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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157114
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】パッキング部材及びエアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/201 20110101AFI20221006BHJP
   B60R 21/205 20110101ALI20221006BHJP
【FI】
B60R21/201
B60R21/205
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021061157
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】板倉 徹
(72)【発明者】
【氏名】小泉 裕之
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA03
3D054AA07
3D054AA14
3D054BB12
3D054BB17
3D054CC03
3D054DD09
3D054FF16
(57)【要約】
【課題】エアバッグの展開を望ましい挙動に設定可能なパッキング部材を提供する。
【解決手段】パッキング部材17は、開口部29を有するケース体15と、ケース体15の内部に折り畳まれた状態で収納されるエアバッグと、を備えるエアバッグ装置10に用いられる。パッキング部材17は、開口部29の一部を覆ってケース体15に取り付けられるパッキング体41a,41bを備える。パッキング体41a,41bは、ケース体15の開口部29の縁部に対し中央部側で重なりが小さくなるようにケース体15に配置される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有するケース体と、このケース体の内部に折り畳まれた状態で収納されるエアバッグと、を備えるエアバッグ装置に用いられるパッキング部材であって、
前記開口部の一部を覆って前記ケース体に取り付けられる複数のパッキング体を備え、
前記パッキング体は、前記ケース体の前記開口部の縁部に対し中央部側で重なりが小さくなるように前記ケース体に配置される
ことを特徴とするパッキング部材。
【請求項2】
パッキング体は、ケース体の開口部の両側部を互いに重なって覆うように前記ケース体に配置される
ことを特徴とする請求項1記載のパッキング部材。
【請求項3】
パッキング体は、ケース体の開口部の両側部間を互いに重ならずに覆うよう前記ケース体に配置される
ことを特徴とする請求項2記載のパッキング部材。
【請求項4】
パッキング体には、第一パッキング体と第二パッキング体とが設定され、
前記第一パッキング体及び前記第二パッキング体は、互いに所定の第一方向に離れて位置する第一被覆部と、これら第一被覆部間に亘り形成された第二被覆部と、をそれぞれ有し、
前記第一パッキング体の前記第二被覆部は、前記第一方向と交差する第二方向において一方側に位置し、
前記第二パッキング体の前記第二被覆部は、前記第二方向において他方側に位置する
ことを特徴とする請求項3記載のパッキング部材。
【請求項5】
開口部を有するケース体と、
このケース体の内部に折り畳まれた状態で収納されるエアバッグと、
このエアバッグを膨張させるガスを供給するインフレータと、
前記ケース体に取り付けられる請求項1ないし4いずれか一記載のパッキング部材と、
を備えることを特徴とするエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケース体の内部にエアバッグが折り畳まれた状態で収納されるエアバッグ装置に用いられるパッキング部材及びこれを備えたエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、自動車のインストルメントパネル部などの被設置部に備えられる助手席乗員用のエアバッグ装置が知られている。このエアバッグ装置は、ガスを供給するインフレータと、所定の形状に折り畳まれた袋状のエアバッグ本体部を有するエアバッグとを備えている。そして、自動車の衝突などの際には、インフレータからガスを供給して、助手席に着いた乗員の前方にエアバッグ本体部を膨張展開させ、乗員に加わる衝撃を緩和するようになっている。
