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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157090
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】運転支援装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/00 20060101AFI20221006BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20221006BHJP
   G01S 7/497 20060101ALI20221006BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20221006BHJP
【FI】
B60W50/00
G08G1/16 C
G01S7/497
B60W60/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021061124
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】特許業務法人航栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅野 勇希
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
5J084
【Fターム(参考)】
3D241BA00
3D241BA64
3D241BA66
3D241CC01
3D241CC08
3D241CC17
3D241CD08
3D241CE04
3D241CE05
3D241DB02Z
3D241DB05Z
3D241DB12Z
3D241DB46Z
3D241DC35Z
5H181AA01
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF05
5H181FF07
5J084AA05
5J084AA10
5J084AC02
5J084BA01
5J084BA19
5J084BA31
5J084BA48
5J084EA20
5J084EA22
(57)【要約】      (修正有)
【課題】車載センサに軸ずれが生じたときに、車両に積載された重量物に伴う車両の姿勢変化の情報に基づいて、自動運転の機能を適切に制限することができる運転支援装置を提供する。
【解決手段】推定部50は、車両1に搭載されたライダ17の軸ずれ量を推定する。制限部52は、推定部50によって推定された軸ずれ量が第1所定値以上である場合に、車両1の自動運転の機能の制限を行う。姿勢変化情報取得部51は、車両1に積載された重量物に伴う車両1の姿勢変化の情報を取得する。制限部52は、姿勢変化情報取得部51によって取得された姿勢変化の情報に基づいて、自動運転の機能の制限を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された車載センサの軸ずれ量を推定する推定部と、
前記推定部によって推定された前記軸ずれ量が第1所定値以上である場合に、前記車両の自動運転の機能の制限を行う制限部と、を備える運転支援装置であって、
前記車両に積載された重量物に伴う前記車両の姿勢変化の情報を取得する姿勢変化情報取得部を備え、
前記制限部は、前記姿勢変化情報取得部によって取得された前記姿勢変化の情報に基づいて前記制限を行う、
運転支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の運転支援装置であって、
前記制限部は、前記軸ずれ量が前記第1所定値以上であり、前記姿勢変化の情報が示す前記車両の姿勢変化量が第2所定値以上である場合に、前記制限を行わない、又は前記制限を保留する、
運転支援装置。
【請求項3】
請求項2に記載の運転支援装置であって、
前記車両の乗員に報知を行う報知部を備え、
前記報知部は、前記姿勢変化量が前記第2所定値以上である場合に、前記車両の乗員に前記重量物の積替えを促す報知を行う、
運転支援装置。
【請求項4】
請求項3に記載の運転支援装置であって、
前記推定部は、前記報知が行われた後に前記姿勢変化量が変化した場合に、前記車両の前記軸ずれ量を推定する、
運転支援装置。
【請求項5】
請求項4に記載の運転支援装置であって、
前記制限部は、前記報知が行われ前記姿勢変化量が変化してから前記推定部によって推定された前記軸ずれ量が前記第1所定値以上の場合に前記制限を行う、
運転支援装置。
【請求項6】
請求項3から5のいずれか1項に記載の運転支援装置であって、
前記制限部は、前記車両が所定時間走行する間に又は前記車両が所定距離走行する間に前記報知が所定回数行われた後に前記姿勢変化量が前記第2所定値以上である場合に、前記制限を行う、
運転支援装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の運転支援装置であって、
前記推定部は、前記車両の始動スイッチの起動時に、前記軸ずれ量の推定を行う、
運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、カメラとレーダを含み、車両周辺の物体(障害物)の検知等を行う車載センサが記載されている。特許文献1の車載センサでは、レーダを用いてカメラの軸ずれ量が取得され、カメラの軸ずれ量に基づいて、レーダによる物体の検知領域が設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-80539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カメラやレーダ等の車載センサは光軸の方向が予め設定された方向に一致するように車両に搭載され、車載センサの検出結果に基づいて、運転支援や車両の自律走行等の自動運転の制御が行われる。そのため、車載センサの光軸の方向が予め設定された方向に十分に合致し、その光軸の方向と予め設定された方向との差、すなわち、軸ずれ量が十分小さいことが求められる。
【0005】
そこで、車載センサの軸ずれ量が所定の閾値よりも小さいときにのみ、運転支援や自律走行等の各種処理が実行されるように構成することが考えられる。しかし、推定される軸車載センサのずれ量は、車両に積載された重量物に起因する車両の姿勢変化によって変化することがある。
【0006】
