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  • 特開-ウイルス性呼吸器感染予防、治療剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157082
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】ウイルス性呼吸器感染予防、治療剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7028 20060101AFI20221006BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20221006BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20221006BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20221006BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20221006BHJP
   A61K 36/899 20060101ALN20221006BHJP
   A61K 131/00 20060101ALN20221006BHJP
【FI】
A61K31/7028
A61K31/704
A61P11/00
A61P31/12
A61P31/16
A61K36/899
A61K131:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021061114
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】594045089
【氏名又は名称】オリザ油化株式会社
(72)【発明者】
【氏名】下田 博司
(72)【発明者】
【氏名】村井 弘道
【テーマコード(参考)】
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA05
4C086EA10
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZB33
4C088AB74
4C088AC04
4C088BA08
4C088BA21
4C088NA07
4C088NA14
4C088ZA59
4C088ZB33
(57)【要約】
【課題】 新規な成分のウイルス性呼吸器感染症予防、治療剤を提供する。
【解決手段】 上記課題を解決するための本発明の特徴は以下の通りである。
1. グルコシルセラミド及び/又はグルコシルセラミドを有効成分とするウイルス性呼吸器感染症予防、治療剤。
2.β-シトステロール配糖体を有効成分とするウイルス性呼吸器感染症予防、治療剤。
3.上記ウイルス性呼吸器感染症はインフルエンザであることを特徴とする上記1.又は上記2.に記載のウイルス性呼吸器感染症予防、治療剤。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルコシルセラミド及び/又はグルコシルセラミドを有効成分とするウイルス性呼吸器感染症予防、治療剤。
【請求項2】
β-シトステロール配糖体を有効成分とするウイルス性呼吸器感染症予防、治療剤。
【請求項3】
上記ウイルス性呼吸器感染症はインフルエンザであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のウイルス性呼吸器感染症予防、治療剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウイルス性呼吸器感染予防、治療剤に関する。これらは、医薬品、医薬部外品、健康食品、一般商品等に広く利用される。
【背景技術】
【0002】
ウイルスの感染による流行性の急性呼吸器感染症にはいろいろあるが、例えば、インフルエンザ、コロナウイルス感染症等がある。インフルエンザはA型またはB型インフルエンザウイルスの感染による流行性の急性呼吸器感染症である。その臨床像は、上気道炎症状に加えて、突然の高熱と全身倦怠感、頭痛、筋肉痛、関節痛などの全身症状を特徴とし、数日の臥床を強いられるような重症感を伴う。インフルエンザは毎年冬季に流行を繰り返し、短期間に集中して数百万人規模で多数の患者が発生する。さらに65歳以上の高齢者、乳幼児、妊婦やさまざまな基礎疾患をもつハイリスク群がインフルエンザに罹患すると、肺炎の合併や入院、死亡の危険が健康成人に比べて数100倍も高くなる。したがってインフルエンザは、患者の健康被害の大きさとその流行規模から社会・経済的にも大きな影響をもたらす重要な疾患として認識されている。
