(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157067
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物及びグラビア印刷方法
(51)【国際特許分類】
C09D 11/02 20140101AFI20221006BHJP
C09D 11/037 20140101ALI20221006BHJP
C09D 11/033 20140101ALI20221006BHJP
B41M 1/10 20060101ALI20221006BHJP
B41M 1/30 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
C09D11/02
C09D11/037
C09D11/033
B41M1/10
B41M1/30 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021061089
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100214363
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】梅林 尚史
(72)【発明者】
【氏名】赤坂 健太
(72)【発明者】
【氏名】金森 亮太
(72)【発明者】
【氏名】原田 淳一
【テーマコード(参考)】
2H113
4J039
【Fターム(参考)】
2H113AA01
2H113BA03
2H113BB08
2H113BB22
2H113BC02
2H113CA25
2H113DA04
2H113DA07
2H113DA15
2H113DA43
2H113DA50
2H113DA53
2H113DA54
2H113DA62
2H113FA04
2H113FA10
2H113FA32
4J039AB08
4J039AD01
4J039AE04
4J039BA21
4J039BB02
4J039BC07
4J039BC20
4J039BE01
4J039BE12
4J039BE23
4J039CA07
4J039EA09
4J039GA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】臭気が少なく、経時安定性が良好であり、且つ浅版化された印刷刷版を使用してグラビア印刷しても、良好な印刷濃度、印刷適性、及び、ラミネート適性を有する有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物、及び、該インキ組成物を用いたグラビア印刷方法を提供する。
【解決手段】顔料、バインダー樹脂及び有機溶剤を含有する有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物であって、前記顔料は、有機顔料及び/又は無機顔料であり、前記バインダー樹脂は、特定のポリウレタンポリウレア樹脂を含有し、有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物中の顔料が特定の割合を有する、有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料、バインダー樹脂及び有機溶剤を含有する有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物であって、
前記顔料は、有機顔料及び/又は無機顔料であり、
前記バインダー樹脂は、下記(A)及び/又は(B)のポリウレタンポリウレア樹脂を含有し、
前記顔料及び前記バインダー樹脂は、下記条件1~3を満足する
ことを特徴とする有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物。
(A)下記(A-1)及び(A-2)から選ばれる1種以上の重量平均分子量20,000~50,000のポリウレタンポリウレア樹脂
(A-1)ジオール化合物とジイソシアネート化合物を反応させて得られるウレタンプレポリマーと、ポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物とを有機溶剤中で、鎖伸長及び反応停止を行って得られるポリウレタンポリウレア樹脂
(A-2)ジオール化合物とジイソシアネート化合物を反応させて得られるウレタンプレポリマーと、反応停止剤とを有機溶媒中で反応させ、次いで、ポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物で、鎖伸長及び反応停止を行って得られるポリウレタンポリウレア樹脂
(B)下記(B-1)及び(B-2)から選ばれる1種以上の重量平均分子量20,000~50,000のポリウレタンポリウレア樹脂
(B-1)ジオール化合物とジイソシアネート化合物を反応させて得られるウレタンプレポリマーと有機溶剤とのウレタンプレポリマー溶液に、ポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物とを加え撹拌混合し、更に水を加えた後、鎖伸長及び反応停止を行って得られるポリウレタンポリウレア樹脂
(B-2)ジオール化合物とジイソシアネート化合物を反応させて得られるウレタンプレポリマーと有機溶剤とのウレタンプレポリマー溶液に、反応停止剤を加え反応させ、次いで、ポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物とを加え撹拌混合し、更に、水を加えた後、鎖伸長及び反応停止を行って得られるポリウレタンポリウレア樹脂
(条件1)
前記顔料が有機顔料である場合、有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物中の前記有機顔料の含有量が5~20質量%である
(条件2)
前記顔料が無機顔料である場合、有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物中の前記無機顔料の含有量が30~70質量%である
(条件3)
前記顔料が有機顔料及び無機顔料の両方を含む場合、有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物中の前記有機顔料の含有量が5~20質量%、前記有機顔料に対する前記無機顔料の質量比{無機顔料(質量)/有機顔料(質量)}が、0<無機顔料(質量)/有機顔料(質量)<7.0である。
【請求項2】
ポリウレタンポリウレア樹脂は、末端に第1級アミノ基を有するポリウレタンポリウレア樹脂、及び、末端に第1級アミノ基及び第2級アミノ基を有するポリウレタンポリウレア樹脂、及び、末端に第1級アミノ基がケチミン化されている基を有するポリウレタンポリウレア樹脂、から選ばれた1種以上である請求項1記載の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物。
【請求項3】
バインダー樹脂として、塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体及び/又は塩化ビニル/アクリル共重合体を含有する請求項1又は2に記載の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物。
【請求項4】
密着性向上剤としてロジン及びその誘導体、塩素化ポリプロピレン、ダンマル樹脂及びブロッキング防止剤としてシリカ粒子、ポリエチレンワックス、脂肪酸アミド、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、硝化綿、から選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1~3のいずれかに記載の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物。
【請求項5】
有機溶剤は、エステル系有機溶剤、及び、アルコール系有機溶剤の混合溶剤である請求項1~4のいずれかに記載の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物。
【請求項6】
グラビア印刷時に、更に有機溶剤を添加して希釈された有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物とされ、該有機溶剤は、エステル系有機溶剤、及び、アルコール系有機溶剤の混合溶剤であり、
該有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物中の前記エステル系溶剤と前記アルコール系有機溶剤との使用割合が、エステル系有機溶剤/アルコール系有機溶剤=50/50~95/5である請求項5に記載の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物。
【請求項7】
有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物中に、エステル系溶剤として酢酸プロピルを5質量%以上含有する請求項5又は6に記載の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物を用いたグラビア印刷方法であって、
前記有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物に有機溶剤を添加して希釈した有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物を調製し、
前記有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物を用いて、浅版化したグラビア版を用いてグラビア印刷方式にて印刷することを特徴とするグラビア印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物及びグラビア印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、環境問題への対応は、社会的責任として、全産業・全業種をあげて取り組むべきビジネステーマであり、もちろんプラスチックフィルム印刷の分野も同様である。
ところが、プラスチックフィルムに対する印刷には、印刷適性上の制約から、一般に有機溶剤を多く含むインキが利用されているため環境に与える負荷は大きい。そこで、インキや印刷物を製造するメーカーでは、有機溶剤の排出量の削減や簡便な処理方法の開発等により環境問題の解決に取り組んでいる。
【0003】
このような取り組みの一つに、インキメーカーにおいては、インキ中に含まれる有機溶剤の中で、より環境負荷の高いものを削減することを試みている。例えば、従来、インキ中に含まれていた芳香族系やケトン系等の環境負荷の高い有機溶剤について、含有量を減量してきた。更に近年、置き換える有機溶剤の種類や組成比率はもとより、バインダー樹脂、添加剤等のインキに使用する材料全体についても見直しが行われている。その結果、芳香族系やケトン系溶剤をほとんど又は全く含まない、エステル-アルコール系インキが実用化されている。
【0004】
一方、印刷会社においては、上記のような環境問題の解決方法として、印刷時にインキ中の有機溶剤をなるべく大気中に排出しないという試みを行っている。その一例としてグラビア印刷版深度(セルの深さ)を浅くして(浅版化)印刷することによって、印刷時のインキ使用量を減らし、大気中への有機溶剤の揮発量を削減することを試みている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、グラビア印刷版の浅版化に伴ってセル容積は減少し、印刷時のインキ組成物の転移量は少なくなる。従って、インキ組成物中の有機溶剤量は抑えられるが、インキ転移量が少ない分、インキ被膜の着色剤量も少なくなると充分な印刷(色)濃度が得られないという問題があった。そこで、通常、印刷時に薄膜及び高顔料濃度化の被膜を形成するために、高顔料濃度のインキ組成物を用いて印刷を行っていた。
