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特開2022-157068グラビア印刷用インキ組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157068
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】グラビア印刷用インキ組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/02 20140101AFI20221006BHJP
   C09D 11/033 20140101ALI20221006BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20221006BHJP
   C08G 18/32 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
C09D11/02
C09D11/033
C08G18/10
C08G18/32 053
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021061090
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100214363
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】梅林 尚史
(72)【発明者】
【氏名】赤坂 健太
(72)【発明者】
【氏名】金森 亮太
(72)【発明者】
【氏名】原田 淳一
【テーマコード(参考)】
4J034
4J039
【Fターム(参考)】
4J034BA02
4J034BA03
4J034BA08
4J034BA09
4J034CA04
4J034CB03
4J034CC23
4J034CC26
4J034CC45
4J034CC61
4J034CC62
4J034CC65
4J034DA01
4J034DB04
4J034DF01
4J034DF16
4J034DF20
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC17
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC71
4J034JA02
4J034JA03
4J034JA15
4J034JA41
4J034JA42
4J034KA01
4J034KB02
4J034KC16
4J034KD04
4J034KE02
4J034LA16
4J034QA03
4J034RA07
4J034SA02
4J039AE04
4J039CA07
4J039DA01
4J039EA09
4J039GA03
(57)【要約】
【課題】インキ組成物として経時安定性を向上させ、同時にインキ組成物自体や、印刷後の印字部の臭気の残留を防止した、グラビア印刷用インキ組成物の製造方法を提供こと。
【解決手段】下記A~Eの工程を有するグラビア印刷用インキ組成物の製造方法。
A.有機ジイソシアネート化合物と高分子ジオール化合物からウレタンプレポリマーを合成する工程、
B.ウレタンプレポリマーと有機溶媒とを混合しウレタンプレポリマー溶液を得る工程、
C.ポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物と加え混合する工程、
D.水を下記条件で加えた後、鎖伸長及び/又は反応停止を行ない、グラビア印刷用ポリウレタンポリウレア樹脂溶液を得る工程、
条件:グラビア印刷用ポリウレタンポリウレア樹脂の製造方法で得られたグラビ
ア印刷用ポリウレタンポリウレア樹脂が析出しない範囲
E.グラビア印刷用ポリウレタンポリウレア樹脂溶液に着色剤を添加する工程
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記A~Eの工程を有するグラビア印刷用インキ組成物の製造方法。
A.有機ジイソシアネート化合物と高分子ジオール化合物からウレタンプレポリマーを合成する工程、
B.ウレタンプレポリマーと有機溶媒とを混合しウレタンプレポリマー溶液を得る工程、
C.ポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物と加え混合する工程、
D.水を下記条件で加えた後、鎖伸長及び/又は反応停止を行ない、グラビア印刷用ポリウレタンポリウレア樹脂溶液を得る工程、
条件:グラビア印刷用ポリウレタンポリウレア樹脂の製造方法で得られたグラビ
ア印刷用ポリウレタンポリウレア樹脂が析出しない範囲
E.グラビア印刷用ポリウレタンポリウレア樹脂溶液に着色剤を添加する工程
【請求項2】
有機ジイソシアネート化合物と高分子ジオールの使用比率について、イソシアネート基:水酸基の当量比(イソシアネートインデックス)が、NCO基/OH基=1.2~3.0である請求項1に記載のグラビア印刷用インキ組成物の製造方法。
【請求項3】
有機溶剤は、エステル系有機溶剤とアルコール系有機溶剤の混合溶剤又はエステル系有機溶剤である請求項1又は2に記載のグラビア印刷用インキ組成物の製造方法。
【請求項4】
ケチミン化された化合物が、ポリアミン化合物のアミノ基がアセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン及びジアセトンアルコールから選ばれる1種以上のケトン化合物によりケチミン化された化合物である請求項1~3のいずれかに記載のグラビア印刷用インキ組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラビア印刷用インキ組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のように、ウレタンプレポリマーに対して鎖伸長及び反応停止し、次いで得られたポリウレタン樹脂の溶液に対して、直接アセトンを添加して、ポリウレタン樹脂の末端のアミノ基にケトン化合物を反応させて、ケチミン化を行うことが知られている。このようなケチミン化ポリウレタン樹脂の合成方法により得られたケチミン化ポリウレタン樹脂は、臭気が低減されているとともに、粘度安定性に優れるとされている。
この合成方法により得られたケチミン化ポリウレタン樹脂は、アセトンによる刺激臭が低減されるが、樹脂組成物中に存在する低分子量の鎖伸長剤や反応停止剤もケチミン化される。
その結果、ケチミン化された低分子量の鎖伸長剤や反応停止剤に起因する別の臭気が発生するため、結局のところ、樹脂組成物全体としての臭気を十分に抑制できなかった。
さらに、保存時にポリウレタンが低分子量化することが抑制されると粘度安定性は向上する。しかし、除去しきれずに残留するケチミン化された低分子量の鎖伸長剤や反応停止剤によって、インキ組成物や塗料等としたときに、これらの組成物の経時安定性が低下する問題が生じる。
また、従来公知の製造方法で得られたポリウレタン樹脂は、分子量が小さい程、反応が不均一となるので、未反応の低分子量の鎖伸長剤が残存することになる。その結果、ポリウレタン樹脂を用いた印刷インキ組成物、印刷物は、アミン臭気を有するものとなり、このようなポリウレタン樹脂を用い、さらに顔料を分散させた場合、分散性が低下する傾向を有していた。
【0003】
また特許文献2及び3に記載のように、ジアミンとケトンから得たケチミン化合物を、水系溶媒下にてウレタンプレポリマーと反応させることにより、スラッシュ成形等用のポリウレタンポリウレア樹脂粉末を得ることは知られている。
特に、特許文献2には、水及び分散安定剤存在下でウレタンプレポリマーをケトンの2分子縮合物で鎖伸長させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-2184号公報
【特許文献2】特開2012-251010号公報
【特許文献3】特開2011-208128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、インキ組成物として経時安定性を向上させ、同時にインキ組成物自体や、印刷後の印字部の臭気の残留を防止した、グラビア印刷用インキ組成物の製造方法を提供ことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、特定のグラビア印刷用インキ組成物の製造方法を採用することにより、上記課題を解決し得ることを見出した。
すなわち、本発明は、
1.下記A~Eの工程を有するグラビア印刷用インキ組成物の製造方法。
A.有機ジイソシアネート化合物と高分子ジオール化合物からウレタンプレポリマーを合成する工程、
