異常が発生していると判断すると、例えば、車両のコンソールパネル等に設けられた図示外の表示装置に、転がり軸受7の異常を知らせる表示を出力するよう指令する。なお前記表示装置と共にまたは前記表示装置に代えて、転がり軸受7の異常を知らせる警告音等を出力してもよい。
【0033】
<作用効果>
以上説明した軸受装置6によれば、センサ保持部14および突起部15は、車軸18のフランジ部16の孔16a,16cにそれぞれ挿入可能とされたため、転がり軸受7の運転時に、車軸18に対して静止側軌道輪である内輪9が回転するいわゆるクリープによるセンサホルダ8の回転を抑制し、センサケーブル20に不所望な負荷がかからないようにすることで、センサケーブル20の異常発生を防止する。この軸受装置6は、センサ保持部14および突起部15を、それぞれフランジ16に設けられた孔16a,16cに挿入または離脱することで、容易にメンテナンスを行うことができ作業性の向上を図れる。また温度センサS1を内輪9に近づけて配置できるので、より正確な測定値が得られる。
【0034】
センサ保持部14および突起部15は、転がり軸受7の軸心に対し平行な軸心を有する円筒形である。円筒形のセンサ保持部14および突起部15をフランジ16の各孔16a,16cに嵌合固定した場合には、静止側軌道輪である内輪9がクリープすることをよるセンサホルダ8の回転をより確実に防止する。またフランジ16の各孔16a,16cに対し、円筒形のセンサ保持部14および突起部15を軸方向に容易に離脱および挿入し得る。
【0035】
<他の実施形態について>
以下の説明においては、各実施形態で先行して説明している事項に対応している部分には同一の参照符号を付し、重複する説明を略する。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、特に記載のない限り先行して説明している形態と同様とする。同一の構成から同一の作用効果を奏する。各実施形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施形態同士を部分的に組合せることも可能である。
【0036】
[第2の実施形態]
第2の実施形態に係る軸受装置を図4ないし図7と共に説明する。
図4に示すように、インボード側A2の内輪9は、アウトボード側A1の内輪9よりも外周面が軸方向に幅広に形成されている。前記インボード側A2の内輪9の外周面に、センサホルダ8Aの円環部13Aが圧入等により嵌合固定されている。これにより円環部13Aは内輪9と同心状に設けられる。円環部13Aは、内輪9の外周面に固定される円筒部25と、この円筒部25のインボード側端から径方向外方に延びる立板部26とで断面L字形状に形成されている。
【0037】
図5に示すように、立板部26の軸方向外側面に、円筒形のセンサ保持部14Aが設けられている。立板部26の軸方向内側面における、センサ保持部14Aが設けられる円周方向位置には、円筒状の保持体27が設けられる。保持体27は、センサ保持部14Aと同心となるように、立板部26および円筒部25に接着剤等で固定されている。保持体27の円筒内部には、基板19Aに実装された温度センサS1が設けられている。
図4図7のIV-IV矢視断面図である。同図4に示すように、基板19Aから延びるセンサケーブル20Aは、図7に示すセンサ保持部14A内からフランジ16の孔16aを通して外部に引き出される。図4に示すように、保持体27(図5)内およびセンサ保持部14A内には、温度センサS1(図5)およびセンサケーブル20Aを固定するための樹脂材(図示せず)が充填される。
【0038】
立板部26の軸方向外側面のうち、センサ保持部14Aとは異なる円周方向位置に、円筒形の第1の突起部14A,15Aが設けられている。フランジ16の孔16a,16cのアウトボード側部分に、第1の突起部14A,15Aの外周面が嵌合固定される。これにより、内輪9のクリープによるセンサホルダ8Aの回転を防止する。
【0039】
図4および図6に示すように、円筒部25の内周面における円周方向の一部に、径方向内方に突出する第2の突起部28が設けられている。第2の突起部28は、円筒状に形成され、円環部13Aの円筒部25の内周面に例えば溶接等により接合される。なお、第2の突起部28を円筒部25に一体に形成してもよい。
【0040】