【0003】
インフルエンザの予防方法として従来よりインフルエンザワクチンが使用されている。しかし、ワクチン株と流行株とが異なったり、株が一致したとしても不十分な生体防御惹起能であったり、必ずしもその予防効果は満足いくものではない。さらに、ワクチン接種者に発赤、腫脹、疼痛、発熱、頭痛、悪寒、倦怠感などの副作用が起こることがある。また、卵アレルギーの人には蕁麻疹、発疹、口腔のしびれ、アナフィラキシーショックなどの可能性もあり、ワクチンに安定剤として含まれているゼラチンに対するゼラチンアレルギーも報告されている。その他ギランバレー症候群、急性脳症、痙攣、紫斑などの副作用報告もある。そのため、ワクチンを接種するためには、医師の管理指導の下行われている(特許文献1)。
そこで、副作用が起きにくく、食品としても摂取することができるインフルエンザの予防、治療剤が求められている。
【0004】
【特許文献1】特開2008-297320号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような背景の下、本発明者は、食品素材として知られているグルコシルセラミド含有米抽出物、及びβ-シトステロールグルコシドにインフルエンザ等のウイルス性の呼吸器感染症の予防、治療作用を有することを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、副作用が少ない食品素材を有効成分とする新規なウイルス性呼吸器感染予防、治療剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の特徴は以下の通りである。
1. グルコシルセラミド及び/又はグルコシルセラミド含有米抽出物を有効成分とするウイルス性呼吸器感染症予防、治療剤。
2.β-シトステロール配糖体を有効成分とするウイルス性呼吸器感染症予防、治療剤。
3.上記ウイルス性呼吸器感染症はインフルエンザであることを特徴とする上記1.又は上記2.に記載のウイルス性呼吸器感染症予防、治療剤。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施例のウイルス接種後の生存率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、グルコシルセラミド及び/又はグルコシルセラミド含有米抽出物を有効成分とすることを特徴とする。
本発明の有効成分であるグルコシルセラミドはセラミドに糖(主にガラクトース)がグリコシルエーテル結合したものである。
【0009】
上記グルコシルセラミドは、特に限定されないが、下記化学式(1)で示されたものであることが好ましい。
【化1】
【0010】
グルコシルセラミド質含有米抽出物は、米ヌカから多量に抽出することができる。原料米は、品種を限定しないが、甘味を呈する日本型(japonica)が好適である。特に、コシヒカリ、ササニシキなどで代表される主食用米品種が好ましい。通常、玄米の最外層にある果皮、種皮および糊粉層が精米機で取り除かれてヌカとなる。
【0011】
米ヌカからグルコシルセラミド質含有米抽出物を抽出する方法としては特に限定されないが、下記工程A~Cによるのが望ましい。
A. 米ヌカを有機溶媒で抽出する工程、
B.前記抽出物に水と共に酸を加え、この酸溶液中にガム質を沈殿させる工程、
C.前記ガム質をアルコールで抽出し、このアルコール抽出物からスフィンゴ脂質を精製する工程。
【0012】
前記工程AおよびBは、米ヌカ油の製造工程を利用することができる。一般に、米ヌカ油を製造する場合、原料の米ヌカをヘキサンで抽出し、次いで、リン酸処理により、油分を分離し、ガム質を得る。従って、このような米ヌカ油の製造工程で生じるガム質に、前記工程Cを適用することにより、グルコシルセラミドを効率よく抽出することができる。
【0013】
前記有機溶媒は、ヘキサンの他、ヘプタン、石油エーテル、エーテル、クロロホルム、アセトン等を用いることができる。前記有機溶媒の抽出物を処理する酸は、有機酸としては酢酸、シュウ酸、クエン酸、蟻酸等を、無機酸としてはリン酸、硫酸、塩酸、硝酸等を用いることができる。望ましくは、リン酸を用いるとよい。リン酸によれば、以下に示すような利点があるためである。
a.米ヌカ油の製造工程をそのまま利用することができる。
b.強酸ではないので、タンク、パイプ等が腐食しにくく、製造設備の耐久性が向上する。
c.酢酸、蟻酸のような刺激臭がない。
d.有機溶剤の抽出物に含まれるリン脂質を取り除きやすいため、沈殿物(ガム質)に含まれるグルコシルセラミドの濃度が高まる。
【0014】
