(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157062
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】検査装置及び検査方法
(51)【国際特許分類】
G01V 3/10 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
G01V3/10 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021061080
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000104652
【氏名又は名称】キヤノン電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松岡 貴弘
【テーマコード(参考)】
2G105
【Fターム(参考)】
2G105AA01
2G105BB05
2G105DD02
2G105EE02
2G105GG01
2G105HH05
(57)【要約】
【課題】検出漏れのリスクを低減すること。
【解決手段】相対的に第1の方向に移動する被検査物に含まれる磁性異物の残留磁気による磁界を検出する少なくとも一対の磁気検出器を備える検査装置が提供される。一対の磁気検出器の一方の磁気検出器の一平面である第1平面上には複数の線状の感磁体としての磁性体が配置され、一対の磁気検出器の他方の磁気検出器の一平面である第2平面上には複数の線状の感磁体としての磁性体が配置される。一対の磁気検出器は、磁界検出方向が同じであり、第1の方向に所定の第1の間隔をあけて配置され、かつ、第1平面と第2平面とが非平行になるように配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対的に第1の方向に移動する被検査物に含まれる磁性異物の残留磁気による磁界を検出する少なくとも一対の磁気検出器を備え、
前記一対の磁気検出器の一方の磁気検出器の一平面である第1平面上には複数の線状の感磁体としての磁性体が配置され、
前記一対の磁気検出器の他方の磁気検出器の一平面である第2平面上には複数の線状の感磁体としての磁性体が配置され、
前記一対の磁気検出器は、磁界検出方向が同じであり、前記第1の方向に所定の第1の間隔をあけて配置され、かつ、前記第1平面と前記第2平面とが非平行になるように配置されている、
検査装置。
【請求項2】
前記一対の磁気検出器は、各磁気検出器の磁界検出方向が、前記第1の方向と直交し、前記被検査物を向くように配置されている、
請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記被検査物は搬送手段によって搬送路に沿って搬送されることで前記一対の磁気検出器に対して前記第1の方向に移動され、
前記第1平面と、前記搬送路の幅方向である第2の方向とがなす角度はθ1であり、
前記第2平面と、前記第2の方向とがなす角度はθ2であり、
θ1とθ2とは互いに異なり、θ1の絶対値及びθ2の絶対値はいずれも0から45度の範囲内である
請求項2に記載の検査装置。
【請求項4】
θ1及びθ2は、θ2=-θ1を満たす、
請求項3に記載の検査装置。
【請求項5】
前記一対の磁気検出器として、前記第1の方向に所定の第1の間隔をあけて配置された第1の一対の磁気検出器と、前記第1の方向に所定の第2の間隔をあけて配置された第2の一対の磁気検出器とを有し、
前記第1の一対の磁気検出器における前記第1平面と前記第2の方向とがなす角度はθ1であり、前記第2平面と前記第2の方向とがなす角度はθ2であり、
前記第2の一対の磁気検出器における前記第1平面と前記第2の方向とがなす角度はθ3であり、前記第2平面と前記第2の方向とがなす角度はθ4であり、
θ1とθ2およびθ3とθ4とはそれぞれ互いに異なり、いずれもその絶対値が0から45度の範囲内である、
請求項2に記載の検査装置。
【請求項6】
前記検査装置は、前記第1の方向に所定の第1の間隔をあけて前記一対の磁気検出器を配置するための固定部材をさらに備え、前記所定の第1の間隔は、前記一対の磁気検出器のそれぞれが検出するノイズ信号の位相がずれるように設定され、
前記検査装置は、前記位相のずれを利用して、前記磁気検出器が検出した磁性異物の残留磁気による磁界の信号と前記ノイズ信号とを分離する演算処理部をさらに備える、
請求項1~5のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項7】
前記検査装置は、前記被検査物に磁界を印加するための着磁手段をさらに備え、前記各磁気検出器の磁界検出方向は、前記着磁手段による磁界の印加方向と同じである、
請求項1~6のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項8】
前記一対の磁気検出器のそれぞれは、前記磁性体の周囲を巻回すコイルを有する、直交フラックスゲート型センサ又は磁気インピーダンスセンサである
請求項1~7のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項9】
前記検査装置は、前記少なくとも一対の磁気検出器を取り囲むように配置され、外部磁気の影響を遮蔽する磁気遮蔽手段をさらに備え、前記磁気遮蔽手段は、前記被検査物が対応する磁気検出器の検査領域に入ったときに前記対応する磁気検出器の一部が前記被検査物に対して露出する位置に設けられた開口部を有する、
請求項1~8のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項10】
前記着磁手段は、前記被検査物に含まれる磁性異物に静磁界で着磁させ、
前記各磁気検出器の磁界検出方向は、前記静磁界の方向と同じである、
請求項7に記載の検査装置。
【請求項11】
前記各磁気検出器は、前記磁界を検出して電圧に変換し、
前記検査装置は、前記少なくとも一対の磁気検出器に対する駆動制御及び前記少なくとも一対の磁気検出器が検出した信号の処理を実行する演算処理部と、
前記少なくとも一対の磁気検出器が検出した信号の波形を表示する表示部と、
をさらに備える、
請求項1に記載の検査装置。
【請求項12】