B.ウレタンプレポリマーと有機溶媒とを混合しウレタンプレポリマー溶液を得る工程、
C.ポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物と加え混合する工程、
D.水を下記条件で加えた後、鎖伸長及び/又は反応停止を行ない、グラビア印刷用ポリウレタンポリウレア樹脂溶液を得る工程、
条件:グラビア印刷用ポリウレタンポリウレア樹脂の製造方法で得られたグラビア印刷用ポリウレタンポリウレア樹脂が析出しない範囲
E.グラビア印刷用ポリウレタンポリウレア樹脂溶液に着色剤を添加する工程
2.有機ジイソシアネート化合物と高分子ジオールの使用比率について、イソシアネート基:水酸基の当量比(イソシアネートインデックス)が、NCO基/OH基=1.2~3.0である1に記載のグラビア印刷用インキ組成物の製造方法。
3.有機溶剤は、エステル系有機溶剤とアルコール系有機溶剤の混合溶剤又はエステル系有機溶剤である1又は2に記載のグラビア印刷用インキ組成物の製造方法。
4.ケチミン化された化合物が、ポリアミン化合物のアミノ基がアセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、ジアセトンアルコールから選ばれる1種以上のケトン化合物によりケチミン化された化合物である1~3のいずれかに記載のグラビア印刷用インキ組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、インキ組成物としたときの経時安定性に優れ、アミン及びケチミン特有の臭気を発生させず、得られた印刷物がアミン及びケチミン特有の臭気を有しないグラビア印刷用インキ組成物を得る効果を発揮できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明のグラビア印刷用インキ組成物の製造方法を説明する。
下記A~Eの工程を有するグラビア印刷用インキ組成物の製造方法。
A.有機ジイソシアネート化合物と高分子ジオール化合物からウレタンプレポリマーを合成する工程、
B.ウレタンプレポリマーと有機溶媒とを混合しウレタンプレポリマー溶液を得る工程、
C.ウレタンプレポリマー溶液と、ポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物とを、混合する工程、
D.水を下記条件で加えた後、鎖伸長及び/又は反応停止を行ない、グラビア印刷用ポリウレタンポリウレア樹脂溶液を得る工程、
条件:グラビア印刷用ポリウレタンポリウレア樹脂の製造方法で得られたグラビア印刷用ポリウレタンポリウレア樹脂が析出しない範囲
E.グラビア印刷用ポリウレタンポリウレア樹脂溶液に着色剤を添加する工程、
【0009】
<A.有機ジイソシアネート化合物と高分子ジオール化合物からウレタンプレポリマーを合成する工程>
ウレタンプレポリマーを合成する工程は、以下の有機ジイソシアネート化合物と、高分子ジオール化合物を反応させる工程からなる。
(有機ジイソシアネート化合物)
有機ジイソシアネート化合物としては、例えば、1,3-及び/又は1,4-フェニレンジイソシアネート、4,4-ジイソシアナトビフェニル、3,3-ジメチル-4,4-ジイソシアナトビフェニル、トリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物、ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4-ジイソシアネート(水添MDI)、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水添TDI)、イソホロンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物、及び、m-および/またはp-キシリレンジイソシアネート(XDI)、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート化合物が挙げられ、これらの有機ジイソシアネート化合物を、単独又は2種以上混合して使用できる。中でも脂環族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート及び芳香脂肪族ジイソシアネートがより好ましい。
【0010】
(高分子ジオール化合物)
高分子ジオール化合物としては、例えば、アジピン酸、セバシン酸、無水フタール酸等の二塩基酸の1種又は2種以上と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール等のグリコール類の1種又は2種以上とを縮合反応させて得られるポリエステルジオール類、ポリカプロラクトンジオール類等のポリエステルジオール化合物、さらに、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類、ビスフェノールAのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイド付加物等のポリエーテルジオール化合物等が挙げられる。これらの高分子ジオール化合物を、単独又は2種以上を混合して使用できる。中でも、アジピン酸と3-メチル-1,5-ペンタンジオールを縮合反応させて得られた数平均分子量が1000~8000の3-メチル-1,5-ペンチレンアジペートジオールが好ましく、さらに数平均分子量1000~4000の3-メチル-1,5-ペンチレンアジペートジオールが好ましい。
【0011】
(バイオポリエステルジオール化合物)
高分子ジオール化合物としては、環境面を考慮する場合は、バイオポリエステルポリオールを使用する。
バイオポリエステルジオール化合物は、炭素数が2~4の短鎖ジオール成分と、カルボン酸成分とを反応させたバイオポリエステルポリオール化合物であることが好ましい。短鎖ジオール成分およびカルボン酸成分のうち、少なくともいずれか一方が植物由来であるか、両方が植物由来であることがさらに好ましい。
【0012】
植物由来の炭素数が2~4の短鎖ジオール成分は特に限定されない。一例を挙げると、短鎖ジオール成分は、以下の方法により植物原料から得られる、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、エチレングリコール等であってもよい。これらは併用されてもよい。
【0013】
1,3-プロパンジオールは、植物資源(たとえばトウモロコシ等)を分解してグルコースが得られる発酵法により、グリセロールから3-ヒドロキシプロピルアルデヒド(HPA)を経て、製造され得る。上記発酵法のようなバイオ法で製造された1,3-プロパンジオール化合物は、EO製造法の1,3-プロパンジオール化合物と比較して、安全性の面から乳酸など有用な副生成物が得られ、しかも製造コストも低く抑えることが可能である。1,4-ブタンジオールは、植物資源からグリコールを製造し発酵することによって得られたコハク酸を得て、これを水添することにより製造され得る。また、エチレングリコールは、常法によって得られるバイオエタノールからエチレンを経て製造され得る。
【0014】
植物由来のカルボン酸成分は特に限定されない。一例を挙げると、カルボン酸成分は、セバシン酸、コハク酸、乳酸、グルタル酸、ダイマー酸等である。これらは併用されてもよい。
これらの中でも、カルボン酸成分は、セバシン酸、コハク酸およびダイマー酸からなる群から選択される少なくともいずれか1種を含むことが好ましい。またセバシン酸100質量部に対して、リンゴ酸を0.05~0.5質量部含有しても良い。
【0015】
これらの植物由来の成分から得られたバイオマスポリウレタンプレポリマーは、環境面から、得られた全ポリウレタンプレポリマー中、固形分換算で、10質量%以上含まれることが好ましく、40質量%以上含まれることがより好ましい。
【0016】
(その他のジオール化合物)
更に上記高分子ジオール化合物に加えて、1,4-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール等のアルカンジオールや、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール等の低分子ジオール化合物を単独又は2種以上混合して併用することもできる。
【0017】
上記有機ジイソシアネート化合物と高分子ジオール化合物を反応させる際の、それぞれの使用比率は、イソシアネート基:水酸基の当量比(イソシアネートインデックス)が、好ましくは1.2:1~3.0:1であり、より好ましくは1.3:1~2.0:1である。
上記のイソシアネートインデックスが1.2より小さくなると、柔軟なポリウレタンポリウレア樹脂になる傾向があり、インキ組成物を印刷した時に耐ブロッキング性等が低い可能性があり、この場合、他の硬質の樹脂と併用することが必要となる場合がある。