【0005】
しかし、インキ組成物の高顔料濃度化は、インキ粘度を高くする要因であり、相対的に版かぶりやドクター切れの低下につながりやすい。
このようなインキ組成物の高粘度化を防ぐために、他の固形分の量を少なくする方法が知られているが、このような方法は、インキ組成物中のバインダー樹脂の減量につながることになる。そうすると、顔料に対するバインダー樹脂の比率が低下し、インキ被膜の凝集力も低下することになる。
それを解決するために、本出願人は、バインダー樹脂として末端に第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基を有し、低粘度のポリウレタンポリウレア樹脂を使用した有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物を提案している(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、低粘度のポリウレタンポリウレア樹脂とする場合は、ポリウレタンポリウレア樹脂の分子量を低くする必要がある。従来の方法で、ポリウレタンポリウレア樹脂を作成した場合、遊離アミンの発生が多く、これを使用した有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物は、臭気が発生する問題を有している。また、有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物は、経時安定性が低下する傾向も有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2007/088733号公報
【特許文献2】特開2013-231122号公報
【特許文献3】国際公開第2017/098660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
グラビア印刷版を浅版化する印刷方法では、インキ組成物中の顔料濃度を高くする必要があることから、それに合わせてインキ組成物の被膜凝集力を低下させない量のバインダー樹脂を含有させるとインキ粘度が高くなり、印刷物が汚れやすいという問題があった。
一方、低粘度化のためにバインダー樹脂量を少なくすると、インキ被膜の凝集力の低下から、耐摩擦性やラミネート加工される場合にラミネート適性が低下するという問題が生じていた。そのため、バインダー樹脂として使用するポリウレタンポリウレア樹脂は、低分子量のポリウレタンポリウレア樹脂を使用している。しかし、この低分子量のポリウレタンポリウレア樹脂は、遊離アミンの発生が多く、これを使用した有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物は、臭気が発生したり、経時安定性が低下したりする問題を有していた。
従って、本発明が解決しようとする課題は、臭気が少なく、経時安定性が良好であり、且つ浅版化された印刷刷版を使用してグラビア印刷しても、良好な印刷濃度、印刷適性、及び、ラミネート適性を有する有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物、及び、該有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物を用いたグラビア印刷方法を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、特定のポリウレタンポリウレア樹脂を含有する有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物を採用することにより、上記課題を解決し得ることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
1.顔料、バインダー樹脂及び有機溶剤を含有する有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物であって、
前記顔料は、有機顔料及び/又は無機顔料であり、
前記バインダー樹脂は、下記(A)及び/又は(B)のポリウレタンポリウレア樹脂を含有し、
前記顔料及び前記バインダー樹脂は、下記条件1~3を満足することを特徴とする有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物。
(A)下記(A-1)及び(A-2)から選ばれる1種以上の重量平均分子量20,000~50,000のポリウレタンポリウレア樹脂
(A-1)ジオール化合物とジイソシアネート化合物を反応させて得られるウレタンプレポリマーと、ポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物とを有機溶剤中で、鎖伸長及び反応停止を行って得られるポリウレタンポリウレア樹脂
(A-2)ジオール化合物とジイソシアネート化合物を反応させて得られるウレタンプレポリマーと、反応停止剤とを有機溶媒中で反応させ、次いで、ポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物で、鎖伸長及び反応停止を行って得られるポリウレタンポリウレア樹脂
(B)下記(B-1)及び(B-2)から選ばれる1種以上の重量平均分子量20,000~50,000 のポリウレタンポリウレア樹脂
(B-1)ジオール化合物とジイソシアネート化合物を反応させて得られるウレタンプレポリマーと有機溶剤とのウレタンプレポリマー溶液に、ポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物とを加え撹拌混合し、更に水を加えた後、鎖伸長及び反応停止を行って得られるポリウレタンポリウレア樹脂
(B-2)ジオール化合物とジイソシアネート化合物を反応させて得られるウレタンプレポリマーと有機溶剤とのウレタンプレポリマー溶液に、反応停止剤を加え反応させ、次いで、ポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物とを加え撹拌混合し、更に、水を加えた後、鎖伸長及び反応停止を行って得られるポリウレタンポリウレア樹脂
(条件1)
前記顔料が有機顔料である場合、有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物中の前記有機顔料の含有量が5~20質量%である
(条件2)
前記顔料が無機顔料である場合、有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物中の前記無機顔料の含有量が30~70質量%である
(条件3)
前記顔料が有機顔料及び無機顔料の両方を含む場合、有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物中の前記有機顔料の含有量が5~20質量%、前記有機顔料に対する前記無機顔料の質量比{無機顔料(質量)/有機顔料(質量)}が、0<無機顔料(質量)/有機顔料(質量)<7.0である。
2.ポリウレタンポリウレア樹脂は、末端に第1級アミノ基を有するポリウレタンポリウレア樹脂、及び、末端に第1級アミノ基及び第2級アミノ基を有するポリウレタンポリウレア樹脂、及び、末端に第1級アミノ基がケチミン化されている基を有するポリウレタンポリウレア樹脂、から選ばれた1種以上である1記載の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物。
3.バインダー樹脂として、塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体及び/又は塩化ビニル/アクリル共重合体を含有する1又は2に記載の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物。
4.密着性向上剤としてロジン及びその誘導体、塩素化ポリプロピレン、ダンマル樹脂及びブロッキング防止剤としてシリカ粒子、ポリエチレンワックス、脂肪酸アミド、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、硝化綿、から選ばれる少なくとも1種を含有する1~3のいずれかに記載の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物。
5.有機溶剤は、エステル系有機溶剤、及び、アルコール系有機溶剤の混合溶剤である1~4のいずれかに記載の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物。
6.グラビア印刷時に、更に有機溶剤を添加して希釈された有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物とされ、該有機溶剤は、エステル系有機溶剤、及び、アルコール系有機溶剤の混合溶剤であり、
該有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物中の前記エステル系溶剤と前記アルコール系有機溶剤との使用割合が、エステル系有機溶剤/アルコール系有機溶剤=50/50~95/5である5に記載の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物。
7.有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物中に、エステル系溶剤として酢酸プロピルを5質量%以上含有する5又は6に記載の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物。
8.1~7のいずれか1項に記載の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物を用いたグラビア印刷方法であって、
前記有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物に有機溶剤を添加して希釈した有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物を調製し、
前記有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物を用いて、浅版化したグラビア版を用いてグラビア印刷方式にて印刷することを特徴とするグラビア印刷方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物は、経時安定性が良好であり、且つ浅版化された印刷刷版を使用してグラビア印刷しても、印刷物の臭気は少なく、良好な印刷濃度、印刷適性、及びラミネート適性を有するという効果を発揮できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物について説明する。
【0011】
<顔料>
上記顔料としては、印刷インキで一般的に用いられている各種無機顔料、有機顔料等が使用できる。
上記無機顔料としては、例えば、酸化チタン、ベンガラ、アンチモンレッド、カドミウムイエロー、コバルトブルー、紺青、群青、カーボンブラック、黒鉛等の有色顔料、シリカ、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、タルク等の体質顔料、アクリル樹脂で表面処理したアルミニウム粒子を含有するアルミペースト、表面に酸化チタンと酸化スズと酸化ジルコニウムとがコーティングされたマイカ等のパール顔料を挙げることができる。
上記有機顔料としては、例えば、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料、縮合多環顔料等を挙げることができる。
【0012】