【0003】
このようなエアバッグ装置において、乗員の搭乗姿勢などが異なる場合でも乗員を拘束可能とするために、エアバッグの展開方向を規制部材により規制する構成が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2010/064357号(第4-6頁、図1-3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の構成の場合には、規制部材によってケース体の開口部の一縁側を覆っているに過ぎないため、規制部材によって覆われていない開口部の位置からのエアバッグの展開挙動を十分に制御することが困難であり、エアバッグの展開挙動を規制する部材の配置に関して、さらなる検討が必要である。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、エアバッグの展開を望ましい挙動に設定可能なパッキング部材及びこれを備えたエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載のパッキング部材は、開口部を有するケース体と、このケース体の内部に折り畳まれた状態で収納されるエアバッグと、を備えるエアバッグ装置に用いられるパッキング部材であって、前記開口部の一部を覆って前記ケース体に取り付けられる複数のパッキング体を備え、前記パッキング体は、前記ケース体の前記開口部の縁部に対し中央部側で重なりが小さくなるように前記ケース体に配置されるものである。
【0008】
請求項2記載のパッキング部材は、請求項1記載のパッキング部材において、パッキング体は、ケース体の開口部の両側部を互いに重なって覆うように前記ケース体に配置されるものである。
【0009】
請求項3記載のパッキング部材は、請求項2記載のパッキング部材において、パッキング体は、ケース体の開口部の両側部間を互いに重ならずに覆うよう前記ケース体に配置されるものである。
【0010】
請求項4記載のパッキング部材は、請求項3記載のパッキング部材において、パッキング体には、第一パッキング体と第二パッキング体とが設定され、前記第一パッキング体及び前記第二パッキング体は、互いに所定の第一方向に離れて位置する第一被覆部と、これら第一被覆部間に亘り形成された第二被覆部と、をそれぞれ有し、前記第一パッキング体の前記第二被覆部は、前記第一方向と交差する第二方向において一方側に位置し、前記第二パッキング体の前記第二被覆部は、前記第二方向において他方側に位置するものである。
【0011】
請求項5記載のエアバッグ装置は、開口部を有するケース体と、このケース体の内部に折り畳まれた状態で収納されるエアバッグと、このエアバッグを膨張させるガスを供給するインフレータと、前記ケース体に取り付けられる請求項1ないし4いずれか一記載のパッキング部材と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載のパッキング部材によれば、エアバッグ装置の構造を変更することなく、パッキング部材の追加のみでエアバッグの展開をケース体の開口部の中央部から展開する望ましい挙動に設定できる。
【0013】
請求項2記載のパッキング部材によれば、請求項1記載のパッキング部材の効果に加えて、ケース体の開口部の両側部へのエアバッグの展開を複数のパッキング体により規制でき、エアバッグを適切に展開させることができる。
【0014】
請求項3記載のパッキング部材によれば、請求項2記載のパッキング部材の効果に加えて、エアバッグをケース体の開口部の両側部間の中央部から膨張させるとともに、その膨張時に複数のパッキング体によってケース体の開口部の両側部間でエアバッグに抵抗を生じさせることができるので、エアバッグの初期の展開速度を開口部の両側部間で低減できる。
【0015】
請求項4記載のパッキング部材によれば、請求項3記載のパッキング部材の効果に加えて、第一被覆部同士をケース体の開口部の両側部で重ね、第二被覆部を互いに重ねることなくケース体の開口部の両側部間に配置するように第一パッキング体と第二パッキング体とをケース体に取り付けることにより、ケース体の開口部の両側部を第一パッキング体と第二パッキング体とが互いに重なって覆い、ケース体の開口部の両側部間を第一パッキング体と第二パッキング体とが互いに重ならずに覆う構成を、容易に実現できる。