前記複数の線状の感磁体のそれぞれは、磁性薄膜である、
請求項1~11のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項13】
相対的に第1の方向に移動する被検査物に含まれる磁性異物の残留磁気による磁界を検出する少なくとも一対の磁気検出器によって、前記磁性異物の有無を検査するステップであって、前記一対の磁気検出器のうち、一方の磁気検出器の第1平面上には複数の線状の感磁体としての磁性体が配置され、他方の磁気検出器の第2平面上には複数の線状の感磁体としての磁性体が配置され、前記一対の磁気検出器は、磁界検出方向が同じに設定され、前記第1の方向に所定の間隔をあけて配置され、かつ、前記第1平面と前記第2平面とが非平行である、ステップを含む、検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
市場に流通する商品には、粉状又は粒状の素材を含む商品、成形部品を含む商品、又は包装された商品などの様々な形態がある。商品には、製造工程又は梱包などの工程で異物が混入するリスクがあるため、異物が混入した商品を排除するために検査が行われる。商品の形態によって混入しうる異物の種類は異なるが、例えば、ある種の商品では、ネジなどが落下して商品内部に混入するリスクや、切断工程で利用する刃が欠損して刃の欠けなどが商品に混入するリスクがある。
【0003】
商品に混入する異物のサイズは小さいことが多く、また、大量の商品が連続的に搬送される中で、商品に混入した異物を精度良く発見する必要があることから、検査には高性能な検査装置を必要となる。対象とする異物の種類によって検査方法は異なるが、例えば、帯磁した異物又は着磁可能な異物(以下、磁性異物)を検出する場合には磁気検出器が利用できる。磁性異物のサイズが小さい場合、磁性異物の残留磁気も小さくなるため、微小な磁性異物を検出するには、高い検出能力を有する磁気検出器が必要になる。
【0004】
下記の特許文献1では、被検査物が搬送される搬送路の幅方向に鋭指向性を有し、かつ搬送路の幅方向に配列された複数の磁気センサを利用して、被検査物中にある金属の残留磁気を検出する金属検出装置が提案されている。この金属検出装置は、複数組の磁気センサからの検出信号の相関に基づいて被検査物中に金属があるか否かを判定する。
【0005】
下記の特許文献2では、複数の磁気検出器を備え、同じ被検査物に対して複数の磁気検出器が検出した検出信号を乗算処理して乗算波形を算出し、その乗算波形に基づいて磁性異物を検出する検査装置が提案されている。下記の特許文献3では、最大感度方向が互いに異なる複数の感磁体を有する磁気インピーダンス素子又は直交フラックスゲート型検出素子を備える微小磁性体検出センサが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5695428号公報
【特許文献2】特許第6815513号公報
【特許文献3】特許第6766333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、被検査物に混入する磁性異物の形状は様々であり、例えば、粒状、線状、箔状などの磁性異物が被検査物に混入しうる。また、被検査物中に混入する磁性異物の姿勢は一定でない。磁性異物の形状と姿勢、そして、磁気検出器の特性とが一定の条件を満たした場合、その磁性異物に対する磁気検出器の検出感度が著しく低下することがあり、磁性異物の検出漏れが発生するリスクがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を鑑み、本発明の一態様によれば、相対的に第1の方向に移動する被検査物に含まれる磁性異物の残留磁気による磁界を検出する少なくとも一対の磁気検出器を備え、一対の磁気検出器の一方の磁気検出器の一平面である第1平面上には複数の線状の感磁体としての磁性体が配置され、一対の磁気検出器の他方の磁気検出器の一平面である第2平面上には複数の線状の感磁体としての磁性体が配置され、一対の磁気検出器は、磁界検出方向が同じであり、第1の方向に所定の第1の間隔をあけて配置され、かつ、第1平面と第2平面とが非平行になるように配置されている、検査装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、検出漏れのリスクを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る検査装置の構成例を示した模式図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る磁気検出器の構造について説明するための模式図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る磁気検出器の配置について説明するための模式図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る磁界検出器の特性について説明するための第1の図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る磁界検出器の特性について説明するための第2の図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る磁界検出器の特性について説明するための第3の図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る処理装置の構成について説明するためのブロック図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る信号処理部及び演算処理部の機能について説明するためのブロック図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る検査装置の動作について説明するためのフロー図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る演算処理部のハードウェアについて説明するためのブロック図である。
【
図11】本発明の実施形態の変型例(変形例#1)に係る検査装置の構成について説明するための模式図である。
【