前記アルコールは、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールおよびこれらの含水アルコール等を用いることができる。グルコシルセラミドを飲食品に使用する場合には、エタノールを使用するとよい。前記工程Cでガム質のアルコール抽出物からグルコシルセラミドを精製する手段としては、カラムクロマトグラフィーその他の適当な精製手段を用いることができる。
【0015】
また、前記グルコシルセラミド含有米抽出物は市販品を用いても良く、例えば、オリザ油化株式会社製のオリザセラミド(登録商標)を用いてもよい。
【0016】
本発明は、β-シトステロール配糖体を有効成分とすることを特徴とする。
β-シトステロール配糖体は特に限定されず、例えば、β-シトステロールグルコシド、β-シトステロールルチノイド、β-シトステロールサンブビオシド等が挙げられるが、特にβ-シトステロールグルコシドが好ましい。尚、β-シトステロールグルコシドは下記化学式(2)に示される化合物である。
【0017】
【化2】
【0018】
β-シトステロールグルコシドを得る方法は特に限定されず、市販品のものを使用してもよいし、植物から抽出してもよい。市販品としては富士フイルム和光純薬工業株式会社製の「シトステロール-3-O-グルコシド, β- (AHP Verified)」を用いることができる。
【0019】
β-シトステロールグルコシドを得るための植物原料は特に限定されないが、例えば、コメ、小麦、ビート、こんにゃく、トウモロコシ等が挙げられる。これらのうちコメが好ましい。
コメからβ-シトステロールグルコシドを得るために使用する部位は特に限定されないが、特に米糠、米胚芽を用いることが好ましい。
【0020】
米糠や米胚芽からβ-シトステロールグルコシドを得る方法は特に限定されないが、例えば、米糠や米胚芽を発酵させて発酵物を得て、その後、この発酵物を非極性溶媒で抽出し発酵物抽出液を得て、その後、この発酵物抽出液を分配することにより得ることができる。また、オリザ油化株式会社製の「オリザセラミド」(登録商標)から、抽出することができる。
【0021】
本発明のウイルス性呼吸器感染症予防剤は、各種飲食品の素材として使用することができる。飲食品としては、例えば、菓子類(ガム、キャンディー、キャラメル、チョコレート、クッキー、スナック、ゼリー、グミ、錠菓等)、麺類(そば、うどん、ラーメン等)、乳製品(ミルク、アイスクリーム、ヨーグルト等)、調味料(味噌、醤油等)、スープ類、飲料(ジュース、コーヒー、紅茶、茶、炭酸飲料、スポーツ飲料等)をはじめとする一般食品や、健康食品(錠剤、カプセル等)、栄養補助食品(栄養ドリンク等)が挙げられる。これらの飲食品に本発明ウイルス性呼吸器感染症予防剤を適宜配合するとよい。
【0022】
これら飲食品には、その種類に応じて種々の成分を配合することができ、例えば、ブドウ糖、果糖、ショ糖、マルトース、ソルビトール、ステビオサイド、コーンシロップ、乳糖、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、L-アスコルビン酸、dl-α-トコフェロール、エリソルビン酸ナトリウム、グリセリン、プロピレングリコール、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、アラビアガム、カラギーナン、カゼイン、ゼラチン、ペクチン、寒天、ビタミンB類、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、アミノ酸類、カルシウム塩類、色素、香料、保存剤の食品素材を使用することができる。
【0023】
具体的な製法としては、本発明の剤を粉末セルロースとともにスプレードライまたは凍結乾燥し、これを粉末、顆粒、打錠または溶液にすることで容易に飲食品(インスタント食品等)に含有させることができる。また、前記本発明の剤を、例えば、油脂、エタノール、グリセリンあるいはこれらの混合物に溶解して液状にし、飲料に添加するか、固形食品に添加することが可能である。必要に応じてアラビアガム、デキストリン等のバインダーと混合して粉末状あるいは顆粒状にし、飲料に添加するか固形食品に添加することも可能である。
【0024】
本発明のウイルス性呼吸器感染症予防剤を飲食品に適用する場合の添加量としては、病気予防や健康維持が主な目的であるので、飲食品に対して有効成分の含量が合計1~20wt%以下であるのが好ましい。
【0025】
