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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157115
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】カウルカバー
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
B62D25/08 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021061158
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】井原 淳
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BB38
3D203CA30
3D203CA38
3D203DA37
3D203DA38
3D203DA68
3D203DA70
(57)【要約】
【課題】メンテナンス作業を効率化しつつ、歩行者保護機能を向上したカウルカバーを提供する。
【解決手段】カウルカバー16は、フード12に向かって立ち上がる壁部27及び壁部27に形成された開口部33を有する本体部21を備える。カウルカバー16は、開口部33を覆って本体部21の壁部27に取り付けられた蓋体35を備える。蓋体35は、壁部27に対し、フード12側の一端部がフロントガラス側とは反対方向に離脱可能であるとともに、一端部とは反対側の他端部が回動可能に支持されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウインドシールドの縁部と車体部材とに支持されて、これらウインドシールドと車体部材に対向する相手部材との間のカウル部を覆うカウルカバーであって、
前記相手部材に向かって立ち上がる壁部及びこの壁部に形成された開口部を有する本体部と、
前記開口部を覆って前記本体部の前記壁部に取り付けられた蓋体と、を備え、
前記蓋体は、前記壁部に対し、前記相手部材側の一端部が前記ウインドシールド側とは反対方向に離脱可能であるとともに、前記一端部とは反対側の他端部が回動可能に支持されている
ことを特徴とするカウルカバー。
【請求項2】
開口部は、壁部において相手部材側の端部を切り欠いて形成されている
ことを特徴とする請求項1記載のカウルカバー。
【請求項3】
壁部は、
一般部と、
この一般部に連なって相手部材側の端部をなし、前記相手部材との間に介在されるシール部材を支持する支持部と、を備え、
開口部は、前記一般部と前記支持部とに亘り形成されている
ことを特徴とする請求項1または2記載のカウルカバー。
【請求項4】
本体部と蓋体とのいずれか一方は、支持軸を有し、
前記本体部と前記蓋体との他方は、前記支持軸を回動可能に支持する支持受け部と、この支持受け部に形成され前記支持軸の相手部材側の位置を規制する凸部と、を有する
ことを特徴とする請求項1ないし3いずれか一記載のカウルカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウインドシールドと車体部材に対向する相手部材との間のカウル部を覆うカウルカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のフロントガラスの前端部とボンネットフードの後側部との間のいわゆるカウル部に配置され、このカウル部を覆って外観を向上するカウルカバーが用いられている。
【0003】
エンジンルームとカウル部とを仕切る縦壁部を備えるカウルカバーについて、各部のメンテナンスのためにエンジンルームからカウル部へのアクセスを可能とする開口部を縦壁部に形成し、この開口部を蓋体により開閉可能とした構成が知られている。この構成では、蓋体に屈曲可能なヒンジ部を形成し、蓋体の一端部を縦壁部に保持するとともに、蓋体の他端部を縦壁部から離脱可能とすることにより、蓋体をヒンジ部から屈曲させて開口部から各部へとアクセス可能となっている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-188968号公報 (第4-8頁、図1-10)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の構成の場合、ヒンジ部よりも一端部側が開口部の一部を閉塞するため、開口部の開口面積が制限される。したがって、作業性を向上させるためには、開口部を大きく取る必要がある。
【0006】