図12】本発明の実施形態の変型例(変形例#2)に係る検査装置の構成について説明するための模式図である。
【
図13】本発明の実施形態の変型例(変形例#3)に係る検査装置の構成について説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態(以下、本実施形態)について説明する。なお、本明細書及び図面において実質的に同一の機能を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する場合がある。
【0012】
[1.検査装置の構成]
図1を参照しながら、本実施形態に係る検査装置の構成例について説明する。
図1は、本実施形態に係る検査装置の構成例を示した模式図である。なお、
図1に示した検査装置10は、本実施形態に係る検査装置の一例である。
【0013】
図1に示すように、検査装置10は、着磁手段11と、搬送手段12と、磁気検出器13、14、16、17と、磁気遮蔽手段15、18と、処理装置19と、固定部材20、21とを有する。
【0014】
なお、
図1に例示した検査装置10の構成は一例であり、実施の態様に応じて適宜変形してもよい。例えば、着磁手段11を省略すること、磁気検出器13、14、16、17のうち、搬送路の上側に位置する一対の磁気検出器13、14、又は搬送路の下側に位置する一対の磁気検出器16、17を省略すること、そして、磁気遮蔽手段15、18を省略することなどが可能である。また、後述するように、磁気検出器の数や配置を変更してもよい。このような変形例についても当然に本実施形態の技術的範囲に属する。
【0015】
また、搬送手段12を省略する変形も可能である。
図1の例では、被検査物22を搬送手段12によって磁気検出器の検査領域に移動させているが、例えば、磁気検出器で構成されるユニットが被検査物22の側に移動する仕組みにすれば、搬送手段12を省略することができる。すなわち、磁気検出器13、14に対して相対的に被検査物22が移動する構成であればよい。また、
図1の例では、処理装置19を検査装置10に含めているが、処理装置19を分離し、搬送手段12を省略して、搬送手段12及び処理装置19を含まない磁気検出器のユニットを検査装置10とする変形も可能である。このような変形例についても当然に本実施形態の技術的範囲に属する。
【0016】
以下の説明では、説明を簡単にするために、被検査物22の搬送方向をY方向(図の右方向)、搬送路に垂直上向きの方向をZ方向(図の上方向)、そして、Y-Z面に垂直な方向をX方向(紙面手前方向)と呼ぶことにする。また、ある要素の位置を基準に、搬送路の上流側の位置を「前段」、搬送路の下流側の位置を「後段」と表現する場合がある。また、図中には1つの被検査物しか記載されていないが、実際には複数の被検査物が搬送路に沿って連続的に搬送されうる。
【0017】
(着磁手段について)
まず、着磁手段11について説明する。着磁手段11は、例えば、磁石やコイルなどで構成された磁界発生機構である。着磁手段11は、磁気検出器13、14、16、17の前段に配置され、上側部分11aと下側部分11bとの間を被検査物22が通過するように設置される。
図1の例では、着磁手段11は、磁界の印加方向がZ方向になるように設置されており、上側部分11aと下側部分11bとの間を通過する被検査物22の磁性異物23にZ方向の静磁界を印加して着磁させる。
【0018】
静磁界の印加方向は、磁気検出器13、14、16、17の磁界検出方向と同じ方向に設定されることが好ましい。この場合、磁性異物23が磁化される方向と、磁気検出器13、14、16、17の磁界検出方向とが一致するため、磁気検出器13、14、16、17による検出感度が高くなり、検出精度が向上する。なお、着磁手段11による着磁は、静磁界に限られない。
【0019】
(搬送手段について)
次に、搬送手段12について説明する。搬送手段12は、被検査物22を搬送するための搬送機構である。搬送手段12は、例えば、搬送ベルト12aと、搬送ローラー12b、12c、12d、12eと、モータなどの駆動手段(非図示)とを含む。
図1に示した搬送手段12の構成(ベルトコンベア)は一例であり、代替的に、異なる構成を持つ搬送手段(例えば、重力を利用して被検査物22を搬送する手段)を適用してもよい。
【0020】
図1の例において、被検査物22は、着磁手段11の前段で搬送ベルト12aの上に載置される。駆動手段の動力によって一定速度で回転する搬送ローラー12b、12c、12d、12eによって搬送ベルト12aが送られ、搬送ベルト12a上の搬送面に積載されて被検査物22が搬送される。搬送ベルト12aは、着磁手段11の上側部分11aと下側部分11bとの間、磁気検出器13、14の下側、及び磁気検出器16、17の上側を通るように配置される。被検査物22は、搬送ベルト12aによって、着磁手段11がある着磁領域を通り、磁気検出器13、14、16、17がある検査領域へと搬送路に沿って搬送される。
【0021】
(磁気検出器について)
次に、磁気検出器13、14、16、17について説明する。磁気検出器13、14、16、17は、例えば、直交フラックスゲート型センサ又は磁気インピーダンスセンサなどの磁気センサである。磁気検出器13、14は、固定部材20によって、その配置が固定される。同様に、磁気検出器16、17は、固定部材21によって、その配置が固定される。固定部材20、21は、例えば、板金又は樹脂によって構成される。なお、固定部材20、21の形状は
図1の例に限定されず、任意に変更可能である。磁気検出器13、14、16、17は同じ構造であり、同じ特性を有するように構成される。そのため、以下では、磁気検出器13について詳細に説明し、磁気検出器14、16、17については詳細な説明を省略する場合がある。
【0022】
ここで、
図2を参照する。
図2は、本実施形態に係る磁気検出器の構造について説明するための模式図である。
図2に示すように、磁気検出器13は、非磁性基板131と、複数の感磁体としての磁性体132(磁性体M1~M6)と、コイル133とを有する。なお、
図2の例では、非磁性基板131上に配置される磁性体の数を6としているが、磁性体の数は2以上5以下、又は7以上であってもよい。
【0023】