本発明の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物における上記顔料の含有量は、顔料が有機顔料である場合は5~20質量%、好ましくは6~15質量%であり、顔料が無機顔料である場合は30~70質量% 、好ましくは35~60質量%である。
また、顔料が有機顔料と無機顔料を両方併用する場合は、有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物における有機顔料の含有量は5~20質量%であり、かつ、有機顔料に対する無機顔料の質量比{無機顔料(質量)/有機顔料(質量)}が、0<無機顔料(質量)/有機顔料(質量)<7.0となる量が好適である。そして、有機顔料と無機顔料を併用することもできる。
尚、本発明の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物中の有機顔料や無機顔料それぞれの含有量が上記の範囲より少なくなると、インキ組成物としたときの着色力が低下し、グラビア印刷版の浅版化に対応が困難となる傾向がある。一方、上記の範囲より多くなると、粘度が高くなり、グラビア印刷時に印刷物が汚れやすいという問題がある。
【0013】
<バインダー樹脂>
本発明におけるバインダー樹脂は、下記(A)及び/又は(B)のポリウレタンポリウレア樹脂を含有する。
(A)下記(A-1)及び(A-2)から選ばれる1種以上の重量平均分子量20,000~50,000のポリウレタンポリウレア樹脂
(A-1)ジオール化合物とジイソシアネート化合物を反応させて得られるウレタンプレポリマーと、ポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物とを有機溶剤中で、鎖伸長及び反応停止を行って得られるポリウレタンポリウレア樹脂
(A-2)ジオール化合物とジイソシアネート化合物を反応させて得られるウレタンプレポリマーと、反応停止剤とを有機溶媒中で反応させ、次いで、ポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物で、鎖伸長及び反応停止を行って得られるポリウレタンポリウレア樹脂
(B)下記(B-1)及び(B-2)から選ばれる1種以上の重量平均分子量20,000~50,000のポリウレタンポリウレア樹脂
(B-1)ジオール化合物とジイソシアネート化合物を反応させて得られるウレタンプレポリマーと有機溶剤とのウレタンプレポリマー溶液に、ポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物とを加え撹拌混合し、更に水を加えた後、鎖伸長及び反応停止を行って得られるポリウレタンポリウレア樹脂
(B-2)ジオール化合物とジイソシアネート化合物を反応させて得られるウレタンプレポリマーと有機溶剤とのウレタンプレポリマー溶液に、反応停止剤を加え反応させ、次いで、ポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物とを加え撹拌混合し、更に、水を加えた後、鎖伸長及び反応停止を行って得られるポリウレタンポリウレア樹脂
また、ポリウレタンポリウレア樹脂は、末端に第1級アミノ基を有するポリウレタンポリウレア樹脂、及び、末端に第1級アミノ基及び第2級アミノ基を有するポリウレタンポリウレア樹脂、及び、末端に第1級アミノ基がケチミン化されている基を有するポリウレタンポリウレア樹脂、から選ばれた1種以上であることが好ましい。
【0014】
((A)のポリウレタンポリウレア樹脂)
(A)のポリウレタンポリウレア樹脂は(A-1)及び(A-2)から選ばれる1種以上のポリウレタンポリウレア樹脂であり、それらについて以下に説明する。
(A-1)は、ジオール化合物とジイソシアネート化合物を反応させて得られるウレタンプレポリマーを、ポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物で、有機溶剤中で、鎖伸長及びは反応停止を行って得られるポリウレタンポリウレア樹脂である。
(A-2)は、ジオール化合物とジイソシアネート化合物を反応させて得られるウレタンプレポリマーと、反応停止剤とを有機溶媒中で反応させ、次いで、ポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物で、鎖伸長及び反応停止を行って得られるポリウレタンポリウレア樹脂である。
(A-1)及び(A-2)から選ばれる1種以上のポリウレタンポリウレア樹脂は、いずれも、重量平均分子量が20,000~50,000である。そしていずれも25,000以上が好ましく、45,000以下が好ましい。重量平均分子量が20,000未満の場合には、保存安定性が低下する傾向となる。
尚、本発明の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によって測定することができる。一例として、GPC装置としてWater2690(ウォーターズ社製)、カラムとしてPLgel、5μ、MIXED-D(Polymer Laboratories社製)を使用して、展開溶媒としてテトラヒドロフラン、カラム温度25℃、流速1ミリリットル/分、RI検出器、試料注入濃度10ミリグラム/ミリリットル、注入量100マイクロリットルの条件下、クロマトグラフィーを行ない、ポリスチレン換算の重量平均分子量として求めることができる。
そして(A-1)及び(A-2)は共に、末端に第1級アミノ基がケチミン化されている基を有するポリウレタンポリウレア樹脂が好ましい。上記末端に第1級アミノ基がケチミン化されている基を有するポリウレタン樹脂は、一般のインキ組成物に用いられるバインダー樹脂と比較して顔料分散効果が非常に高く、インキ組成物中の顔料濃度を高くしても、インキ組成物の被膜凝集力を低下させることがない。そのため、上記末端に第1級アミノ基がケチミン化されている基を有するポリウレタン樹脂を含有させた有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物は、浅版化された印刷刷版を使用してグラビア印刷しても、良好な印刷濃度、印刷適性、及び、ラミネート適性を有するものとなる。
【0015】
・ジオール化合物
上記(A-1)及び(A-2)にて使用されるジオール化合物としては、高分子ジオール化合物やバイオポリエステルジオール化合物が使用できる。
高分子ジオール化合物としては、例えば、アジピン酸、セバシン酸、無水フタール酸等の二塩基酸の1種又は2種以上と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール等のグリコール類の1種又は2種以上とを縮合反応させて得られるポリエステルジオール類、ポリカプロラクトンジオール類等のポリエステルジオール化合物、さらに、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類、ビスフェノールAのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイド付加物等のポリエーテルジオール化合物等が挙げられる。これらの高分子ジオール化合物を、単独又は2種以上を混合して使用できる。中でも、アジピン酸と3-メチル-1,5-ペンタンジオールを縮合反応させて得られた数平均分子量が1000~8000の3-メチル-1,5-ペンチレンアジペートジオールが好ましく、さらに数平均分子量1000~4000の3-メチル-1,5-ペンチレンアジペートジオールが好ましい。
【0016】
・バイオポリエステルジオール化合物
ポリエステルポリオール化合物としては、環境面を考慮する場合は、バイオポリエステルポリオールを使用する。
バイオポリエステルジオール化合物は、炭素数が2~4の短鎖ジオール成分と、カルボン酸成分とを反応させたバイオポリエステルポリオール化合物であることが好ましい。短鎖ジオール成分およびカルボン酸成分のうち、少なくともいずれか一方が植物由来である。両方が植物由来であることがさらに好ましい。
【0017】
植物由来の炭素数が2~4の短鎖ジオール成分は特に限定されない。一例を挙げると、短鎖ジオール成分は、以下の方法により植物原料から得られる、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、エチレングリコール等であってもよい。これらは併用されてもよい。
【0018】
1,3-プロパンジオールは、植物資源(たとえばトウモロコシ等)を分解してグルコースが得られる発酵法により、グリセロールから3-ヒドロキシプロピルアルデヒド(HPA)を経て、製造され得る。上記発酵法のようなバイオ法で製造された1,3-プロパンジオール化合物は、EO製造法の1,3-プロパンジオール化合物と比較して、安全性の面から乳酸など有用な副生成物が得られ、しかも製造コストも低く抑えることが可能である。1,4-ブタンジオールは、植物資源からグリコールを製造し発酵することによって得られたコハク酸を得て、これを水添することにより製造され得る。また、エチレングリコールは、常法によって得られるバイオエタノールからエチレンを経て製造され得る。
【0019】
植物由来のカルボン酸成分は特に限定されない。一例を挙げると、カルボン酸成分は、セバシン酸、コハク酸、乳酸、グルタル酸、ダイマー酸等である。これらは併用されてもよい。
これらの中でも、カルボン酸成分は、セバシン酸、コハク酸およびダイマー酸からなる群から選択される少なくともいずれか1種を含むことが好ましい。またセバシン酸100質量部に対して、リンゴ酸を0.05~0.5質量部含有しても良い。
【0020】
これらの植物由来の成分から得られたバイオマスウレタンプレポリマーは、環境面から全ウレタンプレポリマー中、固形分換算で、10質量%以上含まれることが好ましく、40質量%以上含まれることがより好ましい。
【0021】
更に上記高分子ジオール化合物に加えて、1,4-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール等のアルカンジオールや、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール等の低分子ジオール化合物を単独又は2種以上混合して併用することもできる。
【0022】
・ジイソシアネート化合物
上記(A-1)及び(A-2)にて使用されるジイソシアネート化合物としては、有機ジイソシアネートが使用できる。
有機ジイソシアネート化合物としては、例えば、1,3-及び/又は1,4-フェニレンジイソシアネート、4,4-ジイソシアナトビフェニル、3,3-ジメチル-4,4-ジイソシアナトビフェニル、トリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物、ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4-ジイソシアネート(水添MDI)、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水添TDI)、イソホロンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、等の脂肪族ジイソシアネート化合物、及び、m-および/またはp-キシリレンジイソシアネート(XDI)、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート化合物が挙げられ、これらの有機ジイソシアネート化合物を、単独又は2種以上混合して使用できる。中でも脂環族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート及び芳香脂肪族ジイソシアネートがより好ましい。
【0023】
<有機溶剤>