そのため、車両の姿勢変化によって車載センサの軸ずれが実際より大きく推定され、自動運転の機能が容易に停止されてしまい、車両の利便性や安全性を低下させうる。そのため、自動運転の機能の制限を適切に行うために、車載センサの軸ずれの有無の判定を適切に行い、自動運転に関する利便性や安全性の低下を抑制することのできる運転支援装置の開発が望まれている。
【0007】
本発明は、自動運転の機能の制限のための、自動運転に関する利便性や安全性の低下を抑制することのできる運転支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
車両に搭載された車載センサの軸ずれ量を推定する推定部と、
前記推定部によって推定された前記軸ずれ量が第1所定値以上である場合に、前記車両の自動運転の機能の制限を行う制限部と、を備える運転支援装置であって、
前記車両に積載された重量物に伴う前記車両の姿勢変化の情報を取得する姿勢変化情報取得部を備え、
前記制限部は、前記姿勢変化情報取得部によって取得された前記姿勢変化の情報に基づいて前記制限を行う、
運転支援装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の運転支援装置によれば、自動運転に関する利便性や安全性の低下を抑制することのできる運転支援装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の運転支援装置を適用した車両1の一例を示す図である。
図2図1に示すライダの走査範囲の一例を示す図である。
図3】ライダ17の光軸17Aのずれ及び車両1の姿勢変化がない状態の一例を示す図である。
図4】ライダ17の光軸17Aのずれがなく車両1の姿勢変化がある状態の一例を示す図である。
図5】ライダ17の光軸17Aのずれがあり車両1の姿勢変化がない状態の一例を示す図である。
図6】ライダ17の光軸17Aのずれ及び車両1の姿勢変化がある状態の一例を示す図である。
図7図5に示した状態における軸ずれ判定の一例を示す図である。
図8図6に示した状態における軸ずれ判定の一例を示す図である。
図9】外界認識部41による処理の一例を示すフローチャートである。
図10】車両1の重量物の積替えを促す報知を車両1の乗員以外に行う構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の運転支援装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。以下では、説明の便宜上、車体の中心を原点とし、前後(車長)方向をX軸、左右(車幅)方向をY軸、上下方向をZ軸と定める。更に、X軸又はY軸方向を水平軸方向、Z軸方向を垂直軸方向と適宜記載する。
【0012】
X軸を軸線とする回転方向がロール方向に、Y軸を軸線とする回転方向がピッチ方向に、Z軸を軸線とする回転方向がヨー方向にそれぞれ対応し、X軸がロール軸、Y軸がピッチ軸、及び、Z軸がヨー軸にそれぞれ対応する。
【0013】
<本発明の運転支援装置を適用した車両1>
図1は、本発明の運転支援装置を適用した車両1の一例を示す図である。図2は、図1に示すライダの走査範囲の一例を示す図である。図1に示すように、車両1は、推進装置3、ブレーキ装置4、ステアリング装置5、外界センサ6、車両センサ7、ナビゲーション装置8、運転操作子9、報知部11、及び制御装置10を含む車両制御システム14を備えている。車両制御システム14の各構成は、CAN(Controller Area Network)等の通信手段によって信号伝達可能に互いに接続されている。
【0014】
推進装置3は車両1に駆動力を付与する装置であり、例えば動力源及び変速機を含む。動力源はガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関及び電動機の少なくとも一方を有する。本実施形態では、推進装置3は自動変速機と、自動変速機のシフトポジション(シフト位置)を変更するシフトアクチュエータとを含む。ブレーキ装置4は車両1に制動力を付与する装置であり、例えばブレーキロータにパッドを押し付けるブレーキキャリパと、ブレーキキャリパに油圧を供給する電動シリンダとを含む。ブレーキ装置4はワイヤケーブルによって車輪の回転を規制する電動のパーキングブレーキ装置を含んでもよい。ステアリング装置5は車輪の舵角を変えるための装置であり、例えば車輪を転舵するラックアンドピニオン機構と、ラックアンドピニオン機構を駆動する電動モータとを有する。推進装置3、ブレーキ装置4、及びステアリング装置5は、制御装置10によって制御される。
【0015】
外界センサ6は車両1の周辺からの電磁波や音波等を捉えて、車外の物体等を検出し、車両1の周辺情報を取得する装置(外界取得装置)である。外界センサ6は車外カメラ16と、ライダ17とを含んでいる。
【0016】
車外カメラ16は例えば、CCDやCMOS等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラであって、車外カメラ16は光軸が車両1の正面方向、すなわち前方となるように車両1(より具体的には、ルームミラー)に取り付けられ、車両1の前方(X軸方向)を撮像する。
【0017】
ライダ17は、LIDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)であり、車両1に設置されたレーザレーダである。また、ライダ17は、軸ずれの推定対象の車載センサの一例である。図2に示すように、ライダ17は光軸17Aを中心として、車外に向かって電磁波(送信波)を送信しながら、周囲の物体からの反射波を受信し、車両1の周囲を走査(スキャン)する。これにより、ライダ17は測距データを取得し、車両1の周辺の物体の位置を検出する。測距データには、ライダ17から見た物体が存在する方向と、ライダ17とその物体との距離とが含まれる。ライダ17から送信される電磁波は、紫外線、可視光線、近赤外線等のいずれの波長の電磁波であってもよい。
【0018】
なお、外界センサ6は、電波を対象物に向けて発射し、その反射波を測定するレーダをさらに含んでいてもよい。例えば、外界センサ6は、車外カメラ16、ライダ17、及びレーダの少なくともいずれかを含む。
【0019】
ライダ17は車両1前部の所定の位置に取り付けられている。車両1への搭載時(工場出荷時)には、ライダ17の光軸17Aは前方に設定され、その走査範囲(スキャン範囲)は、光軸17Aを中心として、Z軸(ヨー軸)回りに所定の角度θz内であり、かつ、Y軸(ピッチ軸)回りに所定の角度θy内に設定されている。
【0020】