非磁性基板131は、例えば、セラミックやガラスなどの素材で形成される。磁性体M1~M6は、磁性薄膜であってよく、非磁性基板131の一平面上に配置される。例えば、磁性体M1~M6は、非磁性基板131の一平面上に、スパッタや蒸着などで磁性薄膜を製膜し、その磁性薄膜を所望の形状に成形することで作成されうる。この作成方法によれば、一度に多数の磁性体を容易に形成することができる。
【0024】
磁性体M1~M6の形状は、
図2に示した例のように、Z方向(着磁手段11による磁界の印加方向と同じ方向)を長手方向とする線状であってもよいし、Z方向を長手方向とし、かつX-Y面(搬送面)に平行な断面が円又は矩形となる棒状であってもよい。また、磁性体M1~M6は、互いに平行になるように所定の間隔を空けて配置される。なお、磁気検出器13の動作中、磁性体M1~M6には高周波電流が印加される。
【0025】
磁性体M1~M6は、電気的に直列又は並列に接続され、まとめて高周波電流が印加されてもよく、磁性体M1~M6にそれぞれ個別の高周波電流が印加されるようにしてもよい。その場合、個別に磁性体M1~M6に印加される電流は同じ駆動源から供給されていてもよいし、同じ値の電流が別の駆動源から供給される構成であってもよい。
【0026】
コイル133は、導電性材料で形成されたワイヤや薄膜であり、磁性体M1~M6の周囲に巻回される。磁気検出器13が磁気インピーダンスセンサである場合、コイル133は、バイアス磁界を印加するためのバイアスコイルとして機能する。磁気検出器13が直交フラックスゲート型センサである場合、コイル133は、磁性体M1~M6の周囲の磁界を検出するための検出コイルとして機能する。磁気検出器13は、磁性体M1~M6のそれぞれに加わった外部磁界の強さを合算して総磁界量を取得し、総磁界量を電圧に変換して検出信号として処理装置19へと出力する。
【0027】
上記のように、磁性体M1~M6の長手方向がZ方向に揃えられているため、磁気検出器13による磁界検出方向はZ方向である。着磁手段11による磁界の印加方向がZ方向に設定されている場合、磁性異物23が磁化される方向と、磁気検出器13の磁界検出方向とが一致するため、磁気検出器13による検出感度が高くなり、検出精度が向上する。
【0028】
次に、
図3を参照する。
図3は、本実施形態に係る磁気検出器の配置について説明するための模式図である。上記のように、磁気検出器13、14、16、17は同じ構造及び特性を有する。但し、検出漏れが発生するリスクを低減するため、対をなす磁気検出器13、14は、磁性体M1~M6が配置される平面(以下、感磁面)が互いに異なる向きとなるように配置される。同様に、対をなす磁気検出器16、17も、感磁面が互いに異なる向きとなるように配置される。
【0029】
なお、
図3の例では、説明を容易にするため、磁性体M1~M6の列の中心がY方向に並ぶように磁気検出器13、14が配置されているが、両者の列中心がX方向に多少ずれていてもよい。磁気検出器13、14による検出領域の大半が重なっていれば、上述した検出精度の向上効果が得られるため、例えば、磁性体1つ分程度、磁性体M1~M6の列中心がX方向にずれていてもよい。以下の説明では、このような列中心のずれがある場合も含めて、Y方向に沿った磁気検出器13、14の並びを、Y方向に並置されていると表現する場合がある。磁気検出器16,17の配置についても同様である。
【0030】
図3の例では、磁気検出器13の感磁面とX軸とがなす角度がθ1となるように磁気検出器13が配置され、磁気検出器14の感磁面とX軸とがなす角度がθ2となるように磁気検出器14が配置されている。説明を簡単にするため、以下では、+X方向に対して左回りの角度を正値、右回りの角度を負値で表現する(
図3の例ではθ1は正値、θ2は負値となる)。磁気検出器13、14は、角度θ1、θ2が「θ1≠θ2」となるように配置される。つまり、磁気検出器13、14は、磁気検出器13の感磁面と、磁気検出器14の感磁面とが非平行となるように配置される。
【0031】
例えば、磁気検出器13、14は、角度θ1、θ2が「θ2=-θ1」となるように配置されてよい。角度θ1、θ2の絶対値は、それぞれ0°~45°の範囲内であることが好ましい。また、磁気検出器による検出漏れを低減する観点からは、角度θ1、θ2は、下記の式(1)で与えられる条件を満たすことが好ましい。さらに、角度θ1、θ2は、一方が45°であり、かつ他方が-45°であることが好ましい。
【0032】
|θ1-θ2|=90° …(1)
【0033】
上記のように、磁気検出器13、14の感磁面が互いに非平行になることで、磁性異物の形状と姿勢、及び感磁面の向きに起因して、磁気検出器13、14の一方で検出漏れが生じても、他方で磁性異物を検出できるようになる。その結果、検出漏れが発生するリスクが低減され、磁性異物の検出精度が向上する。また、角度θ1、θ2が上記の式(1)で与えられる条件を満たす場合、磁気検出器13、14の感磁面が互いに直交することになるため、さらに高い検出精度を実現することが可能になる。
【0034】
ところで、対となる磁気検出器13、14は、Y方向に所定の間隔Lを空けて配置される。間隔Lは、固定部材20によって規定される。また、間隔Lは、磁気検出器13の検出信号と、磁気検出器14の検出信号との位相が分離される距離(位相分離可能な距離)に設定されることが好ましい。この設定によれば、Y方向に搬送される磁性異物の残留磁気による磁界は間隔Lの分だけ位相がずれて検出されるため、同相信号として検出される背景磁界ノイズから容易に分離することが可能になる。その結果、周辺にあるモータや電子機器などが発生する磁界ノイズを効果的に除去できるようになる。磁気検出器16、17も同様に、固定部材21によってY方向の間隔が位相分離可能な距離に固定されうる。
【0035】
ここで、
図4~
図6を参照しながら、検出感度が低下する理由、及び磁気検出器13、14の配置構成によって検出漏れを回避できる理由について、さらに説明する。
図4は、本実施形態に係る磁界検出器の特性について説明するための第1の図である。
図5は、本実施形態に係る磁界検出器の特性について説明するための第2の図である。
図6は、本実施形態に係る磁界検出器の特性について説明するための第3の図である。
【0036】