本発明のウイルス性呼吸器感染症予防剤は、薬品(医薬品および医薬部外品を含む。)の素材として用いてもよい。薬品製剤用の原料に、本発明の剤を適宜配合して製造することができる。本発明の剤に配合しうる製剤原料としては、例えば、賦形剤(ブドウ糖、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、カカオ脂、硬化植物油、カオリン、タルク等)、結合剤(蒸留水、生理食塩水、エタノール水、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、リン酸カリウム、ポリビニルピロリドン等)、崩壊剤(アルギン酸ナトリウム、カンテン、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、デンプン、乳糖、アラビアゴム末、ゼラチン、エタノール等)、崩壊抑制剤(白糖、ステアリン、カカオ脂、水素添加油等)、吸収促進剤(第四級アンモニウム塩基、ラウリル硫酸ナトリウム等)、吸着剤(グリセリン、デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、硅酸等)、滑沢剤(精製タルク、ステアリン酸塩、ポリエチレングリコール等)などが挙げられる。
【0026】
投与量は、投与方法、病状、患者の年齢等によって変化し得るが、大人では、通常、1日当たり有効成分として0.5~5000mg、子供では通常0.5~3000mg程度投与することができる。
本発明のウイルス性呼吸器感染症予防剤の配合比は、剤型によって適宜変更することが可能であるが、通常、経口または粘膜吸収により投与される場合は約0.3~15.0wt%、非経口投与による場合は、0.01~10wt%程度にするとよい。なお、投与量は種々の条件で異なるので、前記投与量より少ない量で十分な場合もあるし、また、範囲を超えて投与する必要のある場合もある。
【実施例0027】
以下、本発明の実施例を説明する。なお、以下に示す実施例は、本発明によって得られる剤の各種作用・効果等の確認のために説明するもので、本発明の範囲は、これらの製品および製法に限定されるものではない。
【0028】
試験例:グルコシルセラミド含有米抽出物、グルコシルセラミド及びβ-シトステロールグルコシド(以下、単に「BSG」する)におけるインフルエンザ予防作用、治療作用の評価
1.被験物質および調製方法
1‐1 被験物質1
名称:オリザセラミド(登録商標)(30%グルコシルセラミド含有米抽出物)
入手先:オリザ油化株式会社
1‐2.被験物質2
名称:上記オリザセラミドから単離された下記化学式(1)で示されるグルコシルセラミド
【化3】
1‐3 被験物質3
名称:BSG(β-シトステロールグルコシド)
1‐4 溶媒
名称:0.5w/v% メチルセルロース400溶液
1-5.調製方法
秤量済みの被験物質に溶媒を混合し、乳鉢と乳棒を用いて調製した。
なお、被験物質は3日分まとめて調製し、調製後は使用するまで冷蔵で保存した。
【0029】
2.使用ウイルスおよび接種ウイルスの調製
2-1.使用ウイルス
ATCCから購入後、ハムリー株式会社にてマウス高感受性ウイルスに変異させたウイルスを用いた。
ウイルス名:Influenza virus
株名:A/PR/8/34
ATCC. No.:VR-1469
BSL:2
ウイルス力価:1.58×108 TCID50/mL
保存:ディープフリーザー(CLN-51UD1, 日本フリーザー株式会社)で保存
2.2 接種ウイルスの調製
凍結保存したウイルス液を解凍し、PBSを用いて一般状態観察用は2 × 105 TCID50/mL(1 × 104 TCID50/50 μL)に、肺中ウイルス量測定用には6 × 104 TCID50/mL(3 × 103 TCID50/50 μL)に調製した。
【0030】
3.使用動物
動物種 :マウス
系統 :BALB/c
入手先 :日本チャールス・リバー株式会社
性別 :雌
週齢 :4週齢(入荷時)
使用匹数:48匹(入荷時50匹)
動物種選択理由:マウス感受性インフルエンザウイルスを用いることから、マウスの選択は試験系として適切と考えられる。
【0031】
4.動物管理条件
4‐1. 飼育条件
室温22.0~25.0%(設定24 ± 3 ℃)、湿度43.29~58.18%(設定50 ± 20 %)、換気(10~25回/1時間)、照明12時間(8:00~20:00)
4-2.飼料
MF(オリエンタル酵母工業株式会社、Lot 200617)を自由摂取。
4-3.飲料水
オートクレーブ滅菌した市水を自由摂取。
4-4.ケージ
オートクレーブ滅菌した耐熱性ポリサルフォン製ケージ(207W×365D×140H mm, TECNIPLAST Ltd)を使用。動物は1-5匹/ケージで飼育した。
4-5.検疫および馴化
動物入荷後から検疫および馴化終了日まで、一般状態を毎日観察した。また入荷日ならびに検疫および馴化終了日に体重を測定した。
4-6.群分け
検疫馴化終了時の体重を用いて、体重層別化無作為抽出法により各群に動物を振り分けた。
【0032】
5.試験群構成