【0016】
請求項5記載のエアバッグ装置によれば、エアバッグの展開挙動を簡素な構成で安価に制御可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】(a)は本発明の一実施の形態のパッキング部材の第一パッキング体及び第二パッキング体を示す平面図、(b)は第一パッキング体と第二パッキング体とを重ねた状態を示す平面図である。
図2】同上パッキング部材を備えるエアバッグ装置を示す斜視図である。
図3】同上パッキング部材の展開挙動を(a)ないし(d)の順に示す断面図である。
図4】同上パッキング部材の展開初期の挙動を(a)ないし(e)の順に示す平面図である。
図5】同上エアバッグ装置のエアバッグの展開状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
図5において、10はエアバッグ装置である。本実施の形態において、エアバッグ装置10は、移動体である車両としての自動車の車室11内の助手席、すなわち被保護物としての助手席の乗員Aの前方に位置する被設置部としてのインストルメントパネル部12の内側に配置され、助手席乗員用のエアバッグ装置10を構成している。なお、以下、前後方向、両側方向、及び上下方向は、それぞれエアバッグ装置10を自動車に取り付けた状態における自動車の直進方向を基準として説明する。図中における矢印U方向を上方向、矢印D方向を下方向、矢印F方向を前方向、矢印R方向を後方向とし、これら上下方向及び前後方向と交差または直交する方向を車幅方向、左右方向または幅方向とする。
【0020】
そして、本実施の形態のエアバッグ装置10は、エアバッグモジュールとも呼び得るもので、エアバッグ13、エアバッグ13にガスを供給するインフレータ14、ケース体15、折り畳まれた状態のエアバッグ13とインフレータ14となどをケース体15に取り付けるリテーナ16、及び、展開前のエアバッグ13を覆うパッキング部材17などを備えている。
【0021】
エアバッグ13は、単数、あるいは複数の基布を縫製、接着あるいは溶着などにより組み合わせて接合することで全体として袋状に形成されている。エアバッグ13は、図5に示す展開状態で乗員Aに対向して上下方向及び左右方向(幅方向)に延びる対向面部である乗員拘束面部20を後端部に有する。さらに、エアバッグ13は、インフレータ14からのガスが導入されるガス導入部21を前端部に有する。また、本実施の形態において、エアバッグ13には、ガス導入部21から導入されたガスの余剰分を外部に排出することで内圧を適切に設定するベントホールが形成されている。その他、エアバッグ13は、展開形状を規制するテザー、あるいは補強用の補強部材などを有していてよい。
【0022】
インフレータ14は、例えば円盤状をなして形成されている。インフレータ14の外周面には、複数のガス噴射口が形成されている。インフレータ14の内部には、点火器及び薬剤が収納されている。また、インフレータ14は、センサなどを備える制御装置に対してコネクタを介して電気的に接続される。インフレータ14は、ガス噴射口側をエアバッグ13のガス導入部21に挿入した状態で、ケース体15に取り付けられる。そして、インフレータ14は、制御装置からの電気信号により、内部の点火器が薬剤を燃焼させ、ガス噴射口から膨張用のガスを急速に供給するようになっている。なお、インフレータ14は、種々の形状があり、例えば、円柱状のものをエアバッグ13の内側に配置する構成を採ることもできる。
【0023】
図1(b)、図2図3(a)ないし図3(d)、及び、図5に示すように、ケース体15は、折り畳まれたエアバッグ13を収納する略箱状に形成されている。ケース体15は、底部25と、底部25から立ち上げられた壁部26と、を有する有底状に形成されている。
【0024】
本実施の形態において、底部25は、四角形状(長方形状)に形成されている。底部25には、インフレータ14が挿入されて取り付けられる取付孔27が形成されている。取付孔27は、底部25の中央部に配置されている。取付孔27は、例えば丸穴状に形成されている。取付孔27の周囲には、通孔28が形成されている。
【0025】