車両センサ7は、車両1の速度を検出する車速センサ18を含む。車両センサ7は車速センサ18の他、車両1の加速度を検出する加速度センサ、車両1の垂直軸(Z軸)回りの角速度を検出するヨーレートセンサ、車両1の向きを検出する方位センサ等を含んでいてもよい。
【0021】
ナビゲーション装置8は車両1の現在位置を取得し、目的地への経路案内等を行う装置であり、GPS受信部20、及び地図記憶部21を有する。GPS受信部20は人工衛星(測位衛星)から受信した信号に基づいて車両1の位置(緯度や経度)を特定する。地図記憶部21は、フラッシュメモリやハードディスク等の公知の記憶装置によって構成され、地図情報を記憶している。
【0022】
運転操作子9は車室内に設けられ、車両1を制御するためにユーザが行う入力操作を受け付ける。運転操作子9は、ステアリングホイール22、アクセルペダル23、ブレーキペダル24(制動操作子)、及び、シフトレバー25を含む。
【0023】
報知部11は、表示装置、音響装置、触覚装置等の情報伝達装置である。報知部11は、例えば制御装置10から出力される指示に応じて、車両1の乗員(例えば運転者)に対する報知を行う。
【0024】
本発明の運転支援装置は、例えば制御装置10に適用することができる。制御装置10は、CPU等のプロセッサ、不揮発性メモリ(ROM)、及び、揮発性メモリ(RAM)等を含む電子制御装置(ECU)である。制御装置10はプロセッサでプログラムに沿った演算処理を実行することで、各種の車両制御を実行する。また、本発明の運転支援装置としての処理は、制御装置10のプロセッサにより実行される。制御装置10は1つのハードウェアとして構成されていてもよく、複数のハードウェアからなるユニットとして構成されていてもよい。また、制御装置10の各機能部の少なくとも一部は、LSIやASIC、FPGA等のハードウェアによって実現されてもよく、ソフトウェア及びハードウェアの組み合わせによって実現されてもよい。
【0025】
制御装置10は、車外カメラ16によって取得された画像や、ライダ17によって取得された測距データに基づいて、少なくとも車両1の周辺に存在する物体を避けるように、推進装置3やブレーキ装置4、ステアリング装置5を制御する自動運転に関する機能を実行する。例えば、制御装置10は、車両1の周辺に存在する物体を避けつつ、運転者の運転支援を行う支援処理や、車両1を自律走行させる自律走行処理を行い、車両1を制御することができる。
【0026】
このような車両1の制御を行うため、制御装置10は、外界認識部41、自車位置特定部42、行動計画部43、及び、走行制御部44を含む。
【0027】
外界認識部41は、外界センサ6を適宜制御し、外界センサ6から検出結果を取得する。外界認識部41は外界センサ6の検出結果に基づいて、車両1の周辺に存在する例えば、歩行者や他車両などの物標を認識する。外界認識部41はライダ17によって取得された測距データに基づいて、車両1を基準とする物標の位置を取得する。また、外界認識部41は、車外カメラ16によって取得された画像やライダ17によって取得された測距データ等を含む外界センサ6の検出結果に基づいて物標の大きさを取得し、機械学習等の公知の方法を用いて、外界センサ6の検出結果から物標の種別(例えば、物標がパイロンや街灯である等)を判定する。
【0028】
自車位置特定部42は、ナビゲーション装置8のGPS受信部20からの信号に基づいて、車両1の位置を検出する。また、自車位置特定部42はGPS受信部20からの信号に加えて、車両センサ7から車速やヨーレートを取得し、いわゆる慣性航法を用いて車両1の位置及び姿勢を特定してもよい。
【0029】
走行制御部44は、行動計画部43からの走行制御の指示に従って、推進装置3、ブレーキ装置4、及びステアリング装置5を制御し、車両1を走行させる。より具体的には、走行制御部44は、行動計画部43から車両1が走行すべき軌跡を指示された場合には、外界認識部41によって取得された車両1の周辺に位置する物標の位置や大きさに基づいて、それらを避けるように、推進装置3、ブレーキ装置4、及びステアリング装置5を制御しつつ、車両1を可能な限り軌跡に沿うように走行させる。
【0030】
行動計画部43は、前方を走行する車両に追従する追従走行処理や、自動運転から手
動運転への切替時に運転者が運転操作を引き継ぐことができない場合、車両1を安全に停止させる退避処理(いわゆる、ミニマム・リスク・マヌーバー(MRM)を行うための処理)を実行する。行動計画部43は各処理において車両1が走行すべき軌跡を算出して、その軌跡に沿って車両1を走行させるべく、走行制御部44に指示を出力する。
【0031】
但し、行動計画部43は、車両1の走行が開始された後、好ましくは追従走行処理や、退避処理等の処理を行っている場合を除き、適宜、外界認識部41にライダ17の軸ずれ推定を指示する。外界認識部41は軸ずれ推定において、ライダ17の軸ずれ量を取得し、行動計画部43が実行可能な処理を制限すべき軸ずれがあると判定したときには、自動運転の機能の制限する制限信号を行動計画部43に出力する。
【0032】
制限信号が入力されると、行動計画部43は、実行可能な自動運転の機能を制限する。自動運転の機能を制限とは、実行する自動運転の自動運転レベルを下げたり、特定の自動運転を行わなくしたりすることである。一例としては、制限信号が入力されると、行動計画部43は、追従走行処理の実行を禁止するが、退避処理の実行を可能とする。一方、制限信号が入力されていない場合、行動計画部43は、追従走行処理、及び退避処理を実行可能とする。
【0033】
外界認識部41は、推定部50と、姿勢変化情報取得部51と、制限部52と、を備える。推定部50は、ライダ17の軸ずれ量を推定する。推定部50による軸ずれ量の推定方法としては、任意の方法を用いることができる。ただし、推定部50による軸ずれ量の推定方法は、車両1に積載された重量物に起因する車両1の姿勢変化が生じていると、その姿勢変化によるライダ17の光軸のずれも含んだ軸ずれ量が推定されるものである。
【0034】
例えば、推定部50は、車外カメラ16によって取得された画像に基づいて、車両1が走行する道路の車線(白線)を検出し、その検出結果に基づいてライダ17の軸ずれ量を推定する。又は、推定部50は、車両1が走行する路面をライダ17により認識し、その認識結果から路面の仮想平面を作成し、ライダ17の基準平面に対する仮想平面の傾きに基づいてライダ17の軸ずれ量を推定してもよい。
【0035】