【0018】
(有機ジイソシアネート化合物と高分子ジオール化合物との反応)
有機ジイソシアネート化合物と高分子ジオール化合物との反応時において触媒を使用することができる。
中でも有機金属系化合物を使用することが好ましく、このような有機金属系化合物として、ジブチルチタニウムジクロライド、テトラブチルチタネート、及びブトキシチタニウムトリクロライド等のチタン化合物、ジブチル錫スルファイド、トリブチル錫スルファイド、トリブチル錫オキシド、ジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫オキシド、ジブチル錫ジブロマイド、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジラウレート、トリブチル錫アセテート、トリブチル錫クロライド、トリエチル錫エトキサイド、トリブチル錫エトキサイド、ジオクチル錫オキシド、トリブチル錫トリクロロアセテート、及び2-エチルヘキサン酸錫等の錫化合物、オレイン酸鉛、2-エチルヘキサン酸鉛、安息香酸鉛、及びナフテン酸鉛等の鉛化合物、さらに、2-エチルヘキサン酸鉄、鉄アセチルアセトネート、安息香酸コバルト、2-エチルヘキサン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、2-エチルヘキサン酸亜鉛、ナフテン酸ジルコニウム等がある。そして、これらの中でもテトラブチルチタネート等のチタン化合物が好ましい。
また3級アミン化合物を使用でき、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、1,4-ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン、および1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン-7(DBU)を使用することができる。
【0019】
<B.ウレタンプレポリマーと有機溶媒とを撹拌混合しウレタンプレポリマー溶液を得る工程>
(有機溶媒)
この工程で使用する有機溶剤は特に制限はないが、環境に配慮する観点から、芳香族炭化水素系有機溶剤を含有しないことが好ましい。このような溶剤としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系有機溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル系有機溶剤;n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタンなどの脂肪族炭化水素系有機溶剤;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタンなどの脂環族炭化水素系有機溶剤などが挙げられる。前記溶剤は、少なくとも1種を用いればよく、バインダー樹脂の溶解性や乾燥性などを考慮して、2種以上を組み合わせて用いることができる。ただし、さらなる環境への配慮の観点から、前記溶剤の中でも、ケトン系有機溶剤の使用を抑制することが好ましい。さらに好ましい溶剤として、エステル系溶媒とアルコール系溶媒の混合溶媒又はエステル系有機溶剤が好ましく、エステル系溶媒とアルコール系溶媒の混合溶媒を使用する場合は、酢酸エチルと酢酸プロピルを、質量ベースで酢酸エチル:酢酸プロピル=1~4:1で混合して成る混合エステル系溶媒と、イソプロピルアルコールを混合エステル系溶媒:イソプロピルアルコール=1~5:1で混合してなる溶媒が更に好ましい。
【0020】
(混合)
公知の撹拌装置を用い、任意の撹拌条件で、上記ウレタンプレポリマーに上記有機溶媒を加えて混合しウレタンプレポリマー溶液を得る。
【0021】
<C.ウレタンプレポリマー溶液と、ポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物とを、撹拌混合する工程>
(ポリアミン化合物)
ポリアミン化合物としては、インキ組成物用バインダーとしてのポリウレタンポリウレア樹脂で利用される既知のポリアミン化合物が利用可能であり、例えば、ポリアミン化合物の中でも、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン類、イソホロンジアミン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン等の脂環式ジアミン類、トルイレンジアミン等の芳香族ジアミン類、キシレンジアミン等の芳香脂肪族ジアミン類、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン(アミノエチルエタノールアミン)、N-(2-ヒドロキシエチル)プロピレンジアミン、N,N’-ジ(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン等の水酸基を有するジアミン類が挙げられる。
更に、ポリウレタンポリウレア樹脂がゲル化しない範囲で、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のポリアミン化合物を併用することができる。
【0022】
(ポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物)
ポリアミン化合物を予め過剰量のケトン化合物によりケチミン化したポリアミン化合物は鎖伸長剤及び/又は反応停止剤として使用できる。特に、ポリアミン化合物としては、イソホロンジアミン及び/又はN-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミンを採用することが好ましい。
ケトン化合物によりケチミン化されたポリアミン化合物は、ケトン化合物の酸素原子が、ポリアミン化合物のアミノ基の窒素原子によって置換された構造を有する。また、使用するケトン化合物としては、アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、ジアセトンアルコールが好ましい。
このケチミン化反応においてはケトン化合物以外の溶媒を使用しないことが好ましい。
尚、その後の鎖伸長・反応停止反応や、ポリウレタンポリウレア樹脂が臭気を有しないという効果を阻害しない範囲で、無溶剤条件下ではなく、極性有機溶媒を配合しても良い。
【0023】
(混合)
ウレタンプレポリマー溶液と、ポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物により無溶剤条件下でケチミン化された化合物を、均一に混合する。
【0024】
この工程において、反応停止剤を含有させることができる。反応停止剤としては。てモノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン類、n-プロピルアミン、n-ブチルアミン等のモノアミン化合物、ジ-n-ブチルアミン等のジアルキルアミン類、エタノール等のモノアルコール化合物類等の反応停止剤であるが、下記に記載のB工程とCの工程の間の工程でBの工程のウレタンプレポリマー溶液に反応停止剤を加えウレタンプレポリマーのイソシアネートの一部と反応させることが好ましい。
【0025】
<D.水を下記条件で加えた後、鎖伸長及び/又は反応停止を行ない、グラビア印刷用ポリウレタンポリウレア樹脂溶液を得る工程>
(水)
下記の鎖伸長及び/又は反応停止を行う工程で加える水の量は、グラビア印刷用ポリウレタンポリウレア樹脂溶液の製造方法で得られたグラビア印刷用ポリウレタンポリウレア樹脂が析出しない程度の範囲が好ましい。具体的には、グラビア印刷用ポリウレタンポリウレア樹脂溶液の固形分に対して、0.2~5.0質量%であることが好ましく、0.4~1.5質量%がより好ましい。
【0026】
(鎖伸長及び/又は反応停止)
さらに上記ウレタンプレポリマーと有機溶媒とを撹拌混合した後、ポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物により無溶剤条件下でケチミン化された化合物を添加し均一撹拌混合した溶液に水を添加し、鎖伸長及び/又は反応停止を行うことによりグラビア印刷用ポリウレタンポリウレア樹脂溶液を得ることができる。