インボード側の内輪9の外周面には、第2の突起部28を嵌め込むための凹み部9bが設けられている。凹み部9bは、軸方向に沿う溝であり、内輪9の外周面における所定の円周方向位置に形成されている。前記凹み部9bに第2の突起部28が嵌め込まれることで、内輪9に対するセンサホルダ8Aの回転を防止する。センサホルダ8Aは、比較的薄い素材で構成されるので、プレス加工等、量産に適した低コストの加工方法を採用し易い。その他前述の実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0041】
[第3の実施形態]
第3の実施形態に係る軸受装置を図8ないし図10と共に説明する。
図8図9のVIII-VIII矢視断面図である。図8に示すように、センサホルダ8Bは、転がり軸受7とは分離した状態でフランジ16に固定される。具体的には、インボード側A2の内輪9の端面と、車軸18のフランジ16の間に、センサホルダ8Bの円環部13Bが配置されている。フランジ16の孔16aのアウトボード側部分にセンサ保持部14Bの外周面が嵌合固定される。
【0042】
図10に示すように、センサ保持部14Bは円筒形であり、このセンサ保持部14B内に、図8に示す温度センサS1、加速度センサS2、およびこれらのセンサケーブル20Bが収容された状態で図示外の樹脂材が充填されている。図8に示すように、センサケーブル20Bはフランジ16の孔16aのインボード側から外部に引き出されている。
センサホルダ8Bの突起部15Bは、センサホルダ8Bの回り止めとなる手段であり、車軸18のフランジ16に設けられた孔16cに嵌合固定される。
【0043】
異常判断部24は、例えば、加速度センサS2で検出される回転加速度と、この回転加速度に追従する温度との関係に基づいて、転がり軸受7の異常を判断してもよい。異常判断部24は、前記回転加速度と温度センサS1で検出される温度との関係を常時にまたは定められた時間監視し、例えば、回転加速度が上昇していないにもかかわらず温度が所定以上に上昇する等両者の関係に齟齬が生じた場合、転がり軸受7の異常と判断してもよい。このように温度センサS1と加速度センサS2を併用すれば、温度センサのみを採用する場合と比べて、より正確な異常検知が可能となる。加速度センサS2に代えて、回転センサで検出される回転速度を時間微分することで回転加速度を演算してもよい。
【0044】
[第4の実施形態]
図11は、図12のXI-XI矢視断面図である。図11ないし図13に示すように、センサホルダ8Cの回り止めとなる手段となる突起部15Cを複数(この例では2つ)設けてもよい。図13に示すように、前記複数の突起部15Cは例えば円周等配に設けられている。図11に示すように、各突起部15Cは、車軸18のフランジ16に円周等配でそれぞれ設けられた孔16cに嵌合固定される。この構成によれば、センサホルダ8Cの回転をより確実に防止する。
【0045】
<電動垂直離着陸機への適用例:図14図15
軸受装置を電動垂直離着陸機へ適用してもよい。
近年では、自動車に代わる移動手段として飛行可能な自動車、いわゆる空飛ぶクルマが注目されている。空飛ぶクルマは、地域内移動、地域間移動、観光・レジャー、救急医療、災害救助など、様々な場面での活用が期待されている。
【0046】
空飛ぶクルマとしては、垂直離着陸機(VTOL;Vertical Take-Off and Landing aircraft)が注目されている。垂直離着陸機は、空と離発着場を垂直に昇降できることから、滑走路が必要とならず、利便性に優れる。特に、近年ではCOの削減に向けた社会的要請などからバッテリとモータで飛行するタイプの電動垂直離着陸機(eVTOL)が開発の主流となっている。
【0047】
図14に示すように、電動垂直離着陸機1は、機体中央に位置する本体部2と、前後左右に配置された4つの駆動部3を有するマルチコプターである。駆動部3は、電動垂直離着陸機1の揚力および推進力を発生させる装置であり、駆動部3の駆動によって電動垂直離着陸機1が飛行する。電動垂直離着陸機1において駆動部3は複数あればよく、4つに限定されない。
【0048】
本体部2は乗員(例えば1~2名程度)が搭乗可能な居住空間を有している。この居住空間には、進行方向および高度などを決めるための操作系、高度、速度、飛行位置などを示す計器類などが設けられている。本体部2からは4本のアーム2aがそれぞれ放射状に延び、各アーム2aの先端に駆動部3が設けられている。図14において、アーム2aには、回転翼4を保護するため、回転翼4の回転周囲を覆う円環部が一体に設けられている。また、本体部2の下部には、着陸時に機体を支えるスキッド2bが設けられている。
【0049】