また、近年、カウルカバーには、ボンネットフードに上方から歩行者が衝突した際などに、変形などにより衝撃を吸収する、歩行者保護機能が付加されることがある。上記の構成において、蓋体を利用し、効果的に歩行者保護機能を持たせることが望まれる。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、メンテナンス作業を効率化しつつ、歩行者保護機能を向上したカウルカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載のカウルカバーは、ウインドシールドの縁部と車体部材とに支持されて、これらウインドシールドと車体部材に対向する相手部材との間のカウル部を覆うカウルカバーであって、前記相手部材に向かって立ち上がる壁部及びこの壁部に形成された開口部を有する本体部と、前記開口部を覆って前記本体部の前記壁部に取り付けられた蓋体と、を備え、前記蓋体は、前記壁部に対し、前記相手部材側の一端部が前記ウインドシールド側とは反対方向に離脱可能であるとともに、前記一端部とは反対側の他端部が回動可能に支持されているものである。
【0009】
請求項2記載のカウルカバーは、請求項1記載のカウルカバーにおいて、開口部は、壁部において相手部材側の端部を切り欠いて形成されているものである。
【0010】
請求項3記載のカウルカバーは、請求項1または2記載のカウルカバーにおいて、壁部は、一般部と、この一般部に連なって相手部材側の端部をなし、前記相手部材との間に介在されるシール部材を支持する支持部と、を備え、開口部は、前記一般部と前記支持部とに亘り形成されているものである。
【0011】
請求項4記載のカウルカバーは、請求項1ないし3いずれか一記載のカウルカバーにおいて、本体部と蓋体とのいずれか一方は、支持軸を有し、前記本体部と前記蓋体との他方は、前記支持軸を回動可能に支持する支持受け部と、この支持受け部に形成され前記支持軸の相手部材側の位置を規制する凸部と、を有するものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載のカウルカバーによれば、蓋体の相手部材側の一端部を壁部から離脱させた状態で開口部を大きく開くことができるので、開口部の面積を有効に利用できるとともに、蓋体の他端部が壁部に支持されているため蓋体全体を本体部から取り外す必要がないので、メンテナンス作業を効率化できる。また、相手部材側から荷重が加わった際に蓋体の相手部材側の一端部を壁部から離脱させることができるので、本体部の強度を容易に低下させて反力を低下させることができ、歩行者などへの障害値を抑制できて、歩行者保護機能を向上できる。
【0013】
請求項2記載のカウルカバーによれば、請求項1記載のカウルカバーの効果に加えて、相手部材側からの荷重などにより蓋体の上端部が壁部から離脱した状態で、壁部の上端部が開口されるため、壁部の強度をより確実に低下させて本体部を容易に変形させることができ、障害値をより抑制できて、歩行者保護機能を向上できる。
【0014】
請求項3記載のカウルカバーによれば、請求項1または2記載のカウルカバーの効果に加えて、相手部材側からの荷重を蓋体の相手部材側の一端部に効率よく加えることができるので、蓋体の他端部を支点として蓋体の一端部を壁部から容易に離脱させることができる。
【0015】
請求項4記載のカウルカバーによれば、請求項1ないし3いずれか一記載のカウルカバーの効果に加えて、凸部によって、支持軸が支持受け部から容易に外れることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施の形態のカウルカバーの一部の断面図であり、(a)は蓋体により開口部が覆われている状態を示し、(b)はメンテナンス時に蓋体を壁部に対して回動させた状態を示し、(c)は相手部材への荷重により蓋体の上端部が壁部から離脱した状態を示す。
図2】同上カウルカバーの断面図である。
図3】同上カウルカバーの一部を前側から示す斜視図である。
図4図3のI-I相当位置の断面図である。
図5】(a)は図3のII-II相当位置の断面図、(b)は図3のIII-III相当位置の断面図である。
図6】同上カウルカバーを備える車体の一部の分解斜視図である。
図7】同上カウルカバーを備える車体を有する車両を示す斜視図である。
図8】本発明の第2の実施の形態のカウルカバーの一部の断面図である。
図9】本発明の第3の実施の形態のカウルカバーを示し、(a)はその断面図、(b)はその正面図である。
図10】本発明の第4の実施の形態のカウルカバーの一部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0018】
図7において、10は車両としての自動車の車体である。車体10には、エンジンルーム11を覆う相手部材であるフード12と、車室13の前側に位置するウインドシールドであるフロントガラス14と、の間のカウル部15を覆って車両用部品であるカウルカバー16が配置されている。なお、以下、前後、上下、及び両側などの方向については、車体10の直進方向を基準として説明し、矢印FR方向が前方、矢印RR方向が後方、矢印U方向が上方、矢印D方向が下方、矢印L方向が車幅方向左方、矢印Rが車幅方向右方である。図示される例では、自動車として左ハンドル車(LHD)を例に挙げて説明するが、右ハンドル車の場合には単に左右方向を反転すればよいので、説明を省略する。