この製造方法で得られたグラビア印刷用ポリウレタンポリウレア樹脂のアミン価は1~10mgKOH/gであることが好ましい。上記アミン価が1mgKOH/g未満であると、例えばラミネート用グラビアインキ組成物としたときの、フィルムに対する接着性が低下し、更に、ラミネート適性が低下する可能性があり、上記アミン価が10mgKOH/gを超えると、耐ブロッキング性が低下する可能性がある。尚、本発明において、上記アミン価は固形分1gあたりのアミン価を意味し、0.1Nの塩酸水溶液を用い、電位差滴定法(例えば、COMTITE(AUTO TITRATOR COM-900、BURET B-900、TITSTATIONK-900)、平沼産業社製)によって測定した後、水酸化カリウムの当量に換算した値をいう。
【0027】
Bの工程とCの工程の間に、Bの工程のウレタンプレポリマー溶液に反応停止剤を加えウレタンプレポリマーのイソシアネートの一部と反応させる工程を有してもよい。
(反応停止剤)
反応停止剤としては、。てモノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン類、n-プロピルアミン、n-ブチルアミン等のモノアミン化合物、ジ-n-ブチルアミン等のジアルキルアミン類、エタノール等のモノアルコール化合物類等の既知の反応停止剤が使用できる
【0028】
<E.グラビア印刷用ポリウレタンポリウレア樹脂溶液に着色剤を含有させる工程>
本発明において、着色剤として顔料及び/又は染料を使用できる。これら着色剤は、グラビア印刷用ポリウレタンポリウレア樹脂溶液をグラビア印刷用インキにしたときに、着色剤のインキ組成物中での含有量が、1~50質量%程度であることが好ましい。
(顔料)
本発明にて使用できる顔料は、例えば、印刷インキで一般的に用いられている各種無機顔料、有機顔料あるいは体質顔料である。上記無機顔料としては、例えば、酸化チタン、ベンガラ、アンチモンレッド、カドミウムイエロー、コバルトブルー、紺青、群青、カーボンブラック、黒鉛等の有色顔料、体質顔料としては、シリカ粒子、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、タルク等を挙げることができる。なかでも白色顔料として酸化チタンを使用することが好ましい。上記有機顔料としては、例えば、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料、縮合多環顔料等を挙げることができる。
【0029】
(染料)
本発明にて使用できる染料は、例えば、グラビア印刷用インキ組成物で一般的に用いられている各種染料である。そのような染料として、えば、アゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、ジクトピロロピロール系、イソインドリン系等を挙げることができる。
【0030】
(その他化合物)
グラビア印刷用ポリウレタンポリウレア樹脂溶液に着色剤を含有させる工程には、バインダー樹脂として、塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体、塩化ビニル/アクリル共重合体等、密着性向上剤としてロジン及びその誘導体、塩素化ポリプロピレン、ダンマル樹脂、ブロッキング防止剤として、シリカ粒子、ポリエチレンワックス、脂肪酸アミド、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、硝化綿等、顔料分散剤や分散助剤、有機溶剤、水、帯電防止剤、シランカップリング剤を含有させることができる。
【0031】
・バインダー樹脂としての塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体
塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体としては、従来、グラビアインキ組成物等に使用されている塩化ビニルモノマーと酢酸ビニルモノマーを必須成分とし、必要に応じて、プロピオン酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリル酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル等の脂肪酸ビニルモノマー、水酸基等の官能基を有するモノマーを従来からの公知の方法で製造したものが使用できる。
中でも、塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体は、環境に配慮したインキ組成物の有機溶剤系においては、水酸基を有する、好ましくは、水酸基価が50~200mgKOH/gの水酸基を有する塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体が好適である。このような水酸基を有する塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体は、酢酸エステル部分の一部をケン化すること、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーを導入することにより得られる。
酢酸エステル部分の一部をケン化することにより得られた水酸基を有する塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体の場合では、分子中の塩化ビニルの反応部位に基づく構成単位(下記式1)、酢酸ビニルの反応部位に基づく構成単位(下記式2)、および酢酸ビニルの反応部位のケン化に基づく構成単位(下記式3)の比率により樹脂の皮膜物性や溶解挙動が決定される。すなわち、塩化ビニルの反応部位に基づく構成単位は樹脂皮膜の強靭さや硬さを付与し、酢酸ビニルの反応部位に基づく構成単位は接着性や柔軟性を付与し、酢酸ビニルの反応部位のケン化に基づく構成単位は環境に配慮したインキ組成物の有機溶剤系への良好な溶解性を付与する。
式1 -CH2-CHCl-
式2 -CH2-CH(OCOCH3)-
式3 -CH2-CH(OH)-
このような塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体は市販されたものでも良く、例えば、日信化学工業社製のソルバインA、AL、TA5R、TA2、TA3、TAO、TAOL、C、CH、CN、CNL等を挙げることができる。
尚、本発明により得られたポリウレタンポリウレア樹脂を含有したインキ組成物で使用する上記塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体は、後記の有機溶剤に対する溶解性や印刷適性の点から、分子内に各種官能基を有していることが好ましい。
また、上記有機溶剤として環境に配慮した溶剤が使用されるときは、上記塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体は、水酸基価が50~200mgKOH/gの水酸基を有していることが好ましい。このような塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体の市販品としては、例えば、日信化学工業社製のソルバインA、AL、TA5R、TA2、TA3、TAO、TAOL等を使用することが好ましい。
【0032】
・バインダー樹脂としての塩化ビニル/アクリル共重合体
塩化ビニルとアクリルモノマーの共重合体を主成分とするものである。共重合体の形態は特に限定されず、例えば、アクリルモノマーはポリ塩化ビニルの主鎖にブロックないしランダムに組み込まれていても良いし、ポリ塩化ビニルの側鎖にグラフト共重合されていても良い。
アクリルモノマーとして、(メタ)アクリル酸エステル、水酸基を有するアクリルモノマー等を用いることができる。(メタ)アクリル酸エステルの例としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられ、アルキル基は直鎖、分岐、環状のいずれであってもよいが、直鎖アルキル基であることが好ましい。例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシルなどが挙げられる。
水酸基を有するアクリルモノマーの例としては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルや、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレートなどのグリコールモノ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルアクリルアミドなどが挙げられる。
また、アクリルモノマーとして、水酸基以外の官能基を有するアクリルモノマーを用いることもできる。水酸基以外の官能基の例としてはカルボキシル基、アミド結合基、アミノ基、アルキレンオキサイド基等が挙げられる。
上記塩化ビニル/アクリル共重合体樹脂は、質量重量平均分子量が1万~7万であることが好ましい。