本発明における(A-1)や(A-2)のポリウレタンポリウレア樹脂を得る際に使用する有機溶剤としては、特に制限はないが、環境に配慮する観点から、芳香族炭化水素系有機溶剤を含有しないことが好ましい。このような溶剤としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系有機溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル系有機溶剤;n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタンなどの脂肪族炭化水素系有機溶剤;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタンなどの脂環族炭化水素系有機溶剤などが挙げられる。前記溶剤は、少なくとも1種を用いればよく、バインダー樹脂の溶解性や乾燥性などを考慮して、2種以上を組み合わせて用いることができる。
ただし、環境により配慮する観点から、前記溶剤の中でも、ケトン系有機溶剤の使用を抑制することが好ましい。さらに好ましい溶剤として、エステル系溶媒とアルコール系溶媒の混合溶媒が好ましく、酢酸エチルと酢酸プロピルを、質量ベースで酢酸エチル:酢酸プロピル=1~4:1で混合して成る混合エステル系溶媒に、さらにイソプロピルアルコールを混合して成る溶媒が好ましい。中でも、混合エステル系溶媒:イソプロピルアルコール=1~5:1で混合してなる溶媒がさらに好ましい。
【0024】
・ポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物
(ポリアミン化合物)
本発明における(A-1)や(A-2)のポリウレタンポリウレア樹脂を得る際に使用するポリアミン化合物としては、インキ組成物用バインダーとしてのポリウレタンポリウレア樹脂で利用される既知のポリアミン化合物が利用可能であり、例えば、ポリアミン化合物の中でも、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン類、イソホロンジアミン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン等の脂環式ジアミン類、トルイレンジアミン等の芳香族ジアミン類、キシレンジアミン等の芳香脂肪族ジアミン類、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン(アミノエチルエタノールアミン)、N-(2-ヒドロキシエチル)プロピレンジアミン、N,N’-ジ(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン等の水酸基を有するジアミン類、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のジオール化合物が挙げられる。
更に、ポリウレタンポリウレア樹脂がゲル化しない範囲で、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のポリアミン化合物を併用することができる。
【0025】
(ポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物)
ポリアミン化合物を予め過剰量のケトン化合物によりケチミン化したポリアミン化合物が使用できる。特に、ポリアミン化合物としては、イソホロンジアミン及び/又はN-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミンを採用することが好ましい。
ケトン化合物によりケチミン化されたポリアミン化合物は、ケトン化合物の酸素原子が、ポリアミン化合物のアミノ基の窒素原子によって置換された構造を有する。また、使用するケトン化合物としては、アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、ジアセトンアルコールが好ましい。
ポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物は、鎖伸長、反応停止としてはたらく。
このケチミン化反応においてはケトン化合物以外の溶媒を使用しないことが好ましい。尚、その後の鎖伸長反応や、ポリウレタンポリウレア樹脂が臭気を有しないという効果を阻害しない範囲で、ケトン化合物以外の有機溶剤を配合しても良い。
【0026】
・反応停止剤
本発明における(A-2)のポリウレタンポリウレア樹脂を得る際に使用する反応停止剤としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン類、n-プロピルアミン、n-ブチルアミン等のモノアミン化合物、ジ-n-ブチルアミン等のジアルキルアミン類、エタノール等のモノアルコール化合物類等の既知の反応停止剤を使用できる。また、(A-1)においても、(A-2)で使用できる上記反応停止剤を、下記記載のように使用することもできる。
【0027】
((A-1)のポリウレタンポリウレア樹脂、(A-2)のポリウレタンポリウレア樹脂)の製造方法)
(A-1)のポリウレタンポリウレア樹脂は、ジオール化合物とジイソシアネート化合物を反応させて得られるウレタンプレポリマーを有機溶媒に溶解させウレタンプレポリマー溶液とした後、ポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物を加え、鎖伸長及び反応停止を行ってポリウレタンポリウレア樹脂を得ることができる。尚、ウレタンプレポリマー溶液とした後、ポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物と反応停止剤を加え、鎖伸長及び反応停止を行ってポリウレタンポリウレア樹脂を得ることもできる。
(A-2)のポリウレタンポリウレア樹脂は、ジオール化合物とジイソシアネート化合物を反応させて得られるウレタンプレポリマーを有機溶媒に溶解させウレタンプレポリマー溶液とした後、反応停止剤を加えウレタンポリマーと反応させ、次いで、ポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物を加え鎖伸長及び反応停止を行って得られるポリウレタンポリウレア樹脂を得ることができる。
【0028】
前記ジイソシアネート化合物とジオール化合物を反応させる際の、それぞれの使用比率は、イソシアネート基/水酸基の当量比(イソシアネートインデックス)が、通常、1.2~3.0より好ましくは1.3:1~2.0となる範囲である。上記のイソシアネートインデックスが1.2より小さくなると、柔軟なポリウレタンポリウレア樹脂になる傾向があり、インキ組成物を印刷した時に耐ブロッキング性等が低い可能性があり、この場合、他の硬質の樹脂と併用することが必要となる場合がある。
【0029】
前記ジイソシアネート化合物とジオール化合物との反応時において触媒を使用することができる。中でも有機金属系化合物を使用することが好ましく、このような有機金属系化合物として、ジブチルチタニウムジクロライド、テトラブチルチタネート、及びブトキシチタニウムトリクロライド等のチタン化合物、ジブチル錫スルファイド、トリブチル錫スルファイド、トリブチル錫オキシド、ジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫オキシド、ジブチル錫ジブロマイド、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジラウレート、トリブチル錫アセテート、トリブチル錫クロライド、トリエチル錫エトキサイド、トリブチル錫エトキサイド、ジオクチル錫オキシド、トリブチル錫トリクロロアセテート、及び2-エチルヘキサン酸錫等の錫化合物、オレイン酸鉛、2-エチルヘキサン酸鉛、安息香酸鉛、及びナフテン酸鉛等の鉛化合物、さらに、2-エチルヘキサン酸鉄、鉄アセチルアセトネート、安息香酸コバルト、2-エチルヘキサン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、2-エチルヘキサン酸亜鉛、ナフテン酸ジルコニウム等がある。そして、これらの中でもテトラブチルチタネート等のチタン化合物が好ましい。また3級アミン化合物を使用でき、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、1,4-ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン、および1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン-7(DBU)を使用することができる。
【0030】
((B)のポリウレタンポリウレア樹脂)
(B)のポリウレタンポリウレア樹脂は(B-1)及び(B-2)から選ばれる1種以上のポリウレタンポリウレア樹脂であり、それらについて以下に説明する。
(B-1)は、ジオール化合物とジイソシアネート化合物を反応させて得られるウレタンプレポリマーと有機溶剤とのウレタンプレポリマー溶液に、ポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物とを加え撹拌混合し、更に水を加えた後、鎖伸長及び反応停止を行って得られるポリウレタンポリウレア樹脂である。
(B-2)は、ジオール化合物とジイソシアネート化合物を反応させて得られるウレタンプレポリマーと有機溶剤とのウレタンプレポリマー溶液に、反応停止剤を加え反応させ、次いで、ポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物とを加え撹拌混合し、更に、水を加えた後、鎖伸長及び反応停止を行って得られるポリウレタンポリウレア樹脂である。
(B-1)及び(B-2)から選ばれる1種以上のポリウレタンポリウレア樹脂は、いずれも、重量平均分子量が20,000~50,000である。そしていずれも25,000以上が好ましく、45,000以下が好ましい。
そして(B-1)及び(B-2)は共に、末端に第1級アミノ基がケチミン化されている基を有するポリウレタンポリウレア樹脂が好ましい。上記末端に第1級アミノ基がケチミン化されている基を有するポリウレタン樹脂は、一般のインキ組成物に用いられるバインダー樹脂と比較して顔料分散効果が非常に高く、インキ組成物中の顔料濃度を高くしても、インキ組成物の被膜凝集力を低下させることがない。そのため、上記末端に第1級アミノ基がケチミン化されている基を有するポリウレタンポリウレア樹脂を含有させた有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物は、浅版化された印刷刷版を使用してグラビア印刷しても、良好な印刷濃度、印刷適性、及び、ラミネート適性を有するものとなる。ポリウレタンポリウレア樹脂のアミン価は、1~10mgKOH/gであることが好ましい。上記アミン価が1mgKOH/g未満であると、例えばラミネートしたときの、フィルムに対する接着性が低下し、更に、ラミネート適性が低下する可能性があり、上記アミン価が10mgKOH/gを超えると、耐ブロッキング性が低下する可能性がある。
尚、本発明において、上記アミン価は固形分1gあたりのアミン価を意味し、0.1Nの塩酸水溶液を用い、電位差滴定法(例えば、COMTITE(AUTO TITRATOR COM-900、BURET B-900、TITSTATIONK-900)、平沼産業社製)によって測定した後、水酸化カリウムの当量に換算した値をいう。
【0031】
上記ジオール化合物、ジイソシアネート化合物、有機溶剤、反応停止剤、ポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物、ジイソシアネート化合物とジオール化合物との反応時に使用する触媒は、(A)のポリウレタンポリウレア樹脂で記載したものと同様のものが使用できる。
【0032】
(水)
水の使用量は、ポリウレタンポリウレア樹脂溶液の製造方法で得られたポリウレタンポリウレア樹脂が析出しない範囲が好ましい。具体的には、ポリウレタンポリウレア樹脂溶液の固形分に対して、0.2~5.0質量%であることが好ましく、0.4~1.5質量%がより好ましい。
【0033】