既に述べている通り、被検査物22に混入する磁性異物の形状や姿勢は一定しておらず、磁性異物の形状や姿勢によっては磁性異物の検出感度が低下することがある。説明を簡単にするために、ワイヤ形状の磁石を磁性異物に見立てて説明する。また、磁気検出器13における磁性体M1~M6の長手方向はZ方向と平行で、感磁面とX軸との間の角度θ1が0°であると仮定する。
【0037】
図4の例では、磁石の長手方向はZ方向で、磁化方向もZ方向であり、磁気検出器13の磁界検出方向と一致している。磁石は、
図4(A)に示すように、搬送路に沿ってY方向に移動し、磁気検出器13の下を通過する。磁性体M1~M6に印加される外部磁界の強さを示す磁界量をそれぞれH1~H6と表現すると、nを1~6として、磁気検出器13によって検出される総磁界量Hは、下記の式(2)で与えられる。
【0038】
【0039】
なお、
図4の例では、磁石の残留磁気による磁界量は、
図4(C)に示すような
図4(B)の磁性体M1~M6の配置に対応したX方向の分布を示す。この例では、磁石の磁化方向と磁気検出器13の磁気検出方向とが一致しているため、磁性体M1~M6にそれぞれ対応する磁界量H1~H6が全て同じ符号(
図4の例では正)の値となる。
【0040】
一方、
図5の例では、磁石の長手方向はX方向で、磁石の磁化方向はX方向であり、磁気検出器13の磁界検出方向と直交している。磁石は、
図5(A)に示すように、搬送路に沿ってY方向に移動し、磁気検出器13の下を通過する。この例では、磁石が、
図5(B)に示すように、X方向に並んだ磁性体M1~M6の列の中心と、磁石の中心とが一致する位置を通過する。この場合、磁石からの磁界量の分布は、
図5(C)に示すように、磁石の中心に対応する位置を境に対称的な形状となる。
【0041】
このとき、磁界量H1~H6は、下記の式(3)の条件を満たす。その結果、上記の式(2)により、磁気検出器13によって検出される総磁界量Hは0になる。実際、ワイヤ形状の磁性異物を用いてS/N(Signal to Noise ratio)を測定する実験を行ったところ、
図6に示すように、磁性異物の中心と、磁性体M1~M6の列の中心とが近づくほど(横軸が0に近づくほど)S/Nが落ち込むことが分かった。これは、磁性異物の形状と姿勢、及び磁気検出器13の配置によって不感帯が生じうることを示している。
【0042】
H6=-H1,H5=-H2,H4=-H3 …(3)
【0043】
ここで、再び
図3を参照する。既に述べた通り、本実施形態では、対をなす磁気検出器13、14の感磁面とX軸との間の角度θ1、θ2が異なるように、磁気検出器13、14が配置される。
【0044】
磁性異物がワイヤ形状で、磁性異物の磁化方向とX軸との間の角度がθ1であり、かつ磁性異物の中心が磁性体M1~M6の列の中心に対応する位置を通過するタイミングにおいて、磁気検出器13では、総磁界量Hが0となり、その磁性異物の検出漏れが発生しうる。しかし、磁性異物の磁化方向とX軸との間の角度θ1は、磁気検出器14の感磁面とX軸との間の角度θ2と異なるため、磁気検出器14では、上記の式(3)で与えられる条件を満たさず、磁性異物の中心が磁性体M1~M6の列の中心に対応する位置を通過するタイミングにおいて検出される総磁界量Hが0にならない。そのため、磁気検出器13で検出漏れが生じうる条件が揃っても、磁気検出器14は、その磁性異物を検出することができる。
【0045】
上記のように、角度θ1、θ2が互いに異なるように磁気検出器13、14を配置することで、磁性異物の形状及び姿勢によらず、少なくとも一方の磁気検出器が磁性異物の残留磁界を検出することが可能になり、検出漏れが生じるリスクを低減することができる。なお、上記の式(1)で与えられる条件(磁気検出器13、14の感磁面が直交する条件)を満たす場合、一方の磁気検出器が検出漏れを生じうる状況で、他方の磁気検出器の検出感度が最大になるため、検出漏れのリスクを効果的に低減できる。
【0046】
なお、磁性異物の磁化方向とX軸との間の角度がθ1であり、かつ磁性異物の中心が磁性体M1~M6の列の中心に対応する位置を通過するタイミングにおいて、磁気検出器13の総磁界量Hが0となる場合であっても、その前後のタイミングにおいては磁気検出器13においても、磁界量Hが検出されるタイミングがある。但し、本来であれば、磁性異物の中心が磁性体M1~M6の列の中心に対応する位置を通過するタイミングで最も大きな総磁界量Hが検出されるものであり、それと比較すると大きく総磁界量Hの最大値が減少しており、磁性異物の検出が困難になる。それに対し本実施形態においては、角度θ2を有する磁気検出器14を設けることで、磁性異物の中心が磁性体M1~M6の列の中心に対応する位置を通過するタイミングで最も大きな総磁界量Hを検出することが可能となり、磁性異物の検出漏れのリスクを低減することができる。
【0047】
これまで、搬送路の上側にある磁気検出器13、14の配置について説明してきたが、搬送路の下側にある磁気検出器16、17も同様に配置される。例えば、磁気検出器16の感磁面とX軸との間の角度をθ3とし、磁気検出器17の感磁面とX軸との間の角度をθ4とすると、磁気検出器16、17は、角度θ3、θ4が「θ3≠θ4」となるように配置される。つまり、磁気検出器16、17は、磁気検出器16の感磁面と、磁気検出器17の感磁面とが非平行となるように配置される。
【0048】
また、磁気検出器16、17は、角度θ3、θ4が「θ4=-θ3」となるように配置されてよい。角度θ3、θ4の絶対値は、それぞれ0°~45°の範囲内であることが好ましい。また、磁気検出器による検出漏れを低減する観点からは、角度θ3、θ4は、下記の式(4)で与えられる条件を満たすことが好ましい。さらに、角度θ3、θ4は、一方が45°であり、かつ他方が-45°であることが好ましい。
【0049】
|θ3-θ4|=90° …(4)
【0050】
上記のように、磁気検出器16、17の感磁面が互いに非平行になることで、磁性異物の形状と姿勢、及び感磁面の向きに起因して、磁気検出器16、17の一方で検出漏れが生じても、他方で磁性異物を検出することができる。その結果、検出漏れが発生するリスクが低減され、磁性異物の検出精度が向上する。また、角度θ3、θ4が上記の式(4)で与えられる条件を満たす場合、磁気検出器16、17の感磁面が互いに直交することになるため、さらに高い検出精度を実現することが可能になる。また、角度θ1~θ4を互いに異なる値に設定することで、検出漏れのリスクをさらに低減することができる。