また、上記有機溶剤として環境に配慮した溶剤への溶解性、基材に対する接着性の点から、上記塩化ビニル/アクリル共重合体は、水酸基価が50~200mgKOH/gの水酸基を有していることが好ましい。
【0033】
バインダー樹脂としての塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体、塩化ビニル/アクリル共重合体は、配合する顔料に応じて、密着性を向上させるためにグラビア印刷用ポリウレタンポリウレア樹脂溶液に着色剤を含有させる工程に含有させることができる。
バインダー樹脂としての塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体、塩化ビニル/アクリル共重合体を含有させる場合は、グラビア印刷用ポリウレタンポリウレア樹脂と(塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体及び/又は塩化ビニル/アクリル共重合体)とを、グラビア印刷用ポリウレタンポリウレア樹脂/(塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体及び/又は塩化ビニル/アクリル共重合体)=100/0~45/55(質量比)で含有することができる。より好ましくはこの質量比を95/5~70/30としても良い。このような割合でグラビア印刷用ポリウレタンポリウレア樹脂と塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体及び/又は塩化ビニル/アクリル共重合体とを含有することで、本発明により得られたグラビア印刷用インキ組成物は、フィルムに対してさらに優れた印刷適性及び接着性を有することとなる。更に、ラミネート加工が行われる場合、より優れたラミネート適性を有することとなる。
上記グラビア印刷用ポリウレタンポリウレア樹脂/(塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体及び/又は塩化ビニル/アクリル共重合体)が45/55を下回る場合、(塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体及び/又は塩化ビニル/アクリル共重合体)の割合が多くなり、本発明により得られたグラビア印刷用インキ組成物を用いて形成する印刷物が硬くなり、やはり上記フィルムに対する接着性が不充分となる可能性がある。
【0034】
・密着性向上剤としてのロジン及びその誘導体
ロジンとしては、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン等が挙げられる。一般的にロジンは松から得られる琥珀色、無定形の樹脂であり、天然から得られるため混合物であるが、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、ピマール酸、イソピマール酸、サンダラコピマール酸、デヒドロアビエチン酸という構成成分ごとに単離して用いても良く、本発明ではこれらもロジンと定義する。
ロジン誘導体は、上記のロジンを変性してなる化合物であり、具体的に以下に列挙する。
(1)水素化ロジン:共役二重結合に水素を付加(水素添加)させて、耐候性を向上させたロジンである。
(2)不均化ロジン:不均化とは、二分子のロジンが反応し、共役二重結合を持った二分子のアビエチン酸が、一方は芳香族を構成し、もう一方は単独二重結合の分子となる変性である。一般に水添ロジンよりは耐候性が劣るが、未処理よりは向上する。
(3)ロジン変性フェノール樹脂:オフセット印刷のインキ組成物には、メインバインダーとしてロジン変性フェノール樹脂が使われることが多い。ロジン変性フェノール樹脂は公知の製造法で得ることができる。
(4)ロジンエステル:ロジンから誘導されるエステル樹脂であり、古くから粘着・接着剤の粘着付与剤(タッキファイヤー)として用いられる。
(5)ロジン変性マレイン酸樹脂:ロジンに無水マレイン酸を付加反応させたもので、必要に応じてグリセリンなどの水酸基含有化合物を、無水酸基とエステル化させグラフトさせたものも含まれる。
(6)重合ロジン:天然樹脂のロジンから誘導される二量化された樹脂酸を含む誘導体である。
その他、公知のロジン、ロジン誘導体も用いることが可能であり、これらは単独だけでなく併用することができる。
さらに、ロジン及びロジン誘導体の酸価は120mgKOH/g以上であることが好ましい。酸価が120mgKOH/g以上であると、ラミネート強度が向上する。さらに好ましくは酸価が160mgKOH/g以上である。また、ロジンおよびロジン誘導体の合計使用量は、本発明の製造方法で得られるグラビア印刷用インキ組成物の固形分に対して、好ましくは3.0質量%以下、より好ましくは0.1~3.0質量%である。
【0035】
・密着性向上剤としての塩素化ポリプロピレン
塩素化ポリプロピレンとしては、塩素化度が20~50のものを使用できる。塩素化度が20未満の塩素化ポリプロピレンは、有機溶剤との相溶性が低下する傾向がある。一方、塩素化度が50を超える場合、塩素化ポリプロピレンは、フィルムに対する接着性が低下する傾向がある。尚、塩素化度は、塩素化ポリプロピレン樹脂中の塩素原子の質量%で定義される。また、塩素化ポリプロピレンは、重量平均分子量が5000~200000の変性されたまたは未変性の塩素化ポリプロピレンであることが好ましい。重量平均分子量が5000未満の場合、塩素化ポリプロピレンは、接着性が低下する傾向がある。一方、重量平均分子量が200000を超える場合、塩素化ポリプロピレンは、有機溶剤への溶解性が低下する傾向がある。また、塩素化ポリプロピレンの使用量は、本発明の製造方法で得られるグラビア印刷用インキの固形分に対して、好ましくは3.0質量%以下、より好ましくは0.1~3.0質量%である。
【0036】
・密着性向上剤としてのダンマル樹脂
ダンマル樹脂は、ダマール、ダンマーとも表記され、植物由来の天然樹脂の一種である。詳細には、マレーシア、インドネシアなど東南アジアに生育するフタバガキ科またはカンラン科植物から得られる天然樹脂の一種である。使用する際には適当な有機溶剤に溶解させてワニスとする。ダンマル樹脂は塩素を含有しないため、インキ組成物に塩素化ポリオレフィン樹脂を使用する場合に比べ、塩素を排除・低減することができる。また、ダンマル樹脂の使用量は、本発明の製造方法で得られるグラビア印刷用インキ組成物組成物の固形分に対して、好ましくは3.0質量%以下、より好ましくは0.1質量%~3.0質量%である。
【0037】
・ブロッキング防止剤としてのシリカ粒子
シリカとして、天然産、合成品、結晶性、非結晶性、あるいは疎水性、親水性のもの等が挙げられる。シリカ粒子は、平均粒子径1~5μmの範囲のものが好ましい(尚シリカ粒子の平均粒子径は、粒度分布における積算値50%(D50)での粒径を意味し、コールターカウンター法によって求めることができる)。シリカ粒子は、表面に親水性官能基を有する親水性シリカでも良いし、親水性官能基をアルキルシラン等で変性して疎水化した疎水性シリカでも良いが、親水性のものが好ましい。親水性シリカ粒子を含むインキ組成物は重ね印刷時のインキ組成物の濡れ・広がりを促し、重ね印刷効果(以下「トラッピング性」と記載する場合がある)を向上させる効果も有する。シリカ粒子使用量は、本発明の製造方法で得られるグラビア印刷用インキ組成物中に、好ましくは3.0質量%以下、より好ましくは0.1~3.0質量%、さらに好ましくは0.2~1.5質量%である。3.0質量%より多いと、光沢が低下する可能性がある。
【0038】
・ブロッキング防止剤としてのポリエチレンワックス
ポリエチレンワックスとしては平均粒子径が1.0~20μmの範囲のもの(尚、平均粒子径は、#1:Honeywell社製 Microtrac UPAにて測定した粒径を意味する)を使用する。ポリエチレンワックスの粒子径が1.0μmより小さいと、積層体作成時のすべり性、ブロッキング性が低下し、粒子径が20μmより大きいとトラッピング性が低下する。また、ポリエチレンワックスの含有量は、本発明の製造方法で得られるグラビア印刷用インキ組成物中に、好ましくは0.1~1.5質量%である。0.1質量%より少ないと目的とする効果が得られない可能性があり、1.5質量%より多いと、光沢が低下する可能性がある。
【0039】
・ブロッキング防止剤としての脂肪酸アミド
脂肪酸アミドとしては、脂肪酸残基とアミド基を有するものであれば特に限定されない。