姿勢変化情報取得部51は、車両1に積載された重量物に伴う車両1の姿勢変化の情報を取得する。例えば、車両1のうち重量物を積載可能な各位置には重量センサが設けられており、姿勢変化情報取得部51はこれらの重量センサにより得られる情報から、車両1における重量物の位置や重量を示す重量物情報を取得する。又は、車両1には、車両1のうち重量物を積載可能な領域を撮影するカメラ等が設けられており、姿勢変化情報取得部51はこのカメラ等に基づいて得られる画像から重量物の画像認識を行うことにより、車両1における重量物の位置や重量を示す重量物情報を取得してもよい。
【0036】
そして、姿勢変化情報取得部51は、取得した重量物情報に基づいて、姿勢変化の情報を取得する。この場合に、例えば姿勢変化情報取得部51がアクセス可能なメモリには、重量物情報と車両1の姿勢変化の情報とを対応付ける対応情報が記憶されており、姿勢変化情報取得部51はこの対応情報と重量物情報とに基づいて姿勢変化の情報を取得する。この対応情報は、重量物情報から車両1の姿勢変化の情報を導出可能なものであればよく、重量物情報と車両1の姿勢変化の情報との対応テーブルであってもよいし、重量物情報から車両1の姿勢変化の情報を算出可能な関数等であってもよい。
【0037】
又は、車両1には、車両1の各エアサスペンションの沈み込み量を検出する沈み込み量センサが設けられており、姿勢変化情報取得部51はこの沈み込み量センサにより得られる情報から、車両1の姿勢変化の情報を取得してもよい。この場合に、例えば姿勢変化情報取得部51がアクセス可能なメモリには、車両1の各エアサスペンションの沈み込み量と車両1の姿勢変化の情報とを対応付ける対応情報が記憶されており、姿勢変化情報取得部51はこの対応情報と沈み込み量センサにより得られる情報とに基づいて姿勢変化の情報を取得する。この対応情報は、沈み込み量センサにより得られる情報から車両1の姿勢変化の情報を導出可能なものであればよく、沈み込み量センサにより得られる情報と車両1の姿勢変化の情報との対応テーブルであってもよいし、沈み込み量センサにより得られる情報から車両1の姿勢変化の情報を算出可能な関数等であってもよい。
【0038】
外界認識部41は、推定部50によって推定された軸ずれ量によって、ライダ17によって取得された測距データを補正し、補正した測距データに基づいて外界認識を行う。ただし、軸ずれ量が大きすぎると、測距データの補正を行うことができず、正確な外界認識ができないため、自動運転の機能を適切に実行することができない。
【0039】
このため、制限部52は、推定部50によって推定された軸ずれ量が第1所定値以上である場合は車両1の自動運転の機能の制限を行い、推定部50によって推定された軸ずれ量が第1所定値未満である場合は車両1の自動運転の機能の制限を行わない。具体的には、制限部52は、推定部50によって推定された軸ずれ量が第1所定値以上である場合は制限信号を行動計画部43に出力し、推定部50によって推定された軸ずれ量が第1所定値未満である場合は制限信号を行動計画部43に出力しない。第1所定値は、例えば、軸ずれ量に基づく測距データの補正が可能な軸ずれ量の最大値とすることができる。ライダ17に関する第1所定値は、例えば0~1°程度の値とすることができる。
【0040】
また、制限部52は、姿勢変化情報取得部51によって取得された姿勢変化の情報に基づいて、車両1の自動運転の機能の制限を行う。具体的には、制限部52は、推定部50によって推定された軸ずれ量が第1所定値以上であっても、車両1の姿勢変化量が第2所定値以上である場合は、車両1の自動運転の機能の制限を行わない、又は車両1の自動運転の機能の制限を保留する。
【0041】
車両1の自動運転の機能の制限の保留とは、車両1の自動運転の機能の制限をすぐには行わないことである。例えば、制限部52は、車両1の自動運転の機能の制限をすぐには行わずに、車両1の姿勢変化量が第2所定値未満とするための処理(例えば後述の報知)を行った後に、車両1の姿勢変化量が第2所定値未満となった場合は車両1の自動運転の機能の制限を行わず、車両1の姿勢変化量が第2所定値未満とならなかった場合は車両1の自動運転の機能の制限を行うことである。
【0042】
例えば、外界認識部41は、推定部50によって推定された軸ずれ量が第1所定値以上であり、車両1の姿勢変化量が第2所定値以上である場合に、車両1の乗員に、重量物の積替えを促す報知を行う。この重量物の積替えを促す報知は、例えば、報知部11を制御して、「重量物の積載が不適切であること」あるいは「重量物の積替えが必要であること」等のメッセージを画面表示又は音声出力したり、特定の画像を画面表示したりすることにより行うことができる。
【0043】
<ライダ17の光軸17Aのずれ及び車両1の姿勢変化がない状態>
図3は、ライダ17の光軸17Aのずれ及び車両1の姿勢変化がない状態の一例を示す図である。路面30は、車両1が走行する道路の路面である。この例では、路面30は水平な平面である。ここでは、ライダ17が、車両1の車室内の天井に、車両1の前方に向けて取り付けられる場合について説明する。ただし、例えば図2の例のように、ライダ17が車両1の前部に取り付けられる場合も同様である。
【0044】
光軸17Aは、ライダ17の光軸である。ライダ17は、車両1の姿勢変化がない場合に光軸17AがX軸方向と平行になるように車両1に設置される。図3の例では光軸17Aのずれがなく車両1の姿勢変化もないため、光軸17Aは路面30(X軸方向)と平行になる。
【0045】
推定部50は、例えば路面30と光軸17Aとの間の角度をライダ17の軸ずれ量として推定する。図3の例では路面30と光軸17Aが互いに平行であるため、推定部50はライダ17の軸ずれ量として0°を推定する。
【0046】
<ライダ17の光軸17Aのずれがなく車両1の姿勢変化がある状態>
図4は、ライダ17の光軸17Aのずれがなく車両1の姿勢変化がある状態の一例を示す図である。図4の例では、車両1の車室内の前方(例えば前席)に重量物40が積載されていることにより車両1が前傾している。このため、ライダ17の軸ずれが生じていないにも関わらず、光軸17Aが前傾している。この場合、路面30と光軸17Aとの間の角度は、車両1の姿勢変化量(前傾量)となり、推定部50はこの姿勢変化量をライダ17の軸ずれ量として推定することになる。
【0047】
例えば、車両1は、重量物40の積載によって最大で1°程度傾く。車両1が1°傾くと、例えば50[m]先の物体が0.9[m]ずれて認識されるため、外界認識の結果に大きな影響がある。
【0048】
<ライダ17の光軸17Aのずれがあり車両1の姿勢変化がない状態>
図5は、ライダ17の光軸17Aのずれがあり車両1の姿勢変化がない状態の一例を示す図である。図5の例では、車両1に対してライダ17がわずかにピッチ方向に回転し、光軸17Aが前傾する軸ずれが生じている。この場合、路面30と光軸17Aとの間の角度は、車両1に対する光軸17Aの傾き量(実際の軸ずれ量)となり、推定部50はこの傾き量をライダ17の軸ずれ量として推定することになる。