((B-1)のポリウレタンポリウレア樹脂、(B-2)のポリウレタンポリウレア樹脂)の製造方法)
(B-1)のポリウレタンポリウレア樹脂は、ジオール化合物とジイソシアネート化合物を反応させて得られるウレタンプレポリマーを有機溶媒に溶解させウレタンプレポリマー溶液とした後、ウレタンプレポリマー溶液にポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物を加え撹拌混合し、更に水を加えた後、鎖伸長及び反応停止を行って得られるポリウレタンポリウレア樹脂を行ってポリウレタンポリウレア樹脂を得ることができる。尚、ウレタンプレポリマー溶液とした後、ポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物と反応停止剤を加え撹拌混合し、鎖伸長及び/又は反応停止を行ってポリウレタンポリウレア樹脂を得ることもできる。
(B-2)のポリウレタンポリウレア樹脂は、ジオール化合物とジイソシアネート化合物を反応させて得られるウレタンプレポリマーを有機溶媒に溶解させウレタンプレポリマー溶液とした後、ウレタンプレポリマー溶液に反応停止剤を加えウレタンポリマーと反応させ、次いで、ポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物とを加え撹拌混合し、更に、水を加えた後、鎖伸長及び反応停止を行ってポリウレタンポリウレア樹脂を得ることができる。
【0034】
前記ジイソシアネート化合物とジオール化合物を反応させる際の、それぞれの使用比率は、イソシアネート基:水酸基の当量比(イソシアネートインデックス)が、通常、1.2:1~3.0:1、より好ましくは1.3:1~2.0:1となる範囲である。上記のイソシアネートインデックスが1.2より小さくなると、柔軟なポリウレタンポリウレア樹脂になる傾向があり、インキ組成物を印刷した時に耐ブロッキング性等が低い可能性があり、この場合、他の硬質の樹脂と併用することが必要となる場合がある。
【0035】
<有機溶剤>
本発明の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物には、上記バインダー樹脂で記載した有機溶剤が使用できる。
さらに、濡れ広がり性を向上させるために有機溶剤100質量%中、グリコールエーテル系有機溶剤を0.1~20質量%含有させることもできる。グリコールエーテル系有機溶剤の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノn-プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノn-プロピルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等が例示できる。
【0036】
<その他化合物>
本発明の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物には、バインダー樹脂として、塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体、塩化ビニル/アクリル共重合体等、密着性向上剤としてロジン及びその誘導体、塩素化ポリプロピレン、ダンマル樹脂、ブロッキング防止剤として、シリカ粒子、ポリエチレンワックス、脂肪酸アミド、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、硝化綿等、顔料分散剤や分散助剤、有機溶剤、水、帯電防止剤、シランカップリング剤を含有させることができる。
【0037】
(バインダー樹脂としての塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体)
バインダー樹脂として、配合する顔料に応じて、密着性を向上させるためにポリウレタンポリウレア樹脂以外に、塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体を併用使用できる。
塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体としては、従来、グラビアインキ組成物等に使用されている塩化ビニルモノマーと酢酸ビニルモノマーを必須成分とし、必要に応じて、プロピオン酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリル酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル等の脂肪酸ビニルモノマー、水酸基等の官能基を有するモノマーを従来からの公知の方法で製造したものが使用できる。
中でも、塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体は、環境に配慮したインキ組成物の有機溶剤系においては、水酸基を有する、好ましくは、水酸基価が50~200mgKOH/gの水酸基を有する塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体が好適である。このような水酸基を有する塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体は、酢酸エステル部分の一部をケン化すること、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーを導入することにより得られる。
酢酸エステル部分の一部をケン化することにより得られた水酸基を有する塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体の場合では、分子中の塩化ビニルの反応部位に基づく構成単位(下記式1)、酢酸ビニルの反応部位に基づく構成単位(下記式2)、および酢酸ビニルの反応部位のケン化に基づく構成単位(下記式3)の比率により樹脂の皮膜物性や溶解挙動が決定される。すなわち、塩化ビニルの反応部位に基づく構成単位は樹脂皮膜の強靭さや硬さを付与し、酢酸ビニルの反応部位に基づく構成単位は接着性や柔軟性を付与し、酢酸ビニルの反応部位のケン化に基づく構成単位は環境に配慮したインキ組成物の有機溶剤系への良好な溶解性を付与する。
式1 -CH2-CHCl-
式2 -CH2-CH(OCOCH3)-
式3 -CH2-CH(OH)-
このような塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体は市販されたものでも良く、例えば、日信化学工業社製のソルバインA、AL、TA5R、TA2、TA3、TAO、TAOL、C、CH、CN、CNL等を挙げることができる。
尚、本発明により得られたポリウレタンポリウレア樹脂を含有したインキ組成物で使用する上記塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体は、後記の有機溶剤に対する溶解性や印刷適性の点から、分子内に各種官能基を有していることが好ましい。
また、上記有機溶剤として環境に配慮した溶剤が使用されるときは、上記塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体は、50~200の水酸基を有していることが好ましい。このような塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体の市販品としては、例えば、日信化学工業社製のソルバインA、AL、TA5R、TA2、TA3、TAO、TAOL等を使用することが好ましい。
【0038】
(バインダー樹脂としての塩化ビニル/アクリル共重合体)
バインダー樹脂として、配合する顔料に応じて、密着性を向上させるためにポリウレタンポリウレア樹脂以外に、塩化ビニル/アクリル共重合体を併用使用できる。
塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体としては、塩化ビニルとアクリルモノマーの共重合体を主成分とするものである。共重合体の形態は特に限定されず、例えば、アクリルモノマーはポリ塩化ビニルの主鎖にブロックないしランダムに組み込まれていても良いし、ポリ塩化ビニルの側鎖にグラフト共重合されていても良い。
アクリルモノマーとして、(メタ)アクリル酸エステル、水酸基を有するアクリルモノマー等を用いることができる。(メタ)アクリル酸エステルの例としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられ、アルキル基は直鎖、分岐、環状のいずれであってもよいが、直鎖アルキル基であることが好ましい。例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシルなどが挙げられる。
水酸基を有するアクリルモノマーの例としては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルや、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレートなどのグリコールモノ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルアクリルアミドなどが挙げられる。
また、アクリルモノマーとして、水酸基以外の官能基を有するアクリルモノマーを用いることもできる。水酸基以外の官能基の例としてはカルボキシル基、アミド結合基、アミノ基、アルキレンオキサイド基等が挙げられる。
上記塩化ビニル/アクリル共重合体樹脂は、重量平均分子量が1万~7万であることが好ましい。
また、上記有機溶剤として環境に配慮した溶剤への溶解性、基材に対する接着性の点から、上記塩化ビニル/アクリル共重合体は、50~200の水酸基を有していることが好ましい。
【0039】
バインダー樹脂としての塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体、塩化ビニル/アクリル共重合体を含有させる場合は、ポリウレタンポリウレア樹脂と(塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体及び/又は塩化ビニル/アクリル共重合体)とを、ポリウレタンポリウレア樹脂/(塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体及び/又は塩化ビニル/アクリル共重合体)=100/0~45/55(質量比)で含有することができる。より好ましくはこの質量比を95/5~70/30としても良い。このような割合でポリウレタンポリウレア樹脂と塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体及び/又は塩化ビニル/アクリル共重合体とを含有することで、本発明により得られた有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物は、フィルムに対するさらに優れた印刷適性及び接着性を有することとなる。更に、ラミネート加工が行われる場合、より優れたラミネート適性を有することとなる。
上記ポリウレタンポリウレア樹脂/(塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体及び/又は塩化ビニル/アクリル共重合体)が45/55を下回る場合、(塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体及び/又は塩化ビニル/アクリル共重合体)の割合が多くなり、本発明により得られた有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物を用いて形成する印刷物が硬くなり、やはり上記フィルムに対する接着性が不充分となる可能性がある。
【0040】
(密着性向上剤としてのロジン及びその誘導体)