脂肪酸アミドとしては、例えば、モノアミド、置換アミド、ビスアミド、メチロールアミド、およびエステルアミド等が挙げられ、耐ブロッキング性が向上するため、モノアミド、置換アミド、およびビスアミドからなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。脂肪酸アミドの使用量は、本発明の製造方法で得られるグラビア印刷インキ組成物中に、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.01~1.0質量%である。
・モノアミド:モノアミドは下記一般式(1)で表される。
一般式(1) R1-CONH
(式中、R1は脂肪酸からCOOHを除いた残基を表す。)
モノアミドの具体例としては、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等が挙げられる。
・置換アミド:置換アミドは下記一般式(2)で表される。
一般式(2) R2-CONH-R3
(式中、R2およびR3は脂肪酸からCOOHを除いた残基を表し、同一でも異なっていても良い。)
置換アミドの具体例としては、N-オレイルパルミチン酸アミド、N-ステアリルステアリン酸アミド、N-ステアリルオレイン酸アミド、N-オレイルステアリン酸アミド、N-ステアリルエルカ酸アミド等が挙げられる。
・ビスアミド:ビスアミドは下記一般式(3)あるいは一般式(4)で表される。
一般式(3) R4-CONH-R5-HNCO-R6
一般式(4) R7-NHCO-R8-CONH-R9
(式中、R4、R6、R7、およびR9は脂肪酸からCOOHを除いた残基を表し、同一でも異なっていても良く、R5およびR8は炭素数1~10のアルキレン基またはアリーレン基を表す。)
ビスアミドの具体例としては、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’-ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’-ジステアリルセバシン酸アミド、N,N’-ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’-ジオレイルセバシン酸アミド等が挙げられる。
・メチロールアミド:メチロールアミドは下記一般式(5)で表される。
一般式(5) R10-CONHCHOH
(式中、R10は脂肪酸からCOOHを除いた残基を表す。)
メチロールアミドの具体例としては、メチロールパルミチン酸アミド、メチロールステアリン酸アミド、メチロールベヘン酸アミド、メチロールヒドロキシステアリン酸アミド、メチロールオレイン酸アミド、メチロールエルカ酸アミド等が挙げられる。
・エステルアミド:エステルアミドは、下記一般式(6)で表される。
一般式(6) R11-CONH-R12-OCO-R13
(式中、R11およびR13は脂肪酸からCOOHを除いた残基を表し、同一でも異なっていても良く、R12は炭素数1~10のアルキレン基またはアリーレン基を表す。)
エステルアミドの具体例としては、ステアロアミドエチルステアレート、オレイルアミドエチルウレアレート等が挙げられる。
脂肪酸アミドの融点は、50℃~150℃であることが好ましい。
また、脂肪酸アミドを構成する脂肪酸としては、炭素数12~22の飽和脂肪酸および/または炭素数16~25の不飽和脂肪酸が好ましく、炭素数16~18の飽和脂肪酸および/または炭素数18~22の不飽和脂肪酸がより好ましい。飽和脂肪酸として特に好ましくはラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ヒドロキシステアリン酸であり、不飽和脂肪酸として特に好ましくはオレイン酸、エルカ酸である。
【0040】
・ブロッキング防止剤としてのセルロースアセテートプロピオネート樹脂
セルロースアセテートプロピオネート樹脂としては、従来からグラビアインキ組成物等に使用されているセルロースアセテートプロピオネート樹脂が使用できる。
セルロースアセテートプロピオネート樹脂は、セルロースを酢酸及びプロピオン酸でトリエステル化した後に加水分解して得られる。一般的にはアセチル基は0.6~2.5重量%、プロピオネート基は42~46重量%、水酸基は1.8~5重量%である樹脂が市販されている。セルロースアセテートプロピオネート樹脂の使用量は、本発明の製造方法で得られるグラビア印刷用インキ組成物に、3.0質量%以下であることが好ましい。
【0041】
・ブロッキング防止剤としてのセルロースアセテートブチレート樹脂
セルロースアセテートブチレート樹脂としては、従来からグラビアインキ組成物等に使用されているセルロースアセテートブチレート樹脂が使用できる。
セルロースアセテートブチレート樹脂は、酢酸および酪酸でトリエステル化した後、加水分解して得られる。一般的にはアセチル化は2~30重量%、ブチリル化は17~53重量%、水酸基は1~5%の樹脂が市販されている。セルロースアセテートブチレート樹脂の使用量は、本発明の製造方法で得られるグラビア印刷用インキ組成物中に、0.1~3.0質量%であることが好ましい。
【0042】
・ブロッキング防止剤としての硝化綿
硝化綿としては、従来からグラビアインキ組成物等に使用されている硝化綿が使用できる。硝化綿としては、天然セルロースと硝酸を反応させて、天然セルロース中の無水グルコピラノース基の6員環中の3個の水酸基を、硝酸基に置換した硝酸エステルとして得られるものである。本発明に使用される硝化綿としては、窒素量10~13%、平均重合度35~90のものが好ましく用いられる。具体例としては、SS1/2、SS1/4、SS1/8、TR1/16、NC RS-2、(KCNC、KOREA CNC LTD
社製)等を挙げることができる。硝化綿の使用量は、本発明の製造方法で得られるグラビア印刷用インキ組成物中に、2.0質量%以下であることが好ましい。
【0043】
・顔料分散剤
顔料分散剤としては、一般に有機溶剤を含有するグラビアインキ組成物等のインキ組成物に使用できるポリエステル系顔料分散剤が使用できる。具体的には、アジスパーPB821、PB822、PB824、PB881(味の素ファインテクノ社製)、ソルスパース24000、56000(日本ルーブリゾール社製)等が挙げられ、これらの中でも塩基性基含有ポリエステル系高分子分散剤が好適に使用できる。
顔料分散剤の含有量は、全顔料100質量部に対して、1~200質量部であることが好ましく、より好ましくは1~60質量部である。
【0044】
・有機溶剤
上記ウレタンプレポリマーと、有機溶媒と、ポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物により無溶剤条件下でケチミン化された鎖伸長剤及び/又は反応停止剤とを撹拌混合する工程で記載した有機溶剤が使用できる。
さらに、濡れ広がり性を向上させるために有機溶剤100重量%中、グリコールエーテル系有機溶剤を0.1~20重量%含有させることもできる。グリコールエーテル系有機溶剤の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノn-プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノn-プロピルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等が例示できる。
【0045】
・水
静電気による印刷不良の緩和、及び、版かぶりの防止やセル再現性の点より水を含有させることが好ましい。但し、溶媒中に溶解している樹脂等が析出しない等、本発明による効果を毀損しないことが必要である。そのような水の使用量は、本発明の製造方法で得られるグラビア印刷用インキ組成物中に、10.0質量%以下が好ましく、さらに好ましくは、0.1~5.0質量%である。
【0046】
・グラビア印刷用インキ組成物の製造方法を製造する方法
本発明のグラビア印刷インキ組成物の製造方法としては、上記のように、例えば、グラビア印刷用ポリウレタンポリウレア樹脂溶液、顔料、必要に応じてバインダー樹脂、有機溶剤及び顔料分散剤等の混合物を、高速ミキサー、ボールミル、サンドミル、アトライター等を用いて練肉し、更に、密着性向上剤、ブロッキング防止剤、有機溶剤、水等の材料の残りを添加、混合することにより得ることができる。
【0047】
<本発明によるグラビア印刷インキ組成物を用いたラミネート印刷物の製造方法>
本発明の製造方法により得られたグラビア印刷インキ組成物を用いて、ラミネート印刷物を得る方法について説明する。
ラミネート印刷物を得る方法には、少なくとも下記印刷方法を含む。例えば、公知のラミネート用の基材となる樹脂フィルムに、少なくとも、グラビア印刷用インキ組成物をグラビア印刷方式で1回以上印刷を行う。次いで、これらの印刷により形成したグラビア印刷用インキ組成物の表面側(最終ラミネート後において、表層からみて下層側)の任意の個所に、他のグラビア印刷用インキ組成物をグラビア印刷方式で印刷を行い、ドライヤーにより乾燥させる。