壁部26は、底部25の外縁部から立ち上がっている。そして、壁部26の先端部により囲まれる開口部29がケース体15に形成される。開口部29は、膨張展開したエアバッグ13の突出口となる。本実施の形態において、ケース体15は、正面側あるいはインストルメントパネル部12の上方に連続するウインドシールドであるフロントガラス31に向かう上側に開口部29が位置するようにインストルメントパネル部12に取り付けられる。インストルメントパネル部12の一部が、開口部29に対向するカバー体として作用する。インストルメントパネル部12には、開口部29に対向する位置に、他の部分より薄肉で容易に破断するテアラインTLが形成されている。テアラインTLは、任意の形状としてよいが、本実施の形態では、例えば開口部29の前後方向の中央部に対向する位置で車幅方向に延び、その左右両側部で前後方向に延びる、H字形状などに形成される。
【0026】
図示される例では、壁部26は、角筒状に形成されている。すなわち、壁部26は、底部25の一対の対向辺から立ち上がる一対の側壁33と、底部25の他の一対の対向辺から立ち上がる一対の端壁34と、を一体的に有する。本実施の形態では、側壁33が底部25の長辺から立ち上がり、端壁34が底部25の短辺から立ち上がっている。図示される例では、ケース体15は、側壁33が車幅方向に沿い、端壁34が前後方向に沿うようにインストルメントパネル部12に取り付けられる。
【0027】
ケース体15は、係止部36によりインストルメントパネル部12に対して係止される。係止部36は、壁部26から開口部29の外方に延びている。係止部36は、壁部26の先端部に一体的に形成されている。図示される例では、係止部36は、側壁33にそれぞれ複数ずつ配置されている。すなわち、係止部36は、開口部29に対して一方側とその反対側の他方側とに配置されている。また、これら係止部36は、側壁33の長手方向に互いに離れて配置されている。本実施の形態において、係止部36は、フック部として形成され、インストルメントパネル部12の背面側から下方に延びる係止受け部38に形成された係止孔39に引っ掛けられる。係止部36は、開口部29の前後それぞれに、車幅方向に並んで配置される。
【0028】
リテーナ16は、枠状に形成されており、エアバッグ13とともにインフレータ14をケース体15に取り付けるための取付ボルト(スタッドボルト)が突設されている。取付ボルトがエアバッグ13及びインフレータ14に形成された通孔、及び、ケース体15の通孔28に挿入されてケース体15に締め付けられることで、エアバッグ13及びインフレータ14がケース体15に一体的に固定される。
【0029】
図1(a)、図1(b)、及び、図2に示すパッキング部材17は、パッキングクロス、ラッピング布などとも呼ばれる。パッキング部材17は、シート状に形成され、開口部29を覆ってケース体15に取り付けられる。パッキング部材17は、例えば合成紙、紙、布、不織布、あるいは樹脂シートなどにより形成されている。パッキング部材17には、複数のパッキング体が設定されている。本実施の形態において、パッキング部材17には、パッキング体である第一パッキング体41aとパッキング体である第二パッキング体41bとが設定されている。
【0030】
第一パッキング体41aは、開口部29の一部を覆う被覆部43aを有する。被覆部43aの両側部には、ケース体15の壁部26に重ねられる(一方及び他方の)壁部重ね部45a,46aが連なって形成されている。壁部重ね部45a,46aのそれぞれに対し被覆部43aと反対の側部には、ケース体15の底部25に重ねられる(一方及び他方の)底部重ね部47a,48aが連なって形成されている。これら被覆部43a、壁部重ね部45a,46a及び底部重ね部47a,48aにより、第一パッキング体41aが長手状に形成されている。つまり、第一パッキング体41aは、矢印D1に示す所定の第一方向(図1(a)の左右方向)に、底部重ね部47a、壁部重ね部45a、被覆部43a、壁部重ね部46a、底部重ね部48aが順次連なる長手状に形成されている。また、被覆部43aには、第一パッキング体41aをケース体15に取り付ける取付部49aが、第一方向と交差または直交する矢印D2に示す所定の第二方向(図1(a)の上下方向)に連なって形成されている。
【0031】