ロジンとしては、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン等が挙げられる。一般的にロジンは松から得られる琥珀色、無定形の樹脂であり、天然から得られるため混合物であるが、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、ピマール酸、イソピマール酸、サンダラコピマール酸、デヒドロアビエチン酸という構成成分ごとに単離して用いても良く、本発明ではこれらもロジンと定義する。
ロジン誘導体は、上記のロジンを変性してなる化合物であり、具体的に以下に列挙する。
(1)水素化ロジン:共役二重結合に水素を付加(水素添加)させて、耐候性を向上させたロジンである。
(2)不均化ロジン:不均化とは、二分子のロジンが反応し、共役二重結合を持った二
分子のアビエチン酸が、一方は芳香族を構成し、もう一方は単独二重結合の分子となる変性である。一般に水添ロジンよりは耐候性が劣るが、未処理よりは向上する。
(3)ロジン変性フェノール樹脂:オフセット印刷のインキ組成物には、メインバインダーとしてロジン変性フェノール樹脂が使われることが多い。ロジン変性フェノール樹脂は公知の製造法で得ることができる。
(4)ロジンエステル:ロジンから誘導されるエステル樹脂であり、古くから粘着・接着剤の粘着付与剤(タッキファイヤー)として用いられる。
(5)ロジン変性マレイン酸樹脂:ロジンに無水マレイン酸を付加反応させたもので、必要に応じてグリセリンなどの水酸基含有化合物を、無水酸基とエステル化させグラフトさせたものも含まれる。
(6)重合ロジン:天然樹脂のロジンから誘導される二量化された樹脂酸を含む誘導体である。
その他、公知のロジン、ロジン誘導体も用いることが可能であり、これらは単独だけでなく併用することができる。
さらに、ロジン及びロジン誘導体の酸価は120mgKOH/g以上であることが好ましい。酸価が120mgKOH/g以上であると、ラミネート強度が向上する。さらに好ましくは酸価が160mgKOH/g以上である。また、ロジンおよびロジン誘導体の合計使用量は、本発明の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物の固形分質量%で、3.0質量%以下、好ましくは0.1質量%~3.0質量%である。
【0041】
(密着性向上剤としての塩素化ポリプロピレン)
塩素化ポリプロピレンとしては、塩素化度が20~50のものを使用できる。塩素化度が20未満の塩素化ポリプロピレンは、有機溶剤との相溶性が低下する傾向がある。一方、塩素化度が50を超える場合、塩素化ポリプロピレンは、フィルムに対する接着性が低下する傾向がある。尚、塩素化度は、塩素化ポリプロピレン樹脂中の塩素原子の質量%で定義される。また、塩素化ポリプロピレンは、重量平均分子量が5000~200000の変性されたまたは未変性の塩素化ポリプロピレンであることが好ましい。重量平均分子量が5000未満の場合、塩素化ポリプロピレンは、接着性が低下する傾向がある。一方、重量平均分子量が200000を超える場合、塩素化ポリプロピレンは、有機溶剤への溶解性が低下する傾向がある。また、塩素化ポリプロピレンの使用量は、本発明の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物の固形分質量%で、3.0質量%以下、好ましくは0.1質量%~3.0質量%である。
【0042】
(密着性向上剤としてのダンマル樹脂)
ダンマル樹脂は、ダマール、ダンマーとも表記され、植物由来の天然樹脂の一種である。詳細には、マレーシア、インドネシアなど東南アジアに生育するフタバガキ科またはカンラン科植物から得られる天然樹脂の一種である。使用する際には適当な有機溶剤に溶解させてワニスとする。ダンマル樹脂は塩素を含有しないため、インキ組成物に塩素化ポリオレフィン樹脂を使用する場合に比べ、塩素を排除・低減することができる。また、ダンマル樹脂の使用量は、本発明の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物の固形分質量%で、3.0質量%以下、好ましくは0.1質量%~3.0質量%である。
【0043】
(ブロッキング防止剤としてのシリカ粒子)
シリカとして、天然産、合成品、結晶性、非結晶性、あるいは疎水性、親水性のもの等が挙げられる。シリカ粒子は、平均粒子径1~5μmの範囲のものが好ましい(尚シリカ粒子の平均粒子径は、粒度分布における積算値50%(D50)での粒径を意味し、コールターカウンター法によって求めることができる)。シリカ粒子は、表面に親水性官能基を有する親水性シリカでも良いし、親水性官能基をアルキルシラン等で変性して疎水化した疎水性シリカでも良いが、親水性のものが好ましい。親水性シリカ粒子を含むインキ組成物は重ね印刷時のインキ組成物の濡れ・広がりを促し、重ね印刷効果(以下「トラッピング性」と記載する場合がある)を向上させる効果も有する。シリカ粒子使用量は、本発明の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物中に3.0質量%以下、好ましくは、0.1~3.0質量%、より好ましくは0.2~1.5質量%である。含有量が3.0質量%より多いと、光沢が低下する傾向にある。
【0044】
(ブロッキング防止剤としてのポリエチレンワックス)
ポリエチレンワックスとしては平均粒子径が1.0~20μmの範囲のもの(尚、平均粒子径は、#1:Honeywell社製 Microtrac UPAにて測定した粒径を意味する)を使用する。ポリエチレンワックスの粒子径が1.0μmより小さいと、積層体作成時のすべり性、ブロッキング性が低下し、粒子径が20μmより大きいとトラッピング性が低下する。また、ポリエチレンワックスの含有量は、本発明の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物中に0.1~1.5質量%の範囲が好ましい。含有量が0.1質量%より少ないと目的とする効果が得られず、含有量が1.5質量%より多いと、光沢が低下する傾向にある。
【0045】
(ブロッキング防止剤としての脂肪酸アミド)
脂肪酸アミドとしては、脂肪酸残基とアミド基を有するものであれば特に限定されない。
脂肪酸アミドとしては、例えば、モノアミド、置換アミド、ビスアミド、メチロールアミド、およびエステルアミド等が挙げられ、耐ブロッキング性が向上するため、モノアミド、置換アミド、およびビスアミドからなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。脂肪酸アミドの使用量は、本発明の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物中に、1質量%以下、好ましくは0.01~1質量%の範囲である。
・モノアミド:モノアミドは下記一般式(1)で表される。
一般式(1) R1-CONH2
(式中、R1は脂肪酸からCOOHを除いた残基を表す。)
モノアミドの具体例としては、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等が挙げられる。
・置換アミド:置換アミドは下記一般式(2)で表される。
一般式(2) R2-CONH-R3
(式中、R2およびR3は脂肪酸からCOOHを除いた残基を表し、同一でも異なっていても良い。)
置換アミドの具体例としては、N-オレイルパルミチン酸アミド、N-ステアリルステアリン酸アミド、N-ステアリルオレイン酸アミド、N-オレイルステアリン酸アミド、N-ステアリルエルカ酸アミド等が挙げられる。
・ビスアミド:ビスアミドは下記一般式(3)あるいは一般式(4)で表される。
一般式(3) R4-CONH-R5-HNCO-R6
一般式(4) R7-NHCO-R8-CONH-R9
(式中、R4、R6、R7、およびR9は脂肪酸からCOOHを除いた残基を表し、同一でも異なっていても良く、R5およびR8は炭素数1~10のアルキレン基またはアリーレン基を表す。)
ビスアミドの具体例としては、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’-ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’-ジステアリルセバシン酸アミド、N,N’-ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’-ジオレイルセバシン酸アミド等が挙げられる。
・メチロールアミド:メチロールアミドは下記一般式(5)で表される。
一般式(5) R10-CONHCH2OH
(式中、R10は脂肪酸からCOOHを除いた残基を表す。)
メチロールアミドの具体例としては、メチロールパルミチン酸アミド、メチロールステアリン酸アミド、メチロールベヘン酸アミド、メチロールヒドロキシステアリン酸アミド、メチロールオレイン酸アミド、メチロールエルカ酸アミド等が挙げられる。
・エステルアミド:エステルアミドは、下記一般式(6)で表される。
一般式(6) R11-CONH-R12-OCO-R13
(式中、R11およびR13は脂肪酸からCOOHを除いた残基を表し、同一でも異なっていても良く、R12は炭素数1~10のアルキレン基またはアリーレン基を表す。)
エステルアミドの具体例としては、ステアロアミドエチルステアレート、オレイルアミドエチルウレアレート等が挙げられる。
脂肪酸アミドの融点は、50℃~150℃であることが好ましい。
また、脂肪酸アミドを構成する脂肪酸としては、炭素数12~22の飽和脂肪酸および/または炭素数16~25の不飽和脂肪酸が好ましく、炭素数16~18の飽和脂肪酸および/または炭素数18~22の不飽和脂肪酸がより好ましい。飽和脂肪酸として特に好ましくはラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ヒドロキシステアリン酸であり、不飽和脂肪酸として特に好ましくはオレイン酸、エルカ酸である。
【0046】
(ブロッキング防止剤としてのセルロースアセテートプロピオネート樹脂)
セルロースアセテートプロピオネート樹脂としては、従来からグラビアインキ組成物等に使用されているセルロースアセテートプロピオネート樹脂が使用できる。
セルロースアセテートプロピオネート樹脂は、セルロースを酢酸及びプロピオン酸でトリエステル化した後に加水分解して得られる。一般的にはアセチル基は0.6~2.5質量%、プロピオネート基は42~46質量%、水酸基は1.8~5質量%である樹脂が市販されている。セルロースアセテートプロピオネート樹脂の使用量は、本発明の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物中に、3.0質量%以下の範囲で使用することが好ましい。
【0047】
(ブロッキング防止剤としてのセルロースアセテートブチレート樹脂)
セルロースアセテートブチレート樹脂としては、従来からグラビアインキ組成物等に使用されているセルロースアセテートブチレート樹脂が使用できる。
セルロースアセテートブチレート樹脂は、酢酸および酪酸でトリエステル化した後、加水分解して得られる。一般的にはアセチル化は2~30質量%、ブチリル化は17~53質量%、水酸基は1~5%の樹脂が市販されている。セルロースアセテートブチレート樹脂の使用量は、本発明の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物中に、0.1~3.0質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0048】
(ブロッキング防止剤としての硝化綿)