試験群構成は下記表1に示されるとおりとした。
【表1】
【0033】
6.ウイルスの接種
イソフルラン(マイライン製薬株式会社、Lot 196AR0)麻酔下で接種ウイルス液を50 μL/head経鼻接種した。
【0034】
7.被験物質の投与
ウイルス接種7日前から観察終了前日まで、1日1回、シリンジとゾンデを用いて10mL/kgで経口投与した。ウイルス接種日はウイルス接種前に被験物質を投与した。
【0035】
8.標本採取(5~8群)
チアミラールナトリウム(日医工株式会社、Lot LU1200、イソゾール(登録商標)注射用0.5 g)の過剰投与により安楽死後、肺を採取して重量を測定した。ウイルス量測定用として50-100mgの肺を採取し、RNAlater(Thermo Fisher Scientific、Lot 00874638)に浸漬し、冷蔵にて1日置いた後に使用するまでディープフリーザーに保管した。残りの肺もディープフリーザーで保管した。
【0036】
9.観察・測定項目
9‐1.一般状態
1日1回以上、一般状態を観察した。
9‐2.体重測定
群分け時(初回投与時:Day -7)、Day 0, 3, 7, 10およびDay 14
【0037】
10.統計解析
試験データとして得られた計量データは平均±標準偏差を算出した。
一般状態観察用のマウスは平均生存日数及び生存率を算出後、溶媒群に対してLog-Rank検定を行った。
【0038】
11.結果
図1 および下記表 2 に生存率を示した。
下記表3 に平均生存日数および観察終了時の生存率を示した。
1群(溶媒群)、2群(オリザセラミド群)、3群(グルコシルセラミド群)および4群(β-シトステロールグルコシド群)の平均生存日数はそれぞれ7.1日、8.5日、7.8日および8.9日であり、統計解析の結果、2群および4群は1群にくらべ有意に生存日数が延長した。
【表2】
【表3】
【0039】
12.考察及び実施例の効果
インフルエンザ感染マウスモデルを用いてオリザセラミドおよび含有成分の効果を確認することを目的として、ウイルス接種後のマウスの生存率・平均生存日数を評価した。
その結果、オリザセラミドおよびBSGは溶媒群とくらべ有意に生存日数が延長された。また、グルコシルセラミド主成分も生存日数が延長される傾向が確認された。
以上により、グルコシルセラミド及びそれを含有する米抽出物、並びにBSGはインフルエンザ予防、治療剤として有用であることが確認された。
【0040】
本発明による剤(グルコシルセラミド含有米抽出物)の配合例を示す。尚、以下の配合例は本発明を限定するものではない。また、下記配合例ではグルコシルセラミド含有米抽出物のみの例を示すが、BSG及び上記グルコシルセラミドにおいても同様に配合することができる。
配合例1:チューインガム
砂糖 53.0wt%
ガムベース 20.0
グルコース 10.0
水飴 16.0
香料 0.5
グルコシルセラミド含有米抽出物 0.5
100.0wt%
【0041】
配合例2:グミ
還元水飴 40.0wt%
グラニュー糖 20.0
ブトウ糖 20.0
ゼラチン 4.7
水 9.68
ユズ果汁 4.0
ユズフレーバー 0.6
色素 0.02
グルコシルセラミド含有米抽出物 1.0
100.0wt%
【0042】
配合例3:キャンディー
砂糖 50.0wt%
水飴 33.0
水 14.4
有機酸 2.0
香料 0.2
グルコシルセラミド含有米抽出物 0.4
100.0wt%
【0043】
配合例4:ヨーグルト(ハード・ソフト)
牛乳 41.5wt%
脱脂粉乳 5.8
砂糖 8.0
寒天 0.15
ゼラチン 0.1
乳酸菌 0.005
グルコシルセラミド含有米抽出物 0.4
香料 微量
水 残余
100.0wt%
【0044】
配合例5:清涼飲料
果糖ブドウ糖液糖 30.0wt%
乳化剤 0.5
グルコシルセラミド含有米抽出物 0.3
香料 適量
精製水 残余
100.0wt%
【0045】
配合例6:錠菓
砂糖 76.4wt%
グルコース 19.0
ショ糖脂肪酸エステル 0.2
グルコシルセラミド含有米抽出物 0.5
精製水 3.9
100.0wt%
【0046】
配合例7:ソフトカプセル
玄米胚芽油 47.0wt%
ユズ種子油 40.0
乳化剤 12.0
グルコシルセラミド含有米抽出物 1.0
100.0wt%
【0047】
配合例8:錠剤
乳糖 54.0wt%
結晶セルロース 30.0
澱粉分解物 10.0
グリセリン脂肪酸エステル 5.0
グルコシルセラミド含有米抽出物 1.0
100.0wt%
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上により、本発明は、新規なウイルス性呼吸器感染予防、治療剤を提供することができる。
図1