【0051】
(磁気遮蔽手段について)
次に、再び
図1を参照しながら、磁気遮蔽手段15、18について説明する。
図1の例において、磁気検出器13、14は、磁気遮蔽手段15によって取り囲まれている。同様に、磁気検出器16、17は、磁気遮蔽手段18によって取り囲まれている。磁気遮蔽手段15、18は、パーマロイやケイ素鋼板などの高透磁率材料で形成されており、その外部からの磁界の侵入を阻止し、外部磁気の影響を遮蔽する。
【0052】
但し、磁気遮蔽手段15には、磁気検出器13、14の下を通過する被検査物22に対して、磁気検出器13、14を露出するための開口部が設けられており、その開口部を通して磁性異物からの磁界が磁気検出器13、14に到達しうる。同様に、磁気遮蔽手段18には、磁気検出器16、17の上を通過する被検査物22に対して、磁気検出器16、17を露出するための開口部が設けられており、その開口部を通して磁性異物からの磁界が磁気検出器16、17に到達しうる。
【0053】
磁気遮蔽手段15、18を設けることによって、磁気検出器13、14、16、17に到達する背景磁界ノイズを遮断することができ、検出精度をさらに高めることができる。なお、
図1の例では、1つの磁気遮蔽手段で一対の磁気検出器を覆っているが、1つの磁気検出器を1つの磁気遮蔽手段で覆うようにしてもよいし、開口部を適切に設けた1つの磁気遮蔽手段によって全ての磁気検出器を覆うようにしてもよい。
【0054】
(処理装置について)
次に、
図7及び
図8を参照しながら、処理装置19について説明する。
図7は、本実施形態に係る処理装置の構成について説明するためのブロック図である。
図8は、本実施形態に係る信号処理部及び演算処理部の機能について説明するためのブロック図である。
【0055】
図7に示すように、処理装置19は、信号処理部191と、演算処理部192と、表示部193とを含む。
【0056】
信号処理部191は、磁気検出器13、14、16、17の駆動制御を実施し、磁気検出器13、14、16、17からの検出信号を処理する。例えば、信号処理部191は、
図8に示すように、信号検出部191aと、増幅部191bと、AD(Analog to Digital)変換部191cとを含む。
【0057】
信号検出部191aは、磁気検出器13、14、16、17のそれぞれから、検出された総磁界量Hに対応する検出信号を受信する。また、信号検出部191aは、検出信号の波形を表示部193に表示してもよい。増幅部191bは、信号検出部191aによって受信された検出信号を増幅する。AD変換部191cは、増幅部191bによって増幅されたアナログの検出信号をデジタル信号に変換する。AD変換部191cから出力されるデジタル信号は、演算処理部192へと出力される。なお、検出信号をアナログ信号のまま処理してもよく、この場合はAD変換部191cが省略されうる。
【0058】
演算処理部192は、信号処理部191から出力されるデジタル信号に基づいて磁性異物の有無を判定する。なお、演算処理部192をOP(Operational)アンプなどのアナログ回路で構成する場合には、信号処理部191による増幅後の検出信号に基づいて磁性異物の有無が判定される。例えば、演算処理部192は、
図8に示すように、ノイズ除去部192aと、判定部192bとを含む。
【0059】
ノイズ除去部192aは、磁気検出器13、14からの検出信号に対応するデジタル信号の組に対するノイズ除去処理、及び磁気検出器16、17からの検出信号に対応するデジタル信号の組に対するノイズ除去処理を実行して背景磁界ノイズの成分(ノイズ信号)を除去する。ノイズ除去処理としては、例えば、差動処理や平均処理などが適用できる。
【0060】
一対の磁気検出器からの検出信号を差動処理すると、磁性異物からの磁界に起因する検出信号はピークが上下に出る波形になる。一方、背景磁界ノイズは差動処理により除去される。差動処理によって背景磁界ノイズは高い除去率で除去されるため、より微小な磁性異物を検出することができる。
【0061】
ところで、従来技術のように一対の磁気検出器の磁界検出方向が同一でない場合には、検出信号中の背景磁界ノイズの成分が同相にならず、差動処理によって背景磁界ノイズを除去することはできない。この場合、背景磁界ノイズの影響を強く受けて検出精度が低下する。一方、本実施形態では、磁気検出器13、14、16、17の磁界検出方向が同一であるため、差動処理によって背景磁界ノイズの影響を除去することができ、高い検出精度を実現することができる。
【0062】
判定部192bは、ノイズ除去部192aによって背景磁界ノイズの影響が除去された信号を取得し、取得した信号に基づいて磁性異物の有無を判定する。例えば、判定部192bは、信号強度が所定の閾値を超えた場合に磁性異物が存在すると判定する。そして、判定部192bは、その判定結果を表示部193に表示する。
【0063】
磁性異物を含む被検査物22を搬送路から取り除くための除去手段(非図示)を検査装置10が備えている場合、判定部192bは、磁性異物が存在すると判定したときに、その磁性異物が混入している被検査物22を取り除くように除去手段を制御してもよい。
【0064】
(検査装置の動作について)
次に、
図9を参照しながら、検査装置10の動作について説明する。
図9は、本実施形態に係る検査装置の動作について説明するためのフロー図である。
【0065】
(S101)被検査物22は、着磁手段11の前段で搬送ベルト12a上に載置され、着磁手段11がある着磁領域を通り、磁気検出器13、14、16、17がある検査領域へと搬送路に沿ってY方向に搬送される。着磁領域では、着磁手段11が発生する磁界(例えば、静磁界)によって被検査物22中の磁性異物が着磁される。着磁手段11によって印加される静磁界の方向は、磁気検出器13、14、16、17の磁界検出方向と同じZ方向である。そのため、磁性異物はZ方向に磁化される。
【0066】
(S102)被検査物22が検査領域へと搬送されると、磁気検出器13、14、16、17のそれぞれは、被検査物22中にある磁性異物の残留磁気に起因する磁界を検出する。磁気検出器13、14、16、17の磁界検出方向はいずれもZ方向であるため、磁気検出器13、14、16、17は、磁性異物からの磁界のZ成分を検出し、検出信号を処理装置19へと出力する。