硝化綿としては、従来からグラビアインキ組成物等に使用されている硝化綿が使用できる。硝化綿としては、天然セルロースと硝酸を反応させて、天然セルロース中の無水グルコピラノース基の6員環中の3個の水酸基を、硝酸基に置換した硝酸エステルとして得られるものである。本発明に使用される硝化綿としては、窒素量10~13%、平均重合度35~90のものが好ましく用いられる。具体例としては、SS1/2、SS1/4、SS1/8、TR1/16、NC RS-2、(KCNC、KOREA CNC LTD社製)等を挙げることができる。硝化綿の使用量は、本発明の製造方法で得られる有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物中に、2.0質量%以下の範囲で使用することが好ましい。
【0049】
(顔料分散剤)
顔料分散剤としては、一般に有機溶剤を含有するグラビアインキ組成物等のインキ組成物に使用できるポリエステル系顔料分散剤が使用できる。具体的には、アジスパーPB821、PB822、PB824、PB881(味の素ファインテクノ社製)、ソルスパース24000、56000(日本ルーブリゾール社製)等が挙げられ、これらの中でも塩基性基含有ポリエステル系高分子分散剤が好適に使用できる。
顔料分散剤の含有量は、全顔料100質量部に対して、通常1~200質量部であることが好ましく、より好ましくは1~60質量部である。
【0050】
(水)
ポリウレタンポリウレア樹脂溶液は水を含有しているが、静電気による印刷不良の緩和、及び、版かぶりの防止やセル再現性の点より、水の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物中の含有量を、10質量%以下が好ましく、さらに好ましくは、0.1~5.0質量%の範囲になるよう使用する。
【0051】
<有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物を製造する方法>
各構成材料を用いて本発明の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物を製造する方法としては、公知の方法が使用できる。具体的には、例えば、ポリウレタンポリウレア樹脂溶液、顔料、必要に応じてバインダー樹脂、有機溶剤及び顔料分散剤等の混合物を、高速ミキサー、ボールミル、サンドミル、アトライター等を用いて練肉し、更に、密着性向上剤、ブロッキング防止剤、有機溶剤、帯電防止剤、水等の材料の残りを添加、混合することにより得ることができる。
【0052】
<本発明の製造方法により得られた有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物によるラミネート印刷物の製造方法>
発明の製造方法により得られた有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物を用いて、ラミネート印刷物を得る方法について説明する。
ラミネート印刷物を得る方法には、少なくとも下記印刷方法を含む。例えば、公知のラミネート用の基材となる樹脂フィルムに、少なくとも、グラビア印刷用インキ組成物をグラビア印刷方式で1回以上印刷を行う。次いで、これらの印刷により形成したグラビア印刷用インキ組成物の表面側(最終ラミネート後において、表層からみて下層側)の任意の個所に、他のグラビア印刷用インキ組成物をグラビア印刷方式で印刷を行い、ドライヤーにより乾燥させる。
上記の方法で得られた印刷物の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物による層の側に、樹脂フィルム等を各種方法によるラミネート加工を施して、包装袋等用のラミネート印刷物を得ることができる。このラミネート加工法としては、印刷物の表面にアンカーコート剤を塗工した後、溶融ポリマーを積層させる押し出しラミネート法、印刷物の表面に接着剤を塗工した後、フィルム状のポリマーを貼合させるドライラミネート法が利用できる。
【0053】
上記押し出しラミネート法は、有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物による層を含む印刷物の表面に、必要に応じて、チタン系、ウレタン系、イミン系、ポリブタジエン系等のアンカーコート剤を塗工した後、既知の押し出しラミネート機によって、溶融ポリマーを積層させる方法であり、更に溶融樹脂を中間層として、他の材料とサンドイッチ状に積層することもできる。
上記押し出しラミネート法で使用する溶融ポリマーとしては、低密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン等、従来使用されていた樹脂が使用できる。その中でも溶融の際に酸化されてカルボニル基が発生し易い低密度ポリエチレンを採用すると本発明の効果が高くなる。
【0054】
また、上記ドライラミネート法は、有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物による層の表面にウレタン系、イソシアネート系等の接着剤を塗工した後、既知のドライラミネート機によってフィルム状のポリマーを貼合する方法である。ドライラミネート法で使用するフィルム用の樹脂としては、ポリエチレン、無延伸ポリプロピレン等が使用できる。
特にレトルト用途で使用される包装材料を得るために、基材と貼合される樹脂フィルムの間にアルミ箔をはさんでラミネートすることもできる。このようなラミネート加工物は、製袋して内容物を詰めた後、ボイル・レトルト用途に利用することもできる。
このとき使用される上記樹脂フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの延伸および無延伸ポリオレフィン、ポリエステル、ナイロン、セロファン、ビニロン等を挙げることができる。さらにこれら樹脂フィルムについては、予め防曇剤の塗工、練り込み、マット剤の表面塗工、練り込みなど樹脂フィルムを加工して得られるフィルムも使用することが可能である。
【実施例0055】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味するものである。また、表中の各材料の分量の数字についても「質量部」である。酸価の単位はmgKOH/gである。
【0056】
<ケチミン溶液1の製造方法>
イソホロンジアミン51部、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン31.2部、及びアセトン174部を混合し、室温で1時間撹拌してケチミン溶液1を得た。
【0057】
<ケチミン溶液2の製造方法>
イソホロンジアミン51部、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン31.2部、及びジエチルケトン258部を混合し、室温で1時間撹拌してケチミン溶液3を得た。
【0058】
ポリウレタン樹脂ワニスをPUと記載する。
<PU-1の製造方法(アセトンでケチミン化)>
撹拌機、冷却管及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量4000の3-メチル-1,5-ペンチレンアジペートジオール400部、イソホロンジイソシアネート33.3部及びテトラブチルチタネート0.04部を仕込み、窒素ガスを導入しながら90~100℃で6時間反応させた。
次いで、酢酸プロピル812部、イソプロピルアルコール203部を加えた後、室温近くまで冷却し、ケチミン溶液1を32.29部加えて50分間撹拌し、重量平均分子量35,000のPU-1(固形分30%)を得た。
【0059】
<PU-2の製造方法(ジエチルケトンでケチミン化)>
撹拌機、冷却管及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量4000の3-メチル-1,5-ペンチレンアジペートジオール400部、イソホロンジイソシアネート33.3部及びテトラブチルチタネート0.04部を仕込み、窒素ガスを導入しながら90~100℃で6時間反応させた。
次いで、酢酸プロピル803部、イソプロピルアルコール201部を加えた後、室温近くまで冷却し、ケチミン溶液2を42.88部加えて50分間撹拌し、重量平均分子量35,000のPU-2(固形分30%)を得た。
【0060】
<PU-3の製造方法(アセトンでケチミン化)>
撹拌機、冷却管及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量4000の3-メチル-1,5-ペンチレンアジペートジオール400部、イソホロンジイソシアネート33.3部及びテトラブチルチタネート0.04部を仕込み、窒素ガスを導入しながら90~100℃で6時間反応させた。
次いで、酢酸プロピル810部、イソプロピルアルコール202部を加えた後、室温近くまで冷却し、ケチミン溶液1を30.78部加えて50分間撹拌し、重量平均分子量40,000のPU-3(固形分30%)を得た。
【0061】
<PU-4の製造方法(アセトンでケチミン化)>
撹拌機、冷却管及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量4000の3-メチル-1,5-ペンチレンアジペートジオール400部、イソホロンジイソシアネート33.3部及びテトラブチルチタネート0.04部を仕込み、窒素ガスを導入しながら90~100℃で6時間反応させた。
酢酸プロピル810部、イソプロピルアルコール202部を加えた後、室温近くまで冷却し、ケチミン溶液1を36.56部加えて50分間撹拌し、重量平均分子量25,000PU-4(固形分30%)を得た。
【0062】
<PU-5の製造方法(モノエタノールアミン、アセトンでケチミン化)>
撹拌機、冷却管及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量4000の3-メチル-1,5-ペンチレンアジペートジオール400部、イソホロンジイソシアネート33.3部及びテトラブチルチタネート0.04部を仕込み、窒素ガスを導入しながら90~100℃で6時間反応させた。
酢酸プロピル810部、イソプロピルアルコール202部を加えた後、室温近くまで冷却し、モノエタノールアミン0.6部を加え15分撹拌後、更に、ケチミン溶液1を32.39部加えて50分間撹拌し、重量平均分子量25,000PU-5(固形分30%)を得た。
【0063】
<PU-6の製造方法(バイオマス、モノエタノールアミン、アセトンでケチミン化)>
撹拌機、冷却管及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量4000のセバシン酸(ひまし油由来)/コハク酸(植物由来)=70/30(質量比)と1,3-プロパンジオール(植物由来)から得られる平均分子量4000のポリエステルジオール400部、イソホロンジイソシアネート33.3部及びテトラブチルチタネート0.04部を仕込み、窒素ガスを導入しながら90~100℃で6時間反応させた。
酢酸プロピル810部、イソプロピルアルコール202部を加えた後、室温近くまで冷却し、モノエタノールアミン0.6部を加え15分撹拌後、更に、ケチミン溶液1を32.39部加えて50分間撹拌し、重量平均分子量25,000PU-6(固形分30%)を得た。
【0064】
<PU-7の製造方法(水、アセトンでケチミン化)>
撹拌機、冷却管及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量4000の3-メチル-1,5-ペンチレンアジペートジオール400部、イソホロンジイソシアネート33.3部及びテトラブチルチタネート0.04部を仕込み、窒素ガスを導入しながら90~100℃で6時間反応させた。
次いで、酢酸プロピル812部、イソプロピルアルコール203部を加えた後、室温近くまで冷却し、ケチミン溶液1を32.29部加えて20分間撹拌し、さらに水を3部加えて15分間撹拌し、重量平均分子量35,000、アミン価6.5のPU-7(固形分30%)を得た。
【0065】
<PU-8の製造方法(水、ジエチルケトンでケチミン化)>