【0019】
カウル部15は、エアボックスなどとも呼ばれるもので、例えば鉄板にて形成された車体部材であるフロントカウル17により、上側を開口した樋状に形成されている。そして、カウル部15には、車室13内に外気を導入する空調装置の空気取入部(エアインテーク)が前後方向に開口されているとともに、カウル部15の一側には、ワイパのワイパアームを駆動するモータやワイパリンクなどが配置されている。
【0020】
フード12は、車体10の前部に位置してエンジンルーム11を開閉可能に覆うボンネットフードである。
【0021】
そして、図2及び図6に示すカウルカバー16は、カウルトップカバーとも呼ばれ、フロントガラス14とフード12との間のカウル部15すなわちフロントカウル17の上側を覆って外観を向上するものである。カウルカバー16の前側の上部にフード12が位置し、フロントガラス14とフロントカウル17とにより支持される。
【0022】
カウルカバー16は、本体部21を備える。本体部21は、合成樹脂などの部材により長手状に形成されている。本体部21は、カウルカバー16の過半部分を構成する。本体部21は、車幅方向に長手状となっている。
【0023】
本体部21は、主体部22を有する。主体部22は、概略として平板状に形成されている。主体部22は、フロントガラス14と略平行に傾斜して長手方向に連続して形成されている。主体部22は、全体的に後部から前部へと下方に傾斜した状態で配置される。
【0024】
主体部22には、ワイパピボット穴部23が形成されている。ワイパピボット穴部23には、ワイパ装置のシャフトが挿通される。本実施の形態において、ワイパピボット穴部23は、主体部22の長手方向の一端寄り、つまり車幅方向の一側(図中では右側)に偏って複数形成されている。ワイパピボット穴部23は、主体部22を厚み方向である上下方向に貫通して形成されている。
【0025】
主体部22のフロントガラス14に対向する後部には、保持部24が突設されている。保持部24は、主体部22との間でフロントガラス14の前縁部を受ける部分である。保持部24は、主体部22の下部から後方に向けて突設されている。保持部24は、主体部22の長手方向に間欠的に複数の箇所に形成されていてもよいし、主体部22の後縁部全体に亘り形成されていてもよい。
【0026】
また、主体部22には、前後方向の中央部に、前方上側へと突出する突出部25が形成されている。突出部25は、保持部24に対して前方に離れた位置にある。突出部25は、フード12とカウルカバー16との隙間を狭くするとともにカウルカバー16を積雪などのフロントガラス14側からの荷重に対して補強する機能を有する。
【0027】
また、主体部22の前部には、壁部27が形成されている。壁部27は、カウル部15とエンジンルーム11との間に介在される隔壁部である。壁部27は、突出部25に対して前方に離れた位置にあり、カウルカバー16の前端部を構成する。壁部27は、主体部22の前部にて下方に延びている。壁部27は、車幅方向に連なって形成されている。壁部27の下端部は、フロントカウル17の上部に支持されている。壁部27は、前方に向かい上方へと傾斜する一般部28と、この一般部28に連なる支持部29と、を一体的に有する。
【0028】
一般部28は、所定の厚みを有する板状に形成されている。一般部28は、主体部22の前部に連なって前方上側に向かい傾斜している。
【0029】
支持部29は、壁部27のフード12側の端部をなす部分である。支持部29は、一般部28の前部から前方へと平面状に延びて形成されている。支持部29は、エンジンルーム11を閉塞したフード12の下部に対向する位置にある。支持部29の上部には、フード12の後部下面に圧接されるシール部材であるフードシール30が取り付けられている。つまり、支持部29は、フードシール30を支持するフードシール面である。支持部29には、フードシール30を固定するための固定部である固定穴が形成されている。そして、フードシール30が、閉じた状態のフード12に液密に密着することで、エンジンルーム11からの熱気や臭気を遮蔽するようになっている。
【0030】
壁部27には、開口部33が形成されている。開口部33は、壁部27のフード12側の端部である上端部を切り欠いて形成されている。開口部33は、支持部29及び一般部28に亘り形成されている。開口部33は、四角形状に形成されている。本実施の形態において、開口部33は、車幅方向すなわち左右方向に長い四角形状に形成されている。また、開口部33は、主体部22(本体部21)の長手方向の一端寄り、つまり車幅方向に一側(図中では左側)に偏って形成されている。
【0031】
開口部33は、蓋体35により覆われている。蓋体35は、本体部21とは別体に形成されている。蓋体35は、壁部27に対して回動可能に支持されている。蓋体35は、壁部27と同程度の厚みを有する板状に形成されている。蓋体35は、例えば合成樹脂などの部材により形成されている。