本実施の形態において、被覆部43aは、第一方向を長手方向として形成されている。被覆部43aは、開口部29に重ねられてケース体15に収納されている折り畳み状態のエアバッグ13に対向する。被覆部43aは、ケース体15の開口部29よりも面積が小さい。例えば、被覆部43aは、ケース体15の開口部29の外形に対して、一部が凹んだ外形を有する形状に形成されている。図示される例では、被覆部43aは、開口部29の外形となる第一方向に長手状の長方形に対し、第一方向の中間部が第二方向に凹んだ凹字状の外形を有して形成されている。つまり、被覆部43aには、第二方向に、切欠部51aが形成されている。本実施の形態において、切欠部51aを囲んで、被覆部43aには第一被覆部52aと第二被覆部53aとが形成されている。
【0032】
第一被覆部52aは、第一方向に互いに離れて位置する。第一被覆部52aは、被覆部43aの第一方向の両側部をなす部分である。第一被覆部52aは、第一方向に長手状に延びて形成されている。
【0033】
第二被覆部53aは、第一被覆部52a間に亘り形成されている。第二被覆部53aは、被覆部43aの第二方向の一方側をなす部分である。第二被覆部53aは、第一方向に長手状に延びて形成されている。本実施の形態において、第二被覆部53aは、第二方向の寸法が切欠部51a以下に設定されている。
【0034】
壁部重ね部45a,46aは、ケース体15の壁部26において、被覆部43a(第一被覆部52a)の両側部から折り曲げられてそれぞれ端壁34の外側に重ねられる部分である。つまり、壁部重ね部45a,46aは、ケース体15を基準として互いに第一方向に対向する位置にある。壁部重ね部45a,46aには、孔部55aがそれぞれ形成されている。孔部55aは、ケース体15の壁部26(端壁34)に突設された構造部57が挿入嵌合される部分である。構造部57の孔部55aへの挿入嵌合により、第一パッキング体41aがケース体15に対して第一方向及び第二方向に位置決めされる。そのため、孔部55aは、ケース体15に対し、第一パッキング体41aを位置決めする機能を有する。本実施の形態において、孔部55aは、例えば四角形状に形成されている。さらに、壁部重ね部45a,46aの少なくともいずれか一方には、孔部61aが形成されている。本実施の形態において、孔部61aは、壁部重ね部46aに形成されている。
【0035】
底部重ね部47a,48aは、ケース体15の壁部26において、壁部重ね部45a,46aから折り曲げられて底部25の外側に互いに重ねられる部分である。すなわち、底部重ね部47a,48aは、ケース体15を基準として被覆部43aに対して反対側に位置している。底部重ね部47a,48aには、取付孔59aと、この取付孔59aの周辺部に位置する通孔60aと、がそれぞれ形成されている。取付孔59aは、ケース体15の取付孔27と連通し、インフレータ14が挿入されて取り付けられる部分である。取付孔59aは、例えば丸穴状に形成されている。また、通孔60aは、エアバッグ13及びインフレータ14の通孔、及び、ケース体15の通孔28と連通し、リテーナ16の取付ボルトが挿入される部分である。通孔60aは、取付孔59aの周囲の四方にそれぞれ形成されている。
【0036】
取付部49aは、ケース体15の係止部36に取り付けられる部分である。本実施の形態において、取付部49aは、被覆部43aから第二方向に延出する延出部63aに孔部として形成され、係止部36が挿入されるように構成されている。本実施の形態において、延出部63aには、被覆部43aの第二方向の一方側に延出する第一延出部65aと、被覆部43aの第二方向の他方側に延出する第二延出部66aと、が設定されている。第一延出部65aは、第一被覆部52a及び第二被覆部53aの第二方向の一方側に連なって形成され、第二延出部66aは、第一被覆部52aの第二方向の他方側に連なって形成されている。
【0037】