撹拌機、冷却管及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量4000の3-メチル-1,5-ペンチレンアジペートジオール400部、イソホロンジイソシアネート33.3部及びテトラブチルチタネート0.04部を仕込み、窒素ガスを導入しながら90~100℃で6時間反応させた。
次いで、酢酸プロピル803部、イソプロピルアルコール201部を加えた後、室温近くまで冷却し、ケチミン溶液2を42.88部加えて20分間撹拌し、さらに水を3部加えて15分間撹拌し、重量平均分子量35,000、アミン価6.5のPU-8(固形分30%)を得た。
【0066】
<PU-9の製造方法(水、アセトンでケチミン化)>
撹拌機、冷却管及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量4000の3-メチル-1,5-ペンチレンアジペートジオール400部、イソホロンジイソシアネート33.3部及びテトラブチルチタネート0.04部を仕込み、窒素ガスを導入しながら90~100℃で6時間反応させた。
次いで、酢酸プロピル810部、イソプロピルアルコール202部を加えた後、室温近くまで冷却し、ケチミン溶液1を30.78部加えて20分間撹拌し、さらに水を3部加えて15分間撹拌し、重量平均分子量40,000、アミン価5.57のPU-9(固形分30%)を得た。
【0067】
<PU-10の製造方法(水、アセトンでケチミン化)>
撹拌機、冷却管及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量4000の3-メチル-1,5-ペンチレンアジペートジオール400部、イソホロンジイソシアネート33.3部及びテトラブチルチタネート0.04部を仕込み、窒素ガスを導入しながら90~100℃で6時間反応させた。
酢酸プロピル810部、イソプロピルアルコール202部を加えた後、室温近くまで冷却し、ケチミン溶液1を36.56部加えて20分間撹拌し、さらに水を3部加えて15分間撹拌し、50分間撹拌し、重量平均分子量25,000、アミン価8.95のPU-10(固形分30%)を得た。
【0068】
<PU-11の製造方法(水、モノエタノールアミン、アセトンでケチミン化)>
撹拌機、冷却管及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量4000の3-メチル-1,5-ペンチレンアジペートジオール400部、イソホロンジイソシアネート33.3部及びテトラブチルチタネート0.04部を仕込み、窒素ガスを導入しながら90~100℃で6時間反応させた。
酢酸プロピル810部、イソプロピルアルコール201部を加えた後、室温近くまで冷却し、モノエタノールアミン0.6部を加え15分撹拌後、更に、ケチミン溶液1を32.3部加えて20分間撹拌し、さらに水を3部加えて15分間撹拌し、重量平均分子量25,000、アミン価7.74のPU-11(固形分30%)を得た。
【0069】
<PU-12の製造方法(水、バイオマス、モノエタノールアミン、アセトンでケチミン化)>
撹拌機、冷却管及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量4000のセバシン酸(ひまし油由来)/コハク酸(植物由来)=70/30(質量比)と1,3-プロパンジオール(植物由来)から得られる平均分子量4000のポリエステルジオール、イソホロンジイソシアネート33.3部及びテトラブチルチタネート0.04部を仕込み、窒素ガスを導入しながら90~100℃で6時間反応させた。
酢酸プロピル810部、イソプロピルアルコール201部を加えた後、室温近くまで冷却し、モノエタノールアミン0.6部を加え15分撹拌後、更に、ケチミン溶液1を32.35部加えて20分間撹拌し、さらに水を3部加えて15分間撹拌し、重量平均分子量45,000、アミン価7.74のPU-12(固形分30%)を得た。
【0070】
<PU-13の製造方法(ケチミン化なし)>
撹拌機、冷却管及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量4000の3-メチル-1,5-ペンチレンアジペートジオール400部、イソホロンジイソシアネート33.3部及びテトラブチルチタネート0.04部を仕込み、窒素ガスを導入しながら90~100℃で6時間反応させた。
次いで、酢酸プロピル813.5部、イソプロピルアルコール202。8部を加えた後、室温近くまで冷却し、モノエタノールアミン4.3質量部を加えて20分間撹拌後、イソホロンジアミン1.26部、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン0.77部を加え20分撹拌混合し重量平均分子量25,000、アミン価0のPU-13(固形分30%)を得た。
【0071】
<PU-14の製造方法(鎖伸長後、アセトンでケチミン化)>
撹拌機、冷却管及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量4000の3-メチル-1,5-ペンチレンアジペートジオール400部、イソホロンジイソシアネート33.3部及びテトラブチルチタネート0.04部を仕込み、窒素ガスを導入しながら90~100℃で6時間反応させた。
次いで、酢酸プロピル803部、イソプロピルアルコール201部を加えた後、室温近くまで冷却し、イソホロンジアミン6.43部、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン3.93部を加え20分撹拌混合し鎖伸長・反応停止後に、アセトン21.93部加えて60分間撹拌し、重量平均分子量35,000のPU-14(固形分30%)を得た。
【0072】
(塩化ビニル-酢酸ビニル系樹脂)
ソルバインTA-3,日信化学工業社製
【0073】
(顔料)
酸化チタン:R-960、デュポン社製
フタロシアニンブルー:C.I.PB15:4
【0074】
(密着性向上剤)
<ロジン及びその誘導体>
重合ロジン(酸価160mgKOH/g)
【0075】
<塩素化ポリプロピレン>
塩素化度40%、数平均分子量100000の塩素ポリプロピレン(固形分50%)40質量部とメチルシクロヘキサン60質量部を混合撹拌し、固形分20%の塩素化ポリプロピレンワニス1を得た。
【0076】
<ダンマル樹脂>
市販されている天然ダンマル樹脂(固形)50部をメチルシクロヘキサン50部に溶解させて、固形分50%のダンマル樹脂溶液を得た。
【0077】
<シリカ粒子>
平均粒子径:4.5μm
【0078】
<ポリエチレンワックス>
平均粒子径:2.11μm
【0079】
<脂肪酸アミド>
エチレンビスステアリン酸アミド
【0080】
<実施例及び比較例の各インキ組成物の製造例>
顔料、ポリウレタンポリウレア樹脂ワニス(PU-1~PU-14)、シリカ及び溶剤をレッドデビル社製のペイントコンディショナーを用いて混練し、表1に示した実施例及び比較例のインキ組成物を得た。
【0081】
<インキ組成物の経時安定性>
上記で得られた実施例及び比較例のインキ組成物をガラス瓶に採取し、40℃で14日間経時前後の粘度の値の変化(液温が25℃の時の粘度をB型粘度計(東京計器社製)の2号ローターを用いて、30rpmでのインキ粘度測定データから経時粘度安定性の評価を行い、以下の評価基準にしたがって評価した。結果を表1に示す。
○:経時後/経時前の粘度比が1.5未満であった。
×:経時後/経時前の粘度比が1.5以上であった。
【0082】
<印刷>
実施例及び比較例の各インキ組成物の各々100質量部を混合溶剤(酢酸エチル/酢酸プロピル/イソプロピルアルコール=50/25/25、質量比)で希釈し、粘度を離合社製ザーンカップ3号で15秒に調整した。各種フィルムの処理面にグラビア印刷機を利用して、上記各希釈インキ組成物を下記条件で印刷、乾燥して、印刷物を得た。また、得られた印刷物を用いてアミン臭の評価を行った。具体的な評価方法を以下に示す。
(印刷方法・印刷条件)
印刷時の部屋の環境:温度25℃、湿度50%
塗工機:グラビア印刷機
塗工速度:150m/min
刷版:ダイレクト175線 28μm ベタ版
乾燥温度:55℃
【0083】
(各種フィルム)
OPP:コロナ放電処理した二軸延伸ポリプロピレンフィルム、東洋紡社製 P-2161、厚さ25μm
PET(フィルム):片面にコロナ放電処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルム、東洋紡社製、E-5102、厚さ12μm
NY:ナイロンフィルム、東洋紡社製、N-1102、厚さ15μm
【0084】
(印刷物のケチミン臭・アミン臭)
得られた各印刷物の印刷面に鼻を当てて、臭気を官能試験で評価した。結果を表1に示す。
A:ケチミン臭・アミン臭が認められない。
B:ケチミン臭・アミン臭が若干認められる。
C:ケチミン臭・アミン臭が認められる。
【0085】
(耐ブロッキング性)
各試験インキの印刷後1日経過した各フィルム印刷物の印刷面と、各フィルム未処理面とを合わせ、400g/cm2の荷重をかけて40℃で12時間放置した後、各フィルムを剥がした時の様子から耐ブロッキング性を評価した。
A:フィルムを剥がす際に全く抵抗が無く、また、印刷面からインキが剥離しないもの。
B:フィルムを剥がす際に抵抗はあるが、印刷面からインキが剥離しないもの。
C:フィルムを剥がす際に抵抗があり、印刷面からインキが剥離するもの。
【0086】
(ガイドロール取られ)
滑り性については、ガイドロール取られにより評価した。
下記の方法から、印刷後、ガイドロールにインキが付着するかどうか(ガイドロール取られ)試験を行い、印刷適性を評価した。尚、一旦、ガイドロールに付着したインキが、印刷面に再転移して汚れが発生するため、「ガイドロール取られ」が発生する場合は、美粧印刷物を得るのに対して悪影響を及ぼす。
グラビア印刷機のガイドロールによる印刷物インキ塗膜の脱落の有無を目視により評価した。
A:無いもの
B:少しあるもの
C:有るもの
【0087】
(接着性)
得られた各印刷物の印刷直後の印刷面に親指の腹部で2回こすった後に、セロファンテープを貼り付けて、剥がしたときにインキ皮膜が被着体から剥がれる面積の比率から、接着性を評価した。
A:全く剥がれない。
B:剥がれる面積が20%未満である。
C:剥がれる面積が20%以上である。
【0088】
(耐レトルト性)
印刷後1日経過したNY、PETに印刷した各印刷物に、固形分で2.0g/m2となる量のウレタン系接着剤(タケラックA-616/タケネートA-65、三井化学ポリウレタン社製)を塗布した後、ドライラミネート機で無延伸ポリプロピレンフィルム(RXC-3、厚さ60μm、東セロ社製)を貼り合わせ、40℃で3日放置してドライラミネート物を得た。このドライラミネート物を製袋し、中に水90質量%、サラダ油10質量%の混合物を詰めて溶封後、135℃の加圧熱水中に30分間浸漬した時のラミネートフィルムの浮きの有無から耐レトルト性を評価した。尚、評価の基準はボイル適性と同じとした。
A:全くラミ浮きが見られないもの。
B:ピンホール状もしくは一部に細くて短いラミ浮きがみられるもの。
C:長い筋状のラミ浮きが全面にみられるもの。
-:印刷に使用したフィルム自体にレトルト適性がないため、レトルト適性試験を行なわず。
【0089】
【0090】
本発明に沿った例である各実施例の結果によれば、印刷物にはアミン臭・ケチミン臭が無く、インキ組成物は経時安定性に優れ、ガイドロールの汚れも無かった。さらに各種フィルムに対する耐ブロッキング性、接着性及び耐レトルト性に優れていた。
これに対して、ケチミン化をしていないポリウレタンポリウレア樹脂を使用した比較例1及び3によれば、印刷物にはアミン臭・ケチミン臭があり、インキ組成物は経時安定性に劣っていた。さらに各種フィルムに対する接着性及び耐レトルト性は特に優れていなかった。
さらに、鎖伸長後にアセトンでケチミン化したポリウレタンポリウレア樹脂を使用した比較例2及び4によれば、印刷物にはアミン臭・ケチミン臭があり、インキ組成物は経時安定性に劣っていた。