【0032】
蓋体35は、蓋体本体部37を有する。蓋体本体部37は、開口部33を覆う形状に形成されている。図示される例では、蓋体本体部37は、外縁部が開口部33の内縁部と略等しい形状を有し、蓋体35が壁部27に支持された状態で開口部33に嵌合される形状及び大きさに形成されている。本実施の形態において、蓋体本体部37は、車幅方向すなわち左右方向に長い四角形状に形成されている。蓋体本体部37は、開口部33に嵌合された状態で、壁部27と略面一または略面一となっている。
【0033】
図示される例では、蓋体本体部37には、壁部27の一般部28と支持部29とに対応する蓋体一般部38と蓋体支持部39とが設定されている。蓋体一般部38は、板状に形成され、蓋体本体部37が開口部33に嵌合された状態で、一般部28と略面一または面一に配置される。蓋体支持部39は、蓋体一般部38の上端部に連なって前方へと平面状に延びて形成される。蓋体支持部39は、蓋体本体部37が開口部33に嵌合された状態で、支持部29と略面一または面一に配置される。そのため、蓋体支持部39は、フードシール30の一部を支持する。なお、蓋体支持部39には、固定穴が形成されておらず、フードシール30が固定されていない。
【0034】
図3に示すように、蓋体本体部37の外縁部には、周辺部41が形成されている。周辺部41は、蓋体本体部37の上端部(前端部)を除く位置から外方へと、フランジ状に延出している。周辺部41は、蓋体本体部37の両側部及び下端部に亘り連なって形成されている。周辺部41は、蓋体本体部37が開口部33に嵌合された状態で、壁部27に対してフロントガラス14(図2)とは反対側すなわち前側に重ねられて位置する。つまり、周辺部41は、蓋体本体部37に対して、前側に段差状に突出して位置する。
【0035】
周辺部41には、蓋体35のフード12(図2)側の一端部である上端部を壁部27に離脱可能に係止する係止構造43が配置されている。係止構造43は、蓋体35の上端部を壁部27に対して所定の強度で係止する。係止構造43による係止は、車両の姿勢やフード12に対して手をついた程度、あるいは通常の車両の振動程度で解除されることはない。
【0036】
図3及び図4に示すように、係止構造43は、本体部21の壁部27(一般部28)に形成された第一係止部45と、蓋体35の周辺部41に形成された第二係止部46と、を有する。
【0037】
第一係止部45は、本実施の形態において爪部である。第一係止部45は、壁部27(一般部28)からフロントガラス14とは反対側である前側に突出する係止突出部48と、この係止突出部48の先端部に形成された爪部49と、を有する。本実施の形態において、係止突出部48は、車幅方向すなわち左右方向に互いに離れて一対形成されており、それぞれの係止突出部48の先端部に爪部49が形成されている。すなわち、本実施の形態の係止構造43は、両側の掛爪構造となっている。
【0038】
第二係止部46は、本実施の形態において、第一係止部45が挿入係止される穴部である。第二係止部46は、周辺部41を厚み方向に貫通して形成されている。第二係止部46に対し、第一係止部45の係止突出部48が挿入され、爪部49が第二係止部46の左右の縁部に引っ掛かることにより、係止構造43によって蓋体35の上端部側が壁部27に離脱可能に係止される。
【0039】
また、周辺部41には、蓋体35のフード12側とは反対側の他端部である下端部を本体部21の壁部27に回動可能に支持する支持構造51が形成されている。支持構造51は、本体部21(壁部27)と蓋体35(周辺部41)とのいずれか一方に形成された支持軸53と、本体部21(壁部27)と蓋体35(周辺部41)との他方に形成された支持受け部54と、を有する。
【0040】
支持軸53は、本実施の形態において、蓋体35(周辺部41)に形成されている。支持軸53は、蓋体35(周辺部41)の両側に配置されている。支持軸53は、蓋体35(周辺部41)の下端部において、両側外方に直線状に延出されている。図示される例では、支持軸53は、蓋体35の周辺部41からさらに下方の位置で両側外方に延出されている。
【0041】
支持受け部54は、本実施の形態において、本体部21(壁部27)に形成されている。支持受け部54は、支持軸53を回動可能に受ける。支持受け部54は、壁部27の開口部33の下端部側の両側に配置されている。支持受け部54は、壁部27から前方に突出して支持軸53を支持する受け部本体部56と、受け部本体部56の先端部から上方に突出して壁部27との間で支持軸53を挟む規制部57と、を有する。支持受け部54は、開口部33に対向する側部と、フード12側である上部と、が少なくとも開口されたポケット状に形成されている。本実施の形態において、規制部57は、先端部である上端部が上方に向かって壁部27に対し拡開状に傾斜されている。また、本実施の形態では、支持受け部54は、受け部本体部56と規制部57との開口部33とは反対側の側部に連なる側部規制部58をさらに有する。