第二パッキング体41bは、第一パッキング体41aと同様に、被覆部43bと、(一方及び他方の)壁部重ね部45b,46bと、(一方及び他方の)底部重ね部47b,48bと、取付部49bと、を有し、被覆部43bに、切欠部51b、第一被覆部52b及び第二被覆部53bが形成され、壁部重ね部45b,46bに、孔部55bがそれぞれ形成され、底部重ね部47b,48bに、取付孔59bと通孔60bとがそれぞれ形成され、底部重ね部47b,48bの少なくともいずれか一方、本実施の形態では壁部重ね部46bに孔部61bが形成されている。また、被覆部43bが被覆部43aと第二方向に略対称に形成されている。つまり、第二被覆部53bが被覆部43bの第二方向の他方側をなしている。さらに、被覆部43bに、取付部49bが位置する延出部63bが形成され、延出部63bに第一延出部65bと第二延出部66bとが設定されて、第一延出部65bが第一被覆部52bの第二方向の他方側に連なって形成され、第二延出部66bが第一被覆部52b及び第二被覆部53bの第二方向の他方側に連なって形成されている。第二パッキング体41bを第一パッキング体41aに重ねることで、被覆部43a,43bが重ねられた被覆部43、壁部重ね部45a,45bが重ねられた壁部重ね部45、壁部重ね部46a,46bが重ねられた壁部重ね部46、底部重ね部47a,47bが重ねられた底部重ね部47、底部重ね部48a,48bが重ねられた底部重ね部48がそれぞれ形成され、取付部49a,49bが互いに連通する取付部49、孔部55a,55bが互いに連通する孔部55、取付孔59a,59bが互いに連通する取付孔59、通孔60a,60bが互いに連通する通孔60、孔部61a,61bが互いに連通する孔部61がそれぞれ形成される。第二パッキング体41bの各部の形状及び機能については、第一パッキング体41aの各部と概略同一であるから、説明を省略する。
【0038】
そして、エアバッグ装置10は、エアバッグ13を所定の折り畳み方法で折り畳み、エアバッグ13のガス導入部21内に、リテーナ16に取り付けたインフレータ14をリテーナ16とともに挿入して、リテーナ16の取付ボルトを通孔から導出する。次いで、これらエアバッグ13、インフレータ14及びリテーナ16を、ケース体15の内部に挿入し、インフレータ14を取付孔27に挿入するとともに、リテーナ16の取付ボルトを通孔28に挿入して、インフレータ14の一部及び取付ボルトの先端部側をケース体15の底部25から外方に突出させる。
【0039】
この状態で、パッキング部材17をケース体15に取り付ける。パッキング部材17は、第一パッキング体41aと第二パッキング体41bとのいずれを先にケース体15に取り付けてもよいが、図面においては、第一パッキング体41aを先にケース体15に取り付ける例を挙げて説明する。
【0040】
第一パッキング体41aは、取付部49aにケース体15の係止部36をそれぞれ挿入して被覆部43aを開口部29に重ね、被覆部43aの両側部を折り曲げて壁部重ね部45a,46aをケース体15の壁部26の端壁34,34にそれぞれ重ねる。このとき、それぞれの孔部55aに対して、ケース体15の構造部57を挿入する。さらに、壁部重ね部45a,46aから、底部重ね部47a,48aをそれぞれ折り曲げて底部重ね部47a,48aをケース体15の底部25に重ねる。底部重ね部47a,48aは、いずれか一方を底部25に直接重ね、他方を一方に重ねる。取付孔59aに、ケース体15の底部25から突出するインフレータ14の一部を挿入するとともに、通孔60aに、ケース体15の底部25から突出するリテーナ16の取付ボルトの先端部を挿入する。
【0041】
次いで、第二パッキング体41bは、取付部49bにケース体15の係止部36をそれぞれ挿入して被覆部43bを開口部29に重ね、被覆部43bの両側部を折り曲げて壁部重ね部45b,46bを、ケース体15の壁部26の端壁34,34にそれぞれ重ねられた第一パッキング体41aの壁部重ね部45a,46aに重ねる。このとき、それぞれの孔部55bに対して、第一パッキング体41aの孔部55aに挿入されて突出するケース体15の構造部57を挿入する。さらに、壁部重ね部45b,46bから、底部重ね部47b,48bをそれぞれ折り曲げて底部重ね部47b,48bをケース体15の底部25に重ねられた第一パッキング体41aの底部重ね部47a,48aに重ねる。底部重ね部47b,48bは、いずれか一方を第一パッキング体41aの底部重ね部47aまたは底部重ね部48aに直接重ね、他方を一方に重ねる。取付孔59bに、ケース体15の底部25から突出するインフレータ14の一部を挿入するとともに、通孔60bに、ケース体15の底部25から突出するリテーナ16の取付ボルトの先端部を挿入する。
【0042】
そして、取付ボルトにナットを締め付け固定することで、エアバッグ装置10が組み立てられる。
【0043】