【0049】
<ライダ17の光軸17Aのずれ及び車両1の姿勢変化がある状態>
図6は、ライダ17の光軸17Aのずれ及び車両1の姿勢変化がある状態の一例を示す図である。図6の例では、車両1に対してライダ17がわずかにピッチ方向に回転し、光軸17Aが前傾する軸ずれが生じており、さらに、車両1の車室内の前方に重量物40が積載されていることにより車両1が前傾している。
【0050】
この場合、路面30と光軸17Aとの間の角度は、車両1に対する光軸17Aの傾き量と、車両1の姿勢変化量(前傾量)と、の合計量となり、推定部50はこの合計量をライダ17の軸ずれ量として推定することになる。
【0051】
図5に示した状態における軸ずれ判定>
図7は、図5に示した状態における軸ずれ判定の一例を示す図である。水平面Hは、路面30と平行な面である。軸ずれ量θは、推定部50が推定する軸ずれ量であって、水平面H(路面30)と光軸17Aとの間の角度である。傾き量θ1は、車両1に対する光軸17Aの傾き量である。
【0052】
第1所定値70は、軸ずれ量に基づく測距データの補正が可能な軸ずれ量の最大値である。軸ずれ確定エリア71は、光軸17Aがとり得る範囲のうち、光軸17Aと水平面H(路面30)との間の角度が第1所定値70以上となる範囲、すなわち軸ずれ量に基づく測距データの補正が困難となる範囲である。
【0053】
図7の例では、図5の例のように、ライダ17の光軸17Aのずれがあり車両1の姿勢変化がない状態である。この場合、推定部50が推定する軸ずれ量θは、車両1に対する光軸17Aの傾き量θ1と一致する(θ=θ1)。その結果、軸ずれ量θは第1所定値70未満となっている。
【0054】
したがって、制限部52は、車両1の自動運転の機能の制限を行わない。この場合、外界認識部41は、軸ずれ量θによって、ライダ17によって取得された測距データを補正し、補正した測距データに基づいて外界認識を行う。この外界認識の結果に基づいて、車両1の自動運転の機能が実行される。
【0055】
図6に示した状態における軸ずれ判定>
図8は、図6に示した状態における軸ずれ判定の一例を示す図である。姿勢変化量θ2は、車両1の姿勢変化量(前傾量)である。図8の例では、図6の例のように、ライダ17の光軸17Aのずれ及び車両1の姿勢変化がある状態である。この場合、推定部50が推定する軸ずれ量θは、車両1に対する光軸17Aの傾き量θ1と、車両1の姿勢変化量θ2との合計量(θ1+θ2)となる。その結果、ライダ17の軸ずれ量は図6の例と同じθ1であるにも関わらず、軸ずれ量θは第1所定値70以上となっている。
【0056】
姿勢変化情報取得部51は、車両1の姿勢変化量θ2を示す姿勢変化情報を取得する。制限部52は、この姿勢変化情報を参照し、軸ずれ量θが第1所定値70以上となっていても姿勢変化量θ2が第2所定値以上であれば、車両1の自動運転の機能の制限を行わない、又は車両1の自動運転の機能の制限を保留する。
【0057】
これにより、推定部50が推定する軸ずれ量θが大きくても、この軸ずれ量θに車両1の姿勢変化が大きく影響している場合には自動運転の機能を即時制限しないようにすることができる。このため、光軸17Aの実際の軸ずれ量が小さいにも関わらず自動運転の機能を制限してしまい安全性や利便性が低下することを抑制することができる。
【0058】
一方、推定部50は、軸ずれ量θが第1所定値70以上となっており姿勢変化量θ2が第2所定値未満であれば、車両1の自動運転の機能の制限を行う。これにより、推定部50が推定する軸ずれ量θが大きく、かつこの軸ずれ量θに車両1の姿勢変化が大きく影響していない場合に限り自動運転の機能を制限することができる。
【0059】
このため、推定部50が推定する軸ずれ量に基づく測距データの補正が困難なことによる誤った外界認識の結果に基づいて自動運転を行ってしまい安全性や利便性が低下することを抑制することができる。
【0060】
ここではXZ平面内におけるピッチ方向の軸ずれ及び姿勢変化に関する処理について主に説明したが、YZ平面内におけるロール方向の軸ずれ及び姿勢変化に関する処理についても同様に行うことができる。
【0061】
<外界認識部41による処理>
図9は、外界認識部41による処理の一例を示すフローチャートである。制御装置10の外界認識部41は、例えば図9に示す処理を実行する。図9に示す処理は、例えば、車両1のエンジンスタート時(例えばイグニッション電源がオンになった時)等に行われる。又は、図9に示す処理は、車両1の走行中に繰り返し行われてもよい。
【0062】
まず、外界認識部41は、推定部50によりライダ17の軸ずれ量を推定する(ステップS901)。次に、外界認識部41は、制限部52により、ステップS901により推定した軸ずれ量が第1所定値以上であるか否かを判断する(ステップS902)。
【0063】
ステップS902において、軸ずれ量が第1所定値以上でない場合(ステップS902:No)は、外界認識部41は、制限部52により自動運転の機能を制限せずに、推定部50により推定した軸ずれ量に基づいて、ライダ17の測距データの補正値を設定し(ステップS903)、一連の処理を終了する。この場合、外界認識部41は、ライダ17の測距データを、ステップS903によって設定された補正値によって補正し、補正した測距データに基づいて外界認識を行う。そして、行動計画部43は、この外界認識の結果に基づく自動運転の機能を実行する。
【0064】
ステップS902において、軸ずれ量が第1所定値以上である場合(ステップS902:Yes)は、外界認識部41は、姿勢変化情報取得部51により、車両1に積載された重量物に関する重量物情報を取得する(ステップS904)。次に、外界認識部41は、姿勢変化情報取得部51により、ステップS904により取得した重量物情報に基づいて、車両1に積載された重量物による車両1の姿勢変化量を示す姿勢変化情報を取得する(ステップS905)。
【0065】
次に、外界認識部41は、制限部52により、ステップS905により取得した姿勢変化情報が示す姿勢変化量が第2所定値以上であるか否かを判断する(ステップS906)。姿勢変化量が第2所定値以上でない場合(ステップS906:No)は、車両1に積載された重量物による車両1の姿勢変化量は大きくないにも関わらず推定部50により推定されたライダ17の軸ずれ量が大きいという状況である。この場合、外界認識部41は、制限部52により、ライダ17の軸ずれ状態を確定する(ステップS907)。
【0066】