【0042】
図5(a)に示すように、本実施の形態において、支持受け部54には、凸部59が形成されている。凸部59は、支持軸53のフード12側である上側の位置を規制する。凸部59は、規制部57から壁部27側へと突出している。本実施の形態において、凸部59は、規制部57の拡開状に傾斜された先端部よりも基端部側である下端部側に位置する。このため、凸部59によって、支持受け部54の上側の開口面積が狭くなっている。
【0043】
また、図5(b)に示すように、本実施の形態において、支持構造51には、蓋体35を本体部21の開口部33の縁部に引っ掛ける引っ掛け部60が形成されている。引っ掛け部60は、蓋体本体部37の下端部からフロントガラス14(図2)とは反対側の前側に段差状に突出し、開口部33の下縁部に引っ掛けられるようになっている。
【0044】
そして、カウルカバー16は、本体部21と蓋体35とをそれぞれ別個に成形し、本体部21に対し蓋体35を支持構造51により回動可能に支持するとともに、本体部21に対し蓋体35を係止構造43により係止することで構成される。すなわち、支持構造51においては、支持軸53を支持受け部54により回動可能に支持し、引っ掛け部60により蓋体35を開口部33の縁部に引っ掛けるとともに、係止構造43においては、第一係止部45と第二係止部46とを互いに係止させる。
【0045】
より詳細に、本実施の形態では、支持構造51においては、蓋体35の下端部の支持軸53を本体部21の支持受け部54に対して位置合わせし、規制部57と壁部27との間に支持軸53を押し込むことで、凸部59を乗り越えた支持軸53が受け部本体部56により支持されて回動可能な状態となる。また、この状態で、引っ掛け部60が開口部33の下縁部の前側に引っ掛けられる。
【0046】
また、係止構造43においては、蓋体35の上端部を、支持軸53を中心として本体部21の壁部27に接近させる方向に回動させ、第一係止部45を第二係止部46に対して押し込んで、爪部49が第二係止部46の開口縁に係止されることで、蓋体35の上端部が本体部21に対し係止保持された状態となる。
【0047】
この状態で、蓋体35は、周辺部41が本体部21の壁部27に重ねられるとともに、蓋体本体部37が本体部21の開口部33に嵌合されて開口部33が閉塞され、かつ、蓋体本体部37が本体部21の壁部27と略面一または面一な状態で壁部27に保持される。
【0048】
このように完成したカウルカバー16は、図2に示すように、保持部24にフロントガラス14の前縁部を挟み込み、車体に対しクリップなどにより固定することで、カウル部15を覆って車体10(図7)に組み付けられる。
【0049】
そして、カウルカバー16は、カウル部15を覆い、カウル部15や車室13内などへの水や異物の侵入を防止するとともに、フード12を閉じた状態で、フードシール30が変形してフード12に密着し、エンジンルーム11からの熱気や臭気を遮蔽する。
【0050】
また、エンジンルーム11のメンテナンスなどの際には、図1(a)に示す通常の使用状態から、係止構造43(図3)により本体部21に対して係止された蓋体35の上端部を本体部21から離脱させ、図1(b)に示すように、本体部21の壁部27に対して離れる方向であるフロントガラス14(図2)とは反対側の前方に、支持軸53を中心として引っ掛け部60による引っ掛けを維持しつつ回動させて開口部33を開放する。これにより、開口部33全体を開放し、容易にメンテナンス作業を行うことができる。また、蓋体35は本体部21に保持されるので、蓋体35を紛失したり蓋体35をエンジンルーム11内に脱落させたりしにくい。さらに、フードシール30は、蓋体35に直接固定されていないので、フードシール30を取り外す必要がなく、作業性が良好である。
【0051】
また、図1(c)に示すように、フード12に対して上方から例えば障害物が衝突するなどして荷重(外力)が加わると、フード12が下方に変形することでフードシール30を介してカウルカバー16の支持部29に対して下方に荷重が加わる。すなわち、蓋体35は、下端部に位置する支持軸53を支点としてその反対側に離れた上端部に荷重が加わる。このとき、蓋体35は、開口部33からのメンテナンス用に本体部21に対して上端部が離脱可能となっているとともに前方下側へと回動可能に支持されているため、荷重に対して少ない抵抗で係止構造43(図3)が容易に外れ、支持軸53を中心として壁部27から離れるように前方へと回動する。すなわち、メンテナンス時と荷重付加時とで蓋体35の挙動が同等であるため、蓋体35の離脱時に反力を生じさせにくく、衝撃吸収に有利となる。この結果、本体部21は開口部33が開口することで強度が低下し、荷重に対して容易に変形して荷重を吸収して反力を低下させ、歩行者などへの傷害値を抑制する。