図15に示すように、駆動部3は、回転翼4と、この回転翼4を回転支持する軸受装置6と、軸部18Aと、モータ5とを備える。各アーム2a(図14)の先端に上下方向に延びる軸部18Aが固定され、この軸部18Aの外周面に、軸受装置6の転がり軸受7が嵌合固定されている。
【0050】
<転がり軸受>
転がり軸受7は、例えばアンギュラ玉軸受であり、内輪が静止側軌道輪の外輪回転タイプである。この例では、例えば、2個のアンギュラ玉軸受が内外輪間座29,30を介して背面組み合わせで配置される。軸受装置6の外周面には、一対の回転翼4が軸方向に所定間隔を隔てて設けられている。各回転翼4は、径方向外側へ延びる2枚の羽根をそれぞれ有する。
【0051】
<モータ>
モータ5は、回転翼4を回転駆動させる駆動源であり、例えば、内輪間座29の外周面に嵌合されたステータ5aと、このステータ5aの半径方向外方に位置し外輪間座30の内周面に固定されたロータ5bとを有するアウターロータ型でダイレクトドライブ形式である。但し、モータ5は、図示外のチェーン、スプロケット等の回転伝達機構を介して回転翼4を回転駆動させてもよい。
【0052】
<制御系について>
本体部2には、複数のモータ5等を制御する制御装置31と、各モータ5および制御装置31に電力を供給するバッテリ32とが設けられている。制御装置31は、バッテリ32の直流電力を交流電圧に変換するインバータと、操作系に応じて生成されるトルク指令により前記インバータの出力をPWM制御等で制御する制御部とを有する。
【0053】
この例では、センサとして、転がり軸受7の回転速度を検出する回転センサS3、および温度センサS1等がセンサホルダ8Bに設けられている。前記制御部は、現姿勢と目標姿勢の差から揚力を調整すべきモータ5に回転数変更の指令を出力することで、モータ5および回転翼4の回転数が変更される。モータ5の回転数の調整は、複数のモータ5に対して同時に実施され、それによって機体の姿勢が決まる。
【0054】
回転センサS3は、各モータ5に内蔵された図示外のレゾルバまたは磁気エンコーダ等で検出されるモータ角度を時間微分することで回転速度を演算する回転速度演算手段であってもよい。
前記転がり軸受7として、アンギュラ玉軸受に代えて深溝玉軸受を適用することも可能である。
【0055】
軸受装置の転がり軸受は、例えば、鉄道車両または二輪車等の車輪を回転支持するものであってもよい。
軸受装置の転がり軸受として、円すいころ軸受、アンギュラ玉軸受を正面組み合わせで用いることも可能である。
軸受装置を、車両、電動垂直離着陸機以外の用途に適用することも可能である。
センサホルダを3Dプリンターで製作してもよい。
センサホルダに設けるセンサとしては、前述の温度センサ、加速度センサ、回転センサに限定されるものではなく、振動センサ等の他の種類のセンサを適用可能であり、センサの個数も必要に応じて決定される。
【0056】
<参考提案例>
軸受装置において、突起部が設けられていないセンサホルダを適用することも考えられる。但し、センサ保持部は、フランジに設けられた孔に嵌合可能とされる。この場合にも前述の各実施形態と同様の作用効果を奏する。
この参考提案例に係る軸受装置は、以下のように記載される。
転がり軸受と、この転がり軸受の状態を監視するセンサを含むセンサホルダとを備え、前記転がり軸受における静止側軌道輪である内輪が軸部に嵌合固定され、前記軸部の軸方向一端にフランジが設けられる軸受装置であって、
前記センサホルダは、前記フランジに臨む前記内輪の端面または外周面または前記フランジに固定され前記内輪と同心状に設けられる円環部と、この円環部の軸方向外側面に設けられるセンサ保持部とを有し、
前記センサ保持部は、前記フランジに設けられた孔に嵌合可能とされた軸受装置。
【0057】
以上、実施形態に基づいて本発明を実施するための形態を説明したが、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0058】
1…電動垂直離着陸機、6…軸受装置、7…転がり軸受、8,8A,8B,8C…センサホルダ、9…内輪、9a…軌道面、10…外輪、10a…軌道面、11…転動体、13,13A,13B,13C…円環部、14,14A,14B,14C…センサ保持部、15,15A,15B,15C…突起部、16…フランジ、18…車軸(軸部)、18A…軸部、24…異常判断部、S1…温度センサ、S2…加速度センサ、W…車輪
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15