ライダ17の軸ずれ状態の確定とは、ライダ17において、補正困難な軸ずれが生じており、この軸ずれ自体の修正が必要であると判定することである。ステップS907において、外界認識部41は、報知部11等を用いて、ライダ17の軸ずれの修正が必要である旨や、ディーラー等での検査が必要である旨などをユーザへ報知してもよい。
【0067】
また、外界認識部41は、制限部52により、自動運転の機能を制限し(ステップS908)、一連の処理を終了する。具体的には、外界認識部41は、制限部52により、制限信号を行動計画部43に出力する。
【0068】
ステップS906において、姿勢変化量が第2所定値以上である場合(ステップS906:Yes)は、外界認識部41は、車両1の乗員に、車両1に積載された重量物の積替えを促す報知を行う(ステップS909)。ステップS909は、例えば制限部52が報知部11を制御することにより行われる。
【0069】
次に、外界認識部41は、車両1に積載された重量物の積替えに要する所定時間だけ待機する(ステップS910)。次に、外界認識部41は、姿勢変化情報取得部51により、車両1に積載された重量物に関する重量物情報を取得する(ステップS911)。次に、外界認識部41は、姿勢変化情報取得部51により、ステップS911により取得した重量物情報に基づいて、車両1に積載された重量物による車両1の姿勢変化量を示す姿勢変化情報を取得する(ステップS912)。
【0070】
次に、外界認識部41は、ステップS912により取得した姿勢変化情報が示す姿勢変化量が第2所定値以上であるか否かを判断する(ステップS913)。姿勢変化量が第2所定値以上である場合(ステップS913:Yes)は、外界認識部41は、図9に示す一連の処理を開始してからステップS909による報知を行った回数が所定回数に達したか否かを判断する(ステップS914)。
【0071】
ステップS914において、報知を行った回数が所定回数に達していない場合(ステップS914:No)は、外界認識部41は、ステップS909へ戻る。報知を行った回数が所定回数に達した場合(ステップS914:Yes)は、外界認識部41は、ステップS907へ移行する。ステップS914の所定回数は、1以上の自然数である。例えば所定回数が2回である場合は、ステップS909による報知を2回行っても車両1の姿勢変化量が第2所定値より小さくならなかった場合に、軸ずれ状態が確定され、自動運転の機能が制限されることになる。
【0072】
ステップS913において、姿勢変化量が第2所定値以上でない場合(ステップS913:No)は、ステップS909の報知の後、車両1の姿勢変化量が小さくなったという状況である。この場合に、外界認識部41は、推定部50によりライダ17の軸ずれ量を推定する(ステップS915)。
【0073】
次に、外界認識部41は、制限部52により、ステップS915により推定した軸ずれ量が第1所定値以上であるか否かを判断する(ステップS916)。軸ずれ量が第1所定値以上でない場合(ステップS916:No)は、元々大きかったライダ17の軸ずれ量の推定値が、車両1の姿勢変化量が小さくなったことにより小さくなった、すなわちライダ17の実際の軸ずれ量は大きくない可能性があるという状況である。この場合、外界認識部41は、ステップS903に移行し、自動運転の機能を制限しない。
【0074】
ステップS916において、軸ずれ量が第1所定値以上である場合(ステップS916:Yes)は、外界認識部41は、車両1の姿勢変化量が小さくなったにも関わらず、ライダ17の軸ずれ量の推定値の大きいままである、すなわちライダ17の実際の軸ずれ量が大きい可能性が高いという状況である。この場合、外界認識部41は、ステップS907に移行し、ライダ17の軸ずれ状態を確定して自動運転の機能を制限する。
【0075】
図9に示したように、外界認識部41は、推定部50によって推定された軸ずれ量が第1所定値以上であっても、車両1の姿勢変化量が第2所定値以上である場合は、自動運転の機能の制限(ライダ17の軸ずれ状態の確定)を保留し、車両1の乗員に重量物の積替えを促す報知を行う。その後、外界認識部41は、車両1の姿勢変化量が第2所定値未満となってからライダ17の軸ずれ量を再度推定する。そして、外界認識部41は、再度推定した軸ずれ量が第1所定値未満であれば自動運転の機能を制限せず、再度推定した軸ずれ量が第1所定値未満であれば自動運転の機能を制限する。
【0076】
これにより、光軸17Aの実際の軸ずれ量が小さいにも関わらず自動運転の機能を制限してしまい安全性や利便性が低下することを抑制することができる。また、車両1の姿勢変化によって、自動運転が制限されやすくなることを抑制し、軸ずれ量に基づいて自動運転の機能を制限する制御のロバスト性を向上させることができる。
【0077】
なお、外界認識部41が、ステップS914において、図9に示す一連の処理を開始してからステップS909による報知を行った回数が所定回数に達したか否かを判断する処理について説明したが、このような処理に限らない。例えば、図9に示す処理を車両1の走行中に実行する場合に、外界認識部41は、ステップS914において、所定時間前の時点から現時点までの間に、ステップS909による報知を行った回数が所定回数に達したか否かを判断してもよい。又は、図9に示す処理を車両1の走行中に実行する場合に、外界認識部41は、ステップS914において、現在地から所定距離前の地点を車両1が走行していた時点から現時点までの間に、ステップS909による報知を行った回数が所定回数に達したか否かを判断してもよい。すなわち、外界認識部41は、車両1が所定時間走行する間に、又は車両1が所定距離走行する間に、報知を行った回数が所定回数に達したか否かを判断してもよい。
【0078】
このように、本発明の運転支援装置を適用した制御装置10によれば、車両1に搭載されたライダ17(車載センサ)の軸ずれ量の推定値に加えて、車両1に積載された重量物に伴う車両1の姿勢変化の情報に基づいて、車両1の自動運転の機能の制限を行うことができる。これにより、ライダ17の実際の軸ずれ量が小さいにも関わらず、車両1の姿勢変化によってライダ17の軸ずれ量が大きいと推定されて自動運転の機能が制限されることを抑制することができる。このため、ライダ17の実際の軸ずれ量が小さいにも関わらず、安全性を向上させる自動運転の機能が制限されたり、利便性を向上させる自動運転の機能が制限されたりして、安全性や利便性が低下することを抑制することができる。
【0079】