【0052】
このように、第1の実施の形態によれば、フード12に向かって立ち上がる壁部27に開口部33を形成し、この開口部33を覆って壁部27に蓋体35を取り付けるとともに、この蓋体35のフード12側の一端部である上端部を、壁部27に対しフロントガラス14側とは反対方向に離脱可能とし、蓋体35の他端部である下端部を壁部27に対し回動可能に支持することで、蓋体35の上端部を壁部27から離脱させた状態で開口部33を大きく開くことができるので、開口部33の面積を有効に利用できるとともに、蓋体35の下端部が壁部27に支持されているため蓋体35全体を本体部21から取り外す必要がないので、蓋体35を紛失したりエンジンルーム11に脱落させたりすることを防止でき、メンテナンス作業を効率化できる。また、このメンテナンス用の構造により、フード12側から荷重が加わった際に蓋体35の上端部を壁部27から離脱させることができるので、この蓋体35の離脱によって本体部21の強度を容易に低下させて反力を低下させることができ、歩行者などへの障害値を抑制できて、歩行者保護機能を向上できる。
【0053】
開口部33を、壁部27においてフード12側の端部である上端部を切り欠いて形成することで、フード12側からの荷重などにより蓋体35の上端部が壁部27から離脱した状態で、壁部27の上端部が開口されるため、壁部27の強度をより確実に低下させて本体部21を容易に変形させることができ、障害値をより抑制できて、歩行者保護機能を向上できる。
【0054】
開口部33を壁部27の一般部28とフードシール30を支持する支持部29とに亘り形成することで、フード12側からの荷重を蓋体35の上端部に効率よく加えることができるので、てこの原理により蓋体35の下端部(支持軸53)を支点として蓋体35の上端部を壁部27から容易に離脱させることができる。
【0055】
支持軸53を回動可能に支持する支持受け部54に、支持軸53のフード12側である上側の位置を規制する凸部59を形成することで、この凸部59によって、支持軸53が支持受け部54から容易に外れることを防止できる。したがって、蓋体35に対し荷重が加わった状態などであっても、蓋体35の下端部を本体部21の壁部27に対して確実に保持しておくことができる。
【0056】
なお、上記の第1の実施の形態において、係止構造43は、両側の係止突出部48にそれぞれ爪部49を形成する両側の掛爪構造としたが、これに限らず、例えば図8に示す第2の実施の形態のように、一方の係止突出部48にのみ爪部49を形成した片側の掛爪構造としてもよいし、図9(a)及び図9(b)に示す第3の実施の形態のように、ボス状の係止突出部48に爪部49を形成してもよい。
【0057】
さらに、係止構造43は、本体部21と蓋体35との互いを互いに直接係止する構造に限らず、例えば図10に示す第4の実施の形態のように、別途のクリップなどの係止部材61を用い、係止部材61を開口である第一係止部45及び第二係止部46に亘り挿入することで、本体部21と蓋体35とを係止する構造などとしてもよい。この場合には、例えば係止部材61を本体部21の壁部27と略面一または面一となるように、第一係止部45を壁部27に対し段差状に形成してもよい。
【0058】
これらの第2ないし第4の実施の形態でも、第1の実施の形態と同様に、メンテナンス作業を効率化しつつ、歩行者保護機能を向上できる。
【0059】
また、上記の各実施の形態のように、係止構造43を変更することで、蓋体35の上端部が本体部21の壁部27から離脱する強度を容易にチューニングできるので、例えばフードシール30の組み付けの際に蓋体35が本体部21から脱落しないように容易に設定可能となる。
【0060】
また、係止構造43は、第一係止部45と第二係止部46との凹凸関係を反対としてもよい。
【0061】
同様に、支持構造51は、支持軸53と支持受け部54との配置関係を反対としてもよい。すなわち、支持軸53を本体部21に形成し、支持受け部54を蓋体35に形成してもよい。
【0062】
また、上記の各実施の形態において、カウルカバー16は、車体10の前部以外の部分に設け、例えば、ウインドシールドとしてのリアガラスとリアのトランクフードとの間などに配置することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、例えば、自動車のフロントガラスとボンネットフードとの間に配置されるカウルカバーに適用できる。
【符号の説明】
【0064】
12 相手部材であるフード
14 ウインドシールドであるフロントガラス
15 カウル部
16 カウルカバー
17 車体部材であるフロントカウル
21 本体部
27 壁部
28 一般部
29 支持部
30 シール部材であるフードシール
33 開口部
35 蓋体
53 支持軸
54 支持受け部
59 凸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10