【0067】
図3に示したように、Y方向に並置された一対の磁気検出器13、14は、感磁面とX軸との間の角度が互いに異なるため、磁性異物の形状及び姿勢によらず、少なくとも一方の磁気検出器が磁性異物からの磁界を検出することができる。一対の磁気検出器16、17についても同様に、感磁面とX軸との間の角度が互いに異なるため、少なくとも一方の磁気検出器が磁性異物からの磁界を検出することができる。そのため、磁性異物が存在すれば、少なくとも1つの磁気検出器から処理装置19に検出信号が送られる。
【0068】
(S103)処理装置19の信号処理部191は、磁気検出器13、14、16、17からの検出信号を受信し、受信された検出信号を増幅する。また、信号処理部191は、アナログの検出信号をAD変換してデジタルの検出信号を生成する。但し、磁性異物の有無を判定する処理をアナログ回路で実施する場合にはAD変換を省略してもよい。信号処理部191によって処理された検出信号は、演算処理部192へと出力される。
【0069】
(S104)演算処理部192は、信号処理部191から出力された検出信号を取得し、取得された検出信号にノイズ除去処理を適用する。例えば、演算処理部192は、ノイズ除去処理として、一対の磁気検出器13、14に対応する2つの検出信号に対する差動処理又は平均処理を実行する。また、演算処理部192は、一対の磁気検出器16、17に対応する2つの検出信号に対する差動処理又は平均処理を実行する。これらのノイズ除去処理によって背景磁界ノイズの影響が低減されうる。
【0070】
また、演算処理部192は、ノイズ除去後の検出信号に基づいて、磁性異物の有無を判定する判定処理を実行する。例えば、演算処理部192は、一対の磁気検出器13、14に対応するノイズ除去後の検出信号、及び一対の磁気検出器16、17に対応するノイズ除去後の検出信号の少なくとも一方又は両方について、検出信号の信号強度が所定の閾値を超えた場合に磁性異物が存在すると判定する。
【0071】
(S105)演算処理部192は、磁性異物の有無に関する判定結果を表示部193に表示する。なお、演算処理部192は、検出信号の信号波形を表示部193に表示してもよい。また、磁性異物を含む被検査物22を搬送路から取り除くための除去手段(非図示)がある場合、演算処理部192は、磁性異物が混入している被検査物22を取り除くように除去手段を制御してもよい。
【0072】
S105の処理が完了すると、
図9に示した一連の処理は終了する。但し、検査装置10の稼働中は、搬送ベルト12aに次々と被検査物が載置され、連続的に検査が行われるため、各被検査物について
図9に示した処理が実行される。
【0073】
(ハードウェア)
次に、
図10を参照しながら、演算処理部192の機能を実現可能なコンピュータ30のハードウェア構成について説明する。
図10は、本実施形態に係る演算処理部のハードウェアについて説明するためのブロック図である。なお、コンピュータ30の構成は一例であり、一部の要素を省略してもよく、新たな要素を追加してもよい。
【0074】
図10に示すように、コンピュータ30は、プロセッサ31と、メモリ32と、表示インターフェース33と、通信インターフェース34と、及び接続インターフェース35とを有する。
【0075】
プロセッサ31は、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、GPU(Graphic Processing Unit)などである。メモリ32は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリなどである。上述したノイズ除去部192a及び判定部192bの機能は、プロセッサ31及びメモリ32を利用して実現されうる。
【0076】
表示インターフェース33は、LCD(Liquid Crystal Display)、ELD(Electro-Luminescence Display)などの表示装置を接続するためのインターフェースである。これらの表示装置は、上述した表示部193の一例である。通信インターフェース34は、有線及び/又は無線のネットワークに接続するためのインターフェースである。通信インターフェース34は、例えば、有線LAN(Local Area Network)、無線LAN、光通信ネットワーク、携帯電話ネットワークなどに接続されうる。
【0077】
接続インターフェース35は、外部デバイスを接続するためのインターフェースである。接続インターフェース35は、例えば、USB(Universal Serial Bus)ポート、IEEE1394ポート、SCSI(Small Computer System Interface)などである。接続インターフェース35には、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、タッチパッドなどの入力インターフェースが接続されうる。
【0078】
また、接続インターフェース35には、コンピュータ可読記録媒体(Computer-readable storage medium)36が接続されうる。コンピュータ可読記録媒体36は、例えば、磁気記録媒体、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリなどである。例えば、プロセッサ31は、コンピュータ可読記録媒体36に格納されたプログラムを読み出してメモリ32に格納し、メモリ32から読み出したプログラムに従ってコンピュータ30の動作を制御してもよい。なお、プログラムは、メモリ32に予め格納されてもよいし、通信インターフェース34を介してネットワークからダウンロードされてもよい。
【0079】
以上、本実施形態に係る検査装置10について説明した。
【0080】
[2.変形例]
以下、
図11~
図13を参照しながら、本実施形態の変形例について説明する。
【0081】
(変形例#1)
図11に示した検査装置10aは、既に説明した検査装置10の一変形例(以下、変形例#1)である。
図11は、本実施形態の変型例(変形例#1)に係る検査装置の構成について説明するための模式図である。検査装置10と検査装置10aとの間の違いは、磁気検出器16、17の有無にある。