例えば、制御装置10は、推定したライダ17の軸ずれ量が第1所定値以上であり、姿勢変化の情報が示す車両1の姿勢変化量が第2所定値以上である場合に、自動運転の機能の制限を行わない、又は制限を保留する。これにより、ライダ17の実際の軸ずれ量が第1所定値未満であるにも関わらず、車両1の姿勢変化によってライダ17の軸ずれ量が第1所定値以上であると推定されても、車両1の姿勢変化量が第2所定値以上である場合は、自動運転の機能が即時制限されないようにすることができる。ただし、後述のように本発明はこのような構成に限らない。
【0080】
また、制御装置10は、車両1の姿勢変化量が第2所定値以上である場合に車両1の乗員に重量物の積替えを促す報知を行うことで、車両1の姿勢変化が大きい状況を解消することが可能になる。そして、制御装置10は、この報知の後に車両1の姿勢変化量が変化した場合に車両1の軸ずれ量を再度推定することで、車両1の姿勢変化が大きい状況が解消してからライダ17の軸ずれ量を再度推定し、ライダ17の軸ずれ量を適切に推定することができる。また、制御装置10は、このように再度推定したライダ17の軸ずれ量が第1所定値以上の場合に自動運転の機能の制限を行うことで、車両1の姿勢変化が大きい状況が解消したにも関わらずライダ17の軸ずれ量の推定値が大きい場合に、すなわちライダ17の実際の軸ずれ量が大きい可能性が高い場合に自動運転の機能を制限することができる。
【0081】
また、制御装置10は、車両1が所定時間走行する間に、又は車両1が所定距離走行する間に、報知が所定回数行われ、その後に車両1の姿勢変化量が第2所定値以上である場合に、自動運転の機能を制限してもよい。これにより、車両1の乗員に重量物の積替えを促す報知を所定回数行っても車両1の姿勢変化が大きい状況が解消しない場合に、自動運転の機能を制限することができる。また、車両1が所定時間走行する前の報知や、車両1が所定距離走行する前の報知を除いて報知の回数を判定することで、古い報知の履歴に基づいて報知が所定回数行われたと判定されて自動運転の機能が制限されることを抑制することができる。
【0082】
また、制御装置10は、車両1の始動スイッチの起動時(例えばイグニッション電源がオンになったとき)に、ライダ17の軸ずれ量の推定を行い、上記の処理に応じて自動運転の機能を制限してもよい。これにより、車両1の走行前にライダ17の軸ずれ量の推定を行って上記の処理に応じて自動運転の機能を制限し、ライダ17による適切な測定を行うことができない状態で自動運転の機能を実行することを抑制することができる。
【0083】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
【0084】
例えば、車載センサとしてのライダ17の軸ずれを推定する場合について説明したが、車両1に搭載された他の車載センサの軸ずれを推定してもよい。例えば、車外カメラ16により得られた情報に基づいて上記の自動運転の機能が実行される場合に、車載センサとしての車外カメラ16の軸ずれを推定するようにしてもよい。この場合、上記の第1所定値は、例えば6°程度の値とすることができる。この場合も、制御装置10は、車外カメラ16の軸ずれ量の推定値に加えて、車両1に積載された重量物に伴う車両1の姿勢変化の情報に基づいて、車両1の自動運転の機能の制限を行う。これにより、車外カメラ16の実際の軸ずれ量が小さいにも関わらず、車両1の姿勢変化によって車外カメラ16の軸ずれ量が大きいと推定されて自動運転の機能が制限されることを抑制することができる。このため、車外カメラ16の実際の軸ずれ量が小さいにも関わらず、安全性を向上させる自動運転の機能が制限されたり、利便性を向上させる自動運転の機能が制限されたりして、安全性や利便性が低下することを抑制することができる。
【0085】
また、外界センサ6に含まれるレーダにより得られた情報に基づいて上記の自動運転の機能が実行される場合に、車載センサとしてのレーダの軸ずれを推定するようにしてもよい。この場合も、制御装置10は、レーダの軸ずれ量の推定値に加えて、車両1に積載された重量物に伴う車両1の姿勢変化の情報に基づいて、車両1の自動運転の機能の制限を行う。これにより、レーダの実際の軸ずれ量が小さいにも関わらず、車両1の姿勢変化によってレーダの軸ずれ量が大きいと推定されて自動運転の機能が制限されることを抑制することができる。
【0086】
また、外界認識部41が車載センサの軸ずれの補正を行う構成について説明したが、外界認識部41が車載センサの軸ずれの補正を行わない構成としてもよい。この場合、例えば、図9に示した処理において、外界認識部41は、補正値を設定せずに一連の処理を終了する。この場合も、制御装置10は、車載センサの軸ずれ量の推定値に加えて、車両1に積載された重量物に伴う車両1の姿勢変化の情報に基づいて、車両1の自動運転の機能の制限を行う。これにより、車載センサの実際の軸ずれ量が小さいにも関わらず、車両1の姿勢変化によってレーダの軸ずれ量が大きいと推定されて自動運転の機能が制限されることを抑制することができる。
【0087】
また、制御装置10が、推定したライダ17の軸ずれ量が第1所定値以上であり、姿勢変化の情報が示す車両1の姿勢変化量が第2所定値以上である場合に、自動運転の機能の制限を行わない、又は制限を保留する構成について説明したが、このような構成に限らない。例えば、制御装置10は、推定したライダ17の軸ずれ量が第1所定値以上である場合は、車両1の姿勢変化量に関わらず、自動運転の機能を仮に制限してもよい。例えば、図9に示した処理において、外界認識部41は、ステップS904へ移行した際に自動運転の機能を制限し、その後にステップS916からステップS903へ移行した場合はその制限を解除してもよい。この場合はステップS908を省いた処理とする。これにより、車両1の姿勢変化が大きい結果としてライダ17による適切な測定を行うことができない状態で、車両1の乗員に重量物の積替えを促している間に自動運転の機能の実行を継続することを抑制することができる。
【0088】
また、制御装置10が、報知部11を用いて、車両1の乗員に重量物の積替えを促す報知を行う構成について説明したが、このような構成に限らない。図10は、車両1の重量物の積替えを促す報知を車両1の乗員以外に行う構成の一例を示す図である。図10の例では、車両1が、他の車両90,91とともに隊列走行を行っている。この例において、先頭の車両90は乗員がいる有人車であり、車両90の後続の車両1,91は乗員がいない無人車である。なお、車両1,90,91は、乗用車に限らず、トラックなどの乗用車以外の車両であってもよい。
【0089】