この状態で、図1(b)及び図2に示すように、第一パッキング体41aの被覆部43aの第一被覆部52aと第二パッキング体41bの被覆部43bの第一被覆部52bとがケース体15の開口部29の縁部、つまり開口部29の第一方向の両側部で重なって開口部29の両側部を覆う重なり領域70が形成され、かつ、第一パッキング体41aの被覆部43aの第二被覆部53aが開口部29の第二方向の一方側に位置し、第二パッキング体41bの被覆部43bの第二被覆部53bが開口部29の第二方向の他方側に位置して、これら第二被覆部53a,53bが第二方向に並んで互いに重ならずに開口部29の両側部間を覆う非重なり領域71が重なり領域70の間、すなわち重なり領域70に対して開口部29の中央部側に形成される。また、第二被覆部53a,53bの先端部間つまり第二方向の中央部には、これら第二被覆部53a,53bが隣接する位置に沿って第一方向に延びるスリット部72が形成される。すなわち、パッキング部材17は、第一パッキング体41aと第二パッキング体41bとの重なりが、開口部29の中央部のスリット部72、その前後の非重なり領域71、左右両側の重なり領域70の順に大きくなるようにケース体15に取り付けられる。したがって、これらパッキング体41a,41bは、ケース体15の開口部29の縁部に対し中央部側で重なりが小さくなるようにケース体15に配置される。
【0044】
この後、ケース体15の係止部36を、インストルメントパネル部12の係止孔39に挿入して引っ掛けることで、エアバッグ装置10がインストルメントパネル部12に取り付けられる。このため、折り畳まれたエアバッグ13とインストルメントパネル部12との間にて開口部29を覆ってパッキング部材17が位置する。本実施の形態では、係止部36が車両の前後に位置するようにケース体15がインストルメントパネル部12に取り付けられる。そのため、エアバッグ装置10において、左右両側に重なり領域70が位置し、これらの間に非重なり領域71にて第二被覆部53a,53bが前後に位置する。また、スリット部72がインストルメントパネル部12の車幅方向に延びるテアラインTLの下部に対向する位置となる。なお、図示される例では、第二被覆部53aが前側、第二被覆部53bが後側となっているが、これらの前後は問わない。
【0045】
そして、エアバッグ装置10の動作の概略としては、自動車の衝突などの際に、制御装置がインフレータ14を作動させ、インフレータ14からガスを噴射させると、折り畳み状態でケース体15内に収納されたエアバッグ13が、ガス導入部21からのガスの流入に伴い膨張する。
【0046】
図3(a)に示すように、エアバッグ13は、まずパッキング部材17に接触する。図2に示すように、パッキング部材17は、第一パッキング体41aと第二パッキング体41bとの重なりが、開口部29の中央部のスリット部72、その前後の非重なり領域71、左右両側の重なり領域70の順に大きく設定されているため、これら第一パッキング体41aと第二パッキング体41bとの重なりが小さい位置ほどエアバッグ13の展開に対するパッキング部材17の抵抗が少ないので、図3(b)に示すように、スリット部72の位置から膨張を始める。そのため、図4(a)ないし図4(e)に示すように、エアバッグ13の膨張にしたがい、パッキング部材17の第一パッキング体41aの第二被覆部53aと第二パッキング体41bの第二被覆部53bとが前後に押し開かれるように展開する。このようにパッキング部材17がエアバッグ13の展開の抵抗となることで、エアバッグ13の初期の展開速度が低減される。この後、図3(c)に示すようにエアバッグ13がインストルメントパネル部12に接触すると、その膨張圧力によってテアラインTLを破断して図3(d)に示すようにインストルメントパネル部12にヒンジ部75から車室11内へと回動する前後の扉部76を形成し、これら扉部76間からエアバッグ13が第一パッキング体41aの第二被覆部53aと第二パッキング体41bの第二被覆部53bとの接触により前後の膨張を規制されながら車室11内へと突出し、図5に示すように乗員A側へと展開して乗員拘束面部20によって適切な圧力で乗員Aを拘束保護する。
【0047】
このように、本実施の形態によれば、ケース体15の開口部29の一部を覆うパッキング部材17の複数のパッキング体(第一パッキング体41a、第二パッキング体41b)を、ケース体15の開口部29の縁部に対し中央部側で重なりが小さくなるようにケース体15に配置することで、エアバッグ装置10の構造を変更することなく、パッキング部材17の追加のみでエアバッグ13の展開、特に扉部76の形成直前及び直後のエアバッグ13の展開をケース体15の開口部29の中央部から展開する望ましい挙動に設定できる。