上記の方法で得られた印刷物のグラビア印刷用インキ組成物による層の側に、樹脂フィルム等を各種方法によるラミネート加工を施して、包装袋等用のラミネート印刷物を得ることができる。このラミネート加工法としては、印刷物の表面にアンカーコート剤を塗工した後、溶融ポリマーを積層させる押し出しラミネート法、印刷物の表面に接着剤を塗工した後、フィルム状のポリマーを貼合させるドライラミネート法が利用できる。
【0048】
上記押し出しラミネート法は、グラビア印刷用インキ組成物中による層を含む印刷物の表面に、必要に応じて、チタン系、ウレタン系、イミン系、ポリブタジエン系等のアンカーコート剤を塗工した後、既知の押し出しラミネート機によって、溶融ポリマーを積層させる方法であり、更に溶融樹脂を中間層として、他の材料とサンドイッチ状に積層することもできる。
上記押し出しラミネート法で使用する溶融ポリマーとしては、低密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン等、従来使用されていた樹脂が使用できる。その中でも溶融の際に酸化されてカルボニル基が発生し易い低密度ポリエチレンを採用すると本発明の効果が高くなる。
【0049】
また、上記ドライラミネート法は、グラビア印刷用インキ組成物による層の表面にウレタン系、イソシアネート系等の接着剤を塗工した後、既知のドライラミネート機によってフィルム状のポリマーを貼合する方法である。ドライラミネート法で使用するフィルム用の樹脂としては、ポリエチレン、無延伸ポリプロピレン等が使用できる。特にレトルト用途で使用される包装材料を得るために、基材と貼合される樹脂フィルムの間にアルミ箔をはさんでラミネートすることもできる。このようなラミネート加工物は、製袋して内容物を詰めた後、ボイル・レトルト用途に利用することもできる。
このとき使用される上記樹脂フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの延伸および無延伸ポリオレフィン、ポリエステル、ナイロン、セロファン、ビニロン等を挙げることができる。さらにこれら樹脂フィルムについては、予め防曇剤の塗工、練り込み、マット剤の表面塗工、練り込みなど樹脂フィルムを加工して得られるフィルムも使用できる。
【実施例0050】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味するものである。また、表中の各材料の分量の数字についても「質量部」である。酸価の単位はmgKOH/gである。
【0051】
<ケチミン溶液1の製造方法>
イソホロンジアミン51部、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン31.2部、及びアセトン174部を混合し、室温で1時間撹拌してケチミン溶液1を得た。
<ケチミン溶液2の製造方法>
イソホロンジアミン51部、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン31.2部、及びジエチルケトン258部を混合し、室温で1時間撹拌してケチミン溶液2を得た。
<ケチミン溶液3の製造方法>
イソホロンジアミン51部、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン31.2部、及びメチルエチルケトン210部を混合し、室温で1時間撹拌してケチミン溶液3を得た。
<ケチミン溶液4の製造方法>
イソホロンジアミン51部、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン31.2部、及びジアセトンアルコール348部を混合し、室温で1時間撹拌してケチミン溶液4を得た。
【0052】
<PU-1の製造方法(アセトンでケチミン化)>
撹拌機、冷却管及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量4000の3-メチル-1,5-ペンチレンアジペートジオール400部、イソホロンジイソシアネート33.3部及びテトラブチルチタネート0.04部を仕込み、窒素ガスを導入しながら90~100℃で6時間反応させた。
次いで、酢酸プロピル808部、イソプロピルアルコール201部を加えた後、室温近くまで冷却し、ケチミン溶液1を25.6部加えて20分間撹拌し、さらに水を3質量部加えて15分間撹拌し、PU-1(固形分30質量%)を得た。
【0053】
<PU-2の製造方法(ジエチルケトンでケチミン化)>
撹拌機、冷却管及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量4000の3-メチル-1,5-ペンチレンアジペートジオール400部、イソホロンジイソシアネート33.3部及びテトラブチルチタネート0.04部を仕込み、窒素ガスを導入しながら90~100℃で6時間反応させた。
次いで、酢酸プロピル801部、イソプロピルアルコール200部を加えた後、室温近くまで冷却し、ケチミン溶液2を34部加えて20分間撹拌し、さらに水を3質量部加えて撹拌しPU-2(固形分30質量%)を得た。
【0054】
<PU-3の製造方法(メチルエチルケトンでケチミン化)>
撹拌機、冷却管及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量4000の3-メチル-1,5-ペンチレンアジペートジオール400部、イソホロンジイソシアネート33.3部及びテトラブチルチタネート0.04部を仕込み、窒素ガスを導入しながら90~100℃で6時間反応させた。
次いで、酢酸プロピル805部、イソプロピルアルコール201部を加えた後、室温近くまで冷却し、ケチミン溶液3を29.2部加えて30分間撹拌し、さらに水を3質量部加えて撹拌しPU-3(固形分30質量%)を得た。
【0055】
<PU-4の製造方法(ジアセトンアルコールでケチミン化)>
撹拌機、冷却管及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量4000の3-メチル-1,5-ペンチレンアジペートジオール400部、イソホロンジイソシアネート33.3部及びテトラブチルチタネート0.04部を仕込み、窒素ガスを導入しながら90~100℃で6時間反応させた。
次いで、酢酸プロピル795部、イソプロピルアルコール198部を加えた後、室温近くまで冷却し、ケチミン溶液4を43部加えて30分間撹拌し、さらに水を3部加えて撹拌しPU-4(固形分30質量%)を得た。
【0056】
<PU-5の製造方法(バイオマス、アセトンでケチミン化)>
撹拌機、冷却管及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、セバシン酸(ひまし油由来)/コハク酸(植物由来)=70/30(質量比)と1,3-プロパンジオール(植物由来)から得られる平均分子量4000のポリエステルジオール400部、イソホロンジイソシアネート33.3部及びテトラブチルチタネート0.04部を仕込み、窒素ガスを導入しながら90~100℃で6時間反応させた。
次いで、酢酸プロピル808部、イソプロピルアルコール201部を加えた後、室温近くまで冷却し、ケチミン溶液1を25.6部加えて20分間撹拌し、さらに水を3質量部加えて15分間撹拌し、PU-5(固形分30質量%)を得た。
【0057】
<PU-6の製造方法(モノエタノールアミン、アセトンでケチミン化)>
撹拌機、冷却管及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量4000の3-メチル-1,5-ペンチレンアジペートジオール400部、イソホロンジイソシアネート33.3部及びテトラブチルチタネート0.04部を仕込み、窒素ガスを導入しながら90~100℃で6時間反応させた。
酢酸プロピル810部、イソプロピルアルコール201部を加えた後、室温近くまで冷却し、モノエタノールアミン0.3部を加え15分撹拌後、更に、ケチミン溶液1を23.35部加えて20分間撹拌し、さらに水を3部加えて15分間撹拌し、質量平均分子量45,000PU-6(固形分30%)を得た。
【0058】
<PU-7の製造方法(ジアミンで鎖伸長・末端停止後にアセトンを仕込む)>
撹拌機、冷却管及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量4000の3-メチル-1,5-ペンチレンアジペートジオール400部、イソホロンジイソシアネート33.3部及びテトラブチルチタネート0.04部を仕込み、窒素ガスを導入しながら90~100℃で6時間反応させた。