図11に示すように、検査装置10aでは、磁気検出器16、17が省略されている。この場合、処理装置19は、一対の磁気検出器13、14から出力される検出信号に基づいて磁性異物の有無を判定する。
【0082】
変形例#1の場合でも、一対の磁気検出器13、14は、
図3に示したように、それらの感磁面とX軸との間の角度θ1、θ2が互いに異なるように配置される。そのため、磁性異物の形状及び姿勢によらず、一対の磁気検出器13、14の少なくとも一方によって磁性異物を検出することができる。また、磁気検出器13、14の磁界検出方向もZ方向に設定される。そのため、磁気検出器13、14からの検出信号に対して差動処理などのノイズ除去処理によって背景磁界ノイズを効果的に除去することができる。
【0083】
(変形例#2)
図12に示した変形例(以下、変形例#2)は、Y方向に2組の一対の磁気検出器を設ける構成を提案するものである。
図12は、本実施形態の変型例(変形例#2)に係る検査装置の構成について説明するための模式図である。
図12に示すように、変形例#2では、一対の磁気検出器13a、14aの後段に、他の一対の磁気検出器13b、14bが設けられている。磁気検出器13a、13b、14a、14bの構造は、
図2を参照しながら説明した磁気検出器13の構造と同じであり、いずれも磁界検出方向がZ方向に設定されている。
【0084】
磁気検出器13a、13b、14a、14bの感磁面とX軸とがなす角度をそれぞれθ1’、θ2’、θ3’、θ4’と表現すると、磁気検出器13a、13b、14a、14bは、θ1’とθ2’とが異なり、かつ、θ3’とθ4’とが異なるように配置される。この配置によれば、磁気検出器13a、14aの感磁面は互いに非平行であり、かつ、磁気検出器13b、14bの感磁面は互いに非平行である。
【0085】
θ1’、θ2’、θ3’、θ4’の絶対値は、それぞれ0°~45°の範囲内であることが好ましい。また、θ1’、θ2’は、「θ2’=-θ1’」の条件を満たすように設定されてよく、θ3’、θ4’は「θ3’=-θ4’」の条件を満たすように設定されてよい。また、θ1’、θ2’は、下記の式(5)で与えられる条件を満たすことが好ましく、θ3’、θ4’は、下記の式(6)で与えられる条件を満たすことが好ましい。また、θ1’、θ2’の一方が45°、他方が-45°に設定されるか、又はθ3’、θ4’の一方が45°、他方が-45°に設定されることが好ましい。また、θ1’、θ2’、θ3’、θ4’が互いに異なる値に設定されることが好ましい。
【0086】
|θ1’-θ2’|=90° …(5)
|θ3’-θ4’|=90° …(6)
【0087】
上記のようにθ1’、θ2’、θ3’、θ4’を設定することによって、磁性異物の形状及び姿勢によらず、磁気検出器13a、13b、14a、14bの少なくとも1つで磁性異物からの磁界を検出することができ、検出感度がさらに向上する。
【0088】
なお、
図12には、搬送路の上側における磁気検出器の配置だけを示したが、
図1に示した例のように、搬送路の下側にも4つの磁気検出器を設置してもよい。この場合、合計8つの磁気検出器が設置されることになる。これらの磁気検出器は、感磁面とX軸との間の角度が互いに異なるように配置されてよい。代替的に、搬送路の上側にある4つの磁気検出器と、搬送路の下側にある4つの磁気検出器とで同じ角度構成が適用されてもよい。更なる変形例として、搬送路の上側に4つ、下側に2つの磁気検出器を設置する構成や、搬送路の上側に2つ、下側に4つの磁気検出器を設置する構成なども適用可能である。
【0089】
(変形例#3)
図13に示した変形例(以下、変形例#3)は、搬送路の幅方向(X方向)に2組の一対の磁気検出器を設ける構成を提案するものである。
図13は、本実施形態の変型例(変形例#3)に係る検査装置の構成について説明するための模式図である。
図13に示すように、変形例#3では、一対の磁気検出器13c、14cに並べて、他の一対の磁気検出器13d、14dが設けられている。磁気検出器13c、13d、14c、14dの構造は、
図2を参照しながら説明した磁気検出器13の構造と同じであり、いずれも磁界検出方向がZ方向に設定されている。
【0090】
搬送路の幅方向が広い場合、
図13に示すように、複数の一対の磁気検出器を搬送路の幅方向に並べて配置する構成が適用できる。幅方向に隣接する磁気検出器の間隔は実施の態様に応じて適宜設定可能である。
図13の例では、説明を容易にするために、隣接する磁気検出器の間隔を若干離隔して記載しているが、磁性異物の検出感度が最大値の50%となる位置が重なるような配置が好ましい。この配置によれば、隣接する磁気検出器の中間を磁性異物が通過するときに検出漏れが発生するリスクを低減しうる。
【0091】
磁気検出器13c、14cの感磁面とX軸との間の角度θ1、θ2の構成は、上述した磁気検出器13、14についての角度θ1、θ2の構成と同じに設定されてよい。また、磁気検出器13d、14dの感磁面とX軸との間の角度は、磁気検出器13c、14cについての角度θ1、θ2と同じ値に設定されてよい。変形例#3によれば、搬送路の幅が広い場合でも、磁性異物の形状及び姿勢によらず、磁気検出器13c、13d、14c、14dの少なくとも1つで磁性異物からの磁界を検出することができ、高い検出感度を実現することができる。
【0092】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0093】
10、10a 検査装置
11、11a、11b 着磁手段
12 搬送手段
12a 搬送ベルト
12b、12c、12d、12e 搬送ローラー
13、13a、13b、14、14a、14b、16、17 磁気検出器
15、18 磁気遮蔽手段
19 処理装置
20 被検査物
21 磁性異物
30 コンピュータ
31 プロセッサ
32 メモリ
33 表示インターフェース
34 通信インターフェース
35 接続インターフェース
36 記録媒体
131 非磁性基板
132、M1、M2、M3、M4、M5、M6 磁性体
133 コイル
191 信号処理部
191a 信号検出部
191b 増幅部
191c AD変換部
192 演算処理部
192a ノイズ除去部
192b 判定部
193 表示部