【0048】
第一パッキング体41aと第二パッキング体41bとを、ケース体15の開口部29の両側部を互いに重なって覆うようにケース体15に配置することで、ケース体15の開口部29の両側部へのエアバッグ13の展開を第一パッキング体41aと第二パッキング体41bとにより規制でき、エアバッグ13を適切に乗員A側へと展開させることができる。
【0049】
第一パッキング体41aと第二パッキング体41bとを、ケース体15の開口部29の両側部間を互いに重ならずに覆うようケース体15に配置することで、エアバッグ13をケース体15の開口部29の両側部間の中央部から膨張させるとともに、その膨張時に第一パッキング体41aと第二パッキング体41bとによってケース体15の開口部29の両側部間でエアバッグ13に抵抗を生じさせることができるので、エアバッグ13の初期の展開速度をケース体15の開口部29の両側部間で低減できる。
【0050】
また、第一パッキング体41aの第二被覆部53aと第二パッキング体41bの第二被覆部53bとの間のスリット部72をテアラインTLに沿わせることで、スリット部72から膨張するエアバッグ13の展開圧力をテアラインTLに対して適切に作用させて、テアラインTLを確実に破断させることができる。特に、本実施の形態では、スリット部72を前後に挟んで位置する第一パッキング体41aの第二被覆部53aと第二パッキング体41bの第二被覆部53bとが扉部76とエアバッグ13との間に介在されるので、これら第二被覆部53a,53bによるエアバッグ13の展開速度の低減によって、エアバッグ13の膨張圧力を扉部76のヒンジ部75の位置に作用させにくくして、ヒンジ部75を保護できる。
【0051】
第一パッキング体41aと第二パッキング体41bとに、互いに所定の第一方向に離れて位置する第一被覆部52aと第一被覆部52bとを設定するとともに、第一被覆部52a間、及び、第一被覆部52b間に亘り、第二被覆部53aと第二被覆部53bとを設定し、第一パッキング体41aの第二被覆部53aを、第二方向において一方側に配置し、第二パッキング体41bの第二被覆部53bを、第二方向において他方側に配置することで、第一被覆部52a,52b同士をケース体15の開口部29の両側部で重ね、第二被覆部53a,53bを互いに重ねることなくケース体15の開口部29の両側部間に配置するように第一パッキング体41aと第二パッキング体41bとをケース体15に取り付けることにより、ケース体15の開口部29の両側部を第一パッキング体41aと第二パッキング体41bとが互いに重なって覆い、ケース体15の開口部29の両側部間を第一パッキング体41aと第二パッキング体41bとが互いに重ならずに覆う構成を、容易に実現できる。
【0052】
上記のパッキング部材17をエアバッグ装置10に用いることで、エアバッグ13の展開挙動を簡素な構成で安価に制御可能となる。また、パッキング部材17を含むエアバッグ装置10が大きくならないので、インストルメントパネル部12のレイアウトやデザインの自由度を高めることができる。
【0053】
なお、上記の一実施の形態において、パッキング体は、第一パッキング体41aと第二パッキング体41bとの2枚に限定されるものではなく、3枚以上のパッキング体を、ケース体15の開口部29の縁部に対して中央部側の重なりが小さくなるようにケース体15に配置する構成としてもよい。
【0054】
また、第二被覆部53a,53bの形状は、エアバッグ13の望ましい展開挙動に応じて設定してよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、例えば助手席用のエアバッグ装置、及びこのエアバッグ装置のパッキング部材として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0056】
10 エアバッグ装置
13 エアバッグ
14 インフレータ
15 ケース体
17 パッキング部材
29 開口部
41a パッキング体である第一パッキング体
41b パッキング体である第二パッキング体
52a,52b 第一被覆部
53a,53b 第二被覆部
図1
図2
図3
図4
図5