そして、車両1,91は、車両90と通信を行うことにより、車両90からの制御によって、車両90に追従するように自動運転を行う。車両1,91と車両90との間の通信は、車両1,91のそれぞれが備える無線通信インタフェース(不図示)により行われる。また、車両1,91と車両90との間の通信は、直接的な無線通信であってもよいし、基地局等を介した通信であってもよい。
【0090】
このような隊列走行において、車両1のライダ17に大きな軸ずれは生じていないが、荷崩れ等により車両1の姿勢変化があり、車両1において推定されるライダ17(車載センサ)の軸ずれ量が第1所定値以上となったとする。また、車両1の姿勢変化量が第2所定値以上となったとする。この場合に、制御装置10は、車両1の重量物の積替えを促す上記の報知を、車両90の乗員に対して行う。例えば、図9に示したステップS909において、外界認識部41が、上記の報知を車両90の乗員に対して行う。
【0091】
車両1による車両90の乗員に対する報知は、上記の無線通信インタフェースによって車両1から車両90に制御信号を送信し、この制御信号に応じて車両90が乗員に対して画面表示や音声出力などによって報知を行うことによって実行される。
【0092】
車両90の乗員に対する報知により、車両90の乗員は、車両90を停止させることで隊列走行を停止させて降車し、車両1の重量物の積替えを実行する。これにより、車両1において推定されるライダ17の軸ずれ量が第1所定値未満とすることができる。その後、この乗員は車両90に再度乗車し、車両90の走行を再開することで隊列走行を再開させる。図10に例示したように、車両1の重量物の積替えを促す報知の対象は、車両1の乗員に限らず、車両1の重量物の積替えが可能な者であればよい。
【0093】
本発明の運転支援装置としての処理を制御装置10のプロセッサにより実行する構成について説明したが、本発明の運転支援装置としての処理を軸ずれの推定対象の車載センサ(ライダ17や車外カメラ16)のプロセッサにより実行する構成としてもよい。
【0094】
また、本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。なお、括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を示しているが、これに限定されるものではない。
【0095】
(1) 車両(車両1)に搭載された車載センサ(ライダ17、車外カメラ16)の軸ずれ量を推定する推定部(推定部50)と、
前記推定部によって推定された前記軸ずれ量が第1所定値以上である場合に、前記車両の自動運転の機能の制限を行う制限部(制限部52)と、を備える運転支援装置(制御装置10)であって、
前記車両に積載された重量物(重量物40)に伴う前記車両の姿勢変化の情報を取得する姿勢変化情報取得部(姿勢変化情報取得部51)を備え、
前記制限部は、前記姿勢変化情報取得部によって取得された前記姿勢変化の情報に基づいて前記制限を行う、
運転支援装置。
【0096】
(1)によれば、車載センサの実際の軸ずれ量が小さいにも関わらず、車両の姿勢変化によって車載センサの軸ずれ量が大きいと推定されて自動運転の機能が制限されることを抑制することができる。このため、車載センサの実際の軸ずれ量が小さいにも関わらず、安全性を向上させる自動運転の機能が制限されたり、利便性を向上させる自動運転の機能が制限されたりして、安全性や利便性が低下することを抑制することができる。
【0097】
(2) (1)に記載の運転支援装置であって、
前記制限部は、前記軸ずれ量が前記第1所定値以上であり、前記姿勢変化の情報が示す前記車両の姿勢変化量が第2所定値以上である場合に、前記制限を行わない、又は前記制限を保留する、
運転支援装置。
【0098】
(2)によれば、車載センサの実際の軸ずれ量が第1所定値未満であるにも関わらず、車両の姿勢変化によって車載センサの軸ずれ量が第1所定値以上であると推定されても、車両の姿勢変化量が第2所定値以上である場合は、自動運転の機能が即時制限されないようにすることができる。
【0099】
(3) (2)に記載の運転支援装置であって、
前記車両の乗員に報知を行う報知部を備え、
前記報知部は、前記姿勢変化量が前記第2所定値以上である場合に、前記車両の乗員に前記重量物の積替えを促す報知を行う、
運転支援装置。
【0100】
(3)によれば、車両の姿勢変化が大きい状況を解消することが可能になる。
【0101】
(4) (3)に記載の運転支援装置であって、
前記推定部は、前記報知が行われた後に前記姿勢変化量が変化した場合に、前記車両の前記軸ずれ量を推定する、
運転支援装置。
【0102】
(4)によれば、車両の姿勢変化が大きい状況が解消してから車載センサの軸ずれ量を再度推定し、車載センサの軸ずれを適切に推定することができる。
【0103】
(5) (4)に記載の運転支援装置であって、
前記制限部は、前記報知が行われ前記姿勢変化量が変化してから前記推定部によって推定された前記軸ずれ量が前記第1所定値以上の場合に前記制限を行う、
運転支援装置。
【0104】
(5)によれば、車両の姿勢変化が大きい状況が解消したにも関わらず、車載センサの軸ずれ量の推定値が大きい場合に、すなわち車載センサの実際の軸ずれ量が大きい可能性が高い場合に、自動運転の機能を制限することができる。
【0105】
(6) (3)から(5)のいずれかに記載の運転支援装置であって、
前記制限部は、前記車両が所定時間走行する間に又は前記車両が所定距離走行する間に前記報知が所定回数行われた後に前記姿勢変化量が前記第2所定値以上である場合に、前記制限を行う、
運転支援装置。
【0106】
(6)によれば、車両の乗員に重量物の積替えを促す報知を所定回数行っても車両の姿勢変化が大きい状況が解消しない場合に、自動運転の機能を制限することができる。これにより、車両の姿勢変化が大きい結果として車載センサによる適切な測定を行うことができない状態で自動運転の機能の実行を継続することを抑制することができる。
【0107】
(7) (1)から(6)のいずれかに記載の運転支援装置であって、
前記推定部は、前記車両の始動スイッチの起動時に、前記軸ずれ量の推定を行う、
運転支援装置。
【0108】
(7)によれば、車両の走行前に車載センサの軸ずれ量の推定を行って上記の処理に応じて自動運転の機能を制限し、車載センサによる適切な測定を行うことができない状態で自動運転の機能を実行することを抑制することができる。
【符号の説明】
【0109】
1 車両
10 制御装置(運転支援装置)
16 車外カメラ(車載センサ)
17 ライダ(車載センサ)
40 重量物
50 推定部
51 姿勢変化情報取得部
52 制限部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10