次いで、酢酸プロピル810部、イソプロピルアルコール202部を加えた後、室温近くまで冷却し、イソホロンジアミン5.1部及びN-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン3.1部を加えて30分間撹拌した後、アセトン17.4部を加えて60分間撹拌し、PU-7(固形分30質量%)を得た。
【0059】
<PU-8の製造方法(ジアミンで鎖伸長・末端停止後にジエチルケトンを仕込む)>
撹拌機、冷却管及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量4000の3-メチル-1,5-ペンチレンアジペートジオール400部、イソホロンジイソシアネート33.3部及びテトラブチルチタネート0.04部を仕込み、窒素ガスを導入しながら90~100℃で6時間反応させた。
次いで、酢酸プロピル803部、イソプロピルアルコール201部を加えた後、室温近くまで冷却し、イソホロンジアミン5.1部及びN-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン3.1部を加えて30分間撹拌した後、ジエチルケトン25.8部を加えて60分間撹拌し、PU-8(固形分30質量%)を得た。
【0060】
<PU-9の製造方法(ジアミンで鎖伸長・末端停止後にメチルエチルケトンを仕込む)>
撹拌機、冷却管及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量4000の3-メチル-1,5-ペンチレンアジペートジオール400部、イソホロンジイソシアネート33.3部及びテトラブチルチタネート0.04部を仕込み、窒素ガスを導入しながら90~100℃で6時間反応させた。
次いで、酢酸プロピル807部、イソプロピルアルコール202部を加えた後、室温近くまで冷却し、イソホロンジアミン5.1部及びN-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン3.1部を加えて30分間撹拌した後、メチルエチルケトン21部を加えて60分間撹拌し、PU-9(固形分30質量%)を得た。
【0061】
<PU-10の製造方法(ジアミンで鎖伸長・末端停止後にジアセトンアルコールを仕込む)>
撹拌機、冷却管及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量4000の3-メチル-1,5-ペンチレンアジペートジオール400部、イソホロンジイソシアネート33.3部及びテトラブチルチタネート0.04部を仕込み、窒素ガスを導入しながら90~100℃で6時間反応させた。
次いで、酢酸プロピル796部、イソプロピルアルコール199部を加えた後、室温近くまで冷却し、イソホロンジアミン5.1部及びN-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン3.1部を加えて30分間撹拌した後、ジアセトンアルコール34.8部を加えて60分間撹拌し、PU-10(固形分30質量%)を得た。
【0062】
<PU-11の製造方法(バイオマス、ジアミンで鎖伸長・末端停止後にアセトンを仕込む)>
撹拌機、冷却管及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、セバシン酸(ひまし油由来)/コハク酸(植物由来)=70/30(質量比)と1,3-プロパンジオール(植物由来)から得られる平均分子量4000のポリエステルジオール400部、イソホロンジイソシアネート33.3部及びテトラブチルチタネート0.04部を仕込み、窒素ガスを導入しながら90~100℃で6時間反応させた。
次いで、酢酸プロピル810部、イソプロピルアルコール202部を加えた後、室温近くまで冷却し、イソホロンジアミン5.1部及びN-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン3.1部を加えて30分間撹拌した後、アセトン17.4部を加えて60分間撹拌し、PU-11(固形分30質量%)を得た。
【0063】
<PU-12製造方法(モノエタノールアミンで反応停止、ジアミンで鎖伸長、末端停止後にアセトンを仕込む)>
撹拌機、冷却管及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量4000の3-メチル-1,5-ペンチレンアジペートジオール400部、イソホロンジイソシアネート33.3部及びテトラブチルチタネート0.04部を仕込み、窒素ガスを導入しながら90~100℃で6時間反応させた。
酢酸プロピル810部、イソプロピルアルコール201部を加えた後、室温近くまで冷却し、モノエタノールアミン0.3部を加え15分撹拌後、更に、イソホロンジアミン4.65部及びN-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン2.84部を加えて30分間撹拌した後、アセトン15.86部を加えて60分間撹拌し、PU-12(固形分30質量%)を得た。
【0064】
<PU-13の製造方法(ジアミンで鎖伸長・末端停止)>
撹拌機、冷却管及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量4000の3-メチル-1,5-ペンチレンアジペートジオール400部、イソホロンジイソシアネート33.3部及びテトラブチルチタネート0.04部を仕込み、窒素ガスを導入しながら90~100℃で6時間反応させた。
次いで、酢酸プロピル823.9部、イソプロピルアルコール205.5部を加えた後、室温近くまで冷却し、イソホロンジアミン5.1部及びN-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン3.1部を加えて30分間撹拌し、PU-13(固形分30質量%)を得た。
【0065】
(顔料)
酸化チタン(R-960、デュポン社製)
フタロシアニンブルー(ピグメントブルー15:4)
<シリカ粒子>
平均粒子径4.5μmのシリカ粒子
【0066】
<実施例及び比較例の各インキ組成物の製造例>
顔料、ポリウレタン樹脂ワニス(PU-1~PU-13)、シリカ及び溶剤をレッドデビル社製のペイントコンディショナーを用いて混練し、表1に示した実施例及び比較例のインキ組成物を得た。
【0067】
<インキ組成物の経時安定性>
上記で得られた実施例及び比較例のインキ組成物をガラス瓶に採取し、40℃で14日間経時前後の粘度の値の変化(液温が25℃の時の粘度をB型粘度計(東京計器社製)の2号ローターを用いて、30rpmでのインキ粘度測定データ)から経時粘度安定性の評価を行い、以下の評価基準にしたがって評価した。結果を表1に示す。
○:経時後/経時前の粘度比が1.5未満であった。
×:経時後/経時前の粘度比が1.5以上であり、沈降が認められない。
【0068】
<印刷物の製造>
実施例及び比較例の各インキ組成物の各々100質量部を混合溶剤(酢酸エチル/酢酸プロピル/イソプロピルアルコール=50/25/25、質量比)で希釈して、粘度を離合社製ザーンカップ3号で15秒に調整して、濃度を調整したインキ組成物を得た。
得られた各インキ組成物を用いて、ポリプロピレンフィルム(東洋紡社製P-2161)の処理面に対して、下記の条件により印刷、乾燥して印刷物を得た。
さらに、得られた印刷物をについてアミン臭・ケチミン臭の評価を行った。その具体的な評価方法を以下に示す。
【0069】
(印刷方法・印刷条件)
印刷時の部屋の環境:温度25℃、湿度50%
塗工機:グラビア印刷機
塗工速度:150m/min
刷版:ダイレクト175線 28μm ベタ版
乾燥温度:55℃
【0070】
(印刷物のアミン臭・ケチミン臭評価方法)
得られた各印刷物の印刷面に鼻を当てて、臭気を官能試験で以下の基準にしたがって評価した。結果を表1に示す。
○:アミン臭・ケチミン臭が認められない。
△:アミン臭・ケチミン臭がわずかに認められる。
×:アミン臭・ケチミン臭が認められる。
【0071】
【表1】
【0072】
本発明の方法により得たポリウレタンポリウレア樹脂を使用した実施例1~7のインキ組成物は経時安定性に優れていた。加えて、印刷物にした後の印刷部にはアミン臭・ケチミン臭が無かった。
これに対して本発明の方法によらず、ケチミン化をしなかったポリウレタンポリウレア樹脂を使用した比較例1~7のインキ組成物は経時安定性に劣っていた。加えて、印刷物にした後の印刷部にはケチミン臭があった。また、ジアミンで鎖伸長・末端停止するのみの方法により得たポリウレタンポリウレア樹脂を使用した比較例8、9のインキ組成物は、経時安定性に少し劣っていた。加えて、印刷物にした後の印刷部にはアミン臭があった。